説明

薄層トランジスタ用ハイブリッドマトリックス

【課題】本発明は、ハイブリッド半導体材料と、それを含有するデバイスとに関する。
【解決手段】本発明のハイブリッド半導体材料は、有機実体によってグラフト化された半導体ナノ物質が分散している有機半導体マトリックスを含み、この有機マトリックスは小半導体分子を含み、前記有機実体は、前記小半導体分子の場合と同様の活性電気官能基を有する。
本発明のハイブリッド半導体材料には、特に、大衆消費者エレクトロニクスの分野における用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド半導体材料と、それを含有するデバイスとに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料をベースにしたデバイスには、広範囲にわたる用途が見出されており、このデバイスは、安価な方法によって単純な論理関数を生成しなければならない大衆消費者エレクトロニクスの分野にまで普及し始めている。
【0003】
トランジスタは、これらのデバイスの基本的な構成要素の1つである。
【0004】
トランジスタを製造するには、その半導体部分を様々な方法によって製造することができる。
【0005】
これらの方法の1つは、半導体材料の気相成長である。しかし、この方法は、高真空や狭い面積などを必要とするので、大規模に実施することが難しい。
【0006】
トランジスタの半導体部分を製作するのに現在使用されている別の方法は、溶液が使用される湿式堆積である。
【0007】
この堆積は、インクジェットやフレキソ印刷、写真製版などの従来の印刷技法を使用して、低温で、周囲圧力で、かつ大規模に実施することができるので、今日では好ましい方法である。
【0008】
大衆消費者市場向け薄層トランジスタを製造するための、半導体材料の圧倒的大多数は、純粋な有機化学構造を有しており、即ち、共役し、必要に応じて元素周期律表の任意の元素によって置換されており、および/または環化されている、炭化水素分子を含んでいる。
【0009】
しかし、これらの有機化合物は平凡な性能を示し、大規模な適用例に対しては改善しなければならない。例えば、これら有機材料の電荷担体の移動性が、効率的で迅速なデバイスの製造を妨げている。
【0010】
その他の半導体材料は、適切な半導体特性を有する、ナノ物質と呼ばれる非常に小さい無機材料からなる。
【0011】
ナノ物質は、空間における3つの寸法のうち少なくとも2つが、100ナノメートルよりも短い実体と定義される。
【0012】
カーボンナノチューブは、1つの代表的な無機材料である。
【0013】
しかし、カーボンナノチューブを精製することは極めて難しく、純粋なカーボン半導体ナノチューブを当面は利用することができない。
【0014】
このように、このタイプの無機半導体材料は、依然として半導体タイプのナノチューブと金属タイプのナノチューブとの混合物であり、その製造プロセスを複雑にしている。さらに、これらの材料は、大規模使用のための再現性に欠けている。
【0015】
したがって、界面活性剤によってカーボンナノチューブを非共有的に機能化すること、およびカーボンナノチューブをポリヘキシルチオフェンタイプのポリマーマトリックスに分散させることが提案されている。しかし、移動性はカーボンナノチューブの添加のおかげで改善されるが、それと同時に、この材料から製作されたトランジスタのIオン/Iオフ比、即ちトランジスタが「オン」状態から「オフ」状態に切り換わることができることを特徴とする比は、工業的な用途には不十分になる。
【0016】
また、無機半導体材料として、ドープされまたはドープされていないシリコンナノワイヤを使用することも提案されている。これらのナノワイヤは、トランジスタの半導体部分として使用することができる。しかし、その使用には、工業的プロセスに関連して考えられる大量販路向け低コスト印刷技法の範囲を超えた、複雑な技法が必要である。
【0017】
半導体ナノワイヤをベースにしたこれらのトランジスタは、ソースおよびドレイン電極に直接接触させて配置されたナノワイヤを含み、使用されるナノワイヤの長さが、少なくともソース電極とドレイン電極との間の最短距離に等しいことを示唆している。これは、ソース−ドレイン距離が数十マイクロメートル(μm)程度に長いという、大衆消費者エレクトロニクスの状況を想定する限り、本発明の範囲を超えている。事実、今日では、このサイズのナノワイヤを製造し取り扱うことは困難である。
