説明

蒸着用マスクおよびその製造方法ならびに表示装置の製造方法

【課題】透過孔パターンを精度良く形成しつつ、多面取りを実現することが可能な蒸着用マスクの製造方法および蒸着用マスクならびに表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着用マスク1の製造方法は、複数の金属薄膜10を、張力Tを付加しつつ枠体11に固着させたのちに、各金属薄膜10に複数の透過孔パターン10Aを形成する。透過孔パターン10Aは、金属薄膜10の表面側および裏面側に、フォトレジスト膜の形成、レーザダイレクト露光法によるパターンの描画、フォトレジスト膜の現像、エッチング、フォトレジスト膜の剥離、水洗乾燥の工程をこの順に経て形成する。金属薄膜単体における透過孔10A−1の寸法精度や位置精度に加え、複数の金属薄膜10間での透過孔10A−1の相対的な位置精度が良好に確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置の製造工程において用いられる蒸着用マスクおよびその製造方法、ならびに表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL発光素子よりなる有機ELカラーディスプレイなどの製造工程では、有機材料よりなる有機層が真空蒸着により形成され、この際、有機層のパターンに合わせて材料を透過させるための複数の透過孔(透過孔パターン)が設けられた蒸着用マスクが使用されている。一般に、蒸着用マスクは、その透過孔パターンを、例えば金属薄膜にフォトレジスト膜を使用してパターン露光したのちエッチングを施すフォトエッチング法や、ガラス原盤に所望のパターンで電気メッキを施したのち剥離する電鋳法によって形成することができる。このような蒸着用マスクでは、所望の位置に所望の形状で有機層を蒸着させるために、その透過孔の位置や形状など所望のパターンで精度良く形成されることが要求されている。
【0003】
そこで、例えば、フォトマスクを用いた露光により金属薄膜にパターンを描画したのち、蒸着源側からエッチングを施すことにより、有効透過孔を所定の寸法で形成できるようにした蒸着用マスクの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。また、エッチング法と電鋳法の両方を用いたハイブリッド型の2層構造とすることより、透過孔パターンの寸法精度を向上させる技術が提案されている(特許文献2参照)。また、透過孔パターンを形成したのちに、金属薄膜を部分的に引っ張り、張力を加えながら枠体に固定することで、蒸着用マスクとしての所望の寸法に調節しつつマスク本体にテンションをかけ、弛みや位置ずれが生じないようにする手法が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−183153号公報
【特許文献2】特開2005−314787号公報
【特許文献3】特開2004−225077号公報
【特許文献4】特開2001−237073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、大型の有機ELカラーディスプレイが開発され、これに伴って蒸着用マスクの大型化への要求が高まっている。ところが、上記特許文献1〜3の手法では、ディスプレイサイズに合わせて、マスク単体のサイズを大型化することは、ハンドリング上困難である。そこで、特許文献4には、個々に透過孔パターンを形成した複数のマスクを、枠体に固定して集合化させることにより、多面取りを可能とした蒸着用マスクの製造方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、大型のディスプレイに対応すべく、多面取りの蒸着用マスクを精度良く形成するためには、個々のマスクにおける透過孔パターンの形状や位置の精度に加え、集合した状態における各マスク間での透過孔パターンの相対的な位置精度が良好であることが求められる。上記特許文献4の構成では、これらの精度出しが不十分であるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、透過孔パターンを精度良く形成しつつ、多面取りを実現することが可能な蒸着用マスクの製造方法および蒸着用マスクならびに表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による蒸着用マスクの製造方法は、開口部を有する枠体に、マスク用の複数の金属薄膜を、開口部を覆うように張力を付加しつつ固定する張設工程と、枠体に固定された複数の金属薄膜に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔をそれぞれ形成する透過孔形成工程とを含むものである。
【0008】
本発明による蒸着用マスクの製造方法では、複数の金属薄膜を枠体に張力を付加しつつ固定したのち、金属薄膜に透過孔パターンを形成することにより、従来のように複数の金属薄膜を、透過孔を形成した後に枠体に張設する場合に比べて、透過孔の寸法や位置のずれが生じにくくなる。よって、複数の透過孔が所望の寸法形状で形成されると共に、各金属薄膜内における透過孔の位置精度、および複数の金属薄膜間における透過孔同士の相対的な位置精度が確保される。
【0009】
本発明による蒸着用マスクは、開口部を有する枠体と、枠体に対して、その開口部を覆うように張設されると共に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔がそれぞれ形成された複数の金属薄膜同士が互いに溶接されているマスク部とを備えたものである。
【0010】
本発明による表示装置の製造方法は、有機発光素子の有機層を、本発明の蒸着用マスクを用いた蒸着により形成する工程を含むものである。
【0011】
本発明による蒸着用マスクおよび表示装置の製造方法では、複数の透過孔がそれぞれ形成された複数の金属薄膜同士が互いに溶接されたマスク部が、枠体によって張力が付加された状態で支持されていることにより、複数の透過孔の寸法精度、金属薄膜内における透過孔の位置制度、および複数の金属薄膜間における透過孔の相対的な位置精度を確保しつつ、多面取りが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蒸着用マスクの製造方法によれば、複数の金属薄膜を枠体に張力を付加しつつ固定したのち、金属薄膜に複数の透過孔を形成するようにしたので、複数の透過孔が所望の寸法形状で形成されると共に、各金属薄膜内における透過孔の位置精度、および複数の金属薄膜間における透過孔同士の相対的な位置精度が確保され、透過孔パターンを精度良く形成しつつ、多面取りを実現することが可能となる。
