説明

蒸着フィルムの製造方法

【課題】他の部材に接着させて使用され、高いガスバリア性を有する蒸着フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】フィルム状の基材1の上に、印刷層5、蒸着層2、接着層3がこの順で形成され、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルム4の製造方法であって、基材搬送手段によって、あらかじめ、印刷層5が形成された基材1を真空蒸着装置21に導入しつつ、真空蒸着装置21において、導入された基材1に対し蒸着層2を蒸着し、さらに基材搬送手段によって真空蒸着装置21から搬出された蒸着層2が蒸着された基材1の当該蒸着層2の上に接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層3を形成し、真空蒸着装置21に導入される基材1には、印刷層5と蒸着層2との間にアンカーコート層6が形成され、アンカーコート層6は、印刷層5におけるインキ粒子の凹凸を平滑化する厚さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やセラミックを蒸着した蒸着フィルムの製造方法に関し、特に、フィルム状の基材に印刷層と蒸着層とが形成され、さらに蒸着層の上に形成された接着層によって、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルムのバリア性能を高めるために、フィルムに金属やセラミックを蒸着させた蒸着フィルムが使用されている。特に、アルミニウムは、遮光性が高く、酸素や窒素のガスバリア性がよく、さらに水蒸気バリア性もよいため、食品等を包装するための包装体としてアルミ蒸着フィルムが利用されている。また、アルミニウムは光の反射率が高く美しい金属光沢を有するため、アルミニウム蒸着層よりも表面側に印刷を施すことにより、背景に金属光沢を持つ印刷ができるので、アルミ蒸着フィルムは装飾用としても注目されていた。
【0003】
このようなアルミ蒸着フィルムは、それ自体をフィルム状の包装体として製袋して、包装袋として利用されることもあったが、そのバリア特性及び意匠性を付与するために、他の部材に接着させて使用されることも多かった。例えば、金型でプラスチックの成形を行う際に成形品の表面にラベルを張り合わせるインモールドラベル成形において、ラベル材として、アルミ蒸着フィルムを張り合わせることにより容器等の表面に容易に装飾を施すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このラベル材の構成は、印刷基材層、ガスバリア層及び接着層からなり、ガスバリア層として金属または金属酸化物を蒸着等でプラスチックフィルムに積層したものを利用していた。印刷基材層はポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム等に印刷を施したものであり、また接着層は、射出樹脂と同材質のプラスチックや、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)を含有するポリエチレン等で、射出樹脂と接着するためのものであった。そして、従来では、これら各層を独立したフィルムとして形成した後、ドライラミネーションで張り合わせたり、その一部もしくは全層を溶融押出ラミネーションすることによって形成していた。
【0005】
このような蒸着層を製造するための蒸着装置として、真空チャンバー外にロール状に巻いたフィルムを配置し、フィルムを大気中から真空チャンバー内に連続的に導入し、真空チャンバー内で蒸着層を蒸着した後、真空チャンバー内から大気中に蒸着フィルムを搬出する生産性の高い連続式の蒸着装置も開発されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、真空蒸着装置の導入出部の上流にコーティング装置を付設し、蒸着前にアンカーコーティングを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−150979号公報(段落0014〜0019)
【特許文献2】特開平8−311650号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の製造方法では、印刷基材層、ガスバリア層及び接着層をそれぞれ製造した後、張り合わせていたため、ラベル材として完成するまでに複数の装置を経由するため、時間がかかり、生産性が悪かった。また、各層を独立して製造した後に張り合わせる場合には、それぞれの層に基材等が必要となり原価が増加することや、ラベル材の膜厚が厚くなるので使い勝手も悪くなることから、実用性の面で大きな問題があった。
【0008】
かかる問題に対し、出願人は、先願である特願2009−54915号において、印刷層が形成されたフィルム状の基材の上に蒸着装置によってガスバリア層(蒸着層)を蒸着し、蒸着層の上に接着層形成手段(ロールコータ)によって接着剤を塗布して接着層を形成した蒸着フィルムの製造方法を提案した。しかし、印刷層の上に、蒸着装置によって蒸着層を蒸着する場合、インキ粒子によって生じた印刷層表面の凹凸によって、蒸着層が不均一となり、ガスバリア性が低下するという課題が新たに生じた。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するために、印刷層の上に蒸着装置によって蒸着層が形成された蒸着フィルムの製造方法において、ガスバリア性の高い蒸着フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。また、従来に比べて、他の部材に接着させて使用される蒸着フィルムを短時間で製造でき、生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。また、膜厚を薄くし、原材料費を安くし、使い勝手のよい他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
蒸着層が不均一となり、ガスバリア性が低下するという課題に対して、本発明の蒸着フィルムの製造方法においては、真空蒸着装置に導入されるまでの間に印刷層の上に十分な厚さのアンカーコート層を形成することによって、インキ粒子の凹凸をアンカーコート層で平滑化し、その表面に蒸着層を均一に形成することで、十分なバリア性を確保することができた。