【0018】
さらに、米国特許出願第2005/0104060号は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)タイプの半導体マトリックスにおける電荷担体の移動度が改善されるように機能化させた、シリコンナノ粒子について述べている。
【0019】
この特許出願では、単純な有機基であるが半導体マトリックスを構成するポリマーを構成する単位とは全て異なる基が、無機半導体ナノ粒子に共有的にグラフト化されている。
【0020】
それによって、これらのナノ粒子は、半導体マトリックス中に分散され、それによって、得られた材料上での電荷担体の移動度に、わずかな利益がもたらされる。
【0021】
しかし、グラフト化された有機基は、マトリックスを構成する有機半導体部分とシリコンナノ粒子との間に電荷移動をもたらす適切な基を持たない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、電荷担体の移動度が改善され、そこに従来の印刷技法を使用した湿式堆積法を利用することのできる半導体材料を提案することによって、従来技術の半導体材料の欠点を克服することである。
【0023】
したがって本発明は、純粋な有機マトリックスに比べてより高い性能を有する、新規なハイブリッド有機、無機、半導体マトリックスを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的のため、本発明は、有機実体によってグラフト化された半導体ナノ物質が分散している有機半導体マトリックスを含むタイプの半導体ハイブリッドであって、前記有機マトリックスが小さい半導体分子を含み、半導体ナノ物質にグラフト化された前記有機実体が、小さい前記半導体分子の場合と同様の構造を有する活性電気官能基を有することを特徴とする、半導体ハイブリッドを提案する。
【0025】
好ましくは、前記実体は、前記有機実体をナノ物質に共有グラフト化するための官能基も有する。
【0026】
本発明の第1の代替例において、ナノ物質はナノワイヤである。
【0027】
好ましくは、ナノワイヤがシリコンナノワイヤである。
【0028】
ナノワイヤは、ゲルマニウム−シリコンナノワイヤ、Ge−Siであることも好ましい。
【0029】
さらに好ましくは、ナノワイヤが酸化亜鉛、ZnOのナノワイヤである。
【0030】
さらに好ましくは、ナノワイヤはヒ化ガリウム、GaAsのナノワイヤである。
【0031】
本発明の別の代替例において、ナノ物質はカーボンナノチューブである。
【0032】
本発明の全ての実施形態において、前記ナノ物質は、100ナノメートルよりも短い少なくとも2つの寸法と、10を超える長さ/直径比とを有することが好ましい。
【0033】
本発明は、本発明による材料を含むデバイスも提案する。
【0034】
好ましくは、このデバイスはトランジスタである。
【0035】
本発明のハイブリッド半導体材料は、有機実体によってグラフト化された、ドープされまたはドープされていない半導体ナノ物質を、有機半導体マトリックス中に分散させることによって調製される。
【0036】
自由電子ダブレットまたは空格子点を有するナノ物質のドープ元素は、例えばホウ素、リンなどの誘導体である。
【0037】
ナノ物質は、酸化亜鉛、ZnO、ヒ化ガリウム、GaAs、シリコン、Si、ゲルマニウム、Ge、またはゲルマニウム−シリコン、Si−Geのナノワイヤ、またはカーボンナノチューブでよい。
【0038】
これらの様々なタイプのナノ物質は、単独でまたは2種以上の混合物中に存在してよい。
【0039】
本発明のナノ物質は、ソース電極とドレイン電極との間のチャネルのサイズよりも短い長さを有する。
【0040】
本発明のナノ物質は、2つの目的:即ち、有機マトリックス中のナノ物質の満足のいく分散体を得ること;およびナノ物質と有機半導体マトリックスとの間の効率的な電荷移動を可能にすることを、同時に達成するように官能化される。
