説明

荷物及び人を検査するための反射及び透過モードのテラヘルツ画像化

パッケージ、荷物又は衣類内の爆発物又は化学兵器のような禁制品を検出するためのシステムが、1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールを含む。それぞれのモジュールは、テラヘルツ放射の発生又は受信、或いは発生および受信の両方を行う。テラヘルツ放射の一部は物品から反射され、テラヘルツ放射の残りは物品を透過する。処理装置は、物品の特性を決定するために、反射及び透過テラヘルツ放射を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全体が本明細書で参考として援用する、2004年5月26日出願の米国仮出願第60/574643号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、特定の種類の物品を探知するためのテラヘルツ放射を使用したシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
コンピュータ断層撮影(CT)画像化処理は、荷物の内部に隠されているかもしれない密輸品などの様々な種類の物品を非破壊で検査するために使用されてきた。しかし、CTシステムはX線を放射するので、こうしたシステムの近くに立つかもしれない乗客のみならず、このシステムの操作者にも健康上の危険をもたらす可能性がある。従って、CTシステムは、一般に、電離放射線から操作者及び乗客を保護するための何らの種類の遮蔽体を有する。更に、CTシステムは、物品の形状及び体積といった他の特性と共に物品の密度を解析できるが、これらのシステムは分光能力を有しておらず、従って物品の化学的組成を解析できない。更に、X線は、物品の屈折率及び吸収係数に起因する光の特質を感知できない。これらの特性を測定できれば、固有のコントラストの大きな画像が得られ、材料の反射、吸収及び散乱の特性について多くのことを明らかにできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、光学的及び分光学的調査能力を提供することもできる非破壊型画像化システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して言えば、本発明は、他の物体或いは材料又は物質内に隠され又は埋め込まれているかもしれない物品を検出するためのシステム及びその操作方法を対象とする。このシステムは、1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールを含む。それぞれのモジュールは、テラヘルツ放射を発生させるか又は受信するかのいずれか、或いは発生および受信の両方を行う。テラヘルツ放射の一部は物体により反射され、テラヘルツ放射の残りは物品を透過する。処理装置が、反射及び透過されたテラヘルツ放射を解析して、物品の特性を決定する。処理装置は、物品の2次元画像又は3次元画像、或いは2次元画像および3次元画像の両方を形成できる。処理装置は、物品の特定の領域のピクセル又はボクセルを形成、或いはピクセルおよびボクセルの両方を形成できる。
【0006】
特定の具体例では、このシステムは、反射モード又は透過モード、或いは反射モードおよび透過モードの両方におけるテラヘルツ時間領域分光を使用し、それにより物品がテラヘルツ放射によって調査される。物品は、その2次元画像又は3次元画像の形成のため、1つの位置だけで調査されることも、多くの位置で調査されることもできる。物品は、露出した爆発材料、或いは包装、パッケージ、鞄、衣類又は他の物品内に隠された爆発物であり得る。従って、テラヘルツ放射は、露出された、又は他の物体、材料又は物質内に隠された物体、材料及び/又は物質の検出のために使用される。物品は、透過又は反射された放射の複数の解析のうちの1つ又は複数によって識別される。放射の解析は、パルス飛行時間、減衰、反射、屈折、回折、散乱、偏光の変化、又はスペクトル成分を含むことができる。
【0007】
このシステムの具体例は、以下の1つ又は複数の効果を有することができる。このシステムは、物品の材料の表面模様(texture)、その周波数依存性の屈折率(誘電率)、周波数依存性の吸収、複屈折、形状及び体積を解析できる。更に、このシステムは、物品の他のスペクトル情報を提供できる。THz装置は、電離放射を使用しないため、遮蔽体を必要としない。X線放射(又は調査用放射の他の浸透形態)が使用できる場合、その画像をTHz画像と融合させることによって、システムの全体的な物品検出精度が更に向上する。
【実施例】
【0008】
次に図面を参照すると、本発明の原理を具体化したシステムが、図1a及び図1bに示されており、このシステムは、全体として10と指定されている。システム10は、荷物を走査するために時間領域解析を使用したテラヘルツ(THz)画像化及び分光爆発物検出システムである。システム10は、荷物の中身の画像化、及び荷物内に置かれている可能性のある物品が爆発物である特徴の検出のために、テラヘルツ放射(T放射)を放射し且つ/又は受信する、配列12a及び12bなどの1つ又は複数のテラヘルツ・モジュール配列を含む。ベルト14は、鞄16を配列12a及び12bを通って移動させる。ベルトの速さが大きいため、システム10は、安全のために密閉できる。しかし、放射遮蔽体は不要であり、操作者が鞄に容易に近づくことができるように開かれたシステムが実現できる。また、システム10は、フェムト秒レーザなどのファイバ結合レーザ19と、12aによって発生されるTHzパルスが、THz受信機12bが励起され、又はオンにされる瞬間に正確に同期されることを可能にする光遅延20と、データ取得用及び解析用のコンピュータなどの処理装置21と、ヒューマン・マシン・インターフェース22とを含む。インターフェースは、操作者にパッケージの中身の画像が示され、爆発物、可燃性液体、化学兵器、禁制品及び他の危険物について知らされるところである。
【0009】
