説明

葉酸拮抗剤の毒性に対処するためのカルボキシペプチダーゼGの使用

式(1)の葉酸拮抗化合物を投与された個体において、この化合物により生じる毒性に対処するための方法。この方法は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素をその個体に投与することを含む。式(VIII)の構造フラグメントを含む化合物を開裂させる方法であって、式(VIII)の構造フラグメントを含む化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素に接触させることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用に、特に、葉酸拮抗化合物により生じる毒性への対処におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の葉酸は、DNA、RNAを合成する葉酸経路において、またタンパク質の合成において、細胞によって使用されるので、食餌に必須な必要物である(Jolivet et a1,1983; Pinedo et al, 1976; Goldman 1975)。
【0003】
葉酸拮抗剤の標的として最も研究された、葉酸経路の3種の酵素は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジル酸シンターゼ(TS)およびグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)である。DHFRおよびTSは、セリンヒドロキシメチルトランフェラーゼ(SHMT)と共に、チミジル酸サイクルの3種の酵素を構成する。SHMTは、メチレンテトラヒドロ葉酸(MTHF)の生成を伴う、セリンのグリシンへの変換を触媒する。MTHFは、TSの作用の下で、そのメチレン基をデオキシウリジル酸に与えて、DNAの必須成分であるチミジル酸を生成する。重要なことに、TS反応では、テトラヒドロ葉酸(THF)が、チミジル酸(dTMP)のメチル基へのMTHFのメチレン基の変換に対して還元当量を供給する。こうして、生成する1分子のdTMPに対して、1分子のTHFがジヒドロ葉酸(DHF)に変換される。DHFは、TSサイクルがdTMPを生成し続けるように、THFに逆に変換されなければならない。この反応は、NADPHを還元剤として用いるDHFRにより触媒される。DHFRはまた、葉酸のDHFへの変換も触媒する。
【0004】
GARFTは、新規プリン生合成に必要とされる一連の10種類の反応における3番目である、グリシンアミドリボヌクレオチドのホルミルグリシンアミドリボヌクレオチドへの変換(10-ホルミルTHFをホルミル供与体として用いる)を触媒する。GARFTは、3番目以外にこの経路の第2および第5番目のステップを触媒する3機能タンパク質として哺乳動物に見出される。GARFT活性は、この3機能タンパク質のカルボキシ末端部分にある。新規プリン生合成はイノシン一リン酸(RNAの生成に必要なATPおよびGTPの前駆体であり、またDNA生成に必要なdATPおよびdGTPの前駆体である)の生成につながる。
【0005】
DHFRの阻害は、TS反応での使用のためにDHFをリサイクルできないので、dTMPの欠乏に至る。これは、次には、不十分なDNA合成、DNAの分解および細胞死に導く。TSの直接阻害は同様に、dTMPの欠乏と細胞死に導く。GARFTの直接阻害はプリンヌクレオチドの枯渇に至り、細胞死にも導くが、細胞殺滅の度合いは、通常、同じ成長阻害濃度のTS阻害剤によって生じるものより低い(Kisliuk et al, 2003)。
【0006】
メトトレキサート(MTX)は、合成葉酸アナログで、1948年から臨床使用されており(Bleyer 1978)、腫瘍疾患をもつ患者の治療に用いられる様々な化学療法処方計画の重要な成分である。MTXとその活性代謝物の両方の細胞毒作用は、DNA合成、修復および細胞複製の阻害に至る、DHFRの阻害による。活発に増殖している組織(例えば悪性細胞)は、一般に、MTXによるこの細胞干渉に一層敏感である。さらに、MTXは免疫調節作用を有し、多くの他の疾患(例えば、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)および乾癬)の治療に用いられている。高用量のMTXの適用は通常、長時間に渡る注入として投与され、今日、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)または軟部腫瘍(例えば骨肉腫)の患者に使用されることが多い。
【0007】
活発に増殖している悪性組織はMTXに対して最も敏感であるが、MTXは、2つの原理的機構により、用量と時間に依存する仕方で、健康な細胞に対してもやはり毒性があり得る。第1の機構は全ての葉酸拮抗剤に共通である。この機構はDNA合成と細胞代謝の阻害によっており、これは細胞毒によるMTXの抗癌作用の原因となる基本的機構である。健康な細胞に対する重大な毒性のリスクはMTXの用量の増加と暴露時間に関連する。MTX療法は多様な毒性を伴い、骨髄抑制、粘膜炎、急性肝炎および腎毒性は最も頻繁で重大な合併症である(Bleyer 1978)。高用量療法で見られるさらなる毒性は、急性の剥離性皮膚炎、Bリンパ球機能障害、および神経学的作用である。類似の一般的毒性はまた、他の葉酸拮抗剤(通常、MTXより低用量で投与されている)によっても生じる。
【0008】
第2の機構は、MTX誘発尿細管閉塞および結果として起こる腎機能障害(MTX腎毒性)である。MTXは、肝臓のアルデヒドオキシダーゼによって、7-ヒドロキシ-MTXに代謝される。7-ヒドロキシ-MTXの水への溶解性は、親化合物より3から5倍低く、特定の条件下で、尿細管中で析出することが知られており、これがMTX腎毒性の発生原因の主な機構であると考えられている(Kintzel 2001、Condit 1969)。正常な腎機能は特定の負荷を所定の時間内に除去することに適応し、その後、蓄積と損傷が続いて起こる。MTXを与えられている患者が、MTXの排出障害に至る腎毒性を進行させると、排出の低下、高い血漿MTXレベルの持続、それに続く非腎毒性と尿細管損傷の進行との両方の悪化という自己永続(self-perpetuating)サイクルが開始し、最終的には患者の死に至る(死亡は、完全な腎不全でない場合でさえ起こり得るが)。
【0009】
腎毒性は他の葉酸拮抗化合物で記録されているが、これは、その化合物の類似の7-ヒドロキシル化によるものでない可能性がある。7-OH-MTX毒性はMTXの高用量で起こるが、一方、本明細書に記載されているさらなる葉酸拮抗剤の典型的な投与用量はMTXでの「中間」用量であると専ら想定されるであろう。
【0010】
MTX毒性による致命的な結末の結果として、防御手段が、常法に従って、MTX療法の投薬計画に含められている。
【0011】
1. ロイコボリン救援療法:ロイコボリンカルシウムは、5-ホルミルテトラヒドロ葉酸のカルシウム塩であり(フォリン酸(folinic acid/folinate)としても知られている)、葉酸のDHFR代謝物で、核酸合成の重要な補酵素であり、MTXにより阻害されない(Immunex Corporation 2001)。結果的に、ロイコボリンカルシウムは、MTXにより阻害された細胞を救援することができる。しかし、高MTX濃度では、ロイコボリンカルシウムは全身毒性を防げないこともある(Goldman, 1975; Pinedo, 1976)。ロイコボリンカルシウムによるMTXの拮抗は競合的であり、MTXの濃度が増すにつれて比較的高濃度が必要とされる。MTXの濃度が100μMに達した時、10倍高いロイコボリンカルシウム濃度(1,000μM)でさえ、毒性から骨髄細胞を保護できない(Pinedo 1976)。
【0012】
2. MTXの溶解性を向上させ、腎障害に至り得るMTX腎毒性を防ぐためには、水和およびアルカリ化が必要とされる。
【0013】
これらの手段で、生命を脅かすMTX毒性の発生率は1.5%辺りまで低下し得る。しかし、これらの予防措置にもかかわらず、薬物に関連する腎機能不全による長時間に渡るMTXクリアランスが発現し、重篤で生命を脅かす全身毒性、例えば、骨髄抑制、粘膜炎、肝炎および皮膚炎に至り得る。過去において、このような患者におけるMTX全身毒性を改善するために、いくつかの試みがなされてきた。第1に、血液透析または腹膜透析がMTXクリアランスを増大させ得るが、通常、血清の毒性MTXレベルは一時的に少し減少するだけである。第2に、チミジンの投与または強化ロイコボリン救援療法がMTX全身毒性を軽減し得るが、MTXの排出を促進しない。
【0014】
MTXは、限られた例外はあるが、今日までに臨床使用された唯一の葉酸拮抗性の抗癌剤である。MTXが比較的安全で有用であるために、治療効果において一層選択的な葉酸拮抗剤、または一層広い腫瘍スペクトルを有する葉酸拮抗剤を設計する試みに相当な努力が注がれてきた。初期には、この設計は、葉酸依存経路とMTXの作用機構の決定要素についての急拡大する知識に基づいていた。これらの決定要素には、輸送、強固な結合によるその標的であるDHFRの阻害、およびポリ-γ-グルタミン酸(Glun)代謝物へのMTXの代謝が含まれる。これらの初期の研究は、2つのタイプの他の葉酸拮抗剤である阻害物質の開発に導いた:(1)MTXと同じ細胞輸送系を用い、やはりGlunに代謝される「古典的」アナログ;および(2)輸送系を必要とせず、Glunに代謝されない「非古典的」(すなわち、親油性)アナログ。これらのアナログのいくつかは臨床試験を受けたが、何れもMTXより優れていると未だに実証されていない(McGuire, 2003)。
【0015】
MTXの細胞毒および選択性の機構についての詳細な検討により、DHFRの阻害にとっては2次的な、dTMP合成と新規プリン合成の両方の阻害がDNA合成の阻害と、続いて起こる細胞死に導くことが示された(他の葉酸依存経路の阻害は細胞死にとって必須であるようでなかった)。さらなる研究は、細胞死に対するdTMPまたはプリン合成の阻害の寄与は様々な細胞型において変動することを示した。これらのデータから、これらの経路の1つを別々に阻害すると、MTXにより誘発される2重の阻害よりも優れた治療効果が得られる可能性がある(少なくともいくつかの場合において)ことが示唆された。こうして、合理的設計および構造ベースの設計による研究において、新しい2種類の葉酸代謝酵素拮抗阻害物質:TSの直接阻害物質と、新規プリン合成の2種の葉酸依存酵素の1つまたは両方の直接阻害物質が苦労して作り出された。各々の種類のメンバーには古典的および非古典的なタイプが含まれていた。前臨床評価の後、これらのいくつかは臨床試験に移行している。今日までに、2種の新しい葉酸拮抗化合物だけが常用に対して承認されている;トミュデックス(Tomudex、D1694、ラルチトレキセド)は現在、結腸癌の治療に対してヨーロッパで承認されており、ペメトレキセド(アリムタ)は、胸膜中皮腫に対して米国において承認されている。例えばMTXは結腸癌に対して効果がないので、これはやはり葉酸拮抗剤への一歩となる。
【0016】
葉酸拮抗剤の開発は続いている。葉酸拮抗剤について現存する莫大な知識に基づいて、その作用機構の特定の局面に焦点が当てられている。葉酸代謝における2つ以上の経路を阻害するか、デリバリーを向上させたか、あるいは、葉酸代謝における他の標的を阻害する、より新しい葉酸拮抗剤が記載されている。これらの新しいアナログは、前臨床および臨床の様々な進展段階にある(McGuire, 2003; Kisliuk, 2003; Purcell & Ettinger, 2003;これらの各々は全体として参照を通じて組み込まれる)。
【0017】
