説明

色素増感型光電変換素子

【課題】複数の金属線を網目状に編まれてなる布状構造の作用極を有する光電変換素子において、光電変換特性を向上させる。
【解決手段】導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材8および第2基材9が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極5と、第1基材8または第2基材9の一方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線4と、この集電用配線4の端部をまとめて電気的に接続する集電部3とを有してなることを特徴とする色素増感型光電変換素子1を提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池などに用いられる光電変換素子に関する。より詳しくは、光電変換効率に優れた構造を有する色素増感型光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池は、スイスのグレッツェルらのグループなどから提案されたもので、高い変換効率を得られる光電変換素子として着目されている(例えば、非特許文献1を参照)。
色素増感型太陽電池は、シリコン系の従来型の太陽電池と比較して大幅な低価格化が可能とされているが、発電部に使用される導電性基板の価格が低価格化の障害となっている。従来構造の色素増感型太陽電池においては、特に光が入射する側の電極(窓電極)には、可視光の透過性と高い伝導性が要求されるため、ガラス基板やプラスチック基板上にスズドープ酸化インジウムやフッ素ドープ酸化スズといった透明導電性金属酸化物を塗布した基板が用いられてきた。したがって、このような透明導電性基板を用いていない、全く新しい構造の色素増感型太陽電池が実現するならば、太陽電池の大幅な低価格化が可能であるとして研究開発が進められている。
【0003】
これらの解決手段として、金属線を発電部の作用極に用いる新規な素子構造(特許文献1、2、3、4参照)が提案されている。しかし、これらの構造においては、作用極に金属線を採用したがゆえに、大面積の太陽電池モジュールの構成が困難となり、本来、色素増感型光電変換素子が有する、大面積化が容易であるという利点を損なう結果となった。そのため、上記の利点を損なうことのない素子構造の開発が必要とされている。
大面積素子を可能とする構造として、特許文献5に記載されたようなものがある。この構造は、例えば作用極をなす金属線を、複数の金属線が網目状に編まれてなる布状構造としたものであって、このような構造の作用極を用いることによって、大面積素子を構成するとともに、フレキシブルな構造の色素増感型光電変換素子の提供を可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181690号公報
【特許文献2】特開2008−181691号公報
【特許文献3】特開2005−196982号公報
【特許文献4】特表2005−516370号公報
【特許文献5】特開2008−311121号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】O'Regan B., Graetzel M., Alow cost, high-efficiency solar cell based on dye-sensitized colloidal TiO2 films, Nature, 1991年, 353号, 737-739ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように、色素増感型光電変換素子の作用極を複数の金属線が網目状に編まれてなる布状構造とした場合、作用極において発生した電子の集電する際の構成は、作用極を構成する複数の金属線のうち任意の金属線の末端部分をセルの外部に引き出す構成であった。
この構成は、互いに直交する金属線の重複部における金属線どうしの抵抗が、無視できるほど小さい場合は問題とはならない。しかし実際は、金属線に塗布される酸化チタンや、作用極と対極の間に介在する電解液の影響により、金属線どうしの接触が不十分となり、作用極の抵抗が上昇するという現象が見られた。この結果、作用極で発生した電子の集電効率が低下し、ひいては光電変換素子の光電変換効率が低下するという問題があった。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複数の金属線を網目状に編まれてなる布状構造の作用極を有する色素増感型光電変換素子において、その光電変換特性の大幅な向上を実現する光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の色素増感型光電変換素子(第1発明)は、導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、前記第1基材または前記第2基材の一方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の色素増感型光電変換素子(第2発明)は、請求項1において、前記第1基材または前記第2基材の一方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の色素増感型光電変換素子(第3発明)は、導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