説明

蒸し器

【課題】 筺体内部の視認性を妨げることなく、調理品の入庫時間などを容易に確認できる蒸し器を提供する。
【解決手段】 筆記具などによる記入が可能で、かつこの記入を消去可能なフィルム状部材としての表示フィルム43を、筐体2の扉16に備える。こうすると、従来のように書き込み用のメモ用紙を別に用意しなくても、筐体2の扉16に設けてある表示フィルム43に、商品の販売状況に応じた入庫時間などを随時記入するだけで、それぞれの商品の入庫時間などを容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファーストフードなどの各種店舗に設置される調理品販売・保温用の蒸し器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファーストフードなどにおける調理品の販売においては、各商品ごとにそれぞれの容器(販売機)が用いられており、数種類の商品を同時に販売する場合には、広い設置場所が必要になるなどの不都合があった。こうした問題に対処するには、例えば特許文献1に開示されるように、蒸し室である箱状の筐体内に棚を上下方向に多段配置し、蒸気制御弁を開閉制御しながら筐体内に蒸気を導入することで、棚に載置される食品(調理品)の加熱や保温を行う蒸し器を利用した販売形態が普及してきている。
【0003】
実際上、この種の蒸し器のショウケースは、複数段の棚を筐体の内部に備えると共に、この筐体の外郭をなす部材(外郭部材)を、ガラスなどの透明部材で形成し、金属材や硬質樹脂材などで形成した枠状部材によって当該外郭部材を支持している。
【0004】
ところで、このような蒸し器を用いて展示販売される中華まんなどの食品は、食味などの品質維持のために保温時間が予め個々に決められているため、例えば、筐体内部に入庫した当初の時間(以下、これを入庫時間と呼ぶ)を食品毎にメモ用紙に記載し、このメモ用紙を粘着性のテープによって筐体外面に貼り付けることにより、当該メモ用紙に書き込まれた入庫時間をもとに個別に管理されている。
【特許文献1】特開2000−316717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような管理方法では、筐体内部を外部から容易に視認できるように筐体を透明部材で形成しているにも係わらず、筐体外面に貼付されたメモ用紙によって筐体内部が視認し難くなる。
【0006】
また、このような蒸し器を用いて展示販売される食品たる商品は、「先入れ先だし」が原則であり、ショーケースの最前列側(顧客側)より順次販売してゆき、顧客側の最前列が販売完了すると顧客に対する商品の見易さなどを考慮して、後列の商品が順次前列側へ移動されて最前列に再び陳列される。
【0007】
このため、入庫時間を書き込んだメモ用紙を入庫位置に応じて貼付しても、販売状況に応じて商品の入庫位置が変わるため、商品を移動させる度にこれら複数のメモ用紙を入庫位置に応じて貼付し直すことになり、当該メモ用紙によって商品の入庫管理を行うには作業が煩雑になり困難であった。
【0008】
特に、かかる構成の蒸し器においては、一般的に棚数が5段で、1段当たり9個の商品が陳列可能であるため、例えば最大45個の商品が陳列されると、これらに応じて45枚のメモ用紙を貼付することになり、当該メモ用紙を販売状況に応じて移動させる管理方法により全商品の入庫管理を行うには限界があった。
【0009】
本発明は、上述した各問題点を解決しようとするもので、メモ用紙などによって販売管理を行なわなくても、調理品の入庫時間などを容易に確認できる蒸し器を提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、調理品が移動するような場合でも、調理品の入庫管理を従来に比べて一段と容易にできる蒸し器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明による蒸し器では、従来のように書き込み用のメモ用紙を別に用意しなくても、筐体に設けてある例えばフィルム状の部材に、調理品の販売状況に応じた入庫時間などを随時記入するだけで、それぞれの調理品の入庫時間などを容易に確認できる。
