蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラント
【課題】
軸方向挿入型の翼根元部と翼溝に形成された切り欠き底部に発生する局所応力の増加を抑制すると共に、局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制することができる蒸気タービン動翼を提供する。
【解決手段】
翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部とを有し、翼根元部はタービンロータ軸方向に対して所定の角度αをなして挿入される形状を有すること、又、タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度θとαの値がα×θ≦500、90>θ≧39、90>α>0の範囲となるように構成された蒸気タービン動翼。
軸方向挿入型の翼根元部と翼溝に形成された切り欠き底部に発生する局所応力の増加を抑制すると共に、局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制することができる蒸気タービン動翼を提供する。
【解決手段】
翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部とを有し、翼根元部はタービンロータ軸方向に対して所定の角度αをなして挿入される形状を有すること、又、タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度θとαの値がα×θ≦500、90>θ≧39、90>α>0の範囲となるように構成された蒸気タービン動翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の蒸気タービン動翼のタービンロータへの植え込み状況を示す斜視図である。蒸気タービンに用いられるタービン動翼は、その翼根元部4に様々な形状を形成し、翼根元部4と同形状の翼溝5に翼根元部4を係合し取り付けられる。翼根元部4の1つの構造としては、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部がある。タービン動翼の翼頂部には、蒸気の漏洩損失量の低減の目的でシュラウド1が設けられている。シュラウド1は、従来、動翼プロファイル部を示す翼部2とは別部材であり、翌頂部に形成されたテノン6と呼ばれる部位をかしめることによってシュラウド1と翼部2とが結合される。
【0003】
タービン動翼全体に作用する遠心力は、殆どの場合、翼根元部4と翼溝5との嵌め合い部にて支持されている。従って、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部4を有するタービン動翼の場合、翼根元部4と翼溝5に形成された切り欠き部には、遠心力に起因する高い局所応力が発生する。このため、タービンの損傷モードの一つである疲労に対しては、切り欠き部が最も危険な部位となり、タービン全体の寿命を決定する場合がある。
【0004】
このような問題を解決するために、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部4を有するタービン動翼の翼根元部4と翼溝5に形成された切り欠き部に発生する局所応力を低減し、疲労寿命を改善する方法として、特許文献1に、切り欠き底部の曲率を大きくし局所応力を低減させる構造が記載されている。
【0005】
図10は従来の蒸気タービン動翼構造をタービンロータ径方向側から見た翼部とその付根であるプラットフォームの平面図である。即ち、特許文献2においては、図10に示すように、タービンロータ径方向から見た翼部2の付根であるプラットフォーム9の平面形状がタービンロータ軸方向に対して傾斜した構造が示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭54-96618号公報
【特許文献2】特開平8-260902号公報
【非特許文献1】日本材料学会編 疲労設計便覧、p117、養賢堂
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示すように、タービンロータ径方向から見た動翼プロファイル部の付根であるプラットフォーム9の平面形状が四角形の場合、タービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができないが、図10に示すように軸方向挿入型のプラットフォーム9の形状をタービンロータ径方向から見た平面形状を平行四辺形とし、プラットフォーム9をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に設定することによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる。しかし、従来の翼根元部4の挿入部の形状と挿入方向については不明である。
【0008】
従来、翼部2とシュラウド1が一体成型され、全周の動翼を相互に接触させて連結する構造(以後、インテグラルカバー構造と呼ぶ)を有するタービン動翼には、タービンロータ径方向を中心軸としてタービン動翼に弾性変形内でねじり変形を与えてタービン動翼をタービンロータに組み込み、組み込み後は、ねじり戻り力により隣接する動翼のシュラウドの相対する面との間に面圧を発生させることにより、インテグラルカバー構造としているものがある。このねじり戻り力は、殆どの場合、翼根元部4と翼溝5との接触部において固定されるため、ねじり戻り力が翼根元部4と翼溝5とにそれぞれ形成されたフック同士の接触面に発生する摩擦力を上回る場合、接触面間で相対すべりが生じ、図11の蒸気タービン動翼において翼根元部と翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触した場合を示すタービンロータ軸方向から見た断面図に示すように、翼根元部4と翼溝5の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触する場合がある。例えば、非特許文献1によれば、当該部に物体がある面圧のもと接触した場合にはフレッティング疲労が生じ、単純な疲労と比較して破損繰返し数が10分の1以下になる可能性がある。
【0009】
又、本発明において、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する場合には、タービンロータ軸方向に平行に翼根元部を挿入する場合と比較して、翼根元部と翼溝とに形成された切り欠き底部に発生する局所応力が増大するため、疲労寿命が低下する可能性があった。
【0010】
更に、インテグラルカバー構造を有するタービン動翼においては、翼根元部4と翼溝5の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触し、運転中にフレッティング疲労を生じ、タービン動翼の寿命がいわゆる疲労寿命に比べて低下する可能性があるため、運転中における当該部の接触の抑制が必要であった。
【0011】
本発明の目的は、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向とすることによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制する蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部と、前記翼部と翼根元部との間に設けられたプラットフォームとを有する蒸気タービン動翼において、前記翼根元部はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼にある。
【0014】
前記翼部の前記タービンロータ軸方向における断面形状としてリーデングエッジ部先端とトレーリングエッジ部先端とを結ぶ直線が前記タービンロータ軸方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0015】
前記角度αは前記傾斜と同方向に設けられ、前記タービンロータ軸方向に対して90度より小さいこと、又、前記翼根元部は、前記プラットフォーム側より逆クリスマスツリー型を有すること、更に、前記プラットフォームは、前記角度αをなして挿入される形状を有することが好ましい。
【0016】
前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数1、2及び3により規定される範囲となるように構成されることが好ましい。
【0017】