特定の具体例では、配列12a及び12bはそれぞれ、好ましくは約0.01〜10THzの範囲で動作する、線形配列された3つの千鳥配列された128個のテラヘルツ送信機/受信機モジュール13の2つの群を含む。従って、システム10は、128個の放射モジュール13からなる3つの線形配列12aと、システム10を通過する荷物を調査するためのTHz信号を受信する128個の受信モジュール13からなる別の3つの線形配列12bとを使用する。それぞれの配列内の各モジュール13は、約3×128×2.25mmまたは860mmのライン走査幅をもたらす直径約2.25mmのTHzビームを独立に発生又は受信する。線形配列の第2のシステムは10と同じやり方で構成できるが、10とは直交して配置され、ベルトが鞄を両方の組のセンサを通って移動させる際に、鞄を直交軸に沿って同時にTHz探査することを可能にする。従って、この構成によって、鞄が水平方向と鉛直方向の両方で走査されることが可能となる。反射波形は、各側の約300mmの深さ(合計約600mm)について取得され、約150Hzで約2000psの波形の取得が必要とされる。次に、ベルト速度は約0.3m/sであり、約2.25mm平方のピクセル解像度で、およそ1450個の鞄/時間の走査速度がもたらされる。
【0010】
ある具体例では、発生源19および走査装置20は、光ファイバ・ケーブル23によってモジュール13に結合される。発生源19は、Ti:サファイア・パルス・レーザにできる。或いは、約2ピコ秒未満、好ましくは約0.2ピコ秒未満の継続時間の光パルスを生成できる任意のパルス・レーザが、発生源19としてTi:サファイア・パルス・レーザの代わりに用いることができる。例えば、その内容全体が本明細書で参考として援用される米国特許第5880877号に記載されたレーザが、発生源19として使用できる。従って、Ti:サファイア・レーザ、Cr:LiSAFレーザ、Cr:LiSGAFレーザ、Cr:LiSCAFレーザ、Erドープ・ファイバ・レーザ、Ybドープ・ファイバ・レーザ及び利得(ゲイン)スイッチング・ダイオード・レーザなどのレーザが、発生源19としての使用に適している。更に、システム10は、その内容全体が本明細書で参考として援用される米国特許第5663639号に記載された(フェムト秒レーザの代わりの)連続波光源を使用できる。テラヘルツ・モジュール13は、その内容全体が本明細書で参考として援用される米国特許第5789750号に記載された任意の種類のものにできる。
【0011】
図2〜図3は、テラヘルツ・モジュール13の一具体例を示している。図示するように、テラヘルツ・デバイス36が、電磁放射を発生させ且つ/又は検出するために各テラヘルツ・モジュール13内に取り付けられている。テラヘルツ・デバイス36は、電極対を有しており、低温育成ガリウム砒素半導体基板や他の適切な基板材料に接合されている。モジュール13はGRINレンズなどの中継光学部品30を更に含む。この中継光学部品は、デバイスの製造をより容易にし、また光ファイバ32の出力を最適なスポット・サイズに合焦させるのにも役立つという2つの目的を果たす。更に、中継光学部品30(又は他の中間光学部品)により、テラヘルツ・デバイス36のすぐ近くからファイバ32が取り除かれる。これは、送信機の場合には、放射されたテラヘルツ放射が、送信機基板ではなく、ファイバ32内に結合される可能性があるからである。
【0012】
蓋41を有する工業用の硬化されたケース又は筐体40により、システムは密封され、環境的な変動要素及び粗雑な扱いから保護される。複数の導電性ピン49が、電気絶縁ブッシング52に接合される。このブッシングは、筐体40内のブッシング開口54に押し込まれて接合される。ファイバ開口56が、ケース40に配置され、それに接合されたファイバ32を有するフェルール62を受けるように構成される。複数の取付け開口58もまた、デバイス29を取付け面に機械的に固定するためにケース40に設けられる。
【0013】
テラヘルツ・モジュール13は、アルミナ又は他の適切な材料で作ることのできる光学部品取付けプレート又はランチャー(launcher)42をも含む。プレート42は、中継光学部品30、ファイバ・ピロー・ブロック47及びファイバ32を所定位置に保持し、またデバイスのための電気接触を提供する。テラヘルツ・デバイスのモジュールへの組立てを容易にするために、担体又は窓44も設けられる。窓44は、標準のマイクロ製造技術を用いて容易に製造でき、またシリコン或いは他の互換材料から容易に製造できる。窓44は、ケース40にはんだ付け又は接合できる。シリコン、サファイア、アルミナ又は他の様式のテラヘルツ・レンズ31が、テラヘルツ・デバイス36から発せられる電磁波放射の発散を減少させるために窓44の背に取り付けられる。レンズ31の構成は一般に無収差であるが、THzビームの視準又は収束を向上させるために、非球面結合レンズも使用できる。
【0014】
ライザー・ブロック45及びファイバ・ピロー・ブロック47は、ケース40の底内面上の適切な高さに取付けプレート42及びファイバ32をそれぞれ位置付けするために設けられ、ファイバが中継光学部品30及びテラヘルツ・デバイス36と位置合わせされることが保証される。ライザー・ブロック45は、モジュールの底に組み込むことができ、従って部品数が減少する。
【0015】
テラヘルツ送受信機についてのさらなる詳細は、その内容全体が本明細書で参考として援用される2004年11月19日に発行された米国特許第6816647号に記載されている。
【0016】
特定の具体例では、それぞれのテラヘルツ・モジュール13は、Telcordia通信規格に合わせて製造された、小型の光ファイバ・ピグテイル型密閉T放射アンテナ・モジュールである。各モジュールの正面には、THzパルスを自由空間に効率的に結合するためのシリコン無収差超半球レンズがある。このレンズもまた、回折限界の焦点能力を提供するために非球面にできる。レンズの背後には、LT−GaAs光導電THzアンテナがある。イオン注入型サファイア上シリコン、Er:GaAs、LT−InGaAs又はBe:GaAsを含めて、他の半導体が使用できる。光パルスは、永続的に位置調整されるファイバによって光導電体に合焦される。サブミクロン分解能を有する、カスタム・コンピュータにより制御された光ファイバはんだ付けステーションが、これらのモジュールを製造するために使用できる。これらのT放射モジュールは、図1に示す構成などの、多くのT放射配列構成に構成できる。
【0017】
