説明

色素増感型太陽電池用封止材

【課題】色素増感型太陽電池の透明導電電極と対電極との基板間にある電解液の基板端部周辺への漏洩や基板端部周辺から基板間への水分の浸入を防止する封止材に用いた場合に、該電解液がアセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒であっても、長期信頼性に優れる封止材を提供すること。
【解決手段】ある特定の要件を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と、1分子中にSiH基を2個有するある特定のSiH基含有化合物[B]と、1分子中にSiH基を3個有するある特定のSiH基含有化合物[C]とを含有するゴム組成物を架橋成形してなることを特徴とする色素増感型太陽電池用封止材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用封止材に関する。さらに詳しくは、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体とSiH基含有化合物とを含有してなるゴム組成物からなる色素増感型太陽電池用封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
1991年にグレッツェルらのグループが発表した色素増感型太陽電池とは、分光増感色素に増感された光変換層を作用電極とする湿式太陽電池である。その基本構成要素としては、ガラス等の透明基板に設けた透明導電電極、電解液、分光増感色素、酸化チタン等の多孔質半導体層、および基板に設けた対電極が挙げられる。
【0003】
色素増感型太陽電池は、使用する材料が安価であり、作製に真空プロセス等の大掛かりな設備を必要としないことから、低コストの太陽電池として期待を集めている。しかしながら、現在の色素増感型太陽電池の長期信頼性は、シリコン系のそれと比べて低いとされている。その原因の1つとして、電子のキャリアである電解液の封止の問題が挙げられる。電解液が漏洩したり、電解液に水分が浸入したりすると、発電効率の低下のみならず、光変換層の劣化が生じる恐れがある。したがって、色素増感型太陽電池の長期信頼性を向上するためには、透明導電電極と対電極との基板間にある電解液の基板端部周辺への漏洩や基板端部周辺から基板間への水分の浸入を、封止材を用いることにより防止することが欠かせない。
【0004】
電解液には、液体、ゲル、固体などの形態が用いられる。電解液の封止には、漏洩の少ないゲルや固体が適している(特許文献1)。しかしながら、シリコン系並みの高い変換効率を得るには、液体、それもアセトニトリル等の極性が高くかつ揮発性の高い有機溶媒が好ましい。ただし、このような電解液を太陽電池のセル中に長期にわたって漏洩なく封止することは困難を極める。
【0005】
封止方法としては、これまで液状接着剤、ホットメルトフィルム、ガラスフリットなどの接着方式が適用されてきた。
これに対して、封止材に弾性を備える合成樹脂を使用し、これを基板端部周辺に配し、基板で挟み圧縮することで電解液を封止する非接着方式が提案されている。これに適する弾性を備える合成樹脂としては、LIM成形が可能な液状ゴムが好ましい。
【0006】
一方、色素増感型太陽電池の封止に適する、弾性を有する合成樹脂としては、シリコーンゴム(特許文献1)やブチルゴム(特許文献2)が提案されている。ブチルゴムは、電解液の耐透過性や防湿性には優れるものの、耐圧縮永久歪みに劣る。シリコーンゴムは、LIMによる成形性に優れるものの、電解液の耐透過性や防湿性に劣る。さらにLIM成形性に優れるゴムとして、液状フッ素ゴムが知られているがアセトニトリルなどの電解液に対しては膨潤し易い性質を有している。
【特許文献1】特開2007−214075号公報
【特許文献2】特開2004−95248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、色素増感型太陽電池の透明導電電極と対電極との基板間にある電解液の基板端部周辺への漏洩や基板端部周辺から基板間への水分の浸入を防止する封止材に用いた場合に、該電解液がアセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒であっても、長期信頼性に優れ
る封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に用いられるゴム組成物が、アセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒に対して長期耐久性に優れる封止材を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の色素増感型太陽電池用封止材は、下記(a)〜(e)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と、下記一般式[II]で表される、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]と、下記一般式[III]
で表される、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]とを含有するゴム組成物を架橋成形してなることを特徴とする。
【0010】
(a)エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素原子数が、3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が、35/65〜95/5であり、
(d)ヨウ素価が、0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.01〜5.0dL/gである。
【0011】
【化1】

(式[II]中、R3は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基で、非置換また
は置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、aは、0〜20の整数を表し、bは、0〜20の整数を表し、R4は、炭素原子数1〜30の2価の有機基または酸素
原子である。)
【0012】
【化2】

(式[III]中、R5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基であって、非置換または置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数を表し、R6は、炭素原子数1〜30の3価の有機基を表
す。)
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]製造用の非共役ポリエンは、さらに下記(f)を満足することが好ましい。
【0013】
(f)非共役ポリエンが、下記一般式[I]で表わされる少なくとも1種のノルボルネン化合物である。
【0014】
【化3】

(式[I]中、nは、0〜10の整数を表し、R1は、水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。

上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]を0.1〜2重量部含有することが好ましい。
【0015】
上記1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]は、下記式[III−1
]で表される化合物であってもよい。
【0016】
【化4】

上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]を2〜15重量部含有することが好ましい。
【0017】
上記SiH基含有化合物[B]は、下記式[II−1]で表される化合物であってもよい。
【0018】
【化5】