【0011】
ところで、特許文献2に記載された連続真空蒸着装置では、コーティング装置を付設し、蒸着前にアンカーコーティングを行っていた。しかし、インキ粒子の凹凸を平滑化するため十分な厚さのアンカーコート層を形成すると、アンカーコート層が真空蒸着装置までの間に十分に乾燥できず、有機溶剤が残存してしまった。また、インキ粒子が有機溶剤を吸収することもあった。これらの結果、製造された蒸着フィルムにアンカーコート剤の溶剤臭が残ることもあるため、本発明においては、真空蒸着装置に導入されるまでの間にアンカーコート層の溶剤を十分に揮発させることが好ましい。
【0012】
より具体的にいえば、本発明の蒸着フィルムの製造方法は、フィルム状の基材の上に、少なくとも、印刷層、蒸着層、接着層が、この順で形成され、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムの製造方法であって、フィルム状の基材を巻出部から巻取部まで搬送する基材搬送手段と、前記巻出部から前記巻取部の間に設けられた真空蒸着装置と、前記真空蒸着装置から前記巻取部の間に設けられた接着層形成手段と、を少なくとも有する装置を使用し、前記基材搬送手段によって、あらかじめ、印刷層が形成されたフィルム状の基材を前記真空蒸着装置に導入しつつ、前記真空蒸着装置において、前記導入されたフィルム状の基材に対し蒸着層を蒸着し、さらに前記基材搬送手段によって前記真空蒸着装置から搬出された蒸着層が蒸着されたフィルム状の基材の当該蒸着層の上に前記接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層を形成し、前記真空蒸着装置に導入されるフィルム状の基材には、前記印刷層と前記蒸着層との間にアンカーコート層が形成され、前記アンカーコート層は、前記印刷層におけるインキ粒子の凹凸を平滑化する厚さを有することを特徴とする。
【0013】
また、蒸着フィルムの製造方法において、前記アンカーコート層は、前記印刷層の上に有機溶剤に溶解されたアンカーコート剤を塗布し、乾燥室において、残留する有機溶剤を揮発させることによって形成されることが好ましい。
【0014】
また、蒸着フィルムの製造方法において、前記接着層は、前記接着層形成手段によって、前記蒸着層の上に有機溶剤に溶解された接着剤を塗布して形成されることが好ましい。
【0015】
また、蒸着フィルムの製造方法において、前記接着剤は、バリア剤を含み、前記接着層は、酸素又は水分の透過を防ぐバリア層であることが好ましい。又は、前記蒸着層の上にバリア剤を塗布し、前記蒸着層と前記接着層との間に、酸素又は水分の透過を防ぐバリア層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルム基材の上に印刷層を形成した後、アンカーコート層を形成し、蒸着層が形成される表面を平滑化するので、蒸着工程において、均一な蒸着層を形成することができ、ガスバリア性の高い蒸着フィルムを製造することができる。また、乾燥室において、アンカーコート層を十分に乾燥させるので、有機溶剤臭を少なくすることができる。
【0017】
また、本発明によれば、接着層形成手段(ロールコータ)によって蒸着層の上に接着剤を塗布するだけで接着層が形成できるため、フィルム基材に対して、蒸着層を形成した後、連続して接着層を形成することができる。このように、製造装置によって、フィルム基材上に、蒸着層及び接着層を一連の連続的な処理で形成することができるので、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまでに必要な時間を短縮することができ、生産性を高めることができた。従来の蒸着装置で蒸着層を形成し、その後、押出ラミネーション装置等の別の装置によって接着層を積層させた場合は、一つの基材に対する蒸着層の形成工程と、その上への接着層の積層工程とは別の日程で行うのが通常であり、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまで、少なくとも2日、積層装置の待ち時間によってはより多くの日数が必要であった。これに対し、本発明によれば、基材を装置に装填できれば、その日のうちに接着層を有する蒸着フィルムを製造することができるので、生産性が著しく向上した。さらに、接着層として、押出ラミネーション装置等によってフィルムを積層するのではなく、接着剤を塗布して接着層を形成するので、本発明では、接着層を有する蒸着フィルム全体の膜厚を薄くすることができた。つまり、従来よりも、およそ接着層のフィルム分、膜厚を薄くすることができるのである。また、蒸着層と接着層との間にバリア層を形成するので、酸素及び水分の透過を防ぐことができる高いバリア性を有する蒸着フィルムを製造することができる。本発明のその他の効果については、以下の実施の形態において記載する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される印刷装置の概略構成図
【図2】(A)〜(C)は本発明の蒸着フィルムの印刷工程における概略断面図
【図3】本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される蒸着装置の概略構成図
【図4】(A)〜(C)は本発明の蒸着フィルムの蒸着工程における概略断面図
【図5】蒸着フィルムが接着された装飾容器の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0020】
図1には、本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される印刷装置の概略構成図を示し、図2(A)〜(C)には、本発明の蒸着フィルムの印刷工程における概略断面図を示す。
【0021】
図1に示す印刷装置60は、後述する図3の蒸着装置10の前段に設けられ、印刷工程を行うものであり、フィルム状の基材(以下、「フィルム基材」又は単に「基材」と記載することもある)に印刷層及びアンカーコート層を形成し、印刷がなされたフィルム基材(以下「印刷フィルム」という)を製造する。印刷装置60によって製造された印刷フィルムは、蒸着装置10に送られ、蒸着工程が行われる。
【0022】