【0012】
請求項2の発明による蒸し器では、販売などに伴って調理品の入庫位置が変わったのに伴ない、前記部材を適宜回転移動させることができる。そのため、部材に一度記入した調理品の入庫時間などをいちいち変更せずに、調理品の新たな入庫位置に対応した位置まで回転移動でき、多くの調理品が筺体に収容される場合でも、各調理品毎に入庫時間などを瞬時に、かつ確実に認識できる。
【0013】
請求項3の発明による蒸し器では、棚毎に調理品の入庫時間などを部材に記入して、その部材を必要に応じて回動させることができるので、当該棚毎に調理品の入庫時間などを瞬時にかつ適確に認識できる。
【0014】
請求項4の発明による蒸し器では、例えば調理品の形状や配置などを示す情報が、予め部材に明示されているので、部材に記入する内容を必要最小限に減らすことができる。そのため、調理品の入庫管理に際して、管理者の負担を極力低減することが可能になる。
【0015】
請求項5の発明による蒸し器では、露出する回転体を回動操作することによって、部材に直接手を触れなくても、回転体を利用して部材に記入されたものを所望の位置に簡単に移動させることができる。
【0016】
請求項6の発明による蒸し器では、メンテナンス時などに部材を筺体から移動させることにより、部材が邪魔にならない状態で筺体を簡単に清掃でき、当該部材が筺体の清掃の妨げとなるのを回避できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、メモ用紙などによって販売管理を行なわなくても、筐体に設けた部材に、調理品の販売状況に応じた入庫時間などを随時記入するだけで、調理品の入庫時間などを容易に確認できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、調理品が移動するような場合でも、調理品の入庫管理を従来に比べて一段と容易にできる
請求項3の発明によれば、棚毎に調理品の入庫時間などを瞬時にかつ適確に認識できる。
【0019】
請求項4の発明によれば、部材を視認するだけで筐体内部に陳列した食品に関連する情報を容易に、かつ瞬時に認識できる。
【0020】
請求項5の発明によれば、部材に直接手を触れなくても、回転体を利用して部材に記入されたものを簡単に移動させることができる。
【0021】
本発明の請求項6によれば、メンテナンス時などにおいて、部材が邪魔にならない状態で筐体を簡単に清掃でき、また部材が筺体の清掃の妨げとなるのを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明における好ましい蒸し器の一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1において、1は蒸し器の本体を示し、この本体1は、略直方体に形成された筐体2と、この筐体2の下部開口部に設けられ、加熱装置となる蒸気発生装置3を内部に備えた基台4とで構成されている。基台4は、その側面外郭をなす枠状の台座5と、中央部を残して台座5の上面開口部を覆うように設けた取付座6とを備えており、蒸気発生装置3によって水を加熱蒸発させ、蒸気を筐体2内へ送り込むようになっている。
【0023】
7はショーケースの外面に相当するガラスで、これは筺体2の前面と上面の2面を形成し、側面から見て略への字状に折り曲げられた例えば複層の透明部材からなる前面ガラス8と、筐体2の一側面と他側面をそれぞれ形成し、前面ガラス8の端面に略密封して取付け固定される同じく透明部材からなる一対の側面ガラス9とにより構成され、これら前面ガラス8と側面ガラス9とが共に取付座6に載るように設けられている。こうして、食材などの調理品を収容する筐体2は、その側面部を形成する周囲の少なくとも一方向が透明部材であるガラス7で覆われており、かくして外部から筐体2の内部を視認し得るようになされている。
【0024】
