説明

薄肉の立体成形品とその金型装置

【課題】 射出成形による薄肉容器の成形品、例えば深形のコップやブリスタのようなフィギュアケースなどの薄肉容器の一体成形には、以下の課題がある。
(1)成形品全体に熔融樹脂を均一に行き渡らせる構造が必要である。
(2)離型不良を生じない成形品の構造およびそれを実現する金型構造が必要である。
【解決手段】 本発明の薄肉の立体成形品は、以下の構成としたことを特長とするものである。
(a)底面4と側面5と開口部26を有する薄肉容器1
(b)前記薄肉容器1の開口部26の内周に形成される凸部24

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉のプラスチック製品に利用できるもので、各種の容器などの立体的な成形品に関するもので、薄肉のコップやブリスタを成形する際に、特に離型時に生じる離型不良を生じさせない形状の成形品および金型を提供するものである。
【0002】
従来、薄肉のプラスチック成形品は、反りやゆがみのない薄肉の容器や箱型を作るためには、高価で構造が複雑になる真空引きなどの技術を使った成形をするのが常識であった。しかし、真空引きなどの技術を駆使しても、1mm以下の超薄肉のプラスチック成形においては、その薄さのために真空引きが利きにくいことや、真空引きの作用で成形品の型離れが悪くなることや、装置が大掛かりになるなどの欠点があった。さらに、薄肉のために、成形品が金型の離型時に金型に吸着されるような状態になり、離型不良生じる欠点があった。
そこで、本発明は、真空成形に比較して次のような利点を有する射出成形で薄肉の立体成形品を生産しようとするものである。
(1)真空成形で引く事ができない深物の形状ができる。
(2)シート材を真空で引くと深物の場合、0.6mmの肉厚が限度かと思われ、0.4mmになるとコーナー部に穴があいてしまうが、射出成形においては型の構造の工夫で0.4mm程度の薄肉成形が可能になる。
(3)真空成形は、均一の肉厚にしかならないが、射出成形では、成形品の一部の肉厚を意図的に変えることができる。このことで複雑な形状のブリスタなどの成形品を製作できる。
(4)射出成形は、真空引きに比べ格段に寸法精度が高く、多種多様な成形品に対応できる。
(5)また、離型時に、成形品が金型に吸着されにくい構造の金型で、離型不良が生じない成形品を得ることができる。
しかし、従来の射出成形では、以下の欠点が生じるので1mmより薄い肉厚の成形は不向きと思われていた。
(a)熔融樹脂の注入圧力を低圧にして注入すれば有効であるが、射出圧力の不足により材料が薄肉容器の末端まで到達せず、薄肉容器の中心から遠い部分では薄肉容器部の一部が抜けたり欠けたりした。
(b)薄肉容器部の一部が抜けたり欠けたりしないために、熔融樹脂の注入圧力を高圧にすれば、薄肉容器部の抜けや欠けは改善されるものの、高圧成形により薄肉容器部が変形をきたしたり、ひどい場合は薄肉容器部の外縁でバリが生じた。
(c)薄肉容器部の末端まで熔融樹脂を注入させるために、樹脂温度を上げて流動性を良くする方法もあるが、そのために高温の熔融樹脂から発生するガスまたはエアが金型内に滞留することで、熔融樹脂が薄肉容器の末端までまわりきらないという欠点があった。
(d)特に薄肉成形の場合は、金型精度や成形機の性能によっては、偏肉が生じて薄肉容器の厚みがばらつくという欠点もあった。
(e)また、薄肉のために、成形品が金型の離型時に金型に吸着されるような状態になり、離型不良生じる欠点があった。
本発明は、上記(a)から(e)の欠点を解決するために、射出成形における薄肉成形品に、誘導帯や流動帯を用いたものである。
また、従来技術としては、容器の一部を凹部とし(逆の面から見ると凸部)、平面強度を持たせる成形品はあるが、これは単なる補強用のリブであり成形時の溶融樹脂を一旦蓄圧して放出する誘導帯の効果は全くない。さらに、容器上に溶融樹脂を均一に流して偏肉を防ぐための太径または幅広のリブで構成される流動帯の効果は全くない。
さらに、特許文献1のように、補強リブによらず底板の強度を維持するために、プラスチック製運搬用容器の底板の中央領域から四つの側面方向に向かって延びる定幅帯状の連通領域を他の両域よりも肉厚としたものがあるが、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから成形品へ流入させるための誘導帯的な発想はない。従って、溶融樹脂の流動性の限界により、本従来技術はコンテナ容器など数ミリを超えるような厚肉の成形品にしか適用できない。