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数4、5及び6により規定される範囲となるように構成され、翼根元部と翼溝とに形成されたフックがタービンロータ径方向に複数段設けられたことが好ましい。
【0018】
500≧α×θ>0 ……〔数4〕
90>θ≧39 ……〔数5〕
90>α>0 ……〔数6〕
前記翼部の先端にシュラウドを有し、シュラウドは前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていること、又、シュラウドの各々は隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有することが好ましい。
【0019】
前記θが、タービンロータ径方向最内周側のフック係合部にのみ適用されることが好ましい。
【0020】
本発明は、軸部と、該軸部に連なる胴部とを有し、該胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータにおいて、前記植え込み部は、前記蒸気タービン動翼の翼根元部の形状に類似した凹部を有し、前記翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入する形状を有することを特徴とする。
【0021】
前記植え込み部は複数段のフックを有する前記翼根元部の形状に類似した形状を有すること、又、前記植え込み部はクリスマスツリー型を有することが好ましい。
【0022】
更に、本発明は、軸部に連なる胴部にディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータと、前記植え込み部に植え込まれた蒸気タービン動翼とを有する蒸気タービンにおいて、前記蒸気タービンロータ及び蒸気タービン動翼が前述に記載の蒸気タービンロータ及び蒸気タービン動翼よりなることを特徴とする。
【0023】
本発明は、高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービン、又は高中圧一体型タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービン、中圧タービン、高中圧一体型タービン及び低圧タービンの少なくとも一つが前述に記載の蒸気タービンによって形成されることを特徴とする蒸気タービン発電プラントにある。
【0024】
タービンロータ径方向から見た翼部の付根の断面形状がタービンロータ軸方向に対して大きく傾斜している場合、タービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができ、同時に軸方向挿入型の翼根元部の形状をタービンロータ径方向から見たときに平行四辺形とし、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入することによりタービンロータ軸方向に平行に翼根元部を挿入する場合と比較して、翼根元部と翼溝とに形成された切り欠き底部に発生する局所応力が増大し、疲労寿命が低下する可能性があるが、翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θの値とを所定の範囲とすることにより局所応力の増化を抑制することができる。
【0025】
本発明による翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θの値の範囲について述べる。図4は、αが0度より大きい場合における局所応力の増加率(σx/σo)と、フック接触面角度θ及び翼根元部挿入角度αとの関係を示す線図である。図4においては、タービンロータ径方向にフックが3段又は4段形成された樅の木状翼根部を有する蒸気タービン動翼の係合する翼溝におけるタービンロータ径方向最内周側の切り欠き底部について、翼根元部の挿入角度αが0度の場合における切り欠き底部に発生する局所応力をσo、翼根元部挿入角度αが0度より大きい場合における局所応力をσxとしたときの、(σx/σo)比とθ及びαとの関係を3次元モデルを用いて有限要素解析により求めた。
【0026】
図5は本発明に係る3次元有限要素解析に用いた解析モデルを示す図である。図5に示すように、解析モデルの翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触面には接触要素を導入し、接触面の摩擦を考慮した。解析の結果、(σx/σo)とαとは概ね比例関係にあり、αの増加とともに(σx/σo)が増加すると共に、タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度θが大きいほどαの増加とともに(σx/σo)が増加する。
【0027】
図6は、αが0度より大きい場合における局所応力の増加のメカニズムを説明する図であり、(a)が断面図、(b)及び(c)が(a)のA-A断面図である。図6(a)に示すとおり、翼溝の左右のフックには、運転時においてロータ周方向に圧縮荷重Pが作用する。翼根元部の挿入角度αが0度の場合には、圧縮荷重が左右で打ち消し合う(c)。一方、翼根元部の挿入角度αが0度より大きい場合、図中の斜線の領域に作用する圧縮荷重は左右で打ち消し合わないため、フック全体としてはロータ径方向を中心軸とした偶力が発生する(b)。これより、ロータ径方向を中心軸とした偶力により、翼根元部挿入角度αが0度より大きい場合にはαが0度の場合と比較して切り欠き底部に発生する局所応力が増大すると考えられる。αの増加と共に図中の斜線部の面積も増加し、それにより偶力も増加することから、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい角度αをなす方向に挿入した場合における局所応力の増大の抑制には、αの値を小さくすることが有効である。
【0028】
図7は、図4の結果をもとに見出した(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合における翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。いずれの場合にもαとθの関係は概ね反比例の関係にあり、数7によって規定される。(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合における定数は、それぞれ170、500、830である。この評価により、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい角度αをなす方向に挿入した場合における局所応力の増大の抑制には、αとθの値の積を小さくすることが有効である。
【0029】
α×θ=定数 ……〔数7〕
発電プラント用蒸気タービンに適用されるタービン動翼は、疲労寿命20年から30年を有することが望ましい。疲労寿命30年を想定して設計された、タービンロータ軸方向に対して平行(α=0)に挿入する蒸気タービン動翼に対して、タービンロータ軸方向に対してある一定の角度α(α>0)をなす方向に挿入する蒸気タービン動翼が20年以上の疲労寿命を得るには以下によって求められる。
【0030】
図8は、疲労寿命と許容応力範囲との関係を示す線図である。図8に示すように、疲労寿命20年の場合における許容応力範囲が疲労寿命30年の場合における許容応力範囲の約1.3倍であることから、α>0の場合における局所応力σxが、α=0の場合における局所応力σoの1.3倍以下であることが必要である。従って、タービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する蒸気タービン動翼に対しては、αとθの値の積を500以下にすることが望ましい。
【0031】
翼根元部と翼溝の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触し、局所応力発生部においてフレッティング疲労が発生することを抑制するためには、翼根元部と翼溝とに形成されたフック同士の接触面が遠心力作用時に相対滑りを生じ、タービン動翼の翼根元部のタービンロータ翼溝に対する相対的な位置が翼先端方向に移動し、翼根元部と翼溝の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位との間にギャップが生ずることが必要とされる。このためには、フック接触面角度θの正弦Tanθがフック同士の接触面の摩擦係数μよりも大きくなるようにθの値を規定し、如何なる大きさの遠心力が作用した場合においてもフック接触面間で相対すべりが生じるようにすることが有効である。一般的なタービン動翼根元部と翼溝のフック同士の接触の場合、静摩擦係数が1を超えることはない。鋼と鋼の静摩擦係数は0.8であり、θが39度の場合Tanθは0.8であることから、θは39度以上が好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向とすることによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することができる。
