説明

蓄電装置の温度調節装置

【課題】装置自体の配置スペースの効率化を図りつつ、好適な温度調整が可能な蓄電装置の温度調節装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される蓄電装置に車室内の空気を通気する通気ファン23と、通気ファン23に車室内の空気を導く吸気流路21と、蓄電装置に通気した空気を車室内に排気する排気流路22と、蓄電装置に通気される空気を温めるための加熱手段とを備え、蓄電装置の温度が所定の温度よりも低い場合に、蓄電装置に通気される空気を加熱手段により温めて蓄電装置の温度調整を行う温度調節装置であって、吸気流路21及び排気流路22に接続され、排気流路22から車室に排気される空気を吸気流路21へ循環させる循環流路25と、循環流路25を通じた吸気流路21及び排気流路22を流通する空気の再循環経路を形成するための流路切替手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両に代表されるように、モータジェネレータから得られる駆動力を車両の推進力として利用する車両には、充放電可能な走行用の2次電池等の蓄電装置、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池が搭載されており、蓄電装置に蓄積された電力をインバータ回路で駆動用電力に変換して取り出し、逆に発電電力を2次電池に充電したりする。
【0003】
そして、これら蓄電装置は、動作環境温度によってその性能が変化するため、例えば、特許文献2に記載のように、充放電に際する発熱を冷却することで、電池の性能の劣化等を防止することが提案されている。
【0004】
一方で蓄電装置は、冬季などの低温状態の温度環境下では、常温時と比べて同一出力の場合であっても低温時の方が、電圧低下が大きくなる。このため、連続出力可能時間が短くなり蓄電装置から取り出せる電力量が著しく低下することから、蓄電装置の温度が低温状態になった場合、蓄電装置をヒータ等で加熱して常温時の通常の性能を発揮できるようにする方法が知られている。
【0005】
特許文献1では、ヒータ等で温められた空気で蓄電装置を加熱するとともに、加熱効率を高めるために再循環路を形成した2次電池の温度調節装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−323810号公報(図1、図2等)
【特許文献2】特開平10−12287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1は、吸気管路と排気管路との間にヒータが取り付けられた循環管路を設けるとともに、吸気管路と循環管路との間に吸気切替弁を、排気管路と循環管路との間に排気切替弁を各々配置している。このため、吸気切替弁及び排気切替弁の制御により、循環管路を通じた循環経路を構成し、2次電池の加熱効率を向上させつつ、通気ファンの騒音を低減させることができる。
【0008】
一方、ハイブリット車両は、他の車両に比べて蓄電装置やその他の多くの装置等を搭載しなければならないため、各装置の配置スペースの効率化は重要となるが、リアシートの後方の空間に切替弁及び管路が配置される上記特許文献1の温度調節装置は、十分なスペースの効率化が図られていない課題を有する。
【0009】
そこで、本発明は、装置自体の配置スペースの効率化を図りつつ、好適な温度調整が可能な蓄電装置の温度調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの観点における温度調節装置は、車両に搭載される蓄電装置に車室内の空気を通気する通気ファンと、通気ファンに車室内の空気を導く吸気流路と、蓄電装置に通気した空気を車室内に排気する排気流路と、蓄電装置に通気される空気を温めるための加熱手段とを備え、蓄電装置の温度が所定の温度よりも低い場合に、蓄電装置に通気される空気を加熱手段により温めて蓄電装置の温度調整を行う温度調節装置であって、吸気流路及び排気流路に接続され、排気流路から車室に排気される空気を吸気流路へ循環させる循環流路と、循環流路を通じた吸気流路及び排気流路を流通する空気の再循環経路を形成するための流路切替手段とを有する。そして、流路切替手段を、吸気流路に空気を取り込むための吸気流路の第1流入面が位置する車室との境界、及び排気流路から車室内に空気を排気するための排気流路の第1流出面が位置する車室との境界に各々配置したことを特徴とする。
【0011】