特定の具体例では、図1cに示すように、システム10は、2つの様相、透過モード及び反射モードでTHz画像を形成するために、配列12a内のモジュール13からT放射を生成することによって試料又は物品を調査する。透過モードでは、THzパルスは、荷物全体を完全に通過し、配列12bのモジュール13によって受信される。透過パルスのスペクトル依存の振幅及び時間遅延が単一のピクセルを表現するために解析され、この単一のピクセルは、他のピクセルに追加されると、走査される荷物の2次元画像をもたらす。反射モードでは、THzパルスは、鞄の中身を含む材料層の界面で反射し、これらの層からの一連の戻りパルスは、部分反射ビーム分割ミラー15aによって、配列12cに構成されたモジュール13に向かって反射され、配列12cのモジュール13によって順に検出される。このパルス系列は、物体の3次元画像を構成するために使用される。深さ分解能は約1mm未満であるが、約2.25mmに拡大されることができ、約2.25mmの立方体の体積のピクセル(即ち「ボクセル」)がもたらされる。そのスペクトル吸収、時間遅延(屈折率)、特定の吸光係数及び反射率における爆発物の特徴的な徴候が、特定のピクセル又はボクセル内の爆発物を識別するために別個に、また組み合わせて使用できる。
【0018】
別の具体例では、図1dに示すように、両方の配列12a、12b内のモジュールが、テラヘルツ放射を発生する。配列12d内のモジュール13は、ミラー15bによって配列12dに向けられた配列12aからの透過テラヘルツ放射を受信し、同様にミラー15bによって配列12dに向けられた(配列12bによって最初に発生された)反射テラヘルツ放射を受信する。更に、配列12c内のモジュール13は、ミラー15aによって配列12cに向けられた配列12bからの透過テラヘルツ放射を受信し、同様にミラー15aによって配列12cに向けられた(配列12aによって最初に発生された)反射テラヘルツ放射を受信する。次いで、透過及び反射された放射は、上述したように解析される。
【0019】
従って、システム10は、反射、透過又はその両方のテラヘルツ時間領域分光を使用した爆発物のデバイス検出構成であり、材料が約0.05THz〜10THzの範囲、又はその範囲のうちの一部分の範囲のスペクトル成分を伴うTHzパルスによって調査される。材料は、2次元画像又は3次元画像を形成するために、1つの位置だけで調査されることも、多くの位置で調査されることもできる。材料は、露出した爆発材料、或いは包装、パッケージ、鞄、衣類又は他の品目に隠された爆発物であり得る。従って、テラヘルツ放射が、露呈され又は他の物体、材料又は物質内に隠された物体、材料及び/又は物質などの物品を検出するために使用される。爆発物は、透過又は反射パルスの解析の複数の方法のうちの1つ又は複数を使用して識別され、パルス飛行時間、反射率、偏光の変化、減衰、スペクトル成分が、調査される材料の特性の一部である。1)透過パルスが、爆発物の既知のTHzスペクトルの特徴について解析され、2)反射パルスが、爆発物の既知のTHzスペクトルの特徴について解析され、3)透過画像が、爆発物に対応する構造について解析され、4)反射画像が、爆発物に対応する構造について解析され、5)ある体積中の屈折率が、爆発物と同じであるか解析され、6)ある体積中の減衰が、爆発物と同じであるか解析される。材料は、小さい体積について、上記の材料特性1)から6)までの計算のために透過又は反射断層撮影用に構成されたTHzパルスを用いて調査できる。パルスの比較的高い周波数スペクトル成分の一部が隠蔽材料により減衰され得るので、広帯域THzパルスが使用される。しかし、パルスのいくらかの部分は透過し、特性1)から6)までの分析が可能になる。
【0020】
スペクトルのマイクロ波と赤外線領域との間にあるテラヘルツ波は、衣類、皮、プラスチック、セラミック、紙、ボール紙及び他の一般的な材料に浸透することができる。システム10は、隠された爆発物、金属及び非金属兵器(セラミック、プラスチック又は複合銃及びナイフなど)、可燃物、生物兵器、化学兵器、及び荷物内に隠された他の脅威物を明らかにするために、テラヘルツ画像を使用する。X線画像に比較して優れた化学的特異性を有することに加えて、テラヘルツ画像化は、安全用遮蔽体の必要性が低い安全な非電離放射を使用する。画像は、距離の短い場合の人間の目に類似した、サブミリメートルの分解能を有することができる。爆発物、化学兵器及び生物兵器は、テラヘルツ領域において特徴的スペクトルを有し、広帯域テラヘルツ画像は、それぞれのピクセルについてのスペクトル全体を取得する。これによって、操作者は、たとえば衣類の下の爆発デバイスの一意的に対比された複数の画像を検査することだけでなく、爆弾を含む爆発材料を分光学的に示すことによっても爆発物を識別できる。爆発物は好ましくは、操作者に特別な「色」により示される。つまり、「色」は、操作者へ、爆発材料が検出されたかもしれないことの警告を示すものである。
【0021】
本発明によれば、システム10を用いた爆発物検出のための荷物のTHz透過及び放射画像化が図4aに示されている。この実施例では、25mm×50mm×75mmの長方形の塊の爆発物が埋め込まれた、およそ600mm×800mm×300mmの荷物鞄が、THzの特徴を示している(例えば、その塊は、反射スペクトルにおける0.8THzの特徴、示唆的な減衰及び屈折透過率を示すRDXであることができる)。3つの異なるTHzパルス経路、「A」、「B」及び「C」が示されている。線形配列又は捜査システムからの他の経路は、明確化のため、明示的には示されていない。パルス経路「A」は、荷物を通過しない。パルス経路「B」は、荷物は通過するが、爆発ブロックは通過しない。パルス経路「C」は、荷物及び爆発ブロックを通過する。
【0022】
透過パルスは、経路「A」、「B」及び「C」において、荷物の底部を抜け出るように示されている。この実施例では、どの経路も、ミラー(金属)によって十分には減衰され又は遮断されていない。ミラーは、さもなければ、透過パルスを遮蔽する。3つの解析方法が、透過パルスに適用できる。1)経路内の質量に比例したパルス伝播時間(屈折率)、2)パルスの減衰/反射が質量、散乱及び化学組成に関連する、3)周波数領域スペクトルが化学組成に関連する。図4cの2次元透過画像は、荷物を通る格子行列内の各経路の解析から、仮定的に構成される。
【0023】
