説明

船舶推進機の制御装置及び船舶推進機

【課題】サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。
【解決手段】船舶推進機の制御装置は、船舶推進機の上下方向の傾斜角度の調整を駆動装置で行う調整装置と、調整装置の駆動制御を行なう制御装置52と、制御装置52に備えられ傾斜角度の限度値を記憶する記憶部78と、制御装置52と通信可能に接続できるサービスツール100とを有し、制御装置52は、サービスツール100から限度値の設定が可能であり、限度値に達した場合、駆動装置を停止する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サービスツールの接続により故障原因を推定することが可能な船舶推進機の制御装置及び船舶推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機などの船舶推進機では、操作装置によってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行い、またチルト及びトリム操作が可能になっている。チルト操作は停船中や船体の陸揚げ時などに船外機を水面上にチルトアップして上昇させるものであり、トリム操作は船体と船外機の傾斜角度(トリム角)を調整して船体の走行姿勢を変化させるものである。
【0003】
このように船舶推進機は、様々なサイズの船舶に取付け可能に設定されているため、船舶の船体形状によっては船外機を最大チルトアップ位置まで上昇させると船舶推進機の一部、例えば船舶推進機の前面上部やハンドル等が船体と干渉する虞があるために、船舶推進機の傾斜角度を設定でき、その設定位置以上の傾斜を不可能としたものがある(特許文献1参照)。また、過去の運転データを記憶し、サービスツールにより記憶された運転データを読み出して表示し、表示された運転データに基づいて診断し、エンジンの故障原因を推定したりメンテナンスのための点検を行うものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003-285796号公報
【特許文献2】特開2004-36420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の船舶推進機では、過去の運転データを記憶し、これを表示できるが、さらに推進機を船舶から取り外してエンジンを燃料噴射型のエンジンに交換したり、新機能を追加することなどがある。このため、エンジンのメンテナンスやセッティングに対する重要度が増え、サービススタッフがサービスツールを接続してトリム及びチルト操作を行うことがあるが、この際にメンテナンスやセッティングを行う環境に応じてチルトリミット値を設定しないとチルトアップしたときに船外機の一部が船体と干渉する虞がある。
【0005】
この発明は、このような現状を考慮したものであって、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い船舶推進機の制御装置及び船舶推進機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
船舶推進機の上下方向の傾斜角度の調整を駆動装置で行う調整装置と、
前記調整装置の駆動制御を行なう制御装置と、
前記制御装置に備えられ前記傾斜角度の限度値を記憶する記憶部と、
前記制御装置と通信可能に接続できるサービスツールとを有し、
前記制御装置は、
前記サービスツールから前記限度値の設定が可能であり、
前記限度値に達した場合、前記駆動装置を停止する制御を行うことを特徴とする船舶推進機の制御装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記制御装置は、
前記傾斜角度設定許可範囲を記憶する記憶部と、
前記限度値が前記傾斜角度設定許可範囲であることを判定する判定部とを有することを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記制御装置は、前記船舶推進機のエンジンが回転していることを検出した場合は前記限度値の設定を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記制御装置は、前記記憶した限度値を前記記憶部の複数の領域に記憶し、この複数の領域に記憶された限度値が一致していることを判断する設定許可部を有することを特徴と する請求項1に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
前記設定許可部は、前記限度値の設定操作時、前記傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データを前記サービスツールに送信することを特徴とする請求項4に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
前記設定許可部は、前記限度値の設定操作時、前記限度値が前記傾斜角度設定許可範囲外であることを判定した場合に、表示装置へ表示信号を送信することを特徴とする請求項4に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、
前記制御装置は、エンジンが回転している状態で、前記船舶推進機が所定角度以上に傾斜された場合、エンジン回転数を低下させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、
複数の異なる前記限度値を設定可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、
前記サービスツールの操作により前記記憶部に記憶した前記限度値を初期化可能であることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、
前記制御装置は、エンジン回転数が所定値以上で、且つシフトを前進または後進に入れた状態において、前記傾斜角度が所定値以上となった場合はエンジンを停止することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、
