説明

蓄冷パネルおよびこれを備えた冷凍・冷蔵装置

【課題】被冷却物等の温度変化を抑制することができる蓄冷パネルおよびこれを備えた冷凍・冷蔵装置を得る。
【解決手段】熱伝達の速さがそれぞれ異なる層を少なくとも3層積層した積層構造を有し、熱負荷体が配置される位置からの前記積層構造内での熱伝達は、前記積層構造の積層方向よりも積層方向に直交する方向の方が遅くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄冷パネルおよびこれを備えた冷凍・冷蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫においては、食材を高温から低温に冷却するコンパートメントと、冷却された状態を維持保存するコンパートメントとが分離されていない。このため、すでに冷却されている食材のそばに、新規に、高温で未冷却の食材(熱負荷体)を置くような状況が発生する。
この場合、未冷却食材(熱負荷体)が有する熱は、庫内空気あるいは未冷却食材と接する部材へと移動する。このため、空気が急激に加熱されたり、部材を通じての熱伝達が起こることとなる。その結果として、周辺に置かれた冷却済みの食材温度が上昇し、食材の品質低下が懸念される。
【0003】
従来の技術においては、例えば、「合成樹脂製の受皿状の容器と、該容器の上面に熱溶着され且つその上面開口部を閉塞する合成樹脂製の薄板とでトレイ本体を構成し、該トレイ本体内に蓄冷材を封入すると共に、前記薄板状に密接して金属製トレイを着脱自在に取り付けた事を特徴としてなる冷凍庫の急速トレイ。」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、「冷蔵庫の貯蔵室内に、真空断熱材と、前記真空断熱材に隣接して備えられた蓄冷剤と、前記蓄冷剤と隣接して備えられた熱伝導性の良い材質で形成されたプレートからなる冷却部材を備えた冷蔵庫。」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、例えば、「熱を発生させる熱源と、前記熱源と隣接する真空断熱材とからなり、前記真空断熱材における前記熱源と接する側の外被材の表面層が金属箔であることを特徴とした熱伝導断熱装置。」が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】実開昭59−49888号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−226984号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2006−90494号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、パネル(トレイ)上に置かれた熱源の熱が、パネル裏面に移動するのを抑制することはできるものの、熱伝導性の高い金属トレイ上に、例えば冷却済みの食材などの被冷却物と、例えば未冷却の食材などの熱負荷体とが、共存して置かれた場合、熱負荷体から該熱伝導性の高いトレイを通じて、冷却済みの被冷却物へと熱移動が起こる。これにより、冷却済みの被冷却物の温度が上昇してしまうという課題がある。
【0008】
また、パネル(プレート)の片面を真空断熱材とすると、蓄冷剤に蓄えられた熱が、冷却済みの被冷却物側に放冷される。これにより、冷却済みの被冷却物の温度が上昇してしまうという課題がある。
【0009】
また、保温庫など空間温度が高い機器の内部に、熱負荷体としての低温物と、すでに加温済みの被保温物とが共存する場合、加温済みの被保温物の温度が低下してしまうという課題がある。
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、被冷却物等の温度変化を抑制することができる蓄冷パネルおよびこれを備えた冷凍・冷蔵装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る蓄冷パネルは、熱伝達の速さがそれぞれ異なる層を少なくとも3層積層した積層構造を有し、熱負荷体が配置される位置からの前記積層構造内での熱伝達は、前記積層構造の積層方向よりも積層方向に直交する方向の方が遅くなるように形成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、熱伝達の速さがそれぞれ異なる層を少なくとも3層積層した積層構造を有し、熱負荷体が配置される位置からの前記積層構造内での熱伝達は、前記積層構造の積層方向よりも積層方向に直交する方向の方が遅くなるように形成されているので、被冷却物等の温度変化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態1における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3とから構成されている。
この蓄冷パネル101は、例えば冷蔵庫や保温庫など、機器内部の空間を所定温度に制御する機構を有する機器の内部および内壁の少なくとも一方に配設されるものである。そして、当該機器内部の空間には、内部空間温度とは異なる温度の熱負荷体(食材など)が配置される。
以下、本実施の形態1では、蓄冷パネル101を、例えば冷蔵庫などの被冷却物を冷却する冷凍・冷蔵機器に搭載し、例えば冷却済みの食材などの被冷却物と、例えば未冷却の食材などの熱負荷体とが、共存して蓄冷パネル101に置かれた場合を例に説明する。
なお、図1においては、蓄冷パネル101の上に、冷却済みの食材など、他の食材103が置かれているところに、未冷却の食材など(以下「熱源102」という。)が追加された状態を示している。
【0014】
蓄冷パネル101は、その上部に食材を置くことから、図1の水平方向が垂直方向よりも長くなるように形成され、かつ、垂直方向の長さは、できるだけ薄くなるように形成される。したがって、蓄冷剤層1と熱伝導層2は、蓄冷パネル垂直方向よりも水平方向のほうが長く形成されている。