本発明の色素増感型太陽電池用封止材は、上記ゴム組成物からなるLIM成形用ガスケット材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、機械特性、耐熱性に優れ、特にアセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒を電解液として色素増感型太陽電池に用いた場合に、その封止において長期信頼性に優れる封止材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に用いられるゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]、および、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]を必須成分として含有する。
【0021】
<[A]エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体>
本発明に用いられる共重合体[A]は、少なくとも下記(a)〜(e)を満足し、好ましくは下記(a)〜(f)を満足する。
【0022】
(a)エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素原子数が、3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が、35/65〜95/5であり、
(d)ヨウ素価が、0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.01〜5.0dl/gであり、
(f)非共役ポリエンが、下記一般式[I]で表わされる少なくとも一種のノルボルネン化合物である。
共重合体[A]は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体であり、好ましくはこれらのランダム共重合体である。
【0023】
(α−オレフィン)
共重合体[A]を構成するα−オレフィンは、炭素原子数が3〜20のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。中でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンがより好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが最も好ましく用いられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0024】
(非共役ポリエン)
共重合体[A]を構成する非共役ポリエンは、特に限定されるものではないが、好ましくは非共役ジエンであり、より好ましくは下記一般式[I]で表わされる少なくとも1種のノルボルネン化合物である。
【0025】
【化6】

(式[I]中、nは、0〜10の整数を表し、R1は、水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。

【0026】
一般式[I]で表わされるノルボルネン化合物の具体例としては、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5
−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボル
ネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペン
テニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシ
ル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0027】
このなかでも、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネンが好ましい。これらのノルボルネン化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
共重合体[A]を構成する非共役ポリエンは、上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物以外の他の非共役ポリエンであってもよい。
用いることができる他の非共役ポリエンには特に制限がないが、以下に示す鎖式非共役ジエン、脂環式非共役ジエン、およびトリエン化合物が挙げられ、それらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物以外の非共役ポリエンは、上記一般式[I]で表されるノルボルネン化合物とともに用いられてもよい。
【0029】
鎖式非共役ジエンの具体例としては、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等が挙げられる。
【0030】
環状非共役ジエンの具体例としては、5−メチレン−2−ノルボルネン、1−メチル−5−メチレン−2−ノルボルネン、1−エチル−5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0031】
さらに上記以外の具体例としては、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。
【0032】
(共重合体[A]の組成と特性)
共重合体[A]は、エチレン単位/α−オレフィン単位の比が、重量比で35/65〜95/5であり、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは45/55〜85/15、特に好ましくは50/50〜80/20である。
【0033】
この重量比が上記範囲内にあると、耐熱老化性、強度特性およびゴム弾性に優れるとともに、耐寒性および加工性に優れた色素増感型太陽電池用封止材を提供できるゴム組成物が得られる。
【0034】
また、共重合体[A]は、エチレン単位/非共役ポリエン単位の比が、重量比で35/65〜95/5であり、好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは45/55〜85/15、特に好ましくは50/50である。
【0035】
この重量比が上記範囲内にあると、耐電解液性、強度特性およびゴム弾性に優れるとともに、耐寒性および加工性に優れた色素増感型太陽電池用封止材を提供できるゴム組成物が得られる。
【0036】
共重合体[A]のヨウ素価は、0.5〜50(g/100g)であり、好ましくは1〜45、より好ましくは1〜43、特に好ましくは3〜40(g/100g)である。
このヨウ素価が、上記範囲内にあると、架橋効率の高いゴム組成物が得られ、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、耐環境劣化性(=耐熱老化性)に優れた色素増感型太陽電池用封止材を提供できるゴム組成物が得られる。ヨウ素価が、上記範囲を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて引張伸びなどの機械特性が低下する場合がある。
【0037】
共重合体[A]の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜5.0dL/gであり、好ましくは0.03〜4.0dL/g、さらに好ましくは0.05〜3.5dL/g、特に好ましくは0.07〜3.0dL/gである。共重合体[A]の極限粘度[η]が、上記範囲内にあると、強度特性および耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。また、共重合体[A]の極限粘度[η]が、0.5dL/g以下、好ましくは0.3dL/g未満である態様は、特にゴム組成物をLIM成形する場合に好適である。
【0038】
また、共重合体[A]は、Anton Paar社(オーストラリア)製の粘弾性装置MCR−301を用いて測定した複素粘度(25℃、歪み1%)が、105Pa・S以下
、好ましくは4,000Pa・S以下、より好ましくは2,000Pa・S以下の低粘度であることが望ましい。
【0039】
(共重合体[A]の製法)
共重合体[A]は、エチレンと、α−オレフィンと、上述した式[I]で表されるノルボルネン化合物を含む非共役ポリエンとを、重合用触媒の存在下に共重合させることにより製造することができ、具体的には、例えば「ポリマー製造プロセス」((株)工業調査会発行、365〜378ページ)、特開平9−71617号公報、特開平9−71618号公報、特開平9−208615号公報、特開平10−67823号公報、特開平10−67824号公報、特開平10−110054号公報などに記載されているような従来公知の方法により好ましく調製することができる。
【0040】
重合用触媒としては、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)等の遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)とからなるチーグラー触媒、あるいは元素の周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなるメタロセン触媒が好ましく用いられる。
【0041】
具体的には、共重合体[A]は、下記バナジウム化合物(a)および有機アルミニウム化合物(b)を主成分として含有する触媒の存在下に、重合温度30〜60℃、特に30〜50℃、重合圧力0.4〜1.2MPa(=4〜12kgf/cm2)、特に0.5〜
0.8MPa(=5〜8kgf/cm2)、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル
比(非共役ポリエン/エチレン)0.01〜0.2の条件で、エチレンと、α−オレフィンと、上記の非共役ポリエン(特に好ましくはビニル基を含有するノルボルネン化合物)とを共重合することにより好適に製造することができる。共重合は、炭化水素媒体中で行
うのが好ましい。
【0042】
バナジウム化合物(a)としては、例えば、一般式:VO(OR)abまたはV(OR)cd(式中、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4である。)で表わされるバナジウム化合物、もしくはこれらの電子供与体付加物を挙げることができる。
【0043】
より具体的には、VOCl3、VO(OC25)Cl2、VO(OC252Cl、VO
(O−iso−C37)Cl2、VO(O−n−C49)Cl2、VO(OC253、V
OBr3、VCl4、VOCl3、VO(O−n−C493、VCl3・2OC612OHなどを例示することができる。なお、以下、「C25」を「Et」、「C37」を「Pr」、「C49」を「Bu」とも記すことがある。
【0044】
有機アルミニウム化合物(b)としては、具体的には、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
0.5Al(OR)0.5などの式(式中、Rは、炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。)で表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド等のアルキルアルミニウムジハライド等の部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド等の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0045】
(その他の樹脂成分)
本発明で用いられるゴム組成物は、樹脂成分として上述したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]のみを含むことが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]以外の樹脂成分を含有してもよい。
【0046】
共重合体[A]以外の樹脂成分としては、例えば、オルガノポリシロキサンが任意成分として好適に用いられる。オルガノポリシロキサンは、ゴム組成物の耐熱老化性を向上させる作用を有し、色素増感型太陽電池用封止材の耐熱老化性向上に寄与する。
【0047】
ゴム組成物が、オルガノポリシロキサンを含有する場合、その含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]:オルガノポリシロキサンの重量比で99.9/0.1〜5/95、好ましくは99.9/0.1〜60/40、より好ましくは99.9/0.1〜70/30の範囲であることが好ましい。
【0048】
オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式が、下記式(S)で示されるものが挙げられる。
1tSiO(4-t)/2 …(S)
(式(S)中、R1は、炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を示し、該基の水素原子の
一部または全部が、シアノ基またはハロゲン基で置換されていてもよく、tは、1.9〜2.1の数である。)
【0049】
上記式(S)中のR1は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、
ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基であり、それら該基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、シアノ基で置換されていてもよい。
【0050】
オルガノポリシロキサンとしては、主鎖がジメチルシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサン、あるいはジメチルポリシロキサンの主鎖の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したオルガノポリシロキサンが特に好適である。
【0051】
オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、R1中0.01〜20モル%、特に0.0
2〜10モル%がかかる脂肪族不飽和基、特にビニル基であることが好ましい。この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でも、分子鎖の途中でも、その両方にあってもよいが、少なくとも分子鎖末端にあることが好ましい。また、分子鎖末端は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されたものを挙げることができる。
【0052】
本発明に用いることのできるオルガノポリシロキサンとして、特に好ましいものは、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0053】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種または2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体または4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、分子構造の異なる2種または3種以上の混合物であってもよい。
【0054】
オルガノポリシロキサンは、市販品として入手することが可能であり、または開示されている公知の方法によって合成しても得ることができる。
オルガノポリシロキサンの重合度は100以上が好ましく、特に好ましくは3,000〜20,000である。また、その粘度は、25℃で100センチストークス(cSt)以上が好ましく、特に好ましくは100,000〜100,000,000cStである。
【0055】
<[B]1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物>
本発明で用いられる1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]は、下記一般式[II]で表される化合物である。
【0056】
【化7】

