説明

船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法

【課題】異なる硫黄レベルの異なる燃料、すなわち高硫黄燃料及び低硫黄燃料で動かす船舶又は定置ディーゼルエンジンの改善された運転方法を提供する。
【解決手段】実質的に一定の供給量で船舶又は定置ディーゼルエンジンに供給される1つのシリンダー潤滑油で前記エンジンを潤滑する船舶又は定置ディーゼルエンジンの運転方法において、前記シリンダー潤滑剤油から利用できるよりも多くの塩基を必要とする硫黄レベルを有する燃料で前記エンジンを動かす場合に、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい少なくとも1つの過塩基性洗浄剤を前記燃料に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料の硫黄含有量は、由来する地理的地域に依存して異なる。船舶用ディーゼルエンジンについて、高硫黄燃料は、1.5質量%よりも多い硫黄を含む燃料であり、低硫黄燃料は、1.5質量%以下の硫黄を含む燃料である。低硫黄燃料は、港で、及び港の周りで、並びに法的に規制された領域で通常要求されるが、より安価な高硫黄燃料は、外洋で使用することができる。
高硫黄燃料で船舶用ディーゼルエンジンを作動させる場合、ASTM D2896を用いて測定される塩基価が少なくとも70mgKOH/gであるシリンダー潤滑油を用いて潤滑する必要がある。低塩基価のシリンダー潤滑油は、増加した供給量で使用できるが、コストに対する影響は、高潤滑油供給量が必要であるため、深刻である。一方、低硫黄燃料で船舶用ディーゼルエンジンを作動させる場合、塩基価が70mgKOH/g未満、例えば40mgKOH/gであるシリンダー潤滑油を用いて潤滑することができる。塩基価が約70mgKOH/gのシリンダー潤滑油は、減少させた供給量で短期間使用することが可能であるが、長期にわたると、堆積物が過剰の灰からエンジン内に形成される。さらに、供給量の減少は、オイル欠乏のリスク及びピストンとライナーとの間にフィルムを提供できる潤滑油が不十分となるリスクを高める。このように、異なる硫黄含有量の燃料を使用する場合、船舶用エンジンは、別々のタンクに貯蔵される必要がある異なるシリンダー潤滑油(1つは高塩基価のもの、もう1つは低塩基価のもの)を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法を提供することである。特に、本発明の目的は、異なる硫黄レベルの異なる燃料、すなわち高硫黄燃料及び低硫黄燃料で作動させる船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法であって、実質的に一定の供給量で前記エンジンに供給される1つの塩基性シリンダー潤滑油で前記エンジンを潤滑し、前記塩基性シリンダー潤滑油から利用できるよりも多くの塩基を必要とする硫黄レベルを有する燃料で前記エンジンを作動させる場合に、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい過塩基性洗浄剤を少なくとも1つ前記燃料に添加する、前記方法が提供される。
本発明の利点は、たとえ異なる硫黄レベルの異なる燃料で船舶用ディーゼルエンジンを作動させる場合であっても、1つのシリンダー潤滑油、すなわち低塩基価のシリンダー潤滑油のみが前記エンジンで使用する必要があるということである。さらに、1つの貯蔵タンクのみが前記シリンダー潤滑油のために必要である。
好ましくは、前記過塩基性金属洗浄剤は、過塩基性金属フェナート、過塩基性金属スルホナート、過塩基性金属サリチラート又は過塩基性金属ハイブリッド洗浄剤から選択される。過塩基性金属ハイブリッド洗浄剤は、好ましくは過塩基性金属フェナート-スルホナート洗浄剤又は過塩基性金属フェナート-スルホナート-サリチラート洗浄剤から選択される。前記金属は、好ましくはアルカリ土類金属であり、好ましくはカルシウムである。前記過塩基性金属洗浄剤の全塩基価は、好ましくは175mgKOH/gよりも多く、好ましくは200mgKOH/gよりも多く、より好ましくは245mgKOH/gよりも多い。
前記シリンダー潤滑油の全塩基価は、好ましくは100mgKOH/g未満であり、好ましくは70mgKOH/g未満であり、より好ましくは60mgKOH/g未満であり、さらにより好ましくは50mgKOH/g未満であり、最も好ましくは25〜45mgKOH/gである。
前記過塩基性金属洗浄剤は、好ましくは1〜10000ppm、好ましくは100〜1000ppm、より好ましくは250〜500ppmの処理量で、前記燃料油に添加される。
前記高硫黄燃料の硫黄含有量は、好ましくは2質量%よりも多く、好ましくは3質量%よりも多い。
【0005】
また、本発明によれば、船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法であって、実質的に一定の供給量で前記エンジンに供給される塩基価が70mgKOH/g未満である1つのシリンダー潤滑油で前記エンジンを潤滑し、少なくとも2つの燃料(硫黄レベルが1.5%以下である第1燃料と硫黄レベルが1.5%よりも多い第2燃料)で前記エンジンを作動させる前記方法が提供され、前記方法は、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい過塩基性洗浄剤を少なくとも1つ硫黄レベルが1.5%よりも多い前記燃料に添加する工程を含む。