エンジン回転数に応じて使用する前記限度値を変更することを特徴とする請求項8に記載の船舶推進機の制御装置である。
【0018】
請求項12に記載の発明は、
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載された制御装置を備えることを特徴とする船舶推進機である。
【発明の効果】
【0019】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0020】
請求項1に記載の発明では、サービスツールから船舶推進機の上下方向の傾斜角度の限度値の設定が可能であり、限度値に達した場合、駆動装置を停止する制御を行うことで、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて限度値を設定することができ、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。また、サービスツールによって限度値を設定することでサービススタッフによる作業に限定することができ、任意のユーザにより限度値が設定されることを防止できる。
【0021】
請求項2に記載の発明では、船舶推進機の制御装置に記憶部と判定部を有しているので、他の制御装置を追加することなく簡易なシステム構成でトリム調整機能を達成することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明では、船舶推進機のエンジンが回転していることを検出した場合は限度値の設定を禁止することで、エンジンの回転により限度値の設定が不安定になることを防ぐことができる。
【0023】
請求項4に記載の発明では、記憶した限度値を記憶部の複数の領域に記憶し、この複数の領域に記憶された限度値が一致していることを判断することで、限度値を複数の領域に記憶し読み出して記憶された複数の値が一致していることを判断して確実に限度値が設定されたことを確認することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明では、限度値の設定操作時、傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データをサービスツールに送信し、注意を促すことで作業ミスを防ぐことができ、船舶推進機が上方へ操作されるときに船舶推進機の一部が船体と干渉することを防止できる。
【0025】
請求項6に記載の発明では、限度値の設定操作時、限度値が傾斜角度設定許可範囲外であることを判定した場合に、表示装置へ表示信号を送信することで、船舶推進機が上方へ操作されるときに船舶推進機の一部が船体と干渉することを防止できる。
【0026】
請求項7に記載の発明では、エンジンが回転している状態で、船舶推進機が所定角度以上に傾斜された場合、エンジン回転数を低下させる制御を行う。
【0027】
請求項8に記載の発明では、複数の異なる限度値を設定可能であり、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて複数の異なる限度値を設定することで、より確実に船外機の一部が船体と干渉することを防止でき、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。
【0028】
請求項9に記載の発明では、サービスツールの操作により記憶部に記憶した限度値を初期化可能であり、任意のユーザにより限度値が初期化されることを防止できる。
【0029】
請求項10に記載の発明では、エンジン回転数が所定値以上で、且つシフトを前進または後進に入れた状態において、傾斜角度が所定値以上となった場合はエンジンを停止することで、船舶推進機が上方へ操作されるときに船舶推進機の一部が船体と干渉することを防止できる。
【0030】
請求項11に記載の発明では、エンジン回転数に応じて使用する限度値を変更することで、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて限度値を変更して設定することで、例えば船外機の仕様に対応してより確実に船外機の一部が船体と干渉することを防止でき、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。
【0031】
請求項12に記載の発明では、船舶推進機が請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載された制御装置を備えることで、船舶推進機のメンテナンスやセッティングを行う環境に応じて限度値を設定することができ、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。また、サービスツールによって限度値を設定することでサービススタッフによる作業に限定することができ、任意のユーザにより限度値が設定されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の船舶推進機の制御装置及び船舶推進機の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。図1はこの発明に係る船舶推進機を船舶に搭載した状態の斜め後方から眺めた斜視図、図2は船舶に取り付けられる船舶推進機の左側面図である。
【0033】
この実施の形態は、船舶推進機として船外機、船内外機などに適用できるが、この実施の形態では船外機3を示している。例えば、船舶1の船体2には、後部に位置するトランサム2aに船外機3がブラケット装置4を介して装着される。また、船体2には、略中央部に操舵室5があり、操舵席6が設置されると共に、操舵ハンドル10が設けられる。そして、操舵席6の側方には、リモコン装置13が備わる。リモコン装置13は、船舶前進方向に対し左側に位置する操作レバー11と、操作レバー11のレバー位置を検出するためのレバーポジションセンサ12を備える。レバーポジションセンサ12は、例えばポテンショメータで構成される。船外機3は、操作レバー11に電気的に接続され、この操作レバー11によって船外機3のシフト駆動装置27及びスロットル駆動装置28の操作を行う。
【0034】