【0015】
表面外層3は蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。つまり、表面外層3と蓄冷剤層1とが隣接し、熱伝導層2と蓄冷剤層1とが隣接している。
これにより、蓄冷パネル101の上面側から、表面外層3の表面(以下「A層」ともいう。)、蓄冷剤層1の表面(以下「B層」ともいう。)、熱伝導層2(以下「C層」ともいう。)、蓄冷剤層1の裏面(以下「D層」ともいう。)、表面外層3の裏面(以下「E層」ともいう。)の順に並んだ状態となる。
【0016】
なお、図1では、熱伝導層2が蓄冷剤層1に完全に覆われているが、熱伝導層2が、蓄冷パネル端面まで長く配置されたり、あるいは、蓄冷パネル101の片側にオフセットされていても良い。
【0017】
図2はこの発明の実施の形態1に係る熱移動の概略図である。
次に、図2を用いて、図1における熱源102から、熱源102と同じ側の表面外層3上に置かれ、すでに冷却済みの他の食材103への熱の移動量について説明する。
なお、図2においては、移動する熱量Qを矢印で示している。
【0018】
熱源102の熱は、温度差のある接触物、すなわち、周辺空気(QXY)および表面外層3の接触部分(QXA)に移動する。
表面外層3の接触部分に移動した熱(QXA)は、当該表面外層3を横方向(QAA)、および、下の蓄冷剤層1(QAB)とに移動する。
蓄冷剤層1に移動した熱(QAB)は、当該蓄冷剤層1の横方向(QBB)、および、熱伝導層2(QBC)へと移動する。
熱伝導層2に移動した熱(QBC)は、当該熱伝導層2の横方向(QCC)へと移動する。熱伝導層2の横方向へは速やかに熱伝導するため、ついで、蓄冷剤層1(D層)の熱伝導層2近傍全体へと移動する(QCD)。
蓄冷剤層1(D層)に移動した熱(QCD)は、表面外層3(E層)へと移動する(QDE)。
さらに、表面外層3(E層)へ移動した熱(QDE)は、庫内空気へと熱が移動する(QEY)。
ここで、熱伝導層2は均一な温度となっていると仮定すると、D層とE層の層内部の横方向には、温度差がないと考えることができ、熱移動は起こらない。
【0019】
一方、他の食材103への熱の移動は次のように考えられる。
庫内空気が上昇し、他の食材103よりも高温となった場合には、庫内空気の熱は、他の食材103へと移動する(QYZ)。
また、表面外層3から他の食材103に流入する(QAZ)。
表面外層3へは蓄冷剤層1から流入する(QBA)。
蓄冷剤層1へは熱伝導層2から流入する(QCB)。
【0020】
これらの値は、エネルギー保存則から、下式のような関係となる。
ここでは、各部分の熱容量は考慮せず、最終的に温度一定になるまでの移動量のみを考慮している。
なお、初期熱量を(QX)とし、他の食材103が受け取る熱量を(QZ)とする。
【0021】
(QX)=(QXY)+(QXA) ・・・1
(QXA)=(QAB)+(QAA) ・・・2
(QAB)=(QBC)+(QBB) ・・・3
(QBC)=(QCD)+(QCC) ・・・4
(QCD)=(QDE) ・・・5
(QDE)=(QEY) ・・・6
【0022】
(QZ)=(QYZ)+(QAZ) ・・・7
(QAZ)=(QAA)+(QBA) ・・・8
(QBA)=(QBB)+(QCB) ・・・9
(QCB)=(QCC) ・・・10
【0023】
ここで、他の食材103が受け取る熱量(QZ)を小さくすることを考える。
上記の式7および式8を加えると、(QZ)=(QYZ)+(QAA)+(QBA)となる。
【0024】
初期状態においては、庫内温度と他の食材103との温度差はないとみなせるので、(QYZ)は小さく、また、(QBA)は蓄冷剤層1が十分に冷却された初期状態においては、潜熱蓄積中のため小さい。
したがって、他の食材103が受け取る熱量(QZ)を小さくするには、表面外層3の横方向の移動熱量(QAA)が小さい、すなわち表面外層3の熱伝導率が小さいものであれば良い。
【0025】
なお、表面外層3は十分に薄く形成されているため、蓄冷剤層1側への熱移動は、表面外層3の水平方向への熱移動よりも早くなる。
【0026】
次に、熱源102から庫内空気への熱移動(QXY)+(QEY)を小さくすることを考える。
式1〜式6を加えると以下となる。
(QX)=(QXY)+(QAA)+(QBB)+(QCC)+(QEY
【0027】
すなわち、熱源102から庫内空気への熱移動は以下となる。
(QXY)+(QEY)=(QX)−((QAA)+(QBB)+(QCC))
また、式10より、以下となる。
(QXY)+(QEY)=(QX)−((QAA)+(QBB)+(QCB))
【0028】
ここから、熱源102から庫内空気への熱移動(QXY)+(QEY)を小さくするには、(QAA)+(QBB)+(QCB)を大きくすれば良いことがわかる。
前述のように、表面外層3は(QAA)が小さい素材を選択するので、(QBB)+(QCB)を大きくすれば良い。
蓄冷剤層1の横方向の移動熱量(QBB)は、蓄冷剤層1の熱伝導率に依存した定値であるから、(QCB)を大きくすれば良いことがわかる。
すなわち、熱伝導層2の横方向の移動熱量(QCC)を大きくすれば、熱源102から庫内空気への熱移動(QXY)+(QEY)を小さくすることができる。
【0029】
以上より、熱源102から他の食材103への熱の移動量を減少させるには、(QAA)を小さく、(QCC)を大きくすれば良い。
この結果、(QAA)<(QBB)<(QCC)の関係が導かれる。よって、本実施の形態1における表面外層3、蓄冷剤層1、および熱伝導層2は上記の関係を満たす構成とする。
すなわち、熱移動量は熱抵抗に依存するため、表面外層3の積層方向と直交する方向(横方向)の熱抵抗は、蓄冷剤層1の積層方向と直交する方向(横方向)の熱抵抗より大きく、熱伝導層2の積層方向と直交する方向(横方向)の熱抵抗は、蓄冷剤層1の積層方向と直交する方向(横方向)の熱抵抗より小さい構成とする。
【0030】