ここで、このような筐体2の内部には、当該筐体2の両側部内面に設けられた左右一対のレール(図示せず)に着脱可能で、かつスライド移動可能に、上下複数段(この場合、例えば5段)の陳列棚たる棚10が配置されており、当該棚10に所定個数の商品(調理品)をそれぞれ陳列できる。例えば、本実施例の場合、棚10の例えば最前列11A,中間列11B及び最後列11Cにそれぞれ横方向に3個の商品(図示せず)を載置でき、同一段の棚10に最大で9個の商品を載置できるようになっている。
【0025】
かくして、例えば中華まんなどの蒸し器に適した商品は、各棚10(この場合、5段)にそれぞれ9個ずつ載置されることにより、筐体2の内部に最大45個収容でき、図2に示すように、筐体2の後面側に設けられた操作パネル12の操作ボタン(図示せず)を操作し、前記蒸気発生装置3による蒸し器機能が選択されることにより、筐体2の内部で良好な状態に保管されるようになっている。
【0026】
図3や図4に示すように、ガラス7が設けられていない筐体2の後面側には、非透明部材である枠状部材13が設けられ、この枠状部材13により商品を出し入れする開口部(図示せず)が形成されている。そして、筐体2の後面側には、枠状部材13の開口部を密閉状態に覆うべく、周囲にパッキン15を備えた扉16が、一方の側部側に設けられたヒンジ部14を介して開閉自在に設けられている。
【0027】
因みに、この扉16には、当該扉16の開閉を容易にするための取手17を備えているとともに、開口部を確実に密閉状態とさせるためのマグネット18が枠状部材13と対向する位置に設けられている。筺体2の扉部をなす開閉可能な扉16は、ヒンジ部14が設けられた一方側と、取手17が設けられた他方側とにおいて、それぞれ透明部材であるガラス19を、枠状部材13に面した図示しない扉内枠と、筺体2の後外面をなす扉外枠16Aとで挟持しており、これらガラス19は複数個の固定ビス22によって扉16の内部に固定される。また、扉16の取手17に近い他側寄りには、前記ガラス19を通して筺体2内部を視認できる窓部20が形成される一方で、扉16の一側寄りには、ガラス19を底面とした凹部31(図4参照)が形成される。この凹部31は後述する可動フィルム機構30を扉16から突出させずに配置するためのものである。
【0028】
次に、可動フィルム機構30の具体的な構成を、図5をも参照しながら説明する。可動フィルム機構30の一側には、その上下方向に沿って支持支柱32が設けられており、この支持支柱32の両端部が凹部31の上側面と下側面にある軸受部(図示せず)に軸支されることにより、当該支持支柱32を支点として可動フィルム機構30が開閉移動するようになっている。なお、可動フィルム機構30が扉16から所定の角度まで開くと、支持支柱32の両端部と軸受部との係合が外れて、可動フィルム機構30を扉16から取り外せるように構成してもよい。いずれにせよ本実施例では、扉16の凹部31に対して可動フィルム機構30が最大で約90°回動し、清掃時などにおいて凹部31に無理なく手を差し入れられるようになっている。
【0029】
可動フィルム機構30は、全体として箱状に形成されており、支持支柱32を備えた有底状のケース本体35と、当該ケース本体35内の凹状部35Aに設けられ、図3からも明らかなように、筐体2内部の棚10と同数で、かつ各棚10とそれぞれ同じ高さ位置に配置された表示用の回転フィルム部36と、当該ケース本体35の手前側開口部に嵌め込まれるカバー体37とを備えている。また回転フィルム部36は、お互いにほぼ平行に配置された一対の上部回転軸41および下部回転軸42と、これらの回転軸41,42の間に掛け渡された無端状の表示フィルム43とにより構成され、好ましくは筺体2内に配置される各棚10にそれぞれ対応して設けられる。ここで、筺体2の内部に設けられる棚10の数が任意に変わる場合は、棚10の数に拘らず回転フィルム部36を複数個配設すればよい。なお、各回転フィルム部36は同一構造でなるため、説明の便宜上、最上部に位置した回転フィルム部36についてのみ説明し、その他の回転フィルム部36についての説明は以下省略する。
【0030】