印刷装置60は、第1巻出部11、印刷手段61、アンカーコート形成手段62、第1乾燥室81及び第1巻取部51を有している。さらに、印刷装置60は、印刷手段61によって形成された印刷層5を予備的に乾燥させる予備乾燥室91を有してもよい。第1巻出部11は、通常、フィルム基材がロール状に巻き取られたロールが装填される部分であり、第1巻取部51は、装置内で処理されたフィルム基材1をロール状に巻き取って回収する部分である。図示しない搬送手段によって、第1巻出部11のロール及び/又は第1巻取部51のロール、さらに必要に応じて印刷装置60内の適宜のロールを回転させて、第1巻出部11から装置内にフィルム基材1を連続的に供給し、また第1巻取部51においてフィルム基材1を連続的に回収して、第1巻出部11から第1巻取部51までフィルム基材1を搬送する。
【0023】
印刷手段61は、フィルム基材1の上に印刷層5を形成する。印刷手段61としては、例えば凹版印刷(グラビア)、凸版印刷(フレキソ)、平版印刷(オフセット)、スクリーン印刷、転写印刷等の方式を使用できる。印刷手段61は、インキ選択性が高く、適用可能なフィルム基材1の種類が多いグラビア印刷を利用することが好ましい。なお、印刷層5を形成する前のフィルム基材1の表面に対し、コロナ放電処理を施してもよい。なお、図1では、1台の印刷手段61しか図示していないが、印刷手段61は、カラーの印刷層を形成するための複数のロールコータによって構成されてもよい。予備乾燥室91は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、印刷手段61によって形成された印刷層5を予備的に乾燥させるものであり、複数のロールコータを設けた場合において、前段のロールコータで形成された印刷層5が、後段のロールコータで形成される印刷層に影響しないように、印刷層5の溶剤の一部を揮発させることができる。
【0024】
アンカーコート形成手段62は、印刷層5が形成されたフィルム基材1に対し、連続的にアンカーコート剤を塗布して印刷層5の上にアンカーコート層6を形成する。アンカーコート形成手段62としては、例えば、グラビアロールコータやリバースロールコータを使用することができる。グラビアロールコータはグラビアロールの線密度とセルの深さを決めることで精度よくアンカーコート剤のコート量を管理することができる。反面、グラビアロールコータでは、アンカーコート剤のコート量を変更する場合にはグラビアロール自体を変更しなければならなかった。この点、リバースロールコータはメタリングロールとアプリケータロールの間隔及び各ロールの回転速度を変更することによって、アンカーコート剤のコート量を容易に変更することができる。
【0025】
アンカーコート層6は、アンカーコート形成手段62によって、少なくとも印刷層5におけるインキ粒子の凹凸を平滑化できる厚さに形成される必要がある。すなわち、インキ粒子の凹凸の段差の最大値(インキ粒子の最も高い位置と最も低い位置の差)よりも厚くする。使用されるインキ粒子の種類によっても異なるが、アンカーコート層6としては、1〜5g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量におけるアンカーコート層6の厚さは1〜3μm程度とすることが好ましい。インキ粒子の大きさは、おおよそ0.1μm程度であるので、アンカーコート層6を形成することによって、インキ粒子によって生じる印刷層5の表面の凹凸を平滑化することができる。
【0026】
第1乾燥室81は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、印刷手段61において塗布された印刷層5及びアンカーコート層6をより早く乾燥させるためのものであり、印刷層5及びアンカーコート層6が十分に乾燥するだけの熱量をフィルム基材に供給する。印刷手段61において、アンカーコート剤が塗布されたフィルム基材1は、第1乾燥室81内を搬送される。第1乾燥室81は、高温の雰囲気や気流等によって溶剤分を蒸発させ、アンカーコート層6を乾燥させ、印刷フィルム8を製造する。なお、アンカーコート層6が乾燥するとは、例えば、紙片を当てた場合、その紙片が湿らない程度に乾いている状態である。
【0027】
このように、アンカーコート形成手段62によって、印刷層5の上にアンカーコート層6が形成されるので、印刷層5のインキ粒子によって生じる表面の凹凸が平滑化され、後段の蒸着工程において、蒸着層2を均一に蒸着させることができる。また、第1乾燥室によって、アンカーコート剤の溶剤を十分に揮発させることができるので、印刷フィルム8に残留する溶剤臭を少なくすることができる。
【0028】
なお、図1では、印刷装置60を単体の装置とし、第1巻取部51がフィルム基材1(印刷フィルム8)を回収すると説明したが、印刷装置60と蒸着装置10とを一つの装置として構成し、印刷工程と蒸着工程とを連続して行ってもよい。この場合、第1巻取部51及び第2巻出部12(図3参照)を設けなくてもよい。具体的には、図示しない搬送手段によって、第1巻出部11のロール及び/又は第2巻取部52(図3参照)のロール等を回転させて、第1巻出部11から各装置内にフィルム基材1を連続的に供給し、また第2巻取部52においてフィルム基材1を連続的に回収して、第1巻出部11から第2巻取部52までフィルム基材1を搬送するように構成してもよい。また、印刷手段61とアンカーコート形成手段62とを別体として、巻出部、印刷用ロール、乾燥室及び巻取部を有する印刷装置と、巻出部、アンカーコート形成手段(ロールコータ)、乾燥室及び巻取部を有するアンカーコート形成装置とを設けてもよい。さらに、アンカーコート形成手段62を印刷装置60ではなく、蒸着装置に設けてもよいが、この場合は真空蒸着装置21に導入される前にアンカーコート層を十分に乾燥させる乾燥室も設けることが好ましい。
【0029】
次に、上記印刷装置60によって製造される印刷フィルム8について説明する。まず、図2(A)に示すように、上記印刷装置60の第1巻出部11にはロール状に巻き取られたフィルム基材1が装填され、図示しない搬送手段によって、フィルム基材1が第1巻取部51まで搬送される。
【0030】
フィルム基材1は、図2(B)に示すように、その途中に配置された印刷手段61が印刷層5を形成した後、図2(C)に示すように、アンカーコート形成手段62がアンカーコート剤を塗布することでアンカーコート層6が形成され、第1乾燥室81において乾燥させられる。このように、印刷フィルム8は、図2(C)に示すとおり、少なくともフィルム状の基材1と、基材1の一表面上に形成された印刷層5と、印刷層5の上に形成されたアンカーコート層6とを有している。なお、図2においては、フィルムの下面に印刷層5及びアンカーコート層6を形成しているが、本明細書における層の上下関係は、基材側を下、外側を上とする。