また、本発明によれば、船舶又は定置ディーゼルエンジンのための作動システムが提供され、前記システムは、以下を含む:
a)船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油を貯蔵するための1つのシリンダー油タンク;
b)硫黄レベルが1.5質量%以下である第1燃料を貯蔵するための第1燃料タンク;及び
c)硫黄レベルが1.5質量%よりも多い第2燃料であって、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい過塩基性洗浄剤を少なくとも1つ含む第2燃料を貯蔵するための第2燃料タンク;
ここで、実質的に一定の供給量で前記エンジンに供給される1つの船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油及び異なる硫黄レベルの異なる燃料を少なくとも2つ用いて、船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる。
また、本発明は、硫黄レベルが1.5%よりも多い、好ましくは2%よりも多い燃料で、船舶又は定置ディーゼルエンジンにおけるピストンリング及びシリンダーライナーの摩耗を低減するための、全塩基価が150mgKOH/gよりも大きい、好ましくは200mgKOH/gよりも大きい過塩基性金属洗浄剤の使用に関するものである。
本発明は、さらに以下でより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(燃料)
燃料は、各種の燃料のいずれか1つ、特にディーゼル燃料油であってもよい。
そのような燃料としては、原油を精製して軽油(灯油又はジェット燃料)留分から重油留分までの留分として得ることができる石油系燃料油と呼ばれる「中間留分」燃料油などが挙げられる。また、これらの燃料は、常圧又は減圧留出物、分解ガス油、又は直留並びに熱及び/若しくは接触分解若しくは水素化分解留出物のブレンド(任意比率)を含んでもよい。その例としては、水素化分解ストリーム、灯油、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房用油、ビスコシチーブレーキング法で処理した(visbroken)ガス油、ライトサイクルオイル及び減圧ガス油などが挙げられる。そのような中間留分燃料油は、温度の変動幅(一般に、100℃〜500℃、特に150℃〜400℃の範囲内)にわたって通常沸騰する(ASTM D86に従って測定される)。
好ましくは、前記燃料は残燃料油であり、ディーゼルエンジンは船舶用ディーゼルエンジンであり、2又は4ストロークであってもよい。
適した燃料、例えば360℃を超える相対的に高い終点を有するものは、約100℃〜約500℃、例えば150℃〜約450℃の範囲内で一般に沸騰する(ASTM D86)。そのような燃料は、燃料が冷えるとワックスとして沈降するn-アルカンなどの、温度の変動幅にわたって沸騰する炭化水素のスプレッドを含む。それらは、特定の容量%の初期燃料が留出する暫定温度である、種々の割合(例えば、10%〜90%)の燃料が蒸発する温度によって特徴付けられる。約90%と20%との蒸留温度の差は、重要である。また、それらは、流動点、くもり点及びCFPP点、並びにその初留点(IBP)及び終点(FBP)、セタン価、粘度及び密度によっても特徴付けられる。石油燃料油は、常圧留出物若しくは減圧留出物、又は分解ガス油並びに直留及び熱及び/若しくは接触分解留出物の任意の割合のブレンドを含むことができる。
【0007】
前記燃料は、特に以下の特徴の1又は2以上を有することができる。
(i)95%蒸留温度(ASTM D86)が330℃よりも高い、好ましくは360℃よりも高い、より好ましくは400℃よりも高い、最も好ましくは430℃よりも高い。
(ii)セタン価(ASTM D613によって測定)が55未満、例えば53未満、好ましくは49未満、より好ましくは45未満、最も好ましくは40未満である。
(iii)芳香族含有量が15重量%よりも多く、好ましくは25重量%よりも多く、より好ましくは40重量%よりも多い。
(iv)ラムズボトムの炭素残留物(ASTM D524による)が0.01質量%よりも多く、好ましくは0.15質量%よりも多く、より好ましくは0.3質量%よりも多く、例えば1質量%又は5質量%、最も好ましくは10質量%よりも多い。
【0008】
前述のように、これらの燃料は、特に流動接触分解から生成されるストリーム(そのような材料は、通常15℃で850〜970kg/cm3、例えば900〜970kg/cm3の密度を有し、低セタン価値、典型的には10以下から約30〜35の範囲によって特徴付けられる)、ビスコシチーブレーキング(visbreaking)及びコーキングのような熱分解プロセスから生成されるストリーム(そのようなストリームは、典型的には15℃で830〜930kg/cm3の密度範囲を有し、20〜50のセタン価を有する)、及び過酷な条件(例えば、130bar以上の圧力で400℃を超える温度)を使用して、45〜60のセタン価によって特徴付けられ、かつ、15℃で800〜860kg/cm3の密度範囲を有するストリームを生成する水素化分解から生成されるストリームのようなストリームを含んでもよい。
