説明

色処理装置、色処理方法およびプログラム

【課題】色信号の色変換を行う際に、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元数を問わない拡張性の高い色域圧縮を行うことができる色処理装置等を提供すること。
【解決手段】所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像情報取得部21と、特色成分を保存する色成分保存部51と、CMYKの色成分からなる入力色信号をL色信号に色変換を行う第一色変換部23と、色域圧縮を行うための関数を記憶する関数記憶部24と、第一色変換部で色変換が行われたL色信号と墨量保存部で保存されていた墨量(K)を色域圧縮し圧縮色信号とする色域圧縮部25と、圧縮色信号をCMYKの色成分からなる出力色信号に変換する第二色変換部26とを備えている色処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色信号を色変換する色処理装置、色処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、あるカラー出力デバイス等の色信号を用いて、別のカラー出力デバイス等に出力を行うような場合、両者間で異なる色空間における色信号を使用していると、色信号の色変換を行う必要がある。
【0003】
このとき、カラー出力デバイス等の出力色信号が、入力色信号よりも次元の大きい色信号である場合がある。例えば、入力色信号がLであり、出力色信号が、プリンタのようにCMYKである場合などが考えられる。
しかし、このような場合は、入力色信号と出力色信号は次元が異なることから1対1には対応せず、出力色信号の色成分の組合わせは複数存在する。そのためどのような色処理を行うかが問題となる。
【0004】
この場合に、出力色信号の色成分の1つを先に決定し、入力色信号の色成分と当該先に決定した出力色信号の色成分から、全ての出力色信号の色成分を決定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、色変換の際に、墨量であるKを保存したい場合がある。
例えば、CMYKを色材とする印刷機と、CMYKを色材(印刷機とは異なる種類の色材)とするプリンタのカラーマッチングを行う際に、印刷側のK版を極力保持し、かつ、色の再現性を一致させたい場合などである。
このような場合に、K単色で量を変化させたときのLの値を一致させることで、K版保持を行なう色処理方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
更に、印刷機のK版の保持、Lの忠実再現およびプリンタのCMYKの総量規制という制約を全て満たすように、LとKを交互に探索することで、出力色信号を探索する色処理方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−125210号公報
【特許文献2】特開2002−152543号公報
【特許文献3】特開2004−112269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
色信号の色変換を行う際に、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元数を問わない拡張性の高い色域圧縮を行うことができる色処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明が適用される色処理装置は、所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像信号取得部と、入力色信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存する色成分保存部と、入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)する第一色変換部と、第一の色変換後の色信号の色成分に保存色成分を加えた色成分を用いて、第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とする色域圧縮部と、圧縮色信号を、圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)する第二色変換部とを有することを特徴とする。
【0010】
ここで、色域圧縮を行うために用いられ、色域の属する色空間に保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を記憶する関数記憶部を更に備え、色域圧縮部は、関数記憶部から関数を読み出し、関数と高次元色域外郭との交点を求め、交点に色域圧縮することが好ましい。
【0011】
また、関数記憶部に記憶される関数は、高次元色域内に設定された圧縮中心点を通るものであることが好ましく、色域圧縮部にて用いられる関数は、圧縮対象の点の高次元色空間中での位置により変更されることが好ましく、色域圧縮部にて用いられる関数は、保存色成分の色成分保存率により変更されることが好ましい。
更に、色域圧縮部は、出力色信号の成分の合計が、所定の総量規制値に収まるように色域圧縮することが好ましい。
【0012】
一方、本発明が適用される色処理方法は、所定の入力色信号からなる画像信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存し、入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)し、第一の色変換後の色信号の色成分に保存色成分を加えた色成分を用いて、第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とし、圧縮色信号を、圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)することを特徴とする。
【0013】
ここで、色域圧縮は、色域の属する色空間に保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を取得し、関数と高次元色域外郭との交点を求め、交点を色域圧縮後の点とすることにより色域圧縮を行うことが好ましい。
【0014】