上記第1流入面及び上記循環流路と上記吸気流路との接続部における上記循環流路から上記吸気流路に上記空気が流入する第2流入面を隣接して配置し、かつ上記第1流出面及び上記循環流路と上記排気流路との接続部における上記排気流路から上記循環流路に上記空気が流出する第2流出面を隣接して配置することが好ましい。
【0012】
また、上記流路切替手段は、上記第1流入面と第2流入面との間に配置され、一方を流入面を介した空気の流入を妨げ、他方の流入面を介した空気の流入を許容する第1切替弁と、上記第1流出面と第2流出面との間に配置され、一方の流出面を介した空気の流出を妨げ、他方の流出面を介した空気の流出を許容する第2切替弁とを有するように構成することができる。
【0013】
また、温度検出手段により検出される上記蓄電装置の温度に基づいて上記流路切替手段を制御する制御手段をさらに有し、該制御手段が上記蓄電装置の温度が所定の温度よりも低い場合に、上第1切替弁を上記第1流入面からの上記空気の流入を妨げる位置に制御して上記第2流入面を介した空気の流入を許容させる第1制御と、上記第2切替弁を上記第1流出面への上記空気の流出を妨げる位置に制御して上記第2流出面を介した空気の流出を許容させる第2制御を遂行するように構成することができる。
【0014】
また、上記循環流路を後部座席の背もたれ部の背面側又は該背もたれ部内部に配置することができる。
【0015】
また、上記流路切替手段を、上記吸気流路に空気を取り込むための上記吸気流路の第1流入面が位置する上記座部下方の上記車室との境界、及び上記排気流路から上記車室内に空気を排気するための上記吸気流路の第1流出面が位置する上記座部下方の上記車室との境界に各々配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流路切替手段が車室との境界に配置されているため、配置スペース効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0018】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1実施例に係る温度調整装置を搭載した車両の斜視図であり、図1(b)は、車両の車室内を上方から見た外観斜視図である。また、図2は、温度調整装置の構成を示した図である。
【0019】
図1に示すように、車両駆動用の2次電池(蓄電装置)20は、車両10のリアシート12後方のトランク床板の下に搭載されている。2次電池20は、必要な電力容量(電圧値)が得られるように、単電池(たとえば出力電圧が1.2Vのバッテリセル)を複数(たとえば6個)接続して一体的に連結して構成された複数のバッテリモジュールと、当該バッテリモジュールを覆うケース部材で構成されている。
【0020】
複数の各バッテリモジュールの間及びバッテリモジュールとケース部材との間には冷却用空気の流路が形成されており、2次電池20内を空気が流通するようになっている。本実施例の温度調節装置は、客室11内のリアシート12の脇に設けられた空気取り入れ口13から当該客室11内の空気を冷却用空気として取り込み、冷却用空気が吸気流路である吸気管路21を通って2次電池20に通気される。2次電池20に通気された空気は、バッテリモジュールの隙間及びケース部材との隙間を流れてバッテリモジュールを冷却し、排気流路である排気管路22から客室11内のリアシート12の脇に設けられた空気排出口14から再び客室11に排出される。
【0021】
吸気管路21には通気ファン23が設けられ、通気ファン23に吸い込まれた客室11内の空気が2次電池20に通気される。通気ファン23としては、モータ駆動の遠心式又は軸流式のファン或いはブロワを用いることができる。
【0022】
また、本実施例の吸気管路21と排気管路22とが循環流路としての循環管路25によって接続されている。循環管路25及び吸気管路21との合流部には吸気切替弁26が配設され、排気管路22と循環管路25の分岐部には排気切替弁27が配設されている。また、吸気管路21における管路内であって、通気ファン23と2次電池20との間には、空気を加温するヒータ24が配設されている。
【0023】
吸気切替弁26は、空気の流れを客室11から通気ファン23(2次電池20)に向かう方向と循環管路25から吸気管路21に向かう方向とに切り替える一つの板状の弁体を有し、吸気切替弁26の外側に隣接してその弁体を駆動するアクチュエータ40が取り付けられている。つまり、一方の方向からの空気の流れを遮断し、他方の方向からの空気の流れを許容する流路切替弁である。排気切替弁27も同様に、空気の流れを排気管路22から客室11に向かう方向と排気管路22から循環管路25に向かう方向とに切り替える一つの板状の弁体を有しおり、排気切替弁27の外側に隣接してその弁体を駆動するアクチュエータ41が取り付けられている。このように切替弁26、27は、循環管路25を通じた吸気管路21及び排気管路22を流通する空気の再循環経路、及び循環管路25を介さずに客室11から取り込んだ空気を再度客室11に排気する冷却用経路を形成する流路切替手段として機能する。