(式[II]中、R3は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基で、非置換また
は置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、aは、0〜20の整数を表し、bは、0〜20の整数を表し、R4は、炭素原子数1〜30の2価の有機基または酸素
原子である。)
【0057】
このような1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]の特徴は、分子両末端にSiH基を有し、1分子当りSiH基を2個有する。一般式[II]中、R3の具
体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、フェニル基、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、およびフェニル基である。aは0〜20の整数であり、bは0〜20の整数である。好ましくは、aおよびb共に10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくはaとbとが等しく2以下である。
【0058】
以下に一般式[II]で表される1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]の具体例を示す。一般式[II]におけるR4は、炭素原子数1〜30の2価の有機基
または酸素原子であって、2価の有機基の具体的な例は、下記具体的化合物例中の2価の基に相当する。これらのSiH基含有化合物[B]は、1種単独でも2種以上混合して用いることができる。また、SiH基含有化合物[B]は、開示されている公知の方法によって合成することができる。
【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
【化13】

これらのうち、本発明で特に好ましく用いられる、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]は、下記式[II−1]で表される化合物である。
【0065】
【化14】

このような化合物を[B]成分として用いることにより、従来の優れた諸特性を維持しつつ、さらに機械特性を向上させた最も優れた特性を有する色素増感型太陽電池用封止材を得ることができる。
【0066】
このような1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]は、ゴム組成物中の樹脂成分中に含まれる脂肪族不飽和結合1個当たり、珪素原子に結合した水素原子を0.2〜10個与える量で含んでいることが好ましい。
【0067】
本発明で用いられるゴム組成物における、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]の含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは3〜8重量部の割合
であることが、成形物のゴム硬度などの点から望ましい。
【0068】
なお、このような1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]を、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]に対して単独で添加した、すなわちエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]とを含有するゴム組成物は、架橋密度をある程度抑制でき、成形体が伸び特性に優れるものとはなるが、特に低温時(−30℃)における圧縮永久歪み率が高く、回復性に劣る点で改良の余地がある。
【0069】
<[C]1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物>
本発明で用いられる1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]は、下記一般式[III]で表される化合物である。
【0070】
【化15】

(式[III]中、R5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基であって、非置換または置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数を表し、R6は、炭素原子数1〜30の3価の有機基を表
す。)
このようなSiH基含有化合物[C]は、分子の3つの末端にSiH基を有し、1分子中にSiH基を3個有する。
【0071】
一般式[III]中のR5は、一般式[II]中R3と同様のものが例示され、具体的には、
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、フェニル基、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、およびフェニル基である。a、bおよびcは、それぞれ独立に0〜20の整数であり、好ましくは、a、bおよびcがともに10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくはa、bおよびcが等しく2以下である。一般式[III]中のR6は、炭素原子数1〜30の3価の有機基であり、好ましくは、ケイ素を含有する
炭素原子数1〜30の3価の有機基である。
【0072】
特に好ましい1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]としては、下記式[III−1]で表される化合物を挙げることができる。
【0073】
【化16】