【0013】
本発明の蒸着用マスクおよび表示装置の製造方法によれば、複数の透過孔をそれぞれ有する複数の金属薄膜が枠体によって張力を付加されつつ支持されているので、透過孔パターンの精度を確保しつつ、多面取りが可能となる。これにより、有機層などのパターンが精度良く効率的に形成され、大型で信頼性の高い有機ELディスプレイを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施の形態に係る蒸着用マスク1の構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1(A)は、金属薄膜10の側(以下、表面側という)からみた概略構成を表す斜視図であり、同図(B)は、蒸着用マスク1の枠体11の側(以下、裏面側という)からみた概略構成を表す斜視図である。図2は、図1(A)におけるI−I線における矢視断面図である。図3は、透過孔10A−1(図2における領域S1)を拡大したものである。
【0016】
蒸着用マスク1は、例えば有機発光素子の有機層を、所定のパターンで真空蒸着法により成膜する際に用いられるものである。この蒸着用マスク1では、複数の金属薄膜10が枠体11によって支持され、これら複数の金属薄膜10がマスク部を構成している。本実施の形態では、成膜の際には、金属薄膜10の枠体11に対向する側(以下、裏面側という)に例えば蒸着源が配置され、金属薄膜10の枠体11に対向していない側(以下、表面側という)に、素子基板(被蒸着基板)などが配置されて使用されるようになっている。
【0017】
金属薄膜10は、枠体11に対して、枠体11の開口部11A(後述)を覆うように、所定の張力Tが付加された状態で固着され、枠体11の開口部11Aに対応する領域には、複数の透過孔10A−1が配列された透過孔パターン10Aを有している。このように、張力Tが付加されていることで、各金属薄膜10はしわや弛みのない状態で枠体11に固着されている。なお、金属薄膜10に与えられる張力Tは、蒸着時の輻射熱による熱応力により金属薄膜10に生じる歪み量が、張力Tにより金属薄膜10に生じる歪み量により相殺される大きさおよび方向に設定されていることが好ましい。蒸着時の金属薄膜10の熱膨張を吸収し、透過孔10A−1の位置精度を高めることができるからである。この透過孔パターン10Aが形成されている領域が、蒸着用マスク1の有効蒸着領域となっている。このような金属薄膜10は、例えばインバー材、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの金属または合金、圧延ステンレス鋼など、熱膨張係数の低い金属薄膜によって構成されることが好ましく、厚みは例えば10μm〜50μmである。
【0018】
透過孔パターン10Aには、例えば蒸着される有機発光層などのパターンに対応して、複数の透過孔10A−1が形成されている。この透過孔10A−1は、図3に示したように、例えば、表面側の開口100Aよりも、裏面側の開口100Bの方が、その開口面積が大きくなるように形成されている。このような構成により、その裏面側から表面側に向けて蒸着材料を透過させるようになっている。
【0019】
枠体11は、例えばインバー材などから構成され、厚みは例えば5mm〜30mmである。この枠体11は、例えば格子状に複数の開口部11Aを有している。また、後述の有機層が形成される駆動用基板15と同等の線熱膨張係数を有する材料により構成されていることが好ましい。これは、蒸着時の温度変化に伴い、枠体11と駆動用基板15とを同期して膨張収縮させると共に、膨張収縮による寸法変化量を等しくすることができるからである。更に、枠体10は、高い剛性および十分な厚みを有し、線熱膨張係数のほか、熱容量、表面の輻射射出率、周囲の支持体(図示せず)との熱伝導により流入流出する伝熱量、および蒸着源(図示せず)からの輻射熱を遮る断熱板(図示せず)により制限される流入熱量などを最適に調節して設計されていることが望ましい。本実施の形態では、開口部11Aが4つ、これに対応して金属薄膜10(透過孔パターン10A)が4つ形成された構成を例に挙げて説明する。
【0020】
次に、このような構成を有する蒸着用マスク1の製造方法について図4〜図9を参照して説明する。図4は複数の金属薄膜を張力を付加しつつ枠体に固着させる張設工程、図5および図6はフォトレジスト膜を塗布する工程、図7は露光工程、図9は現像およびエッチング工程をそれぞれ工程順に表すものである。図8は、図7の露光工程における露光パターンの一例を表す平面図である。
【0021】
まず、図4(A)に示したように、金属薄膜10を、一定の張力Tを付加した状態で枠体11の開口部11Aを覆うように、枠体11に対して重ね合わせたのち、図4(B)に示したように、枠体11の開口部11Aの周辺部に、例えばスポット溶接、シームレス溶接により固着させる。このとき、例えば方形のスクリーン枠部材に張力をもってポリエステルメッシュを固定し、このポリエステルメッシュに対して金属薄膜10の周縁部を接着材で接合したのち、ポリエステルメッシュの内側、すなわち金属薄膜10に対向する領域を切り取ることで面内方向を主成分として、金属薄膜10に張力Tを付加する。同様にして、例えば枠体11の4つの開口部11のそれぞれに対応させて、4つの金属薄膜10を溶接により固着させる。
【0022】
次いで、図5(A)に示したように、スプレイコーティング法により、例えばスプレイノズル120をストローク動作させ、かつ紙面に垂直方向に枠体11またはスプレイノズル120をピッチ送りするようにしてコーティングすることにより、金属薄膜10の表面側にフォトレジスト膜(感光性樹脂)12aを形成する。こののち、プリベークを行い、乾燥させる。続いて、図5(B)に示したように、金属薄膜10を固着させた枠体11を上下反転させ、枠体11の側から、金属薄膜10の裏面側にもフォトレジスト膜12bを形成し、プリベークして、乾燥させる。このように、金属薄膜10の表面側と裏面側の両面に対して、フォトレジスト膜12a,12bを形成する。