【0041】
したがって、ナノ物質にグラフト化された実体は、2官能性タイプのものであり、その一方は、本明細書では反応性基と呼ばれ、ナノ物質への共有グラフト化に役立つものであり、もう一方は、本明細書では活性電気部分と呼ばれ、ホストマトリックスとの適合化および電荷移動に役立つ。
【0042】
電荷移動を得るために、本発明のナノ物質にグラフト化された実体は、π結合、n電子、d軌道、または酸化還元タイプの種など、電荷移動を得るのに適したモチーフを含む。
【0043】
ホストマトリックスとの適合化を得るために、グラフト化された実体の活性電気部分は、使用される有機マトリックスに応じて選択される。活性部分は、有機マトリックスと同様であり、即ち同じ基本骨格を有すると言える。
【0044】
半導体ポリマーからなるマトリックスの場合、使用される活性官能基は、半導体ポリマーのモノマーの場合と同様の構造を有する。
【0045】
小分子をベースにした任意の有機半導体系の場合、活性官能基は、マトリックス中に存在する小さい半導体分子と同様である。
【0046】
本発明の文脈において、「小さい半導体分子」という用語は、1500g/モルを超えない分子量を有する有機半導体分子を意味する。
【0047】
例示的で非限定的な例として、活性電気官能基は、チオフェンタイプのもの、およびその誘導体、アリールアミンおよびその誘導体、イソクロメノンおよびその誘導体、ペンタセンおよびその誘導体、ポルフィリン、フタロシアニンおよびその誘導体でよい。
【0048】
反応性基は、ナノ物質に応じて選択される。
【0049】
したがって、シリコンナノワイヤの場合、このワイヤを酸化物層で被覆してもしなくてもよい。これは、官能化形態を、使用されるナノワイヤのタイプに応じて選択しなければならないことを示唆する。
【0050】
酸化物層を有するSiナノワイヤは、その表面に、シラノールタイプ、Si−OHの反応性官能基を有し、それと共に酸化物を含まないナノワイヤは、本質的に、水素化シリコンタイプ、Si−Hの官能基を有する。
【0051】
非限定的な例として、シリコンナノワイヤに使用可能な反応性基は、下記の通りでよい:
−酸化物層のないシリコンナノワイヤ、即ちSi−Hタイプの結合を表面に有するシリコンナノワイヤの場合、ジアゾニウム塩R−Nまたはビニルもしくはアセチレンタイプの不飽和化合物を使用することができる;
−酸化物層を有するシリコンナノワイヤの場合、即ちSi−OHタイプの結合を表面に有するシリコンナノワイヤの場合、反応性基は、トリハロゲン化シランR−SiXまたはR−Si(OR)タイプのトリアルコキシシランでよい。
【0052】
ZnOなどの酸化物タイプのナノ物質の場合、反応性基は、例えばシランファミリーから選択される。
【0053】
活性有機実体は、いくつかのステップでグラフト化することができる。例えば、第1の有機部分は、ペンダント反応性基と共にナノ物質にグラフト化することができ、次いでこのペンダント反応性基を、1つまたは複数の反応によって官能化して、活性電気官能基に結合することができる。
【0054】
本発明のハイブリッド半導体材料は、半導体デバイスを必要とする任意のタイプのデバイスで使用することができるが、これらの材料は、好ましくは薄層トランジスタの半導体部分として使用されることになる。
【0055】
2重の目的は、ナノ物質に有機実体を共有グラフト化することによって達成される。
【0056】
一方、ドープされまたはされていないナノ物体は、半導体マトリックス中に完全に分散され、このように形成されたハイブリッド半導体材料に、湿式印刷技法により付着される可能性をもたらす。ナノ物質が存在することにより、本発明のハイブリッド半導体材料に、電気性能、特に電荷担体の移動度の実質的な改善がもたらされる。
【0057】
さらに、ナノ物質と有機マトリックスとの間の電荷移動を可能にする基を用いたナノ物質の官能化によって、本発明のハイブリッド半導体材料の電気性能のさらなる改善が可能になる。
【0058】
本発明において、ナノ物質は、有機半導体マトリックス中に分散させる前に官能化される。
【0059】
有機実体は、ナノ物質が基材に結合するときに、一般にグラフト化される。
【0060】
