説明

蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置

本発明は蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置に係り、さらに詳しくは、有機物質が大容量で充填されて変質なしに保管されると共に、所望の量だけ有機物質を気化させて基板に供給することのできる蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置に関する。
本発明に係る蒸着物質供給装置は、内部に原料物質が充填される貯留空間および原料物質が気化される気化空間が連通状に形成される坩堝と、前記坩堝に充填された原料物質を貯留空間から気化空間に連続的に又は周期的に搬送する搬送ユニットと、前記坩堝に形成される気化空間の外側に配設されて原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニットと、を備える。また、本発明に係る蒸着物質供給装置は、前記坩堝に形成される貯留空間の外側に配設されて前記貯留空間に貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニットをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置に係り、さらに詳しくは、有機物質が大容量で充填されて変質なしに保管されると共に、所望の量だけ有機物質を気化させて基板に供給することのできる蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(Organic Light Emitting Device:OLED)は、発光を利用する液晶表示装置とは異なり、有機体自体が発光するため、バックライトが不要となることから、消費電力が少ない。また、視野角が広く、応答速度が早いことから、これを用いた表示装置は、視野角および残像の問題がない優れた画像を実現することができる。
【0003】
有機発光素子を製造するための有機薄膜蒸着工程に用いられる有機材料は、無機材料とは異なり、高い蒸気圧を必要とせず、高温下で分解および変性が起こり易い。このような有機材料の特性から、従来の有機薄膜は、タングステン製の坩堝に有機材料を装入し、坩堝を過熱して有機材料を気化させて基板の上に蒸着していた。しかしながら、坩堝内に貯留可能な蒸着原料の量には限界があるため、蒸着原料を頻繁に再充填することを余儀なくされ、その都度有機薄膜蒸着装置の稼動を停止しなければならないという問題点があった。この理由から、有機薄膜蒸着装置の稼動停止周期を延ばすために蒸着原料の充填量を増やす方法が提案されているが、同方法は、増大された坩堝を加熱して蒸着原料を昇華させるために必要とされるより一層多量の熱量の発熱手段によって蒸着原料が変質してしまうという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、有機物質を大容量で充填して蒸着装置の稼動停止周期を延ばすと共に、充填された有機物質が変質されることを防止することのできる蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置を提供することである。
【0005】
また、本発明の他の目的は、充填された有機物質を所望の量だけ適正速度にて気化させて有機物質ガスの不均一な拡散を防止することのできる蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る蒸着物質供給装置は、内部に原料物質が充填される貯留空間および原料物質が気化される気化空間が連通状に形成される坩堝と、前記坩堝に充填された原料物質を貯留空間から気化空間に連続的に又は周期的に搬送する搬送ユニットと、前記坩堝に形成される気化空間の外側に配設されて原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニットと、を備える。
【0007】
また、前記蒸着物質供給装置は、前記坩堝に形成される貯留空間の外側に配設されて前記貯留空間に貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニットをさらに備える。
【0008】
さらに、前記蒸着物質供給装置において、前記冷却ユニットは、前記坩堝の外周面を取り囲んで冷却水の流動する冷却流路が形成された冷却ジャケットである。
【0009】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置は、一方の側が前記坩堝の気化空間側に連絡されて気化済みの原料物質が流動する流路を形成する連絡管と、前記連絡管の他方の側に連絡されて気化済みの原料物質が噴射されるインジェクターと、をさらに備える。
【0010】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置は、前記坩堝、搬送ユニットおよびインジェクターを一体に支持する支持部をさらに備え、前記支持部は、前記インジェクターが向く方向に延びるレールの上に配設されてレールに沿って移動される。
【0011】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記連絡管の一方の側には係合部材が連結され、前記係合部材は前記坩堝と螺合される。