反射パルスは、経路「A」、「B」及び「C」において、荷物の上部を通って抜け出るように示されている。発生されたTHzパルスの一部は、2つの材料間の各界面から反射する。空気−衣類又は衣類−爆発ブロックなどの、異なる材料間の境界面は、強い反射をもたらす。衣類−衣類などの、類似の境界面からの反射は、存在するが、より弱い。3つの透過解析、即ち伝播、減衰及びスペクトルはそれぞれ、各層からの反射パルスのそれぞれに順々に適用できる。各層の厚さは、パルス伝播時間から計算でき、また反射パルスの極性を使用して、各層の密度を決定するためのアルゴリズムが策定できる。戻りパルスはそれぞれ、連続的に減衰される。更に、反射パルスはスペクトルの特徴を伝えることができ、このスペクトルの特徴は、爆発物の識別及び警告の発生のために使用できる。図4bに示す反射プロファイルの断面は、反射パルス列から構成された、経路「A」、「B」及び「C」を含む単一の断面を示している。反射スペクトル(挿入図参照)は、爆発物の特徴を有し、また整合的な密度及び減衰情報と組み合わされて、警告を引き起こす(従って、爆発物は、例えば赤色に色付けされる)。完全な3D再構成は、一連の横断面図を組み合わせることによって実現できる。
【0024】
従来のコンピュータ断層撮影(CT)X線画像は、体積要素の密度を、形状及び体積の他の特性と共に解析することによって爆発物を検出できる。システム10は、同じ密度解析を使用することもでき、爆発物が検出されるときに警告アラームを発する。更に、システム10は、浅部の爆発物についての検索可能な高品質スペクトル情報を提供する。この特徴は、偽陰性ではなく真陽性の警告を発する確率を高めるために追加の判別情報を提供する。回転CT・X線センサのとは異なり、THz線形配列は静的なものとでき(また真の2次元配列を構成することもまた可能であり)、それによって、理論的画像化速度が向上される。システム10は、電離放射を用いず、遮蔽体を必要としない。従って、システム10は、誤った警告の減少した、またコスト及びサイズの減少された、より高速な検査を行うことができる。
【0025】
本発明によれば、図1a及び図1bに示すシステム10は、爆発物検出のためにTHz透過及び反射分光及び画像化を使用する複数の構成のうちの1つにすぎない。本発明によれば、他の構成は、光伝導による発生及び/又は検出の代わりに、或いはそれに加えて、THz電気光学的発生及び/又は検出を使用する。モジュール13は、送信機又は受信機、或いはその両方(即ち送受信機)として作動することができ、ダイポール、ボウタイ型、ログ・スパイラル他などの共振又は非共振アンテナを使用できる。
【0026】
システム10は、パルス・レーザの代わりに、1つ又は複数の固定周波数又は整調可能なCWレーザを使用して駆動されることもできる。この場合、整調可能CW・THz放射は、パルスTHz放射ではなく、モジュール13によって発生され、コヒーレントに受信される。システム10は、いくつか例を挙げると、非線形透過線、量子カスケード・レーザ構造、電子発振器及びガス・レーザなどの、全電子又は半導体ベースのTHz発生システムを使用できる。いくつか例を挙げると、ボロメータ、熱結合、ダイオード構造、スモール・バンドギャップ検出器を含めて、非コヒーレント及びコヒーレントTHz検出技術もまた使用できる。このシステムは、1つ又は複数のTHz送信機及び1つ又は複数のTHz受信機を使用できる。送信機は、点状、線状、2次元、軸状、又は他の配列構成で構成できる。受信機は、点状、線状、2次元、軸状、又は他の配列構成で構成できる。送信機及び受信機配列の1つ又は複数の列は、透過及び/又は反射用に構成できる。送信機及び受信機は、THzスペクトル領域で結合された自由空間、光ファイバ又は導波路でもよい。送信機及び受信機は、自由空間、光ファイバまたは導波路に結合されたフェムト秒レーザ源又は連続波放射源によって光駆動できる。走査される物体は、静止していても、移動していてもよい。送信機及び受信機は、静止型(たとえば直接2D配列画像生成)、移動型又はラスタ・スキャン型でもよい。送信機及び受信機は、大きい物体又は人物などの非静止物体を走査する場合に可搬的に及び機敏に使用できるために、ペン型(wand)又は他の手持ち式の自由配置可能な装置に構成できる。
【0027】
THz光システムは、反射素子又は屈折素子、或いはその両方の組合せを含むことができる。画像は、サンプリングされた各位置でのスカラー計算値の直接ピクセル割当てによって、又は各体積要素(ボクセル)についてスカラー値を計算するためのコンピュータ断層撮影アルゴリズムを介して生成できる。画像が構成された後に、特定の位置における、より広範な測定を行うことができる。これは、スペクトル強調を得るために、特定のボクセル上でより長い期間とどまる形を取ることができる。スキャン光遅延(受信パルスがサンプリングされる時間)は、パルス間の遅延の全て又は一部を包含する固定窓とでき、又は光遅延窓は、(たとえば深さプロファイルを)トラッキングできる。フェムト秒レーザ駆動システムでは、1つ又は複数のレーザ源が、送信機及び/又は受信機駆動に使用できる。1つ又は複数の光増幅器システムが使用できる。光レーザ・システムは、光ファイバ結合、自由空間型、或いは送信機又は受信機パッケージに全体又は部分的に組み込まれたものとできる。システム10は、X線、質量分析及び金属検出などの他の調査診断技術と組み合わすことができる。
【0028】
システム10内の感知及び画像形成のためのTHz放射の使用は、他のより従来的な画像化方法に比べて様々な利点を提供できる。例えば、テラヘルツ放射は、(単に電界強度|E(t)|ではなく、)伝播する電界E(t)が直接に測定できる、最も高い周波数を表す。結果として、画像化のためにTHz線を利用すると、できるだけ高い空間分解能で位相に敏感な測定を行うことが可能となる。また、多くの材料がTHz範囲で独特なスペクトル特徴を呈すので、分光画像化、感知及び識別の全てが実行可能である。テラヘルツ放射は、非電離型の生物学的に良性のものなので、混雑した環境におけるその実施は、たとえばX線画像化よりも健康及び安全上の危険性が少ない。THz画像化は、非接触型であり、超音波技術の妨げとなり得る音の伝播が不良な状態においても、布、真空、泡、絶縁体及び他の材料を容易に通過して作動できる。
【0029】