また、本発明の誘導帯の効果については、本出願人が既に出願済の特許文献2に開示されているが、次の説明のように本発明の薄肉成形においては異なる作用効果がある。
特許文献2の網状フィルターの場合は、雄型と雌型が線状で両面がぴたっと合うため偏肉の可能性が無く、当接面積も容器よりも少ないために、フィルターの誘導帯は細い溝に溶融樹脂を一旦蓄圧して強力に放出するという効果しかなかった。
しかし、本発明の薄肉成形に適用される誘導帯は、溶融樹脂を一旦蓄圧して強力に放出するという効果とともに、薄肉の容器上に偏肉を生じさせずに容器全体に均一に溶融樹脂を行き渡らすという作用効果を有する。薄肉成形の場合は、空洞部が多いため少しでも金型での肉厚が異なると、偏った方に溶融材料が流動してしまい、より偏肉が生じてしまう。それを防ぐのが、薄肉成形での誘導帯である。
つまり、容器上に放射状に配置された複数の棒状の誘導帯が薄肉の容器上に偏肉を生じさせずに容器全体に均一に溶融樹脂を行き渡らす働きをする。さらに、補助的に太径または幅広の流動帯を誘導帯と併用することで、偏肉を確実に抑えるとともに1mm未満の薄肉成形を射出成形で可能にしようとするものである。
また、離型不良を改善するための従来例としては、特許文献3のように、可動型用ストリッパー、固定入れ子や可動入れ子を用い、これら入れ子に複数のエアー噴出し回路を形成し、型開き時にできる微小隙間にエアー(温風)を噴出して離型するものもある。このようなエアーの注入により離型をスムースにしようとするアイディアは多数あるが、いずれも型開き時にできる微小隙間にエアーを注入するだけのもので、確実に離型不良を防止できるものではなかった。
【特許文献1】特開2005−112398
【特許文献2】特開平6−87174
【特許文献3】特開2007−168120
【本発明が解決しようとする課題】
【0003】
射出成形による薄肉容器の成形品、例えば深形のコップやブリスタのようなフィギュアケースなどの薄肉容器の一体成形には、以下の課題がある。
(1)成形品全体に熔融樹脂を均一に行き渡らせる構造が必要である。
(2)射出成形時に、金型内の熔融樹脂の流動性を高める構造が必要である。
そのためには、低圧成形が可能で、かつ、低圧成形でも薄肉部でのヒケが生じない構造が必要である。
(3)金型、成形機の精度によっては、薄肉上の肉厚が変化して偏肉を生じるが、これを金型の構造で防止する必要がある。
(4)離型不良を生じない成形品の構造およびそれを実現する金型構造が必要である。
そこで本発明は、以下に述べる手段により、従来の薄肉立体成形品の成形時の射出成形の欠点を解決しようとするものである。
【問題を解決するための手段】
【0004】
本発明の薄肉成形品は、以下のことを特徴とするものである。
請求項1においては、
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
【0005】
請求項2においては、
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部と、前記開口部の外周にツバ部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
【0006】
請求項3においては、
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
(c)前記薄肉底面上に設けられ、かつ、棒状の太径または幅広のリブが成形品の中心部から放射状に伸張する形状であって、前記棒状の太径または幅広のリブの先端が、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから薄肉底面へ流入させるために、前記リブの先端が成形品の外縁に到達しない形状を有する誘導帯
【0007】
請求項4においては、
立体的な成形品の側面に、棒状の太径または幅広のリブであって、かつ、前記リブの先端が側面の外縁に到達しない形状を有する複数の側面流動帯を形成したことを特長とする前記請求項1ないし3のいずれか一に記載の薄肉の立体成形品。
【0008】
請求項5においては、
立体的な成形品のツバ部に、棒状の太径または幅広のリブであって、かつ、前記リブの先端が側面またはツバ部の外縁に到達しない形状を有する複数のツバ部流動帯を形成したことを特長とする前記請求項2に記載の薄肉の立体成形品。
【0009】
請求項6においては、
薄肉で立体的な成形品を成型するための金型装置において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品用金型装置。
(a)立体成形品の底面と側面と開口部を形成するためのキャビティとコア