【0012】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記連絡管の直径は20〜200mmである。
【0013】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置は、前記インジェクターからの原料物質の噴射量を測定する噴射量測定センサーをさらに備え、前記噴射量測定センサーにおいて測定される原料物質の噴射量に応じて前記搬送ユニットの作動を制御して原料物質の噴射量を調節する。
【0014】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記坩堝に形成される気化空間の内壁には金属シートが設けられる。
【0015】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記搬送ユニットは、前記坩堝の内部に配設されて原料物質を圧送するヘッドと、一方の側が前記ヘッドに連結され、他方の側が前記坩堝の外側に配設されて前記ヘッドと一体に移動されるロッドと、前記ロッドの他方の側に連結されて前記ロッドを移動させる駆動部と、を備える。
【0016】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記駆動部はモーターまたは油圧式シリンダーである。
【0017】
さらにまた、前記蒸着物質供給装置において、前記発熱ユニットはコアヒーターまたはランプヒーターである。
【0018】
上述した目的を達成するために、本発明に係る基板処理装置は、反応空間が形成されるチャンバーと、前記反応空間に設けられて気化される原料物質を供給する有機原料供給部と、基板を支持する基板ホルダーと、を備え、前記有機原料供給部は、内部に原料物質が貯留される貯留空間および原料物質が気化される気化空間が連通状に形成される坩堝と、前記坩堝に充填された原料物質を貯留空間から気化空間に連続的に又は周期的に搬送させる搬送ユニットと、前記坩堝に形成される気化空間の外側に配設されて前記気化空間に原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニットと、一方の側が前記坩堝の気化空間側に連絡されて気化済みの原料物質が流動する流路を形成する連絡管と、前記連絡管の他方の側に連絡され、前記基板ホルダーと対向して配置されて気化済みの原料物質を基板に向けて噴射するインジェクターと、を備える。
【0019】
また、前記基板処理装置は、前記坩堝に形成される貯留空間の外側に配設されて前記貯留空間に貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニットをさらに備える。
【0020】
さらに、前記基板処理装置において、前記チャンバーには多数の反応空間が画設され、前記有機原料供給部は多数配設されて前記多数の反応空間にそれぞれ配置されるようにチャンバーの内部に設けられ、前記基板ホルダーは前記それぞれの有機原料供給部と対向して配置されるように搬送される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、有機物質が充填されて保管される貯留空間に熱によって有機物質が変質されることを防止する冷却ユニットを設けることにより、大容量の有機物質を蒸着物質供給装置に充填して使用することができ、その結果、蒸着装置の稼動停止周期を延ばすことができるという効果がある。これにより、有機薄膜蒸着の工程効率性を高めることができる。
【0022】
また、本発明によれば、充填された有機物質を所望の搬送速度にて気化空間に搬送させ、気化空間を加熱する発熱ユニットを制御することにより、有機物質が気化される量を調節することができ、その結果、有機物質がガスの不均一な拡散を防止して蒸着される有機薄膜の品質を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る基板処理装置が用いられるシステムを示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明に係る基板処理装置を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る蒸着物質供給装置を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る蒸着物質供給装置の使用状態を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る蒸着物質供給装置の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態による蒸着物質供給装置およびこれを備えた基板処理装置を詳述する。
【0025】
しかしながら、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、異なる様々な形態にて実現可能であり、これらの実施形態は単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を持った者に本発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0026】
図1は、本発明に係る基板処理装置が用いられる基板処理システムを示す概略構成図であり、図2は、本発明に係る基板処理装置を示す概略断面図である。