【0033】
更に、本発明によれば、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に関わる蒸気タービン動翼をタービンロータに植込んだ斜視図である。本実施例における蒸気タービン動翼は、翼部2と、タービンロータ3の外周部に設けられた翼溝5に対し翼溝5と共通の中心線を有しかつタービンロータ軸方向側から挿入され係合する樅の木状の翼根元部4を有し、翼根元部4はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入される。樅の木状の翼根元部4及び翼溝5には、タービンロータ径方向に複数段のフックが形成される。蒸気タービンロータ3は、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する。
【0036】
図1に示すように、本実施例における蒸気タービン動翼は、翼部2と、タービンロータへ植え込まれタービンロータ径方向に左右対称に4段のフック10を有する翼根元部4と、翼部2と翼根元部4との間に設けられたプラットフォーム9とを有し、翼根元部4はタービンロータ軸方向に対して所定の角度αをなしてプラットフォーム9の平面形状と同様に平行四辺形の平面形状を有し、タービンロータ軸に形成されたディスク状の植え込み部にその軸方向に対して所定の角度αをなして真直ぐに挿入されるストレート形状を有するものである。
【0037】
翼根元部4を所定の角度αをなしてディスク状の植え込み部に挿入することにより蒸気タービン動翼の植え込み本数をより多く植設できるものである。又、翼根元部4の挿入方向における長さが角度αがゼロのものと比較して長いものとなり、タービンロータ3の軸方向幅においても狭くすることもできる。
【0038】
翼部2は、タービンロータ軸方向の断面形状がリーデングエッジ部先端に対してトレーリングエッジ部先端がタービンロータ軸方向より湾曲しながら傾斜しており、角度αはその傾斜と同方向に設けられ、タービンロータ軸方向に対して90度より小さく、好ましくは3〜30度であり、より好ましくは5〜20度である。
【0039】
翼根元部4はフック10を有し、プラットフォーム9側より逆クリスマスツリー型を有する。更に、プラットフォーム9は翼根元部4と同じ角度αをなして真直ぐに挿入される平行四辺形の形状を有し、平坦ではなくフィレット上に形成されている。
【0040】
翼部2の先端にシュラウド1を有し、シュラウド1は、翼部2と同一組成を有する一体に形成されたもので、塑性加工によって形成又はテノン6によるかしめによって別の材質のものを一体に結合することができる。
【0041】
シュラウド1の各々は、隣接するシュラウド1に対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有する。シュラウド1同士の面圧が発生させるには、翼根元部4の挿入角度αに対して隣接するシュラウド1同士が接する挿入角度を異わせることによって得られる。
【0042】
タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部4と翼溝5とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度をθとしたとき、本実施例では、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θは数1、2及び3により規定することにより、疲労寿命の低下を小さくすることができる。
【0043】
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
図2は、翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。図2に示すように、数1、2及び3により規定される範囲は斜線の範囲となる。
【0044】
本実施例では、フック接触面角度θの値は90度より小さければよいが、好ましくは、高中圧蒸気タービンに適用されるタービン動翼については60度以下である。このことにより、長時間の運転により翼根元部4及び翼溝5のフックがクリープ変形し、嵌め合い部のギャップが増加した場合においても、運転中に動翼が抜け落ちる危険性を抑制できる。
【0045】
又、低圧蒸気タービンに適用されるタービン動翼については、好ましくは、フック接触面角度θの値は65度以下である。このことにより、長時間運転後において、長時間の運転により翼根元部4及び翼溝5のフックにおいてエロージョンが発生し、嵌め合い部のギャップが増加した場合においても、運転中に動翼が抜け落ちる危険性を抑制できる。
【0046】
本実施例では、蒸気タービン動翼を隣り合う動翼と連結させない単独翼構造としても、複数枚の動翼を連結させる群翼構造としても、全ての動翼を連結させるインテグラルカバー構造としても良い。好ましくは、翼頂部における蒸気の漏れによるタービン性能低下の抑制及びタービン動翼の振動応力低減のため、群翼構造ないしインテグラルカバー構造とすることが望ましい。
【0047】
本実施例における蒸気タービン動翼は、高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン、及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれに対しても適用できるものであるが、高圧、中圧、高中圧一体型蒸気タービンへの適用が好ましい。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、蒸気タービン動翼数をより多く植設することができる。又、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θの値の積を500以下とすることにより、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えた蒸気タービン動翼を得ることができるので、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータ3の信頼性が向上する。
【0049】
又、本実施例によれば、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する場合において、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制する蒸気タービン動翼及びそれを用いた蒸気タービンを提供することができる。
【実施例2】
【0050】
本実施例では、実施例1において、フック接触面角度θの値の範囲の下限を39度とし、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θは数1、2及び3により規定するものである。本実施例における蒸気タービン動翼の構造は実施例1と同様である。
【0051】
500≧α×θ>0 ……〔数1〕
90>θ≧39 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
図3は、翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。図3に示すように、数1、2及び3により規定される範囲が斜線の範囲である。
【0052】
本実施例では、フック接触面角度θの値を39度以上とすることにより、如何なる大きさの遠心力が作用した場合においても翼根元部4と翼溝5の形成されたフック同士の接触面とが相対滑りを生じ、タービン動翼がタービンロータ3径方向に摺動することにより、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生が抑制できる。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様に、いずれの蒸気タービンに対しても適用でき、蒸気タービン動翼数をより多く植設できると共に、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えられることができる。そして、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制した蒸気タービン動翼を提供することができる。