(b)前記立体成形品の開口部の内周に凸部を形成するために、アンダーカット用凹部を有し、かつ、離型時に前記アンダーカット用凹部にエアを供給するためのエア溝を有するコア
【0010】
請求項7においては、
薄肉で立体的な成形品を成型するための金型装置において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品用金型装置。
(a)立体成形品の底面と側面と開口部を形成するためのキャビティとコア
(b)前記立体成形品の開口部の内周に凸部を形成するために、アンダーカット用凹部を有し、かつ、離型時に前記アンダーカット用凹部にエアを供給するためのエア溝を有するコア
(c)前記キャビティに装着されるキャビティ入れ子であって、溶融樹脂を効率よく充填するための誘導帯溝を設けるとともに、前記キャビティ入れ子の周囲の枠で前記誘導帯溝を囲う構成としたキャビティ入れ子
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1ないし2においては、成形品の開口部の内周に凸部を設け、その凸部を利用して、離型時にエアーを平均的圧力で成形品全体にかけるようにするので、離型不良を防止できる効果がある。
【0012】
請求項3ないし5においては、離型不良、成形不良を同時に防止でき、かつ、薄肉でも一定の強度を持つという効果がある。熔融樹脂を一旦蓄圧してから薄肉容器や薄肉箱型へ流入させるために、その両端が成形品の外縁に到達しない形状を有する誘導帯を形成したので、低圧成形が可能となり、1mm以下の薄肉成形において大掛かりな装置を必要とせず、かつ、反りや抜けのない成形品が得られるという効果がある。また、誘導帯を形成することで、低圧成形であるにもかかわらず金型内の熔融樹脂の流動が格段にスムースになり、大型で薄肉の一体成形プラスチック成形品が製造可能になる。さらに、複数の流動帯を設けるので、薄肉で複雑な形状の立体成形品であっても一定の強度を持つという効果がある。
【0013】
請求項6ないし7においては、薄肉の立体成形品に好適の金型装置であって、アンダーカット用の凹部を設け、そこへエアー注入のエアー溝からエアーを注入して、離型時の離型不良を防止する効果と、太径または幅広の誘導帯溝や流動帯などにより薄肉成形品に低圧成形でも充分に樹脂を成形品に充填でき、かつ、成形品の末端まで偏肉することなく均一に溶融樹脂に行き渡らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0014】
図1は、本発明のプラスチック成形品の薄肉容器の一例を示すもので、薄肉容器1の底面3にその中心から8本の棒状の誘導帯6と、その誘導帯6の先端部を囲うようにリング状の流動帯12と棒状の補助流動帯13を設けたものである。これは誘導帯の本数を増やすことなく、薄肉容器1の周縁部での偏肉を防ぐようにしたもので、放射状に設けられた誘導帯6のそれぞれの先端を囲うようにリング状の流動帯12を形成したものである。リング状流動帯12は、誘導帯6からの溶融樹脂を受け取った後に薄肉容器1の周縁方向に流動させる働きをする。さらに、その流動性をさらに増すために、リング状流動帯12の外周に短い棒状の補助流動帯13を放射状に結合する。流動性が高まると同時に、薄肉容器1の周縁部での偏肉も防止できる。上述の誘導帯6や各流動帯12、13は、成形不良を防止するとともに、薄肉の成形品の強度の補強にもなる。
【0015】
図2は、図1のA−A’断面図である。
円筒形の薄肉成形品の側面に側面流動帯14を設け、その底面には誘導帯6、リング状流動帯12、補助流動帯13が設けられているのでヌケや偏肉が防止できる。その側面は溶融樹脂の流動力が落ちつつある部分なので、流動を補助する構造が必要である。側面には、一般的にゲートを設けないので誘導帯が使用できない。そこで、底面の誘導帯6から流動してくる溶融樹脂を側面に設けられた側面流動路14にてその流動を助けてやるものである。大型の成形品や極めて薄い肉厚の成形品に有効である。
16は、誘導帯6上にできるゲート跡で、5は薄肉容器1のツバ部、26は開口部ある。そして、開口部26の内周面に凸部24が形成されている。この凸部24は、後述するコア19のアンダーカット部にて形成されるもので、離型時のエアー注入は、凸部24を介して行なわれる。本発明のポイントの一つは、アンダーカットで形成される凸部24にある。従来の薄肉容器では、離型時に自然に生じる微小隙間にエアーを注入するか、または、コア19にエアー穴22を設けて薄肉容器の底面の内側にエアーを吹き付けて離型を図るものしかなかった。