【0024】
そして、本実施例の温度調節装置は、2次電池20の温度が所定温度よりも低い場合に、吸気切替弁26と排気切替弁27とを協調して制御し、冷却用空気流路を排気管路22から再循環管路25を経て吸気管路21に戻る再循環経路に切替える。すなわち、循環管路25を介した閉循環経路を形成し、ヒータ24により温められた空気を閉循環させることで、2次電池20を通常の性能を発揮できる適切な温度(例えば15°〜25°)にまで迅速に昇温させる。
【0025】
ここで、図1及び図2を参照して本実施例の温度調節装置の流路切替弁及び各管路の配置について説明する。
【0026】
本実施例の吸気切替弁26は、吸気管路21に客室11内の空気を流入させるために客室11との境界に設けられたリアシート12の脇の空気取り入れ口13付近、すなわち、吸気管路21に客室11内の空気を取り込むための当該吸気管路21の流入面(第1流入面)が位置する当該客室11との境界に配設される。排気切替弁27も同様に、排気管路22から客室11へ空気が排気させるために客室11との境界に設けられたリアシート12の空気排出口14付近(排気管路22から客室11内に空気を排気するための当該排気管路22の流出面(第1流出面)が位置する当該客室11との境界)に配設される。そして、本実施例の循環管路25は、リアシート12の背面側を当該リアシート12の左右方向(車両10の幅方向)に渡って配置されるとともに、吸気管路21と循環管路25との合流部及び排気管路22と循環管路25との分岐部の各々が、切替弁26、27が配置された空気取り入れ口13及び空気排出口14付近に各々配置される。
【0027】
より具体的に説明すると、吸気管路21と循環管路25との合流部(接続部)における循環管路25から吸気管路21に空気が流入する流入面(第2流入面)102が、吸気管路21の流入面101に隣接し、本実施例の吸気切替弁26が流入面101と流入面102との間に挟まれて配設される。一方、排気管路22と循環管路25との分岐部(接続部)における排気管路22から循環管路25に空気が流出する流出面104が、排気管路22の流出面103に隣接し、本実施例の排気切替弁27が流出面103と流出面104との間に挟まれて配設される。
【0028】
そして、吸気管路21及び排気管路22は、リアシート12後方のトランク床板の下に搭載されている2次電池20に接続され、循環管路25は、リアシート12の左右方向に渡って当該リアシート12の背面に当接又は接近するように配設される。図1(b)に示すように本実施例の温度調節装置の吸気管路21及び排気管路22は、車室(客室11)には露出されずに車室と車両本体との間に位置し、循環管路25が当該リアシート12の背面に位置し、上面視矩形状の配管構成となっている。
【0029】
このように本実施例の温度調節装置は、流路切替手段である吸気切替弁26及び排気切替弁27の各々が、吸気管路21に客室11内の空気を取り込むための当該吸気管路21の流入面(第1流入面)が位置する当該客室11との境界に及び排気管路22から客室11内に空気を排気するための当該排気管路22の流出面(第1流出面)が位置する当該客室11との境界に各々配設される。このため、吸気切替弁26及び排気切替弁27を効率良く配置することが可能となる。
【0030】
さらに、吸気切替弁26及び排気切替弁27が客室11との境界に設けられることから、循環管路25をリアシート12の背面の左右方向に効率良く配置することが可能となり、装置全体の配置スペースの効率化を図ることができる。この場合、循環管路25をリアシートの背もたれ部の内部に配置することも可能であり、さらに配置スペースの効率化を図ることが可能となる。
【0031】
すなわち、上記特許文献1のように、吸気管路及び排気管路の経路途中に切替弁を配置している場合、吸気管路及び排気管路の各々に切替弁を設けるためのスペースを確保しなければならず、かつ2次電池20の上方におけるリアシート12の背面までの車室空間において循環管路25の配置スペースを確保しなければならい。これに対して本実施例では、2次電池20の上方であってリアシート12の背面までの車室空間において各管路が配設されておらず、効率の良い配置を実現できる。
【0032】
また、吸気切替弁26及び排気切替弁27が客室11との境界に設けられていることから、各管路21、22及び25の管路内に切替弁を配置するよりも装置が簡略化されるとともに、装置の設置作業やメンテナンス等が軽減される。