蓄冷剤層1は、水、リン酸塩や炭酸塩などの水溶性無機物、パラフィンなどの有機物、および、多糖類やポリビニルアルコールなどのゲル化剤、などのうち少なくとも1つ以上の物質からなる潜熱蓄冷剤を含む材料を用いる。
【0031】
例えば、当該蓄冷パネル101を、冷蔵庫や冷凍庫に適用する場合には、水またはパラフィンの固体と液体との間で、潜熱を蓄積するために、当該蓄冷パネル101を設置する空間(庫内温度)の設定温度よりも高い温度に融点を有するものが望ましい。
例えば、蓄冷剤層1に用いられる材料の融点は、庫内の設定温度の平均温度または最高温度よりも高い温度ものを用いる。
【0032】
また、例えば、当該蓄冷パネル101を保温庫など空間温度が高い機器に適用し、熱負荷体として低温物が想定される場合には、当該蓄冷パネル101を設置する空間の設定温度よりも低い温度に融点を有するものが望ましい。
【0033】
また、蓄冷剤の成分は、表面外層3や熱伝導層2と反応して変質したり、あるいは、これらを変質させたりしないことが望ましい。
すなわち、pHが5から9の中性域であり、また、温度による体積変化やガス発生などが少ないことが望ましい。
また、蓄冷パネル101の意匠性から、透明であることが望ましい。
また、蓄冷パネル101が損傷した場合に液漏れなどがないように、粘性が高く、常温で固体ないしゲル状であることが望ましい。
また、廃棄時の燃焼生成物として有害物が発生しにくいように塩素を含まず、また、生分解性が高いポリ乳酸などで構成されていることが望ましい。
【0034】
熱伝導層2は、例えば、金属、炭素、シリコンカーバイドなどが用いられる。いずれの素材についても、繊維状、薄膜状、粉末などを成形したもの、あるいは、このような形態の素材を樹脂中に分散したものを用いることができる。
金属としては、銅、アルミニウム、鉄などを用いることができて、耐腐食性を向上させるために、表面を不働態化したり、他の成分を混合した素材を用いることが望ましい。
炭素としては、規則的な2次元構造を有するグラフェンや黒鉛、規則的な3次元構造を有するカーボンナノチューブ、など導電性の高い構造を有することが望ましい。
熱伝導は、伝導方向の断面積が大きいほど速いが、空間の利用効率を高めるために、パネル全体を薄く形成することが求められることから、熱伝導層2についても薄くすることが望ましい。このために、上記の繊維や薄膜は、蓄冷パネル101水平方向(積層方向と直交する方向)への熱伝導が速いように、方向性をもって並んだ状態とすることが望ましい。
【0035】
表面外層3は、例えば、金属、金属酸化物、樹脂、紙などの有機繊維を強固に成形したものなどを用いることができる。ただし、前述のように当該表面外層3の熱伝導が速い場合には、冷却済みの他の食材103を加熱してしまうため、横方向(積層方向と直交する方向)には熱抵抗が大きく、縦方向(積層方向)には熱抵抗が小さいような形状とすることが望ましい。
すなわち、金属を用いる場合には、アルミニウム、鉄、銅などいずれの種類でも良く、コーティングあるいは薄膜を用いることで横方向の熱抵抗を増やし、強度を得るために樹脂フィルムなどに積層して組み合わせて使うことが望ましい。
樹脂を用いる場合には、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネートなどいずれの種類でも良く、横方向の熱抵抗を増やすために、樹脂内部に微小な中空バルーンを含有させたり、発泡樹脂を用いたりしても良い。
いずれの素材においても、薄く軽くかつ強度が高くなるように、表面にリブ形状などの構造を形成しても良い。
また、汚れを容易に洗浄できるように表面張力が低下するような塗装あるいは表面処理をしても良い。
【0036】
なお、本実施の形態1では、熱伝達層2が、蓄冷剤層1に内包している場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、熱伝達の速さがそれぞれ異なる層を少なくとも3層積層した構造を有し、熱負荷体が配置される位置に近い層より、遠い層の熱伝達の速さが速くなるように形成されているものであれば良い。
【0037】
以上のように本実施の形態においては、表面外層3は蓄冷剤層1を内包し、蓄冷剤層1の内部に熱伝導層2が配置され、表面外層3の熱移動量(QAA)が、蓄冷剤層1の熱移動量(QBB)より小さく、熱伝導層2の熱移動量(QCC)が、蓄冷剤層1の熱移動量(QBB)より大きい構成としている。
このため、熱源102下部の蓄冷剤層1に伝わった熱は、蓄冷剤層1内部に配置された熱伝導層2を通じて、蓄冷剤層1全体に伝導することができ、熱源102の熱を蓄冷剤層1の潜熱に変換し、熱源102から他の食材103への熱移動量を減少させることができる。
よって、冷蔵庫内に配置された蓄冷パネル101上または近傍に、熱源102と他の食材103とが、共存して置かれた場合であっても、熱源102から他の食材103への熱移動を抑制し、他の食材103の温度変化を抑制することができる。これにより、他の食材103の品質低下を抑制することができる。
【0038】
また、熱伝導層2の熱移動量(QCC)が大きいため、熱源102からの熱を、熱伝導層2の横方向へ速やかに分散し、蓄冷剤層1が熱を吸収する速度を早くすることができる。
【0039】
また、蓄冷パネル101を例えば保温庫など空間温度が高い機器に適用し、熱負荷体として低温物が想定される場合には、保温庫内に配置された蓄冷パネル101上または近傍に、熱負荷体としての低温物と、すでに加温済みの被保温物とが共存して置かれた場合であっても、熱負荷体から被保温物への熱移動を抑制し、被保温物の温度変化を抑制することができる。
【0040】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、本実施の形態2における蓄冷パネル101は、熱伝導層2が蓄冷剤層1の下部に配置されている。熱伝導層2を、蓄冷剤層1と表面外層3との間に配置した。
本実施の形態2においては、表面外層3の熱伝導が十分に少ないことが望ましい。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0041】