、前記第1基材および前記第2基材の両方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の色素増感型光電変換素子(第4発明)は、請求項3において、前記第1基材または前記第2基材の両方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明の色素増感型光電変換素子によれば、色素増感型光電変換素子が、導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、第1基材または第2基材の一方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有するものとしたため、網目状の作用極を構成する第1基材または第2基材のうち一方の全て基材から直接集電することが可能になるため、光電変換効率が向上するという効果が得られる。
第2発明の光電変換素子によれば、第1基材または第2基材の一方の両端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、第1発明の光電変換素子と比較して、作用極において発生する電子と集電部との距離が短くなるため、より光電変換効率が向上するという効果が得られる。
第3発明の光電変換素子によれば、第1基材および第2基材の両方の一端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、作用極を構成する第1基材および第2基材の全ての基材から直接集電することが可能となるため、第1発明と比較してより光電変換効率が向上するという効果が得られる。
第4発明の光電変換素子によれば、第1基材または第2基材の両方の両端側が、複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線を有するものとしたため、第3発明と比較して、作用極において発生する電子と集電部との距離が短くなるため、より光電変換効率が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る第1の実施形態の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る他の実施形態の概念図であり(a)は、第1基材の両側に集電部を設けた光電変換素子であり、(b)は発電部の第1基材の片側および第2基材の片側に集電部を設けた光電変換素子であり、(c)は発電部の第1基材および第2基材の両側に集電部を設けた光電変換素子の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態の光電変換素子を示す概略構成図、図2は、図1のII−II線に沿う、光電変換素子の断面図である。また、図3は、光電変換素子の分解斜視図である。
【0012】
図1、図2に示すように、本実施形態の光電変換素子1は、平面視矩形の発電部2と該発電部2の外部に設けられた集電部3とから構成されており、発電部2において発生した電子が、発電部2の一辺より延在する集電用配線部4を介して集電部3において集電される構成である。
発電部2は、平面視矩形の布状構造の作用極5と、平面視矩形の板状の対極6とがセパレータ10を介して重ね合わされるように構成されている。布状構造の作用極5は、導電性を有する複数の第1基材8と複数の第2基材9と、該第1基材8と第2基材9の周囲に配され色素を担持した多孔質酸化物半導体層13とから構成されており、該多孔質酸化物半導体層13は、増感色素とともに電解質18をも含浸している。
第1基材8と第2基材9とはともに線状をなし、これら第1基材8と第2基材9とが網目状に編まれることで矩形の布状構造をなしている。
【0013】
対極6は、板状の導電性基材であり、セパレータ10を介して作用極5と重ね合わされている。また対極6は、集電部3と対となる接続部6aを有しており、この接続部6aは、発電部2の外側に延出している。
作用極5と対極6、およびその間に挿入されているセパレータ10は、2枚のフィルム14により挟まれており、2枚のフィルム14内は電解質18で満たされている。発電部2は4辺において、熱圧着部12によって封止されており、これにより電解質18がフィルム14内に封入されている。
【0014】
そして本発明の第1実施形態に係る光電変換素子1は、作用極5を構成する複数の第1基材8の全てが、作用極5より延長されることで外方へ引き出され集電用配線部4となり、外部において集電部3を有していることを特徴としている。
【0015】
以下、各構成要素について、詳細に説明する。
第1基材8および第2基材9は直径50μmのTiからなるワイヤである。作用極5は、所定本数の第1基材8および第2基材9が互いに網目状に編まれてなる構造を有している。第1基材8と第2基材9とは、重複部において互いが十分接触するように編まれ、矩形をなす布状構造を有している。
第1基材8としてはTiに限ることはなく、WやPtなど耐食性の高い金属およびそれらの合金も使用可能である。また、導電性を有し、かつ、電解質18に対して電気化学的に不活性な材質からなる線状基材を、例えば、Tiなどによって被覆したTi被覆金属線なども第1機材8として用いられる。
以下、Ti被覆金属線としてTi被覆Cu線の製造方法の一例を記す。