本発明で用いられるゴム組成物における、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]の含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.1〜1.4重量部の割合であることが望ましい。
【0074】
このような1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]を、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]に対して1種単独で添加したゴム組成物は、三次元架橋し、機械強度などのゴム物性が向上する反面、回復性に劣るとともに、スコーチを起こしやすく成形時の取扱い性が悪いなど、ゴム組成物を色素増感型太陽電池用封止材として用いるには適当でない性状を示すが、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]と1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]とを、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]に対して組み合わせて添加した本発明のゴム組成物では、成形性が良好で、耐熱性、バリア性、シール性に優れるとともに、高温時(150℃)および低温時(−30℃)における圧縮永久歪み率が低く、回復性に優れ、色素増感型太陽電池用封止材の用途に好適に用いることができる。
【0075】
<ゴム組成物>
本発明で用いられるゴム組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]、および、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]を必須成分として含有し、必要に応じてオルガノポリシロキサン、さらに必要に応じて後述する触媒、あるいは反応抑制剤、ならびにその他の成分を含有している。
【0076】
(ゴム組成物の調製)
ゴム組成物は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類、2本ロール、3本ロールなどの混練装置により、共重合体[A]および必要に応じてオルガノポリシロキサンを、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などのその他の成分とともに、好ましくは50〜180℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールのようなロール類、またはニーダーを使用して、SiH基含有化合物[B]および[C]を、また必要に応じて後述する触媒や反応抑制剤、さらには加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度100℃以下で1〜30分間混練した後、「分出しする」、すなわちロール間隙を通すことによって所定の厚さ、幅、長さのシートを作製することにより調製することができる。
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合は、ゴム組成物を構成する全成
分を同時に混合して混練してもよい。
【0077】
(架橋方法)
・触媒
本発明に用いられるゴム組成物の製造において、SiH基含有化合物[B]および[C]を用いて架橋する場合、架橋で用いられる触媒は付加反応触媒であり、共重合体[A]および必要に応じて用いられるオルガノポリシロキサンのアルケニル基などと、SiH基含有化合物[B]および[C]のSiH基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応など)を促進するものである。
【0078】
このような触媒としては、通常、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素よりなる付加反応用触媒が用いられるが、本発明においては、白金系触媒が好ましい。白金系触媒を含めて周期律表8族元素金属、特に好ましくは白金と、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物との錯体を用いることが望ましい。
【0079】
カルボニル基を含む化合物としては、カルボニル、オクタナル等が好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体、白金−オクタナル錯体、白金−カルボニルブチル環状シロキサン錯体、白金−カルボニルフェニル環状シロキサン錯体などが挙げられる。
【0080】
ビニル基を含む化合物としては、ビニル基含有オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、具体的には、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラエチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラプロピルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラブチルジシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラフェニルジシロキサン錯体が挙げられる。
【0081】
ビニル基含有オルガノシロキサンの中でも、ビニル基含有環状オルガノシロキサンが好ましい。これらと白金との錯体としては、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルエチル環状シロキサン錯体、白金−ビニルプロピル環状シロキサン錯体が挙げられる。
【0082】
ビニル基含有オルガノシロキサンは、それ自体を金属に対する配位子としてもよいが、他の配位子を配位させる際の溶媒として用いてもよい。ビニル基含有オルガノシロキサンを溶媒として用い、前述のカルボニル基を含む化合物を配位子とする錯体は、触媒として特に好ましい。
【0083】
このような錯体としては、具体的には、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルエチル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のビニルプロピル環状シロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラエチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラプロピルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラブチルジシロキサン溶液、白金−カルボニル錯体のジビニルテトラフェニルジシロキサン溶液が挙げられる。
【0084】
これらの錯体からなる触媒は、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の成分をさらに含んでいてもよい。例えば、ビニル基および/またはカルボニル基を含む化合物以外の溶媒を含んでいてもよい。これらの溶媒としては、各種アルコールや、キシレン等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0085】
アルコールとして具体的には、メタノールやエタノールで代表される脂肪族飽和アルコ
ール類;アリルアルコール、クロチルアルコール等の脂肪族不飽和アルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール類;フルフリルアルコール等の複素環式アルコール類などが挙げられる。
【0086】
アルコールを溶媒として用いた例として、白金−オクタナル/オクタノール錯体が挙げられる。これらの溶媒を含むことにより、触媒の取扱いや、ゴム組成物への混合が容易になる等の利点が生ずる。
【0087】
以上に挙げた各種触媒のうちで、白金−カルボニル錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液(中でも、下記化学式1で示される錯体が好ましい。)、白金−ビニルメチル環状シロキサン錯体(中でも、化学式2で示される錯体が好ましい。)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(中でも、化学式3で示される錯体が好ましい。)、白金−オクタナル/オクタノール錯体等が実用上好ましく、その中でも、白金−カルボニルビニルメチル環状シロキサン錯体が特に好ましい。
【0088】
化学式1: Pt0・CO・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式2: Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4
化学式3: Pt0−1.5[(CH2=CH(Me)2Si)2O]
これらの触媒に含まれる周期律表8族元素金属(好ましくは白金)の割合は、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは2〜4重量%、特に好ましくは2.5〜3.5重量%である。
【0089】
触媒は、特に限定されるものではないが、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計に対して、0.1〜100,000重量ppm、好ましくは0.1〜10,000重量ppm、さらに好ましくは1〜5,000重量ppm、特に好ましくは5〜1,000重量ppmの割合で用いられる。上記範囲内の割合で触媒を用いると、架橋密度が適度で、強度特性および伸び特性に優れる架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。100,000重量ppmを超える割合で触媒を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。触媒を含まないゴム組成物の未架橋ゴム成形体に、光、γ線、電子線等を照射して架橋ゴム成形体を得ることもできる。
【0090】
ゴム組成物の架橋においては、上記触媒の他に有機過酸化物を使用して、付加架橋とラジカル架橋の両方を行ってもよい。有機過酸化物は、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対し、0.1〜10重量部程度の割合で用いられる。有機過酸化物としては、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。
【0091】
・反応抑制剤
架橋においては、上記の触媒とともに反応抑制剤を用いることが好ましい。反応抑制剤は、ベンゾトリアゾール、(たとえばエチニルシクロヘキサノール等のエチニル基含有アルコール類、アクリロニトリル、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−p−フタル酸ジアミド
等のアミド化合物、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0092】
反応抑制剤は、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、0〜50重量部、通常0.0001〜50重量部、好ましく
は0.0001〜30重量部、より好ましくは0.0001〜20重量部、さらに好ましくは0.0001〜10重量部、特に好ましくは0.0001〜5重量部の割合で用いられる。50重量部を超える割合で反応抑制剤を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0093】
・その他の成分
ゴム組成物中に、意図する架橋物の用途等に応じて、従来公知のゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、有機過酸化物、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。充填剤や配合剤として代表例を取上げ、以下により、具体的に説明する。
【0094】
(i)ゴム補強剤
ゴム補強剤は、架橋(加硫)ゴムの引張強度、引裂き強度、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このようなゴム補強剤としては、具体的には、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラック、シランカップリング剤などにより表面処理が施されているこれらのカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカなどが挙げられる。
【0095】
ゴム組成物においては、カーボンブラックなどのゴム補強材の使用を省略しても、強度およびシール性に優れたシール材を提供できるゴム組成物が得られるが、カーボンブラックなどのゴム補強材を配合することによってさらに改善された強度が得られる。ゴム補強材としてカーボンブラックを使用するときは、その使用量は、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、1〜300重量部、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは1〜100重量部、特に好ましくは1〜50重量部であり、最も好ましくは10〜50重量部であることが望ましい。ゴム組成物では、カーボンブラックを配合しても好適な電気絶縁性を維持することができる。
【0096】
シリカの具体例としては、煙霧質シリカ、沈降性シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の反応性シランまたは低分子量のシロキサン等で表面処理されていてもよい。また、これらシリカの比表面積(BET法)は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは30〜500m2/gである。
【0097】
本発明においては、カーボンブラックとして、ヨウ素吸着量が80mg/g以下、好ましくは15〜40mg/gであって、平均粒子径が250nm以下、好ましくは40〜100nm、DBP吸収量が10〜300cm3/100g、好ましくは40〜150cm3/100gのものを好適に用いることができ、例えば、FEF級、GPF級、SRF級などのカーボンブラックが好適に用いられる。なお、「DBP吸収量」とは、カーボンブラック粒子間の空隙を満たすに要するDBP(フタル酸ジブチル)の量により、粒子の繋がり、凝集の程度を示すものである。
【0098】