一方、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、所定の入力色信号からなる画像信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存する機能と、入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)する機能と、第一の色変換後の色信号の色成分に保存色成分を加えた色成分を用いて、第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とする機能と、圧縮色信号を、圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)する機能とを実現させることを特徴とする。
【0015】
ここで、圧縮色信号とする機能に用いられる色域圧縮は、色域の属する色空間に保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を取得し、関数と高次元色域外郭との交点を求め、交点を色域圧縮後の点とすることにより色域圧縮を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、色信号の色変換を行う際にカラー出力デバイス等の出力色信号の次元数を問わない拡張性の高い色域圧縮を行うことができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元を問わず、少ない探索回数で出力色信号が決定できる色域圧縮を行うことが可能な色処理装置が得られる。
更に、請求項3に記載の発明によれば、この構成を用いない場合に比べて簡便な手段で、色域圧縮を行うことができる色処理装置が得られる。
また更に、請求項4に記載の発明によれば、入力色信号の色成分のうち保存したい色成分が存在した場合に、この構成を用いない場合に比べて、より柔軟に対応できる色処理装置が得られる。
また更に、請求項5に記載の発明によれば、要求される画質設計に対し、この構成を用いない場合に比べて、より柔軟に対応できる色処理装置が得られる。
また更に、請求項6に記載の発明によれば、カラー出力デバイス等の出力色信号の成分に所定の総量規制値が存在する場合においても、少ない探索回数で出力色信号が決定できる色処理装置が得られる。
【0017】
一方、請求項7に記載の発明によれば、色信号の色変換を行う際に、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元数を問わない拡張性の高い色域圧縮を行うことができる。
また、請求項8に記載の発明によれば、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元を問わず、少ない探索回数で出力色信号が決定できる色域圧縮を行うことが可能な色処理方法が得られる。
【0018】
一方、請求項9に記載の発明によれば、色信号の色変換を行う際に、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元数を問わない拡張性の高い色域圧縮を行う場合に有効なプログラムが得られる。
また、請求項10に記載の発明によれば、カラー出力デバイス等の出力色信号の次元を問わず、少ない探索回数で出力色信号が決定できる色域圧縮を行うことが可能なプログラムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
カラー出力デバイス等が再現できる色の範囲は色域と呼ばれ、L表色系などの測色的色空間に代表されるデバイスに依存しない色空間で表すことができる。
【0021】
図27は、色域の概念を説明した図である。
図27(a)は、色域をL色空間において、L軸、a軸、b軸を用いた3次元表示により模式的に表した図である。
図中で示した色域の範囲内が、カラー出力デバイス等が再現できる色の範囲ということになる。
また図27(b)のようにaを1つの次元でまとめ、L軸、a(b)軸の2次元表示により色域を表現することもあり、a(b)軸をC軸と呼ぶこともある。
図27(b)において、L(b)色空間における、ある点が表す色をカラー出力デバイス等で再現するとき、点が色域外である場合は、色域内の点に移動させる必要がある。このような処理は、色域圧縮(または、色域マッピング)と呼ばれている。
【0022】
図28は、色域圧縮の処理を説明した図である。
(b)色空間において、色域外である点Pを色域内の点P’に色域圧縮により移動させる例を示している。
【0023】
かかる色域圧縮を行う公知の方法として、例えば、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点を圧縮中心点に向かって圧縮する方法がある。
【0024】
図29は、圧縮中心点を設定することにより色域圧縮を行う場合の一例を示した説明図である。
図29(a)に示すように、色域内にある圧縮中心点を設定し、圧縮中心点と圧縮対象の点である色域外の点Pを直線で結び、この直線と色域外郭との交点を色域圧縮後の点P’とする。
この場合、図29(b)に示すように、色差が最小となるように色域圧縮を行う方法と、階調性を重視して圧縮後の色が滑らかにつながるように色域圧縮する方法がある。
【0025】
また、圧縮中心点を設定しないで色域圧縮をする方法もある。
【0026】
図30は、圧縮中心点を設定しない方法により色域圧縮を行う場合の一例を示した説明図である。
この方法によれば、圧縮対象の点である色域外の点Pを色域外郭との距離が最小となる点へ向かって圧縮を行い、色域外郭との交点を色域圧縮後の点P’とする。
【0027】
また、図31は、圧縮中心点を設定しない方法により色域圧縮を行う場合の他の一例を示した説明図である。
この方法では、明度(L)を保存しつつ、圧縮対象の点である色域外の点Pを最も色域に近い点へ向かった圧縮を行い、色域外郭との交点を色域圧縮後の点P’とする。
【0028】
色域圧縮のバリエーションは上記のようにいくつか考えられており、入力色信号を色域圧縮した後に、カラー出力デバイス等の出力色信号(例えば、ディスプレイならばRGB、プリンタならばCMY、またはCMYKなど)に色変換して色再現を行うといった処理が、一般的な色処理方法として定着している。
【0029】
このとき、カラー出力デバイス等の出力色信号が、入力色信号よりも次元の大きい色信号である場合は、入力色信号と出力色信号は次元が異なることから1対1には対応せず、出力色信号の色成分の組合わせは複数存在する。そのため例えば、出力色信号の色成分の1つを先に決定し、入力色信号の色成分と当該先に決定した出力色信号の色成分から、全ての出力色信号の色成分を決定する方法がある。