回転フィルム部36の回転体を構成する上部回転軸41と下部回転軸42は、いずれもその一端が支持支柱32に回動自在に軸支されると共に、上部回転軸41の他端が、ケース本体35の側枠部に設けた軸受け部47に回動自在に嵌め込まれ、さらに下部回転軸42の他端も、同じくケース本体35の側枠部に設けた別の軸受け部48に回動自在に嵌め込まれている。また、主動軸となる上部回転軸41の一端側には、当該上部回転軸41と同軸に設けられたフランジ状の回転ダイヤル39が固着して備えてある。ここでの軸受け部47,48はケース本体35の側枠部に固着されているが、ケース本体35が扉16に固着されている場合は、メンテナンス時などにケース本体35の底面部に位置するガラス19に簡単に手を差し入れられるように、軸受け部47,48がケース本体35に着脱可能に設けられ、かつ支持支柱32と共に上部回転軸41と下部回転軸42が回動する構成としてもよい。
【0031】
カバー体37は、ケース本体35内に配置される回転フィルム部36に対向する位置に、表示フィルム36の表面を外部へ露出させるためのフィルム用開口部38と、回転ダイヤル39を外部へ露出させるためのダイヤル用開口部40とを、それぞれ形成している。カバー体37の一側上端部および一側下端部は、支持支柱32に回動自在に取り付けられており、可動フィルム機構30全体が支持支柱32を中心軸として扉16から開閉できるのとは別に、ケース本体35に対してカバー体37を開閉できるようになっている。因みに、図5はケース本体35に対してカバー体37を開けた状態を示しているが、この場合は、ケース本体35内に設けられた各回転フィルム部36の全体を外部に露出させることができる。
【0032】
フィルム状部材に相当する表示フィルム43は、軟質の透明または非透明部材からなり、しかも水性ペンなどの筆記具によってその表面に書き込み記入が可能で、かつ当該書き込みを布や消しゴムなどの筆記消去手段で消去できる材質で形成される。また、この表示フィルム43には、調理品である商品に関する情報の明示部として、棚10に陳列される食品をイメージさせる絵柄(以下、これを商品マークと呼ぶ)Mが、表面の全周に亘って縦方向及び横方向にそれぞれ所定間隔で、当該筆記消去手段により消去し得ないインキなどによって予め印刷されている。なお、棚10に陳列される商品が変わることを考慮して、表示フィルム43の表面に直接商品マークMを印刷形成するのではなく、複数種の消去不可能な商品マークMを印刷形成した透明性のシールを、表示フィルム43の表面に貼り替え可能に設けてもよい。
【0033】
例えば調理品が中華まんであれば、表示フィルム43に印刷される商品マークMは、当該中華まんをイメージさせるようなほぼ半球状の絵柄で構成すればよい。これにより、販売員に対し当該商品マークMを視認させるだけで、これに対応する調理品を直感的にイメージさせ、筐体2内部の棚10に陳列される食品の種類情報を明示させることができる。商品マークMは展示販売される食品に応じて種々変わるものであり、販売員に対し当該商品マークMを視認させるだけで、筺体2内部の調理品を直感的にイメージさせる絵柄であれば、どのようなものでもよい。
【0034】
前記フィルム用開口部38から確認できる商品マークMの数は、棚10に陳列される商品の数と同一、若しくはそれよりも多くするのが好ましい。とりわけ本実施例では、商品が列単位で移動販売されることを考慮して、棚10の一列に陳列できる商品の最大数に合せて、各列毎に商品マークMが設けられている。
【0035】
具体的には図6(A)に示すように、フィルム用開口部38には、横方向に3個、縦方向に4個の合計12個の商品マークMが表示し得るようになされており、販売員が当該商品マークMと、筐体2内部の棚10に載置した食品(図示せず)とを照らし合わせたとき、直感的に最上列50Aの商品マークMが棚10の最前列11A(図1)に載置した食品に対応し、上部中間列50Bの商品マークMが棚10の中間列11Bに載置した食品に対応し、下部中間列50Cの商品マークMが棚10の最後列11Cに載置した食品に対応するように配置される。
【0036】
また、この実施の形態の場合、フィルム用開口部38においては、予備表示列50Dが設けられていることにより、棚10に陳列される食品数よりも多めに商品マークMが表示でき、販売員に対し蒸し時間の明示や、次回の食品入庫予定時間、商品の種類の明示などの販売員が所望する種々の商品予備情報を自由に書き込めるようになされている。