システム10は、テラヘルツ時間領域分光及び画像化(THz−TDS)を用いる。例えば、テラヘルツ周波数範囲内の広帯域単一サイクル・パルスの発生及び検出を提供するための超高速レーザ及び光エレクトロニクスを使用する。フェムト秒光パルスが、集積化ダイポール・アンテナを伴う、半導体基板上に光リソグラフィで定められる共平面のストリップ線の対からなるテラヘルツ・アンテナのゲート制御のために使用できる。ゲート・パルスは、ギャップを横断して過渡電流を誘発し、この電流は、図5a(時間領域のTHz波形)及び図5b(波形のフーリエ変換の対応する振幅及び位相)に示すように、THzスペクトル範囲で放射される。放射されたTHzビームは、高い空間コヒーレンスを示し、従来の光学素子を使用して収集され、平行にされ、合焦され得る。それは、著しいひずみを伴わずに、乾いた空気中を数メートル、容易に伝播する。これらのパルスは、コヒーレント・ゲート制御サンプリング方法を使用して検出される。送信機及び受信機を励起するために使用されるフェムト秒パルスの同期は、光遅延20(図1)を使用して達成される。送信機と類似の受信機アンテナは、光源からの同期フェムト秒パルスで光ゲート制御される。これはアンテナ間隙を有効に短絡し、従って、入射THzパルスが光電流を誘発できる。THzパルスとゲート光パルスの間の遅延の関数として測定されるこの光電流は、THz電界E(t)に比例する。
【0030】
爆発物は、相対的透過及び密度の飛行時間測定によって荷物のTHz画像で検出できるものの、爆発物がTHz領域においてスペクトル特徴を有することが分かっているので、THz分光を使用することにより、偽陽性及び偽陰性がより少なくなり、爆発物が確実に識別される。
【0031】
図6に示すように、複数の爆発物は、0.1〜3THzの1つ又は複数の広い吸収線からなる特徴的な透過スペクトル特徴を有する。図示するように、時間領域THz分光とフーリエ変換赤外線分光(FTIR)の両方を使用した、2次爆薬1、3、5トリニトロ−S−トリアジン(RDX)のスペクトルの特徴は、0.8THzで示す、広い吸収である。更に、HMX、PETN及びTNTのスペクトルが示されており、全てが特有のTHz吸収特徴を有している。透過で測定された爆発材料の厚さは一般に250ミクロンであったが、それに応じて、これらの爆発物の吸光係数は0.5THz超においてかなり大きいものである。最大3THzまでの透過吸収線の全てに達するためには、爆発物は、数ミリメートルの厚さであり、最良の信号対雑音比がもたらされる。0.5THz未満の吸収は数桁低く、この領域においては何センチメートルもの浸透が可能となる。透過における強い吸光を考慮すると、爆発スペクトルは、反射において最もよく識別できる。爆発物は、反射において対応する(周波数及び吸収を伴う指標の変化に対応する)スペクトル特徴を呈する。時間領域THz信号の飛行時間特性を使用すると、周波数領域の吸収スペクトル線に加えて(又はその代わりに)特徴を使用した爆発物の識別が可能となる。爆発物は、一般に衣類の層よりも遥かに密度が高く、それに対応して、衣類だけよりも遥かに多くの爆発層を通過するTHzパルスの飛行時間を遅延させる。予備データによって、爆発物は、低い周波数では衣類よりも吸収性が低いが、同程度の厚さのプラスチックのよりも吸収性が高いことが示されている。従って、図6は、THz特徴が、単独で、又はCT・X線に組み込まれたセンサの一部として使用でき、また爆発物を識別し、偽警告頻度を低減させることを示している。
【0032】
荷物に一般的な一部の材料(金属など)は、THzビームを通過させない、または、遮蔽する。この場合、透過画像は使用できないが、片面の反射画像は依然として使用できる。厚さの大きな他の材料は、THz放射を部分的に吸収し又は散乱させるため、それによって浸透の深さが制限される。完全な遮蔽でなければ、浸透は信号対雑音比の問題であり、この信号対雑音比は、送信電力と受信機ノイズと滞留時間(荷物処理速度)の妥協による。一般に、真の遮蔽体がその下の層を遮断しない限り、飛行時間解析及び反射振幅を使用したTHz透過と反射画像の両方が、(時間領域において)可能である。脅威物及び爆発物を画像(形状)又は屈折率(飛行時間)によって識別するシステムが、浸透する全ての深さにおいて有効である。一般に、THz信号の周波数スペクトルの一部は、スペクトルの殆どが遮断されていても浸透する。
【0033】
透過又は反射によって爆発物をその周波数領域スペクトルにより識別する能力は、介在する材料によってスペクトルが遮断され、不明瞭にされ、又は混同されるかどうかに依存することに留意されたい。金属、導電性材料(間隙のない固体)及び水(250ミクロンより大きい厚さ)は、THzビームの浸透を完全に妨げ、これらの材料によって完全に密閉される任意の体積の内部は、画像化できない。透過画像は遮断されるが、(水を含む)これらの材料はかなり反射的であり、また遮断層までの反射画像は依然として使用可能である。
【0034】
システム10は、時間領域テラヘルツ(TD−THz)分光及び/又は画像化を使用した爆発物の検出に関するものである。システム10及びその動作は、時間領域テラヘルツ爆発物検出システム(TD−THz EDS)ということができる。システム10は、安全上又は他の理由で、爆発物を感知し、爆発物が検出されると警報を発することが望ましい場合に、荷物、ハンドバック、小包、パッケージ、手紙、コンテナ、箱、衣類、靴、人、又は他の全ての形態の内部または表面に隠された爆発物を自動的に検出することを可能にする。システム10は、爆発物の自動検出が可能であるが、システム10及びその動作は、自動化又は非自動化のやり方で、全体的に又は部分的に実施できる。更に、システム10の多くの要素が、隠された爆発物の検出に関係しているが、システム10は、隠されていない爆発物の検出を向上させる。
【0035】
システム10は、スループット(又はポイント)検出モード又はスタンドオフ検出モードで物品を検査する。スループット・システムでは、テストされる物品又は人は、手作業で又は自動的にシステムに持ち込まれ、探知システムに運ばれ、且つ/又はそれを通過して運ばれる(例えば、荷物はベルトに乗って装置内へと進み、人は入口を通り抜ける)。スタンドオフの実例では、EDSセンサは、いくらか離れたところで、対象物(人など)を検査する。
【0036】
システム10は、そのセンサからデータを収集し、爆発物が存在する可能性が高いか、それとも存在しない可能性が高いかを自動的に判断する。この判断プロセスへの操作者の関与は不要であり、又はできる限り最小限に抑えることができる。自動化された検出によって、処理効率が向上し、誤りが減少し、操作者の数を減少させる。
【0037】
システム10による検査対象の物品は、完全に爆発物、部分的に爆発物であり且つ部分的に良性、又は完全に良性である材料からなる。(例えば、荷物内の)隠された爆発物の検出の場合、殆どの安全操作において、テスト対象の殆ど全ての物品が完全に良性である。隠された爆発物を含む稀な物品は、依然として殆どが良性の材料からなる。
【0038】