【0054】
又、本実施例による蒸気タービン動翼では、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータの信頼性が向上する。
【実施例3】
【0055】
本実施例では,実施例1及び実施例2において、フック接触面角度θの値の範囲が、複数段あるフック10の内、タービンロータ3の径方向最内周側のフック10に対してのみ適用するものである。軸方向挿入型の逆クリスマスツリー型の翼根元部4をタービンロータ3軸方向に対してある一定の角度αをなす方向に挿入する場合における最も大きな局所応力は、翼溝5におけるタービンロータ3の径方向最内周側のフック10下部の切り欠き底部において発生する場合が多い。従って、実用上は、フック接触面角度θの値の範囲は、複数段あるフック10の内、タービンロータ3径方向最内周側のフックに対してのみ適用するものである。本実施例における蒸気タービン動翼の構造は、実施例1と同様であり、又、フック10は4段に対しても同様に適用される。
【0056】
以上のように、本実施例によれば、実施例1及び実施例2と同様に、いずれの蒸気タービンに対しても適用でき、蒸気タービン動翼数をより多く植設できると共に、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えられるとともに、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制した蒸気タービン動翼を提供することができる。
【0057】
又、本実施例による蒸気タービン動翼では、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータ3の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る蒸気タービン動翼を示す斜視図。
【図2】本発明における翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図。
【図3】本発明における翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図。
【図4】αが0度より大きい場合における局所応力の増加率(σx/σo)と、フック接触面角度θ及び翼根元部挿入角度αの関係を示す線図。
【図5】本発明に関わる3次元有限要素解析に用いた解析モデル。
【図6】αが0度より大きい場合における局所応力の増加のメカニズムに関する説明図。
【図7】図4の結果をもとに見出した(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合におけるαとθの関係を示す線図。
【図8】タービン動翼材料の疲労試験により求めた許容応力範囲―寿命線図。
【図9】従来の蒸気タービン動翼を示す斜視図。
【図10】従来の蒸気タービン動翼構造をタービンロータ径方向外周側から見た平面図。
【図11】蒸気タービン動翼において翼根元部と翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触したタービンロータ軸方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0059】
1…シュラウド、2…翼部、3…タービンロータ、4…翼根元部、5…翼溝、6…テノン、7…翼根元部側局所応力発生部位、8…翼溝側局所応力発生部位、9…プラットフォーム、10…フック、11…リーデングエッジ、12…トレーリングエッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の蒸気タービン動翼のタービンロータへの植え込み状況を示す斜視図である。蒸気タービンに用いられるタービン動翼は、その翼根元部4に様々な形状を形成し、翼根元部4と同形状の翼溝5に翼根元部4を係合し取り付けられる。翼根元部4の1つの構造としては、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部がある。タービン動翼の翼頂部には、蒸気の漏洩損失量の低減の目的でシュラウド1が設けられている。シュラウド1は、従来、動翼プロファイル部を示す翼部2とは別部材であり、翌頂部に形成されたテノン6と呼ばれる部位をかしめることによってシュラウド1と翼部2とが結合される。
【0003】
タービン動翼全体に作用する遠心力は、殆どの場合、翼根元部4と翼溝5との嵌め合い部にて支持されている。従って、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部4を有するタービン動翼の場合、翼根元部4と翼溝5に形成された切り欠き部には、遠心力に起因する高い局所応力が発生する。このため、タービンの損傷モードの一つである疲労に対しては、切り欠き部が最も危険な部位となり、タービン全体の寿命を決定する場合がある。
【0004】
このような問題を解決するために、樅の木状の軸方向挿入型の翼根元部4を有するタービン動翼の翼根元部4と翼溝5に形成された切り欠き部に発生する局所応力を低減し、疲労寿命を改善する方法として、特許文献1に、切り欠き底部の曲率を大きくし局所応力を低減させる構造が記載されている。
【0005】
図10は従来の蒸気タービン動翼構造をタービンロータ径方向側から見た翼部とその付根であるプラットフォームの平面図である。即ち、特許文献2においては、図10に示すように、タービンロータ径方向から見た翼部2の付根であるプラットフォーム9の平面形状がタービンロータ軸方向に対して傾斜した構造が示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭54-96618号公報
【特許文献2】特開平8-260902号公報
【非特許文献1】日本材料学会編 疲労設計便覧、p117、養賢堂
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示すように、タービンロータ径方向から見た動翼プロファイル部の付根であるプラットフォーム9の平面形状が四角形の場合、タービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができないが、図10に示すように軸方向挿入型のプラットフォーム9の形状をタービンロータ径方向から見た平面形状を平行四辺形とし、プラットフォーム9をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に設定することによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる。しかし、従来の翼根元部4の挿入部の形状と挿入方向については不明である。
【0008】
従来、翼部2とシュラウド1が一体成型され、全周の動翼を相互に接触させて連結する構造(以後、インテグラルカバー構造と呼ぶ)を有するタービン動翼には、タービンロータ径方向を中心軸としてタービン動翼に弾性変形内でねじり変形を与えてタービン動翼をタービンロータに組み込み、組み込み後は、ねじり戻り力により隣接する動翼のシュラウドの相対する面との間に面圧を発生させることにより、インテグラルカバー構造としているものがある。このねじり戻り力は、殆どの場合、翼根元部4と翼溝5との接触部において固定されるため、ねじり戻り力が翼根元部4と翼溝5とにそれぞれ形成されたフック同士の接触面に発生する摩擦力を上回る場合、接触面間で相対すべりが生じ、図11の蒸気タービン動翼において翼根元部と翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触した場合を示すタービンロータ軸方向から見た断面図に示すように、翼根元部4と翼溝5の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触する場合がある。例えば、非特許文献1によれば、当該部に物体がある面圧のもと接触した場合にはフレッティング疲労が生じ、単純な疲労と比較して破損繰返し数が10分の1以下になる可能性がある。
【0009】
又、本発明において、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する場合には、タービンロータ軸方向に平行に翼根元部を挿入する場合と比較して、翼根元部と翼溝とに形成された切り欠き底部に発生する局所応力が増大するため、疲労寿命が低下する可能性があった。
【0010】