MTXと同じ様に、より新しい葉酸拮抗剤の臨床使用に対する主な1つの欠点は、許容できないレベルの毒性である。これらの葉酸拮抗剤を迅速にin vivoで分解できれば、2つの主な臨床的利点を有するであろう。第1に、それは、葉酸拮抗剤により生じる毒性を最少化するであろう。それにより、より高用量で葉酸拮抗化合物を投与することが可能になり、可能性として臨床効果はより大きくなる。より低い毒性と一層大きな効能は、臨床試験を通過して前進しなかった多くの薬剤の臨床的保証を達成するのに十分であり得る。さらに、葉酸拮抗剤に伴う毒性は普通、用量に関連するよりむしろ期間に関連するので、過剰の遊離薬剤を所定の時点で迅速に除去できることは、治療にとって非常に有用であり得る。
【0018】
カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)は、シュードモナス属細菌系統RS-16(現在、Variovorax paradoxusとして再分類されている)による葉酸分解酵素であり、83,000-84,000ダルトンの亜鉛依存2量体タンパク質である(Kalghati & Bertino, 1981; Chabner et al, 1972; McCullough et al, 1971; Minton et al, 1983; およびSherwood et al, 1985)。CPG2は、比較的限定された特異性を有し、葉酸、葉酸のポリグルタミル誘導体、葉酸アナログ(例えばメトトレキサート)、および葉酸のサブフラグメント(例えば、p-アミノベンゾイルグルタメート)のC末端グルタミン酸残基を加水分解する(Minton et al, 1983)。今日まで、カルボキシペプチダーゼ酵素は少数のシュードモナス属細菌においてしか特徴付けられていないが、葉酸およびそのアナログに対するそれらの基質親和性に基づいて分けることができる(Kalghatgi and Bertino, 1981)。
【0019】
Sherwood et al (1985)は、CPG2がミハエリス-メンテンの反応速度論(Km値は、葉酸に対して4μM、MTXに対して8μM、5-メチルTHFに対して34μM、また5-ホルミルTHF(ロイコボリン)に対して120μM)に従うことを既に報告している。CPG2は、メトトレキサート(MTX)を不活性代謝物である、4-デオキシ-4-アミノ-N10-メチルプテロイン酸(DAMPA)とグルタミン酸へと開裂させるので、MTX除去、特にMTX腎毒性による腎機能障害を進行させている患者におけるMTX除去の別の経路を提供し得る(Adamson et al, 1991; Mohty et al, 2000; von Poblozki et al, 2000; Widemann et al, 2000)。
【0020】
パラ-アミノベンゾイルグルタミン酸は、p-アミノベンゾイルグルタミン酸系のいくつかのマスタードプロドラッグがそうであるように、CPG2の基質である(Springer et al (1995); Dowell et al (1996))。しかし、新しい葉酸拮抗剤の何れかがCPG2開裂に対する基質であるかどうか検討評価しようと試みた研究は報告されていない。本発明の前には、葉酸、MTX、5-メチルTHF、および5-ホルミルTHF以外の何れかの葉酸化合物がCPG2に対する基質であるかどうかは知られていなかった。新世代の葉酸拮抗剤の何れかがCPG2開裂に対する基質であるかどうかは知られておらず、予想できなかった。
【0021】
我々は、今や、トミュデックス(ラルチトレキセド)がCPG2に対する基質であり、分光光度法アッセイによって測定した場合、7.8μMのKmと24/sのkcatを有することを示した。CPG2に対する知られている全ての基質は、式I(下を参照)におけるA6を含む5員環に当たる位置にベンゼン環を有する。さらに、Springer et al (1995)により評価検討されたマスタードプロドラッグのp-アミノベンゾイルグルタミン酸誘導体は、このベンゼン環の修飾がカルボキシペプチダーゼ活性にとって有害であることを示唆する。トミュデックスは、それに反して、この位置に、ベンゼン環に対してアイソステリック(isosteric)置換でないチオフェン環を有する。このため、トミュデックスは、この位置にチオフェンを有する他の葉酸拮抗剤(例えば、GARFT阻害剤のLY309987、AG2034およびAG2037(McGuire, 2003))と共に、CPG2の基質であるとは予想されていなかったであろう。同様に、フラン系相当物もまたCPG2の基質であるとは予想されていなかったであろう。
【非特許文献1】Minton et al (Gene 31(1-3), 31-38 (1984)
【非特許文献2】Minton and Clarke (J. Mol. Appl. Genet. 3(1), 26-35 (1985)
【非特許文献3】Chambers et al (Appl. Microbiol. Biotechnol. 29, 572-578 (1998)
【非特許文献4】Sambrook et al (2001) "Molecular Cloning, a Laboratory Manual", 3rd edition、Sambrook et al (eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA
【非特許文献5】Thompson et al., (1994) Nucleic Acids Res 22, 4673-80
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0014187号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
葉酸拮抗化合物は様々な治療を要する病状(特に癌)を治療するのに有用であり、これらの化合物に伴う毒性に対処できると、それらの治療上の価値が著しく向上する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様は、式Iの葉酸拮抗化合物、あるいは薬学的に許容されるその塩および/または溶媒和化合物を投与されている個体において、前記化合物により生じる毒性に対処する方法を提供し、この方法は、その個体にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することを含む:
【0024】
【化1】

【0025】
式中、
R1はNH2、OHまたはCH3を表し;
R2はNH2またはC1〜4アルキルを表し;
基Bは式Ia、Ib、Ic、IdまたはIeの構造フラグメントを表し、
【0026】
【化2】

【0027】
これらの基において、破線はピリミジニル環との環縮合位置を示し、波線は基Xへの前記構造フラグメントの結合位置を示し;
R5aからR5eは独立にHまたはC1〜4アルキルを表し;
A1はC(R6a)またはNを表し;
A2はCHまたはNを表し;
A3はC(H)R6b、NR6cまたはSを表し;
A4およびA5は独立にCH2、NH、OまたはSを表し;
基B1-B2はCH-CHまたはC=Cを表し;
R6aからR6cは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR6cはC(O)R6dを表すか、あるいはR6cはR7bと一緒にC1〜2n-アルキレンを表し;
R6dはHまたはC1〜4アルキルを表し;
Xは-CH2C(H)R7a-または-CH2NR7b-を表し(最後の2つの基においては、CH2部分がピリミジン系縮合複素環式基に結合している);
R7aおよびR7bは独立にH、C1〜6アルキル、C3〜6アルケニルまたはC3〜6アルキニルを表すか、あるいはR7bはR6cと一緒にC1〜2n-アルキレンを表し;
A6はOまたはSを表し;
R8はH、あるいは、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つの置換基を表し;
R3はHまたはC1〜4アルキルを表し;
R4は-CH2C(R9a)(R9b)-Dを表し;
R9aおよびR9bは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR9aおよびR9bは一緒に=C(H)R10を表し;
R10はHまたはC1〜4アルキルを表し;
DはC(O)OH、テトラゾル-5-イル、(CH2)0〜1-NHR11を表すか、あるいは、R9aおよびR9bが一緒に=C(H)R10を表す場合にはDはHを表すこともあり、あるいは、Dは式IIIaまたはIIIbの構造フラグメントを表し、
【0028】
【化3】

【0029】
式中、波線は、これらの構造フラグメントの結合位置を示し;
R11はHまたはC(O)R12を表し;
R12はH、あるいは、C(O)OHにより置換されたフェニル(任意選択で、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つのさらなる置換基により置換されていてもよい)を表し;
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、アルコキシ基のアルキル部分と同様に、1つまたは複数のハロ原子により置換されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本明細書では、用語「ハロ」には、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが含まれる。
【0031】
挙げることができる、式Iの化合物の薬学的に許容される塩(下に記載されている式VIIIの構造フラグメントを含む化合物の塩も同様に)には、酸付加塩と金属(例えば、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属)塩の両方が含まれる。挙げることができる溶媒和化合物には、水和物が含まれる。
【0032】
式Iの化合物は互変異性を示し得る。特に、R1がOHを表す式Iの化合物は、次のように別の形に書くこともできる。
【0033】
【化4】

【0034】
全ての互変異性形とそれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
挙げることができる式Iの化合物には次のものが含まれる。
(1)Xが-CH2NR7b-を表し、Bが式Iaの構造フラグメント(A1およびA2は何れもNを表す)または式Icの構造フラグメントを表す式Iの化合物。
(2)Xが-CH2NR7b-を表す式Iの化合物。
(3)Xが-CH2C(H)R7a-を表す式Iの化合物。
(4)Dがテトラゾル-5-イル、(CH2)0〜1-NHR11を表すか、あるいは、R9aおよびR9bが一緒に=C(H)R10を表す場合にはDがHを表すこともあり、あるいは、Dが式IIIaまたはIIIbの構造フラグメントを表す式Iの化合物。
(5)R6bがR7bと一緒にC1〜2n-アルキレンを表し、基BがIc、IdまたはIeの構造フラグメント、あるいは、A1および/またはA2がCHを表す式Iaの構造フラグメントを表す式Iの化合物。
(6)基Bが式IdまたはIeの構造フラグメント、あるいは、A1およびA2が何れもCHを表す式Iaの構造フラグメントを表す式Iの化合物。
(7)R1がOHを表し、R7bがC1〜6アルキル、C3〜6アルケニルまたはC3〜6アルキニルを表すか、あるいはR7bがR6cと一緒にC1〜2n-アルキレンを表す式Iの化合物。
【0036】
挙げることができる式Iの他の化合物には、以下である化合物が含まれる:
R1がNH2、または特にOHを表し;
R2がNH2またはメチルを表し;
基Bが式Ia、IcまたはIdの構造フラグメントを表し;
A1およびA2が何れもNを表すか、あるいは、特に何れもがCHを表し;
R5a、R5cおよびR5dが独立にHを表すか、あるいは、A1およびA2が何れもCHを表す場合にはR5aがメチルを表すこともあり;
A3がS、または特にCH2を表し;
