説明

芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを触媒的に調製するための方法

【課題】芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを触媒的に調製するための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ハロ芳香族化合物から出発して、場合によっては置換された芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを調製するための方法に関する。それらは、ヘテロ芳香族アミンの存在下に、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムとの銅触媒反応において反応させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅触媒およびヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム(K[Fe(CN)])またはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(K[Fe(CN)])の存在下に、対応するハロゲン化アリールをシアネート化させることによる、芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族およびヘテロ芳香族ニトリルは、ファインケミカルズ、ならびに農薬および医薬品中間体として、工業的に重要である。したがって、それらの調製方法も、工業的に重要である。芳香族ニトリルを調製するための工業スケールで採用されている公知の方法は、置換トルエンをアンモ酸化する方法である。しかしながら、この方法が使用できるのは、対応する出発物質(トルエン)が安価に入手できる場合に限られる。さらに、アンモ酸化方法は、基質の中に酸化を受けやすい置換基が存在する場合には成功しない。ベンゾニトリルを調製するためのさらなる工業的方法は、カルボン酸とアンモニウム塩またはアミドとを、強い水結合性を有する物質(たとえば、P)と共に蒸留することによる反応、および500℃のAl固定床上、気相で、カルボン酸またはエステルをアンモニアと反応させる方法である。しかしながら、そのような方法は、反応条件が厳しく、また一般的に置換芳香族ニトリルの錯体に適用することが不可能であるために不利である。
【0003】
芳香族ニトリルのための、それらに代わる安価な出発物質は、対応する塩化アリールおよび臭化アリールである。しかしながら、公知の方法によってそのハロゲン化物をシアニドによって置換させることは通常、成功したとしても極めて不十分なものである。たとえば、芳香族ハロゲン化物を気相中でHCNと、金属触媒または金属酸化物触媒の存在下に650℃で、または480〜650℃で反応させる。より穏やかな反応条件下でハロゲン化アリールとシアニドとの反応を加速させる触媒は、パラジウム錯体、ニッケル錯体、および銅錯体である。たとえば、R.ブライトシュー(R.Breitschuh)、B.ピュージン(B.Pugin)、A.インドレーゼ(A.Indolese)およびV.ギーシン(V.Gisin)((特許文献1)、および(特許文献2))は、好ましくはNi錯体と化学量論量の錯体塩の存在下に、置換3−アミノベンゾニトリルを対応する置換3−アミノクロロベンゼンから調製することを記述している。この方法で欠点は、過剰量の還元剤を使用すること、およびその反応が特定のタイプの基質に限定されることである。
【0004】
B.R.コッター(B.R.Cotter)(特許文献3)は、ハロゲン化アリールのパラジウム触媒シアノ化における助触媒(cocatalyst)としての、200〜25 000のモル質量を有する18−クラウン−6、ポリエーテル、アルコキシポリエーテルもしくはそれらの混合物の群から選択されるエーテル成分のプラスの影響を記述している。
【0005】
J.B.デーヴィソン(J.B.Davison)、R.J.ヤシンスキー(R.J.Jasinski)およびP.J.ピアース=ランダーズ(P.J.Peerce−Landers)(特許文献4)は、電気化学的に形成された第VIII族金属(0)錯体により触媒作用を受ける、クロロ芳香族化合物から芳香族ニトリルを調製する方法を記述している。しかしながら、その手順は、従来からのバッチ方法と比較して、非常にコストがかかる。
【0006】
M.−H.ロック(M.−H.Rock)およびA.マーホールド(A.Marhold)((特許文献5)および(特許文献6))は、ニッケル触媒およびケトンの存在下に、シアニドと反応させることにより、クロロ芳香族化合物から芳香族ニトリルを調製する方法を記述している。しかしながら、その反応は、そのシアニド濃度が厳格に調節されている場合にのみ首尾よく実施することができるが、その理由は、さもないと、その触媒が不可逆的にシアネートされてしまうからである。この方法の欠点はさらに、亜鉛のような還元剤および溶媒として特定のケトンを使用する必要があることにある。
【0007】
M.ベラー(M.Beller)および共同研究者たちは、ハロゲン化アリールとアルカリ金属シアニドとのパラジウム触媒反応におけるクラウンエーテル、ジホスフィン配位子およびジアミン配位子の影響を記述している((特許文献7)、(非特許文献1))。それらの研究をベースにして、シアニド供与体(donor)として、アセトンシアノヒドリン(非特許文献2)、トリメチルシリルシアニド(非特許文献3)、またはシアン化水素酸(特許文献8)を計量添加することをベースとする方法が開発されてきた。これの欠点は、高価なパラジウム触媒と特殊な配位子を使用する点にある。