【0027】
同図に示すように、前記基板処理システムは、多数枚の基板10を速やかに処理可能なインライン方式であることを想定して説明する。この基板処理システムは、処理の対象となる基板10が搬入される搬入部1000と、搬入部1000から離れて位置し、処理済みの基板10が搬出される搬出部5000と、搬入部1000と搬出部5000との間にインライン配置されて基板10を処理する複数の基板処理部3000a〜3000cと、を備える。また、前記基板処理システムは、複数の基板処理部3000a〜3000cの先端に配置されて基板処理部3000a〜3000cに搬入された基板10を基板ホルダー200に載置して整列させる処理準備部2000と、基板処理部3000a〜3000cの末端に配置されて処理済みの基板10を搬出部5000に搬出するために基板10を基板ホルダー200から取り外す搬出準備部4000と、をさらに備える。
【0028】
搬入部1000は、基板処理システムの一方の側の端部に配置されて有機薄膜が蒸着される多数枚の基板10が待機する空間であり、前記搬入部1000には、多数枚の基板10が搭載された基板カセットが配置され、カセットから取り出された基板10が蒸着工程のために待機するバッファステージが配設される。
【0029】
基板処理部3000a〜3000cは、前記搬入部1000と搬出部5000との間に介装されて有機薄膜の蒸着が行われる空間であり、少なくとも1以上の反応空間が画設されるチャンバー400と、前記チャンバー400内の反応空間に対応して設けられる少なくとも1以上の有機原料供給部100と、前記有機原料供給部100に対向して搬送されるように設けられて基板10を支持・搬送させる基板ホルダー200と、を備える。また、単一の基板処理部3000a〜3000cが配設されて単一の有機原料供給部100が配設される場合には、前記基板ホルダー200を搬送させるための別途の搬送レールが不要であるが、基板処理部3000a〜3000cが多数配設されて有機原料供給部100が多数配設される場合には、基板10をそれぞれの有機原料供給部100に対向させるために、搬送レール300に沿って搬送されることが好ましい。もちろん、基板ホルダー200の搬送方法は搬送レールによる方法に限定されず、当業者にとって使用である限り、様々な搬送方法が採用可能である。
【0030】
前記チャンバー400は、一または複数の反応空間を有するように画設される。また、図示はしないが、前記チャンバー400には基板10および基板ホルダー200が出入りするゲートが設けられ、チャンバー400の内部を真空引きするか、あるいは、チャンバー400内部の未反応ガスなどを排気する排気ラインが形成される。
【0031】
前記基板ホルダー200は基板10を水平または垂直に支持しつつ搬送させるものであれば、いかなる方式のホルダーも使用可能である。本発明は、基板10の周縁を把持して垂直に支持する方式のホルダーを提案している。このとき、基板ホルダー200は、チャンバー400内に設けられる搬送レール300によって支持されてガイドされつつ搬送される。
【0032】
また、前記基板ホルダー200との対向個所には、基板10に蒸着される有機原料を供給する有機原料供給部100が配置される。
【0033】
図3は、本発明に係る蒸着物質供給装置を示す概略断面図である。同図に示すように、有機原料供給部100は、内部に原料物質が充填される貯留空間110aおよび原料物質が気化される気化空間110bが直線状に連通状に形成される坩堝110と、前記坩堝110に充填された原料物質を貯留空間110aから気化空間110bに連続的に又は周期的に搬送させる搬送ユニット120と、前記坩堝110に形成される気化空間110bの外側に配設されて前記気化空間110bに原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニット130と、前記坩堝110に形成される貯留空間110aの外側に配設されて前記貯留空間110aに貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニット140と、一方の側が前記坩堝110の気化空間110b側に連結されて気化済みの原料物質が流動する流路を形成する連絡管150と、前記連絡管150の他方の側に連絡されて気化済みの原料物質が噴射されるインジェクター160と、を備える。
【0034】
本発明は、有機発光素子(Organic Light Emitting Device:OLED)を製造する装置を提示するものであり、本発明における原料物質としては、例えば、有機材料が用いられることが好ましい。
【0035】
坩堝110は、一方の側が開口された円筒の管状に形成される。このとき、前記坩堝110の内部は、下側に原料物質が充填される貯留空間110aが形成され、上側に原料物質が気化される気化空間110bが形成される。前記貯留空間110aおよび気化空間110bは、所定の画設手段によって画設される空間ではなく、原料物質の状態に応じて仕切られる空間である。このため、原料物質が固相または液相で存在する空間を貯留空間110aと定義し、固相または液相の原料物質が熱によって気化される空間を気化空間110bと定義する。このとき、前記坩堝110には、図示はしないが、蒸着工程が行われる間に坩堝110の内部を超真空圧力の環境に維持するための真空ラインが連結されていてもよい。
【0036】