このような構成により、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
さらに、本実施の形態2においては、表面外層3のパネル下面側を省略し、熱伝導層2がパネル下面を構成することで、表面外層3の材料の使用量を低減させるとともに、熱伝導層2をパネル強度維持の目的で用いることができる。
【0042】
なお、熱伝導層2を、上記実施の形態1と同様に蓄冷剤層1の内部に配置し、さらに、熱伝導層2を、蓄冷剤層1と表面外層3との間に配置するようにしても良い。このような構成によっても、同様の効果を得ることができる。
【0043】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図4に示すように、本実施の形態3における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3と、断熱材層4とから構成されている。
表面外層3は、蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。
断熱材層4は、蓄冷剤層1と表面外層3との間の少なくとも一部配置される。例えば図4に示すように、蓄冷剤層1の下面側に配置される。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0044】
断熱材層4は、真空、空気などの気体、油などの液体、繊維や粉末、あるいは、これらを一体化するように固着させたものなどの固体のいずれでも良い。
断熱材層4を固体として用いる場合は、当該固体が連続または不連続な空隙を有し、その空隙が前記の真空、気体、液体などで満たされているものが望ましい。
繊維や粉末としては、シリカやアルミナなどのセラミック、パルプやポリプロピレンなどの有機物を用いることができる。
繊維は、パネル横方向に方向性を持つように敷かれていることが望ましい。
【0045】
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1の効果に加え、断熱材層4を設けることで、蓄冷パネル101下面からの熱放出が抑制することができる。
当該蓄冷パネル101の上下の空間が、異なる温度帯に設定されたり、あるいは、機器の壁部分を構成する際には、このように断熱材層4を組み合わせた形態とすることで、熱ロスを低減できる。
【0046】
なお、本実施の形態では、熱伝導層2を、上記実施の形態1と同様に蓄冷剤層1の内部に配置した場合を説明したが、これに限らず、上記実施の形態2と同様に蓄冷剤層1の下面、すなわち、蓄冷剤層1と断熱材層4との間に配置するようにしても良い。また、熱伝導層2を、蓄冷剤層1の内部、および、蓄冷剤層1と断熱材層4との間に配置するようにしても良い。このような構成によっても、同様の効果を得ることができる。
【0047】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図5に示すように、本実施の形態4における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3と、吸湿剤層5とから構成されている。
表面外層3は、蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。
吸湿剤層5は、蓄冷剤層1と表面外層3との間の少なくとも一部配置される。例えば図5に示すように、蓄冷剤層1の下面側に配置される。
また、表面外層3は、当該表面外層3と吸湿剤層5とが隣接する部分の少なくとも一部に、表面外層3の外部と吸湿剤層5とが通気可能な通気孔31を有する。例えば図5に示すように表面外層3の下面の一部に通気孔31が形成されている。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0048】
吸湿剤層5に用いられる吸湿剤としては、ゼオライトなどの結晶性の規則的多孔質材料、メソポーラスシリカなどの非晶質の規則的多孔質材料、活性炭や酸化物超微粒子の造粒体などの不規則な多孔質材料、ポリビニルアルコールやイオン交換樹脂などの親水性や極性の高い高分子材料を用いることができる。
また、これらの材料に、吸水性を付与するために炭酸塩などを含浸させたり、抗菌性を持たせるために銀イオンや有機系抗菌剤を混合したり、微細な粉状の脱落を避けるために接着性のコーティングを施したりしても良い。
【0049】
このような構成により、蓄冷パネル101を配置した空間において、吸湿剤層5は空間中の水分を吸着した状態を初期状態とすると、吸湿剤層5に伝わった蓄冷剤層1からの熱により、吸湿剤層5の吸着水分が吸着熱を吸収して蒸発し、通気孔31から蓄冷パネル101外へと放出される。
例えば、蓄冷パネル101を配置した空間が冷蔵庫の庫内の場合、放出された水分は、図示していない空気冷却用の熱交換器で凝縮し、空気中から除去される。
また、この動作に必要な水分は、冷蔵庫の開閉時の外気、あるいは、冷蔵庫にいれた食材などから供給される。
【0050】
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1の効果に加え、吸湿剤層5を設けることで、蓄冷剤層1の下面側に伝わった熱を、吸湿剤層5の水分を蒸発させるための潜熱に変換することができ、表面外層3の下面から放出される熱量(QEY)を減少させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、熱伝導層2を、上記実施の形態1と同様に蓄冷剤層1の内部に配置した場合を説明したが、これに限らず、上記実施の形態2と同様に蓄冷剤層1の下面、すなわち、蓄冷剤層1と吸湿剤層5との間に配置するようにしても良い。また、熱伝導層2を、蓄冷剤層1の内部、および、蓄冷剤層1と吸湿剤層5との間に配置するようにしても良い。このような構成によっても、同様の効果を得ることができる。
【0052】
実施の形態5.