このようなカーボンブラックを用いる場合、には、一次粒子径を示すBET比表面積が30〜80m2/g、好ましくは40〜60m2/gであり、二次粒子径を示すコールカウンター方による粒子径が1〜4μm、好ましくは1.5〜3μmの表面改質した沈殿法シリカ(含水珪酸)を併用すると、高温環境下での圧縮永久歪み率が低く、回復性に優れる成形体が得られるため好ましい。
【0099】
これらのゴム補強剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、ゴム補強剤の配合量は通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と必要
に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、最大300重量部、好ましくは最大200重量部である。これらのゴム補強剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0100】
(ii)無機充填剤
無機充填剤の具体的は、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ藻土などが挙げられる。これらの無機充填剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの無機充填剤の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、無機充填剤の配合量は通常、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、1〜300重量部、好ましくは200重量部である。
【0101】
(iii)軟化剤
軟化剤は、通常ゴムに使用される公知の軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子類、およびその他としてトール油やサブを挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これらの軟化剤の配合量は、架橋物の用途により適宜選択される。これらの軟化剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0102】
(iv)老化防止剤
老化防止剤は、従来公知の老化防止剤がすべて用いられ、アミン系、ヒンダードフェノール系、またはイオウ系老化防止剤などが挙げられ、老化防止剤の量は、本発明の目的を損なわない範囲で用いられる。また、下記で例示する老化防止剤は、アミン系、ヒンダードフェノール系、およびイオウ系において、同一系内でも異種系間においても、1種単独で、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0103】
アミン系老化防止剤は、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類などが挙げられる。特に4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'− ジ−2−
ナフチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0104】
ヒンダードフェノール系老化防止剤は、特に、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、および3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンのフェノール化合物が好ましい。
【0105】
イオウ系老化防止剤は、特に、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)が好ましい。
【0106】
(v)加工助剤
加工助剤は、通常のゴムの加工に使用される公知化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リ
シノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。加工助剤の量は、共重合体[A]と必要に応じて添加されるオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0107】
(vi)架橋助剤
ゴム組成物の架橋において、有機過酸化物を使用する場合は、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤の具体例は、イオウ、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル、好ましくは約等モルの量で用いられる。
【0108】
(vii)その他の樹脂成分
ゴム組成物中に、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂成分として公知の他のゴムを併用することができ、具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0109】
また、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)のような従来公知のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムや本発明の共重合体[A]以外のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDMなど)を用いることができる。
【0110】
<色素増感型太陽電池用封止材>
(成形・架橋法)
本発明に用いられるゴム組成物は、機械特性、耐熱性に優れ、特にアセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒を電解液として色素増感型太陽電池に用いた場合に、その封止において長期信頼性に優れる封止材等の用途に特に好適に用いることができる。本発明に用いられるゴム組成物は、特にLIM成形用ガスケット材に好適であるが、その他の成形方法によって成形体を製造することもできる。
【0111】
本発明の色素増感型太陽電池用封止材は、架橋ゴム成形体として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。
本発明に用いられるゴム組成物から架橋ゴム成形体を製造するには、通常一般のゴムを加硫(架橋)するときと同様に、未架橋のゴム組成物を上記で示した調製法により一度調製し、次いでゴム組成物を所望の形状に成形した後に架橋することが好適である。
【0112】
上記のようにして調製された本発明の組成物から所望の形状の成形物を製造する際には、LIM成形機、インジェクション成形機、トランスファー成形機、プレス成形機、押出成形機、カレンダーロ−ル、インクジェット成形機、スクリーン印刷機などを用いることができる。これらの中でも、LIM成形機は、厚薄精度、高速成形の点から目的とする本発明の各材を製造するのに好適である。また、射出成形や圧縮成形も好適である。
【0113】
架橋は、成形と同時にまたは成型物を加硫槽内に導入して実施できる。
例えば、3本ミルロール、オープンロール、2本オープンロール、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、高せん断型ミキサー等の各種混練装置を用いて混合された本発明のゴム組成物を、80〜230℃、好ましくは100〜180℃の架橋条件で成形し、架橋成形(一次加硫)されたものを、必要に応じて約
100〜230℃、好ましくは約120〜150℃で約0.5〜24時間程度、ギアオーブンや恒温槽などのエアオーブンで熱処理(二次加硫)することにより、成形・架橋を行うことができる。
【0114】
また、架橋(一次加硫)もしくは二次架橋(二次加硫)は、光、γ線、電子線などを照射して行ってもよく、一次加硫、二次加硫ともに常温で行うこともできる。上記した方法により架橋ゴム成形体、すなわち本発明の色素増感型太陽電池用封止材が得られる。
【0115】
この架橋の段階は金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常、連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0116】
(LIM成形)
本発明に用いられるゴム組成物を特にLIM成形用ガスケット材に適用する場合は、共重合体[A]とSiH基含有[B]および[C]とを含有する組成物(a)と、共重合体[A]と上記の触媒とを含有する組成物(b)とを調製し、LIM成形装置で(a)と(b)との両者を混合して本発明のゴム組成物を調製するとともに成形することが好ましい。
【0117】
本発明で用いられるゴム組成物の調製の際、および成形体(例えば、封止材など)の製造の際には用いられる材料の粘度等により適宜使い分けるが、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類やプラネタリーミキサーのような攪拌機が用いられる。本発明ではこのような撹拌機により、共重合体[A]、SiH基含有化合物[B]、[C]およびその他の樹脂成分、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などの添加剤を3〜10分間混練し、液状ゴム組成物(1)を調製する。
【0118】
一方、共重合体[A]、その他の樹脂成分、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などの添加剤および上記触媒、必要に応じて反応抑制剤を3〜10分混練して液状ゴム組成物(2)を調製する。組成物(1)や組成物(2)の調製の際には、脱泡を行うことが好ましい。続いて、これら液状ゴム組成物(1)と液状ゴム組成物(2)とをLIM成形装置に直接接続可能な専用のペール缶または直接接続可能なカートリッジに入れ、計量、混合装置を経てLIM成形を施すことにより、好ましくはLIM成形用ガスケット材である本発明の色素増感型太陽電池用封止材を得ることができる。
【0119】
(物性/特性)
本発明の色素増感型太陽電池用封止材は、発泡などによる空隙を有さないことが好ましい。発泡などによる空隙を有すると、色素増感型太陽電池用封止材は、電解液に対して膨潤する場合がある。
【0120】
本発明の色素増感型太陽電池用封止材の体積固有抵抗は、電気絶縁性を有すると判断される1×1012オーム・cm以上であることが好ましい。体積固有抵抗は、電気・電子部品に用いられるシール材に求められる特性の1つで、電気絶縁性の指標である。より好ましくは、1×1012オーム・cm以上であり、シール材として好適な性能を示す。体積固有抵抗は、ゴム組成物を圧力40kgf/cm2で、150℃で10分間プレス架橋して
得られた厚さ1mmのシートを用いて、SRIS2301-1969に従い測定する。
【0121】
本発明の色素増感型太陽電池用封止材では、その硬化物層の表面硬度を示すデュロメータ硬さAを、10以上70以下、好ましくは30以上50以下にすることが望ましい。デュロメータ硬さAとは、硬度の指標であり、JIS K6253に従い測定することがで
きる。デュロメータ硬さAを上記範囲内とするためには、組成物中への各種補強剤、充填剤、可塑剤などの添加割合を種種調節することによって可能であり、これらの各種添加剤を添加しないものも所望の低硬度を示している。下限は10以上であり、下限を超えるとやわらかすぎ、色素増感型太陽電池をシールする性能が劣る。ただし、補強剤、充填剤として、例えば硫黄やハロゲン化合物のように触媒毒となるような物質を含有するものは好ましくない。また、上限は70以下であり、上限を超えると伸びおよび耐圧縮永久歪が劣る場合がある。
【0122】
本発明は、アセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒を電解液として色素増感型太陽電池に用いた場合に、その封止において長期信頼性に優れる封止材を提供することができる。
具体的には、アセトニトリル(51.8重量部)、ヨウ素(3.3重量部)、ヨウ化リチウム(3.5重量部)および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨウ化物(41.4重量部)からなる、85℃に加熱した電解液中に、本発明の色素増感型太陽電池用封止材を1,000時間浸漬し、浸漬前後の下記(1)〜(4)の物性を測定する。
【0123】
(1)デュロメータ硬さA
JIS K6253に準拠して、測定温度23℃でデュロメータ硬さ試験(タイプAデュロメータ)を行い、デュロメータ硬さA(points)を測定した場合、浸漬前と比較した浸漬後の色素増感型太陽電池用封止材のデュロメータ硬さAは、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%である。
【0124】
(2)引張強度、伸び
JIS K6251に準拠して、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、架橋シートの破断時の引張強度(MPa)および伸び(%)を測定した場合、浸漬前と比較した浸漬後の色素増感型太陽電池用封止材の引張強度および伸びは、それぞれ好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%である。
【0125】
(3)引裂き強度
JIS K6251に準拠して、測定温度25℃で、引裂き強度(N/mm)を測定した場合、浸漬前と比較した浸漬後の色素増感型太陽電池用封止材の引裂き強度は、好ましくは100〜120%である。
【0126】
(4)体積変化率
JIS K6258に準拠して、浸漬前後の体積変化率(%)を測定した場合、浸漬前と比較した浸漬後の色素増感型太陽電池用封止材の体積変化率は、好ましくは+0〜2%、より好ましくは+0〜1.5%である。
【実施例】
【0127】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0128】
[調製例1]
撹拌羽根を備えた実質内容積100リットルのステンレス製重合器(撹拌回転数=250rpm)を用いて、連続的にエチレンとプロピレンと5-ビニル-2−ノルボルネン(下記式:以下「VNB」と略す。)との三元共重合を行った。重合器側部より液相へ毎時ヘキサンを60リットル、エチレンを1.3kg、プロピレンを2.5kg、VNBを130gの速度で、また、水素を30リットル、触媒としてVO(OEt)Cl2を23ミリ
モル、Al(Et)1.5Cl1.5を161ミリモルの速度で連続的に供給し、重合温度40℃、重合圧力0.7MPaの条件で共重合反応を行い、エチレン・プロピレン・VNBランダム共重合体(A−1)(以下「共重合体(A−1)」ともいう。)を均一溶液状態で
得た。その後、重合器下部から連続的に抜き出した重合溶液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にて重合体を溶媒から分離したのち、55℃で48時間真空乾燥を行った。
【0129】
【化17】