【0023】
次いで、図6(A)に示したように、後の工程において、エッチング液の浸入を防止するために、金属薄膜10と枠体11との重ね合わせの境界部分に対して、金属薄膜10の裏面側から、フォトレジスト膜12a,12bよりも濃いめ(固形分の多い)のフォトレジストをディスペンサ121などを用いて塗布し乾燥させることにより、目止め部13を形成する。続いて、図6(B)に示したように、枠体11を上下反転させ、隣接する金属薄膜10同士の間の領域についても、上記と同様にして目止め部13を形成する。
【0024】
次いで、図7(A)に示したように、レーザダイレクト露光機122に、フォトレジスト膜12a,12bをコーティングした金属薄膜10および枠体11をセットして、金属薄膜10の表面側を露光し、所望のパターンをスキャン描画する。続いて、図7(B)に示したように、金属薄膜10および枠体11を上下反転させ、先のパターンと位置合わせを行い、金属薄膜10の裏面側を露光し、所望のパターンをスキャン描画する。このとき、金属薄膜10に形成される透過孔10A−1の開口面積が、表面側よりも裏面側で大きくなるように、露光パターンのデータを設定する。また、このときの露光パターンの平面形状は、図8に示したように、四角形の4辺の中央部分が内側に湾曲したような形状の露光パターン14となっている。
【0025】
次いで、図9(A)に示したように、フォトレジスト膜12a,12bを現像して、金属薄膜10の表裏のエッチング加工を行う部分を露出させる。続いて、図9(B)に示したように、例えば塩化第2鉄液などのエッチング液を用いて、金属薄膜10の両面からエッチングを施す。こののち、フォトレジスト膜12a,12bを剥離し、水洗乾燥を行うことにより、各金属薄膜10に透過孔パターン10Aが形成され、図1〜図3に示した蒸着用マスク1を完成する。
【0026】
以上のように、本実施の形態の蒸着用マスク1の製造方法では、複数の金属薄膜10を張力を付加しつつ枠体11に固着させたのちに、複数の透過孔パターン10Aを形成することで、従来のように、複数の金属薄膜を、透過孔パターンの形成後に枠体に固定する場合に比べて、透過孔10A−1の寸法や位置のずれが生じにくくなる。従来の手法では、張力を付加する際に、透過孔に対して応力がかかるため、金属薄膜単体における精度が低下してしまう。また、複数の金属薄膜を用いて多面取りをする場合には、各金属薄膜に対して、張力Tを一定の大きさ、方向で付加することが困難であるため、複数の金属薄膜間での相対的な位置精度が低下してしまう。これに対し、本実施の形態では、各金属薄膜10に対して、張力Tを付加して張設したのちに透過孔10A−1を形成するため、金属薄膜10単体での透過孔10A−1の寸法精度や位置精度に加え、複数の金属薄膜10間での透過孔10A−1同士の相対的な位置精度を確保し易くなる。よって、透過孔パターン10Aを精度良く形成しつつ、多面取りが実現可能となる。
【0027】
また、金属薄膜10の両面に対して、フォトレジスト膜12a,12bを、スプレイコーティング法を用いて形成することにより、複数の金属薄膜10と枠体11とを貼り合わせたことにより生じる凹凸、すなわち、表面側の隣接する金属薄膜10同士の隙間や、裏面側の枠体11によって形成される段差に対しても、効率良くフォトレジスト膜12a,12bを形成することができる。
【0028】
ここで、従来のようにフォトマスクを用いた密着露光により露光パターンを描画する手法では、マスクサイズの変更に対してフレキシビリティがない。また、多面取りのために複数の金属薄膜を枠体に固着させると、上述したように凹凸が生じるため、フォトマスクとの密着性を確保するのが困難となる。これに対し、本実施の形態では、レーザによるダイレクト露光法を用いるようにしたので、フォトレジスト膜12a,12bの所望の位置に、所望の形状で露光パターンをダイレクトに描画することができる。また、パターンの寸法や形状の補正をダイナミックに行うことも可能となる。よって、多面取りに際して、複数の金属薄膜と枠体とを貼り合わせることによって凹凸が生じた場合であっても、透過孔パターン10Aの寸法精度や位置精度を効果的に確保することができる。
【0029】
また、透過孔パターン10Aは、エッチング後に金属薄膜10の見かけのヤング率が低下することから変形を起こすことがある。このため、露光パターンを、図8に示したような四角形の中央部分で内側に湾曲したような形状となる露光パターン14、すなわち予め上記変形量を解析しておき、この変形量を見込んで補正をかけた形状としておけば、より精度の高い透過孔パターン10Aを形成することができる。
【0030】
ところで、透過孔10A−1は、蒸着源からの蒸着物質を均一に透過させるために、蒸着源側(本実施の形態では裏面側)の開口を、被蒸着側(本実施の形態では表面側)の開口よりも大きくなるようにして、蒸着源から斜めに入射する蒸着材料が開口の影になって付着しにくくなること(シャドウ効果)を低減することが好ましい。このため、レーザダイレクト露光を用いない従来のフォトエッチング法では、透過孔のエッジを傾斜させるために、テーパエッチングなどの手段を用いなければならず、エッチングの工程で微細な調整が必要となるため、エッチング精度を確保することが困難である。
【0031】
これに対し、本実施の形態のように、レーザダイレクト露光法によって、透過孔10A−1の表面側よりも裏面側で開口面積が大きくなるように、露光パターンのデータを設定するようにすれば、図3に示したような断面形状の透過孔10A−1を、エッチング工程において微細な調整をすることなく、容易に形成することができる。よって、例えば裏面側に蒸着源を配置して、例えば素子基板上に有機層などを蒸着させる場合には、上述のシャドウ効果が低減され、均一な膜厚で精度良く成膜することができるようになる。
【0032】
次に、上記のような蒸着用マスク1を用いて製造することのできる表示装置2について図10を参照して説明する。図10は表示装置2の概略構成を表す断面図である。
【0033】