A4およびA5が独立にNHを表し;
基B1-B2がCH-CHを表し;
R7aがH、メチルまたはエチルを表し;
R7bがメチルまたは-CH2C≡CHを表し;
A6がSを表し;
R8がメチル、または特にHを表し;
R3がHを表し;
R9aおよびR9bが何れもHを表すか、あるいはR9aおよびR9bが一緒に=CH2を表し;
R11がC(O)OHによりオルト置換されたフェニルを表す。
【0037】
挙げることができる式Iのさらなる化合物には、以下である化合物が含まれる:
R2がメチルを表し;
基Bが式Iaの構造フラグメントを表し;
R5aがHを表し;
Xが-CH2NR7b-を表し;
R7bがメチルを表し;
DがC(O)OHを表し;
R9aおよびR9bが何れもHを表す。
【0038】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、A6がSを表すもの(すなわち、2,5-チエニル基を含む化合物)である。適切な化合物には、トミュデックス(式IV)、LY309987(式V)、AG2034(式VI)およびAG2037(式VII)が含まれる。トミュデックスが最も好ましい。
【0039】
別の実施形態において、式Iの化合物は、Xが-CH2NR7b-(R7bは-CH2C≡CHを表す)を表すものである。
【0040】
「カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素」には、葉酸、葉酸アナログ、および葉酸のサブフラグメント(例えばp-アミノベンゾイルグルタミン酸)から、C末端Lグルタミン酸残基を加水分解する酵素の意味が含まれている。
【0041】
好ましくは、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素はカルボキシペプチダーゼG2(CPG2)、EC番号3.4.22.12である。
【0042】
CPG2をコードする遺伝子配列およびCPG2アミノ酸配列は、GenBank受託番号M12599およびAAA62842に、また、Minton et al (Gene 31(1-3), 31-38 (1984))、Minton and Clarke (J. Mol. Appl. Genet. 3(1), 26-35 (1985))、および、Chambers et al (Appl. Microbiol. Biotechnol. 29, 572-578 (1998))に見出すことができ、アミノ酸配列は図1に列挙されている。
【0043】
一実施形態において、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、カルボキシペプチダーゼG活性を有するCPG2の誘導体であり得る。CPG2の「誘導体」には、カルボキシペプチダーゼG活性を有する、フラグメント、変異体、CPG2の修飾体または融合体、またはこれらの組合せが含まれる。
【0044】
これらの誘導体は、タンパク質化学の技術を用いて、例えば、部分タンパク質分解(末端から、または内部から)を用いて、あるいは新たに合成することによって製造できる。別法として、誘導体は組換えDNA技術によって製造してもよい。核酸のクローニング、操作、修飾および発現と、発現タンパク質の精製についての適切な技術は該技術分野においてよく知られており、例えば、Sambrook et al (2001) "Molecular Cloning, a Laboratory Manual", 3rd edition、Sambrook et al (eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA、に記載されており、これは参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0045】
CPG2の「フラグメント」により、カルボキシペプチダーゼG活性を有する完全な長さの任意の部分を意味する。通常、フラグメントはCPG2のカルボキシペプチダーゼG活性の少なくとも30%を有する。フラグメントが少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%のCPG2活性を有すると一層好ましい。最も好ましくは、フラグメントは、CPG2のカルボキシペプチダーゼG活性の100%またはそれ以上を有する。
【0046】
CPG2誘導体のカルボキシペプチダーゼG活性は、Sherwood et al (1985)の448ページに記載されている酵素アッセイを用いて当業者が容易に決定できる。Sherwood et al (1985)の開示全体は参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0047】
CPG2の「変異体」は、1つまたは複数の位置でのアミノ酸の挿入、欠失および/または置換(保存的もしくは非保存的な)により改変されたCPG2を表す。「保存的置換」により、Gly、Ala;Val、Ile, Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Lys、Arg;およびPhe、Tyrのような組合せを想定している。このような修飾は、前掲のSambrook et al 2001に記載されている、タンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて実施できる。
【0048】
例えば、1つまたは2つの酵素活性部位の1つまたは複数の残基を修飾することには利点があり得る。このような変異体は酵素の特異性または活性を有利に変更し得る。CPG2の結晶構造は、Rowsell et al (1997)により公開されており、この酵素の活性部位を確認している。別の実施形態において、活性部位の残基を修飾しないことに利点があり得る。配列変異体(典型的には、通常活性部位の外での)は、in vivoでの代謝から酵素を保護する、あるいは抗原性を低下させ得る。さらに、1つまたは複数のCys残基を付け加えて、ジスルフィド結合が生成し得るようにすることには利点があり得る。
【0049】
好ましくは、CPG2の変異体は、SEQ ID No:1と、少なくとも70%の配列相同性を有する。CPG2の変異体が、SEQ ID No:1と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の配列相同性を有すると、一層好ましい。最も好ましくは、CPG2変異体は、SEQ ID No:1と、91または92または93または94または95または96または97または98または99%あるいはそれ以上の配列相同性を有する。
【0050】
2種のポリペプチドの間の配列相同性パーセントは、適切な計算機プログラム、例えば、ウィスコンシン大学遺伝子計算グループ(Genetic Computing Group)のGAPプログラムを用いて求めることができ、配列を最適アラインメントにしたポリペプチドに関連させてパーセント相同性が計算されると認められる。
【0051】
代わりに、アラインメントは、Clustal Wプログラムを用いても実施できる(Thompson et al., (1994) Nucleic Acids Res 22, 4673-80)。
使用されるパラメータは、次のものとすることができる:
Fastペアワイズアラインメントパラメータ:K要素(ワード)の大きさ;1、ウィンドウの大きさ;5、ギャップペナルティ;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング法:xパーセント。
マルチプルアラインメントパラメータ:ギャップオープンペナルティ;10、ギャップ延長ペナルティ;0.05。
スコアリングマトリックス:BLOSUM
【0052】
好ましくは、CPG2の変異体、または変異体のフラグメントは、CPG2のカルボキシペプチダーゼG活性の少なくとも30%を保持する。CPG2の変異体がCPG2の活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有すると一層好ましい。最も好ましくは、CPG2の変異体は、CPG2のカルボキシペプチダーゼG活性の100%またはそれ以上を有する。
【0053】
カルボキシペプチダーゼG活性を有するCPG2の変異体は記載されている(米国特許出願公開第2004/0014187号)。
【0054】
一実施形態において、CPG2の変異体は、N-グルコシル化部位である、222、264および272の位置のAsn残基の1つまたは複数に置換がある。好ましくは、独立に、または組み合わせて、Asn222はGlnにより置換されており;Asn264はThrまたはSer、最も好ましくはSerにより置換されており;またAsn272はGlnにより置換されている。最も好ましい置換の組合せは、222および272の位置にGlu、残基264にSerを有する。このQSQモチーフにより、触媒活性が高くなり、MTXに対するKmが小さくなる(米国特許出願公開第2004/0014187号)。
【0055】
CPG2の「修飾」は、1つまたは複数のアミノ酸残基が化学的に修飾されたCPG2を表す。このような修飾には、酸または塩基(特に、生理学的に許容できる有機または無機の酸および塩基)と塩を生成すること、末端カルボキシル基のエステルまたはアミドを生成すること、アミノ酸保護基(例えば、N-t-ブトキシカルボニル)を付けること、ならびにグリコシル化が含まれる。このような修飾は、in vivoでの代謝から酵素を保護する、あるいは、抗原性を低下させ得る。CPG2は1コピーまたは複数コピー(例えば、縦列反復)として存在し得る。
【0056】
本発明はまた、CPG2の別の化合物への融合体、あるいはカルボキシペプチダーゼG活性を有するそのフラグメントまたは変異体もまた含む。好ましくは、融合体はCPG2の活性の少なくとも30%を保っている。融合体がCPG2活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有すると一層好ましい。最も好ましくは、融合体は、CPG2のカルボキシペプチダーゼG活性の100%またはそれ以上を有する。
【0057】
本発明は、個体における式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性の症状を軽減させるために用いられても(すなわち、一時的緩和のための使用)、あるいは、個体における毒性の重篤度を弱めるために用いられても、あるいは、個体における毒性を治療するために用いられても、あるいは、個体における毒性を防ぐために予防的に用いられてもよい。こうして、「毒性に対処する」には、葉酸拮抗化合物により生じる毒性を治療、緩和または防止する、あるいはその症状を軽減するという意味が含まれている。
【0058】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、通常、薬剤の血漿レベルを迅速に下げることによって、式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するように作用して、正常な組織が薬剤に曝されている時間を短くし、長期の取り込みを防止する。
【0059】
特定の患者が治療により利益を得ると期待される患者であるかどうかは医師により決められ得る。
【0060】
毒性を防ぐことには、式Iの葉酸拮抗化合物が例えば高レベルである、かつ/またはその除去が遅れることによって毒性の危険に曝されている患者を治療するという意味が含まれている。葉酸拮抗化合物を投与されているどの患者も、それにより生じる毒性の危険に曝されていると考えてよい。
【0061】
一実施形態において、毒性の危険に曝されている個体は、葉酸拮抗化合物を投与されていて、葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカーの存在について試験されていない個体であり得る。