本発明において、ナノ物質は、基材上に存在するときに実施される化学官能化の後に、基材から切り離されること、およびそれを溶液中に分散させることが可能である。
【0061】
これらを精製し、残留する触媒および/または自然酸化物層を除去することも可能である。
【0062】
ナノ物質の壁は、酸化物が事前に除去されているシリコン表面での不飽和化合物またはジアゾニウム塩の反応によって、トリハロゲン化シランまたはトリアルコキシシランにより表面酸化物に化学的にグラフト化するなどの、様々な方法によって、化学的に官能化することができる。
【0063】
官能化は、いくつかのステップで実施することができる。
【0064】
このように官能化されたナノワイヤも、有機化合物に可溶化することができ、その結果、得られる溶液を使用して、湿式堆積法によりトランジスタを製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明は、そのいくつかの例示的な実施形態に関する、純粋に例示を目的とした非限定的手法によって以下に示される記述から、より良く理解されよう。
【実施例1】
【0066】
トリフェニルアミン誘導体によりグラフト化されたシリコンナノワイヤによる、p型のハイブリッド材料の被膜を有するトランジスタの製造。
1)TPA誘導体の合成:
1−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−3−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)尿素(TPAの誘導体)を、ジフェニルアミンおよび4−フルオロニトロベンゼンから3つのステップで、即ちp−ニトロ−トリフェニルアミンを形成するステップと、ニトロ基からアミノに還元するステップと、乾燥エタノール中での還流下、p−アミノ−トリフェニルアミンにイソシアナトプロピルトリエトキシシランを添加することによってトリエトキシシラン官能基を導入するステップで合成する。生成物は、ペンタンにおける沈殿、濾過、および乾燥により、褐色固体の形態で得られ、その全収率は37%である。
【0067】
【化1】

【0068】
NMR 1H (200MHz, DMSO, 300 K): δ (ppm) = 0.55 (t, 2H, 3J = 8.3Hz, Hc), 1.14 (t, 9H, 3J = 7.3Hz, Ha), 1.47 (p, 2H, 3J = 8.3Hz, Hd), 3.03 (t, 2H, 3J = 8.3Hz, He), 3.74 (q, 6H, 3J = 7.3Hz, Hb), 6.14 (s, 1H, Hf), 6.94 (m, 8H, Hk + Hn + Hp), 7.28 (m, 6H, Hj + Ho), 8.41 (s, 1H, Hh).
NMR 13C {1H} (200MHz, DMSO, 300 K): δ (ppm) = 8.4 (Cc), 19.4 (Ca), 24.5 (Cd), 42.1 (Ce), 56.9 (Cb), 119.9 (Cj), 122.7 (Cp), 123.3 (Cn), 127.1 (Ck), 130.2 (Co), 137.8 (Cj), 141.1 (Cl), 148.4 (Cm), 156.1 (Cg).
MALDI-TOF: m/z = 530.25 [M+Na]+, 316.16 [M-CH2CH2Si(OEt)3]+.
HRMS (EI): C28H37N3NaO4Siの計算値: 530.24455, 実測値: 530.24656 Err (ppm) - 3.79.
IR (ATR, cm-1): 3321 (ν N-H), 3062 (ν C-HAr), 2973 (νas C-H), 2873 (νs C-H), 1641 (ν C=O), 1597および1509 (ν C=CAr), 1565 (δ N-H), 1271 (ν C-N), 1235 (ν C-C), 1078 (νas Si-O-C), 957 (νs Si-O-C), 754 (γ C-HAr), 695 (γ 環).
UV/vis (EtOH): λmax/nm (ε/L.mol-1・cm-1, 遷移) = 232 (14420, π→π* E2バンド), 301 (25000, p→π).