一般に、検出基準(即ち警告を発すること)として、何らかの閾値を使用する。以下で論じるように、検出可能な爆発物の最小量に対して警告するのではなく、著しい損害を及ぼし或いは(微量の残留物、又は脅威とならない物体ではなく)爆弾で構成される可能性が高いほどの爆発性があることを十分に示すような、対応する最低量、空間的構成又は物理的測定可能パラメータの他の何らかの組合せを定義することがしばしば望ましい。基準を爆発物の単なる分子の存在を超えて広げることによって、システム10による自動検出は向上できる。これらの基準は、警告を発する(また定義により他の全て良性の材料及び物体を除外する)検査対象物品内の隠された材料及び物体の組を規定する。警告を引き起こす物理的基準は、爆発物警告構成と呼ばれる。
【0039】
自動化モードでは、真陽性は、システム10が爆発警告構成を満たす物品を検査するときに生じ、適切に警告が発せられる。システム10が警告を作動し損ねる場合は、偽陰性が生じる。
【0040】
システム10が、爆発警告構成を満たさない物品を検査し、警告を始動しない場合は、真陰性が生じる。また、システム10が不適切に警告を発する場合は、偽陽性が生じる。
【0041】
従って、検査される多くの物品の結果を考慮すると、システム10は、真陽性の確率及び偽陽性の確率を有する(但し、偽陰性の確率は1−偽陽性であり、同様に、真陰性の確率は1−偽陽性である)。
【0042】
従って、脅威が見逃されないように、できるだけ高い(ほぼ1である)真陽性の確率を有することが望ましい。同様に、他も理由があるが、手作業による多くの探索が必要とされないように、非常に低い偽陽性の確率を有することが望まれる。
【0043】
本発明によれば、自動警告は、システム10のセンサ・データの1つ又は複数のパラメータの解析に基づく統計閾値及び決定アルゴリズムを満たすことに基づいて行われる。真陽性の確率が低すぎる場合、統計閾値及び決定アルゴリズムは、より容易に警告を発生するように調整できる(即ち厳しさが緩和され)。しかし、これは、偽陽性の確率を増加させるという望ましくない効果をもたらす。(極端には、システム10は常に警告するように設定されることがあり、真陽性の確率は1であるが、偽陽性の確率もまた1という結果を伴う)。従って、爆発物警告構成の存在可能性を除外する最も高い閾値を可能にするために、爆発物と良性の材料との対比が十分であり、また他の定義パラメータと十分に相関可能なセンサ・データの組を有することが望ましい。
【0044】
システム10からのTD−THzパルスは、透過であれ、反射であれ、試料の全て又は一部を照らす。自動検出は、透過モード又は反射モードにおいてTD−THz送信機及び受信機が試料の1次元画像、2次元画像又は3次元画像或いは「マップ」を収集するように構成される場合に向上され得る。このマップのために収集される生データは、試料上の複数の位置に対応する透過及び反射において記録されるTHz波形からなる。検査システムは、1つ又は複数の視界から1又は2次元でラスタ走査される単一の送信機および受信機の対である。或いは、センサ・システムは、走査され得る線形配列又は軸配列を含むことも、走査されることのできる2D配列を含むこともできる。
【0045】
1つ又は複数の位置を調査するセンサから提供されるTHz波形は、アルゴリズムによって処理されて、1次元、2次元又は3次元の空間データ・マップの各位置についての一般的な物理的測定又は経験的な量に対応する各位置の1つ又は複数のピクセル値が、計算される。反射では、TD−THz反射断層撮影法が、1次元、2次元又は3次元空間情報を計算するために使用される。透過では、計算された軸状又は計算された線形断層撮影が、1次元、2次元又は3次元空間情報を計算するために使用される。これは、合成開口技術などの任意の技術に適用できる。
【0046】
データ・マップの値は、(i)1つ又は複数の周波数における減衰及び/又は反射、(ii)1つ又は複数の周波数の屈折率、及び(iii)飛行時間、誘電率、散乱係数、分光データ及び密度(1立方センチメートル当たりのグラム)などの1次元、2次元又は3次元ピクセル値のうちの1つ又は複数を含むことができる。また、アルゴリズムは、一般的であり、かつピクセル寸法(体積又は領域)、平均化、精度、処理される時間領域TH波形の領域、周波数帯の数及び周波数分解能などのユーザ固有の制御特性を含む各データ解析アルゴリズム(data reduction algorithm)からの出力と共に、1次元、2次元又は3次元行列をもたらす。
【0047】
システム10のTD−THz画像化の特徴は、計算されたこれらの物理測定値のうちの1つ又は複数が、ある範囲の値は爆発物に属し、別の範囲の値は良性の材料に属すると分類され得ることであ。これらの範囲は、特定の爆発物を識別するために使用でき、或いは、上述の爆発物警告構成に属する1組の爆発材料を分類するのに役立つことができる。それらは、基準スペクトル又は測定値から計算でき、或いは、爆発物検出アルゴリズムをもたらすように完全に経験的に調整されることができる。この爆発物検出アルゴリズムは、許容可能な真陽性及び偽陽性の警告確率を有する。
【0048】
次いで、このデータ・マップは爆発物検出アルゴリズムによって処理され、この爆発物検出アルゴリズムは、データ・マップの各位置の測定値のそれぞれについて、これらの範囲の閾値を使用できる。爆発物検出は、データ・マップの個々の要素のそれぞれに対して個々に警告を発することができ、又はそれは、許容可能な真陽性及び偽陽性確率をもたらすために、それらをグループで又は全体で考慮できる。即ち、提供される空間情報は、爆発警告基準を向上させるために、個々のピクセル値と統計学的に相関されることができる。一例として、要件の組は以下のものを含む。
1)ある体積又は領域内の、爆発物閾値を個々に満たす個々のピクセルの数が、ある総閾値よりも多い又は平均値であること、及び/又は
2)ある体積又は領域内の、爆発物閾値を個々に満たす個々のピクセルの体積又は領域が、十分に連続しており、良性材料の空隙を含まないこと、及び/又は
3)個々に警告するピクセルのグループの1次元、2次元又は3次元幾何学的形状が、ある閾値基準を満たすこと、及び/又は
4)データ・マップの個々の要素の空間的関係を、データ・マップ内のその空間的分布に相関させる他の基準。
【0049】