【0062】
別の実施形態において、毒性の危険に曝されている個体は、葉酸拮抗化合物を投与されていて、それにより生じる毒性の臨床マーカーの1つまたは複数を有する個体であり得る。
【0063】
こうして、一実施形態において、本発明の方法は、式Iの葉酸拮抗化合物を投与されている個体がその葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカーを有するかどうかを確認するという前ステップを含み得る。
【0064】
一実施形態において、式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカーは、その化合物投与後の所定の時間での予め決められたレベルを超えるその化合物のレベル(例えば血漿レベル)であり得る。毒性を示唆する葉酸拮抗化合物の前記の予め決められた血漿レベルは、葉酸拮抗化合物の投与後24時間で、あるいは、葉酸拮抗化合物の投与後48または72または96または120時間またはそれ以上で、0.1または0.2または0.3または0.4または0.5または0.6または0.7または0.8または0.9μモル/リットル、あるいは、1または2または3または4または5μモル/リットルまたはそれ以上であり得る。
【0065】
こうして、別の実施形態において、本発明の方法は、個体における葉酸拮抗化合物のレベルを、個体にその化合物を投与した後の所定の時間に、例えば葉酸拮抗化合物の投与後24または48または72または96または120時間またはそれ以上で、求めるという前ステップを含み得る。
【0066】
本発明は、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物を投与されている個体に、その個体がその化合物により生じる毒性の何らかの症状を有していてもいなくても、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することを含む。
【0067】
一実施形態において、好ましくは、例えば、式Iの葉酸拮抗化合物を投与されている全ての個体に、式Iの化合物投与後に所定の時間で、前記酵素を投与することができる。
【0068】
こうして、本発明は、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物を開裂させるin vivo法であると考えることができる。
【0069】
別の実施形態において、毒性の危険に曝されている個体は、葉酸拮抗化合物を投与されており、それにより生じる毒性による臨床症状の1つまたは複数を有する個体であり得る。
【0070】
こうして、一実施形態において、本発明の方法は、前記葉酸拮抗化合物を投与されている個体がその葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床症状を有しているかどうかを確認するという前ステップを含み得る。
【0071】
上で定義された式Iの様々な葉酸拮抗化合物についての毒性症状はよく知られている。例えば、ラルチトレキセド(トミュデックス)での毒性には、軽度の粘膜炎、骨髄抑制、好中球減少症、軽度の貧血、脱水、下痢、悪心、無気力および肝毒性が含まれる(Tsavaris et al, 2002; Massacesi et al, 2003)。LY309887での毒性には、遅発性の血液、神経および粘膜毒性が含まれる(Kisliuk, 2003)。AG2034での毒性には、貧血、血小板減少症、粘膜炎、下痢、肝毒性、疲労および不眠症が含まれる(McGuire, 2003)。
【0072】
通常、個体は、葉酸拮抗化合物を投与された後、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を、24と48時間の間に投与される。代わりに、個体は、葉酸拮抗化合物を投与された後、約12と24時間の間に、約48と72時間の間に、約72と96時間の間に、あるいは約96と120時間またはそれ以上の時間の間に、前記酵素を投与されることもあり得る。
【0073】
個体は、葉酸拮抗化合物を投与された後、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を、約6時間で、または約12時間で、または約18時間で、または約24時間で、または約30時間で、または約36時間で、または約42時間で、または約48時間で、または約54時間で、または約60時間で、または約72時間で、または約84時間で、または約96時間で、または約108時間で、または約120時間で、またはそれ以上の時間で投与され得る。
【0074】
葉酸拮抗化合物が個体に誤って投与された場合には、それにより生じる毒性に対処するために、誤りに気づいたらできるだけ早く、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することが好ましいと認められる。同様に、好ましくは、葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカー、あるいは葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床症状を個体が有する場合、前記酵素をできるだけ早く投与することもできる。
【0075】
週3回の計画でのトミュデックスの最大許容用量は、成人では3.5から4.5mg/m2で、小児集団では6mg/m2であることが見出された(Clarke et al, 2000)。カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素が引き続き投与され、葉酸拮抗化合物が後で分解される投与では、葉酸拮抗化合物の最大許容用量を増すことができるので、薬剤の効能を向上させ、如何なる副作用も最少化できる。
【0076】
こうして、本発明は、本明細書において記載されているような、式Iの葉酸拮抗化合物を必要としている個体に、それを高用量で、例えば、前記の用量の2または3または4または5または6または7または8または9または10倍、またはそれ以上の倍数で投与し、次いで、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素をその個体に投与することを含む。
【0077】
こうして、本発明は、成人の個体に、週3回の計画で、約5または6または7または8または9または10または15または20または25または30または40または50mg/m2またはそれ以上に相当するトミュデックスの用量を投与すること、あるいは、子供に、週3回の計画で、約7または8または9または10または15または20または25または30または40または50mg/m2またはそれ以上に相当するトミュデックスの用量を投与すること、および、その後でカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素をその個体に投与することを含む。
【0078】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素またはその製剤は、非経口(例えば、皮下または筋肉内)注射を含めて、通常の如何なる方法によって投与されてもよい。治療は、1回の投薬、またはある期間に渡る複数回の投薬からなり得る。
【0079】
最も好ましくは、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素またはその製剤は静脈内に投与される。
【0080】
いくつかの状況では、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素またはその製剤は、典型的には式Iの葉酸拮抗化合物が髄腔内に投与された時に、髄腔内に投与されてもよい。
【0081】
アカゲザルにおける研究は、静脈内投与後の血漿におけるCPG2の半減期は52と58分の間であることを示している。アカゲザルへの髄腔内投与の後、脳脊髄液におけるCPG2の半減期は、3.3と3.9時間の間と見積もられている。
【0082】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を単独で投与することは可能であるが、1種または複数の許容される担体と一緒に、それを製薬製剤として与えることが好ましい。(複数の)担体は、本発明の化合物に適合しており、その受容者にとって有害でないという意味において「許容される」のでなければならない。通常、担体は、無菌でパイロジェンフリーである水または生理的食塩水である。
【0083】
好ましい実施形態において、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、必要な場合にいつでも注射液にできる凍結乾燥粉末として保管される。通常、凍結乾燥酵素バイアルの内容物は、使用直前に、無菌の標準生理食塩水(0.9%w/v)により溶かされる。
【0084】
好ましい実施形態において、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の製剤は、不活性成分として、ラクトースに対して過敏である患者用は除いて、ラクトースもまた含む。
【0085】
通常、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、個体に対して、約50単位/体重1kg(1単位は、37℃で、1分間当たり、1マイクロモルのMTXを開裂させる酵素活性に相当する)の用量で、5分間かけて静脈内に投与される。
【0086】
前記酵素は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40または45単位/体重1kgのより低用量で投与され得ることが認められる。前記酵素は、約55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150または200単位/体重1kgまたはそれ以上のより高用量で投与され得ることもまた認められる。
【0087】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の投与の頻度、タイミングおよび投薬量は、酵素の性質、患者における葉酸拮抗剤酵素のレベル、および患者における毒性症状の程度についての知識を用いて、医師により決定され得る。
【0088】
タンパク質およびペプチドは、注射可能な持続放出ドラッグデリバリーシステムを用いてデリバリーできると評価される。これらは特に注射の頻度を減らすように設計されている。このようなシステムの例は組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を生分解性マイクロスフィアにカプセル化したNetropin Depotであり、これは、一旦注射されると、ある持続時間に渡ってrhGHをゆっくりと放出する。
【0089】
タンパク質およびペプチドのデリバリーの別の方法は、温度感受性で注射可能なReGelシステムである。身体温度より低温では、ReGelは注射可能な液体であるが、身体温度で、それは直ちにゲル貯蔵体(reservoir)を生成し、これは、ゆっくりと壊れ溶けて、知られている安全な生分解性ポリマーになる。活性薬剤はバイオポリマーが溶けるにつれてある期間に渡ってデリバリーされる。
【0090】
個体は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素をコードし、in vivoでその酵素を発現するに至るポリヌクレオチドを投与されてもよいことがさらに認められる。適切なベクターおよび方法は当業者によく知られている。
【0091】