【0031】
基材1は、印刷工程において、その一方の表面に印刷層5が形成され、さらに、蒸着工程において、その一方の表面に蒸着層2が形成されるフィルムであり、印刷層5及び蒸着層2を形成できる基材であれば使用することが可能である。例えば、基材1として、プラスチック、紙等の材質からなる単層フィルム、プラスチック、紙等の材質からなる層の1種または複数種類を積層した積層フィルムであってもよい。なお、フィルム基材1としては、少なくとも光を一部透過する材質のものを使用することが好ましい。フィルム基材1を通して印刷層5の文字、模様、色彩等を観察できるためである。
【0032】
また、基材1としての積層体フィルムの形成方法は、特に限定されず、押出ラミネーション法やドライラミネーション法によって複数の層を貼り合わせたり、押出コーティング法によって積層したりしてもよい。フィルム基材1の厚さについては特に制限はなく、蒸着装置10において、搬送できる程度の可撓性を有していればよい。一部の分野において「シート」と呼ばれる0.25mm以上の厚みのものも本発明のフィルム基材1に含まれる。
【0033】
基材1は、蒸着フィルムが接着される他の部材の材料と同じ材料のフィルムを基材の最下層(接着層が形成される面とは反対側の表面)となるようにすれば、蒸着フィルムを接着後の他の部材において、蒸着フィルムを接着した部分とそれ以外の部分とで同じ材質となるため、全体として統一した質感の部材(容器、皿等)を製造できる。また、金型で他の部材を成形する際に表面にラベルを張り合わせるインモールドラベル成形において、蒸着フィルムを使用する場合には、蒸着フィルムの基材が他の部材と同じ材料であれば、成形加工において、ラベルの接着性が高まり好ましい。
【0034】
基材1の一部として、プラスチックを利用する場合は、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロンなどを使用することができる。特に、延伸ポリスチレン(OPS)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、二軸延伸ナイロン(ONY)、無延伸ナイロン(CNY)等を使用することができる。
【0035】
基材1の一部として紙を利用する場合には、薄葉紙、上質紙、中質紙、書籍用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、純白ロール紙、模造紙などがあげられ、場合によってはボール紙、段ボールなども用いることができる。また、基材1の一部として紙を利用する場合、紙の上にプラスチック層を積層することが好ましい。
【0036】
プラスチック層としては、上述した材質のものが挙げられ、特にポリエチレン層として、密度0.910〜0.925の低密度ポリエチレンと密度0.941〜0.980の高密度ポリエチレンとの重量比で2:8〜8:2(好ましくは3:7〜7:3)の組成物からなる密度0.930〜0.965のポリエチレン組成物の押出コート層を用いることが好ましい。この場合、ポリエチレン組成物の密度が0.936〜0.960であることが特に好ましい。なおポリエチレン層の厚みは、たとえば10〜30μm程度とすることが多い。
【0037】
低密度ポリエチレン単独の場合あるいは低密度ポリエチレンの割合が上記の範囲よりも多いときは、耐熱性が不足するため、高温工程や高温での取り扱いを行うような場合には使用制限を受ける。高密度ポリエチレン単独の場合あるいは高密度ポリエチレンの割合が上記の範囲よりも多いときは、押出コートに際し平滑性が損なわれる上、押出コートにより形成された層が不透明になって商品価値が減ずるようになる。また、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの重量比が上記範囲にあっても、組成物の密度が上記規定の範囲から外れるときは、やはり耐熱性の点で不満が残る。
【0038】
アンカーコート層6は、アンカーコート形成手段62によって印刷層5の上に塗布されて形成されるものであり、グラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、有機溶剤や水に溶解させたアンカーコート剤又は溶解したアンカーコート剤を印刷層5の上に均一に塗布して形成する。アンカーコート層6は、その後、溶剤分を蒸発させて第1巻取部51において巻き取られる。
【0039】
アンカーコート剤としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリエステル−ポリウレタン系又はポリエーテル−ポリウレタン系、アクリル系、ビニル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系等を使用することができる。特に、蒸着工程の高温に耐えられるように硝化綿を添加したポリウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0040】
以上、説明したとおり、本発明の印刷装置によれば、印刷手段61によって、フィルム基材1の上に印刷層5を形成した後、アンカーコート層6を形成し、蒸着面を平滑化するので、後段の蒸着工程において、均一な蒸着層2を形成し、ガスバリア性の高い蒸着フィルムを製造することができる。また、印刷工程において、第1乾燥室81によって、アンカーコート層6を乾燥させるので、有機溶剤臭を少なくすることができる。
【0041】
図3には、本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される蒸着装置の概略構成図を示し、図4(A)〜(C)には、本発明の蒸着フィルムの蒸着工程における概略断面図を示す。図3に示した蒸着装置10は、前述した印刷装置60の後段に設けられ、蒸着工程を行うものであり、前段の印刷装置60において製造された印刷フィルム8に各層を形成し、蒸着フィルム4を製造する。蒸着装置10は、第2巻出部12、真空蒸着装置21、接着層形成手段31、第2乾燥室41、第2巻取部52を有している。さらに、蒸着装置10は、蒸着フィルムのバリア特性を高めるために、蒸着層とは別にバリア層7を形成するためのバリア層形成手段32を設けてもよい。