更に、インテグラルカバー構造を有するタービン動翼においては、翼根元部4と翼溝5の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触し、運転中にフレッティング疲労を生じ、タービン動翼の寿命がいわゆる疲労寿命に比べて低下する可能性があるため、運転中における当該部の接触の抑制が必要であった。
【0011】
本発明の目的は、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向とすることによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制する蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部と、前記翼部と翼根元部との間に設けられたプラットフォームとを有する蒸気タービン動翼において、前記翼根元部はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼にある。
【0014】
前記翼部の前記タービンロータ軸方向における断面形状としてリーデングエッジ部先端とトレーリングエッジ部先端とを結ぶ直線が前記タービンロータ軸方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0015】
前記角度αは前記傾斜と同方向に設けられ、前記タービンロータ軸方向に対して90度より小さいこと、又、前記翼根元部は、前記プラットフォーム側より逆クリスマスツリー型を有すること、更に、前記プラットフォームは、前記角度αをなして挿入される形状を有することが好ましい。
【0016】
前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数1、2及び3により規定される範囲となるように構成されることが好ましい。
【0017】
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数4、5及び6により規定される範囲となるように構成され、翼根元部と翼溝とに形成されたフックがタービンロータ径方向に複数段設けられたことが好ましい。
【0018】
500≧α×θ>0 ……〔数4〕
90>θ≧39 ……〔数5〕
90>α>0 ……〔数6〕
前記翼部の先端にシュラウドを有し、シュラウドは前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていること、又、シュラウドの各々は隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有することが好ましい。
【0019】
前記θが、タービンロータ径方向最内周側のフック係合部にのみ適用されることが好ましい。
【0020】
本発明は、軸部と、該軸部に連なる胴部とを有し、該胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータにおいて、前記植え込み部は、前記蒸気タービン動翼の翼根元部の形状に類似した凹部を有し、前記翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入する形状を有することを特徴とする。
【0021】
前記植え込み部は複数段のフックを有する前記翼根元部の形状に類似した形状を有すること、又、前記植え込み部はクリスマスツリー型を有することが好ましい。
【0022】
更に、本発明は、軸部に連なる胴部にディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータと、前記植え込み部に植え込まれた蒸気タービン動翼とを有する蒸気タービンにおいて、前記蒸気タービンロータ及び蒸気タービン動翼が前述に記載の蒸気タービンロータ及び蒸気タービン動翼よりなることを特徴とする。
【0023】
本発明は、高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービン、又は高中圧一体型タービン及び低圧タービンを有し、前記高圧タービン、中圧タービン、高中圧一体型タービン及び低圧タービンの少なくとも一つが前述に記載の蒸気タービンによって形成されることを特徴とする蒸気タービン発電プラントにある。
【0024】
タービンロータ径方向から見た翼部の付根の断面形状がタービンロータ軸方向に対して大きく傾斜している場合、タービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができ、同時に軸方向挿入型の翼根元部の形状をタービンロータ径方向から見たときに平行四辺形とし、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入することによりタービンロータ軸方向に平行に翼根元部を挿入する場合と比較して、翼根元部と翼溝とに形成された切り欠き底部に発生する局所応力が増大し、疲労寿命が低下する可能性があるが、翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θの値とを所定の範囲とすることにより局所応力の増化を抑制することができる。
【0025】
本発明による翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θの値の範囲について述べる。図4は、αが0度より大きい場合における局所応力の増加率(σx/σo)と、フック接触面角度θ及び翼根元部挿入角度αとの関係を示す線図である。図4においては、タービンロータ径方向にフックが3段又は4段形成された樅の木状翼根部を有する蒸気タービン動翼の係合する翼溝におけるタービンロータ径方向最内周側の切り欠き底部について、翼根元部の挿入角度αが0度の場合における切り欠き底部に発生する局所応力をσo、翼根元部挿入角度αが0度より大きい場合における局所応力をσxとしたときの、(σx/σo)比とθ及びαとの関係を3次元モデルを用いて有限要素解析により求めた。
【0026】
図5は本発明に係る3次元有限要素解析に用いた解析モデルを示す図である。図5に示すように、解析モデルの翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触面には接触要素を導入し、接触面の摩擦を考慮した。解析の結果、(σx/σo)とαとは概ね比例関係にあり、αの増加とともに(σx/σo)が増加すると共に、タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部と翼溝とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度θが大きいほどαの増加とともに(σx/σo)が増加する。
【0027】
図6は、αが0度より大きい場合における局所応力の増加のメカニズムを説明する図であり、(a)が断面図、(b)及び(c)が(a)のA-A断面図である。図6(a)に示すとおり、翼溝の左右のフックには、運転時においてロータ周方向に圧縮荷重Pが作用する。翼根元部の挿入角度αが0度の場合には、圧縮荷重が左右で打ち消し合う(c)。一方、翼根元部の挿入角度αが0度より大きい場合、図中の斜線の領域に作用する圧縮荷重は左右で打ち消し合わないため、フック全体としてはロータ径方向を中心軸とした偶力が発生する(b)。これより、ロータ径方向を中心軸とした偶力により、翼根元部挿入角度αが0度より大きい場合にはαが0度の場合と比較して切り欠き底部に発生する局所応力が増大すると考えられる。αの増加と共に図中の斜線部の面積も増加し、それにより偶力も増加することから、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい角度αをなす方向に挿入した場合における局所応力の増大の抑制には、αの値を小さくすることが有効である。
【0028】
図7は、図4の結果をもとに見出した(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合における翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。いずれの場合にもαとθの関係は概ね反比例の関係にあり、数7によって規定される。(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合における定数は、それぞれ170、500、830である。この評価により、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい角度αをなす方向に挿入した場合における局所応力の増大の抑制には、αとθの値の積を小さくすることが有効である。
【0029】