治療される個体は、このような治療から利益を得ると思われるどのような個体であってもよい。通常、また好ましくは、治療される個体はヒトである。しかし、本発明の方法を、哺乳動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコおよびイヌ)を治療するために用いてもよい。したがって、この方法は、医学および獣医学の両方において使用される。
【0092】
一実施形態において、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための方法は、個体に、葉酸経路救援剤(recue agent)を投与することをさらに含む。
【0093】
「葉酸経路救援剤」には、葉酸拮抗化合物により阻止される葉酸経路を救援できる薬剤の意味が含まれている。最も普通に使用される葉酸経路の救援剤は、ロイコボリン(5-ホルミルテトラヒドロ葉酸のカルシウム塩)である。別の救援剤として、5-ホルミルテトラヒドロ葉酸の他の塩と、チミジンそのものが含まれ得る。通常、葉酸拮抗化合物がDHFRまたはGARFTの阻害剤である場合、葉酸経路救援剤はロイコボリンであり、一方、葉酸拮抗化合物がTSの阻害剤である場合、葉酸経路救援剤はチミジンである。
【0094】
例えば、トミュデックス(ラルチトレキセド)はTSの阻害剤として知られており、LY309987、AG2034およびAG2037はGARFT阻害剤として知られている(McGuire, 2003; Kisliuk, 2003)。このように、適切な葉酸経路救援剤は容易に決定できる。
【0095】
一実施形態において、個体は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を、葉酸経路救援剤の前に投与される。別法として、個体に、葉酸経路救援剤を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の前に投与してもよい。さらに別の実施形態として、個体に、葉酸経路救援剤と、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素とを実質的に同時に投与してもよい。
【0096】
葉酸拮抗化合物は、様々な治療を要する病状を治療するのに有用であり得るので、これらの化合物に伴う毒性に対処できると、それらの治療上の価値は著しく向上する。
【0097】
本発明は、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患の治療方法を含み、この方法は、個体に、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物を投与し、次いで、その個体に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することを含む。
【0098】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を後で投与することは、前記の葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処することである。
【0099】
こうして、本発明は、個体に、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物を投与し、前記の葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処することを含む、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患の治療方法を含む。
【0100】
式Iの葉酸拮抗化合物により治療できる癌は当業者によく知られており、それらのいくつかは、McGuire (2003); Kisliuk (2003);およびPurcell & Ettinger (2003)により、さらには下記の特定の参考文献において検討されている。
【0101】
本発明は癌の治療方法を含み、この方法は、個体にトミュデックスを投与し、トミュデックスにより生じる毒性に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することによって対処することを含む。
【0102】
トミュデックスの投与により治療される癌は、胸部、卵巣、結腸/直腸、肝臓、前立腺、膵臓または胃の癌、さらには、非小細胞肺癌(NSCLC)、悪性中皮腫、または原発巣不明癌であり得る(Clarke et al (2000); Travaris et al (2002); Franchi et al (2003);およびMassacesi et al (2003))。
【0103】
本発明は癌を治療する方法を含み、この方法は、個体にLY309887を投与し、LY309887により生じる毒性に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することによって対処することを含む。LY309887の投与により治療される癌は、胸部、結腸、肺または膵臓の癌であり得る(McGuire, 2003)。
【0104】
本発明は癌を治療する方法を含み、この方法は、個体にAG2034を投与し、AG2034により生じる毒性に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することによって対処することを含む。AG2034の投与により治療される癌は、胸部、結腸または肺の癌、黒色腫またはリンパ腫であり得る(McGuire, 2003)。
【0105】
本発明は癌を治療する方法を含み、この方法は、個体にAG2037を投与し、AG2037により生じる毒性に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することによって対処することを含む。AG2037の投与により治療される癌は、固形腫瘍、例えば、進行、転移または再発固形腫瘍であり得る(McGuire, 2003)。
【0106】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様において上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を提供する。
【0107】
本発明のこの態様および続く態様における、式Iの葉酸拮抗化合物に関する好ましさは、本発明の第1の態様に関する前記の通りである。
【0108】
本発明は、前記のように、前記化合物により生じる毒性の臨床兆候、症状またはマーカーの1つまたは複数を有する個体における毒性に対処するための、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を含む。
【0109】
一実施形態において、本発明は、葉酸経路救援剤を投与される個体における、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を含む。前記個体は葉酸経路救援剤を前記医薬の前に投与されること、あるいは、個体は葉酸経路救援剤を前記医薬の後で投与されること、あるいは、個体は葉酸経路救援剤と前記医薬とを実質的に同時に投与されることもある。
【0110】
本発明のこの態様および続く態様における、葉酸経路救援剤に関する好ましさは、本発明の第1の態様に関して上で記載された通りである。
【0111】
本発明の第3の態様は、後にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素が投与される個体における、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により対処できる病状に対処するための医薬の調製における、前記葉酸拮抗化合物の使用を提供する。
【0112】
一実施形態において、前記個体は葉酸経路救援剤もまた投与される。カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、葉酸経路救援剤の前、後、または実質的に同時に投与され得る。
【0113】
本発明の第4の態様は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、葉酸経路救援剤の使用を提供する。前記個体は、前記酵素を前記医薬の前に投与されることも、あるいは、個体は酵素を前記医薬の後で投与されることも、あるいは、個体は酵素と前記医薬とを実質的に同時に投与されることもある。
【0114】
本発明の第5の態様は、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素および葉酸経路救援剤の使用を提供する。
【0115】
本発明は、上で詳細に記載されたように、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患に対して葉酸拮抗化合物の投与によって治療されている個体における、式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための、本発明の第2、第3、第4および第5の態様における上で定義された使用を含む。
【0116】
本発明の第6の態様は、後にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される病状を治療するための医薬の調製における、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物の使用を提供する。
【0117】
一実施形態において、本発明は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における癌の治療のための医薬の調製におけるトミュデックス(ラルチトレキセド)の使用を含む。本発明はまた、トミュデックスにより生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を含む。通常、前記個体は癌を治療するためにトミュデックスを投与されている。
【0118】
トミュデックスの投与により治療される癌は、胸部、卵巣、結腸/直腸、肝臓、前立腺、膵臓または胃の癌、さらには、NSCLC、悪性中皮腫または原発巣不明癌であり得る。
【0119】
同様に、LY309887、AG2034およびAG2037を含む医薬の投与により治療され得る癌は、当分野において知られており、それらには上で列挙されたものが含まれる。
【0120】
こうして、本発明は、式Iの葉酸拮抗化合物の投与により治療されている、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患の薬物療法を補助するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を含む。
【0121】
本発明の第7の態様は、上で定義された式Iの化合物から末端L-グルタミン酸部分を開裂させるex vivo法を提供し、この方法は、前記化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と接触させることを含む。
【0122】
本発明の第8の態様は、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素による、上で定義された式Iの化合物の開裂の速度および/または度合いを求める方法を提供し、この方法は以下を含む:
式Iの化合物を供用すること、
式Iの化合物を、この化合物の開裂が起こり得る条件下に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と接触させること、および
式Iの化合物の開裂の速度および/または度合いを経時的にモニタすること。
【0123】
一実施形態において、供用するステップは、既知の量または濃度の式Iの化合物を供用することを含む。
【0124】