搬送ユニット120は、前記坩堝110の貯留空間110aに充填された原料物質を気化空間110bに次第に搬送させる手段であり、前記坩堝110の内部に配設されて原料物質を圧送するヘッド121と、一方の側が前記ヘッド121に連結され、他方の側が前記坩堝110の外側に配設されて前記ヘッド121と一体に移動されるロッド122と、前記ロッド122の他方の側に連結されて前記ロッド122を移動させる駆動部と、を備える。
【0037】
前記駆動部は、モーター123または油圧式シリンダーなど、前記ロッド122を上下動させるものであれば、いかなるものも採用可能である。本発明は、好適な実施形態に係る駆動部として、モーター123を採用している。より具体的に、前記搬送ユニット120は、電源によって駆動されるモーター123と、前記モーター123につれ回転されるボールスクリュー124と、前記ボールスクリュー124の上においてボールスクリュー124の回転によって上下動する昇降体125と、前記昇降体125と一体に移動されるように一方の側が前記昇降体125に固定され、他方の側が前記ロッド122を支持する支持体126と、をさらに備える。このため、前記モーター123の回転によってボールスクリュー124が回転されて昇降体125が上下動すると、昇降体125と一体に支持体126が移動されつつロッド122を上下動させる。これにより、ロッド122の上端に配設されたヘッド121が原料物質を坩堝110の貯留空間110aから気化空間110bに搬送させる。
【0038】
発熱ユニット130は、前記坩堝110の貯留空間110aから気化空間110bに搬送される原料物質を加熱して気化させる熱エネルギーを供給する手段であり、原料物質を気化させる熱エネルギーが供給可能なものであれば、いかなるものも採用可能である。例えば、発熱ユニット130として、コアヒーターまたはランプヒーターなどが使用可能であり、本実施形態においては、コアヒーターを使用している。発熱ユニット130は、坩堝110の外周面のうち気化空間が形成される個所の外周面に抵抗熱線131が取巻されてなる。このとき、抵抗熱線131としては、Ta、W、Mo金属またはこれらの合金線が使用可能である。
【0039】
また、前記発熱ユニット130による原料物質の加熱を容易にするために、前記坩堝110の内壁のうち気化空間110bが形成される個所の内壁には、熱伝導性の高い金属シート111が配設されていてもよい。このとき、金属シート111は、ドーナツ状またはパイプ状に形成されることが好ましい。
【0040】
冷却ユニット140は、前記坩堝110の貯留空間110aに充填された原料物質が前記発熱ユニット130の熱によって変質されることを防止する手段であり、原料物質が貯留された貯留空間110aを冷却させるものであれば、いかなるものも採用可能である。例えば、本実施形態においては、冷却ユニット140として冷却ジャケットを使用している。冷却ユニット140は、坩堝110の外周面のうち貯留空間110aが形成される個所の外周面、好ましくは、前記発熱ユニット130が配設される個所と隣り合う部分を取り囲むように配設される。冷却ユニット140は、坩堝110の外周面のうち貯留空間110aが形成される個所の外周面に冷却水が流れる冷却流路141が囲設されてなる。
【0041】
さらに、前記坩堝110の上部には、前記発熱ユニット130によって気化された原料ガスをインジェクター160に流動させる連絡管150が連結される。
【0042】
連絡管150は、インジェクター160と連絡可能に所定の形状に折り曲げられてもよい。また、前記連絡管150の外周部には、気化済みの原料ガスがさらに液相または固相に変化することを防止するために、発熱ライン151が配設される。
【0043】
このとき、前記連絡管150の直径および長さは、原料物質の変性に悪影響を及ぼす。より具体的に、原料物質の変性は、坩堝110内の高い温度および圧力によって起こる。このため、原料物質の変性を防止するためには、坩堝110内の温度および圧力を低く維持する必要がある。また、原料物質の気化温度は真空度に影響され、真空度が下がるにつれて気化温度も下がる傾向にあるため、坩堝110内の真空度を低く維持した方が、原料物質の変性を防止する上で一層効率的である。
【0044】
坩堝110内の真空度は、コンダクタンスの概念として解釈可能であり、コンダクタンスは、配管の長さおよび直径に大きく影響される。下記式1は、コンダクタンスを計算する式である。
【0045】
[式1]
C=3.81(T/M)1/2/(L+1.33D)
D:配管の直径
L:配管の長さ
T:温度
M:原料物質の分子量
【0046】
上式1から明らかなように、コンダクタンスは配管の長さが短いほど、且つ、直径が大きいほど上がる傾向にある。このため、本実施形態において、坩堝110内の真空度を下げて原料物質の変質を防止するために、連絡管150の長さをできる限り短くし、且つ、連絡管150の直径を大きくすることが好ましい。特に、連絡管150の長さよりも連絡管150の直径の方がコンダクタンス値を大幅に左右するため、本実施形態においては、原料物質として用いられる有機物質および坩堝110内の温度を考慮して、連絡管150の直径を20〜200mmにしている。これは、連絡管150の直径が20mm以下であれば、コンダクタンスが低すぎて原料物質が変質されることを防止する効果があまり得られない一方、連絡管150の直径が200mm以上であれば、他の装置との互換性に制限があるためである。特に、連絡管150の直径は、原料物質の変質防止効率および他の装置との互換性を考慮して、70mmにすることが好ましい。