【0030】
図1は、このような場合の色処理装置の一例であり、入力色信号の色成分がLであり、出力色信号の色成分がCMYKである場合に、色変換を行う色処理装置の機能を示すブロック図である。
また図2は、このときの色処理装置10の動作を示したフローチャートである。
【0031】
図1に示した色処理装置10では、例えば外部のコンピュータ装置(図示せず)から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像情報取得部11を備えている。また色域圧縮を行うための関数を記憶する関数記憶部12、色域圧縮を行い圧縮色信号とする色域圧縮部13を備えている。更に、墨量(K)を決定する墨量生成部14、圧縮色信号と墨量(K)から所定の出力色信号に変換する色変換部15を備えている。
【0032】
画像情報取得部11では、前述の通り、外部のコンピュータ装置等から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する(ステップ101)。ここでは入力色信号としてLの色信号を取得する。
【0033】
関数記憶部12から図示しない制御部等により色域圧縮を行うための関数を読み出し(ステップ102)、色域圧縮部13で、今まで説明した図29〜図31に示したような方法で色域圧縮を行う(ステップ103)。
次に、出力色信号の色成分であるCMYKへの変換を行うが、L色信号より高次元なCMYK色信号を一意に決定するために、一般的には、墨量(K)を先に決定し、LとKからCMYを算出する手順で行うことが多い。
Kの決定は、墨量生成部14において、次に述べるようなLとKの対応づけで行うことができる。
まず代表色信号Lから対応する調整K量を算出し、そして代表色信号Lと調整K量の複数組から、最適K量を予測するための色モデリングを行う。このとき、部分色域内の色から色域全体の外挿予測を行うことにより、自然な色再現が可能な最適K量を予測できる(ステップ104)。
色変換部15では、LとKからCMYへの変換を行う。この色変換は、例えば、CMYKとLの対応関係を学習したニューラルネットワークによる色変換モデルなどを用いることができ、その逆変換モデル(LK→CMYへの変換)により、CMYを算出すればよい(ステップ105)。
最後に画像信号として出力色信号が出力される(ステップ106)。
【0034】
上記のような色処理装置の場合は、L色空間での色域圧縮を1回行うことで十分に対応することができる。
更には、CMYKの総量に規制がある場合(例えば、CMYK色材のそれぞれが、0%〜100%の網点面積率で表され、その総量値C+M+Y+K≦320%などの規制がかかった場合など)も上記色処理装置で対応できる。
即ち、CMYKの総量規制値の範囲内で色域を十分に活用できるKを決定すればよく、色域圧縮はCMYK総量規制値内で表現できる最大限の色域内への圧縮をすればよい。
【0035】
また、色処理の際に、墨量であるK(K版)を保存したい場合がある。
このような場合に、K単色で量を変化させたときのLの値を一致させることで、K版保持を行ないつつ、色変換を行う色処理装置がある。
【0036】
図3は、このような場合の色処理装置の一例であり、入力色信号の色成分が印刷機等のCMYKであり、出力色信号がプリンタ等の色信号のCMYKである場合に、K版を極力保持しつつ、色変換を行う色処理装置の機能を示すブロック図である。
また図4は、このときの色処理装置20の動作を示したフローチャートである。
【0037】
図3に示した色処理装置20では、例えば外部のコンピュータ装置(図示せず)から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像情報取得部21を備えている。また墨量(K)を保存する墨量保存部22を備えている。更にCMYKの色成分からなる入力色信号をL色信号に色変換を行う第一色変換部23、色域圧縮を行うための関数を記憶する関数記憶部24、第一色変換部23で色変換が行われたL色信号を色域圧縮し圧縮色信号とする色域圧縮部25、圧縮色信号と保存してあった墨量(K)からCMYKの色成分からなる出力色信号に変換する第二色変換部26を備えている。
【0038】
画像情報取得部21では、前述と同様に外部のコンピュータ装置等から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する(ステップ201)。ここでは入力色信号としてCMYKの色成分からなる色信号を取得する。
【0039】
墨量保存部22では、印刷機等のK版と略等価な出力をプリンタ等で行うために、印刷機等のK版を極力保存し、かつ、プリンタ等の特性に合わせるような処理が行われる(ステップ202)。
例えば、K単色で量を変化させたときのLの値を一致させることで、K版の保持を行なう。このようにして得られたKを、保存Kとする。
第一色変換部23では、印刷機等のCMYKに対応するLを算出する。これは前述のような色変換モデルを用いることで行えばよい(ステップ203)。
そして関数記憶部24から図示しない制御部等により色域圧縮を行うための関数を読み出し(ステップ204)、色域圧縮部25で、Lの色成分からなる色信号が色域外の場合に、プリンタ等の色域への圧縮が行われる(ステップ205)。
この圧縮後のL色成分と保存Kから、第二色変換部26でL→CMYの色変換が行われ、最終的にプリンタ等の色成分であるCMYKからなる出力色信号が得られ(ステップ206)、画像信号として出力される(ステップ207)。
【0040】
ここで、色域圧縮を行った後のLは、あくまでL色空間で再現可能であることを保証したもので、Kの値を考慮したものではない。
【0041】
図5は、L(b)色空間において、プリンタなどのカラー出力デバイスが再現可能な色域を表す説明図である。
図5(a)において、点Pは色域内のLであるが、Kの値によっては再現できない色である。
その理由は、図5(b)に示す通りKの値が変化すると再現できる色域が変化するためで、K=0では再現できるLであっても、K=50が入力された場合は色域外となる。
【0042】
一般にKの値は、Lを再現できる最大のKであるKmaxと、再現するのに最低限必要なKであるKminの間でなければならない。