2)シリコンナノワイヤへのTPA誘導体のグラフト化
その成長基材(1cmシリコンウェハー)により保持されたままのpドープシリコンナノワイヤ(B/Si=4.10−4)を、エタノールおよびアセトンで洗浄し、次いでプレートをアルゴン中で乾燥した。これらのp型シリコンナノワイヤは、その平均長さが5μmであり、平均直径は100nmを中心とする。
【0069】
次いでプレートをPiranha溶液(HSO:H 70/30)に15分間浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぎ、アルゴンで乾燥する。第2の活性化ステップでは、プレートをオゾン中で45分間紫外線に曝し、次いで1−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−3−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)尿素のトルエン溶液(10−3M)に浸漬し、これを、撹拌せずに80℃で4時間加熱する。冷却後、プレートを除去し、次いでエタノールおよびアセトンで濯ぎ、アルゴンで乾燥する。このように官能化されたナノワイヤを、1分間の超音波処理(出力:100%)によって1mlのトルエン中で脱グラフト化する。
3)有機半導体マトリックスα−NPD中の、TPA誘導体によって官能化されたシリコンナノワイヤの分散
TPA誘導体によって官能化されたシリコンナノワイヤを分散させるための、この実施例で使用される有機半導体マトリックス(小分子)は、α−(ナフチル)フェニレンジアミン(α−NPD)である。
【0070】
【化2】

【0071】
シリコンナノワイヤ(α−NPDに対してナノワイヤ1重量%)の懸濁液を、トルエン中にα−NPD 3mg/mlを含有する溶液に添加する。トランジスタ動作の電気的な特徴付けを、低グリッドトランジスタ支持体および下側コンタクトを使用して実施した。
【0072】
ハイブリッド半導体被膜(小α−NPD分子+シリコンナノワイヤがTPA誘導体によって官能化された、有機マトリックス)が、ハイブリッド半導体溶液の低速蒸発および飽和蒸気圧によって得られる。ハイブリッド半導体を、窒素下で20分間、100℃でアニールする。
【0073】
このように試験がなされたトランジスタ(そのW/Lは1000である)は、改善された電気性能を示し、その電荷担体(正孔)の移動度は2.4×10−4cm/Vsであり、Iオン/Iオフ比は10である。有機半導体マトリックスへのこれらの官能化ナノ電荷の導入は、その移動度を、Iオン/Iオフ比を低下させることなくマトリックス単独に対して4倍改善させるのに役立つ。
【実施例2】
【0074】
リレン誘導体によりグラフト化されたシリコンナノワイヤを有するn型ハイブリッド材料の被膜を有するトランジスタの製造。
1)シリコンナノワイヤでの非対称ペリレンジイミドの合成およびグラフト化:
N−オクチル−N’アセチレニルフェニルペリレン−3,4,9,10−ビス(ジカルボキシミド)(PDI−8−アセチレニルフェニル)を、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PDA)から、3ステップで合成する。この後者の無水物官能基の1つを、高温水酸化カリウム中での処理によって開き、次いで5.5<pH<6.5になるまでリン酸を添加して、ペリレン一無水物一酸モノカルボキシレートの一カリウム塩を得る。N−オクチルアミンを4当量添加することは、高温水酸化カリウム中での処理によって精製した後にN−オクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−3,4−無水物−9,10−イミド(PAI−8)を得るのに役立つ。最後に、このペリレン一無水物モノイミドとトルエン中の4当量のエチニルアニリンとの還流下での反応は、溶離剤として90:10のクロロホルム/酢酸混合物を用いたシリカカラムでの精製の後に、赤色固体の形態をとる所望の生成物PDI−8−アセチレニルフェニルの形成をもたらし、その全収率は44%である。
【0075】
【化3】

【0076】
NMR 1H (500MHz, CDCl3, 300 K): δ (ppm) = 0.80 (t, 3H, CH3), 1.32 (m, 10H, CH2), 1.87 (m, 2H, NCH2CH2), 3.12 (s, 1H, CH), 4.21 (t, 2H, NCH2), 7.53 (d, 2H, 3J = 8.1Hz, CHAr), 7.78 (d, 2H, 3J = 8.1Hz, CHAr), 8.28 (d, 2H, 3J = 8.1Hz, CHperylene), 8.39 (d, 2H, 3J = 8.4Hz, CHperylene), 8.48 (d, 2H, 3J = 8.4Hz, CHperylene), 8.60 (d, 2H, 3J = 8.1Hz, CHperylene).
NMR 13C{1H} (500MHz, CDCl3, 300 K): δ (ppm) = 14.1 (CH3); 22.7; 26.7; 28.5; 29.3; 30.2; 31.8; 38.2; (7 C, CH2); 81.4 (CH); 82.3 (C≡CH); 111.3 (CHAr); 118.3 (CAr); 124.5; 126.1; 126.7; 128.1; 128.4; 128.8; 129.2; 129.6; 130.4; 130.6; 130.9; 131.2; 135.2; 135.7; (23 C, CAr + CHAr+ CHperylene + Cperylene); 158.6; 159.3 (4 C, C=O).