典型的には、船舶用燃料は、標準仕様ASTM D2069に従い、その仕様に記載される留出物又は残留燃料のいずれかであってもよく、40℃で少なくとも1.40cStの動粘度を有してもよい。
【0009】
また、燃料油は、動物若しくは植物油、又は動物若しくは植物油との組み合わせでの上述したような鉱油であってもよい。動物又は植物源からの燃料は、生物燃料として公知であり、再生可能資源から得られる。植物油、例えばナタネ油のいくつかの誘導体、例えば一価アルコールを用いる鹸化及び再エステル化により得られるものを使用してもよい。例えば、容積で10:90又は5:95の比の、ナタネエステル、例えばナタネメチルエステル(RME)と、石油留出燃料との混合物がおそらく市販されていると、最近報告されている。
このように、生物燃料は、植物若しくは動物油、又はその両方、又はこれらの誘導体であり、特に脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルを含む油である。
植物油は、主にモノカルボン酸、例えば10〜25個の炭素原子を有する酸のトリグリセリドであり、以下の式を有する。

(式中、Rは、飽和であっても不飽和であってもよい、10〜25個の炭素原子を有する脂肪族基である。)
【0010】
一般に、そのような油は、多くの酸のグリセリドを含み、その数及び種類は、油の植物源で変動する。
そのような油の例としては、ナタネ油、コリアンダー油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、アーモンド油、パーム核油、ココナッツ油、からしの種子油、牛脂及び魚油などが挙げられる。ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油及びパーム油が、多量に入手可能であり、ナタネから圧搾による単純な方法で得ることが可能であるため、好ましい。
これらの誘導体の例としては、植物又は動物油の脂肪酸のアルキルエステル、例えばメチルエステルである。そのようなエステルは、エステル交換により製造することができる。
脂肪酸の低級アルキルエステルのように、例えば市販の混合物としての次のものを考慮することができる:50〜180、特に90〜125のヨウ素価を有する、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸、例えばラウリン酸、ロジン酸(例えば、アビエチン酸及び関連した構造を有するもの、例えばデヒドロアビエチン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、エライオステアリン酸(elaeostearic acid)、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸又はエルカ酸のエチル、プロピル、ブチル及び特にメチルエステル(50〜180、特に90〜125のヨウ素価を有する)。特に有利な特性を有する混合物は、即ち少なくとも50質量%で、16〜22個の炭素原子及び1、2又は3個の2重結合を有する脂肪酸のメチルエステルを主として含むものである。好ましい脂肪酸の低級アルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びエルカ酸のメチルエステル、及びこれらの混合物である。
【0011】
記載した種類の市販の混合物は、例えば低級脂肪族アルコールでのエステル交換による天然脂肪及び油の開裂及びエステル化により得られる。脂肪酸の低級アルキルエステルの製造については、高ヨウ素価の脂肪及び油、例えばヒマワリ油、ナタネ油、コリアンダー油、ヒマシ油、大豆油、綿実油、ピーナッツ油、フォール油(fall oil)又は牛脂等から出発するのが有利である。新種のナタネ油をベースとする脂肪酸の低級アルキルエステルで、その脂肪酸成分の80質量%より多くが、18個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸から誘導されたものであるものが好ましい。
好ましくは、生物燃料は、中間留出燃料油の質量を基準として、50質量%までの量で存在し、より好ましくは10質量%まで、とりわけ5質量%までの量で存在する。
あるいは、燃料は、暖房用燃料油又は発電装置用燃料のような燃料(留出物又は残留燃料のいずれか)であってもよい。燃料が、例えば大きなエンジン及び/又はボイラー又は炉を使用する発電及びマリンタイプ用途で使用される重油であることが好ましい。また、燃料は、ISO仕様8217:1996及び前記仕様のいくらかの修正に従うことが好ましい。
【0012】
(過塩基性金属洗浄剤)
洗浄剤は、エンジンのピストン付着物、例えば高温ワニス及びラッカー付着物の形成を減少させる添加剤であり、一般に酸中和性能を有し、最終的に分離された固体を懸濁液中に保持することができる。多くの洗浄剤は、金属「石鹸」をベースとするものであって、酸性有機化合物の金属塩であり、しばしば界面活性剤と呼ばれる。
洗浄剤は、一般に長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させて金属塩基(例えば、カーボネート)ミセルの外層として中和された洗浄剤を含む過塩基性洗浄剤を得ることによって、多量の金属塩基が含まれる。