すなわち、操船者の操作レバー11によってシフト駆動装置27によるシフト切替及びスロットル駆動装置28によるスロットルの開度を調整し、船舶1の航走速度や加減速等の推力制御を行う。操作レバー11は、図2に示すように、中央位置のときシフトは中立(N)になり、それより前側に倒すと前進(F)シフト、後側に倒すと後進(R)シフトに切替わる。前進(F)シフトでさらに操作レバー11を前に倒すと、スロットルがF全閉からF全開まで徐々に開く。後進(R)シフトでさらに操作レバー11を後側に倒すと、スロットルがR全閉からR全開まで徐々に開く。これにより、操船者は、前・後進時それぞれスロットルを開閉操作して推力操作ができる。
【0035】
船外機3は、図2に示すように、排気ガイド14を備え、この排気ガイド14の上方にエンジン15が設置される。排気ガイド14の下方にはオイルパン16が配置されると共に、この船外機3のエンジン15、排気ガイド14及びオイルパン16の周囲はカウリング17よって覆われる。このエンジン15は、クランク軸18を略垂直に配置した縦型のエンジンである。
【0036】
オイルパン16の下部にはドライブ軸ハウジング19が設置される。排気ガイド14、オイルパン16及びドライブ軸ハウジング19内にはドライブ軸20が略垂直に配置され、その上端部がクランク軸18の下端部に連結される。ドライブ軸20はドライブ軸ハウジング19内を下方に向かって延び、ドライブ軸ハウジング19の下部に設けられたギヤケース21内のベベルギヤ22及びプロペラ軸23を介してプロペラ24を駆動するように構成される。
【0037】
ギヤケース21内には遠隔操作によってプロペラ軸23の回転方向を正・逆または中立状態に切り換えるシフト装置25が設けられる。このシフト装置25からはシフトロッド26が上方に向かって延び、シフト駆動装置27によって操作される。
【0038】
この船外機3に搭載されるエンジン15は、例えばシリンダヘッド29、シリンダブロック30及びクランクケース31等を組み合わせて構成された水冷式の4サイクル4気筒エンジンである。エンジン15の最前部に配置されるクランクケース31の後方にはシリンダブロック30が配置される。また、シリンダブロック30の後方にはシリンダヘッド29が配置される。
【0039】
ブラケット装置4は、主にスイベルブラケット32及びトランサムブラケット33から構成され、スイベルブラケット32は船外機3に、トランサムブラケット33は船体2のトランサム2aにそれぞれ固定される。スイベルブラケット32は左右一対のトランサムブラケット33間に架設された支持軸34を介して上下方向に傾動可能に軸支され、このスイベルブラケット32内に操舵軸35が鉛直方向に、且つ回動自在に軸支される。また、この操舵軸35の上下端にアッパーマウントブラケット36及びロアーマウントブラケット37がそれぞれ回動一体に設けられる。そして、アッパーマウントブラケット36にはステアリングブラケット38が設けられ、図示しないケーブル等によって操舵ハンドル10に連結される。
【0040】
一方、排気ガイド14の前部には左右一対のアッパーマウントユニット39が設けられ、アッパーマウントブラケット36に連結される。また、ドライブ軸ハウジング19の両側部には一対のロアーマウントユニット40が設けられ、ロアーマウントブラケット37に連結される。そして、船外機3は操舵ハンドル10の操作によってブラケット装置4に対し操舵軸35を中心に左右に操舵可能になると共に、支持軸34を中心に上下向方にトリム及びチルト操作が可能になる。
【0041】
ここで、チルト操作とは停船中や船体2の陸揚げ時などに船外機3を水面上に上昇させるものであって、トリム操作とは船体2と船外機3の角度(トリム角)を調整して船体2の走行姿勢を変化させるものである。この実施の形態に示す船外機3は、例えば最下位置から上方に向かって20°前後のトリム角度及び完全トリム上方位置からさらに上方に向かって76°前後のチルト角度を有する。このトリム角度及びチルト角度は、トリムチルト装置41による油圧装置42によって油圧制御される。このトリムチルト装置41が船外機3を上下方向に駆動する駆動装置を構成する。
【0042】
トリムチルト装置41は、操船者が船外機3のトリム及びチルト操作を遠隔操作するものであり、トリムチルト操作スイッチ46を操作することにより作動される。トリムチルト操作スイッチ46やメインスイッチ45は、例えば船舶1の計器パネルなどに設けられる表示装置44やリモコン装置13などと共に、操船者が操作しやすい場所に設けられる。また、図2に示すように、船舶1の外部からも操作ができるように、トリムチルト操作スイッチ47は船外機3にも設けられる。
【0043】
また、船体2と船外機3との相対位置、一般的には相対角度、すなわち船外機3のトリム角度及びチルト角度を検出する傾斜角検出センサ48が、例えば、ブラケット装置4に設けられる。
【0044】
傾斜角検出センサ48は、図3に示すように構成される。図3(a)は船外機3がダウン状態、図3(b)は船外機3がアップ状態をそれぞれ示す。傾斜角検出センサ48は、主に例えば固定側であるトランサムブラケット33に設けられた例えば可変抵抗やホール素子等の回動検出素子49と、この回動検出素子49に回動自在に設けられたレバー50と、可動側であるスイベルブラケット32に設けられた凸部51とから構成される。レバー50の自由端部は、図示しないスプリング等で凸部51に常時付勢されて当接している。船外機3が例えばチルトアップされ、これによりスイベルブラケット32が支持軸34を介して上方向に傾動すると、この傾動に伴って凸部51が移動し、レバー50が回動検出素子49を軸に回動してその回動量、すなわち船外機3の傾斜角信号が出力される。
【0045】
次に、トリムチルト装置41について、図4及び図5に基づいて説明する。図4はトリムチルト装置41の回路図であり、図5はトリムチルト装置41を含む船外機3の全体の制御装置52のシステム図である。
【0046】