一実施形態において、モニタするステップは、式Iの化合物の量および/または濃度を経時的にモニタすることを含む。加えて、または代わりに、モニタするステップは、式Iの化合物の分解生成物の1種または複数の量および/または濃度を経時的にモニタすることを含む。
【0125】
開列の速度および/または度合いを求める前記方法はex vivoで、あるいはin vivoでも実施できることが認められる。
【0126】
前記方法がin vivoで実施される場合、それは、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素による治療後に開裂されないで残っている式Iの化合物のレベルをモニタするために使用できる。こうして、この方法は、式Iの化合物に伴う毒性への対処における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の効果をモニタするために使用できる。
【0127】
前記方法は、式Iの化合物の量を予め決められたレベル(通常は、毒性を生じないレベル)に下げるために、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の追加の投薬が必要であるかどうかを決めることをさらに含み得る。追加の投薬において投与される酵素の量もまた求められ得る。
【0128】
したがって、前記方法はまた、式Iの化合物の開裂が起こり得る条件下に、式Iの化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の追加投薬に接触させることを含む。
【0129】
本発明の第9の態様は、上で定義された式Iの葉酸拮抗化合物とカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素からなる、あるいはこれらを含む治療システム(あるいは、「パーツキット」と呼んでもよい)を提供する。任意選択で、この治療システムは葉酸経路救援剤もまた含み得る。
【0130】
好ましくは、前記治療システムは、本発明の第1の態様において上で定義された式Iの好ましい化合物を、最も好ましくはトミュデックスを含む。やはり好ましくは、この治療システムは、本発明の第1の態様において上で定義された、カルボキシペプチダーゼG2、またはカルボキシペプチダーゼG活性を有するその誘導体を含む。好ましい葉酸経路救援剤もまた本発明の第1の態様において定義されている。治療システムまたはパーツキットは、保管または使用のための適切な製剤としてパッケージ化され提供される、式Iの化合物およびカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の両方と、任意選択の葉酸経路救援剤を適切に含む。こうして、例えば、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素は、いつでも注射液に戻せる凍結乾燥粉末であることも、あるいは、既に注射液に戻されていることもある。通常、式Iの化合物および酵素は、特定の治療計画において別々に投与されるので、それらは別々にパッケージ化または製剤化される。酵素および葉酸経路救援剤は一緒に投与されてもよいので、同時投与用に製剤化されてもよい。
【0131】
好ましい上で定義された治療システムまたはキットは、トミュデックス、カルボキシペプチダーゼG2と、任意選択のチミジンを含む。
【0132】
本発明の第10の態様は、式VIIIの構造フラグメントを含む化合物、あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和化合物を開裂させる方法を提供し、この方法は、式VIIIの構造フラグメントを含む化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と接触させることを含む:
【0133】
【化5】

【0134】
式中、
波線は、前記構造フラグメントの結合位置を示し;
A6はOまたはSを表し;
R8はH、あるいは、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つの置換基を表し;
R3はHまたはC1〜4アルキルを表し;
R4は-CH2C(R9a)(R9b)-Dを表し;
R9aおよびR9bは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR9aおよびR9bは一緒に=C(H)R10を表し;
R10はHまたはC1〜4アルキルを表し;
DはC(O)OH、テトラゾル-5-イル、(CH2)0〜1-NHR11を表すか、あるいは、R9aおよびR9bが一緒に=C(H)R10を表す場合にはDはHを表すこともあり、あるいは、Dは式IIIaまたはIIIbの構造フラグメントを表し、
【0135】
【化6】

【0136】
式中、波線は、これらの構造フラグメントの結合位置を示しており;
R11はHまたはC(O)R12を表し;
R12はH、あるいは、C(O)OHにより置換されたフェニル(任意選択で、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つのさらなる置換基により置換されていてもよい)を表し;
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、アルコキシ基のアルキル部分と同様に、1つまたは複数のハロ原子により置換されていてもよい。
【0137】
好ましくは、A6はSを表す。
【0138】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の好ましさは、上で記載された本発明の第1の態様と同じである。
【0139】
一実施形態において、この方法はex vivo、例えばin vitroで実施され得る。
【0140】
別の実施形態において、この方法はin vivoで実施され得る。
【0141】
通常、式VIIIの構造フラグメントを含む化合物は葉酸拮抗化合物である。
【0142】
一実施形態において、式VIIIの構造フラグメントを含む葉酸拮抗化合物が医療の途中で、あるいは別の状況で個体に投与される場合、本発明は、その葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処する方法を提供し、この方法は、その個体に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することを含む。
【0143】
こうして、本発明は、式VIIIの構造フラグメントを含む葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用を含む。
【0144】
本発明のこの第10の態様の医療上の使用の場合において、式VIIIの構造フラグメントを含む化合物が葉酸拮抗化合物である場合には、葉酸経路救援剤の使用、製薬製剤、投与のタイミングおよびレベル、治療される患者および疾患などについての好ましさは、上で記載された本発明の第1の態様と同じである。
【0145】
本明細書において参照されている全ての文書は、参照を通じて本明細書に全体として組み込まれる。
【0146】
先に公開された文書の本明細書における記載または検討は、その文書が現況技術の一部である、あるいは、共有されている一般知識であるという認識として、必ずしも見なされるべきでない。
【0147】
本発明は、これから、図および実施例を参照することにより一層詳細に説明される。
【0148】
(実施例)
(実施例1)
CPG2の新たな基質の確認
A:トミュデックス(式IV)
トミュデックスは、チミジル酸シンターゼ阻害剤である(アストラゼネカ)。トミュデックスをin vitroでCPG2と接触させ、下に記載されているように、CPG2の基質であることを見出した。
【0149】
CPG2によるトミュデックスの脱グルタミル化(deglutamylation)を分光光度法で測定した。100mMのTris-HCl(pH7.3)中、10mMのトミュデックス保存溶液を調製し、100mMのTris-HCl(pH7.3)中、0〜100μMの一連の稀釈液を調製するために用いた。990μlの各稀釈液を石英キュベットに入れ、37℃に予熱した。10μlの酵素溶液を加えて反応を開始し、反応の進行を、356nmの吸光度の変化速度を求めることにより追跡した。過剰のCPG2による100μM溶液の完全な転化の後の356nmでのトミュデックスの吸光係数の変化を、100nmolのトミュデックスの完全な転化による吸光係数の変化を計算するために測定した。次いで、このデータを用い、測定した速度をμmol/min(Vmax)の値に変換し、Kmおよびkcatを求めることができる。
【0150】
1〜100μMの様々な基質濃度での反応速度の測定により、適当な計算機ソフトウェア(例えば「Enzfitter」(Biosoft、ケンブリッジ、英国))を用いて、酵素のKmおよびkcatを求めることができる。分光光度法アッセイの結果は、トミュデックスが7.8μMのKmおよび24/sのKcatを有する、CPG2の基質であることを示した。
【0151】
B:LY309887(式V)
LY309887はGARFT阻害剤である(イーライリリー)。LY309887をin vitroでCPG2と接触させ、CPG2の基質であることを見出す。
【0152】
CPG2によるLY309887の脱グルタミル化を分光光度法で測定する。100mMのTris-HCl(pH7.3)中、10mMのLY309887保存溶液を調製し、100mMのTris-HCl(pH7.3)中、0〜100μMの一連の稀釈液を調製するために用いる。990μlの各稀釈液を石英キュベットに入れ、37℃に予熱する。10μlの酵素溶液を加えて反応を開始し、反応の進行を、適切な波長で吸光度の変化速度を求めることにより追跡する。過剰のCPG2による100μM溶液の完全な転化の後のLY309887の吸光係数の変化を、100nmolのLY309887の完全な転化による吸光係数の変化を計算するために測定する。このデータを用い、測定した速度をμmol/minの値に変換する。1〜100μMの様々な基質濃度での反応速度の測定により、Enzfitter計算機ソフトウェアを用いて、酵素のKmおよびkcatを求めることができる。
【0153】
C:AG2034(式VI)
GARFT阻害剤であるAG2034をin vitroでCPG2と接触させ、CPG2の基質であることを見出す。
【0154】
CPG2によるAG2034の脱グルタミル化を分光光度法で測定する。100mMのTris-HCl(pH7.3)中、10mMのAG2034保存溶液を調製し、100mMのTris-HCl(pH7.3)中、0〜100μMの一連の稀釈液を調製するために用いる。990μlの各稀釈液を石英キュベットに入れ、37℃に予熱する。10μlの酵素溶液を加えて反応を開始し、反応の進行を、適切な波長で吸光度の変化速度を求めることにより追跡する。過剰のCPG2による100μM溶液の完全な転化の後のAG2034の吸光係数の変化を、100nmolのAG2034の完全な転化による吸光係数の変化を計算するために測定する。このデータを用い、測定した速度をμmol/minの値に変換する。1〜100μMの様々な基質濃度での反応速度の測定により、Enzfitter計算機ソフトウェアを用いて、酵素のKmおよびkcatを求めることができる。
【0155】
D:AG2037(式VII)
GARFT阻害剤であるAG2037をin vitroでCPG2と接触させ、CPG2の基質であることを見出す。
【0156】