【0042】
第2巻出部12は、フィルム基材1に少なくとも印刷層5及びアンカーコート層6が形成された印刷フィルム8がロール状に巻き取られたロールが装填される部分であり、第2巻取部52は、装置内で処理されたフィルム基材1(蒸着フィルム4)をロール状に巻き取って回収する部分である。図示しない搬送手段によって、第2巻出部12のロール及び/又は第2巻取部52のロール、さらに必要に応じて蒸着装置10内の適宜のロールを回転させて、第2巻出部12から装置内にフィルム基材1を連続的に供給し、また第2巻取部52においてフィルム基材1を連続的に回収して、第2巻出部12から第2巻取部52までフィルム基材1を搬送する。なお、蒸着フィルム4は、図4(C)に示すように、印刷層5及びアンカーコート層6が形成された基材1に少なくとも蒸着層2、バリア層7及び接着層3が積層されたものであり、第2巻取部52において蒸着フィルム4を巻き取ることによって、それに含まれるフィルム基材1も同時に巻き取られる。
【0043】
真空蒸着装置21は、第2巻出部12から第2巻取部52までの間に設けられ、フィルム基材1の一方の面に蒸着層2を形成するものであり、大気圧下の基材1を真空蒸着装置21に連続的に導入し、真空蒸着装置21内で蒸着層2を蒸着し、蒸着層2が蒸着された基材1を真空蒸着装置21から大気圧下に取り出すことができる連続式である。図3の真空蒸着装置21は、フィルム基材1が導入及び取り出される導入出部22と、複数の減圧部23と、蒸着層2が蒸着される蒸着部24と、減圧部23及び蒸着部24を減圧する排気手段25とを有し、大気圧下の導入出部22から真空状態の蒸着部24までの間に設けられた複数の減圧部23によって段階的に真空度を向上し、また真空度を安定に維持するように構成されている。
【0044】
導入出部22は、フィルム基材1が真空蒸着装置21内に導入され、フィルム基材1が真空蒸着装置21から取り出される部分であり、通常は、大気圧下に設けられている。フィルム基材1の導入と取り出しを一か所にまとめることによって、省スペース化及び減圧の容易化を図っている。なお、フィルム基材1を真空蒸着装置21に導入する部分とフィルム基材1を真空蒸着装置21から取り出す部分とを別々に設けてもよい。
【0045】
減圧部23は、段階的に真空度を高めるために設けられた小部屋であり、導入出部22から蒸着部24までの間に少なくとも1つ、好ましくは複数段の部屋が設けられる。他の減圧部23や導入出部22又は蒸着部24との間は、多段に配設したシールロール群26によって仕切られており、排気手段25によって小部屋内の雰囲気を排気することによって減圧部23内の圧力を減圧状態にすることができ、さらにシールロール群26を介して真空度を維持したままフィルム基材1を搬送できるように構成されている。
【0046】
各シールロール群26は、図1においては、横方向に互いに接触するように並んだ3個のロールからなり、たとえば左のロールと中央のロールとで導入側のフィルム基材1を挟持し、右のロールと中央のロールとで導出側のフィルム基材1を挟持している。このように3個のロールが横方向に互いに接触するように配置されているため、各減圧部23や蒸着部24の真空度を維持しつつ、各減圧部23や蒸着部24にフィルム基材1を導入出することができる。さらに、各減圧部23内には、上下各段のシールロール群26の中間にデフレクタロール30が配置され、導入側および導出側のフィルム基材1を片寄らせるよう張力をかけて、フィルム基材1の円滑な走行を確保している。
【0047】
なお、図3においては、減圧部23は3部屋としているが、その数を増やすことによって、蒸着部24の真空度をより高くしたり、より安定に維持したりすることができる。また、図3のシールロール群26の構成は、中央のロールが導入側のロール対と導出側のロール対とで共通して使用され、3個のロールによって導入側も導出側も搬送できるようになっているが、4個のロールによって導入側のロール対と導出側のロール対を別個に設けてもよい。また、導入出部22として、フィルム基材1を真空蒸着装置21に導入する部分とフィルム基材1を真空蒸着装置21から取り出す部分とを別々に設けた場合には、フィルム基材1を導入する部分と蒸着部24との間及び蒸着部24とフィルム基材1を取り出す部分との間のそれぞれに減圧部23を配置する。
【0048】
蒸着部24は、真空チャンバー内に蒸着層2を蒸着するための設備が備えられており、排気手段25によって高真空状態に維持される。図3の蒸着部24内には、フィルム基材1を支持すると共にその背面から冷却する冷却ロール27、冷却ロール27の下方に配置されたるつぼ28及びるつぼ28の周囲に配置された加熱手段29が設けられている。減圧部23からシールロール群26を介して蒸着部24に搬入されたフィルム基材1は、冷却ロール27に巻きつけられ、冷却ロール27に沿って搬送される。
【0049】
冷却ロール27の下方において、るつぼ28内に収容された蒸着材料が加熱手段29によって加熱されることにより蒸発しており、冷却ロール27に巻きつけられたフィルム基材1に蒸着し、フィルム基材1に形成されたアンカーコート層6の上に蒸着層2が形成される。図示していないが、るつぼ28と冷却ロール間の空間を仕切るチャンネル、蒸発した蒸着材料がフィルム基材1以外の冷却ロール27に蒸着するのを防ぐためのエッジマスク、フィルム停止時にるつぼからの熱や蒸着を遮断するコールドシャッタ等を設けていてもよい。なお、図3及び図4においては、フィルム基材1の下面に蒸着層2及び接着層3を形成しているが、本明細書における層の上下関係は、基材側を下、外側を上とする。
【0050】
排気手段25は、減圧部23及び蒸着部24内を排気するポンプであり、各部屋を真空引きしている。排気手段25は、各減圧部23及び蒸着部24の全てに対して連結されており、各減圧部23及び蒸着部24を減圧状態とする。ただし、同じポンプによって排気していても、最上段の減圧部23は、大気圧下の導入出部22が隣接しているため、真空度が低くなり、その下の段の減圧部23は最上段の減圧部23よりも真空度が高くなり、蒸着部24では最も真空度が高くなる。
【0051】
バリア層形成手段32は、移動する蒸着層2が形成されたフィルム基材1に対し、連続的にバリア剤を塗布して蒸着層2の上にバリア層7を形成する。また、接着層形成手段31は、バリア層7の上に接着層3を形成する。