図4に示すように、船舶1や船外機3に設けられたトリムチルト操作スイッチ46,47のUP側とDOWN側とは、それぞれ駆動リレー53に結線され、船外機3を上下に傾動させる動力手段である油圧装置42の動力源となる駆動モータ54を駆動する。船舶1側のトリムチルト操作スイッチ46は駆動モータ54と、この駆動モータ54の動力源であるバッテリ55(制御装置52の電源も兼ねる)との間に配置され、さらにトリムチルト操作スイッチ46とバッテリ55との間にはイグニッションスイッチ56が設けられる。また、駆動モータ54とトリムチルト操作スイッチ46,47との間には制御装置52によって開閉操作される制御リレー57が配置される。
【0047】
図5に示すように、制御装置52には、船外機3の内外の各機器から各種の情報が入力される。具体的には、例えばエンジン15の図示しないカム軸の信号(カム角信号)がカム軸信号検出センサ58から入力回路59を経由して制御装置52内の演算部60(CPU、RAM・ROM)に入力される。エンジン15の回転数信号がクランク角信号検出センサ61から、図示しないエンジン吸気装置を構成するスロットルの開度がスロットル開度検出センサ62から、吸気圧や大気圧がそれぞれ吸気圧力検出センサ63や大気圧力検出センサ64から、吸気の温度やエンジン15の温度(冷却水温度)、排気の温度がそれぞれ吸気温度検出センサ65やエンジン温度検出センサ66、排気温度検出センサ67から演算部60に入力される。
【0048】
さらに、傾斜角検出センサ48からは船外機3の傾斜角信号が、リモコン装置13に設けられるレバーポジションセンサ12からはシフト位置信号及びスロットル位置信号がそれぞれ演算部60に入力される。また、トリムチルト操作スイッチ46,47からは、トリム及びチルト操作を行うアップ信号やダウン信号がそれぞれ演算部60に入力される。
【0049】
制御装置52に入力された各機器からの情報は演算部60内で適宜演算処理され、出力回路71を介して船外機3の内外の各機器に出力される。具体的には、例えば、トリムチルト装置41の制御リレー57を操作して駆動モータ54を駆動する。他には、例えば、燃料の噴射量情報をインジェクタ72に、吸気空気量の調整信号をアクチュエータ73の図示しないステップモータやソレノイドバルブ等に、エンジン回転数信号や各機器の異常を伝達する信号を表示装置44のモニタ、ブザー、タコメータ等に、燃料の供給量情報をフューエルポンプ74にそれぞれ出力する。さらに、演算部60は出力回路71から点火装置75(電源回路76が接続される)を介してイグニッションコイル77に点火信号を出力する。
【0050】
このように、船外機3は、シフト駆動装置27及びスロットル駆動装置28の操作が可能で、かつトリム及びチルト操作が可能であり、エンジン15の過去の運転データが制御装置52のEEPROM等の記憶部78に記憶される。この船外機3の制御装置は、サービスツール100を、コネクタ80を介して接続し、演算部60、通信インターフェース79によって記憶部78に記憶された運転データを読み出して表示し、表示された運転データに基づいて診断することができる。
【0051】
ところで、船舶1は、例えば、停船中や船体2の陸揚げ時などに、チルト操作によって船外機3を水面上に上昇させ、エンジン15のメンテナンスやセッティングすることがある。このような場合、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて船外機3の傾斜角度の限度値を設定しないと、チルトアップしたときに船外機3の一部が船体2と干渉する虞がある。
【0052】
そこで、サービススタッフがサービスツール100を接続してトリム及びチルト操作を行う場合、チルトアップしたときに船外機3の一部が船体2と干渉しないように船外機3の最大チルトアップ位置を以下に述べるチルトアップ停止位置設定方法により設定することができる。図6は船外機の制御装置の全体構成を示す図、図7は限度値設定を示す図、図8はサービスツールによる限度値記憶処理を説明するブロック図、図9は限度値設定のフローチャートである。
【0053】
図6に示すように、船外機3の制御装置52にコネクタ80を介してサービスツール100が通信可能に接続され、このサービスツール100と制御装置52との間で通信よって情報の授受を行う。また、制御装置52にコネクタ80を介してサービス用リモコン装置200が通信可能に接続され、リモコン装置200のリモコンメインスイッチ201を入力した状態で、リモコントリムチルト操作スイッチ202の操作によって制御装置52を介して調整装置Aを構成する駆動装置であるトリムチルト装置41を駆動制御し、船外機3の上下方向の傾斜角度の調整を行う。このように、リモコントリムチルト操作スイッチ202の操作によってトリム及びチルト操作を行い、船外機3の上下方向の傾斜角度の調整を行うことができるが、船外機3のトリムチルト操作スイッチ47によってもトリム及びチルト操作を行うことができ、また船舶1に備えられるトリムチルト操作スイッチ46によってもトリム及びチルト操作を行うことができる。
【0054】
サービスツール100は、モニタ画面100aに限度値設定モードの情報などを表示し、記憶スイッチ101の操作によって、図7に示すように、船外機3が傾斜する動作範囲Aにおいて限度値、例えば65°を設定して制御装置52に備えられる記憶部78に記憶可能である。この船外機3においては、予め記憶部78に船外機3が傾斜する動作範囲Aが記憶されている。この動作範囲Aは、例えば、下限角度を-5°とし、上限角度を76°とし、トリムとチルトの間の途中角度を20°とし、下限角度-5°から途中角度20°の範囲がトリム領域で、途中角度20°から上限角度を76°の範囲がチルト領域となっている。ここで、下限角度の-5°とは、鉛直状態からさらに船尾板側に5°回動した位置である。途中角度20°は、リミッタ設定下限角度である。すなわち、例えば最下位置から上方に向かって20°前後のトリム領域及び完全トリム上方位置からさらに上方に向かって76°前後のチルト領域を有する。このチルト領域の範囲で限度値、例えば65°を設定して記憶部78に記憶する。また、リセットスイッチ102の操作により記憶部78に記憶した限度値、例えば65°の設定を初期化して消去することが可能である。この実施の形態では、限度値、例えば65°を設定しているが、チルト領域であれば、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じてチルトアップしたときに船外機3の一部が船体と干渉しないように設定することができ、限度値に達した場合、制御装置52は駆動装置であるトリムチルト装置41の駆動を停止する制御を行う。