使用できる界面活性剤としては、フェナート、サリチラート、スルホナート、硫化フェナート、チオホスホナート、及びナフテナート並びに他の油溶性カルボキシラートが挙げられる。金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムであってもよい。カルシウムが好ましい。
過塩基性金属化合物の界面活性剤システムの界面活性剤は、好ましくは少なくとも1つのヒドロカルビル基を、例えば芳香族環の置換基として含む。
フェナート界面活性剤は、硫化されていなくても、又は硫化されていてもよい。フェナートとしては、1よりも多いのヒドロキシル基(例えば、アルキルカテコール)又は縮合芳香環(例えば、アルキルナフトール)を含有するもの、化学反応によって変性したもの、例えばアルキレン橋掛け型及びマンニッヒ塩基縮合及びサリゲニンタイプ(フェノールとアルデヒドとの塩基性条件下での反応により生成される)が挙げられる。
【0013】
フェナート界面活性剤がベースとする好ましいフェノールは、下記の式Iから誘導してもよい。

(式中、Rはヒドロカルビル基を表し、yは1〜4を表す。)
yが1よりも大きい場合、そのヒドロカルビル基は、同一または異なるものであってもよい。
前記フェノールは、しばしば硫化形で使用される。硫化ヒドロカルビルフェノールは、典型的には下記の式IIによって示してもよい。

(式中、xは、一般に1〜4である。)
場合によっては、2個よりも多いフェノール分子をSxブリッジによって結合させてもよい。
【0014】
上記各式において、Rで表されるヒドロカルビル基は、有利にはアルキル基であり、前記アルキル基は、有利には5〜100個、好ましくは5〜40個、とりわけ9〜15個の炭素原子を有し、R基全体における平均炭素原子数は、油中での適切な溶解性を確保するために少なくとも約9個である。好ましいアルキル基は、ドデシル(テトラプロピレン)基である。
以下の説明では、ヒドロカルビル置換フェノールは、便宜上アルキルフェノールと呼ぶ。
硫化フェノール又はフェナートを調製するのに使用する硫化剤は、アルキルフェノールモノマー基間に-(S)x-ブリッジ基を導入する任意の化合物又は元素であってもよく、xは一般に1〜4である。このように、反応は、元素状イオウ又はそのハライド、例えば、二塩化イオウ又は、より好ましくは一塩化イオウによって行ってもよい。元素状イオウを使用する場合には、硫化反応は、アルキルフェノール化合物を50〜250℃、好ましくは少なくとも100℃で加熱することによって実施できる。元素状イオウの使用は、上述したような-(S)x-ブリッジ基の混合物を典型的に与える。ハロゲン化イオウを使用する場合には、硫化反応は、アルキルフェノールを-10〜120℃、好ましくは少なくとも60℃で処理することによって実施できる。反応は、適切な希釈剤の存在下において実施できる。その希釈剤は、有利には実質的に不活性な有機希釈剤、例えば鉱油又はアルカンを含む。いずれにしろ、反応は、実質的な反応を行うのに十分な時間で実施する。一般的には、当量の硫化剤当り0.1〜5モルのアルキルフェノール物質を使用するのが好ましい。
元素状イオウを硫化剤として使用する場合、塩基性触媒、例えば水酸化ナトリウム又は有機アミン、好ましくは複素環アミン(例えば、モルホリン)を使用することが望ましい場合がある。
硫化方法の詳細は、当業者にとって周知である。
【0015】
製造する方法にかかわらず、硫化アルキルフェノールは、希釈剤及び未反応アルキルフェノールを一般に含み、硫化アルキルフェノールの質量基準で、一般に2〜20質量%、好ましくは4〜14質量%、最も好ましくは6〜12質量%の硫黄を含有する。
上述したように、本明細書において使用するときの用語“フェノール”は、例えばアルデヒドとの化学反応によって変性したフェノール及びマンニッヒ塩基縮合フェノールも含む。
フェノールを変性し得るアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びブチルアルデヒドがある。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒドである。使用するのに適するアルデヒド変性フェノールは、例えば米国特許第5259967号明細書に記載されている。
マンニッヒ塩基縮合フェノールは、フェノール、アルデヒド及びアミンの反応により調製する。適切なマンニッヒ塩基縮合フェノールの例は、英国特許出願公開第2121432号明細書に記載されている。
一般に、フェノールは、上述した置換基以外の置換基を、そのような置換基がフェノールの界面活性剤特性を有意に低下させない限り含んでもよい。そのような置換基の例は、メトキシ基及びハロゲン原子である。
【0016】
サリチル酸類は、硫化させなくても硫化させてもよく、化学的に変性でき、及び/又は、例えばフェノールについて上述したようなさらなるの置換基を有してもよい。上述したのと同様な方法が、ヒドロカルビル置換サリチル酸の硫化においても使用でき、当業者にとって周知である。サリチル酸は、フェノキシドのコルベ−シュミット(Kolbe-Schmitt)法によるカルボキシル化によって典型的に調製され、この場合、カルボキシル化されていないフェノールとの混合物で一般に得られる(通常、希釈剤中で)。
過塩基性洗浄剤を誘導することのできる油溶性サリチル酸における好ましい置換基は、上記フェノールの説明におけるRによって表される置換基である。アルキル置換サリチル酸においては、そのアルキル基は、有利には5〜100個、好ましくは9〜30個、とりわけ14〜20個の炭素原子を含有する。