CPG2によるAG2037の開裂を分光光度法で測定する。100mMのTris-HCl(pH7.3)中、10mMのAG2037保存溶液を調製し、100mMのTris-HCl(pH7.3)中、0〜100μMの一連の稀釈液を調製するために用いる。990μlの各稀釈液を石英キュベットに入れ、37℃に予熱する。10μlの酵素溶液を加えて反応を開始し、反応の進行を、適切な波長で吸光度の変化速度を求めることにより追跡する。過剰のCPG2による100μM溶液の完全な転化の後のAG2037の吸光係数の変化を、100nmolのAG2037の完全な転化による吸光係数の変化を計算するために測定する。このデータを用い、測定した速度をμmol/minの値に変換する。1〜100μMの様々な基質濃度での反応速度の測定により、Enzfitter計算機ソフトウェアを用いて、酵素のKmおよびkcatを求めることができる。
【0157】
(実施例2)
CPG2の投与によるトミュデックス毒性の救援
トミュデックスを投与されトミュデックスの毒性血漿レベルを有する患者に、約5分かけて静脈内注射によって50単位/体重1kgのCPG2用量を投与する。患者のトミュデックス血漿濃度は毒性のないレベルに低下する。
【0158】
(実施例3)
CPG2およびチミジンの投与によるトミュデックス毒性の救援
トミュデックスを投与されトミュデックスの毒性血漿レベルを有する患者に、約5分かけて静脈内注射によって50単位/体重1kgのCPG2用量を投与し、チミジンもまた投与する。チミジンはトミュデックスに伴う細胞毒を救援し、一方、CPG2はトミュデックスの血漿レベルを毒性のないレベルに劇的に低下させる。
【0159】
(参考文献)



【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】CPG2のアミノ酸配列を示す図である(SEQ ID No:1)。
【図2】CPG2の5種の基質:トミュデックス(式IV)、LY309987(式V)、AG2034(式VI)、AG2037(式VII)およびメトトレキサート(式X、従来技術)の化学構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの葉酸拮抗化合物、あるいは薬学的に許容されるその塩および/または溶媒和化合物を投与されている個体において、前記化合物により生じる毒性に対処する方法であって、前記個体にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与することを含む方法:
【化1】

式中、
R1はNH2、OHまたはCH3を表し;
R2はNH2またはC1〜4アルキルを表し;
基Bは式Ia、Ib、Ic、IdまたはIeの構造フラグメントを表し、
【化2】

これらの基において、破線はピリミジニル環との環縮合位置を示し、波線は基Xへの前記構造フラグメントの結合位置を示し;
R5aからR5eは独立にHまたはC1〜4アルキルを表し;
A1はC(R6a)またはNを表し;
A2はCHまたはNを表し;
A3はC(H)R6b、NR6cまたはSを表し;
A4およびA5は独立にCH2、NH、OまたはSを表し;
基B1〜B2はCH-CHまたはC=Cを表し;
R6aからR6cは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR6cはC(O)R6dを表すか、あるいはR6cはR7bと一緒にC1〜2n-アルキレンを表し;
R6dはHまたはC1〜4アルキルを表し;
Xは-CH2C(H)R7a-または-CH2NR7b-を表し(最後の2つの基においては、CH2部分がピリミジン系縮合複素環式基に結合している);
R7aおよびR7bは独立にH、C1〜6アルキル、C3〜6アルケニルまたはC3〜6アルキニルを表すか、あるいはR7bはR6cと一緒にC1〜2n-アルキレンを表し;
A6はOまたはSを表し;
R8はH、あるいは、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つの置換基を表し;
R3はHまたはC1〜4アルキルを表し;
R4は-CH2C(R9a)(R9b)-Dを表し;
R9aおよびR9bは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR9aおよびR9bは一緒に=C(H)R10を表し;
R10はHまたはC1〜4アルキルを表し;
DはC(O)OH、テトラゾル-5-イル、(CH2)0〜1-NHR11を表すか、あるいは、R9aおよびR9bが一緒に=C(H)R10を表す場合にはDはHを表すこともあり、あるいは、Dは式IIIaまたはIIIbの構造フラグメントを表し、
【化3】

式中、波線は、前記構造フラグメントの結合位置を示し;
R11はHまたはC(O)R12を表し;
R12はH、あるいは、C(O)OHにより置換されたフェニル(任意選択で、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つのさらなる置換基により置換されていてもよい)を表し;
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、アルコキシ基のアルキル部分と同様に、1つまたは複数のハロ原子により置換されていてもよい。
【請求項2】
式Iの前記葉酸拮抗化合物がトミュデックス(式IV)、LY309887(式V)、AG2034(式VI)またはAG2037(式VII)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個体が、前記葉酸拮抗化合物を投与された後、約24と48時間の間に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素を投与される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記個体が、前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカーの1つを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の前記臨床マーカーが、前記化合物投与後の所定の時間での毒性を示唆する予め決められたレベルを超える前記化合物の血漿レベルである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
毒性を示唆する、前記の予め決められた前記葉酸拮抗化合物の血漿レベルが、前記化合物投与後24時間で1μMである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物投与後の所定の時間での前記個体における前記葉酸拮抗化合物の血漿レベルを求める前ステップをさらに含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記個体が、前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床症状の1つまたは複数を有する請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の前記臨床症状が、貧血、食欲不振、無力症、脱水、下痢、疲労、発熱、肝毒性、高ビリルビン血症、白血球減少症、粘膜炎、骨髄抑制、悪心、好中球減少症、発疹、可逆性トランスアミナイティス、口内炎、血小板減少症および嘔吐から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記個体における前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の前記臨床症状の1つまたは複数の存在を確認する前ステップをさらに含む請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
葉酸経路救援剤を前記個体に投与することをさらに含む請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの前記葉酸拮抗化合物がジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)の阻害剤であり、前記葉酸経路救援剤がロイコボリンカルシウムである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記葉酸拮抗化合物がLY309887、AG2034、またはAG2037である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式Iの前記葉酸拮抗化合物が、チミジル酸シンターゼ(TS)の阻害剤であり、前記葉酸経路救援剤がチミジンである請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記葉酸拮抗化合物がトミュデックスである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記個体が、前記葉酸経路救援剤の前に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素を投与される請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記個体が、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素の前に、前記葉酸経路救援剤を投与される請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個体が、前記葉酸経路救援剤とカルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素を実質的に同時に投与される請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記個体が、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を、約50単位/体重1kgの用量で投与される請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式Iの葉酸拮抗化合物を個体に投与し、次いで、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を前記個体に投与することを含む、癌、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患の治療方法。
【請求項21】
式Iの前記葉酸拮抗化合物がトミュデックスであり、治療される前記癌が胸部、卵巣、結腸/直腸、肝臓、前立腺、膵臓または胃の癌、あるいは非小細胞肺癌(NSCLC)、悪性中皮腫、または原発巣不明癌である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記葉酸拮抗化合物がLY309887であり、治療される前記癌が胸部、結腸、肺または膵臓の癌である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記葉酸拮抗化合物がAG2034であり、治療される前記癌が胸部癌、結腸癌、肺癌、黒色腫またはリンパ腫である請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記葉酸拮抗化合物がAG2037であり、治療される前記癌が固形腫瘍、例えば、進行、転移または再発固形腫瘍である請求項20に記載の方法。
【請求項25】
請求項1または請求項2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用。
【請求項26】
前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床マーカーの1つまたは複数を有する個体における毒性に対処するための、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
毒性の前記臨床マーカーが、前記化合物投与後の所定の時間での毒性を示唆する予め決められたレベルを超える前記葉酸拮抗化合物の血漿レベルである請求項26に記載の使用。
【請求項28】