まず、Tiを押出成型等によってパイプ状に形成すると共に、Cuを押出成型等によって線状に形成し、これらTiパイプとCu線を同時に走行させつつTi製パイプの内部にCu線を挿入し、これらを絞って、両者間を密着させて、Ti被覆Cu線を得る。
このような第1基材8の太さ(直径)は、例えば、10μm〜10mmとするのが好ましい。ただし、柔軟性を十分に発揮させるためには、第1基材8の太さは細いほどよい。
【0016】
図1に示した発電部2において、周囲の4辺のうち側方に位置する辺をそれぞれ第1辺20、第2辺21とし、上下に位置する辺をそれぞれ第3辺22、第4辺23とすると、各第2基材9は、第3辺22から第4辺23まで延在しているとともに、複数の第2基材9が第1辺20から第2辺21まで、所定本数列設されている。
複数の第1基材8は、第3辺22から第4辺23まで所定本数列設されているとともに、第1辺20から集電部3まで延在している。つまり、作用極5を構成する基材のうち第1基材8の全ては、矩形をなす発電部2の一辺より発電部2から延長されるように、外部に引き出されている。第1基材8のうち、第2辺21と集電部3との間の部分は、集電用配線部4となり、作用極5にて発生した電子は、この集電用配線部4を介して集電部に集められる。
延長された第1基材8は、発電部2の外部で集電構造をなすように結線処理が施される。結線する手段としては、特に限定はされず、例えば、導電性のある板材上に全ての第1基材8を半田付けするなどして結線してもよい。
【0017】
第1基材8および第2基材9のうち、布状構造をなす部分には、その表面に多孔質酸化物半導体層13が配されており、その表面には少なくとも一部に増感色素及び電解質18が担持されている。第1基材8のうち、集電用配線部4には多孔質酸化物半導体層13が配されることはない
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体は、酸化チタン(TiO)である。この酸化チタンの膜厚は約5μmとしたが、特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜50μmであってよい。
多孔質酸化物半導体層13を形成する半導体としては酸化チタンに限ることはなく、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)など様々な半導体電極が制限なく使用可能である。
【0018】
増感色素としては、例えば、N719、N3、ブラックダイなどのルテニウム錯体、ポルフィリン、フタロシアニン等の含金属錯体をはじめ、エオシン、ローダミン、メロシアニン等の有機色素などを適用することができ、これらの中から用途、使用半導体に適した励起挙動をとるものを適宜選択すれば良い。
【0019】
多孔質酸化物半導体層13内には、電解液が含浸されており、この電解液も前記電解質18の一部を構成している。この場合、多孔質酸化物半導体層13内の電解質18は、多孔質酸化物半導体層13内に電解液を含浸させてなるものか、または、多孔質酸化物半導体層13内に電解液を含浸させた後に、この電解液を適当なゲル化剤を用いてゲル化(擬固体化)して、多孔質酸化物半導体層13と一体に形成されてなるもの、あるいは、イオン液体をベースとしたもの、さらには、酸化物半導体粒子及び導電性粒子を含むゲル状の電解質などが用いられる。
【0020】
上記電解液としては、ヨウ素、ヨウ化物イオン、ターシャリーブチルピリジンなどの電解質成分が、エチレンカーボネートやメトキシアセトニトリルなどの有機溶媒やイオン液体に溶解されてなるものが用いられる。
この電解液をゲル化する際に用いられるゲル化剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などが挙げられる。
また、揮発性電解質溶液に代えて、一般に色素増感型太陽電池に用いられるものであれば、溶媒がイオン液体であるものやゲル化したものだけではなく、p型無機半導体や有機ホール輸送層といった固体であっても制限なく使用可能である。
【0021】
上記イオン液体としては、特に限定されるものではないが、室温で液体であり、例えば、四級化された窒素原子を有する化合物をカチオンとした常温溶融塩が挙げられる。
常温溶融塩のカチオンとしては、四級化イミダゾリウム誘導体、四級化ピリジニウム誘導体、四級化アンモニウム誘導体などが挙げられる。
常温溶融塩のアニオンとしては、BF,PF,(HF)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド[N(CFSO]、ヨウ化物イオンなどが挙げられる。
イオン液体の具体例としては、四級化イミダゾリウム系カチオンとヨウ化物イオンまたはビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオンなどからなる塩類を挙げることができる。
【0022】
上記酸化物半導体粒子としては、物質の種類や粒子サイズなどは特に限定されるものではないが、イオン液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化させるようなものが用いられる。また、酸化物半導体粒子は、電解質18の半導電性を低下させることがなく、電解質18に含まれる他の共存成分に対する科学的安定性に優れることが必要である。特に、電解質18がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化物半導体粒子は、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