スルホン酸は、ヒドロカルビル置換、とりわけアルキル置換芳香族炭化水素、例えば蒸留及び/又は抽出による石油の分別によって或いは芳香族炭化水素のアルキル化によって得られる炭化水素のスルホン化によって典型的に得られる。その例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニル、又はこれらのハロゲン誘導体、例えばクロロベンゼン、クロロトルエンもしくはクロロナフタレンをアルキル化することによって得られる炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素のアルキル化は、触媒の存在下に、例えばハロパラフィン、パラフィンの脱水素化によって得ることのできるオレフィン、及びポリオレフィン、例えばエチレン、プロピレン及び/又はブテンのポリマーのような3〜100個以上の炭素原子を有するアルキル化剤によって実施できる。これらのアルキルアリールスルホン酸は、7〜100個以上の炭素原子を通常含有する。これらのスルホン酸は、取得するための原料にもよるが、好ましくはアルキル置換芳香族成分当り16〜80個或いは12〜40個の炭素原子を含有する。
【0017】
これらのアルキルアリールスルホン酸を中和してスルホナートを調製する場合、炭化水素溶媒及び/又は希釈剤オイル、並びに促進剤及び粘度調節剤も反応混合物中に含ませてもよい。
もう1つのタイプのスルホン酸は、アルキルフェノールスルホン酸を含む。そのようなスルホン酸は、硫化させることができる。硫化させても硫化させなくても、これらのスルホン酸は、フェノールの界面活性剤特性に匹敵する界面活性剤特性よりはむしろスルホン酸の界面活性剤特性に匹敵する界面活性剤特性を有するものと信じている。
また、スルホン酸は、アルケニルスルホン酸のようなアルキルスルホン酸も含む。そのような化合物においては、そのアルキル基は、適切には9〜100個、有利には12〜80個、とりわけ16〜60個の炭素原子を含有する。
カルボン酸は、モノ-及びジカルボン酸を含む。好ましいモノカルボン酸は、1〜30個、とりわけ8〜24個の炭素原子を含有するモノカルボン酸である。モノカルボン酸の例は、イソオクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸及びベヘン酸である。イソオクタン酸は、必要に応じて、Exxon Chemicals社から商品名“Cekanoic”として市販されているC8酸異性体混合物の形で使用してもよい。他の適切な酸は、α-炭素原子での第3級置換を有する酸及びカルボキシル基を別にして2個よりも多い炭素原子を有するジカルボン酸である。さらに、35個よりも多い、例えば36〜100個の炭素原子を有するジカルボン酸も適している。不飽和カルボン酸は、硫化させることができる。サリチル酸は、カルボキシル基を含有するけれども、本発明の目的においては、界面活性剤の別の群であるとみなし、カルボン酸界面活性剤とはみなさない。(サリチル酸は、ヒドロキシル基を含有するけれども、フェノール界面活性剤ともみなさない)。
【0018】
本発明に従って使用できる他の界面活性剤の例としては、次の化合物及びそれらの誘導体が挙げられる:ナフテン酸、とりわけ1又は2個以上のアルキル基を含有するナフテン酸、ジアルキルホスホン酸、ジアルキルチオホスホン酸、及びジアルキルジチオホスホン酸、高分子量(好ましくは、エトキシ化)アルコール、ジチオカルバミン酸、チオホスフィン、及び分散剤。これらのタイプの界面活性剤は、当業者にとって周知である。ヒドロカルビル置換カルボキシルアルキレン結合フェノールタイプの界面活性剤、又はアルキレン基がヒドロキシ基及びさらなるカルボン酸基で置換されているアルキレンジカルボン酸のジヒドロカルビルエステル、又は芳香族成分が少なくとも1個のヒドロカルビル置換フェノールと少なくとも1個のカルボキシフェノールを含むアルキレン結合ポリ芳香族分子も、本発明における使用に適している。そのような界面活性剤は、欧州特許出願公開第708171号明細書に記載されている。
洗浄剤の別の例は、例えば欧州特許出願公開第271262号明細書(LZ-Adibis)に記載されているような、ステアリン酸のようなカルボン酸によって変性された硫化アルカリ土類金属ヒドロカルビルフェナート及び欧州特許出願公開第750659号明細書(Chevron)に記載されているようなフェノラートである。
洗浄剤は、低TBN(すなわち、50未満のTBN)、中間TBN(すなわち、50〜150のTBN)又は高TBN(すなわち、150よりも大きい(例えば、150〜500)TBN)を有する。“TBN”(全塩基価)はASTM D2896によって測定される。
本発明は、少なくとも150mgKOH/g、好ましくは少なくとも175mgKOH/g、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも245mgKOH/gの塩基価を有する少なくとも1つの過塩基性金属洗浄剤を必要とする。
【0019】
また、洗浄剤は、少なくとも2つの界面活性剤群、例えばフェノール、スルホン酸、カルボン酸、サリチル酸及びナフテン酸からなる群を含んでもよく、過塩基化プロセスの際に2又は3以上の異なる界面活性剤群を添加したハイブリッド材料の製造によって得てもよい。