TD−THz・EDSシステム10は、システム10からのTD−THzデータ・マップ、及び他のシステム・データ・マップを処理する結合アルゴリズムを考慮することによってその結合統計確率を向上させる(たとえば偽警告割合を減少させる)ために、他の爆発物検出システムと組み合わされることができる。他のシステムは、1つ又は複数のエネルギーでの2次元単一又はマルチ・ビュー透過X線、後方散乱X線、コンピュータ断層撮影X線、熱ニューロン散乱、サーモグラフ、MRI、四重極共鳴、ミリメートル波画像化及び又は他の爆発物検出システムであることができる。
【0050】
システム10の検出の各レベルの関係は、図7に示されている。具体的には、
レベル1: テスト対象の物品は、爆発構成が存在することも、存在しないこともある。
レベル2: システム10は、
テスト対象物品の1つ又は複数の空間位置からTHz波を取得するように、分離または1次元、2次元又は3次元配列構成された、透過構成された1つ又は複数のTD−THz送信機及び受信機、及び/又は
テスト対象物品の1つ又は複数の空間位置からTHz波を取得するように、分離または1次元、2次元又は3次元配列構成された、反射構成された1つ又は複数のTD−THz送信機及び受信機、並びに
任意選択で、試料内の単一点又は1次元、2次元又は3次元空間行列からの爆発物と良性材料との区別を提供できるデータを取得する1つ又は複数の他のセンサ(X線及びCT・X線など)
を使用する。これらのセンサは、レベル1からデータを取得し、レベル3にデータを供給する。
レベル3: ここでは、透過及び/又は反射THz波形の点、及び/又は1次元、2次元及び/又は3次元行列からなる未処理のデータ・マップが、レベル2からのテスト対象物品、及び/又は他のセンサ(X線、CT・X線センサ、質量分析及び金属検出など)からの等価のデータ・マップに空間的に相関される。
レベル4: このレベルでは、データ解析アルゴリズムが、レベル3からのデータ・マップを処理して、テスト対象物品に空間的に相関された物理的又は経験的パラメータの点、又は1次元、2次元若しくは3次元行列にする。
レベル5: 次いで、位置ごとの1つ又は複数の物理パラメータの1つ又は複数の点、並びに1次元、2次元及び3次元行列が、テスト対象物品内の位置に空間的に相関される。次いで、このマップ〔(p1,p2,…)及び/又は(p1,p2,…)及び/又は(p1,p2,…)i,j及び/又は(p1,p2,…)i,j,k〕は、レベル6の爆発物検出アルゴリズムによって使用される。
レベル6: 1つのアルゴリズム、又は組み合わされたアルゴリズムの組は、レベル5からのデータ・マップを使用し、許容可能な真陽性及び偽陽性確率を達成するために、1つ又は複数のパラメータについての統計的多変数基準を、マップ全体又はマップの一部を解析するための1つ又は複数の規則と共に適用する。特定の具体例では、処理装置21は、テラヘルツ放射の飛行時間特性を解析するアルゴリズムで実施できる。飛行時間解析は、調査対象の物品のバルク特性を決定するために、3次元画像と組み合わすことができる。飛行時間は、調査される物品の成分又は材料の独特な特徴を取得するために、反射放射に相関されることもできる。
【0051】
他の実施例は、特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1a】本発明によるテラヘルツ電磁波放射及び検出システムの概略図。
【図1b】図1aのシステムの一部の上面図。
【図1c】本発明によるテラヘルツ・モジュールの代替構成の上面図。
【図1d】本発明によるテラヘルツ・モジュールの別の代替構成の上面図。
【図2】本発明によるテラヘルツ・モジュールの一実施例の分解等角図。
【図3】本発明によるテラヘルツ・モジュールの一実施例の組立等角図。
【図4a】THzビームの3つの経路荷物内の爆発物のTHz透過及び反射画像の図であり、(A)は、荷物の外部、(B)は、荷物及び普通の内容物の通過、及び(C)は、荷物及び爆発ブロックの通過、荷物の底部を通過して出て行くように示された透過THzパルス、及び上部から出て行くように示された反射THzパルス列を示す。
【図4b】図6aの反射パルス列から生成された層のプロファイル断面の上部概念テラヘルツ画像の図。
【図4c】飛行時間及び減衰から計算された下部概念2次元透過テラヘルツ画像の図。
【図5a】時間領域(psec)で測定されたTHz波形を示す図。
【図5b】図5aに示すTHz波形の振幅スペクトルを示す図。
【図6a】約0.1THzと3THzの間の爆発物RDX(透過率)の透過スペクトルを示す図。
【図6b】約0.1THzと3THzの間の爆発物RDX(吸光)の透過スペクトルを示す図。
【図6c】約0.1THzと3THzの間の爆発物HMX(吸光)の透過スペクトルを示す図。
【図6d】約0.1THzと3THzの間の爆発物PETN(吸光)の透過スペクトルを示す図。
【図6e】約0.1THzと3THzの間の爆発物TNT(吸光)の透過スペクトルを示す図。
【図7】本発明によるシステムのマルチレベル調査プロセスを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を探知するためのシステムにおいて、該システムが、1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールと、処理装置とを含み、
前記1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールのそれぞれが、テラヘルツ放射の発生または受信のいずれか、或いは発生および受信の両方を行い、前記テラヘルツ放射の一部が前記物品から反射され、前記テラヘルツ放射の残りが前記物品を透過し、
前記処理装置が、前記物品の特性を決定するために、透過及び反射されたテラヘルツ放射の情報を解析するようになっている、物品を探知するためのシステム。
【請求項2】
前記処理装置が、前記物品の2次元画像又は3次元画像、或いは前記物品の2次元画像および3次元画像の両方を形成するようになっている、請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項3】
前記処理装置が、前記物品の特定の領域のピクセル又はボクセル、或いはピクセルおよびボクセルの両方を解析するようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項4】
前記透過テラヘルツ放射が、前記物品のスペクトルの特徴について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項5】