α×θ=定数 ……〔数7〕
発電プラント用蒸気タービンに適用されるタービン動翼は、疲労寿命20年から30年を有することが望ましい。疲労寿命30年を想定して設計された、タービンロータ軸方向に対して平行(α=0)に挿入する蒸気タービン動翼に対して、タービンロータ軸方向に対してある一定の角度α(α>0)をなす方向に挿入する蒸気タービン動翼が20年以上の疲労寿命を得るには以下によって求められる。
【0030】
図8は、疲労寿命と許容応力範囲との関係を示す線図である。図8に示すように、疲労寿命20年の場合における許容応力範囲が疲労寿命30年の場合における許容応力範囲の約1.3倍であることから、α>0の場合における局所応力σxが、α=0の場合における局所応力σoの1.3倍以下であることが必要である。従って、タービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する蒸気タービン動翼に対しては、αとθの値の積を500以下にすることが望ましい。
【0031】
翼根元部と翼溝の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触し、局所応力発生部においてフレッティング疲労が発生することを抑制するためには、翼根元部と翼溝とに形成されたフック同士の接触面が遠心力作用時に相対滑りを生じ、タービン動翼の翼根元部のタービンロータ翼溝に対する相対的な位置が翼先端方向に移動し、翼根元部と翼溝の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位との間にギャップが生ずることが必要とされる。このためには、フック接触面角度θの正弦Tanθがフック同士の接触面の摩擦係数μよりも大きくなるようにθの値を規定し、如何なる大きさの遠心力が作用した場合においてもフック接触面間で相対すべりが生じるようにすることが有効である。一般的なタービン動翼根元部と翼溝のフック同士の接触の場合、静摩擦係数が1を超えることはない。鋼と鋼の静摩擦係数は0.8であり、θが39度の場合Tanθは0.8であることから、θは39度以上が好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向とすることによりタービンロータ外周部の限られた領域に多くのタービン動翼を設けることができる蒸気タービン動翼と蒸気タービンロータ及びそれを用いた蒸気タービン並びにその発電プラントを提供することができる。
【0033】
更に、本発明によれば、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、発明を実施するための最良の形態を具体的な実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明に関わる蒸気タービン動翼をタービンロータに植込んだ斜視図である。本実施例における蒸気タービン動翼は、翼部2と、タービンロータ3の外周部に設けられた翼溝5に対し翼溝5と共通の中心線を有しかつタービンロータ軸方向側から挿入され係合する樅の木状の翼根元部4を有し、翼根元部4はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入される。樅の木状の翼根元部4及び翼溝5には、タービンロータ径方向に複数段のフックが形成される。蒸気タービンロータ3は、軸部と、軸部に連なる胴部とを有し、胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する。
【0036】
図1に示すように、本実施例における蒸気タービン動翼は、翼部2と、タービンロータへ植え込まれタービンロータ径方向に左右対称に4段のフック10を有する翼根元部4と、翼部2と翼根元部4との間に設けられたプラットフォーム9とを有し、翼根元部4はタービンロータ軸方向に対して所定の角度αをなしてプラットフォーム9の平面形状と同様に平行四辺形の平面形状を有し、タービンロータ軸に形成されたディスク状の植え込み部にその軸方向に対して所定の角度αをなして真直ぐに挿入されるストレート形状を有するものである。
【0037】
翼根元部4を所定の角度αをなしてディスク状の植え込み部に挿入することにより蒸気タービン動翼の植え込み本数をより多く植設できるものである。又、翼根元部4の挿入方向における長さが角度αがゼロのものと比較して長いものとなり、タービンロータ3の軸方向幅においても狭くすることもできる。
【0038】
翼部2は、タービンロータ軸方向の断面形状がリーデングエッジ部先端に対してトレーリングエッジ部先端がタービンロータ軸方向より湾曲しながら傾斜しており、角度αはその傾斜と同方向に設けられ、タービンロータ軸方向に対して90度より小さく、好ましくは3〜30度であり、より好ましくは5〜20度である。
【0039】
翼根元部4はフック10を有し、プラットフォーム9側より逆クリスマスツリー型を有する。更に、プラットフォーム9は翼根元部4と同じ角度αをなして真直ぐに挿入される平行四辺形の形状を有し、平坦ではなくフィレット上に形成されている。
【0040】
翼部2の先端にシュラウド1を有し、シュラウド1は、翼部2と同一組成を有する一体に形成されたもので、塑性加工によって形成又はテノン6によるかしめによって別の材質のものを一体に結合することができる。
【0041】
シュラウド1の各々は、隣接するシュラウド1に対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有する。シュラウド1同士の面圧が発生させるには、翼根元部4の挿入角度αに対して隣接するシュラウド1同士が接する挿入角度を異わせることによって得られる。
【0042】
タービンロータ軸方向から見て中心線と直角をなす面と翼根元部4と翼溝5とにそれぞれ形成されたフック同士の接触部平行面とのなす角度をθとしたとき、本実施例では、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θは数1、2及び3により規定することにより、疲労寿命の低下を小さくすることができる。
【0043】
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
図2は、翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。図2に示すように、数1、2及び3により規定される範囲は斜線の範囲となる。
【0044】
本実施例では、フック接触面角度θの値は90度より小さければよいが、好ましくは、高中圧蒸気タービンに適用されるタービン動翼については60度以下である。このことにより、長時間の運転により翼根元部4及び翼溝5のフックがクリープ変形し、嵌め合い部のギャップが増加した場合においても、運転中に動翼が抜け落ちる危険性を抑制できる。
【0045】
又、低圧蒸気タービンに適用されるタービン動翼については、好ましくは、フック接触面角度θの値は65度以下である。このことにより、長時間運転後において、長時間の運転により翼根元部4及び翼溝5のフックにおいてエロージョンが発生し、嵌め合い部のギャップが増加した場合においても、運転中に動翼が抜け落ちる危険性を抑制できる。
【0046】
本実施例では、蒸気タービン動翼を隣り合う動翼と連結させない単独翼構造としても、複数枚の動翼を連結させる群翼構造としても、全ての動翼を連結させるインテグラルカバー構造としても良い。好ましくは、翼頂部における蒸気の漏れによるタービン性能低下の抑制及びタービン動翼の振動応力低減のため、群翼構造ないしインテグラルカバー構造とすることが望ましい。
【0047】
本実施例における蒸気タービン動翼は、高圧蒸気タービン-中圧蒸気タービン-低圧蒸気タービン、高中圧一体型蒸気タービン-低圧蒸気タービン、及び高低圧一体型蒸気タービンのいずれに対しても適用できるものであるが、高圧、中圧、高中圧一体型蒸気タービンへの適用が好ましい。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、蒸気タービン動翼数をより多く植設することができる。又、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θの値の積を500以下とすることにより、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えた蒸気タービン動翼を得ることができるので、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータ3の信頼性が向上する。
【0049】