図6はこの発明の実施の形態5に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図6に示すように、本実施の形態5における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3と、熱伝導板6とから構成されている。
表面外層3は蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。
さらに、表面外層3は、当該表面外層3より熱抵抗が小さい熱伝導部である熱伝導板6を有している。そして、この熱伝導板6は、熱伝導層2と熱的に接続されている。
熱伝導板6は、表面外層3の表面に配置される。例えば図6に示すように、熱源102が配置される表面外層3の上面側に設けられている。これにより、当該熱伝導板6と熱源102とが直接または間接的に接触する。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0053】
なお、熱伝導板6、表面外層3の表面に露出している部分の面積が、蓄冷剤層1の積層方向に対する投影面積より小さいことが望ましい。冷却済みの他の食材103などを載置するスペースを得るためである。
【0054】
このような構成により、熱源102の熱は、熱伝導板6を介して熱的に接続された熱伝導層2に速やかに伝わる。よって、熱源102の熱が速やかに蓄冷剤層1へと移動し、かつ、熱源102の直下だけでなく、より広い範囲の蓄冷剤層1へと熱が移動することができる。すなわち、(QXA)、(QAB)を大きくすることによって、熱源102から庫内空気への熱移動(QXY)が小さくなり、結果、庫内空気を介した他の食材103への熱移動(QYZ)を小さくすることができる。
【0055】
実施の形態6.
図7はこの発明の実施の形態6に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図7に示すように、本実施の形態6における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3、断熱材層4と、熱伝導板6とから構成されている。
表面外層3は蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。
表面外層3は、熱伝導板6を有し、熱伝導板6は、熱伝導層2と熱的に接続されている。
断熱材層4は、表面外層3の上面側のうち、熱伝導板6が配置されていない表面外層3直下に配置される。断熱材層4は上記実施の形態1と同様のものを用いることができる。
なお、断熱材層4が配置される部分の表面外層3を省略し、断熱材層4自体で蓄冷パネル101の上面を構成しても良い。
【0056】
さらに、本実施の形態の熱伝導層2は、積層面に延び出た1または複数の分岐部を有する。つまり、熱伝導層2は、蓄冷剤層1内部で分岐し、より表面積が大きい構造を有している。例えば、熱伝導層2の表面積が、蓄冷剤層1の積層方向に対する投影面積よりも大きい。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0057】
このような構成により、断熱材層4の上方に冷却済みの他の食材103を載置することで、蓄冷パネル101から他の食材103への熱移動を減少させることができる。
また、熱伝導層2に分岐部を設けたことで、熱伝導層2から蓄冷剤層1への熱伝達が速くなり、速やかに熱源102を冷却することができる。
【0058】
実施の形態7.
図8はこの発明の実施の形態7に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図8に示すように、本実施の形態7における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3と、熱伝導板6とから構成されている。
熱伝導板6は上記実施の形態5と同様である。その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0059】
本実施の形態7においては、熱伝導板6を1個以上備える。蓄冷剤層1は1個以上に分離している。また、表面外層3は蓄冷剤層1および熱伝導層2とともに、蓄冷パネル101下面に突出した構造を有している。
【0060】
このような構成により、蓄冷剤層1に一旦蓄えられた潜熱が、蓄冷パネル101下面への熱放出し易くすることができる。
また、蓄冷剤層1が不透明な素材であっても、図8に示すように蓄冷剤層1を断続的に形成することによって、蓄冷パネル101は光透過性を備えることができ、これにより蓄冷パネル101を設置している空間の照明を遮ることが無くなるので、蓄冷パネル101上に設けられた熱源102の確認が容易になる。
【0061】
実施の形態8.
図9はこの発明の実施の形態8に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図9に示すように、本実施の形態8における蓄冷パネル101は、蓄冷剤層1と、熱伝導層2と、表面外層3と、断熱部7とから構成されている。
表面外層3は蓄冷剤層1を内包する。熱伝導層2は蓄冷剤層1の内部に配置される。
さらに表面外層3は、当該表面外層3より熱抵抗が大きい断熱部7を有する。例えば、図9に示すように表面外層3の上面側のうち一部に断熱部7を設けている。この断熱部7は、表面外層3を、熱的に分離した2以上の部分に分割するものである。
断熱部7の素材としては、断熱材層4で挙げた素材のうち、固体で構成される素材を用いることができる。
また、断熱部7の素材として、表面外層3と同じ素材を用い、微細な形状を形成して沿面距離を長くとることによって、断熱性を高めてるようにしても良い。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態1と同様である。
【0062】
前述のように、熱源102の熱が他の食材103への移動するのを抑制するために、表面外層3の熱伝達率が小さい材料で構成することが望ましい。
このように、表面外層3に断熱部7を設けることにより、表面外層3の表面を介した熱移動をより抑制することができる。
【0063】
図10はこの発明の実施の形態8に係る蓄冷パネルの斜視図である。図10(A)〜(B)において、上述した断熱部7を設けた蓄冷パネル101の例を示している。
図10に示すように、断熱部7によって蓄冷パネル101上面(表面外層3の上面側)が2個以上に熱的に分割され、断熱部7で囲まれた部分の全て、あるいは一部に熱伝導板6が配置されている。すなわち、熱伝導部である熱伝導板6は、表面外層3の表面のうち、熱的に分離された2以上の部分の少なくとも1つに配置されている。
熱伝導板6、断熱部7、および、これ以外の表面外層3の上面部分は、本蓄冷パネル101のユーザーが容易に判別できるように、色調や手触りなどが異なるような外観を有することが望ましい。
【0064】
このような構成により、当該蓄冷パネル101を利用するユーザーは、当該蓄冷パネル101が設置されている空間の温度と異なる温度の食材や物体などの熱源102(熱負荷体)を、蓄冷パネル101上に置くときに、熱伝導板6上に熱源102を置けば良いことが容易に判断できて、使い勝手が良くなる。
【0065】
実施の形態9.