【0033】
次に、図2を参照して本実施例の温度調節装置について詳細に説明する。図2に示すように、吸気管路21には吸気温度センサ50が取り付けられ、2次電池20にも2次電池温度センサ51が取り付けられている。これらのセンサは、内部に差し込まれて固定された熱電対のようなセンサやサーミスタなどの測温抵抗である。
【0034】
各ハードウェアはそれぞれ、吸気切替弁インターフェース52、ヒータインターフェース54、吸気温度センサインターフェース56、通気ファン駆動インターフェース58、2次電池温度センサインターフェース60、排気切替弁インターフェース62を介してCPUを備える制御部64に接続されている。これらの各インターフェースは、各ハードウェアからの信号を制御部への入力信号に変換したり、制御部64からの指令信号を各ハードウェアの駆動信号に変換したりするものである。また。制御部64は制御用データを記憶している記憶部66とデータバスにて接続されている。
【0035】
制御部64は、吸気切替弁インターフェース52及び排気切替弁インターフェース62を通じてアクチュエータ40、41を制御し、吸気切替弁26と排気切替弁27の協調動作によって再循環する空気流量と2次電池20を通気する空気流量の割合を調整する。冷却用空気流路が形成されている状態では、循環管路25を流通する空気流量の割合はゼロであり、再循環経路が形成されている状態では、2次電池20を通気する空気流量の全量が再循環となる。また、制御部64は、各切替弁26、27を各流入面の中間位置等に制御することにより、2次電池20を通気する空気流量の一部が循環管路25を通じて再循環するようにすることも可能である。
【0036】
図3は、本実施例の温度調整装置の動作を説明するためのフローチャートである。まず、制御部64は、2次電池温度センサ51の検出温度信号データを2次電池温度センサインターフェース60から取得する(ステップS101)。続いて、制御部64は、2次電池20の温度が所定の温度、例えば5℃等、よりも低いかどうかを判断する(ステップS102)。制御部64は、2次電池の温度が所定の温度よりも低いと判断した場合には、通気ファン駆動インターフェース58に通気ファン23を駆動する駆動指令を出力する。なお、このときの駆動指令は、吸気管路21に空気取り入れ口13から客室11内の空気が入り込んでくる程度の短時間、例えば10秒間の駆動命令である。
【0037】
通気ファン駆動インターフェース58は、この駆動指令に従って通気ファン23を短時間だけ回転させて、すぐに停止させる。通気ファン23が回転すると、吸気管路21には空気取り入れ口13から客室11内の空気が入り込む(ステップS201)。吸気管路21に取り込まれた空気の温度は、吸気温度センサ50によって検出され、制御部64は、検出信号データを吸気温度センサインターフェース56から取得する(ステップS202)。制御部64は、この吸気温度センサ50からの検出温度信号と2次電池温度センサ51からの検出温度信号とを比較し(ステップS203)、吸気温度が2次電池20の温度よりも低いと判断された場合に制御部64は、吸気切替弁インターフェース52及び排気切替弁インターフェース62に対し、再循環経路を形成するように各切替弁26,27を協調して切り替えるよう流路切替指令を出力する。
【0038】
各インターターフェースはこの流路切替指令に従って、アクチュエータ40,41を駆動させ、各弁の弁体の位置を切り替える。この各切替弁26,27の協調切替動作によって2次電池20の通気流路は、客室11内の空気を取り入れて2次電池20を冷却する冷却用流路構成から客室11内の空気が入ってこない再循環経路へと切り替えられる(ステップS204)。再循環経路が形成されると、図1(b)に示すように、2次電池20の通気流路は、循環管路25を通じた閉循環流路となる。
【0039】
次に制御部64は、再循環経路が構成されると、ヒータインターフェース54にヒータ30をオンとする加熱指令を出力する(ステップS205)。ヒータは、PTCヒータであるので、電源がオンとなると、これによって自己温度制御を開始しながら空気を加温していく。ヒータ30がオンになった後、制御部64は、ステップS201に戻り、通気ファン23を短時間回転させ、吸気温度センサ50からの吸気温度検出信号を取得し(ステップS202)、この吸気温度センサ50からの検出温度信号と2次電池温度センサ51からの検出温度信号とを比較する(ステップS203)。この動作を、吸気空気温度が2次電池温度よりも高くなるまで繰り返し行う。これは、2次電池よりも温度の低い空気を通気して2次電池の温度を低下させないためである。