ハイブリッド材料の例は、界面活性剤フェノール及びスルホン酸の過塩基性カルシウム塩、界面活性剤フェノール及びカルボン酸の過塩基性カルシウム塩、界面活性剤フェノール、スルホン酸及びサリチル酸の過塩基性カルシウム塩、及び界面活性剤フェノール及びサリチル酸の過塩基性カルシウム塩である。
「界面活性剤の過塩基性カルシウム塩」とは、油不溶性の金属塩の金属カチオンが本質的にカルシウムカチオンである過塩基性洗浄剤を意味する。少量の他のカチオンは、油不溶性の金属塩中に存在してもよいが、油不溶性の金属塩中に典型的には少なくとも80モル%、より典型的には少なくとも90モル%、例えば少なくとも95モル%のカチオンがカルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、例えばカチオンがカルシウム以外の金属である界面活性剤の塩の過塩基性洗浄剤の製造における使用により誘導される。また、好ましくは、界面活性剤の金属塩は、カルシウムである。
好ましくは、ハイブリッド洗浄剤のTBNは、少なくとも300であり、例えば少なくとも350であり、より好ましくは少なくとも400mgKOH/gであり、最も好ましくは400〜600mgKOH/gの範囲であり、例えば500mgKOH/gまでである。
【0020】
少なくとも2つの過塩基性金属化合物が存在する場合、任意の適した質量割合で用いてもよく、好ましくは1つの過塩基性金属化合物に対する他の金属過塩基性化合物の質量割合は、5:95〜95:5、例えば90:10〜10:90、より好ましくは20:80〜80:20、特に70:30〜30:70、有利には60:40〜40:60の範囲である。
ハイブリッド材料の特別な例としては、例えば国際公開第97/46643号パンフレット、第97/46644号パンフレット、第97/46645号パンフレット、第97/46646号パンフレット及び第97/46647号パンフレットに記載されているものである。
また、洗浄剤は、例えばカルシウムアルキルフェナート及びカルシウムアルキルサリチラートの硫化及び過塩基性混合物であってもよく、その例としては、欧州特許出願公開第750659号明細書に記載されている。すなわち、
硫化及び過度にアルカリ化されたアルカリ土類アルキルサリチレート-アルキルフェナート型潤滑油用清浄分散性添加剤であって、
a)前記アルキルサリチラート-アルキルフェナートのアルキル置換基は、炭素数が12〜40、好ましくは18〜30の直鎖アルキル基が35重量%〜85重量%の割合であり、炭素数が9〜24、好ましくは12の分枝アルキル基を最大65重量%含み、
b)前記アルキルサリチラート-アルキルフェナート混合物のアルキルサリチラートの割合は、少なくとも22モル%、好ましくは少なくとも25モル%であり、
c)全体としてアルキルサリチラート-アルキルフェナートに対するアルカリ土類塩基のモル割合は、1.0〜3.5である。
過塩基性金属洗浄剤は、好ましくは1〜10000ppm、好ましくは100〜1000ppm、より好ましくは250〜500ppmの処理量で燃料油に添加される。
【0021】
過塩基性洗浄剤は、担体液(例えば、溶液又は分散系として)との混合物であってもよい。そのような濃厚物は、金属洗浄剤を留出燃料油のようなバルク燃料油に組み入れるための手段として便利であり、前記組み入れは、技術的に公知の方法によって行ってもよい。また、前記濃厚物は、必要に応じて他の燃料添加剤を含んでもよく、好ましくは担体液中の溶液に、活性成分を基準として、好ましくは1〜75質量%、より好ましくは2〜60質量%、最も好ましくは5〜50質量%の添加剤を含む。担体液の例としては、炭化水素溶媒、例えばナフサ、灯油、潤滑油、ディーゼル燃料油及び暖房用油のような石油フラクション、芳香族フラクション、例えば商品名「SOLVESSO」で市販されているもののような芳香族炭化水素、ヘキサノール及び高級アルカノールのようなアルコール、ナタネメチルエステルのようなエステル及びヘキサン及びペンタンのようなパラフィン炭化水素及びイソパラフィンなどの有機溶媒が挙げられる。もちろん、担体液は、添加剤及び燃料油との適合性を考慮して選択されなければならない。
洗浄剤は、技術的に公知のもののような他の方法によってバルク燃料油に組み入れてもよい。補助添加剤が必要な場合、補助添加剤は、本発明の金属化合物と同時に、又は異なるときにバルク燃料油に組み入れてもよい。
洗浄剤は、例えば以下のような技術的に公知の1以上の補助添加剤と組み合わせて用いてもよい:低温流動性向上剤、ワックス沈降防止剤、分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、曇り防止剤、乳化破壊剤、金属活性低下剤、消泡剤、セタン価向上剤、補助溶媒、パッケージ相溶化剤、他の潤滑添加剤、殺虫剤及び帯電防止添加剤。
【0022】
(潤滑油)
好ましくは、潤滑油は、ASTM D2896で決定される70mgKOH/g未満、好ましくは60mgKOH/g未満、より好ましくは50mgKOH/g未満、最も好ましくは35〜45mgKOH/gの全塩基価を有する。
所望の全塩基価は、適切な量の上述の過塩基性洗浄剤を添加することによって達成できる。40の塩基価を有する潤滑油は、例えば塩基価が100である過塩基性洗浄剤を40%の処理量で用いることによって生成できる。
また、潤滑油は、少なくとも1つの分散剤又は少なくとも1つの耐摩耗剤を含んでもよい。
【0023】
(分散剤)