【0037】
前記上部回転軸41と下部回転軸42は、表示フィルム43の表面への記入や消去が円滑に行なえるように、ある程度の張力を持って輪状に形成された表示フィルム43を懸架している。また、上部回転軸41および下部回転軸42と、表示フィルム43の裏面との間には摩擦力が作用しており、回転ダイヤル39を手動操作して上部回転軸41を回動させると、当該摩擦力により表示フィルム43および下部回転軸42が連動し、フィルム用開口部38において、回転ダイヤル39の回転量及び回転方向に応じて商品マークMの列が上下方向へ移動し得るようになされている。
【0038】
次に、上記構成についてその作用を説明する。商品の陳列に際しては、先ず取手17に手を掛けて、マグネット18の磁力に抗して扉16を開放し、各棚10に中華まんなどの各種商品を載置する。どの棚10にどの商品をどのように陳列するのかは、フィルム用開口部38を通して視認できる商品マークMを参考すればよい。販売に必要な商品を筺体2内に収容したら、マグネット18の磁力により扉16を閉状態に保持する。この状態で、筐体2の後面側に設けられた操作パネル12の操作ボタンを操作すると、前記蒸気発生装置3の加湿ヒータが通電され、筺体2内部に蒸気が放散されると共に、筺体2内部の温度が上昇する。
【0039】
上記一連の動作において、蒸し器の入庫管理を行なう販売員が商品を筐体2内部の棚10に入庫させたとき、図6(A)に示すように、フィルム用開口部38を通して視認できる商品マークMに対応して、表示フィルム43の表面に入庫時間を書き込む。この表示フィルム43への書き込みは、後で簡単に消去できるように、例えば水性ペンなどの筆記具(図示せず)により行なうのが好ましい。
【0040】
一例として、棚10の最前列11Aに商品を午前7時30分に入庫した場合には、当該最前列11Aの入庫位置に対応する最上列50Aの商品マークMに対応して、筆記具により入庫時間を示す「7:30」を書き込む。図6(A)では、さらに同様の手法で、上部中間列50Bの商品マークMに対応して、「10:30」なる入庫時間が表示フィルム43の表面に書込まれ、下部中間列50Cの商品マークMに対応して、「11:00」なる入庫時間が表示フィルム43の表面に書込まれている。
【0041】
これにより販売員は、当該入庫時間が書き込まれた商品マークMの位置と、その商品マークMに対応して表示フィルム43に書き込んだ入庫時間とにより、筺体2内の各棚10のどの位置に、どのような商品がどの時間から陳列されているのかを瞬時に確認できる。また、筐体2内部の様子は、扉16の他側に設けられた窓部20を通して確認できると共に、この窓部20に沿うように可動フィルム機構30が配置されていることにより、筐体2内部の棚10に載置した各商品と、表示フィルム36の商品マークMに記載された内容を、筐体2の後面側から容易に対比できる。また筐体2内部の棚10毎に回転フィルム部36を設けるとともに、当該回転フィルム部36を各棚10と同じ高さ位置に配置することで、各棚10毎における商品の入庫時間を瞬時に確認できる。
【0042】
その後、棚10に陳列された商品を販売する場合は、前述の「先入れ後だし」を原則として、ショーケースの最前列11A側(顧客側)より順次商品を取り出し、顧客側の最前列11Aが販売完了すると顧客に対する商品の見易さなどを考慮して、後列の商品が順次前列側へ移動されて最前列11Aに再び陳列される。図6(B)は、販売された商品に対応する商品マークMの入庫時間の一部を、布や消しゴムなどの筆記消去手段(図示せず)により消去した状態を示している。ここでは、図6(A)に示す状態から、ショーケースの最前列11Aにある2個の商品が販売により取り出され、残り1個の商品がショーケースの最前列11Aに残っていることが一目でわかる。
【0043】