この場合、容器の底面の内側には、エアーを吹きつけた際の吹き付け跡が残り、そこに埃や水垢などが付着して不潔になる欠点があった。
本発明の場合は、容器の開口部26の凸部24を介してキャビ17とコア19間の凹部10からエアーが回るので、薄肉容器1の内面に吹き付け跡を残すことはない。従って、本発明で作られる容器は、埃や水垢などが付着して不潔になるという欠点がなくなる。
【0016】
以下に、本発明において補助的な役割を持つ誘導帯の作用、効果について詳細に説明する。
複数の十字状の誘導帯6の交点にゲート跡16が残っているが、このゲートから注入された溶融樹脂が、四方に伸びる誘導帯6の先端方向へと充填される。このときに、溶融樹脂は太径または幅広の誘導帯6内で充填されるが、薄肉の周囲へはその肉厚の違いにより溶融樹脂が流動しにくくなる。この作用が、溶融樹脂が誘導帯6内で一定の圧力を蓄えることになる。そして、誘導帯6内の溶融樹脂が低圧で加圧され続けるために、溶融樹脂は強制的に薄肉容器1の肉薄部に放出される。このときの放出は、誘導帯6内で一旦蓄圧された溶融樹脂なのでその放出力は強く、その強い放出力が薄肉容器1の末端まで溶融樹脂を行き渡らせるのである。誘導帯6と薄肉容器1は一体成形されるので、誘導帯6から放出される溶融樹脂は、誘導帯6の棒状のリブの全周から放出されるのであるが、金型内の樹脂は流れやすいところから優先的に流れる、という溶融樹脂の流れの法則から、誘導帯6の棒状のリブの先端方向に優先的に流れる。このことにより、溶融樹脂の流動が遅くなる薄肉容器1のコーナー部分や外縁部分への流動を早めてやる効果がある。
また、ゲート7は、薄肉成形品の面積や体積が大きな場合、誘導帯6のリブの先端部近傍に複数のゲート7を対称位置に形成しても良い。成形品の面積が大きいときは、一点ゲートだと溶融樹脂が流動しにくくなるので、多点ゲートで流動性を改善してやるものである。多点ゲートの場合は、溶融樹脂が均一に注入するために、その位置を対称にしてやる必要がある。
このため、低圧成形でありながら1mm以下の薄肉容器を必要とする成形品の成形が可能で、かつ、ショット数を上がることから成形効率が飛躍的に高まるという優れた効果を奏する。
本発明は、コップ、部品容器やブリスタなどの薄肉で立体的な成形品に適用できる。材料の樹脂は、一般的なポリプロピレンやアクリルなどで良い。
【0017】
図3は、他の実施例の上面図を示すもので、直方体の薄肉成形品の平面図を示す。
具体的には、金属シャフトなどを保護しながら搬送するための薄肉の部品容器に関するものである。
薄肉搬送容器は、外周にツバ部5を有する薄肉箱型2の底面3に金属シャフトなどの先端を収納する筒型で中空の収納部4からなる。この収納部4は、金属シャフトなどの先端が収納しやすいように開口部が大きく底部がそれより小さくなるようなテーパーがつけられる。
複数の収納部4の間には、十字状の誘導帯6を形成する。単なる薄肉の容器ではなく、複数の収納部4を一体成形するので、成形時に溶融樹脂を成形品全体に行き渡らせるためにも、この誘導帯6の効果は大きい。また、外縁のツバ部5も末端での樹脂抜けや、それを防ぐために高圧での樹脂注入をするとツバ部5でバリが発生しやすくなるが、本発明の誘導帯6の効果で樹脂抜けやバリの発生を防止できる。
その他の適用例としては、フイギュアなどの吊り下げ展示用の保護ケース、卵容器や電池などの小物容器の展示・収納ケースがある。収納品の保護をかねたケースで、ある程度の強度を必要とする薄肉の成形品に特に有用である。この種成形品の場合は、0.8mmや0.3mm程度の薄肉で作られているが、本発明技術を採用すれば、1m程度の高さのある展示棚などから落下したとしても収納物は保護される。
また、薄肉で、かつ、構造が複雑なので成形をしやすくする必要があるので、誘導帯や流動帯を多用する。以下にそれらの作用効果を説明すると、底面の誘導帯6から流動してくる溶融樹脂を側面に設けられた側面流動路14にてその流動を助け、さらにツバ部での流動を助けてやるものである。ツバ部流動帯15は、ツバ部5にも複数設けられる。作用効果は、容器が円筒形であろうが直方体であろうが、ツバ部などの末端部分は流動性が悪くなるので、それを補完する構造が無ければ変形しやすい成形品となって製品価値が低下する。その意味でも、ツバ部誘導帯15は製品価値をあげる働きをするものである。ツバ部誘導帯15の先端はツバ部5の外縁に達しないように設けるので、多少は誘導帯6のような蓄圧作用もある。これによって、ツバ部5でのヌケや偏肉が解消される
また、薄肉成形はどうしても強度は劣るので、補助誘導帯13、側面流動帯14やツバ部流動帯15には、成形品の補強もかねることで、有用な薄肉成形品を提供できる。
【0018】