このため、保存したいKがKmin≦K≦Kmaxの範囲にない場合は、最終的に算出されるCMYは、色信号として範囲外の値になってしまう。
つまりCMYK色信号がそれぞれ0%〜100%の網点面積率で表されている場合、CMYのいずれかが>100%またはCMYのいずれかが<0%となってしまう。
CMYが範囲外であるということは、Lでは色域内であってもLKとしてみた場合、色域外である(色再現できない)ということを意味する。
このようなことから、最終的に算出される色成分であるCMY値を範囲内にする微調整が必要となるが、出力色信号の色成分であるCMYK値のみで微調整的な後処理を行う方法は、問題の本質を解決するものではなく有効でない。
更には、プリンタ等にCMYK総量規制値が課せられている場合は、問題をより一層複雑化させる。
【0043】
この問題の解決方法として、印刷機等のK版の保持、Lの忠実再現、プリンタ等のCMYKの総量規制という制約を全て満たすように、LとKを交互に探索することで、出力色信号であるCMYを算出する方法が一例として考えられる。
【0044】
図6は、このような場合の色処理装置の一例であり、印刷機等の入力色信号の色成分がCMYKであり、プリンタ等の出力色信号の色成分がCMYKである場合に、色変換を行う色処理装置の機能を示したブロック図である。
また図7は、このときの色処理装置30の動作を示したフローチャートである。
【0045】
図6に示した色処理装置30は、図3に示した色処理装置20に対し、色材総量規制部31が加わっている。
図6における21〜26の処理は、図3における21〜26の処理と同様であるが、色材総量規制部31で色材の総量が所定の規制値を満たしているか否かの判断が行われる(ステップ307)。
所定の規制値を満たしている場合は、出力色信号としてそのまま出力を行うが(ステップ308)、満たしていない場合は、前回のLK値とは異なるLK値を算出し、再度色材の総量が所定の規制値を満たしているか否かの判断が行われることになる。
これを繰り返すことで、色再現可能なLKを算出するだけではなく、LK→CMYKの色変換を行った場合に、CMYK総量が、プリンタ等の総量規制値内となるような探索が行われる。
この場合、Kが適切かどうかを判定し、適切になるまでKの探索とLの探索を交互に繰り返すなどの処理が必要となる。
しかし、Lの色域圧縮と、Kmin≦K≦KmaxとなるKの探索を行う処理時間は膨大である。
【0046】
また、近年、RGBなどの特色成分を含んだCMYKよりも更に次元の高いCMYKRGBなどを出力色信号とするカラー出力デバイス等が主流になりつつある。
そのため、RGBなどの特色成分の保存を行うカラーマッチングの要求に耐え得る技術が必要となる。
しかしながら、上記のLの色域圧縮と、Kmin≦K≦KmaxとなるKの交互探索を行うような方法は、Kのみの保存を考慮したもので、特色成分が増えた場合に対応できる汎用化されたものではない。
更には、処理時間という観点からも、この方法を拡張することは困難である。
【0047】
そこで本実施の形態においては、以下のような方法により、上記問題を解決する。
なお、本実施の形態における以下の説明において、色域を表現する色空間をLとして、カラー出力デバイス等の出力色信号の色空間としてCMY(主要色成分)の全てと、KRGB(特色成分)のいずれか1つの色成分から構成されるものとして説明を行うが、本実施の形態の適用に関しては、色域を表現する色空間、および、カラー出力デバイス等の色成分はこれに限ったものではなく、また色信号の次元も問わないものとする。
【0048】
図8は、本実施の形態が適用される色処理装置の機能を示したブロック図である。
また図9は、このときの色処理装置40の動作を示したフローチャートである。
【0049】
図8に示した色処理装置40では、例えば外部のコンピュータ装置(図示せず)から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像情報取得部21を備えている。また墨量(K)を保存する墨量保存部22を備えている。更にCMYKの色成分からなる入力色信号をL色信号に色変換を行う第一色変換部23、色域圧縮を行うための関数を記憶する関数記憶部24、第一色変換部23で色変換が行われたL色信号と墨量保存部22で保存されていた墨量(K)を使用して色域圧縮し圧縮色信号とする色域圧縮部25、圧縮色信号をCMYKの色成分からなる出力色信号に変換する第二色変換部26を備えている。
【0050】
画像情報取得部21では、前述と同様に外部のコンピュータ装置等から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する(ステップ401)。ここでは入力色信号としてCMYKの色成分からなる色信号を取得する。
【0051】
墨量保存部22では、印刷機等のK版と略等価な出力をプリンタ等で行うために、印刷機等のK版を極力保存し、かつ、プリンタ等の特性に合わせるような処理が行われる(ステップ402)。
例えば、K単色で量を変化させたときのLの値を一致させることで、K版の保持を行なう。このようにして得られたKを、保存Kとする。
第一色変換部23では、印刷機等のCMYKに対応するLを算出する。これは前述のような色変換モデルを用いることで行えばよい(ステップ403)。
関数記憶部24から図示しない制御部等により色域圧縮を行うための関数を読み出し(ステップ404)、色域圧縮部25で、L色空間にKを軸として追加し、高次元色空間であるLK色空間を構成し、色域圧縮を行う(ステップ405)。
高次元色空間で探索を行うことで、図6における色域圧縮部25でのLの色域圧縮と、色材総量規制部31でのCMYK総量規制処理を同時に行うことができるが、詳しくは後述する。
この色域圧縮後のLから、第二色変換部26でL→CMYの色変換が行われ、最終的にプリンタ等の色成分であるCMYKからなる出力色信号が得られ(ステップ406)、画像信号として出力される(ステップ407)。
【0052】
図10は、高次元色空間での色域圧縮の一例を表した説明図である。
ここでは、高次元色空間であるLK色空間で、色域外である点Pを、色域内の点P’に向けて色域圧縮を行ったときの様子を示している。
なお、a(b)は説明の便宜上aとbをまとめたものなので、実質は4次元色空間における色域となる。
この場合、点PからL(b)に下ろした垂線と、L(b)面の交わるところが、L(b)だけから見ると色域内であることから、Kが不適切なため色域外となっていることがわかる。