前記透過されたテラヘルツ放射が、前記透過されたテラヘルツ放射の減衰について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項6】
前記透過されたテラヘルツ放射が、前記透過されたテラヘルツ放射の時間遅延について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項7】
前記反射されたテラヘルツ放射が、前記物品と他の材料との少なくとも1つの界面により反射されたものである請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項8】
前記反射されたテラヘルツ放射が、前記物品のスペクトルの特徴について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項9】
前記反射されたテラヘルツ放射が、前記反射されたテラヘルツ放射の時間遅延について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項10】
前記反射されたテラヘルツ放射が、前記反射されたテラヘルツ放射の減衰について解析されるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項11】
前記システムが、光パルスを発生させる発生源を更に含み、前記1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールが、前記光パルスを処理してテラヘルツ放射を発生させるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項12】
前記システムが、連続波光放射を発生させる発生源を更に含み、前記1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールが、前記連続波光放射を処理してテラヘルツ放射を発生させるようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項13】
複数のテラヘルツ・モジュールが、テラヘルツ・モジュールの第1の配列として構成されている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項14】
前記システムが、テラヘルツ・モジュールの第2の配列を更に含み、前記テラヘルツ・モジュールの第2の配列のそれぞれのモジュールが、テラヘルツ放射の発生又は受信、或いは発生および受信の両方を行うようになっている請求項11に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項15】
前記処理装置が、テラヘルツ放射の情報の解析を実施するアルゴリズムにより作動される請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項16】
前記処理装置によって解析される前記テラヘルツ放射の情報を増大させるための1つ又は複数の他の診断装置を更に含む請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項17】
前記他の診断装置が、質量分析、X線及び金属検出からなる群から選択される請求項16に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項18】
前記処理装置が、前記テラヘルツ放射の飛行時間を解析し、前記反射された放射の飛行時間を相関させて、前記物品の構成部材に固有の特徴を得るようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項19】
前記テラヘルツ・モジュールが、約0.01〜10THzで動作するようになっている請求項1に記載された物品を探知するためのシステム。
【請求項20】
物品を探知する方法において、
1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールからテラヘルツ放射を発生させ、又は受信し、或いは発生および受信の両方を行い、前記テラヘルツ放射の一部が前記物品から反射され、前記テラヘルツ放射の残りが前記物品を透過する段階と、
反射及び透過されたテラヘルツ放射の情報を処理装置により解析して、前記物品の特性を決定する、解析段階とを含む、物品を探知する方法。
【請求項21】
前記解析段階が、前記物品の2次元画像又は3次元画像、或いは前記物品の2次元画像および3次元画像の両方を形成する請求項20に記載された物品を探知する方法。
【請求項22】
前記解析段階が、前記物品の特定の領域のピクセル又はボクセル、或いはピクセルおよびボクセルの両方を解析する請求項20に記載された物品を探知する方法。
【請求項23】
前記方法が、光パルスを発生させる段階を更に含み、前記1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールが、前記光パルスを処理して、テラヘルツ放射を発生させる請求項20に記載された物品を探知する方法。
【請求項24】
前記方法が、連続波光放射を発生させる段階を更に含み、前記1つ又は複数のテラヘルツ・モジュールが、前記連続波光放射を処理してテラヘルツ放射を発生させる請求項20に記載された物品を探知する方法。
【請求項25】
前記物品の構成部材成分に固有の特徴を得るために、前記テラヘルツ放射の飛行時間を解析し、前記反射された放射の飛行時間を相関させる段階を更に含む請求項20に記載された物品を探知する方法。
【請求項26】
前記テラヘルツ・モジュールが、約0.01〜10THzで動作する請求項20に記載された物品を探知する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−500541(P2008−500541A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515360(P2007−515360)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/018621
【国際公開番号】WO2005/119214
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505409166)ピコメトリクス、エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】