【0047】
さらに、前記連絡管150の一方の側には係合部材170が連結され、前記係合部材170にはねじ山が形成されて前記坩堝110の上端部に螺着される。このとき、坩堝110の貯留空間110a、気化空間110b、係合部材170の内部および連絡管150の内部は連通される。このように係合部材170および坩堝110を螺合させることにより、係合部材170および坩堝110間の着脱を容易に行うことができる。これにより、原料物質の充填に際して、坩堝110から係合部材170を取り外した後、原料物質を坩堝110の貯留空間110aに容易に充填することができる。
【0048】
さらに、前記連絡管150の他方の側にはインジェクター160が連絡される。
【0049】
インジェクター160は、内部に前記連絡管150と連通される流路が形成され、その端部には気化済みの原料物質が噴射されるガス噴射口161が形成される。このとき、インジェクター160は線状を呈し、前記ガス噴射口161が一直線状に配列されて基板10と対向して配置される。なお、インジェクター160の外周部にも、気化済みの原料物質がさらに液相または固相に変化することを防止するために、発熱ライン162が配設される。
【0050】
前記インジェクター160は、連絡管150と連通されることにより、坩堝110の真空度に影響を及ぼす。このため、連絡管150の直径を限定した理由と同様に、インジェクター160の直径を20〜200mmにすることが好ましく、連絡管150と対応するようにインジェクター160の直径を70mmにすることがより好ましい。なお、インジェクター160のガス噴射口161の直径は8mmよりも大きく形成することが好ましい。
【0051】
前記坩堝110、搬送ユニット120およびインジェクター160は、前記チャンバー400内に配設されるために、支持部180によって一体に支持される。また、前記支持部180は、前記インジェクター160と基板10との間の間隔を調節するために、インジェクター160が基板10に向けて搬送されるように設けられるレール185の上に配設される。
【0052】
前記支持部180は、前記レール185に沿って移動される可動胴体181と、前記可動胴体181に固定されて前記坩堝110および搬送ユニット120を一体に支持する支持フレーム182と、前記インジェクター160を支持する支持プレート183と、を備える。もちろん、前記可動胴体181、支持フレーム182および支持プレート183の形状には制限がなく、前記坩堝110、搬送ユニット120およびインジェクター160を一体に支持する形状および構造であれば、いかなるものも採用可能である。また、前記可動胴体181は、前記レール185の上において移動可能なものであれば、いかなるものであっても構わない。例えば、ボールスクリューによる駆動方式、LMガイドによる駆動方式などが適用可能である。
【0053】
さらに、前記インジェクター160の前方には、インジェクター160からの気化済みの原料物質の噴射量を測定する噴射量測定センサー184が配設される。このため、前記噴射量測定センサー184において測定される原料物質の噴射量に応じて、発熱ユニット130の加熱温度および搬送ユニット120のヘッド121の移動速度を制御して気化される原料物質の量を調節する。
【0054】
さらにまた、前記インジェクター160の前方、好ましくは、インジェクター160と基板ホルダー200との間に前記インジェクター160から噴射される原料物質の流れを選択的に制限するシャッター190が介装される。前記シャッター190は、前記インジェクター160に形成されたガス噴射口161の前方を閉塞する面を有する形状に製造され、回動方式または摺動方式によって作動する。本実施形態においては、モーター191の駆動によってシャッター190が回動してインジェクター160の前方を選択的に開閉する方式を提案している。もちろん、シャッター190の形状および作動方式は上記の実施形態に限定されるものではなく、インジェクター160から基板10に噴射される原料物質の流れを選択的に制限可能なものであれば、いかなるものも採用可能である。
【0055】
さらにまた、図1に示すように、搬出部5000は、基板処理システムの他方の側の端部に配置されて有機薄膜が蒸着された多数枚の基板10が外部に搬出されるために待機する空間であり、前記搬出部5000にはアンローダーが配設され、前記アンローダーは蒸着処理済みの多数枚の基板10を基板カセットに搭載して外部に取り出す。
【0056】
このような構成を有する本発明に係る蒸着物質供給装置および基板処理装置が適用された基板処理システムの作動状態を説明する。
【0057】
図4および図5は、本発明に係る蒸着物質供給装置の使用状態を示す断面図である。
【0058】
まず、図4に示すように、蒸着物質供給装置の坩堝110を係合部材170から取り外した後、その内部の貯留空間110aに基板10に蒸着する原料物質、すなわち、有機材料を充填する。そして、坩堝110と係合部材170とを係合する。ここで、多数種の有機薄膜を順次に積層させる場合には、これに対応して複数の基板処理部3000a〜3000cを形成し、それぞれの基板処理部3000a〜3000cに有機原料供給部100を配設した後、蒸着したい有機物質を坩堝110に充填する。このとき、坩堝110の貯留空間110aには、有機薄膜蒸着工程が連続的に又は周期的に行える十分な量の有機物質を充填する。貯留空間110aに充填された有機物質は、冷却ユニット140の冷却によって変質されずに長時間貯留可能となる。なお、坩堝110およびインジェクター160が固定された可動胴体181を移動させて処理対象となる基板10とインジェクター160との間の間隔を設定する。