図11はこの発明の実施の形態9に係る冷蔵庫内部の概略図である。
本実施の形態9においては、蓄冷パネル101を搭載した冷蔵庫について説明する。
図11に示すように、冷蔵庫は、被冷却物を貯蔵する庫内(以下「貯蔵スペース201」という。)と、貯蔵スペース201の空気を冷却する冷却器203と、貯蔵スペース201と冷却器203とを接続する冷気風路202とを備えている。
このような構成により、冷蔵庫の庫内空気は、冷却器203によって冷却され、貯蔵スペース201から冷気風路202を通じて循環する。
また、蓄冷パネル101は、食材などを載置するパネルとして貯蔵スペース201に配置される。
【0066】
図11に示すように、本実施の形態9における蓄冷パネル101は、上記実施の形態5の構成(図6)に加え、熱伝導層B22を備えている。
熱伝導層B22は、蓄冷剤層1と表面外層3との間であって、蓄冷剤層1の下面側に配置される。つまり、上述した蓄冷剤層1の内部に配置される熱伝導層2(熱伝導層A21)に加えて、さらに熱伝導層B22を備えている。
そして、熱伝導層B22は、表面外層3の外部まで突き出た1または複数の突出部を有する。この突出部を介して、蓄冷剤層1と貯蔵スペース201内空気との間を熱的に接続する。
なお、その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態5と同様である。
なお、蓄冷パネル101下面側に通気スペースを確保するために、熱伝導層B22の下側に、仕切り板を設けても良い。
【0067】
このような構成により、蓄冷剤層1に蓄えられた熱が熱伝導層B22に移動すると、蓄冷パネル101下面から、蓄冷パネル101下面側を通過する空気へと速やかに排熱され、冷却器203へと導かれる。
したがって、蓄冷剤層1への蓄冷と、熱伝導層B22への熱伝達とのタイムラグを利用して、庫内空気への熱移動(QEY)を遅らせ、庫内空気温度の変動幅を抑制することができる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、一旦、熱を吸収して潜熱を蓄えた後、この熱が蓄冷パネル101裏面側に再放出される速度を制御することによって周辺温度の変動を抑制することができる。
【0069】
実施の形態10.
図12はこの発明の実施の形態10に係る冷蔵庫内部の概略図である。
図12に示すように、本実施の形態10における蓄冷パネル101は、熱伝導層B22の少なくとも一部が、冷気風路202に配置される。
熱伝導層B22は、冷気風路202まで延長され、排熱部23が冷気風路202内部に形成される。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態9と同様である。
なお、図12においては、排熱部23が冷却器203の風上側に配置されているが、風下側に配置しても良い。
【0070】
このような構成により、上記実施の形態9の効果に加え、貯蔵スペース201に蓄冷パネル101からの熱が排熱されるのを避けることができる。よって、庫内空気への熱移動(QEY)を減少させることができ、他の食材103の温度変化を抑制することができる。
【0071】
なお、上記実施の形態9および10においては、蓄冷パネル101は上記実施の形態5の構成に熱伝導層B22を加えた構成を用いたが、本発明はこれに限らず、上記実施の形態1〜8の何れの蓄冷パネル101を用いても良い。また、上記実施の形態1〜8の何れかの蓄冷パネル101の構成に熱伝導層B22を加える構成としても良い。
【0072】
なお、上記実施の形態9および10においては、蓄冷パネル101は、食材などを載置するパネルとして用いる場合を説明したが、本発明はこれに限らず、貯蔵スペース201を形成する内壁や扉に用いても良い。このような構成であっても同様の効果を奏することができる。
【0073】
実施の形態11.
図13はこの発明の実施の形態11に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図13に示すように、本実施の形態11における蓄冷パネル101は、上記実施の形態5の構成(図6)に加え、蓄冷剤層1は、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とを有している。
蓄冷剤層A11は、熱伝導層2を内包している。蓄冷剤層B12は蓄冷剤層A11を内包している。
また、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とに用いられる蓄冷剤は、融点、熱容量、および熱伝導率の少なくとも1つが異なる蓄冷剤を用いている。
つまり、熱伝導層2と隣接する層の蓄冷剤の種類と、熱伝導層2と隣接しない層の蓄冷剤の種類とが異なる。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態5と同様である。
【0074】
なお、本実施の形態では、2種類の蓄冷剤により2層構造とする場合を説明するが、これに限らず、2層以上の構造として、任意の種類の蓄冷材を用いても良い。
【0075】
例えば、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とで異なる熱伝導率の蓄冷剤を用いることにより、熱伝達速度が蓄冷剤層A11>蓄冷剤層B12とする。
このような構成にすることにより、蓄冷剤層B12から他の食材103への熱伝達を抑制することができる。
【0076】
なお、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12の特性は、上記に限定されることはなく、蓄冷パネル101の使用条件に応じて、任意に選択しても良い。
【0077】
実施の形態12.