【0055】
次に、サービスツール100による限度値記憶及び限度値解除について説明すると、図8に示すように、演算部60は、判定部60a、設定許可部60bを有し、限度値記憶時は、図8(a)に示すように作動し、限度値解除時は、図8(b)に示すように作動する。
【0056】
限度値記憶時は、図8(a)に示すように、リモコンメインスイッチ201を入力して限度値設定モードとしてリモコントリムチルト操作スイッチ202を操作することで、船外機3がトリムチルト装置41による油圧装置42によって油圧制御されてチルトアップする。この限度値設定モードの情報、例えばトリムチルト装置41、傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角など全ての情報が制御装置52に入力される。
【0057】
そして、サービスツール100の操作により限度値記憶オペコードを入力することで、制御装置52からの情報、例えばチルトアップの角度、限度値、記憶完了、エラーなどが送信されてモニタ画面100aに表示可能になる。
【0058】
判定部60aでは、サービスツール100の記憶スイッチ101の操作で入力される限度値が設定される動作範囲Aの判定が行われ、さらに傾斜角度設定許可範囲、例えばチルト領域であることを判定する。限度値が傾斜角度設定許可範囲内であるときには、設定許可部60bによって記憶部78に記憶し、傾斜角度設定許可範囲外であるときには、設定許可部60bによってサービスツール100にエラーの情報を送信する。また、設定許可部60bでは、限度値の設定操作時、傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信し、注意を促すことで作業ミスを防ぐことができ、船外機3が上方へ操作されるときに船外機3の一部が船体と干渉することを防止できる。また、設定許可部60bでは、限度値の設定操作時、限度値が傾斜角度設定許可範囲外であることを判定した場合に、表示装置44へ表示信号を送信することで、船外機3が上方へ操作されるときに船外機3の一部が船体と干渉することを防止できる。また、設定許可部60bでは、エンジン15が回転している状態で、船外機3が所定角度以上に傾斜された場合、エンジン回転数を低下させる制御を行う。
【0059】
このように、サービスツール100の操作により記憶部78には、動作範囲Aで、さらに傾斜角度設定許可範囲内において限度値を設定して記憶可能である。サービススタッフは、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて限度値を設定することができ、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。また、サービスツール100によって限度値を設定することでサービススタッフによる作業に限定することができ、任意のユーザにより限度値が設定されることを防止できる。また、限度値が設定される傾斜角度設定許可範囲、例えばチルト領域を判定し、チルト域での限度値の設定に限定することで、例えば作業ミスによるトリム域での設定により航走時のトリム調整ができなくなることを防ぐことができる。
【0060】
また、設定許可部60bは、船外機3のエンジン15が回転している状態を検出した場合は限度値の設定を禁止し、サービスツール100にエラーの情報を送信する。このように、船外機3のエンジン15が回転している状態を検出した場合は限度値の設定を禁止し、エラー表示することで、エンジン15の回転により限度値の設定が不安定になることを防ぐことができる。
【0061】
また、設定許可部60bは、記憶部78に記憶した限度値を複数の領域に記憶し、複数の領域に記憶された限度値を読み出して記憶された複数の限度値が一致していることを判断する。限度値設定処理の実行だけでは限度値が設定されたはずであり、実際に設定されていることが確認できないが、限度値を複数の領域に記憶し、この記憶された複数の限度値を読み出して記憶された複数の限度値が一致していることを判断することで、確実に限度値が設定されたことが確認できる。
【0062】
また、設定許可部60bは、設定完了後は完了メッセージとともに記憶した限度値をサービスツール100に送信する。限度値が記憶されたことが確実でも、その限度値が意図した限度値かどうか分からないが、設定完了後は完了メッセージとともに記憶した限度値をサービスツール100に送信し、限度値を表示することで、その設定した限度値が意図した値かどうか分かり、サービススタッフによる二重チェックができる。
【0063】
また、記憶部78には、複数の異なる限度値を設定可能であり、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて複数の異なる限度値を設定することで、より確実に船外機3の一部が船体と干渉することを防止でき、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。また、エンジン回転数に応じて使用する限度値を変更することができ、メンテナンスやセッティングを行う環境に応じて限度値を変更して設定することで、例えば船外機3の仕様に対応してより確実に船外機3の一部が船体と干渉することを防止でき、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。
【0064】
限度値解除時は、図8(b)に示すように、リモコンメインスイッチ201を入力して運転モードとすることで、限度値記憶時と同様に、限度値設定モードの全ての情報が制御装置52に入力される。また、制御装置52からの情報、例えばチルトアップの角度、限度値、初期化完了、エラーなどが送信されてモニタ画面100aに表示可能になる。
【0065】
そして、サービスツール100の操作により限度値解除オペコードを入力することで、制御装置52からの情報、例えばチルトアップの角度、限度値、初期化完了、エラーなどが送信されてモニタ画面100aに表示可能になる。
【0066】