【0053】
また、高次元色空間での色域圧縮は、高次元色域内となる点への写像であれば、どのようなものでもよいものとする。
【0054】
図11は、L(b)K色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう直線上で点を移動することで色域圧縮を行う場合の説明図である。
点P1から点P1’への色域圧縮、および点P2から点P2’への色域圧縮は、いずれも高次元色域内にある圧縮中心点を設定し、圧縮中心点と圧縮対象の点を直線で結び、この直線と色域外郭との交点を色域圧縮後の点としている。
実際には、例えば、圧縮中心点を(L,a,b,K)とし、以下で表される直線上の点を移動し、色域外郭との点を求めることで色域圧縮を行うことができる。
【0055】
【数1】



【0056】
ここで、tは直線を表すための媒介変数、(α,α,α,α)は圧縮中心点から圧縮対象の点に向かう方向ベクトルであるものとする。
数式1において、t=0のときに圧縮中心点を、t=1のときに圧縮対象点を表すものとすれば、tが0〜1の間に、数式1で表される直線と色域外郭との交点があるはずであり、その点を探索し、色域圧縮後の点とすればよい。
tを求める具体的な方法としては、CMYKとLの間の色変換モデルをFとした場合、
【0057】
【数2】



【0058】
と表すことができる。
その逆変換モデルであるF−1は、以下のように表される。
【0059】
【数3】



【0060】
tを変化させることでLを変化させ、数式3で算出されたCMYが色信号の範囲内となるtが色域内の点であり、その中で圧縮対象の点Pに最も近い点が、数式1で表される直線と色域の交点ということになる。
tの探索は例えば二分探索を用いることができるが、本実施の形態ではどのような探索を用いてもよいものとする。
従来のLの探索とKの探索とを分けて交互に行う探索法では、それぞれが収束するまで繰り返し行われていたが、本実施の形態では、高次元色空間で一挙に色域圧縮を行うため、少ない回数での探索でよい。
【0061】
更には、CMYKに総量規制がある場合は、数式3で得られるCMYが、
【0062】
【数4】



【0063】
を満たすようにtの探索を行えばよい(総量規制がある場合は、当然ながら、図11で示す色域形状よりも小さくなっているはずである)。
ここで、Tは出力色信号を使用するプリンタ等に課せられたCMYKの総量規制値であるものとする。
【0064】
圧縮方向は、圧縮対象の点の位置に応じて変化させることもできる。
【0065】
図12は、圧縮対象となる点の位置により、圧縮方向を変化させる場合の色域圧縮を説明する図である。
実際には、圧縮対象となる点の位置に応じて、色域圧縮を行う関数を変更することで行うことができる。
ここで、点P1から点P1’への色域圧縮は、Kを維持したまま色域圧縮を行う例である。また点P2から点P2’への色域圧縮は、LとKがバランスよく保存される色域圧縮を行う例を示したものである。
【0066】
また圧縮対象となる点の位置に応じて、圧縮中心点を変化させてもよい。
【0067】
図13は、圧縮対象となる点の位置により、圧縮中心点を変化させる場合の色域圧縮を表す説明図である。
この場合も実際には、圧縮対象となる点の位置に応じて、色域圧縮を行う関数を変更することで行うことができる。
点P1から点P1’への色域圧縮は、Kを維持したまま色域圧縮を行う例である。また点P2から点P2’への色域圧縮は、LとKがバランスよく保存される色域圧縮を行う例を示したものである。
【0068】
このように、Lの値やKの量に応じて、圧縮方向を変えることができる。
一方、再現しようとする色によっては、Kの保存よりも、見映えを一致させることを重視する場合がある。
【0069】
図14は、このような場合に、Lの再現性を重視するような色域圧縮を行った場合の説明図である。
ここでは、Lの値を変えずに、Kの値だけが変わる色域圧縮を行っている。L色域内で、Kの値が不適切であったため色域外となっている場合は、このような方法で色域圧縮することもできる。
【0070】
図15は、図14で示した色域圧縮を表した説明図において、L(b)K色空間からLK色空間に射影した図である。
図14で示した色域圧縮を別の視点で表すと、図15のようになる。
色域をLとKの広がりで表したものであり、このような視点でみれば、図15の圧縮の対象点は、Lを再現できる最大のK(=Kmax)を超えているために色域外になっていることがわかる。
【0071】
図16は、従来のLとKの探索を交互に繰り返す方法により色域圧縮を行った場合における、圧縮の対象の点PのLK色空間中での軌跡を表す説明図である。
点Pが図16のような位置にあるとき、従来は、Kmaxの他に、Lを再現するのに最低限必要なK(=Kmin)を算出して、Kmin≦K≦Kmaxの間となっているかの判定を行い、範囲外であれば、Kmax、Kminの値を参照しながら、色域圧縮前のKを極力保存したK(=保存K)を求め、保存Kと用いた場合に色域内になる探索を行っていた。
【0072】
一方、図17は、本実施の形態が適用される色処理装置で用いられている探索法による圧縮の対象の点PのLK色空間中での軌跡を表す説明図である。
この場合は、KmaxやKminを求めることなく、少ない探索回数で色域圧縮後の点P’を得ることができる。
【0073】
以上、圧縮中心点に向かう直線上を移動することによる高次元色空間での色域圧縮の方法の例を示したが、更に、本実施の形態では、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう曲線上を移動することによっても色域圧縮を行うことができる。
【0074】
図18は、L(b)K色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう曲線上を移動することで、色域圧縮を行う場合の説明図である。
この場合は、例えば、圧縮中心点を(L,a,b,K)とし、また曲線の構成は、数式1を変形させ、非線形性を持たせた以下のような式を用いればよい。
【0075】
【数5】



【0076】
ここで、tは媒介変数、関数f,f,f,fはそれぞれ、LKに対する非線形な関数である。
この関数は、例えば、
【0077】
【数6】



【0078】
などの2次関数で定義してもよいし(αは定数)、対数関数や指数関数などを用いてもよい。または、多項式を用いてもよい。単調で非線形であれば、どのようなものでも用いることが可能である。