IR (ATR, cm-1): 3267 (ν C-H), 3062 (ν C-HAr), 2973 (νas C-H), 2873 (νs C-H), 2103 (ν C≡H), 1693および1652 (ν C=O), 1597および1509 (ν C=CAr), 1271 (ν C-N), 1235 (ν C-C), 808 (γ C-HAr), 747 (γ 環).
2)シリコンナノワイヤへの非対称ペリレンジイミドのグラフト化:
その成長基材(1cmシリコンウェハー)により保持されたままのnドープシリコンナノワイヤ(P/Si=2×10−4)を、エタノールおよびアセトンで洗浄し、次いでプレートをアルゴン下で乾燥する。これらのn型シリコンナノワイヤは、その平均長さが4μmであり、平均直径は100nmを中心とする。
【0077】
次いでプレートを、希薄なフッ化水素酸溶液(1%)に2分間浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。次いでフッ化アンモニウム溶液(40%)に2分間浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぎ、アルゴンで乾燥する。次いでこれを、N−オクチル−N’アセチレニルフェニルペリレン−3,4,9,10−ビス(ジカルボキシミド)のメシチレン溶液(10−3M)が入っている冷却器を備えたフラスコに導入し、後者を撹拌せずにアルゴン下に2時間、180℃で加熱する。冷却後、プレートを除去し、次いでエタノールおよびアセトンで濯ぎ、アルゴンで乾燥する。このように官能化されたナノワイヤを、1分間の超音波処理(出力100%)によって、ODCB(オルトジクロロベンゼン)1ml中で脱グラフト化する。
3)有機半導体マトリックスPDI8−CN2における非対称ペリレンジイミドによって官能化されたシリコンナノワイヤの分散:
非対称PDIによって機能化されたシリコンナノワイヤを分散させるための、この実施例で使用されるn型(小分子)の有機半導体マトリックスは、下記のペリレンジイミドである。
【0078】
【化4】

【0079】
シリコンナノワイヤの懸濁液(α−NPDに対してナノワイヤ1重量%)を、ODCB中にPDI8−CN2を4mg/ml含有する溶液に添加する。トランジスタ動作の電気的特徴付けを、低グリッドトランジスタ支持体および下側コンタクトを使用して実施した。
【0080】
ハイブリッド半導体フィルム(小分子PDI8−CN2+非対称PDIにより機能化されたシリコンナノワイヤを有する有機マトリックス)を、スピンコータによる堆積によって得る。ハイブリッド半導体を、窒素下で20分間、100℃でアニールする。
【0081】
有機マトリックスのみで作製されたトランジスタは、1×10−3cm/Vsの移動度を有する。ハイブリッド半導体トランジスタ(そのW/Lが1000である)は、改善された電気性能を有し、その電荷担体(電子)の移動度は5×10−3cm/Vsであり、Iオン/Iオフ比が10である。有機半導体マトリックスに、官能化されたnドープSiナノワイヤを導入することは、Iオン/Iオフ比を低下させることなくマトリックスのみの場合よりも移動度を5倍向上させるのに役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機実体によってグラフト化された半導体ナノ物質が分散している有機半導体マトリックスを含むタイプのハイブリッド半導体材料であって、前記有機マトリックスが小半導体分子を含み、半導体ナノ物質にグラフト化された前記有機実体が、前記小半導体分子の場合と同様の構造の活性電気官能基を有することを特徴とする材料。
【請求項2】
前記有機実体が、前記有機実体をナノ物質に共有グラフト化するための官能基も有することを特徴とする、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
ナノ物質がナノワイヤであることを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
ナノワイヤがシリコンナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
ナノワイヤがゲルマニウム−シリコンナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項6】
ナノワイヤが、酸化亜鉛ZnOのナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項7】
ナノワイヤが、ヒ化ガリウムGaAsのナノワイヤであることを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項8】
ナノ物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項9】
前記ナノ物質が、100ナノメートルよりも短い少なくとも2つの寸法と、10を超える長さ/直径比とを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の材料を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項11】
トランジスタであることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。

【公開番号】特開2009−88507(P2009−88507A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−237566(P2008−237566)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク (85)
【Fターム(参考)】