図14はこの発明の実施の形態12に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
図14に示すように、本実施の形態12における蓄冷パネル101は、上記実施の形態9で説明した蓄冷パネル101の構成(図11)に加え、蓄冷剤層1は、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とを有している。
蓄冷剤層A11は、蓄冷パネル101の上面側に配置され、熱伝導層A21を内包している。蓄冷剤層B12は、蓄冷パネル101の下面側に配置され、熱伝導層B22を内包している。
蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とに用いられる蓄冷剤は、融点、熱容量、および熱伝導率の少なくとも1つが異なる蓄冷剤を用いている。
つまり、熱伝導層A21と隣接する層の蓄冷剤の種類と、熱伝導層B22と隣接する層の蓄冷剤の種類とが異なる。
その他の構成、各層の熱移動量は上記実施の形態9と同様である。
【0078】
上記実施の形態1で説明したように、熱源102からの熱は蓄冷剤層1の潜熱として蓄熱される。つまり本実施の形態12においては、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とに蓄熱される。
例えば蓄冷パネル101を冷蔵庫に搭載した場合、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とに蓄熱された熱を排熱して、蓄冷パネル101を冷却器203などにより再冷却する。
このような蓄冷パネル101に蓄熱した熱を排熱して再冷却する際に、空気温度と熱伝導層B22との温度差、すなわち空気温度と蓄冷剤層B12との温度との差が大きいほど、空気への熱移動量が大きくなり、冷却器203の負荷が大きくなる。
【0079】
そこで、本実施の形態では、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12とで異なる融点の蓄冷剤を用いることにより、融点が蓄冷剤層A11<蓄冷剤層B12とする。
このような構成にすることにより、蓄冷剤層B12は高温な融点にとどまり、空気との温度差が小さい状態を維持しながら相転移が起こる。
したがって、蓄冷剤層1から空気への熱移動が一定化し、冷却器203の熱負荷が小さくなる。よって、冷却器203の運転に必要なエネルギーを削減することができ、省エネな運転が可能となる。
【0080】
なお、蓄冷剤層A11と蓄冷剤層B12の特性は、上記に限定されることはなく、熱容量、あるいは熱伝達速度が異なる成分を、蓄冷パネル101の使用条件に応じて、任意に選択しても良い。
【0081】
実施の形態13.
図15はこの発明の実施の形態13に係る冷蔵庫内部の概略図である。
本実施の形態13においては、上述した実施の形態1〜12の何れかに記載の蓄冷パネル101を冷蔵庫に搭載している。そして、蓄冷パネル101は、設定温度帯の異なるコンパートメントの間に配置される。
図15に示すように、例えば、冷凍室と冷蔵室との間などドアが異なり、設定温度帯の異なるコンパートメントの間に設置する。
【0082】
このような構成により、冷凍室内に高温の食材(熱源102)を置いた際に、冷凍室内の他の食材103などの温度上昇や熱負荷変動を抑制することができる。また、冷凍室内から冷蔵室内への熱移動を減少させることができる。したがって、冷凍室内の熱源102による熱負荷変動や他の食材の温度上昇を抑制することができる。
【0083】
実施の形態14.
図16はこの発明の実施の形態14に係る冷蔵庫内部の概略図である。
本実施の形態14においても、上述した実施の形態1〜12の何れかに記載の蓄冷パネル101を冷蔵庫に搭載している。そして、蓄冷パネル101は、冷蔵庫を複数のコンパートメントに仕切る仕切板および内壁、並びに熱負荷体が載置されるパネルの少なくとも1つとして用いられる。
図16に示すように、蓄冷パネル101を、ドアを同じくするコンパートメント内部の仕切り板として配置する。
【0084】
このような構成により、蓄冷パネル101上に置かれた熱源102による熱負荷変動や他の食材103の温度上昇を抑制することができる。
【0085】
なお、上記実施の形態1〜14では、蓄冷パネル101を例えば冷蔵庫や保温庫などに搭載した場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、機器内部の空間を所定温度に制御する機構を有する冷凍・冷蔵機器の内部および内壁の少なくとも一方に蓄冷パネル101を配設することができる。
そして、当該機器内部の空間に、内部空間温度とは異なる温度の熱負荷体が配置された際、当該熱負荷体によって、機器内部に配置された共存物の温度や、機器内部の空気の温度が変化するのを抑制することができる。
【0086】
また、蓄冷パネル101を配置した空間温度を制御するシステム(例えば食品を冷凍・冷蔵保存する倉庫)に用いることで、蓄冷パネル101下面あるいは蓄冷パネル101周辺の空気への熱移動を抑制し、熱負荷をより一定化することができ、当該システムの省エネ化に貢献できる。
【0087】
このように、蓄冷パネル101上に置かれた局部的な熱負荷体から当該蓄冷パネル101上に置かれた他の被冷却物(被保温物を含む)への熱移動を最小限にとどめることができる。また、熱負荷を蓄冷剤へと効率良く伝えることができ、熱負荷の冷却(または加温)速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明の実施の形態1に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る熱移動の概略図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態5に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態6に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態7に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態8に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態8に係る蓄冷パネルの斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態9に係る冷蔵庫内部の概略図である。
【図12】この発明の実施の形態10に係る冷蔵庫内部の概略図である。
【図13】この発明の実施の形態11に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態12に係る蓄冷パネルを模式的に示す断面図である。
【図15】この発明の実施の形態13に係る冷蔵庫内部の概略図である。
【図16】この発明の実施の形態14に係る冷蔵庫内部の概略図である。
【符号の説明】
【0089】