【0008】
A.ヴィヨーヴィ(A.Viauvy)およびM.カサド(M.Casado)(特許文献9)はさらに、化学量論量の銅シアニドと臭素源(bromide source)、または、臭化銅と相間移動触媒の存在下のアルカリ金属シアニドもしくはテトラアルキルアンモニウムシアニド、または銅シアニドとヨウ化リチウムとクロロ芳香族化合物とを反応させて、対応するニトリルを得ることを記述している。これの欠点は、化学量論量の遷移金属を使用する点にある。
【0009】
銅触媒を用いたハロゲン化アリールのシアノ化は、(非特許文献4)によってすでに記述されている。彼らは、触媒として5モル%の銅(I)塩を、そしてシアニド源としてシアン化ナトリウムを使用している。しかしながら、反応性が高く高価なヨード芳香族化合物を反応させた場合にのみ、良好な収率が得られる。この方法のさらなる欠点は、溶媒として、高価であり、洗浄が極めて困難なイオン性液体を使用している点にある。
【0010】
(非特許文献5)は、触媒としての10モル%のヨウ化銅(I)、助触媒としての20モル%のヨウ化カリウムの存在下に、シアン化ナトリウムを用いてブロモ芳香族化合物をシアノ化することを記述している。それに加えて、1当量のN,N’−ジメチルエチレンジアミンを添加する。臭化アリールが中間物としての対応するヨウ化物に転化され、次いでそれはシアネート化されると考えられる。
【0011】
(非特許文献6)による、ヨウ化銅(I)の触媒作用を用いた同様の方法においては、20モル%の1,10−フェナントロリン配位子とシアニド供与体としてのアセトンシアノヒドリンとを使用している。ここでもまた、助触媒としてヨウ化カリウムを使用しなければならない。
【0012】
上述の触媒的シアノ化すべてにおける重大な欠点は、使用されるシアノ化剤が、場合によっては極めて毒性が強いことであり、それは、水と接触するとシアン化水素酸が発生するという事実に起因している。M.ベラー(M.Beller)らが初めて、非毒性のヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムを用いた触媒的シアノ化についての記述を行った(非特許文献7)。しかしながら、その方法の欠点は、パラジウム触媒と組み合わせた場合にのみその反応が成功するという点にある。
【0013】
さらに、(非特許文献8)は、N,N’−ジメチルエチレンジアミン配位子の存在下にCu触媒を用いて臭化アリールをシアノ化させることを記述している。この配位子のコストが高いために、工業的使用は非現実的である。
【特許文献1】欧州特許第0 787 124B1号明細書
【特許文献2】米国特許第5,883,283号明細書
【特許文献3】米国特許第4,211,721号明細書
【特許文献4】米国特許第4,499,025号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第197 06 648A1号明細書
【特許文献6】国際公開第98/37 058号パンフレット
【特許文献7】独国特許第101 13 976号明細書
【特許文献8】独国特許第103 22 408.4号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 004 099A1号明細書
【非特許文献1】テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、2001、42、6707〜10
【非特許文献2】アンゲバント・ヘミー(Angew.Chem.)、2003、115、1700〜3
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・オルガノメタリック・ケミストリー(J.Organomet.Chem.)、2003、684、50〜5
【非特許文献4】ウー(Wu)ら、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、2002、43、387〜389
【非特許文献5】J.ザノン(J.Zanon)、A.クレイパーズ(A.Klapars)、およびS.L.ブッフワルト(S.L.Buchwald)、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.)、2003、125、2890〜1
【非特許文献6】クリスタウ(Cristau)ら、ケミストリー−ア・ヨーロピアン・ジャーナル(Chem.Eur.J.)、2005、11、2483−2492
【非特許文献7】ケミカル・コミュニケーションズ(Chem.Commun.)、2004、1388〜1389
【非特許文献8】T.シャレイナ(T.Schareina)、A.ザップ(A.Zapf)、およびM.ベラー(M.Beller)、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、2005、46、2585〜2588
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
まとめると、これまでに知られているハロゲン化アリールの遷移金属触媒を用いたシアノ化のほとんどすべては、高価で毒性の強いシアニド源か、または高価な触媒系のいずれかを使用していると強調されるような状況に止まっている。
【0015】