数式5において、t=0のときに圧縮中心点を、t=1のときに圧縮対象の点である点Pを表すものとすれば、tが0〜1の間に、数式5の曲線と高次元色域との交点があるはずであり、その点を圧縮後の点P’とすればよい。
【0079】
またLKのそれぞれに対して色域圧縮を行う関数を変更することで、圧縮中心点までの曲線の形状を制御することができる。
【0080】
図19は、圧縮対象の点の位置に応じて曲線の形状を変化させ、色域圧縮を行う場合の説明図である。
図19に示すように、圧縮中心点を固定点としても、圧縮対象の点に応じて、Kの保存の度合いなどを制御することができる。
点P1から点P1’への色域圧縮は、Lの保存を重視し色域圧縮を行う例であり、また点P2から点P2’への色域圧縮は、Kの保存を重視した色域圧縮を行う例である。
【0081】
またKの保存率は、例えば、Lに対して、設計することもできる。
【0082】
図20は、Kの保存率をLに対して設計した一例を示す説明図である。
図20(a)では、Kの保存率をsとして、0≦s≦1(s=1のときに完全保存、s=0のときには保存しない)の範囲で、彩度を表すCとsの関係を示した図である。また、図20(b)は、同様に明度を表すLとsの関係を表した図である。
一般に、画質設計では、彩度の増加に従いKの量を小さくし、明度の低下に従いK量を大きくすることが多い。
図20で示した例は、このような設計方針をKの保存率に適用したもので、このようなグラフを参照しながら、色域圧縮を行う関数を変更し、図19に示すような制御を行うことができる。
【0083】
更に、本実施の形態が適用される色処理装置は、出力色信号が、CMYK色信号よりも高次元である場合に対しても適用することが可能である。
例えば、印刷機等がCMYKRGB色信号を有しており、それをCMYKRGB色信号を有するプリンタ等の色信号にカラーマッチングさせるような場合に使用できる。
【0084】
図21は、このような場合に、本実施の形態が適用される色処理装置の機能を示したブロック図である。
また図22は、このときの色処理装置50の動作を示したフローチャートである。
【0085】
図21に示した色処理装置50では、図8に示した色処理装置40の墨量保存部22の代わりに色成分保存部51を有している。
【0086】
画像情報取得部21では、前述と同様に外部のコンピュータ装置等から所定の入力色信号からなる画像信号を取得する(ステップ501)。ここでは入力色信号としてCMYKRGBの色成分からなる色信号を取得する。
【0087】
色成分保存部51では、印刷機等の特色成分であるKRGBの保存を行う(ステップ502)。
要求に応じて、重要視される色成分は異なるが、プリンタ等への入力として、印刷機等と略等価なKRGBを保存できるものとする。
Kの保存は、図8に示した色処理装置40の場合と同様に行うことができ、RGBに関しては、例えば、出力色信号を使用するプリンタ等で出力した場合の色相や彩度が一致するような保存を行えばよい。
【0088】
第一色変換部23では、印刷機の色信号であるCMYKRGBからLの算出を行う(ステップ503)。
変換は、数式2の場合と同様に、印刷機の色変換モデルをFpressとして、以下の式で行うことができる。
【0089】
【数7】



【0090】
関数記憶部24から図示しない制御部等により色域圧縮を行うための関数を読み出し(ステップ504)、色域圧縮部25では、LKRGBの7次元色空間での高次元な色域圧縮を行う(ステップ505)。
基本的な考え方は、図8に示した色処理装置40の場合と同様で、L色空間にKRGBの軸を追加した高次元色空間での色域圧縮である。
高次元色空間で探索を行うことで、色域圧縮部25でのLの色域圧縮と、CMYKRGB総量規制処理を同時に行うことができるが、詳しくは後述する。
この色域圧縮後のLから、第二色変換部26でL→CMYの色変換が行われ、最終的にプリンタ等の色成分であるCMYKRGBからなる出力色信号が得られ(ステップ506)、画像信号として出力される(ステップ507)。
【0091】
図23は、LKRGBの7次元色空間での色域圧縮を説明した図である。
軸を含めた図の描写は煩雑になるため、色空間の軸を記述せずに、LKRGB色空間内での色域圧縮の概念のみを示した。
例えば、ある圧縮中心点を設定し、圧縮中心点に向かう直線上を圧縮対象点の移動を行うことで高次元色域圧縮を行うことができる。
【0092】
この場合は、例えば、圧縮中心点を(L,a,b,K,R,G,B)とし、以下で表される直線上の点を移動することで行うことができる。
【0093】
【数8】



【0094】
数式1の場合と同様に、tは直線を表すための媒介変数、(α,α,α,α,α,α,α)は、圧縮中心点から圧縮対象点に向かう方向ベクトルであるものとする。
数式8において、t=0のときに圧縮中心点を、t=1のときに圧縮対象となる点Pを表すものとすれば、tが0〜1の間に、数式8の直線と色域との交点があるはずであり、その点を探索し、色域圧縮後の点P’とすればよい。
【0095】
この場合、プリンタ等の色変換モデルをFprinterとして、その逆変換モデルである以下の式を用いて、CMYが信号の範囲内となるようなtの探索を行えばよい。
【0096】
【数9】



【0097】
また、プリンタ等に総量規制がある場合は、数式4の場合と同様に、
【0098】
【数10】



【0099】
になるまで、tの探索を行えばよい。ここでTは出力色信号を使用するプリンタ等に課せられた総量規制値であるものとする。
【0100】
更に、本実施の形態では、圧縮中心点に向かう曲線上を移動することでも色域圧縮を行うことができる。
【0101】
図24は、LKRGBの7次元色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう曲線上を移動することで、色域圧縮を行う場合の説明図である。
この場合は、数式5の場合と同様に、以下の式で曲線を表すことができる。
【0102】
【数11】



【0103】
ここで、関数f,f,f,f,f,f,fはそれぞれ、LKRGBに対する非線形な関数である。
関数は数式6の場合と同様に、2次関数で定義してもよいし、対数関数や指数関数などを用いてもよい。または、多項式を用いてもよい。単調で非線形であれば、どのようなものでも用いることが可能である。
【0104】