毒性を示唆する、前記の予め決められた前記葉酸拮抗化合物の血漿レベルが、前記化合物投与後24時間で1μMである請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の臨床症状の1つまたは複数を有する個体における毒性に対処するための、請求項25から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性の前記臨床症状が、貧血、食欲不振、無力症、脱水、下痢、疲労、発熱、肝毒性、高ビリルビン血症、白血球減少症、粘膜炎、骨髄抑制、悪心、好中球減少症、発疹、可逆性トランスアミナイティス、口内炎、血小板減少症および嘔吐から選択される請求項29に記載の使用。
【請求項31】
後にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における、請求項1または請求項2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物により対処できる疾患に対処するための医薬の調製における、前記葉酸拮抗化合物の使用。
【請求項32】
葉酸経路救援剤を投与される個体における毒性に対処するための、請求項25から31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記個体が、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素の前に、前記葉酸経路救援剤を投与される請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記個体が、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素の後で、前記葉酸経路救援剤を投与される請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記個体が、前記葉酸経路救援剤とカルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素を実質的に同時に投与される請求項32に記載の使用。
【請求項36】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における、請求項1または2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、葉酸経路救援剤の使用。
【請求項37】
請求項1または2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と葉酸経路救援剤の使用。
【請求項38】
前記葉酸拮抗化合物がDHFRまたはGARFTの阻害剤であり、前記葉酸経路救援剤がロイコボリンである請求項32から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記葉酸拮抗化合物がLY309887、AG2034、またはAG2037である請求項38に記載の使用。
【請求項40】
式Iの前記葉酸拮抗化合物がTS阻害剤であり、前記葉酸経路救援剤がチミジンである請求項32から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
式Iの前記葉酸拮抗化合物がトミュデックスである請求項40に記載の使用。
【請求項42】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素が約50単位/体重1kgの用量でなされる請求項25から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
式Iの葉酸拮抗化合物の投与によって、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患に対して治療されている個体における、前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための、請求項25から42に記載の使用。
【請求項44】
後にカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を投与される個体における、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される病状を治療するための医薬の調製における、請求項1または請求項2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物の使用。
【請求項45】
式Iの葉酸拮抗化合物の投与によって治療されている、癌、RA、MS、乾癬、子宮外妊娠および移植片対宿主病から選択される疾患の薬物療法を補助するための医薬の調製における、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用。
【請求項46】
式Iの前記葉酸拮抗化合物と治療される前記癌が請求項21〜24のいずれか一項に定義されている通りである請求項43から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
請求項1または2において上で定義されている式Iの葉酸拮抗化合物と、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を含む治療システム。
【請求項48】
葉酸経路救援剤をさらに含む請求項47に記載の治療システム。
【請求項49】
請求項1または請求項2において定義されている式Iの葉酸拮抗化合物から、末端L-グルタミン酸部分を開裂させるex vivo法であって、前記化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素に接触させることを含む方法。
【請求項50】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素による、請求項1または請求項2において定義されている化合物の開裂の速度および/または度合いを求める方法であって、
式Iの前記化合物を供用すること、
式Iの前記化合物を、前記化合物の開裂が起こり得る条件下に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と接触させること、および
式Iの前記化合物の開裂の速度および/または度合いを経時的にモニタすること、
を含む方法。
【請求項51】
前記のモニタするステップが、式Iの前記化合物の量および/または濃度をモニタすることを含む請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記のモニタするステップが、式Iの前記化合物の分解生成物の1種または複数の量および/または濃度をモニタすることを含む請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
ex vivoで実施される請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
in vivoで実施される請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
式Iの前記化合物の量を予め決められたレベルに下げるために、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の追加の投薬が必要であるかどうかを判断することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
式Iの前記化合物を、前記化合物の開裂が起こり得る条件下に、カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素の追加投薬に接触させることをさらに含む請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
式VIIIの構造フラグメントを含む化合物、あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和化合物を開裂させる方法であって、式VIIIの構造フラグメントを含む前記化合物を、カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素と接触させることを含む方法:
【化4】

式中、
波線は、前記構造フラグメントの結合位置を示し;
A6はOまたはSを表し;
R8はH、あるいは、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つの置換基を表し;
R3はHまたはC1〜4アルキルを表し;
R4は-CH2C(R9a)(R9b)-Dを表し;
R9aおよびR9bは独立にHまたはC1〜4アルキルを表すか、あるいはR9aおよびR9bは一緒に=C(H)R10を表し;
R10はHまたはC1〜4アルキルを表し;
DはC(O)OH、テトラゾル-5-イル、(CH2)0〜1-NHR11を表すか、あるいは、R9aおよびR9bが一緒に=C(H)R10を表す場合にはDはHを表すこともあり、あるいは、Dは式IIIaまたはIIIbの構造フラグメントを表し、
【化5】

式中、波線は、前記構造フラグメントの結合位置を示し;
R11はHまたはC(O)R12を表し;
R12はH、あるいは、C(O)OHにより置換されたフェニル(任意選択で、ハロ、C1〜4アルキルおよびC1〜4アルコキシから選択される1つまたは2つのさらなる置換基により置換されていてもよい)を表し;
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、アルコキシ基のアルキル部分と同様に、1つまたは複数のハロ原子により置換されていてもよい。
【請求項58】
ex vivoで実施される請求項57に記載の方法。
【請求項59】
in vivoで実施される請求項57に記載の方法。
【請求項60】
式VIIIの構造フラグメントを含む前記化合物が葉酸拮抗化合物である請求項57に記載の方法。
【請求項61】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素を個体に投与することを含む、治療の途中あるいは別の状況で前記葉酸拮抗化合物を投与されている前記個体における、前記葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための請求項60に記載の方法。
【請求項62】
請求項57において定義されている式VIIIの葉酸拮抗化合物により生じる毒性に対処するための医薬の調製におけるカルボキシペプチダーゼG活性を有する酵素の使用。
【請求項63】
カルボキシペプチダーゼG活性を有する前記酵素が、カルボキシペプチダーゼG2、あるいはカルボキシペプチダーゼG活性を有するその誘導体である、請求項1から24または49から61のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項25から46または62のいずれか一項に記載の使用、あるいは請求項47または48に記載の治療システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−524711(P2007−524711A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500299(P2007−500299)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000751
【国際公開番号】WO2005/084695
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506290062)
【Fターム(参考)】