【0059】
このようにして有機原料供給部100が準備されれば、搬入部1000に準備された基板10を処理準備部2000に搬入して基板10を基板ホルダー200に載置して整列させる。このようにして準備された基板10は基板ホルダー200により搬送され、それぞれの基板処理部3000a〜3000cに配設された有機原料供給部100に臨む個所に置かれる。
【0060】
基板10が搬送されて有機原料供給部100の前方、好ましくは、インジェクター160の前方に置かれると、図5に示すように、有機原料供給部100の搬送ユニット120が作動して坩堝110の貯留空間110aに充填された有機物質を気化空間110bに搬送させる。より具体的に、モーター123が作動して回転するにつれて、ボールスクリュー124が回転して昇降体125が上下動する。すると、昇降体125と一体に支持体126が移動されつつロッド122を上下動させ、これにより、ロッド122の上端に配設されたヘッド121が原料物質を坩堝110の貯留空間110aから気化空間110bに搬送させる。すると、気化空間110bに周設された発熱ユニット130の加熱によって有機物質が気化される。このとき、気化される有機物質の量は、発熱ユニット130の加熱温度の制御および搬送ユニット120のヘッド121の搬送速度の制御によって決定される。そして、気化空間110bに達せずに貯留空間110aに貯留される有機物質は、貯留空間110aに周設された冷却ユニットの冷却によって変質されることが防止される。
【0061】
このように気化空間110bにおいて所望の量だけ気化された有機物質は、係合部材170および連絡管150を経てインジェクター160に形成されたガス噴射口161を介してインジェクター160の外部に噴射される。また、シャッター190を作動させてシャッター190を開くことにより、有機物質の噴射が円滑に行われる。このようにして噴射された有機物質は、基板10に蒸着されて基板10に有機薄膜を形成する。このとき、インジェクター160の前方に配置された噴射量測定センサー184においてインジェクター160からの有機物質の噴射量が測定され、該測定量を演算して発熱ユニット130の加熱温度および搬送ユニット120のヘッド121の搬送速度を制御する。
【0062】
もし、基板10の搬送が連続的に行われる工程であれば、インジェクター160の前方に配設されたシャッター190を常に開状態に維持し、これに対し、基板10の搬送が不連続的に、すなわち、周期的に行われる工程であれば、シャッター190が選択的に開状態または閉状態になるように作動させることが好ましい。
【0063】
このようにして基板処理部3000a〜3000cのうちの所望の処理部を通じて単層または多層の有機薄膜の蒸着が完了すると、基板10は搬出準備部4000に搬送されて基板ホルダー200から取り外される。取り外された基板10は搬出部5000に搬出され、搬出された多数枚の基板はカセットに搭載されて基板処理システムの外部に取り出される。
【0064】
以上、本発明における基板処理システムは、多数枚の基板を速やかに処理可能なインライン方式であることを想定して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有機薄膜を蒸着可能である限り、様々な方式の処理システムに適用可能である。また、本発明においては、基板およびインジェクターを地面と垂直に配置した後、有機薄膜を蒸着することを例にとって説明したが、基板およびインジェクターを地面と平行に配置するために基板ホルダーおよび有機原料供給部を水平方向に配設してもよい。以上、本発明は添付図面と上述した好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲によって限定される。よって、この技術分野における通常の知識を持った者であれば、後述する特許請求の範囲の技術的思想から逸脱しない範囲内において本発明は様々に変形および修正可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に原料物質が充填される貯留空間および原料物質が気化される気化空間が連通状に形成される坩堝と、
前記坩堝に充填された原料物質を貯留空間から気化空間に連続的に又は周期的に搬送する搬送ユニットと、
前記坩堝に形成される気化空間の外側に配設されて原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニットと、
を備える蒸着物質供給装置。
【請求項2】
前記坩堝に形成される貯留空間の外側に配設されて前記貯留空間に貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニット
をさらに備える請求項1に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項3】