又、本実施例によれば、軸方向挿入型の樅の木状の翼根元部を有し、翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい一定の角度αをなす方向に挿入する場合において、翼根元部と翼溝とに形成される切り欠き底部に発生する局所応力を抑制すると共に、翼根元部及び翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制する蒸気タービン動翼及びそれを用いた蒸気タービンを提供することができる。
【実施例2】
【0050】
本実施例では、実施例1において、フック接触面角度θの値の範囲の下限を39度とし、翼根元部4の挿入角度αとフック接触面角度θは数1、2及び3により規定するものである。本実施例における蒸気タービン動翼の構造は実施例1と同様である。
【0051】
500≧α×θ>0 ……〔数1〕
90>θ≧39 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
図3は、翼根元部の挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図である。図3に示すように、数1、2及び3により規定される範囲が斜線の範囲である。
【0052】
本実施例では、フック接触面角度θの値を39度以上とすることにより、如何なる大きさの遠心力が作用した場合においても翼根元部4と翼溝5の形成されたフック同士の接触面とが相対滑りを生じ、タービン動翼がタービンロータ3径方向に摺動することにより、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生が抑制できる。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、実施例1と同様に、いずれの蒸気タービンに対しても適用でき、蒸気タービン動翼数をより多く植設できると共に、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えられることができる。そして、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制した蒸気タービン動翼を提供することができる。
【0054】
又、本実施例による蒸気タービン動翼では、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータの信頼性が向上する。
【実施例3】
【0055】
本実施例では,実施例1及び実施例2において、フック接触面角度θの値の範囲が、複数段あるフック10の内、タービンロータ3の径方向最内周側のフック10に対してのみ適用するものである。軸方向挿入型の逆クリスマスツリー型の翼根元部4をタービンロータ3軸方向に対してある一定の角度αをなす方向に挿入する場合における最も大きな局所応力は、翼溝5におけるタービンロータ3の径方向最内周側のフック10下部の切り欠き底部において発生する場合が多い。従って、実用上は、フック接触面角度θの値の範囲は、複数段あるフック10の内、タービンロータ3径方向最内周側のフックに対してのみ適用するものである。本実施例における蒸気タービン動翼の構造は、実施例1と同様であり、又、フック10は4段に対しても同様に適用される。
【0056】
以上のように、本実施例によれば、実施例1及び実施例2と同様に、いずれの蒸気タービンに対しても適用でき、蒸気タービン動翼数をより多く植設できると共に、翼根元部4及び翼溝5に発生する局所応力を実用上支障のない程度に抑えられるとともに、翼根元部4及び翼溝5の切り欠き底部における局所応力発生部位と相対する部位とが接触することによるフレッティング疲労の発生を抑制した蒸気タービン動翼を提供することができる。
【0057】
又、本実施例による蒸気タービン動翼では、翼根元部4及び翼溝5における疲労寿命の低減を抑制できることから、蒸気タービンの設計において重要な部位となるタービン動翼及びタービンロータ3の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る蒸気タービン動翼を示す斜視図。
【図2】本発明における翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図。
【図3】本発明における翼根元部挿入角度αとフック接触面角度θとの関係を示す線図。
【図4】αが0度より大きい場合における局所応力の増加率(σx/σo)と、フック接触面角度θ及び翼根元部挿入角度αの関係を示す線図。
【図5】本発明に関わる3次元有限要素解析に用いた解析モデル。
【図6】αが0度より大きい場合における局所応力の増加のメカニズムに関する説明図。
【図7】図4の結果をもとに見出した(σx/σo)が1.1、1.3及び1.5の場合におけるαとθの関係を示す線図。
【図8】タービン動翼材料の疲労試験により求めた許容応力範囲―寿命線図。
【図9】従来の蒸気タービン動翼を示す斜視図。
【図10】従来の蒸気タービン動翼構造をタービンロータ径方向外周側から見た平面図。
【図11】蒸気タービン動翼において翼根元部と翼溝の切り欠き底部の局所応力発生部位と相対する部位とが接触したタービンロータ軸方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0059】
1…シュラウド、2…翼部、3…タービンロータ、4…翼根元部、5…翼溝、6…テノン、7…翼根元部側局所応力発生部位、8…翼溝側局所応力発生部位、9…プラットフォーム、10…フック、11…リーデングエッジ、12…トレーリングエッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部と、前記翼部と翼根元部との間に設けられたプラットフォームとを有する蒸気タービン動翼において、前記翼根元部はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項2】
請求項1において、前記翼部の前記タービンロータ軸方向における断面形状としてリーデングエッジ部先端とトレーリングエッジ部先端とを結ぶ直線が前記タービンロータ軸方向に対して傾斜していることを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記角度αは前記傾斜と同方向に設けられ、前記タービンロータ軸方向に対して90度より小さいことを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記翼根元部は、前記プラットフォーム側より逆クリスマスツリー型を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記プラットフォームは、前記角度αをなして挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数1、2及び3により規定される範囲となるように構成されることを特徴とする蒸気タービン動翼。
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数4、5及び6により規定される範囲となるように構成されることを特徴とする蒸気タービン動翼。
500≧α×θ>0 ……〔数4〕
90>θ≧39 ……〔数5〕
90>α>0 ……〔数6〕
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記翼部の先端にシュラウドを有し、該シュラウドは、前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていることを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項9】
請求項8において、前記シュラウドの各々は、隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有することを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかにおいて、前記θが、タービンロータ径方向最内周側の前記フック係合部にのみ適用されたことを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、前記フックは、3段又は4段有することを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項12】