【0040】
そして、制御部64は、ステップS203において吸気温度が2次電池温度よりも高くなったと判断された場合には、通気ファン23を所定の回転数で連続回転させるよう連続駆動指令を通気ファン駆動インターフェース58に出力する(ステップS206)。通気ファン駆動インターフェース58は、この連続駆動指令に基づいて、通気ファン23に駆動信号を出力し、通気ファン23を所定の回転数で回転させる。なお、回転数は温度によらず一定の回転数としてもよく、また、2次電池20の温度が低い時には風量を多くし、2次電池20の温度が上昇してきたら風量を少なくしていくというように回転数を低くしてもよい。回転数を可変とする場合には、2次電池温度と回転数の関係を規定した制御マップを記憶部66に格納しておき、このマップに基づいて加温回転数を可変としてもよい。また、客室11から取り込んだ空気の温度によって回転数を可変としてもよい。
【0041】
このように通気ファン23が所定の回転数で回転を開始すると、2次電池20の加温が開始され(ステップS207)、2次電池20の加温中に制御部64は、2次電池温度センサ51の検出温度信号データを2次電池温度センサインターフェース60から取得してその温度を監視する(ステップS208)。温度監視に結果、制御部64は、2次電池20の温度が所定の温度まで上昇したと判断した場合、ヒータ30をオフとする指令をヒータインターフェース54に出力する(ステップS209)。ヒータインターフェース54はこの信号に基づいて、ヒータ30への通電を停止する。
【0042】
ヒータ30への通電を停止した後、制御部64は、吸気切替弁インターフェース52、及び排気切替弁インターフェース62に冷却用流路を形成するように各切替弁26,27を協調して切り替えるよう指令を出力する(ステップS210)。各インターターフェース52、62はこの流路切替指令に従って、アクチュエータ40,41を駆動させ、各弁の弁体の位置を切替える。この各切替弁26,27の協調切替え動作によって、2次電池20の通気流路は、吸気管路21から通気ファン23、2次電池20、排気管路22、及び循環管路25を経て吸気管路21に戻る再循環経路から、客室11から空気取り入れ口13を介して吸気管路21、通気ファン23、2次電池20を経て排気管路22に流れて、排気管路22から空気排出口14を介して客室11に流通する冷却流路構成となる。以上の動作によって、2次電池20の加温動作は終了する。
【0043】
このように本実施例の温度調節装置は、客室11との吸排気をせずに吸気管路21から通気ファン23、2次電池20、排気管路22、及び循環管路25を経て吸気管路21に戻る再循環経路(閉循環経路)を形成する。このため、ヒータ30によって加温された空気は循環流路外に流れ出すことがなく、外部の冷たい空気がこの循環流路に入り込むこともないので、加温した空気によって効率的に2次電池20を加温することができる。特に、短時間で2次電池20の温度を上昇させることができる。
【0044】
2次電池20の加温動作が終了すると、図3のステップS101に戻り、制御部64は2次電池20の温度を2次電池温度センサ51の検出信号データを2次電池温度センサインターフェース60から取得し、ステップS102において2次電池の加温が必要かどうかを判断する。2次電池20の加温動作の終了後では、2次電池20の温度は加温が必要ないと判断される温度となっていることから、制御部64は、2次電池温度を監視しながら、通常の2次電池冷却動作を行う(ステップS103)。車両10の走行による充放電によって2次電池20の温度が所定の温度、例えば40℃程度まで高くなると、制御部64は、2次電池の通気流路が冷却流路構成となっているか否かを確認し、冷却流路構成となっていない場合には、上記のステップS210と同様に流路構成を冷却流路構成となるように切り替える(ステップS104)。
【0045】
次に制御部64は、通気ファン駆動インターフェース58に通気ファン23を短時間回転する指令を出力する。この短時間は、吸気管路21に空気取り入れ口13からの客室11内の空気が入り込んでくる程度の短時間、例えば10秒間等、の時間である。通気ファン駆動インターフェース58はこの指令に従って通気ファン23を短時間だけ回転させて、停止させる(ステップS105)。通気ファン23の回転により吸気管路21に空気取り入れ口13を介して取り込まれた客室11内の空気は、吸気温度センサ50によって温度検出され、制御部64は検出信号データを吸気温度センサインターフェース56から取得する(ステップS106)。制御部64は、この吸気温度センサ50からの検出温度信号と2次電池温度センサ51からの検出温度信号とを比較する(ステップS107)。そして、吸気温度が2次電池温度よりも高いと判断された場合には、制御部64は、車室内クーラーを始動する指令を出力する(ステップS108)。これは、2次電池冷却用空気温度が2次電池温度よりも高い場合、通気ファン23によって空気を通気しても2次電池20を冷却できないためである。また、車室内クーラーを駆動するのは、2次電池20の冷却空気は車室内の空気を使用しているため、車室内の空気を冷却して2次電池20の冷却用空気の温度を下げるためである。