1 蓄冷剤層、2 熱伝導層、3 表面外層、4 断熱材層、5 吸湿剤層、6 熱伝導板、7 断熱部、11 蓄冷剤層A、12 蓄冷剤層B、21 熱伝導層A、22 熱伝導層B、23 排熱部、31 通気孔、101 蓄冷パネル、102 熱源、103 他の食材、201 貯蔵スペース、202 冷気風路、203 冷却器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達の速さがそれぞれ異なる層を少なくとも3層積層した積層構造を有し、
熱負荷体が配置される位置からの前記積層構造内での熱伝達は、前記積層構造の積層方向よりも積層方向に直交する方向の方が遅くなるよう形成されていることを特徴とする蓄冷パネル。
【請求項2】
前記積層構造は、
片側に熱負荷体が配置される表面外層と、
片側に前記表面外層、反対側に熱伝達層を有する蓄冷剤層と、を備え、
前記表面外層の積層方向と直交する方向の熱抵抗は、前記蓄冷剤層の積層方向と直交する方向の熱抵抗より大きく、
前記熱伝導層の積層方向と直交する方向の熱抵抗は、前記蓄冷剤層の積層方向と直交する方向の熱抵抗より小さいことを特徴とする請求項1に記載の蓄冷パネル。
【請求項3】
前記積層構造は、
片面に熱負荷体が配置される表面外層と、
前記表面外層に内包されている蓄冷剤層と、
熱伝導層と、を備え、
前記熱伝導層を、前記蓄冷剤層の内部、又は/及び、前記蓄冷剤層と前記表面外層の他方面との間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の蓄冷パネル。
【請求項4】
前記積層構造は、
片面に熱負荷体が配置される表面外層と、
前記表面外層に内包されている蓄冷剤層と、
熱伝導層と、
前記蓄冷剤層と前記表面外層との間の少なくとも一部に配置された断熱材層とを備え、
前記熱伝導層を、前記蓄冷剤層の内部、又は/及び、前記蓄冷剤層と前記断熱材層との間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の蓄冷パネル。
【請求項5】
前記積層構造は、
片面に熱負荷体が配置される表面外層と、
前記表面外層に内包されている蓄冷剤層と、
熱伝導層と、
前記蓄冷剤層と前記表面外層との間の少なくとも一部に配置された吸湿剤層とを備え、
前記熱伝導層を、前記蓄冷剤層の内部、又は/及び、前記蓄冷剤層と前記吸湿剤層との間に配置し、
前記表面外層は、当該表面外層と前記吸湿剤層とが隣接する部分の少なくとも一部に、前記表面外層の外部と前記吸湿剤層とが通気可能な通気孔を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄冷パネル。
【請求項6】
前記表面外層の積層方向と直交する方向の熱抵抗は、前記蓄冷剤層の積層方向と直交する方向の熱抵抗より大きく、
前記熱伝導層の積層方向と直交する方向の熱抵抗は、前記蓄冷剤層の積層方向と直交する方向の熱抵抗より小さいことを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項7】
前記表面外層は、当該表面外層より熱抵抗が小さい熱伝導部を有し、
該熱伝導部は、前記熱伝導層と熱的に接続されたことを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項8】
前記熱伝導部は、前記表面外層の表面に配置され、当該表面外層の表面に露出している部分の面積が、前記蓄冷剤層の積層方向に対する投影面積より小さいことを特徴とする請求項7記載の蓄冷パネル。
【請求項9】
前記熱伝導層は、積層面に延び出た1又は複数の分岐部を有することを特徴とする請求項2〜8の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項10】
前記熱伝導層の表面積が、前記蓄冷剤層の積層方向に対する投影面積よりも大きいことを特徴とする請求項2〜9の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項11】
前記表面外層は、当該表面外層より熱抵抗が大きい断熱部を有し、
該断熱部は、前記表面外層を、熱的に分離した2以上の部分に分割することを特徴とする請求項2〜10の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項12】
前記熱伝導部は、前記表面外層の表面のうち、前記熱的に分離された2以上の部分の少なくとも1つに配置されたことを特徴とする請求項11記載の蓄冷パネル。
【請求項13】
前記熱伝導層は、前記表面外層の外部まで突き出た1又は複数の突出部を有することを特徴とする請求項2〜12の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項14】
前記蓄冷剤層は、融点、熱容量、及び熱伝導率の少なくとも1つが異なる蓄冷剤を用いた2以上の層を有し、
前記熱伝導層と隣接する層の蓄冷剤の種類と、前記熱伝導層と隣接しない層の蓄冷剤の種類とが異なることを特徴とする請求項2〜13の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項15】
前記熱伝導層は、前記蓄冷剤層の内部、及び前記蓄冷剤層と前記表面外層との間に配置され、
前記蓄冷剤層は、融点、熱容量、及び熱伝導率の少なくとも1つが異なる蓄冷剤を用いた2以上の層を有し、
前記蓄冷剤層の内部に配置された前記熱伝導層と隣接する層の蓄冷剤の種類と、
前記蓄冷剤層と前記表面外層との間に配置された前記熱伝導層と隣接する層の蓄冷剤の種類とが異なることを特徴とする請求項2〜13の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項16】
前記蓄冷剤層は、少なくとも潜熱蓄冷剤を含む材料を用いることを特徴とする請求項2〜15の何れかに記載の蓄冷パネル。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の蓄冷パネルを備えたことを特徴とする冷凍・冷蔵装置。
【請求項18】
前記蓄冷剤層に用いられる材料の融点は、当該蓄冷パネルが配置された庫内の設定温度の平均温度又は最高温度よりも高いことを特徴とする請求項17記載の冷凍・冷蔵装置。
【請求項19】
前記蓄冷パネルは、当該冷凍・冷蔵装置を複数のコンパートメントに仕切る仕切板及び内壁、並びに熱負荷体が載置されるパネルの少なくとも1つとして用いられることを特徴とする請求項17又は18記載の冷凍・冷蔵装置。
【請求項20】
前記蓄冷パネルは、設定温度帯の異なるコンパートメントの間に配置されることを特徴とする請求項17〜19の何れかに記載の冷凍・冷蔵装置。
【請求項21】
被冷却物を貯蔵する庫内と、
庫内空気を冷却する冷却器と、
前記庫内と前記冷却器とを接続する冷気風路と
を備え、
前記蓄冷パネルの熱伝導層の少なくとも一部が、前記冷気風路に配置されることを特徴とする請求項17〜20の何れかに記載の冷凍・冷蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−43779(P2010−43779A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207567(P2008−207567)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】