前記冷却ユニットは、前記坩堝の外周面を取り囲んで冷却水の流動する冷却流路が形成された冷却ジャケットであることを特徴とする請求項2に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項4】
一方の側が前記坩堝の気化空間側に連絡されて気化済みの原料物質が流動する流路を形成する連絡管と、
前記連絡管の他方の側に連絡されて気化済みの原料物質が噴射されるインジェクターと、
をさらに備える請求項1または請求項2に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項5】
前記坩堝、搬送ユニットおよびインジェクターを一体に支持する支持部をさらに備え、
前記支持部は、前記インジェクターが向く方向に延びるレールの上に配設されてレールに沿って移動されることを特徴とする請求項4に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項6】
前記連絡管の一方の側には係合部材が連結され、前記係合部材は前記坩堝と螺合されることを特徴とする請求項4に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項7】
前記連絡管の直径は20〜200mmであることを特徴とする請求項4に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項8】
前記インジェクターからの原料物質の噴射量を測定する噴射量測定センサーをさらに備え、
前記噴射量測定センサーにおいて測定される原料物質の噴射量に応じて前記搬送ユニットの作動を制御して原料物質の噴射量を調節することを特徴とする請求項4に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項9】
前記坩堝に形成される気化空間の内壁には金属シートが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項10】
前記搬送ユニットは、
前記坩堝の内部に配設されて原料物質を圧送するヘッドと、
一方の側が前記ヘッドに連結され、他方の側が前記坩堝の外側に配設されて前記ヘッドと一体に移動されるロッドと、
前記ロッドの他方の側に連結されて前記ロッドを移動させる駆動部と、
を備える請求項1または請求項2に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項11】
前記駆動部はモーターまたは油圧式シリンダーであることを特徴とする請求項10に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項12】
前記発熱ユニットはコアヒーターまたはランプヒーターであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸着物質供給装置。
【請求項13】
反応空間が形成されるチャンバーと、前記反応空間に設けられて気化される原料物質を供給する有機原料供給部と、基板を支持する基板ホルダーと、を備え、
前記有機原料供給部は、
内部に原料物質が貯留される貯留空間および原料物質が気化される気化空間が連通状に形成される坩堝と、
前記坩堝に充填された原料物質を貯留空間から気化空間に連続的に又は周期的に搬送させる搬送ユニットと、
前記坩堝に形成される気化空間の外側に配設されて前記気化空間に原料物質を気化させる熱を供給する発熱ユニットと、
一方の側が前記坩堝の気化空間側に連絡されて気化済みの原料物質が流動する流路を形成する連絡管と、
前記連絡管の他方の側に連絡され、前記基板ホルダーと対向して配置されて気化済みの原料物質を基板に向けて噴射するインジェクターと、
を備える基板処理装置。
【請求項14】
前記坩堝に形成される貯留空間の外側に配設されて前記貯留空間に貯留された原料物質の熱変質を防止する冷却ユニット
をさらに備える請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記チャンバーには多数の反応空間が画設され、
前記有機原料供給部は多数配設されて前記多数の反応空間にそれぞれ配置されるようにチャンバーの内部に設けられ、
前記基板ホルダーは前記それぞれの有機原料供給部と対向して配置されるように搬送されることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508815(P2012−508815A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536246(P2011−536246)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006671
【国際公開番号】WO2010/056057
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(509170165)エスエヌユー プレシジョン カンパニー,リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SNU PRECISION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Dong−a town #201, Bong−chun 7−dong 1692−2,Kwanak−gu,Seoul 152−818(KR)
【Fターム(参考)】