判定部60aでは、サービスツール100のリセットスイッチ102の操作で、記憶部78に記憶した限度値を初期化が可能であるか否か判定を行う。初期化が可能である場合には、設定許可部60bによって記憶部78に記憶した限度値を初期化し、初期化完了が送信されてモニタ画面100aに表示可能になる。
【0067】
このように、サービスツール100の操作により記憶部78に記憶した限度値を初期化可能であり、サービスツール100によって限度値を初期化することでサービススタッフによる作業に限定することができ、任意のユーザにより限度値が初期化されることを防止できる。限度値を初期化できない場合には、設定許可部60bによってサービスツール100にエラーの情報を送信する。
【0068】
また、設定許可部60bは、記憶部78に記憶した限度値を初期化し、この初期化した限度値を複数の領域に記憶し、この記憶した複数の領域の限度値を読み出して記憶された複数の値が一致していることを判断する。初期化した限度値を複数の領域に記憶し、この複数の領域に記憶した限度値を読み出して記憶された複数の値が一致していることを判断することで、確実に限度値が初期化されたことが確認できる。
【0069】
また、設定許可部60bは、初期化完了後は完了メッセージとともに初期化された限度値をサービスツール100に送信し、限度値を表示することで、その初期化した限度値が意図した値かどうか分かり、サービススタッフによる二重チェックができる。
【0070】
次に、サービスツール100の操作により記憶部78に、動作範囲Aにおいて限度値を設定して記憶する限度値設定を、図9に基づいて説明する。
【0071】
ステップa1において、サービススタッフがサービスツール100を制御装置52に接続したか否か判定を行う。
【0072】
ステップa2において、サービスツール100が接続されていると、船外機3が限度値設定モードであるか否かの判定を行い、限度値設定モードにすることで船外機3のチルトアップ操作が行われるようになる。
【0073】
ステップa3において、限度値設定モードである場合に、エンジン15が停止状態であるか否かを判定する。その理由としては、通常エンジン15作動中に船外機3のチルトアップ操作は行われないためである。
【0074】
ステップa4において、エンジン15が停止状態であると判定されると、傾斜角検出センサ48からの傾斜角を検出して動作範囲か否か判定することで、傾斜角検出センサ48が正常、すなわち故障していないか否かを判定する。
【0075】
ステップa5において、傾斜角検出センサ48が正常、すなわち故障していないと判定されると、傾斜角度設定許可範囲、すなわちチルト領域内であるか否かを判断する。
【0076】
ステップa6において、チルトアップ角度が傾斜角度設定許可範囲、すなわちチルト領域内であると、サービスツール100の操作で傾斜角度の限度値を入力し、記憶スイッチ101のスイッチ操作を行うことによる限度値を読み込み、記憶部78に記憶する。
【0077】
ステップa7において、記憶部78に記憶した限度値を複数の領域に記憶し、この記憶した複数の領域の限度値を読み出して記憶された複数の値が一致していることを判断し、設定完了後は完了メッセージとともに記憶した限度値をサービスツール100に送信し、限度値を表示する。
【0078】
また、設定許可部60bは、限度値の設定操作時、チルト領域でも傾斜角検出センサ48から得られる推進機3の傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信することができ、このフローチャートを図10に示す。
【0079】
ステップb1において、限度値の設定操作時、傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度がチルト領域であると、限度値設定が開始可能である。
【0080】
ステップb2において、傾斜角検出センサ48から得られる角度センサ電圧が、角度注意判定電圧以上であるか否かの判定を行う。すなわち、傾斜角検出センサ48から得られる角度センサ電圧が、チルト領域の途中角度20°から上限角度の76°の範囲であっても、角度注意判定電圧が限度値の例えば65°以上であるか否かの判定を行う。
【0081】
ステップb3において、傾斜角検出センサ48から得られる角度センサ電圧が、角度注意判定電圧以上である場合には、角度注意判定が成立する。
【0082】
ステップb4において、角度注意判定が成立すると、角度注意判定情報の注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信する。サービスツール100は、角度注意判定情報を制御装置52から受信したら限度値の設定画面上に注意を促すメッセージの表示を行う。
【0083】
このように、限度値の設定操作時、チルト領域でも船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信し、注意を促すことで作業ミスを防ぐことができ、船外機3の一部が船体と干渉することを防止できる。
【0084】
また、設定許可部60bは、限度値の設定操作時、エンジン15が回転している状態を検出した場合、またはシフトが入力状態を検出した場合は警告メッセージの表示データをサービスツール100に送信することができ、このフローチャートを図11に示す。
【0085】
ステップc1において、限度値の設定操作時、傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度がチルト領域であると、限度値設定が開始可能である。
【0086】
ステップc2において、クランク角信号検出センサ61から得られるエンジン15の回転数信号に基づきエンジン15が回転している状態であるか否かを判定する。
【0087】
ステップc3において、エンジン15が回転している状態である場合には、シフトがニュートラルか否かの判定を行う。
【0088】
ステップc4において、シフトがニュートラルでなく、前進位置または後進位置に入力されている場合には、シフトイン警告判定が成立する。
【0089】