図4は、図3のB−B’断面図を示すもので、箱型2の底面3上に中空の収納部4が形成されている。この収納部に金属シャフトなどが収納される。また、底面3の表裏両面には、十字状の誘導帯6が形成される。箱型2の外縁にはツバ部5が形成される。図2と同様に、箱型2の開口部26の内周面に凸部24が形成され、離型時のエアー注入は、凸部24を介して行なわれる。
【0019】
図5は、本発明の薄肉の立体容器を成形するための金型の断面図を示すもので、キャビティ17とコア19にそれぞれ薄肉容器1を作るための凹部10が形成される。このキャビティ17とコア19を押し合わすことによって薄肉容器1が成形される。本図の場合は、誘導帯6や流動帯12、13,14、15を形成する溝は図示しないが、それらの溝は必要に応じて両面彫り、または、片面彫りで金型上に形成される。以下に、離型時の離型不良を解消するための金型構造について説明する。
離型時に、先ずコア19のキャビ17に接して設けられたストリッパー板20がパーティング面28方向に移動して、薄肉容器1の凸部24のアンダーカット部分を極わずかではあるが、型から浮かすような作用をする。このときに、エアー溝21から供給されたエアーが、凸部24のアンダーカット部分を介して凹部10に注入される。これにより、離型時にキャビティ17とコア19での成形品の引っ張り合いがなくなり、離型不良を防止できる。この動作の詳細については、拡大部Aの図6で詳細に説明する。
エアーの供給につき詳細に説明すると、下型9とコア19に設けられたエアー穴22から、圧入されたエアーがコア19のエアー溝21に供給される。エアー溝21は、コア19の全周にわたって切られている溝で、例えば一箇所でエアー穴22と連通させた場合、そこから供給されるエアーが、エアー溝21を介してコア19の全周にわたって圧入される。このエアーの供給とアンダーカット部分の浮き上がり動作が呼応することでスムースな離型が可能となる。簡単な構造の薄肉容器においては、押出しピンを用いなくても薄肉容器を簡単に離型することも可能である。この場合は、通常の離型のための押し出しピン用の押し出しピン孔が不要となり、金型製造が非常にやりやすく、かつ、押し出し動作による成形品の変形がなくなり、さらに、ショット数が上がるという利点がある。
8は、上型でキャビティ17とキャビティ入れ子18に接している。ここに溶融樹脂を供給するスプルーやランナーが形成される。拡大部Bについては、図7と8にて詳細に説明する。
29は、エアー漏れを防止するためのOリングを示すもので、必要に応じて金型内に複数個所も受けても良い。
【0020】
図6は、図5の拡大部Aの部分断面図を示す。キャビティ17とコア19で凹部10が形成される。この凹部10に成形品の溶融樹脂がゲートから注入され、成形品の側面25が形成される。キャビティ17とストリッパー板20でパーティング面28が形成され、キャビティ17側の凹部10で成形品のツバ部5が形成される。コア19には、ツバ部5と反対側、つまり、成形品の開口部の内周側にアンダーカット用の溝であるアンダーカット用凹部27が設けられ、この溝で成形品の凸部24が形成される。離型時には、先ずストリッパー板20がキャビティ17を押し上げるようにスライドし、アンダーカットになっている凸部24が少し浮き上がるような状態になり、凸部24とアンダーカット用凹部27との間にはエアーが通るくらいの空隙23ができる。それと同期してコア19のエアー穴22からエアーが圧入されてコア19の全周に切られたエアー溝21にエアーが噴き出す。コア19の外周から平均的に噴出したエアーは、空隙23を介して成形品の側面25の内側に吹き上がり、それが成形品の底部に圧力をかけることで成形品の離型が容易になるようにしている。さらに、エアーはパーティング面からも吹き上げるので成形品全体の押し上が可能となり、より離型不良の改善がされる。本発明の構成だけを使うのではなく、必要に応じて、既存の押し出しピンや他のエアー押し出し手段を追加で設けても良い。
【0021】
図7は、図5の拡大部Bの部分断面図を示す。溶融樹脂の流動性を高めるために、成形品の底面に誘導帯を形成する場合について説明する。キャビティ17に装着されるキャビティ入れ子18に誘導帯溝11を形成し、それと押し合わせをするコア19側に成形品の底部を形成する凹部10を設けた例を示す。これにより、成形品の底面に誘導帯を有する薄肉の容器が得られるが、誘導帯溝11はキャビティ入れ子18の外周枠で囲うような形状にしてある。これは、キャビティ17とキャビティ入れ子18とコア19が接する部分で、バリが出るのを防ぐための構造である。もし、図8に示すように、キャビティ入れ子18の外周枠を設けずに誘導帯溝11が直接キャビティ17に接した状態で成形すると、成形時の圧力で金型が開くことで、その接する面でバリが出やすくなる。これを防止するためにキャビティ入れ子18側に枠を形成して誘導帯溝を囲うような構成にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の薄肉容器の平面図である。