【0052】
接着層形成手段31及びバリア層形成手段32としては、例えば、グラビアロールコータやリバースロールコータを使用することができる。グラビアロールコータはグラビアロールの線密度とセルの深さを決めることで精度よくバリア剤及び接着剤のコート量を管理することができる。反面、グラビアロールコータでは、バリア剤及び接着剤のコート量を変更する場合にはグラビアロール自体を変更しなければならなかった。この点、リバースロールコータはメタリングロールとアプリケータロールの間隔及び各ロールの回転速度を変更することによって、バリア剤及び接着剤のコート量を容易に変更することができる。
【0053】
第2乾燥室41は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、バリア層形成手段32により形成されたバリア層7及び接着層形成手段31により形成された接着層3をより早く乾燥させるためのものであり、より短期間で蒸着フィルムを製造するために設けることが好ましい。すなわち、バリア剤及び接着剤が塗布された蒸着フィルム4は、第2乾燥室41内を搬送され、高温の雰囲気や気流等によって溶剤分を蒸発させ、バリア層7及び接着層3を乾燥させる。ただし、接着層形成手段31から第2巻取部52までの間を搬送させるだけで乾燥するような乾燥しやすいバリア剤及び接着剤を使用すれば、第2乾燥室41を設けなくてもよい。
【0054】
なお、図3では、蒸着装置10を単体の装置とし、印刷フィルム8がロール状に巻き取られたロールが第2巻出部12に装填され、第2巻出部12が装置内に印刷フィルム8を連続的に供給する態様を説明したが、印刷装置60と蒸着装置10とを一つの装置として構成し、印刷工程と蒸着工程とを連続して行ってもよい。具体的には、第1巻取部51(図1参照)及び第2巻出部12を設けず、図示しない搬送手段によって、第1巻出部11のロール及び/又は第2巻取部52(図3参照)のロール等を回転させて、第1巻出部11から各装置内にフィルム基材1を連続的に供給し、また第2巻取部52においてフィルム基材1を連続的に回収して、第1巻出部11から第2巻取部52までフィルム基材1を搬送するように構成してもよい。また、前述したとおり、蒸着装置10にアンカーコート形成手段62を設けてもよい。具体的には、第2巻出部12と真空蒸着装置21との間にアンカーコート形成手段62を設け、アンカーコート形成手段62と真空蒸着装置21との間において、アンカーコート剤の溶剤が十分揮発するように乾燥室を設ければよい。
【0055】
次に、上記蒸着装置10によって製造される蒸着フィルム4について説明する。まず、上記蒸着装置10の第2巻出部12にはロール状に巻き取られた印刷フィルム8(印刷層5及びアンカーコート層6を含むフィルム基材1(図2(C)参照))が装填され、図示しない搬送手段によって、印刷フィルム8が第2巻取部52まで搬送される。その途中に配置された真空蒸着装置21において、印刷フィルム8は大気圧下の導入出部22から、連続的に導入され、複数の減圧部23によって段階的に真空度を向上し、真空状態の蒸着部24で、図4(A)に示すように、アンカーコート層6の上に蒸着層2が形成される。その後、真空蒸着装置21の導入出部22から搬出された蒸着層2が形成された印刷フィルム8は、図4(B)に示すように、バリア層形成手段32によってバリア剤を塗布することで蒸着層2の上にバリア層7が形成される。
【0056】
さらに、バリア層7が形成された印刷フィルム8は、接着層形成手段31によって接着剤を塗布することでバリア層7の上に接着層3が形成され、蒸着フィルム4が形成される。このように、蒸着フィルム4は、図4(C)に示すとおり、少なくともフィルム状の基材1(印刷層5及びアンカーコート層6を含む)と、基材1の一表面上に積層された蒸着層2と、蒸着層の上に形成されたバリア層7及び接着層3を有している。
【0057】
蒸着層2は、基材に金属やセラミックを蒸着することにより得られる。蒸着層2としては、金属を蒸着してなる金属蒸着層やセラミックを蒸着したセラミック蒸着層を利用することができる。より具体的には、蒸着層としては、Al、Sn、In、ITO、Zn、Ag、Al2O3、SiOx等の単独蒸着層、又は、SiOx/Al2O3、SiOx/ZnO、SiOx/CaO、SiOx/B2O3、CaO/Ca(OH)2からなる2元蒸着層が用いられる。なお、SiOxとしては、例えば、SiO2、SiO1.8、SiO1.6等が挙げられる。また、アルミニウム(Al)には、成形時の延展性を付与させる目的で鉄を0.1〜9.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%含有させてもよい。なかでも、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化珪素(SiOx)から形成されることが好ましい。蒸着層の厚みは、30〜100nm、好ましくは40nmの範囲とすることが好ましい。
【0058】
酸化アルミニウム(Al2O3)や酸化珪素(SiOx)等を蒸着したセラミック蒸着層は、金属検出器等による異物等の混入検査を行うことができる点で好ましい。また、セラミック蒸着層は、透明である点、電子レンジでも使用できる点、耐熱性が高い点、酸やアルカリに対して強い点において、金属蒸着層に比べて優れた特性を有するものであるが、他方で、伸びに対しては弱く、その基材1は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ナイロン等の伸びにくい材質を含んでいることが好ましい。
【0059】
バリア層7は、酸素及び水分の透過を防止する層であり、蒸着層2を有する蒸着フィルム4において必須のものではないが、バリア性を向上させるために形成することが好ましい。バリア層7は、バリア層形成手段32によって塗布されて形成されるものであり、有機溶剤や水に溶解させたバリア剤または溶解したバリア剤をグラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、蒸着層2の上に均一に塗布して形成する。バリア剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系を使用することができる。バリア層7としては、3〜5g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量におけるバリア層7の厚さは1〜2μm程度とすることが好ましい。図3及び4においては、蒸着層2の上にバリア層7を形成したが、バリア層7の配置はこの位置に限定されるものではなく、フィルム基材上に形成されていればよい。例えば、印刷層5の下に形成されてもよいし、アンカーコート層6や接着層3と兼用させてもよい。