軸部と、該軸部に連なる胴部とを有し、該胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータにおいて、前記植え込み部は、前記蒸気タービン動翼の翼根元部の形状に類似した凹部を有し、前記翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項13】
請求項11において、前記植え込み部は、複数段のフックを有することを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項14】
請求項11又は12において、前記植え込み部は、クリスマスツリー型であることを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項15】
軸部に連なる胴部にディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータと、前記植え込み部に植え込まれた蒸気タービン動翼とを有する蒸気タービンにおいて、前記蒸気タービンロータが請求項11〜13のいずれかに記載の蒸気タービンロータよりなり、前記蒸気タービン動翼の少なくとも1段の全部が請求項1〜10のいずれかに記載の蒸気タービン動翼よりなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項16】
請求項14において、前記蒸気タービン動翼は、前記蒸気タービンロータの全段に設けられていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項17】
請求項14又は15において、前記蒸気タービン動翼は、前記翼部に設けられたシュラウドの各々が隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結されていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項18】
請求項16において、前記シュラウドは、前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項19】
高圧タービン-中圧タービン-低圧タービン、高中圧一体型タービン-低圧タービン、及び高低圧一体型タービンのいずれかを有し、前記高圧タービン、中圧タービン、高中圧一体型タービン、低圧タービン及び高低圧一体型タービンの少なくとも一つが請求項14〜17のいずれかに記載の蒸気タービンによって構成されることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【請求項1】
翼部と、タービンロータへ植え込まれ該タービンロータ径方向に複数段のフックを有する翼根元部と、前記翼部と翼根元部との間に設けられたプラットフォームとを有する蒸気タービン動翼において、前記翼根元部はタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項2】
請求項1において、前記翼部の前記タービンロータ軸方向における断面形状としてリーデングエッジ部先端とトレーリングエッジ部先端とを結ぶ直線が前記タービンロータ軸方向に対して傾斜していることを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記角度αは前記傾斜と同方向に設けられ、前記タービンロータ軸方向に対して90度より小さいことを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記翼根元部は、前記プラットフォーム側より逆クリスマスツリー型を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記プラットフォームは、前記角度αをなして挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数1、2及び3により規定される範囲となるように構成されることを特徴とする蒸気タービン動翼。
500≧α×θ≧0 ……〔数1〕
90>θ≧0 ……〔数2〕
90>α>0 ……〔数3〕
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、前記タービンロータ軸方向から見て前記フックの前記タービンロータの径方向外周側の荷重を受ける面の円周面とのなす角度θと前記角度αとの値は、下記数4、5及び6により規定される範囲となるように構成されることを特徴とする蒸気タービン動翼。
500≧α×θ>0 ……〔数4〕
90>θ≧39 ……〔数5〕
90>α>0 ……〔数6〕
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記翼部の先端にシュラウドを有し、該シュラウドは、前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていることを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項9】
請求項8において、前記シュラウドの各々は、隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結する構造を有することを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかにおいて、前記θが、タービンロータ径方向最内周側の前記フック係合部にのみ適用されたことを特徴とする蒸気タービン動翼。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、前記フックは、3段又は4段有することを特徴とした蒸気タービン動翼。
【請求項12】
軸部と、該軸部に連なる胴部とを有し、該胴部に蒸気タービン動翼を植え込むディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータにおいて、前記植え込み部は、前記蒸気タービン動翼の翼根元部の形状に類似した凹部を有し、前記翼根元部をタービンロータ軸方向に対して0度より大きい所定の角度αをなして真直ぐに挿入される形状を有することを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項13】
請求項11において、前記植え込み部は、複数段のフックを有することを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項14】
請求項11又は12において、前記植え込み部は、クリスマスツリー型であることを特徴とする蒸気タービンロータ。
【請求項15】
軸部に連なる胴部にディスク状の植え込み部を複数段有する蒸気タービンロータと、前記植え込み部に植え込まれた蒸気タービン動翼とを有する蒸気タービンにおいて、前記蒸気タービンロータが請求項11〜13のいずれかに記載の蒸気タービンロータよりなり、前記蒸気タービン動翼の少なくとも1段の全部が請求項1〜10のいずれかに記載の蒸気タービン動翼よりなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項16】
請求項14において、前記蒸気タービン動翼は、前記蒸気タービンロータの全段に設けられていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項17】
請求項14又は15において、前記蒸気タービン動翼は、前記翼部に設けられたシュラウドの各々が隣接する前記シュラウドに対して面圧が発生するように相互に接触させて連結されていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項18】
請求項16において、前記シュラウドは、前記翼部に一体に形成又はテノンによって一体に結合されていることを特徴とした蒸気タービン。
【請求項19】
高圧タービン-中圧タービン-低圧タービン、高中圧一体型タービン-低圧タービン、及び高低圧一体型タービンのいずれかを有し、前記高圧タービン、中圧タービン、高中圧一体型タービン、低圧タービン及び高低圧一体型タービンの少なくとも一つが請求項14〜17のいずれかに記載の蒸気タービンによって構成されることを特徴とする蒸気タービン発電プラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−283681(P2006−283681A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105607(P2005−105607)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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