分散剤は、潤滑油の主な機能が洗浄剤システムによって酸の中和を促進することである潤滑油の用の添加剤である。
注目すべきクラスの分散剤は「無灰」であり、金属含有(すなわち、灰形成)材料と異なり、燃焼時に実質的に灰を形成しない非金属有機材料を意味する。無灰分散剤は、極性頭部を有する長鎖炭化水素を含み、極性は、例えばO、P又はN原子を含むことによってもたらされる。前記炭化水素は、油容性を与える親油性基であり、例えば40〜500個の炭素原子を有する。このように、無灰分散剤は、分散される粒子と結合できる官能基を有する油容性ポリマー炭化水素骨格を含む。
無灰分散剤の例としては、スクシンイミド、例えばポリイソブテンコハク酸無水物、及びホウ酸化されていても、又はホウ酸化されていなくてもよいポリアミン縮合生成物が挙げられる。
分散剤は、潤滑油の質量を基準として、0〜10.0質量%、好ましくは0.5〜6.0質量%、より好ましくは1.0〜5.0質量%の範囲の割合で使用してもよい。
【0024】
(耐摩耗添加剤)
潤滑油は、少なくとも1つの耐摩耗添加剤を含んでもよい。ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩は、公知のクラスの耐摩耗添加剤を構成する。ジヒドロカルビルジチオリン酸金属の金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅であってもよい。亜鉛塩が好ましく、好ましくは潤滑油の合計質量を基準として、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.5〜1.3質量%の範囲で用いられる。亜鉛塩は、公知の方法に従って、通常は1以上のアルコール又はフェノールとP25との反応によって最初にジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成させ、生成したDDPAを次に亜鉛化合物で中和することによって、調製され得る。例えば、ジチオリン酸は、一級アルコールと二級アルコールとの混合物を反応させることによって、製造できる。あるいは、特性が全て二級であるヒドロカルビル基と、特性が全て一級であるヒドロカルビル基との両方を含む複数のジチオリン酸が調製できる。亜鉛塩を製造するために、塩基性又は中性の亜鉛化合物のいずれもが用いられ得るが、オキシド、ヒドロキシド及びカーボネートが最も一般的に用いられる。市販の添加剤は、中和反応において過剰量の塩基性亜鉛化合物を使用するために、過剰量の亜鉛を含む場合が多い。
【0025】
好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式によって表わすことができる:
[(RO)(R1O)P(S)S]2Zn
(式中、R及びR1は、1〜18個、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する同一又は異なるヒドロカルビル基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、アルカリール基及び脂環式基のような基などが挙げられる。)
R基及びR1基として特に好ましいのは、炭素数が2〜8個のアルキル基である。このように、前記基は、例えばエチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸における炭素原子の総数(すなわち、R及びR1)は、一般に5又はそれ以上であろう。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み得る。
耐摩耗添加剤は、潤滑油の質量を基準として、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜1.3質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%の範囲の割合で使用してもよい。
【0026】
(船舶用又は定置ディーゼルエンジン)
エンジンは、2ストローク又は4ストロークディーゼルエンジンであってもよい。そのようなエンジンは、様々な船舶で見られ、また定置用途でも見られる。
4ストロークエンジンの中でも、特に適したエンジンは、250bhpを越えるパワー出力を有するものであり、特に600hbpを超える、例えば1000bhpを超える出力を有するものである。特に適しているのは、180mmよりも大きい寸法のシリンダー内径及び180mmよりも大きいピストンストロークを有する、より好ましくは240mmよりも大きい内径及び290mmよりも大きいストロークを有する、例えば320mmよりも大きい内径及び320mmよりも大きいストロークを有するものであり、430mmよりも大きい内径及び600mmよりも大きいストロークを有する最も大きなエンジンを含む。
2ストロークエンジンの中でも、特に適したエンジンは、200bhpを越える、より好ましくは1000bhpを超えるパワー出力を有するものである。特に適しているのは、240mmよりも大きい、例えば400又は500mmよりも大きい内径及び400mm又は500mmよりも大きい、例えば1000mmよりも大きいストロークを有するエンジンである。そのような大きい2ストロークエンジンには、船舶用途で使用される「クロスヘッド」タイプのエンジンが含まれる。
【実施例】
【0027】
以下の実施例を参照して、ほんの一例として本発明を説明する。