得られた共重合体(A−1)のエチレン含量は52.7重量%、プロピレン含量は42.6重量%、およびVNB含量は4.7重量%であり、ヨウ素価が9.5g/100gであって、25℃における複素粘度(Anton Paar社(オーストラリア)製の粘弾性装置MCR−301を用いて測定した複素粘度)は1100Pa・S、135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は0.28dL/gであった。なお、共重合体(A−1)の組成は13C−NMR法での測定で求めた値である。
【0130】
[実施例1]
調製例1で得た共重合体(A−1)100重量部と、カーボンブラック(旭カーボン社製 旭#50HG、ヨウ素吸着量:19mg/g、平均粒子径85μm、DBP吸収量:
110cm3/100g)15重量部と、表面処理した沈殿法シリカ(東ソー・シリカ社
製ニップシールE75SS、BET表面積:50m2/g、二次粒子径(コールターカウ
ンター法により求めた平均粒子径):2.4μm、M値:65)30重量部とを、容量2リットルのプラネタリーミキサー[(株)井上製作所製、商品名:PLM−2型]で50〜80℃の範囲内で混練した。なお、表面処理した沈殿法シリカにおける「M値」とは、シリカの改質処理度合を示す一般的な指標であり、M値評価対象となるシリカにメタノール水溶液のメタノール濃度を変えて添加とした際、親和し始める(濡れ始める)時のメタノール水溶液濃度(メタノールのvol%)で表される値である。
【0131】
次いでこれに、触媒として白金−1,3,5,7−テトラビニルメチルシクロシロキサン錯体[白金濃度0.5重量%、末端ビニルシロキサンオイル溶液]0.4重量部、反応抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.1重量部、架橋剤として下記式[II−1]で表される化合物を4.8重量部、および、下記式[III−1]で表される化
合物を0.1重量部加えて混合してゴム組成物を調製した。
【0132】
次いで、得られたゴム組成物をテストシート型(140×100×2mm)に流し込み、熱板設定温度150℃、型圧縮80MPaにて5分間圧縮成形して架橋ゴムシートを得て、さらにエアオーブン中で150℃、1時間の二次加硫を実施して架橋ゴムシートの二次加硫物(二次加硫架橋ゴムシート)を得た。
【0133】
【化18】