【0046】
次に、制御部64は、吸気温度センサ50の検出温度信号データを吸気温度センサインターフェース56から取得し、2次電池温度センサ51の検出温度信号データを2次電池温度センサインターフェース60から取得して、その温度差の監視を続ける(ステップS107)。そして、制御部64において、吸気温度が2次電池20の温度よりも低くなったと判断された場合に、制御部64は、通気ファン23を通常回転とする指令を通気ファン駆動インターフェース58に出力する(ステップS109)。通気ファン駆動インターフェース58はこの信号に基づいて、通気ファン23を通常回転駆動させる。通気ファン23の通常回転は、2次電池20の温度が高い時には風量が増えるように通気ファン23の回転数を高くしたり、2次電池20の温度が低い時には風量が少なくなるように通気ファン23の回転数を低くすることが可能な可変回転数とすることができる。可変制御は、2次電池20の温度と通気ファン23の回転数との関係を規定した制御マップを記憶部66に格納しておき、このマップに基づいて回転数を制御しても良いし、2次電池20の温度に比例した回転数としてもよい。また、回転数を一定としてもよい。通気ファン23が通常回転となると、2次電池20の冷却が開始される(ステップS110)。
【0047】
2次電池20の冷却動作では、制御部64は、2次電池温度センサ51の検出温度信号データを2次電池温度センサインターフェース60から取得してその温度を監視する(ステップS111)。制御部64は、監視している2次電池20の温度に応じて通気ファン23の回転数を可変させてその温度を制御する。2次電池20の温度が通気ファン23を停止させる温度まで低下した場合(ステップS112)、図3のステップS101に戻って、制御部64は、2次電池20の温度監視に入り、検出する2次電池の温度に応じて以後同様の冷却あるいは加温の動作を行う。また、車両10が停止状態となったときには、通気ファン23の回転を停止し、2次電池20の温度調整動作を終了することができる(ステップS113)。
【0048】
このように通常の冷却動作においては、2次電池20の通気流路は、客室11から空気取り入れ口13を介して吸気管路21、吸気管路21から通気ファン23、2次電池20を経て排気管路22に流れ、空気排出口14を介して客室11に排気される冷却流路構成となっている。なお、吸気切替弁26と排気切替弁27を協調制御して各弁体位置を中間位置とすることによって、客室11内の空気を取り込みながら2次電池20への通気の一部を加温することもでき、2次電池20への通気温度を制御して当該2次電池20の温度を細かく調整することもできる。
【0049】
また、本実施例の流路切替手段である吸気切替弁26及び排気切替弁27を弁体で構成し、両流入面101、102に適用される場合を一例に説明したが、例えば、第1及び第2流入面101、102の各々に個別の第1開閉部材及び第2開閉部材を配置して流路切替手段を構成してもよい。この場合、制御部64は、2次電池20の温度が所定の温度よりも低い場合に、第1流入面101に配置される第1開閉部材を閉じて第1流入面101を介した空気の流入を妨げ、かつ第2流入面102に配置される第2開閉部材を開いて第2流入面102を介した空気の流入を許容するように制御する。また、流路切替弁27についても同様に、第3及び第4流出面103、104の各々に個別の第3開閉部材及び第4開閉部材を配置して流路切替手段を構成し、制御部64により、2次電池20の温度が所定の温度よりも低い場合に、第1流出面103に配置される第3開閉部材を閉じて第1流出面103を介した空気の流入を妨げ、かつ第2流出面104に配置される第4開閉部材を開いて第2流出面104を介した空気の循環管路25への流入を許容するように制御する。
【0050】
また、図4は、本実施例の温度調節装置の変形例であり、図4に示すように、2次電池20がリアリート12の座部下方に配設された場合の温度調節装置である。すなわち、本発明の温度調節装置は、空気取り入れ口13及び空気排出口14が、リアシート12の座部下方に配置され、吸気切替弁26、27をリアシート12の座部下方の車室との境界に各々配置している。そして、循環管路25は、リアシート12の座部下方であって、2次電池20と客室11との間に配設されている。