【0060】
接着層3は、接着層形成手段31によって蒸着層2の上に塗布されて形成されるものであり、有機溶剤や水に溶解させた接着剤または溶解した接着剤をグラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、蒸着層2の上に均一に塗布して形成する。接着層3は、その後、溶剤分を蒸発させて乾燥させて接着性を喪失させた状態で第2巻取部52において巻き取られる。また、安定した接着力を付与するため、接着層3を形成する表面にコロナ処理を行ってもよい。
【0061】
接着剤としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリエステル−ポリウレタン系あるいはポリエーテル−ポリウレタン系、アクリル系、ビニル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系等の接着剤を使用することができ、特に2液反応型のポリウレタン系接着剤を使用することが好ましい。
【0062】
例えば、2液反応型ポリウレタン系接着剤の場合、主剤として、各種のポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられ、硬化剤として、アダクト(トリメチロールプロパンと有機ジイソシアネートの付加物)、ビューレット(3モルの有機ジイソシアネートと1モルの水の反応物)、イソシアヌレート(3モルの有機ジイソシアネートの重合物)等の多官能の有機ポリイソシアネートが使用され、又、ポリイソシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたは必要によりこれらと低分子ポリオールを反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0063】
また、ウレタン系接着剤の溶剤としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘキサン等を使用することができる。接着層3としては、1.5〜5.0g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量における接着層3の厚さは2〜3μm程度とすることが好ましい。
【0064】
なお、図4では、バリア層7と接着層3とが別々に形成されると説明したが、バリア層と接着層とが一体となった層を形成してもよい。この場合、接着層形成手段31によって、バリア剤を含む接着剤を蒸着層2の上に塗布し、バリア性を備えた接着層3を形成してもよい。
【0065】
図4に示したように、この蒸着フィルム4は、フィルム基材1の上に印刷層5、アンカーコート層6、蒸着層2、バリア層7及び接着層3が順番に形成された構造である。そして、蒸着フィルム4の接着層3を他の部材に接着させると、フィルム基材1を通して印刷層5の文字、模様、色彩等を観察できるので、他の部材の表面に装飾を施すことができる。この場合、フィルム基材1としては、少なくとも光を一部透過する材質のものを使用する。また、蒸着層2として、金属(特にAl)を使用すれば、印刷層5の文字、模様、色彩等が背景の金属光沢によって、より華やかとなり、人目を引く装飾を提供できる。
【0066】
以上、説明したとおり、本発明の蒸着フィルム製造方法によれば、フィルム基材の上に印刷層を形成した後、アンカーコート層を形成し、蒸着層が形成される表面を平滑化するので、蒸着工程において、均一な蒸着層を形成することができ、ガスバリア性の高い蒸着フィルムを製造することができる。また、乾燥室において、アンカーコート層を十分に乾燥させるので、有機溶剤臭を少なくすることができる。加えて、蒸着層と接着層との間にバリア層を形成すれば、より酸素及び水分の透過を防ぐことができる高いバリア性を有する蒸着フィルムを製造することができる。
【0067】
さらに、本発明の蒸着装置によれば、接着層形成手段(ロールコータ)によって、蒸着層の上に接着剤を塗布するだけで接着層が形成できるため、フィルム基材1に対して、蒸着層を形成した後、連続して接着層を形成することができる。このように、蒸着装置によって、フィルム基材上に、蒸着層及び接着層を一連の連続的な処理で形成することができるので、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまでに必要な時間を短縮することができ、生産性を高めることができる。
【0068】
従来の蒸着装置で蒸着層を形成し、その後、押出ラミネーション装置等の別の装置によって接着層を積層させた場合は、一つの基材に対する蒸着層の形成工程と、その上への接着層の積層工程とは別の日程で行うのが通常であり、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまで、少なくとも2日、積層装置の待ち時間によってはより多くの日数が必要であった。これに対し、本発明によれば、基材を装置に装填できれば、その日のうちに接着層を有する蒸着フィルムを製造することができるので、生産性の向上の効果は計り知れないものである。
【0069】
さらに、接着層として、押出ラミネーション装置等によってフィルムを積層するのではなく、接着剤を塗布して接着層を形成するので、本発明では、接着層を有する蒸着フィルム全体の膜厚を薄くすることができた。つまり、従来よりも、およそ接着層のフィルム分、膜厚を薄くすることができるのである。
【0070】
図5は、図4に示した蒸着フィルム4が接着された装飾容器70の概略断面図である。図5においては、容器71の内側表面に蒸着フィルム4が接着されている。蒸着フィルム4は、接着層3によって、容器71の内側表面に接着されるため、装飾容器70において、内側表面の最表面は、フィルム基材1が配置され、その次に、印刷層5、アンカーコート層6、蒸着層2及びバリア層7が順番に配置される。そして、蒸着フィルム4のフィルム基材1を通して印刷層5の文字、模様、色彩等が観察されるため、装飾容器70は、蒸着フィルム4によって内側表面に装飾が施されたのである。