【0023】
このような酸化物半導体粒子としては、TiO、SnO、SiO、ZnO、Nb、In、ZrO、Al、WO、SrTiO、Ta、La、Y、Ho、Bi、CeOからなる群から選択される1種または2種以上の混合物が好ましく、その平均粒径は2nm〜1000nm程度が好ましい。
【0024】
上記導電性微粒子としては、導電体や半導体など、導電性を有する粒子が用いられる。
また、導電性粒子の種類や粒子サイズなどは特に限定されるものではないが、イオン液体を主体とする電解液との混和性に優れ、この電解液をゲル化するようなものが用いられる。さらに、電解質18に含まれる他の共存成分に対する化学的安定性に優れることが必要である。
特に、電解質18がヨウ素/ヨウ化物イオンや、臭素/臭化物イオンなどの酸化還元対を含む場合であっても、酸化反応による劣化を生じないものが好ましい。
【0025】
このような導電性微粒子としては、カーボンを主体とする物質からなるものが挙げられ、具体例としては、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、カーボンブラックなどの粒子を例示できる。これらの物質の製造方法はいずれも公知であり、また、市販品を用いることもできる。
【0026】
対極6は、導電性を有する板状をなし、その表面が不導態となるTi板から構成される。また、対極6は、表面にPtからなる触媒膜(不図示)を有している。
対極6の構成は、上述したようなPt被膜Ti板に限るものではなく、Pt板、またはPtを被膜した金属板であってよい。あるいは、カーボン板、またはカーボンを被膜した金属板であってよい。
対極6の厚みは約40μm、膜の厚みは30nmとするとよいが、電解液に耐え、作用極5と対極6とを絶縁可能であれば、これらに限定はされない。
【0027】
作用極5と対極6との間には、作用極5と対極6との短絡を防止するために、非導電性の材料からなるセパレータ10が挿入されている。セパレータ10の材質は、ポリエチレンなどのポリオレフィンであり、厚さは20μm以下であることが好ましいが、電解液に耐え、作用極5と対極6とを絶縁可能であれば、これらに限定はされない。
【0028】
さらに作用極5、対極6、およびセパレータ10は、PETを基板とする高ガスバリアフィルムで形成されたフィルム14に挟まれる構成となっており、これにより電解質18を封止している。
フィルム14は、作用極5の布状構造部分、および対極6と略同形状の矩形形状をなしており、その4辺において熱圧着部12が形成されている。
【0029】
上述したような構成の光電変換素子1は、集電部3に電気機器などを接続導体を介して接続した場合、透光性のフィルム14を介して太陽光などの光線を入射させると、発電部2において発生した電子のうち、第1基材8に発生した電子の全てを取り出すことが可能となるため、光電変換効率が著しく向上する。
また、発電部2は、布状構造の作用極5、薄板状の対極6、およびPETからなるフィルム14の組合せであるため、フレキシブル性に優れた光電変換素子の製造が可能となる。また、光電変換素子1の薄型化も可能となる。
【0030】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る光電変換素子の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(a)は、本実施形態に係る光電変換素子第2の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0031】
本実施形態は、集電用配線部4が発電部2の左右方向両側に延在していること以外は、第1実施形態とほぼ同様である。
すなわち、本実施形態の光電変換素子は、第1基材8が、発電部2の左右両側の外部で集電が可能であるのに十分な長さを有している。第1基材8の両端部は、集電が可能となるように結線され、さらに左右の集電部3が、集電用配線部11によって結線される構成となる。
【0032】
この実施形態によれば、第1基材8の全てから電子が直接集電されるともに、第1基材8の両側から集電することが可能となるため、第1実施形態と比較して、さらに光電変換効率が向上するという効果が得られる。
【0033】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る光電変換素子の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(b)は、本実施形態に係る光電変換素子第3の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0034】
本実施形態は、集電用配線部4が発電部2の上下方向の片側、および左右方向の片側に延在していること以外は、第1実施形態とほぼ同様である。
すなわち、本実施形態の光電変換素子は、第1基材8および第2基材9が、発電部2の外部で集電が可能であるのに十分な長さを有している。第1基材8および第2基材9の端部は、集電が可能となるように結線され、さらにそれぞれの集電部3が、集電用配線11によって結線される構成となる。
この実施形態によれば、第1基材8の全てが外方へ引き出されるとともに、第2基材9の全てが外方へ引き出され、第1基材8と第2基材9とが集電用配線部4を有するものとしたため、第1基材8および第2基材9の全てから電子を取り出すことが可能となり、光電変換効率が向上するという効果が得られる。