したがって、本発明の目的は、ハロ芳香族化合物をシアノ化させるための改良された方法を開発することであった。さらに詳しくは、この方法は、工業的規模で効率よく使用できるものでなければならず、また、触媒コストおよびシアニド源の毒性に関して、従来技術に勝るものでなければならない。意外なことには、銅化合物と安価な添加物とを組み合わせると、ハロゲン化アリールと、非毒性のシアニド源、たとえばヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムとの反応に触媒作用を与えることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的は、特許請求の範囲に従って達成することが可能であって、一般式(I)
Ar−CN (I)
の、場合によっては置換された芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを触媒的に調製するための方法において、
一般式(II)
Ar−X (II)
[式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素もしくはスルホネート、好ましくは塩素および臭素、より好ましくは臭素であり、Arは、場合によっては置換された芳香族またはヘテロ芳香族基である]の対応するハロゲン化アリールを、銅化合物と1〜3個の窒素原子を有する単座の5員〜6員環ヘテロ芳香族アミンとの存在下に、シアニド供与体としてのヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムと反応させることにより実施する。
【0017】
本発明において使用されるシアノ化反応剤である、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムは、非毒性であり、分解することなく水中に溶解し、食品および飲料産業においてさえ使用される(たとえば、食卓塩の製造またはワインの保存のため)(レンプ・レキシコン・ヘミー(Roempp Lexikon Chemie)、ゲオルグ・ティーメ・フェルラーク(Georg Thieme Verlag)、シュツットガルト/ニューヨーク(Stuttgart/New York)、1999)。
【0018】
使用される銅化合物は、公知の銅(I)および銅(II)化合物であってよい。典型例は、ハロゲン化銅たとえばCuI、CuBr、銅カルボン酸塩たとえばCu(OAc)、銅シアニドたとえばCuCN、銅アルコキシドたとえばCu(acac)、銅水溶液(copper aqua)、および銅アミン錯体たとえば[Cu(NH]SO、さらにはカチオン性銅化合物たとえばCu(BFなどが挙げられる。好ましいのは、ハロゲン化銅および銅(II)テトラフルオロボレートである。
【0019】
使用される銅化合物は、その反応混合物中に充分な量で存在させなければならない。当業者ならば、経済的な配慮(反応速度、収率、原料コスト)も加えて必要な使用量を選択するであろう。本発明による方法においては、少なくとも10〜100 000のオーダーの大きさ(order of magnitude)の触媒のターンオーバー値(turnover value)を実現することができる。使用されるハロゲン化アリールを基準にして、100ppm〜100モル%の量の銅化合物を使用するのが好ましい。1モル%〜30モル%使用するのが好ましい。
【0020】
本発明による方法において使用される溶媒は、一般的には、不活性有機溶媒および/または水である。有利な溶媒は、両性の非プロトン性溶媒たとえば、脂肪族エステルもしくはアミド、ヘテロ芳香族溶媒たとえば1−置換イミダゾールおよびそれらの混合物、特にトルエンおよびキシレンであることが見出された。1−アルキルイミダゾール、たとえば1−メチル−および1−ブチルイミダゾールを使用するのが特に有利である。
【0021】
その反応は、20〜220℃の温度で実施される。さらに詳しくは、80〜200℃、より好ましくは100〜180℃の反応温度が採用される。
【0022】
その反応は通常、周囲圧力で実施される。しかしながら、加圧下、たとえばオートクレーブ中または圧力管中で実施することも可能である。
【0023】
反応加速添加物または触媒安定化添加物を添加する。使用される添加物は、1〜3個の窒素原子を有する単座の、5員〜6員環ヘテロ芳香族アミンである。イミダゾールを使用するのが好ましい。使用されるイミダゾールは、アルキル−またはアリール−またはヘテロアリール置換のイミダゾールである。それらのアルキル、アリールまたはヘテロアリール基がさらに置換されていてもよい。さらに、ジ−もしくはトリ−イミダゾール、またはベンゾイミダゾール(ベンゾ縮合環の中にさらにヘテロ原子置換基を有していてもよい)を使用することもできる。特に好ましいのは、アルキル置換イミダゾール、たとえば、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−sec−ブチルイミダゾール、1−tert−ブチルイミダゾール、1−オクチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾールなど、1−メチルベンゾイミダゾール、1−エチルベンゾイミダゾール、1−プロピルベンゾイミダゾール、1−イソプロピルベンゾイミダゾール、1−ブチルベンゾイミダゾール、1−sec−ブチルベンゾイミダゾール、1−オクチルベンゾイミダゾール、1−ベンジルベンゾイミダゾールなどである。1−メチルイミダゾールおよび1−ブチルイミダゾールを使用するのが、特別に好ましい。
【0024】
イミダゾールは一般に、触媒に対して、1:1から10 000:1までの(モル配位子:触媒の比)比率で使用される。それらが溶媒として機能してもよい。
【0025】
いくつかの環境下においては、複数の配位子を添加することにより、プラスの相乗効果が得られる。
【0026】