また、色域圧縮を行う関数を変更することにより色域圧縮の方向等の制御をすることができる。
【0105】
図24において色域外の点P1から点P1’への色域圧縮は、Rの保存率を大きくしたい場合に、Rの値を極力保つように色域圧縮を行った例を示している。
このとき、曲線は、LKRGB色空間中のRの値が同じ超平面に沿うようにして設定すればよい。
また色域外の点P2から点P2’への色域圧縮は、Gの保存率を大きくしたい場合に、Gの値を極力保つような色域圧縮を行った例を示している。
このとき、曲線は、LKRGB色空間中のGの値が同じ超平面に沿うようにして設定すればよい。
同様に、Lを保存したい場合は、LKRGB色空間中でLを固定した超平面に沿うようにして、曲線を設定すればよい。
【0106】
また、KRGBそれぞれの保存率を、例えばLに対して設計し、色域圧縮を行う関数を変更して色域圧縮を制御することができる。
【0107】
図25は、RGBのそれぞれの保存率sを、Lに対して設計した一例を示す図である。
RGBの色成分の特色は、Kとは異なり、彩度が高く、中明度領域で多く活用されるので、図25に示すような設定をすることが好ましい。
【0108】
上記のように、色域圧縮を行った後は、図21における第二色変換部26において、圧縮色信号であるLKRGBから、CMYを算出する。
このCMYの算出は、数式9のプリンタ色変換モデルを用いればよい。このように算出されたCMYは、CMYKRGBが総量規制を満たし、かつ、印刷のKRGBを保存したものとなる。
プリンタ等の出力色信号が何次元になっても、同様に計算を行うことができるので、特に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)などの主要色成分の他に、K(ブラック)、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などの特色成分を有するカラー出力デバイス等の色域圧縮をする場合に有効な色処理装置が得られる。
【0109】
なお以上の説明において、圧縮対象の点の位置に応じて関数を変更するとは、圧縮対象の点の位置に応じて色処理装置中の関数記憶部において複数用意された関数の選択を行うような処理は勿論、関数記憶部から読み出された関数を圧縮対象の点の位置に応じて関数の形状や圧縮中心点を変化させるような場合も含むものとする。
【0110】
図26は、本発明の実施の形態が適用される色処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
図26に示す色処理装置60は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61と、記憶手段であるメインメモリ62と、外部との通信を行うための通信I/F64とを備える。ここで、CPU61は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、上述した各機能を実現する。また、メインメモリ62は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域である。また通信I/F64は、所定の色信号からなる画像信号の入出力を行う。
更に、色処理装置60は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)63や、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構65や、キーボードやマウス等の入力デバイス66等を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】入力色信号の色成分がLであり、出力色信号の色成分がCMYKである場合に、色変換を行う色処理装置の機能を示すブロック図である。
【図2】色処理装置10の動作を示したフローチャートである。
【図3】入力色信号の色成分が印刷機等のCMYKであり、出力色信号がプリンタ等の色信号のCMYKである場合に、K版を極力保持しつつ、色変換を行う色処理装置の機能を示すブロック図である。
【図4】色処理装置20の動作を示したフローチャートである。
【図5】L(b)色空間において、プリンタなどのカラー出力デバイスが再現可能な色域を表す説明図である。
【図6】印刷機等の入力色信号の色成分がCMYKであり、プリンタ等の出力色信号の色成分がCMYKである場合に、色変換を行う色処理装置の機能を示したブロック図である。
【図7】色処理装置30の動作を示したフローチャートである。
【図8】本実施の形態が適用される色処理装置の機能を示したブロック図である。
【図9】色処理装置40の動作を示したフローチャートである。
【図10】高次元色空間での色域圧縮の一例を表した説明図である。
【図11】L(b)K色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう直線上で点を移動することで色域圧縮を行う場合の説明図である。
【図12】圧縮対象となる点の位置により、圧縮方向を変化させる場合の色域圧縮を説明する図である。
【図13】圧縮対象となる点の位置により、圧縮中心点を変化させる場合の色域圧縮を表す説明図である。
【図14】Lの再現性を重視するような色域圧縮を行った場合の説明図である。
【図15】図14で示した色域圧縮を表した説明図において、L(b)K色空間からLK色空間に射影した図である。
【図16】従来のLとKの探索を交互に繰り返す方法により色域圧縮を行った場合における、圧縮の対象の点PのLK色空間中での軌跡を表す説明図である。
【図17】本実施の形態が適用される色処理装置で用いられている探索法による圧縮の対象の点PのLK色空間中での軌跡を表す説明図である。
【図18】L(b)K色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう曲線上を移動することで、色域圧縮を行う場合の説明図である。
【図19】圧縮対象の点の位置に応じて曲線の形状を変化させ、色域圧縮を行う場合の説明図である。
【図20】Kの保存率をLに対して設計した一例を示す説明図である。
【図21】本実施の形態が適用される色処理装置の機能を示したブロック図である。
【図22】色処理装置50の動作を示したフローチャートである。
【図23】LKRGBの7次元色空間での色域圧縮を説明した図である。