表示装置2は、赤色の光を発生する有機発光素子14Rと、緑色の光を発生する有機発光素子14Gと、青色の光を発生する有機発光素子14Bとを全体としてマトリクス状に配置することにより構成されている。有機発光素子14R,14G,14Bは、それぞれ、駆動用基板15の側から、陽極としての第1電極16、絶縁膜17、正孔注入層18、正孔輸送層19、発光層、電子輸送層21、および陰極としての第2電極22がこの順に積層された構成を有している。但し、発光層としては、有機発光素子14R,14G,14Bのそれぞれに対応する赤色発光層20R、緑色発光層20G、および青色発光層20Bが形成されている。これらの赤色発光層20R、緑色発光層20G、および青色発光層20Bを、本実施の形態に係る蒸着用マスク1を用いて好適にパターニング形成することができる。
【0034】
このような有機発光素子14R,14G,14Bは、必要に応じて、窒化ケイ素(SiN)または酸化ケイ素(SiO)などの保護膜23により被覆され、更にこの保護膜23上に、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層24を間にしてガラスなどよりなる封止基板25が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0035】
第1電極16は、有機発光素子14R,14G,14Bの各々に対応して形成されている。また、第1電極16は、発光層で発生した光を反射させる反射電極としての機能を有しており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。第1電極16は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、銀(Ag),アルミニウム(Al),クロム(Cr),チタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),銅(Cu),タンタル(Ta),タングステン(W),白金(Pt)あるいは金(Au)などの金属元素の単体または合金により構成されている。
【0036】
絶縁膜17は、隣接する第1電極16同士の間の領域に形成され、第1電極16間および第1電極16と第2電極22との間の絶縁性を確保し、発光領域を正確に所望の形状にするための電極間絶縁膜としての機能を有している。この絶縁膜17は、例えば、ポリイミドなどの有機材料、または酸化シリコン(SiO2 )などの無機絶縁材料により構成され、第1電極16の発光領域に対応して開口部を有している。なお、発光層は、発光領域だけでなく絶縁膜17の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁膜17の第1電極16に対応する開口部だけである。
【0037】
正孔注入層18、正孔輸送層19および電子輸送層21は、有機発光素子14R,14G,14Bの共通の層となっている。なお、正孔注入層18、正孔輸送層19および電子輸送層21は、必要に応じて設ければよく、発光色によりそれぞれ構成が異なっていてもよい。
【0038】
正孔注入層18は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。この正孔注入層18は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下、例えば25nmであり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。
【0039】
正孔輸送層19は、赤色発光層20R、緑色発光層20Gおよび青色発光層20Bへの正孔輸送効率を高めるためのものである。この正孔輸送層19は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下、例えば30nmであり、4,4’−ビス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)ビフェニル(α−NPD)により構成されている。
【0040】
赤色発光層20Rは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。緑色発光層20Gは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。青色発光層20Bは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。
【0041】
電子輸送層21は、例えば、厚みが20nmであり、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)により構成されている。なお、この電子輸送層21と後述の第2電極22との間に、電子注入効率を高めるために、例えば、LiF、Li2Oなどにより構成される電子注入層を設けるようにしてもよい。
【0042】
第2電極22は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金、もしくはITO(インジウム・スズ複合酸化物)やIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)などの透明電極材料により構成されていてもよい。
【0043】
このような表示装置2は、例えば次のようにして作製することができる。
【0044】
まず、平坦化した駆動用基板15上に、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第1電極16を形成し、例えばエッチング法により所定の形状に成形する。次いで、例えばフォトリソグラフィ法により、上述した材料よりなる絶縁膜17を形成する。このとき、第1電極16の発光領域に対応して開口部を設けるようにする。こののち、上述した材料よりなる正孔注入層18および正孔輸送層19を例えば、蒸着法、CVD法、印刷法、インクジェット法、転写法などを用いて、第1電極16上および絶縁膜17上に形成する。
【0045】
次いで、形成した正孔輸送層19上の各色に対応した素子領域に、赤色発光層20R、緑色発光層20Gおよび青色発光層20Bを、本実施の形態の蒸着用マスク1を用いて上述の材料を蒸着させることによりパターン形成する。こののち、形成した各色発光層を覆うように、上述の材料よりなる電子輸送層21、第2電極22を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法などにより順に形成する。最後に、この第2電極22上に、上述した材料よりなる保護膜23を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法などにより形成し、この保護膜23上に接着層24を間にして封止基板25を貼り合わせる。以上により、図10に示した表示装置2を完成する。