【0035】
<第4実施形態>
以下、本発明に係る光電変換素子の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
図4(c)は、本実施形態に係る光電変換素子第4の実施形態を示す概念図である。なお、本実施形態では、上述した第1実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0036】
本実施形態は、集電用配線部4が発電部2の上下方向両側および左右方向両側に延在していること以外は、第1実施形態とほぼ同様である。
この実施形態によれば、第1基材8および第2基材9の全てから電子が直接集電されるともに、第1基材8および第2基材9の両側から集電することが可能となるため、光電変換効率が向上するという効果が得られる。
【0037】
(実施例)
図1に示す構造の光電変換素子を作製した。
まず、直径50μmのTi線を、織機により布状に製織した。縦横のTi線が織り重ねられる矩形部分(布状部)のサイズは5cm×5cmとし、Ti線の本数は縦横それぞれ180本とした。
縦横に織られるTi線のうち一方は、集電のため、布上部に対して外方に引き出されるように、他方のTi線に対して十分長くなるように製織した。
【0038】
この布状部にTiOペースト(触媒化成製、PST-21NR)を塗布した後、電気炉で500℃、1時間焼結して多孔質TiO膜付きTi布状部を得た。TiOの膜厚はおよそ5μmであった。
【0039】
次に、上記電極を、ルテニウム色素(Solaronix社製、RutheAlum535-bisTBA、一般には
N719と呼ばれる)の0.3mM、アセトニトリル/tert-ブタノール=1:1溶液に浸漬し、室温で24時間放置してTiO表面に色素を担持した。色素溶液から引き上げた後、上記混合溶媒で洗浄し、これを作用極とした。
【0040】
一方、三元RFスパッタ装置を用いてTi板上にPtを蒸着させたものを対極とした。作用極と対極とは、厚さ12μmのセパレータを介して重ね合わせた。
【0041】
PETを基板とする高ガスバリアフィルムを2枚重ね、この2枚のフィルムの間に作用極と対極を挟んで3辺を熱圧着した。この際、作用極を構成するTi線のうち、長くされたTi線を、発電部の外になるようにフィルムを封止した。なお、作用極および対極の熱圧着部には、あらかじめアイオノマー樹脂を接着しておき、封止後の電解液の漏洩を防ぐようにした。
熱圧着されていない1辺から、メトキシアセトニトリルを溶媒とする揮発性電解質を注入した。最後に電解液注入部を熱圧着することによって、発電部を封止した。
【0042】
以上のようにして作製された光電変換素子に、ソーラーシミュレータ(AM1.5、100mW/cm)にて光を照射し、電流電位曲線を測定した。その結果、光電変換効率は、2.2%であった。
また、この光電変換素子を折り曲げてみたところ、変換効率は変動することがなく、一定値を維持した。
以上のことから、フレキシブル性に富む、光電変換効率の良好な光電変換素子を提供できることが判明した。
【0043】
(比較例)
布状の作用極を発電部の外部に集電部を設けず、Ti線の単線のみを、発電部の外部に取り出した光電変換素子を作製した。
この構造の光電変換素子においては、光電変換効率は0.05%ほどであり、実施例に対して、約1/44の光電変換効率しか得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、金属線を電極に用いた光電変換素子に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…色素増感型光電変換素子、2…発電部、3…集電部、4…集電用配線部、5…作用極、6…対極、7…電解質、8…第1基材、9…第2基材、10…セパレータ、11…集電線、12…熱圧着部、13…多孔質酸化物半導体層、14…フィルム、15…布状構造部、18…電解質。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、
前記第1基材または前記第2基材の一方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
【請求項2】
前記第1基材または前記第2基材の一方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型光電変換素子。
【請求項3】
導電性を有するとともに線状をなす複数の第1基材および第2基材が網目状に編まれてなる領域とからなる作用極と、
前記第1基材および前記第2基材の両方の一端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
【請求項4】
前記第1基材および前記第2基材の両方の両端側が、前記領域からその長手方向に延在された部位から構成される集電用配線と、
該集電用配線の端部をまとめて電気的に接続する集電部とを有してなることを特徴とする請求項3に記載の色素増感型光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−60662(P2011−60662A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210809(P2009−210809)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】