得られた二次加硫架橋ゴムシートを、85℃の電解液に1,000時間浸漬し、浸漬前後の各性状を以下の方法で測定した。
【0134】
なお、電解液は、アセトニトリル(51.8重量%)と、ヨウ素(3.3重量%)と、ヨウ化リチウム(3.5重量%)と、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨウ化物(41.4重量%)とからなる。
【0135】
結果を表1に示す。
(1)デュロメータ硬さA
JIS K6253に準拠して、測定温度23℃でデュロメータ硬さ試験(タイプAデュロメータ)を行い、デュロメータ硬さA(points)を測定した。
【0136】
(2)引張強度、伸び
JIS K6251に準拠して、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、架橋シートの破断時の引張強度(MPa)および伸び(%)を測定した。
【0137】
(3)引裂き強度
JIS K6251に準拠して、測定温度25℃で、引裂き強度(N/mm)を測定した。
【0138】
(4)体積変化率
JIS K6258に準拠して、浸漬前後の体積変化率(%)を測定した。
【0139】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、アセトニトリル等の極性低沸点有機溶媒を電解液とする色素増感型太陽電池用の封止材として用いた場合に、従来の封止材と比較し、長期信頼性に優れる封止材を提供できることから、色素増感型太陽電池用の各種ガスケットのみならず、各種パッキンを含めたシール材に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]と、
(a)エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であり、
(b)α−オレフィンの炭素原子数が、3〜20であり、
(c)エチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が、35/65〜95/5であり、
(d)ヨウ素価が、0.5〜50の範囲であり、
(e)135℃のデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、0.01〜5.0dL/gである;
下記一般式[II]で表される、1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]と、
下記一般式[III]で表される、1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物
[C]と
を含有するゴム組成物を架橋成形してなることを特徴とする色素増感型太陽電池用封止材;
【化1】