【0046】
このように、表示装置2の製造方法では、赤色発光層20R、緑色発光層20Gおよび青色発光層20Bを、蒸着用マスク1を用いた蒸着によりパターン形成することにより、その各色発光層のパターンが所望の位置に均一な膜厚で精度良く形成される。よって、表示装置2の信頼性が向上する。
【0047】
次に、本発明の変形例について説明する。なお、以下では、蒸着用マスク1と同様の構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略するものとする。
【0048】
(変形例1)
図11は、本発明の変形例1に係る蒸着用マスク3の概略構成を表す断面図である。蒸着用マスク3は、複数の金属薄膜10が互いに接続板22によって繋ぎ合わされ、これら複数の金属薄膜10には張力が付加されている。本変形例では、これらの繋ぎ合わされた金属薄膜10がマスク部を構成しており、マスク部の周辺部分のみが枠体21に対して固着されている。すなわち、枠体21の一つの開口部21Aに対応する領域に、複数の金属薄膜10の透過孔パターン10Aが設けられている。このような蒸着用マスク3は、複数の金属薄膜10を枠体21に張力を付加しつつ固着させる張設工程以外については、上記蒸着用マスク1と同一の工程を経ることにより製造することができる。
【0049】
この蒸着用マスク3の張設工程では、まず、複数の金属薄膜10を、接続板22によって、金属薄膜10の端部同士を裏面側から繋ぎ合わせたのち、その全体に対して張力を付加しつつ、枠体21に固着するようにする。このとき、金属薄膜10と接続板22との接合方法としては、例えばスポット溶接、シームレス溶接などを用いることができる。また、接続板22としては、例えばインバー材、ステンレス鋼板などを用いることができ、厚みは例えば50μm〜500μmである。こののち、上述の露光、現像、エッチングの工程を行うことにより蒸着用マスク3を完成する。
【0050】
このように、複数の金属薄膜10を互いに接続するための接続板22によって繋ぎ合わせたのち、張力を付加しつつ枠体21に固着させるようにしてもよい。これにより、枠体21は、全体として開口部21Aを一つ有していればよく、格子状の桟を設ける必要がなくなる。よって、枠体部分による蒸着シャドウ効果を低減できることから、透過孔パターン10A間のピッチをより狭めることができ、有効蒸着面積の増加を図ることができる。また、金属薄膜を個々に張設する場合よりも、張力を平均化することができるため、透過孔パターン10Aの位置精度をより向上させることができる。
【0051】
(変形例2)
図12は、本発明の変形例2に係る蒸着用マスク4の概略構成を表す断面図である。蒸着用マスク4は、複数の金属薄膜10の端部同士が重ね合わせられた状態で接着され(貼り合わせ部23)、これら複数の金属薄膜10には張力が付加されている。本変形例では、これらの貼り合わされた複数の金属薄膜10がマスク部を構成しており、マスク部の周辺部分のみが枠体21に固着されている。すなわち、上記変形例1と同様に、枠体21の開口部21Aに対応する領域に、複数の金属薄膜10の透過口パターン10Aが設けられている。このような蒸着用マスク4は、複数の金属薄膜を枠体21に張力を付加しつつ固着させる張設工程以外については、上記蒸着用マスク1と同一の工程の経ることにより製造することができる。
【0052】
この蒸着用マスク4の張設工程では、まず、複数の金属薄膜10を、その端部同士を重ね合わせて接合することにより貼り合わせたのち、その全体に対して張力を付加しつつ、枠体21に固着するようにする。このとき、金属薄膜同士の接合方法としては、例えばスポット溶接、シームレス溶接などを用いることができる。こののち、上述の露光、現像、エッチングの工程を行うことにより蒸着用マスク4を完成する。
【0053】
このように、複数の金属薄膜10を、その端部同士を直接貼り合わせることによって、繋ぎ合わせたのち、張力を付加しつつ枠体21に固着させるようにしてもよい。これにより、上記変形例1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(変形例3)
図13は、本発明の変形例3に係る蒸着用マスク5の概略構成を表す斜視図である。蒸着用マスク5は、金属薄膜24に形成される透過孔パターン10Aの周辺の領域に、更に応力緩和のための応力緩和領域26が形成されていること以外は、上記蒸着用マスク1と同様の構成を有している。応力緩和領域26は、複数の細孔26Aが、例えば、透過孔パターン10Aに対向する辺を底辺(下底)とする台形状の領域に配列した構成となっている。このような応力緩和領域26は、例えば、金属薄膜を枠体11に張力を付加しつつ固着させたのちに、透過孔パターン10Aを形成する工程において、同時に形成することができる。
【0055】
但し、図13の構成では、透過孔パターン10Aの対向する2辺に計4つの台形状の応力緩和領域26が形成された例を挙げているが、応力緩和領域26の構成はこれに限定されるものではない。例えば、応力緩和領域を透過孔パターン10Aの4辺に対向する領域の全てに設けるようにしてもよい。また、応力緩和領域の形状は、台形状に限らず、他の形状、例えば、透過孔パターン10Aに対向する辺を底辺とする三角形状であってもよい。
【0056】
このように、金属薄膜10の有効蒸着領域となる透過孔パターン10Aの周辺領域に、応力緩和領域26を設けることにより、例えば後工程でのエッチングにより応力が変化し、露光時における透過孔パターン10Aが変形を起こす際に、透過孔パターン10Aに印加される応力が緩和されるため、透過孔パターン10Aをより高精度に維持することができる。
【0057】
(変形例4)
図14〜図17は、本発明の変形例4に係る蒸着用マスク6の製造方法を説明するためのものである。この蒸着用マスク6の製造方法では、金属薄膜30の表面と裏面に対して、片面ごとにエッチングを施すこと以外は、上述の蒸着用マスク1と同様にして製造することができる。
【0058】