また、最前列11Aにある全ての商品が取り出されると、棚10の中間列11Bおよび最後列11Cに位置する商品が、「先入れ先だし」の原則に基づいて、順次最前列11Aおよび中間列11Bに移動させられる。このとき、図6(B)に示す状態から、最上列50Aに残っている入庫時間の記載を消去し、回転ダイヤル39を上方側へ所定量だけ回転操作すると、表示フィルム43が図6(C)に示す矢印の方向に回転移動し、それまで最上列50Aにあった商品マークMの列が背後に移動する一方で、上部中間列50Bにあった商品マークMの列が最上列50Aに移動し、下部中間列50Cにあった商品マークMの列が上部中間列50Bに移動し、さらに背後にあった商品マークMの列が予備表示列50Dに移動する。かくして、中間列11Bおよび最後列11Cに陳列された商品が、最前列11Aおよび中間列11Bへそれぞれ移動するのに伴い、フィルム用開口部38において、表示フィルム43に書込まれていた入庫時間の位置を、商品マークMと共に簡単に移動することができる。
【0044】
このようにして、筺体2内の商品は順次販売されて行くが、販売状況に応じて商品の入庫位置が変わっても、回転ダイヤル39を回転させるだけで、前もって書き込まれた商品の入庫時間を、商品の入庫位置に対応して簡単に移動させることができ、筐体2内部に陳列された商品の入庫時間を正確に認識できる。
【0045】
また、表示フィルム43に記載された入庫時間を全て消去しなくても、回転ダイヤル39を回転させるだけで、入庫時間の書き込みを移動させることができるので、販売員の管理作業の手間を省くことができる。
【0046】
一方、蒸し器はいわゆる食品販売器であるから、メンテナンス時には筺体2の内部の清掃が必須になる。この場合、扉16の外側は筺体2内部の食品に直接影響を与える部分ではないものの、ある程度の清潔感を保つ必要はある。そこで、メンテナンス時には、支持支柱32を中心として可動フィルム機構30を扉16の手前側に起こし、凹部31の底面部を露出させる。これにより、凹部31の底面部に位置するガラス19に手を差し入れて、当該ガラス19の清掃を容易に行うことができる。
【0047】
なお、ケース本体35が扉16に固着されている構造では、先ずケース本体35に対してカバー体37を手前に引いて、当該カバー体37を開け、次に軸受け部47,48をケース本体35から取り外しながら、支持支柱32を中心として回転フィルム部36を扉16の手前側に起こす。これにより、カバー体37ひいては凹部31の底面部に位置するガラス19に手を差し入れて、当該ガラス19の清掃を容易に行うことができる。
【0048】
以上のように本実施例では、調理品である商品を収容する透明部材のガラス7からなる筐体2を備えた蒸し器において、筆記具などによる記入が可能で、かつこの記入を消去可能なフィルム状の部材としての表示フィルム43を、筐体2の一側面をなす開閉可能な扉部たる扉16に備えている。
【0049】
このようにすると、従来のように書き込み用のメモ用紙を別に用意しなくても、筐体2の扉16に設けてある表示フィルム43に、商品の販売状況に応じた入庫時間などを随時記入するだけで、それぞれの商品の入庫時間などを容易に確認できる。
【0050】
また、本実施例の表示フィルム43は端部どうしを接合した無端状に形成され、対をなす上部回転軸41と下部回転軸42とに回動可能に懸架されている。こうすると、販売などに伴って商品の入庫位置が変わったのに伴ない、それに合せて表示フィルム43を適宜回転移動させることができる。そのため、表示フィルム43に一度記入した商品の入庫時間などをいちいち変更せずに、商品の新たな入庫位置に対応した位置まで回転移動でき、多くの商品が筺体2に収容される場合でも、各商品毎に入庫時間などを瞬時に、かつ確実に認識できる。
【0051】
また表示フィルム43は、商品の陳列棚である棚10と同数か、或いは複数個配設するのが好ましい。すなわち、商品を陳列する棚10毎に商品の入庫時間などを表示フィルム43に記入して、その表示フィルム43を必要に応じて回動させることができるので、当該棚10毎に商品の入庫時間などを瞬時にかつ適確に認識できる。
【0052】
また本実施例では、商品に関する情報の明示部として、表示フィルム43の表面に商品マークMを設けている。こうすると、例えば商品の形状や配置などを示す情報が、予め表示フィルム43に明示されているので、表示フィルム43に記入する内容を必要最小限に減らすことができる。そのため、商品の入庫管理に際して、管理者の負担を極力低減することが可能になる。