【図2】本発明の薄肉容器の断面図である。
【図3】本発明の薄肉容器の他の変形実施例の平面図である。
【図4】本発明の薄肉容器の他の変形実施例の断面図である。
【図5】本発明の薄肉容器のための金型装置の断面図である。
【図6】図5の拡大部Aの断面図である。
【図7】図5の拡大部Bの断面図である。
【図8】図5の拡大部Bの断面図を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 薄肉容器
2 薄肉箱型
3 底面
4 収納部
5 ツバ部
6 誘導帯
7 ゲート
8 上型
9 下型
10 凹部
11 誘導帯溝
12 リング状流動帯
13 補助流動帯
14 側面流動帯
15 ツバ部流動帯
16 ゲート跡
17 キャビティ
18 キャビティ入れ子
19 コア
20 ストリパー板
21 エア溝
22 エア穴
23 空隙
24 凸部
25 側面
26 開口部
27 アンダーカット用凹部
28 パーティング面
29 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
【請求項2】
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部と、前記開口部の外周にツバ部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
【請求項3】
薄肉で立体的な成形品において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品。
(a)底面と側面と開口部を有する立体成形品
(b)前記立体成形品の開口部の内周に形成される凸部
(c)前記薄肉底面上に設けられ、かつ、棒状の太径または幅広のリブが成形品の中心部から放射状に伸張する形状であって、前記棒状の太径または幅広のリブの先端が、ゲートから金型内に注入される熔融樹脂を一旦蓄圧してから薄肉底面へ流入させるために、前記リブの先端が成形品の外縁に到達しない形状を有する誘導帯
【請求項4】
立体的な成形品の側面に、棒状の太径または幅広のリブであって、かつ、前記リブの先端が側面の外縁に到達しない形状を有する複数の側面流動帯を形成したことを特長とする前記請求項1ないし3のいずれか一に記載の薄肉の立体成形品。
【請求項5】
立体的な成形品のツバ部に、棒状の太径または幅広のリブであって、かつ、前記リブの先端が側面またはツバ部の外縁に到達しない形状を有する複数のツバ部流動帯を形成したことを特長とする前記請求項2に記載の薄肉の立体成形品。
【請求項6】
薄肉で立体的な成形品を成型するための金型装置において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品用金型装置。
(a)立体成形品の底面と側面と開口部を形成するためのキャビティとコア
(b)前記立体成形品の開口部の内周に凸部を形成するために、アンダーカット用凹部を有し、かつ、離型時に前記アンダーカット用凹部にエアを供給するためのエア溝を有するコア
【請求項7】
薄肉で立体的な成形品を成型するための金型装置において、以下の構成からなることを特徴とする薄肉の立体成形品用金型装置。
(a)立体成形品の底面と側面と開口部を形成するためのキャビティとコア
(b)前記立体成形品の開口部の内周に凸部を形成するために、アンダーカット用凹部を有し、かつ、離型時に前記アンダーカット用凹部にエアを供給するためのエア溝を有するコア
(c)前記キャビティに装着されるキャビティ入れ子であって、溶融樹脂を効率よく充填するための誘導帯溝を設けるとともに、前記キャビティ入れ子の周囲の枠で前記誘導帯溝を囲う構成としたキャビティ入れ子

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−160799(P2009−160799A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−342005(P2007−342005)
【出願日】平成19年12月30日(2007.12.30)
【出願人】(591206500)株式会社 ダイサン (14)
【Fターム(参考)】