まず、金属薄膜30に対して、上述の図4〜図6の工程と同様の手順で、枠体11に金属薄膜30を固定したのち、フォトレジスト膜12a−1,12b−1および目止め部13を形成する。こののち、金属薄膜30の表面側に対してのみ、上述のレーザダイレクト露光法により所望のパターンを描画し、金属薄膜30の表面側のフォトレジスト膜12a−1のみを現像する(図14(A))。続いて、図14(B)に示したように、金属薄膜30の表面側からハーフエッチングを施す。続いて、図14(C)に示したように、一度フォトレジスト膜12a−1,12b−1および目止め部13を剥離して、水洗乾燥させる。
【0059】
次いで、図15(A)に示したように、金属薄膜30の表面側に対して、スプレイコーティング法により、フォトレジスト膜12a−2を形成したのち、図15(B)に示したように、金属薄膜30の裏面側から、スプレイコーティング法によりフォトレジスト膜12b−2を形成する。金属薄膜30−1と枠体11との境界付近および金属薄膜30同士の隙間についても目止め部13を形成しておく。
【0060】
次いで、図16(A)に示したように、金属薄膜30の裏面側に対して、上述のレーザダイレクト露光法により所望のパターンを描画する。このとき、表面側よりも裏面側における透過孔の開口面積が大きくなるように、露光パターンのデータを設定するようにする。続いて、図16(B)に示したように、金属薄膜30の裏面側のフォトレジスト膜12b−2を現像する。
【0061】
次いで、図17(A)に示したように、金属薄膜30の裏面側から表面側に向けて貫通するまでエッチングを施す。最後に、図17(B)に示したように、フォトレジスト膜12a−2,12b−2および目止め部13を剥離して、水洗乾燥させることにより、透過孔パターン30Aを有する蒸着用マスク6を完成する。このようにして形成した透過孔パターン30Aの透過孔30A−1は、図18に示したような断面形状となる。なお、図18は、図17(B)における領域S2を拡大したものである。
【0062】
このように、透過孔パターン30Aを、片面ごとにエッチングを施すことによって形成することも可能である。上方側よりも下方側からエッチングを施す方が精密なエッチングが可能であるため、下方側からのみエッチングを施すことで、より精度の向上を図ることができる。
【0063】
(変形例5)
図19〜図21は、本発明の変形例5に係る蒸着用マスク7の製造方法を説明するためのものである。この蒸着用マスク7の製造方法では、金属薄膜40に対して、多段階に分けてエッチングを施すこと以外は、上述の蒸着用マスク1と同様にして製造することができる。
【0064】
まず、上述の蒸着用マスク1の図4〜図6の工程と同様の手順で、枠体11に金属薄膜40を固定する。こののち、上述の蒸着用マスク6の図14〜図16の工程と同様の手順で、金属薄膜40の表面側をハーフエッチングしたのち、フォトレジスト膜12a−2,12b−2および目止め部13を形成し、露光パターンの描画、フォトレジスト膜12b−2の現像を行う。
【0065】
次いで、図19(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて、エッチングを施し、貫通する直前で止める。続いて、図19(B)に示したように、フォトレジスト膜12a−2,12b−2および目止め部13を剥離し、水洗乾燥させる。
【0066】
次いで、金属薄膜40の表面側および裏面側に、上述のスプレイコーティング法によりフォトレジスト膜12a−3,12b−3を形成したのち、図20(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側のフォトレジスト膜12b−3上に、上述のレーザダイレクト露光法により露光パターンの描画を行う。続いて、図20(B)に示したように、フォトレジスト膜12b−3を現像する。
【0067】
次いで、21(A)に示したように、金属薄膜40の裏面側から表面側に向けて貫通するまでエッチングを行う。最後に、図21(B)に示したように、フォトレジスト膜12a−3,12b−3および目止め部13を剥離して、水洗乾燥させることにより、透過孔パターン40Aを有する蒸着用マスク7を完成する。このようにして形成した透過孔パターン40Aの透過孔40A−1は、図22に示したような断面形状となる。なお、図22は、図21(B)における領域S3を拡大したものである。
【0068】
このように、透過孔パターン40Aを、多段階エッチングを施すことによって形成することも可能である。これにより、裏面側の断面の傾斜を大きくすることができるため、蒸着シャドウ効果を低減することができる。
【0069】
(適用例およびモジュール)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置2のモジュールおよび適用例について説明する。表示装置2は、テレビジョン装置,デジタルスチルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0070】
(モジュール)
表示装置2は、例えば図23に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、駆動用基板15の一辺に、封止用基板25から露出した領域210を設け、この領域210に後述する信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0071】
駆動用基板15には、例えば、図24に示したように、表示領域110と、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されている。表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。表示領域110は、有機発光素子14R,14G,14Bを全体としてマトリクス状に配置したものである。有機発光素子14R,14G,14Bは短冊形の平面形状を有し、隣り合う有機発光素子14R,14G,14Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0072】
画素駆動回路140は、図25に示したように、第1電極16の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0073】
画素駆動回路140では、列方向に信号線120Aが複数配置され、行方向に走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0074】