ステップc5において、シフトイン警告判定が成立すると、シフトイン警告判定情報の注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信する。サービスツール100は、シフトイン警告判定情報を制御装置52から受信したら限度値の設定画面上に注意を促すメッセージの表示を行う。
【0090】
このように、エンジン15が回転している状態を検出した場合、またはシフトが入力している状態を検出した場合は警告メッセージの表示データをサービスツール100に送信し、注意を促すことでエンジン15が回転している、またはシフトが入っている状況でのトリム及びチルト操作の回避を促すことができる。
【0091】
また、設定許可部60bは、サービスツール100が接続されている場合、エンジン15が回転している状態でトリム及びチルト操作により傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合はスロットル駆動装置28のスロットル開度を規制する。また、エンジン15が回転かつシフトが入力状態でトリム及びチルト操作により傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合はエンジン15を停止することができ、このフローチャートを図12に示す。
【0092】
ステップd1において、限度値の設定操作時、傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度がチルト領域であると、限度値設定が開始可能である。
【0093】
ステップd2において、限度値設定が開始されると、傾斜角検出センサ48から得られる角度センサ電圧が、スロットル規制電圧以上であるか否かの判定を行う。
【0094】
ステップd3において、スロットル規制電圧以上であると、クランク角信号検出センサ61から得られるエンジン15の回転数信号に基づきエンジン15が回転している状態であるか否かを判定する。
【0095】
ステップd4において、エンジン15が回転している状態である場合には、シフトがニュートラルか否かの判定を行う。
【0096】
ステップd5において、シフトがニュートラルでなく、前進位置または後進位置に入力されている場合には、スロットル規制判定が成立する。
【0097】
ステップd6において、スロットル規制判定が成立すると、スロットル開度をスロットル規制開度に制限する。
【0098】
ステップd7において、スロットル規制判定情報の注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信する。サービスツール100は、スロットル規制判定情報を制御装置52から受信したら限度値の設定画面上に注意を促すメッセージの表示を行う。
【0099】
ステップd8において、ステップd4において、シフトがニュートラルでない場合には、エンジンストップ判定が成立する。
【0100】
ステップd9において、エンジンストップ判定が成立すると、エンジン15の全気筒の点火、燃料噴射を停止する処理を行う。
【0101】
ステップd10において、エンジンストップ判定情報の注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信する。サービスツール100は、エンジンストップ判定情報を制御装置52から受信したら限度値の設定画面上に注意を促すメッセージの表示を行う。
【0102】
このように、エンジン15が回転している状態でトリム及びチルト操作により船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合はスロットル駆動装置28のスロットル開度を規制し、またはエンジン15が回転かつシフトが入力状態でトリム及びチルト操作により船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合はエンジン15を停止し、エンジン15が回転している、またはシフトが入っている状況でのトリム及びチルト操作の回避を促すことができる。
【0103】
また、設定許可部60bは、サービスツール100が接続されている場合、エンジン回転数が所定以上である場合は、トリム及びチルト操作により傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度が所定以上となった場合は、トリム及びチルト動作を停止することができ、このフローチャートを図13に示す。
【0104】
ステップe1において、限度値の設定操作時、傾斜角検出センサ48から得られる船外機3の傾斜角度がチルト領域であると、限度値設定が開始可能である。
【0105】
ステップe2において、限度値設定が開始されると、クランク角信号検出センサ61から得られるエンジン15の回転数信号に基づきエンジン15が回転している状態で、エンジン回転数がトリム及びチルト動作を停止するチルトアップ動作停止判定のエンジン回転数以上であるか否かを判定する。
【0106】
ステップe4において、エンジン回転数がトリム及びチルト動作を停止するチルトアップ動作停止判定のエンジン回転数以上である場合には、チルトアップ動作停止判定が成立する。
【0107】
ステップe5において、チルトアップ動作停止判定が成立すると、トリムチルト装置41による油圧装置42の駆動を停止し、船外機3のチルトアップを停止する。
【0108】
ステップe6において、チルトアップ動作停止判定情報の注意を促すメッセージの表示データをサービスツール100に送信する。サービスツール100は、チルトアップ動作停止判定情報を制御装置52から受信したら限度値の設定画面上に注意を促すメッセージの表示を行う。
【0109】
このように、エンジン回転数が所定以上である場合は、トリム及びチルト操作により船外機の傾斜角度が所定以上となった場合は、トリム及びチルト動作を停止し、エンジン15が回転している状況でのトリム及びチルト操作の回避を促すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明は、サービスツールの接続により故障原因を推定することが可能な船舶推進機の制御装置及び船舶推進機に適用でき、サービススタッフが正確な作業を遂行し易い。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】船舶推進機を船舶に搭載した状態の斜め後方から眺めた斜視図である。