【0051】
すなわち、本発明の温度調節装置は、流路切替手段である吸気切替弁26及び排気切替弁27の各々が、吸気管路21に客室11内の空気を取り込むための当該吸気管路21の流入面(第1流入面)が位置する当該客室11との境界に及び排気管路22から客室11内に空気を排気するための当該排気管路22の流出面(第1流出面)が位置する当該客室11との境界に各々配設されるため、2次電池20の上方の空間に切替弁及び各管路が配置されない。したがって、リアシート12の座部下方の限られたスペースであっても、当該温度調節装置を効率よく配置することが可能となる。
【0052】
また、本変形例では、リアシート12の脇に空気取り入れ口13、空気排出口14が配設される場合に比べて、リアシート12に着座する乗員に対して通気ファン23や空気が流通する際の騒音が聞こえ難く、実質的な騒音低減を図ることが可能となる。
【0053】
なお、客室11は、主にフロントシートやリアシートが位置して利用者が着座する空間を意味しているが、リアシート後方のトランクスペースなど荷物を搭載するために形成された隔離された空間を含み、本実施例の客室11は、車両10において利用者が視認して利用できる全ての空間(車室)であり、シートが位置する空間のみに限定されない。
【0054】
また、各管路は、四角い断面形状をしたダクトでもよく、円形又はその他の断面形状のダクトでもよい。また、本実施例のヒータ24としては、電源をオンにすると自己温度制御性によって温度を自己調節するPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを用いることができ、電熱ヒータなど測定温度によってフィードバック制御をするような加温源であってもよい。また、流路抵抗が小さくなるように管路の壁面に板状のヒータを取り付けたり、管路の外面に加温のための電熱線、加温管路などを取り付けて、管路壁面を介して空気を加温するように構成できる。
【0055】
以上、本発明の温度調節装置を上記実施例に則して説明したが、本発明の温度調節装置は、ヒータ24を備えない温度調節装置として構成することも可能である。すなわち、車両10に搭載される2次電池(蓄電装置)20に車室(客室11)内の空気を通気する通気ファン23と、通気ファン23に車室内の空気を導く吸気管路(吸気流路)21と、2次電池20に通気した空気を車室内に排気する排気管路(排気流路)22と、吸気管路21及び排気管路22に接続され、排気管路22から車室に排気される空気を吸気管路21へ循環させる循環管路(循環流路)25と、循環管路25を通じた吸気管路21及び排気管路22を流通する空気の再循環経路を形成するための吸気/排気切替弁(流路切替手段)26、27とを有し、切替弁26、27が、吸気管路21に空気を取り込むための該吸気管路の第1流入面101が位置する車室との境界、及び排気管路22から車室内に空気を排気するための該吸気管路22の第1流出面103が位置する車室との境界に各々配置された温度調節装置として構成することができる。
【0056】
したがって、ヒータ24を備えない温度調節装置は、上記実施例と同様に、切替弁26、27が客室11との境界に配置されているため、配置スペース効率を向上させることが可能となる。なお、該温度調節装置において、2次電池20の温度が所定温度よりも低い場合、上記実施例と同様に循環管路25を介して空気の閉循環を構成することで、2次電池20の温度調節を適切に行うことができる。この場合、閉循環による空気の流通とともに、2次電池20を充放電制御し、2次電池20の充放電に伴う発熱を利用して閉循環する空気を温め、2次電池20を適切な昇温させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の温度調整装置を搭載した車両の外観図である。
【図2】本発明の温度調整装置の構成を示した図である。
【図3】本発明の温度調節装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の温度調整装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 車両
11 客室
12 リアシート
13 空気取り入れ口
14 空気排出口
20 2次電池
21 吸気管路
22 排気管路
23 通気ファン
24 ヒータ
25 循環管路
26 吸気切替弁
27 排気切替弁
101 第1流入面