【0071】
容器71は、他の部材の一実施形態であり、材質としては、プラスチック、紙等の材質、またはプラスチック、紙等の材質からなる層の1種または複数種類を積層した積層体を使用できる。特に、容器71としては、インモールド成形するために、射出成形可能な熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を使用することが好ましい。なお、図5においては、容器71の内側表面に蒸着フィルム4が接着されているが、容器71の外側表面、内側及び外側表面の両方または内側若しくは外側表面の一部に蒸着フィルム4を接着してもよい。
【0072】
[実施例] 本実施例では、図1に示した印刷装置を使用して、フィルム基材1として、15μmの膜厚の二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)からなるフィルムを使用し、フィルム基材1の上に印刷層を形成した。そして、アンカーコート形成手段62を使用し、印刷層が形成されたフィルム基材1の印刷面側に、硝化綿を添加したポリウレタン系のアンカーコート層を1μm程度の厚さに形成し、第1乾燥室81において乾燥させた。続いて、蒸着装置10の真空蒸着装置21において、アンカーコート層の上に40nmのアルミニウム層を蒸着した。そして、バリア層形成手段32を使用し、アルミニウム層の上に、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系のバリア層7を2μm程度の厚さに形成した。最後に、シクロヘキサンとメチルエチルケトンの混合溶剤で希釈したポリスチレン系の接着剤を接着層形成手段31によってバリア層の上に塗布し、第2乾燥室41において溶剤分を蒸発させて2μm程度の膜厚のポリスチレン系の接着層を形成した。こうして、印刷層が形成された二軸延伸ナイロンフィルム上に、アンカーコート層、蒸着アルミニウム層、バリア層及び接着層を有する蒸着フィルムを製造することができた。
【0073】
かかる蒸着フィルムを別の部材に接着させた。別の部材としては、60μmの厚さの直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)のシートを使用し、蒸着フィルムの接着層をポリスチレンシートに対向させて160〜180℃の温度で熱圧着して蒸着フィルムをポリスチレンシートに貼り合わせた。蒸着フィルムが接着されたポリスチレンシートは、表面の二軸延伸ナイロンフィルムを通して観察される印刷層によって、美しい金属光沢のある装飾を簡単に施すことができた。また、別の部材であるポリスチレンシートと、接着層の材質であるポリスチレン系の接着剤及びフィルム基材1の二軸延伸ナイロンフィルムが同質であるため、強固な接着を実現でき、全体として一体感のあるポリスチレンシートを得ることができた。
【符号の説明】
【0074】
1 フィルム基材
2 蒸着層
3 接着層
4 蒸着フィルム
5 印刷層
6 アンカーコート層
7 バリア層
8 印刷フィルム
10 蒸着装置
11 第1巻出部
12 第2巻出部
21 真空蒸着装置
31 接着層形成手段
32 バリア層形成手段
41 第2乾燥室
51 第1巻取部
52 第2巻取部
60 印刷装置
61 印刷手段
62 アンカーコート形成手段
81 第1乾燥室
91 予備乾燥室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材の上に、少なくとも、印刷層、蒸着層、接着層が、この順で形成され、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムの製造方法であって、
フィルム状の基材を巻出部から巻取部まで搬送する基材搬送手段と、前記巻出部から前記巻取部の間に設けられた真空蒸着装置と、前記真空蒸着装置から前記巻取部の間に設けられた接着層形成手段と、を少なくとも有する装置を使用し、
前記基材搬送手段によって、あらかじめ、印刷層が形成されたフィルム状の基材を前記真空蒸着装置に導入しつつ、前記真空蒸着装置において、前記導入されたフィルム状の基材に対し蒸着層を蒸着し、さらに前記基材搬送手段によって前記真空蒸着装置から搬出された蒸着層が蒸着されたフィルム状の基材の当該蒸着層の上に前記接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層を形成し、
前記真空蒸着装置に導入されるフィルム状の基材には、前記印刷層と前記蒸着層との間にアンカーコート層が形成され、
前記アンカーコート層は、前記印刷層におけるインキ粒子の凹凸を平滑化する厚さを有することを特徴とする蒸着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記アンカーコート層は、前記印刷層の上に有機溶剤に溶解されたアンカーコート剤を塗布し、乾燥室において、残留する有機溶剤を揮発させることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の蒸着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記接着層は、前記接着層形成手段によって、前記蒸着層の上に有機溶剤に溶解された接着剤を塗布して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム状の基材の上に、酸素又は水分の透過を防ぐバリア層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の蒸着フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤は、バリア剤を含み、
前記接着層は、酸素又は水分の透過を防ぐバリア層としても機能することを特徴とする請求項4に記載の蒸着フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45843(P2012−45843A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191112(P2010−191112)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390033868)株式会社メイワパックス (27)
【Fターム(参考)】