試験は、Bolnes 3(1) DNL 190シングルシリンダー試験エンジンを用いて行った。試験は、1.35g/kWhのシリンダー潤滑油供給速度で96時間、110kWの平均パワー出力を有する500rpmのエンジンスピードを用いて実施した。
試験は、以下を用いて行った:
1)重油A(硫黄含量3.1重量%)と70BN船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油;及び
2)塩基価が250である367ppmの過塩基性カルシウムフェナート洗浄剤を含む重油A(硫黄含量3.1重量%)と40BN船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油。
試験結果を以下に示す。

【0028】
また、試験1及び2の摩耗パラメータを図1及び2にそれぞれ示す。y軸は、シリンダーライナーの高さ(mm)を0〜300mmの範囲で示し、x軸は、摩耗(μm)を0〜100μmの範囲で示す。
データは、燃料が過塩基性洗浄剤を含む限り、40mgKOH/gの塩基価を有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油が高硫黄燃料で作動する船舶用ディーゼルエンジンで使用できることを示している。さらに、摩耗は、高硫黄燃料で作動する船舶用ディーゼルエンジンにおいて、70mgKOH/gの塩基価を有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油の使用によって生じるよりも少ない。このように、本発明は、エンジンを作動させる燃料の硫黄含量が高い場合であっても、低塩基価(すなわち、70よりも小さい)を有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油の使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】試験1の摩耗パラメータを示す図である。
【図2】試験2の摩耗パラメータを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶又は定置ディーゼルエンジンを作動させる方法であって、実質的に一定の供給量で前記エンジンに供給される1つのシリンダー潤滑油で前記エンジンを潤滑し、前記シリンダー潤滑油から利用できるよりも多くの塩基を必要とする硫黄レベルを有する燃料で前記エンジンを作動させる場合に、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい過塩基性洗浄剤を少なくとも1つ前記燃料に添加する、前記方法。
【請求項2】
その硫黄レベルが1.5%よりも多い場合に、塩基価が150mgKOH/gよりも大きい過塩基性洗浄剤を少なくとも1つ前記燃料に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シリンダー潤滑油の全塩基価(TBN)が70未満である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記過塩基性金属洗浄剤が過塩基性金属フェナート、過塩基性金属スルホナート、過塩基性金属サリチラート又は過塩基性金属ハイブリッド洗浄剤から選択され、過塩基性金属ハイブリッド洗浄剤が好ましくは過塩基性金属フェナート-スルホナート洗浄剤又は過塩基性金属フェナート-スルホナート-サリチラート洗浄剤から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記金属がアルカリ土類金属、好ましくはカルシウムである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記過塩基性金属洗浄剤の全塩基価が175mgKOH/gよりも多く、好ましくは200mgKOH/gよりも多く、より好ましくは245mgKOH/gよりも多い、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記シリンダー潤滑油の全塩基価が60mgKOH/g未満、好ましくは50mgKOH/g未満、より好ましくは35〜45mgKOH/gである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
1〜10000ppm、好ましくは100〜1000ppm、より好ましくは250〜500ppmの処理量で、前記過塩基性金属洗浄剤を前記燃料に添加する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記燃料の硫黄レベルが2%よりも多く、好ましくは2.5%よりも多く、より好ましくは3%よりも多い、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
船舶又は定置ディーゼルエンジンのピストンリングの摩耗又はシリンダーライナーの摩耗を防止するための、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−146161(P2007−146161A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317101(P2006−317101)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】