【図2】船舶に取り付けられる船舶推進機の左側面図である。
【図3】傾斜角検出センサを説明する図である。
【図4】トリムチルト装置の回路図である。
【図5】船舶推進機の全体の制御装置のシステム図である。
【図6】船舶推進機の制御装置の全体構成を示す図である。
【図7】限度値設定を示す図である。
【図8】サービスツールによる限度値記憶処理を説明するブロック図である。
【図9】限度値設定のフローチャートである。
【図10】限度値の設定操作時、チルト領域でも傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すフローチャートである。
【図11】限度値の設定操作時、エンジンが回転している状態を検出した場合、またはシフトが入力状態を検出した場合は警告メッセージの表示データをサービスツールに送信するフローチャートである。
【図12】エンジンが回転している状態で傾斜角度が所定以上となった場合はスロットル駆動装置のスロットル開度を規制し、エンジンが回転かつシフトが入力状態でト傾斜角度が所定以上となった場合はエンジンを停止するフローチャートである。
【図13】エンジン回転数が所定以上である場合は、傾斜角度が所定以上となった場合は、トリム及びチルト動作を停止するフローチャートである。
【符号の説明】
【0112】
1 船舶
2 船体
3 船外機
4 ブラケット装置
11 操作レバー
12 レバーポジションセンサ
13 リモコン装置
14 排気ガイド
15 エンジン
18 クランク軸
27 シフト駆動装置
28 スロットル駆動装置
41 トリムチルト装置
42 油圧装置
46,47 トリムチルト操作スイッチ
45 メインスイッチ
48 傾斜角検出センサ
52 制御装置
58 カム軸信号検出センサ
59 入力回路
60 演算部
60a 判定部
60b 設定許可部
61 クランク角信号検出センサ
62 スロットル開度検出センサ
63 吸気圧力検出センサ
64 大気圧力検出センサ
65 吸気温度検出センサ
66 エンジン温度検出センサ
67 排気温度検出センサ
69 ストップスイッチ
70 設定スイッチ
78 記憶部
100 サービスツール
101a モニタ画面
200 リモコンメインスイッチ
201 リモコントリムチルト操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進機の上下方向の傾斜角度の調整を駆動装置で行う調整装置と、
前記調整装置の駆動制御を行なう制御装置と、
前記制御装置に備えられ前記傾斜角度の限度値を記憶する記憶部と、
前記制御装置と通信可能に接続できるサービスツールとを有し、
前記制御装置は、
前記サービスツールから前記限度値の設定が可能であり、
前記限度値に達した場合、前記駆動装置を停止する制御を行うことを特徴とする船舶推進機の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記傾斜角度設定許可範囲を記憶する記憶部と、
前記限度値が前記傾斜角度設定許可範囲であることを判定する判定部とを有することを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記船舶推進機のエンジンが回転していることを検出した場合は前記限度値の設定を禁止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記記憶した限度値を前記記憶部の複数の領域に記憶し、この複数の領域に記憶された限度値が一致していることを判断する設定許可部を有することを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項5】
前記設定許可部は、前記限度値の設定操作時、前記傾斜角度が所定以上となった場合に注意を促すメッセージの表示データを前記サービスツールに送信することを特徴とする請求項4に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項6】
前記設定許可部は、前記限度値の設定操作時、前記限度値が前記傾斜角度設定許可範囲外であることを判定した場合に、表示装置へ表示信号を送信することを特徴とする請求項4に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、エンジンが回転している状態で、前記船舶推進機が所定角度以上に傾斜された場合、エンジン回転数を低下させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項8】
複数の異なる前記限度値を設定可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいづれか1項に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項9】
前記サービスツールの操作により前記記憶部に記憶した前記限度値を初期化可能であることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、エンジン回転数が所定値以上で、且つシフトを前進または後進に入れた状態において、前記傾斜角度が所定値以上となった場合はエンジンを停止することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項11】
エンジン回転数に応じて使用する前記限度値を変更することを特徴とする請求項8に記載の船舶推進機の制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載された制御装置を備えることを特徴とする船舶推進機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−230534(P2008−230534A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75955(P2007−75955)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】