(適用例1)
図26は、上記実施の形態の表示装置2が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、表示装置2により構成されている。
【0075】
(適用例2)
図27は、上記実施の形態の表示装置2が適用されるデジタルスチルカメラの外観を表したものである。このデジタルスチルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、表示装置2により構成されている。
【0076】
(適用例3)
図28は、上記実施の形態の表示装置2が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、表示装置2により構成されている。
【0077】
(適用例4)
図29は、上記実施の形態の表示装置2が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、表示装置2により構成されている。
【0078】
(適用例5)
図30は、上記実施の形態の表示装置2が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、表示装置2により構成されている。
【0079】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、金属薄膜の透過孔パターンを形成する際に、金属薄膜および枠体を工程ごとに上下反転させて、表面側と裏面側とに交互にフォトレジスト膜の塗布、露光、現像などを行うようにしたが、それぞれの工程を表面側あるいは裏面側に施す順序は特に限定されるものではなく、表面側と裏面側のどちらから処理をするようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、蒸着用マスクの裏面側に蒸着源を配置し、透過孔の裏面側から表面側に向けて蒸着材料を透過させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、逆の構成、すなわち蒸着用マスクの表面側に蒸着源を配置し、透過孔の表面側から裏面側に向けて蒸着材料を透過させる構成であってもよい。但し、この場合には、透過孔の開口面積が、表面側よりも裏面側で小さくなるように、露光パターンを設定することが望ましい。
【0081】
また、上記実施の形態では、枠体に対して4つの金属薄膜を固着させた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、枠体に少なくとも2つの金属薄膜を固着させた構成であれば本発明の効果は達成される。また、逆に、5つ以上の金属薄膜を固着させた構成であってもよい。また、金属薄膜の透過孔パターン、透過孔の個数や配置構成についても、上記実施の形態に限定されるものではなく、被蒸着対象となる素子基板上のパターン構成に基づき適宜設定されるものである。
【0082】
また、上記実施の形態では、表示装置2の製造方法において、有機発光素子14R,14G,14Bの赤色発光層20R、緑色発光層20Gおよび青色発光層20Bについてのみ、蒸着用マスク1を用いて形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の有機層、例えば正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層などについても、本発明の蒸着用マスクを用いた蒸着により形成することが可能である。
【0083】
また、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、有機発光素子の第1電極16を陽極、第2電極22を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極16を陰極、第2電極22を陽極としてもよい。さらに、第1電極16を陰極、第2電極22を陽極とすると共に、基板11の上に、第2電極22,有機層16および第1電極16を基板11の側から順に積層し、基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係る蒸着用マスクの概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示した蒸着用マスクの概略構成を表す断面図である。
【図3】図2に示した蒸着用マスクの透過孔の拡大図である。
【図4】図1に示した蒸着用マスクの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す断面図である。
【図6】図5に続く工程を表す断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に示した配線構造の概略構成を表す断面図である。
【図9】図8に続く工程を表す断面図である。
【図10】図1に示した蒸着用マスクを用いて製造することのできる表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図11】本発明の変形例1に係る蒸着用マスクの概略構成を表す断面図である。
【図12】本発明の変形例2に係る蒸着用マスクの概略構成を表す断面図である。
【図13】本発明の変形例3に係る蒸着用マスクの概略構成を表す斜視図である。
【図14】本発明の変形例4に係る蒸着用マスクの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図15】図14に続く工程を表す断面図である。
【図16】図15に続く工程を表す断面図である。
【図17】図16に続く工程を表す断面図である。
【図18】本発明の変形例4に係る蒸着用マスクの透過孔の拡大図である。
【図19】本発明の変形例5に係る蒸着用マスクの製造方法を工程順に表す断面図である。
【図20】図19に続く工程を表す断面図である。
【図21】図20に続く工程を表す断面図である。
【図22】本発明の変形例5に係る蒸着用マスクの透過孔の拡大図である。
【図23】本実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図24】図23に示したモジュールにおける表示装置の駆動回路の構成を表す平面図である。