【0053】
また本実施例では、表示フィルム43を懸架する回転体としての上部回転軸41を、扉16に露出して回動可能に設けている。この場合、扉16の外方に露出する上部回転軸41の回転ダイヤル39を回動操作することによって、表示フィルム43に直接手を触れなくても、上部回転軸41を利用して表示フィルム43に記入されたものを所望の位置に簡単に移動させることができる。
【0054】
さらに本実施例では、扉16に対して表示フィルム43を移動可能に設けている。こうすると、メンテナンス時などに表示フィルム43を筺体2の扉16から移動させることにより、表示フィルム43が邪魔にならない状態で扉16を簡単に清掃でき、当該表示フィルム43が扉16の清掃の妨げとなるのを回避できる。
【0055】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。例えば、表示フィルム43に記入する内容としては、上述の入庫時間に限らず、販売者が必要と思われる任意の事項を含む。また、調理品に関する情報の明示部としては、実施例のような商品の形状に代わって、例えば商品の名称をそのまま明示してもよい。
【0056】
表示フィルム43や回転軸41,42を含む可動フィルム機構30は、扉16に設けたガラス19の表面に設置されるが、当該可動フィルム機構30を扉16に対し一体または別付けで設けてもよい。特に別付けの場合は、例えば吸盤や両面テープなどの着脱部材を利用して、可動フィルム機構30を扉16の表面側に着脱自在に設けることができる。
【0057】
さらに、上述した実施例においては、回転フィルム部36を筐体2内部に設けられた棚10と同数設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、回転フィルム部36を棚10の数よりも少なく設けるようにしたり、或いは当該棚10の数よりも多く設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例における蒸し器を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】同上、蒸し器を斜め後方から見た斜視図である。
【図3】同上、扉の全体構成を示す正面図である。
【図4】同上、可動フィルム機構が回動する様子を示す斜視図である。
【図5】同上、可動フィルム機構の内部構成を示す斜視図である。
【図6】同上、フィルム用開口部における商品マークの表示の様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0059】
2 筐体
10 棚
41 上部回転軸(回転体)
43 表示フィルム(部材)
M 商品マーク(明示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理品を収容する筐体を備えた蒸し器において、記入が可能で、かつこの記入を消去可能な部材を前記筐体に備えたことを特徴とする蒸し器。
【請求項2】
前記部材は無端状に形成され、回動可能に懸架されることを特徴とする請求項1記載の蒸し器。
【請求項3】
前記部材を棚と同数又は複数個配設したことを特徴とする請求項2記載の蒸し器。
【請求項4】
情報の明示部を前記部材に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸し器。
【請求項5】
前記部材を懸架する回転体を、露出して回動可能に設けたことを特徴とする請求項2または3記載の蒸し器。
【請求項6】
前記部材を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の蒸し器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−116120(P2006−116120A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308128(P2004−308128)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】