(式[II]中、R3は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基で、非置換また
は置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、aは、0〜20の整数を表し、bは、0〜20の整数を表し、R4は、炭素原子数1〜30の2価の有機基または酸素
原子である。)、
【化2】

(式[III]中、R5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の1価の基であって、非置換または置換の飽和炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基を表し、a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数を表し、R6は、炭素原子数1〜30の3価の有機基を表
す。)。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]製造用の非共役ポリエンが、さらに下記(f)を満足することを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用封止材;
(f)非共役ポリエンが、下記一般式[I]で表わされる少なくとも1種のノルボルネン化合物である。
【化3】

(式[I]中、nは、0〜10の整数を表し、R1は、水素原子または炭素原子数1〜1
0のアルキル基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。

【請求項3】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、
1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]を0.1〜2重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池用封止材。
【請求項4】
1分子中にSiH基を3個有するSiH基含有化合物[C]が、下記式[III−1]で
表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用封止材。
【化4】

【請求項5】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[A]100重量部に対して、
1分子中にSiH基を2個有するSiH基含有化合物[B]を2〜15重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用封止材。
【請求項6】
SiH基含有化合物[B]が、下記式[II−1]で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用封止材。
【化5】

【請求項7】
上記ゴム組成物からなるLIM(リキッド・インジェクション・モールディング)成形用ガスケット材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用封止材。

【公開番号】特開2009−301781(P2009−301781A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152824(P2008−152824)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】