本発明による方法において使用されるシアニド源、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、およびたとえば銅化合物と1−アルキルイミダゾールとの組合せからなる、それに対応する触媒系により、一般的に公知の反応系と比較して、本発明の反応において顕著に良好な結果が実現できるようになる。従来技術と比較すると、下記のよう点において顕著な進歩が認められる:1.高価なパラジウム触媒に代えて安価な銅触媒を使用、2.従来技術のシアニド源よりも、顕著に低レベルの安全手段で取り扱うことが可能な、非毒性で安全なシアニド源を使用、3.ヨウ化物の添加不要、4.顕著に広い基質範囲、および、5.高価な配位子系に代えて、顕著に安価で工業的かつ商業的に容易に入手可能な添加物を使用。したがって、各種の基質について各種のシアノ化方法を比較すると(表3)、公知の現行の方法よりも、本明細書に記述された本発明による方法が顕著に優れていることが判る。
【0027】
原理的には、芳香族化合物またはヘテロ芳香族の使用に関しては、制限はない。具体的には、Ar基は、その環の中に1、2または3個のヘテロ原子たとえば窒素、酸素または硫黄を有する、(C〜C18)−ヘテロアリール基または(C〜C19)−アリール基であってよい。
【0028】
Ar基は、8個までの置換基を担持することが可能であり、それらは互いに独立して、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−シクロアルキル、(C〜C)−アルケニル、(C〜C)−アルキニル、(C〜C20)−アラルキル基、OH、O−[(C〜C)−アルキル]、OC(O)−[(C〜C)−アルキル]、O−フェニル、フェニル、NH、NO、NO、N[(C〜C)−アルキル]、NH[(C〜C)−アルキル]、NHC(O)−[(C〜C)−アルキル]、N[(C〜C)−アルキル]C(O)−[(C〜C)−アルキル]、SH、S−フェニル、S−[(C〜C)−アルキル]、フッ素、塩素、CF、CN、COOH、COO−[(C〜C)−アルキル]、CONH−[(C〜C)−アルキル]、COO−フェニル、COOH−フェニル、CHO、SO−(C〜C)−アルキル、SO−(C〜C)−アルキル、PO−(フェニル)、PO−[(C〜C)−アルキル]、PO、PO[O−(C〜C)−アルキル]、SOH、SOM、SO−[(C〜C)−アルキル]、Si[(C〜C)−アルキル]、(C〜C)−ハロアルキル、および(C〜C)−アシルであってよい。
【0029】
(C〜C)−アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチルが考えられるが、これにはすべての結合異性体が含まれる。それらは、(C〜C)−アルコキシ、(C〜C)−ハロアルキル、OH、ハロゲン、NH、NO、SH、S−(C〜C)−アルキルによって1置換または多置換されていてもよい。
【0030】
(C〜C)−アルケニルは、少なくとも1個の二重結合を有する、上述の(C〜C)−アルキル基(メチルは除く)を意味すると理解されたい。
【0031】
(C〜C)−アルキニルは、少なくとも1個の三重結合を有する、上述の(C〜C)−アルキル基(メチルは除く)を意味すると理解されたい。
【0032】
(C〜C)−アシルは、−C=O官能基を介して分子に結合された(C〜C)−アルキル基を意味すると理解されたい。
【0033】
(C〜C)−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチル基などを意味すると理解されたい。それらは、1個または複数のハロゲンおよび/またはN−、O−、P−、S−含有基によって置換されていてもよいし、および/または、その環の中にN、O、P、S原子を有してよく、たとえば1−、2−、3−、4−ピペリジル、1−、2−、3−ピロリジニル、2−、3−テトラヒドロフリル、2−、3−、4−モルホリニルであってもよい。それは、(C〜C)−アルコキシ、(C〜C)−ハロアルキル、OH、ハロゲン、NH、NO、SH、S−(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アシル、(C〜C)−アルキルによって1置換または多置換されていてもよい。
【0034】
(C〜C19)−アリール基は、6〜19個の炭素原子を有する芳香族基を意味すると理解されたい。具体的には、それらには、たとえばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニル基などの化合物が含まれる。それは、(C〜C)−アルコキシ、(C〜C)−ハロアルキル、OH、ハロゲン、NH、NO、SH、S−(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アシル、(C〜C)−アルキルによって1置換または多置換されていてもよい。
【0035】
(C〜C20)−アラルキル基は、(C〜C)−アルキル基を介して分子に結合されている、(C〜C19)−アリール基である。
【0036】
(C〜C)−アルコキシは、酸素原子を介して対象の分子に結合されている(C〜C)−アルキル基である。
【0037】
(C〜C)−ハロアルキルは、1個または複数のハロゲン原子によって置換された(C〜C)−アルキル基である。
【0038】