【図24】LKRGBの7次元色空間において、ある圧縮中心点を設定し、圧縮対象の点から圧縮中心点に向かう曲線上を移動することで、色域圧縮を行う場合の説明図である。
【図25】RGBのそれぞれの保存率を、Lに対して設計した一例を示す図である。
【図26】本発明の実施の形態が適用される色処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【図27】色域の概念を説明した図である。
【図28】色域圧縮の処理を説明した図である。
【図29】圧縮中心点を設定することにより色域圧縮を行う場合の一例を示した説明図である。
【図30】圧縮中心点を設定しない方法により色域圧縮を行う場合の一例を示した説明図である。
【図31】圧縮中心点を設定しない方法により色域圧縮を行う場合の他の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0112】
11,21…画像情報取得部、12,24…関数記憶部、13,25…色域圧縮部、14…墨量生成部、15…色変換部、22…墨量保存部、23…第一色変換部、26…第二色変換部、31…色材総量規制部、51…色成分保存部、61…CPU、62…メインメモリ、63…磁気ディスク装置、64…通信I/F、65…表示機構、66…入力デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の入力色信号からなる画像信号を取得する画像信号取得部と、
前記入力色信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存する色成分保存部と、
前記入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)する第一色変換部と、
前記第一の色変換後の色信号の色成分に前記保存色成分を加えた色成分を用いて、当該第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とする色域圧縮部と、
前記圧縮色信号を、当該圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)する第二色変換部と
を有することを特徴とする色処理装置。
【請求項2】
前記色域圧縮を行うために用いられ、前記色域の属する色空間に前記保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および当該高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を記憶する関数記憶部を更に備え、
前記色域圧縮部は、前記関数記憶部から前記関数を読み出し、前記関数と前記高次元色域外郭との交点を求め、当該交点に前記色域圧縮することを特徴とする請求項1に記載の色処理装置。
【請求項3】
前記関数記憶部に記憶される前記関数は、前記高次元色域内に設定された圧縮中心点を通るものであることを特徴とする請求項2に記載の色処理装置。
【請求項4】
前記色域圧縮部にて用いられる前記関数は、前記圧縮対象の点の前記高次元色空間中での位置により変更されることを特徴とする請求項2または3に記載の色処理装置。
【請求項5】
前記色域圧縮部にて用いられる前記関数は、前記保存色成分の色成分保存率により変更されることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の色処理装置。
【請求項6】
前記色域圧縮部は、前記出力色信号の成分の合計が、所定の総量規制値に収まるように色域圧縮することを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の色処理装置。
【請求項7】
所定の入力色信号からなる画像信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存し、
前記入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)し、
前記第一の色変換後の色信号の色成分に前記保存色成分を加えた色成分を用いて、当該第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とし、
前記圧縮色信号を、当該圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)する
ことを特徴とする色処理方法。
【請求項8】
前記色域圧縮は、前記色域の属する色空間に前記保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および当該高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を取得し、
前記関数と前記高次元色域外郭との交点を求め、
前記交点を色域圧縮後の点とすることにより色域圧縮を行うことを特徴とする請求項7に記載の色処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
所定の入力色信号からなる画像信号の色成分のうち少なくとも1つを、保存色成分として保存する機能と、
前記入力色信号を、色域の属する色空間と同じ色空間に属する色信号に変換(第一の色変換)する機能と、
前記第一の色変換後の色信号の色成分に前記保存色成分を加えた色成分を用いて、当該第一の色変換後の色信号を色域圧縮して圧縮色信号とする機能と、
前記圧縮色信号を、当該圧縮色信号の属する色空間とは異なる色空間に属する出力色信号に変換(第二の色変換)する機能と
を実現させるプログラム。
【請求項10】
前記圧縮色信号とする機能に用いられる前記色域圧縮は、前記色域の属する色空間に前記保存色成分の軸を加えた高次元色空間中で定義される圧縮対象の点、および当該高次元色空間中で定義される高次元色域とを通る関数を取得し、
前記関数と前記高次元色域外郭との交点を求め、
前記交点を色域圧縮後の点とすることにより色域圧縮を行うことを特徴とする請求項9に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−124888(P2008−124888A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307929(P2006−307929)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】