102 第2流入面
103 第1流出面
104 第2流出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電装置に車室内の空気を通気する通気ファンと、前記通気ファンに前記車室内の空気を導く吸気流路と、前記蓄電装置に通気した空気を前記車室内に排気する排気流路と、前記蓄電装置に通気される空気を温めるための加熱手段と、を備え、前記蓄電装置の温度が所定の温度よりも低い場合に、前記蓄電装置に通気される空気を前記加熱手段により温め、前記蓄電装置の温度調整を行う温度調節装置であって、
前記吸気流路及び排気流路に接続され、前記排気流路から前記車室に排気される空気を前記吸気流路へ循環させる循環流路と、
前記循環流路を通じた前記吸気流路及び前記排気流路を流通する空気の再循環経路を形成するための流路切替手段と、を有し、
前記流路切替手段を、前記吸気流路に空気を取り込むための前記吸気流路の第1流入面が位置する前記車室との境界、及び前記排気流路から前記車室内に空気を排気するための前記吸気流路の第1流出面が位置する前記車室との境界に各々配置したことを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
前記第1流入面及び前記循環流路と前記吸気流路との接続部における前記循環流路から前記吸気流路に前記空気が流入する第2流入面が隣接して配置され、かつ前記第1流出面及び前記循環流路と前記排気流路との接続部における前記排気流路から前記循環流路に前記空気が流出する第2流出面が隣接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項3】
前記流路切替手段は、
前記第1流入面と第2流入面との間に配置され、一方を流入面を介した空気の流入を妨げ、他方の流入面を介した空気の流入を許容する第1切替弁と、
前記第1流出面と第2流出面との間に配置され、一方の流出面を介した空気の流出を妨げ、他方の流出面を介した空気の流出を許容する第2切替弁と、を有することを特徴とする請求項2に記載の温度調節装置。
【請求項4】
温度検出手段により検出される前記蓄電装置の温度に基づいて、前記流路切替手段を制御する制御手段をさらに有し、前記制御手段は、前記蓄電装置の温度が所定の温度よりも低い場合に、
前記第1切替弁を前記第1流入面からの前記空気の流入を妨げる位置に制御し、前記第2流入面を介した空気の流入を許容させる第1制御と、前記第2切替弁を前記第1流出面への前記空気の流出を妨げる位置に制御し、前記第2流出面を介した空気の流出を許容させる第2制御を遂行することを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置の温度調節装置。
【請求項5】
前記循環流路が前記後部座席の背もたれ部の背面側又は前記背もたれ部内部に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の温度調節装置。
【請求項6】
前記流路切替手段が、前記吸気流路に空気を取り込むための前記吸気流路の第1流入面が位置する前記座部下方の前記車室との境界、及び前記排気流路から前記車室内に空気を排気するための前記吸気流路の第1流出面が位置する前記座部下方の前記車室との境界に各々配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の温度調節装置。
【請求項7】
車両に搭載される蓄電装置に車室内の空気を通気する通気ファンと、
前記通気ファンに前記車室内の空気を導く吸気流路と、
前記蓄電装置に通気した空気を前記車室内に排気する排気流路と、
前記吸気流路及び排気流路に接続され、前記排気流路から前記車室に排気される空気を前記吸気流路へ循環させる循環流路と、
前記循環流路を通じた前記吸気流路及び前記排気流路を流通する空気の再循環経路を形成するための流路切替手段と、を有し、
前記流路切替手段が、前記吸気流路に空気を取り込むための前記吸気流路の第1流入面が位置する前記車室との境界、及び前記排気流路から前記車室内に空気を排気するための前記吸気流路の第1流出面が位置する前記車室との境界に各々配置されることを特徴とする温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−272112(P2009−272112A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121088(P2008−121088)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】