本発明の文脈においては、(C〜C18)−ヘテロアリール基は、3〜18個の炭素原子からなり、その環の中に1、2または3個のヘテロ原子、たとえば窒素、酸素または硫黄を有する、5員、6員または7員環芳香族環構造を指している。そのようなヘテロ芳香族は、具体的には、たとえば1−、2−、3−フリル、たとえば1−、2−、3−ピロリル、1−、2−、3−チエニル、2−、3−、4−ピリジル、2−、3−、4−、5−、6−、7−インドリル、3−、4−、5−ピラゾリル、2−、4−、5−イミダゾリル、アクリジニル、キノリニル、フェナントリジニル、2−、4−、5−、6−ピリミジニルのような基であると考えられる。(C〜C19)−ヘテロアラルキルは、(C〜C20)−アラルキル基に対応するヘテロ芳香族系を意味すると理解されたい。
【0039】
使用可能なハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。
【0040】
[実施例]
一般的手順:
オートクレーブ中で、1当量のハロゲン化アリールもしくはヘテロハロゲン化アリール(heteroaryl halide)、2当量の1−アルキルイミダゾール、0.1当量のCuI、0.2当量の乾燥K[Fe(CN)](ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム)、GC分析のための内部標準としてのテトラデカン、および適切な量のトルエンをアルゴン雰囲気下で組合せ、160℃に加熱した。(そのK[Fe(CN)]は、粉体状のK[Fe(CN)]・3HOを、1mbar以下の真空中80℃で少なくとも24時間加熱することにより乾燥させた)。16時間後に、その反応混合物を冷却して、室温とした。転化率と収率はガスクロマトグラフィーによって測定した。慣用される作業(蒸留、結晶化またはクロマトグラフィー)に従って、生成物の単離を行った。
【0041】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
Ar−CN (I)
の、場合によっては置換された芳香族またはヘテロ芳香族ニトリルを、
一般式(II)
Ar−X (II)
[式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素またはスルホネートであり、Arは、場合によっては置換された芳香族またはヘテロ芳香族基である]の対応するハロゲン化アリールを反応させることによって、触媒的に調製するための方法であって、
銅化合物の存在下、ならびに1〜3個の窒素原子を有する単座の、5員〜6員環ヘテロ芳香族アミンの存在下に前記反応を実施し、使用されるシアニド供与体がヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
使用される前記銅化合物が、公知の銅(I)および銅(II)の塩または錯体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される前記銅化合物が、ハロゲン化銅、銅シアニド、または銅(II)テトラフルオロボレートであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用される、1〜3個の窒素原子を有する単座の、5員〜6員環、置換または非置換ヘテロ芳香族アミンが、置換イミダゾール、より好ましくは1−アルキルイミダゾールであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記銅化合物を、使用される前記ハロゲン化アリールAr−Xを基準にして、1ppm〜100モル%、好ましくは10ppm〜30モル%、より好ましくは0.1モル%〜10モル%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンを、銅化合物対アミンのモル比が、1:1から1:10 000まで、好ましくは1:1から1:1000まで、より好ましくは1:1から1:200までの量になるように使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応を、不活性有機溶媒および/または水の中で実施することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応を、20〜220℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Arが、環の中に窒素、酸素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、(C〜C18)−ヘテロアリール基または(C〜C19)−アリール基であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用される前記ハロゲン化アリールが、2−ブロモベンゾトリフルオリド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン、4−ブロモニトロベンゼン、2−ブロモ−6−メチルアニリン、2−アミノ−5−ブロモ−3−メチル安息香酸、2−アミノ−5−クロロ−3−メチル安息香酸、5−ブロモピリミジン、2−ブロモ−m−キシレン、2−ブロモピリジン、2−クロロピリジン、3−ブロモピリジン、3−クロロピリジン、2−ブロモチアゾール、または3−ブロモフランであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2008−63336(P2008−63336A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234347(P2007−234347)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(506207853)サルティゴ・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】