【図25】図24に示した画素駆動回路の一例を表す等価回路図である。
【図26】本実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図27】本実施の形態の表示装置の適用例2の外観を表す斜視図である。
【図28】本実施の形態の表示装置の適用例3の外観を表す斜視図である。
【図29】本実施の形態の表示装置の適用例4の外観を表す斜視図である。
【図30】本実施の形態の表示装置の適用例5の外観を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1,3,4,5,6,7…蒸着用マスク、2…表示装置、10,20,30,40…金属薄膜、11,21…枠体、12a,12a−1,12a−2,12a−3,12b,12b−1,12b−2,12b−3,13…フォトレジスト膜、14R,14G,14B…有機発光素子、15…駆動用基板、16…第1電極、17…絶縁膜、18…正孔注入層、19…正孔輸送層、20R…赤色発光層、20G…緑色発光層、20B…青色発光層、21…電子輸送層、22…第2電極、23…保護膜、24…接着層、25…封止基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する枠体に、マスク用の複数の金属薄膜を、前記開口部を覆うように張力を付加しつつ固定する張設工程と、
前記枠体に固定された複数の金属薄膜に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔をそれぞれ形成する透過孔形成工程と
を含むことを特徴とする蒸着用マスクの製造方法。
【請求項2】
前記枠体は複数の開口部を有し、
前記張設工程は、
前記複数の開口部のそれぞれに対して各金属薄膜を固定する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項3】
前記張設工程は、
前記複数の金属薄膜の端部同士を重ね合わせて溶接したのち、この重ね合わせた複数の金属薄膜を、張力を付加しつつ前記枠体に固定する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項4】
前記張設工程は、
前記複数の金属薄膜の端部同士を接続板を介して溶接により接続したのち、この接続した複数の金属薄膜を、張力を付加しつつ前記枠体に固定する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項5】
前記透過孔形成工程は、
前記金属薄膜の表裏に、感光性樹脂を塗布する工程と、
前記感光性樹脂の表面に、直接に輻射線を照射することにより露光し、所定のパターンを描画する工程と、
前記感光性樹脂に描画されたパターンに基づいてエッチングを施すことにより、前記金属薄膜に複数の透過孔を形成する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項6】
前記感光性樹脂を、スプレイコーティング法により塗布する
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項7】
前記枠体と前記金属薄膜とが隣接する境界付近および隣接する金属薄膜同士の隙間に、前記感光性樹脂よりも濃い他の感光成樹脂を塗布することにより、前記エッチングを施す際のエッチング液の浸入を防止する目止め部を形成する
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項8】
前記所定のパターンを、その変形量を予め見込んで変形させた透過孔パターンとする
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項9】
前記エッチングは、前記金属薄膜に対して片面ごとに施す片面エッチングである
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項10】
前記エッチングは、前記金属薄膜の両側の面から施した両面エッチングである
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項11】
前記エッチングは、前記金属薄膜に対して多段階に分けて施した多段階エッチングである
ことを特徴とする請求項5記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項12】
開口部を有する枠体と、
前記枠体に対して、その開口部を覆うように張設されると共に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔がそれぞれ形成された複数の金属薄膜同士が互いに溶接されているマスク部と
を備えたことを特徴とする蒸着用マスク。
【請求項13】
前記複数の金属薄膜は、その端部同士が重ね合わせられて溶接されている
ことを特徴とする請求項12記載の蒸着用マスク。
【請求項14】
前記複数の金属薄膜は、その端部同士が接続板を介して溶接されている
ことを特徴とする請求項12記載の蒸着用マスク。
【請求項15】
複数の有機発光素子を有する表示装置の製造方法であって、
前記有機発光素子の有機層を、蒸着用マスクを用いた蒸着により形成する工程を含み、
前記蒸着用マスクは、
開口部を有する枠体と、
前記枠体に対して、その開口部を覆うように張設されると共に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔がそれぞれ形成された複数の金属薄膜同士が互いに溶接されているマスク部とを有する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記蒸着用マスクを、
複数の金属薄膜を、張力を付加しつつ枠体に固定したのち、
前記枠体に固定された複数の金属薄膜に、蒸着材料を透過させるための複数の透過孔を形成することにより作製する
ことを特徴とする請求項15記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−41054(P2009−41054A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205501(P2007−205501)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】