説明

薄膜トランジスターの製造方法

【課題】例えば半導体層にオーバーエッチングを生じさせることなく、半導体層に水素化処理を行い、駆動能力の高い薄膜トランジスターを製造する。
【解決手段】薄膜トランジスターの製造方法は、基板(10)上に、半導体層(110)を形成する工程と、半導体層上に基板を覆うようにシリコン酸化膜(130)を形成する工程と、シリコン酸化膜上に基板を覆うようにシリコン窒化膜(140)を形成する工程と、シリコン窒化膜上にゲート電極(120)を形成する工程と、半導体層の形成領域及びゲート電極の形成領域を除く領域において、シリコン窒化膜に貫通孔(210)を形成する工程と、貫通孔を介して半導体層に水素を供給する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスターの製造方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の薄膜トランジスター(以下、「TFT」と適宜称する)として、半導体膜として高温ポリシリコン(HTPS:High Temperature Poly Silicon)膜が用いられる高温ポリシリコンTFTがある。高温ポリシリコンTFTの製造プロセスでは、TFTの駆動能力を高めるために(即ち、オン電流を増大させるために)、高温ポリシリコン膜に水素を供給する水素化処理が一般的に行われる(例えば特許文献1参照)。水素化処理を行うことにより、高温ポリシリコン膜内に存在する欠陥準位を低減でき、TFTの駆動能力を高めることができる。
【0003】
一方、この種のTFTでは、TFTの駆動能力を高めるために、ゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜が用いられる場合がある。シリコン窒化膜は、シリコン酸化膜と比べて誘電率が高いので、TFTの駆動能力を高めることができる。
【0004】
ここで、高温ポリシリコンTFTにおいてゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜を用いる場合、水素がシリコン窒化膜を透過しにくいという性質を有しているため、水素化処理を十分に行うことができず、TFTの駆動能力を高めることが困難であるという技術的問題点がある。
【0005】
このような問題点を解決するために、例えば特許文献1では、基板上に半導体膜(poly-Si膜)、シリコン窒化膜及びゲート電極を順に積層し、シリコン窒化膜のうちゲート電極と半導体膜との間に挟まれた部分以外の部分をエッチングにより除去した後に、水素化処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−275701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した例えば特許文献1に開示された技術によれば、シリコン窒化膜をエッチングにより除去する際、半導体膜にオーバーエッチングが生じてしまう(即ち、このエッチングにより半導体膜の一部が除去されてしまう)おそれがあり、最悪の場合には、半導体膜が分断(或いは切断)されてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0008】
本発明は、例えば前述した問題点に鑑みなされたものであり、ゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜を有する薄膜トランジスターを製造する薄膜トランジスターの製造方法であって、例えば半導体層にオーバーエッチングが生じることを回避できるとともに半導体層に水素化処理を確実に行うことができ、駆動能力の高い薄膜トランジスターを製造することが可能な薄膜トランジスターの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る薄膜トランジスターの製造方法は上記課題を解決するために、基板上に、半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に前記基板を覆うようにシリコン酸化膜を形成する工程と、前記シリコン酸化膜上に前記基板を覆うようにシリコン窒化膜を形成する工程と、前記シリコン窒化膜上にゲート電極を形成する工程と、前記半導体層の形成領域及び前記ゲート電極の形成領域を除く領域において、前記シリコン窒化膜に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を介して前記半導体層に水素を供給する工程と、を有する。
【0010】
本発明に係る薄膜トランジスターの製造方法によれば、先ず、例えばガラス基板、石英基板等の基板上に、例えば高温ポリシリコンからなる半導体層を形成する。次に、半導体層上に基板を覆うようにシリコン酸化膜を形成する。典型的には、基板上に形成された半導体層を覆うように、基板の概ね全面にシリコン酸化膜を形成する。次に、シリコン酸化膜上に基板を覆うようにシリコン窒化膜を形成する。典型的には、シリコン酸化膜と同様に、基板上に形成された半導体層を覆うように、基板の概ね全面にシリコン窒化膜を形成する。次に、シリコン窒化膜上にゲート電極を形成する。この際、ゲート電極の少なくとも一部が、半導体層におけるチャネル領域となるべき領域に重なるように、ゲート電極を形成する。なお、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜のうち半導体層とゲート電極との間に位置する部分が、薄膜トランジスターのゲート絶縁膜として機能する。
【0011】
次に、本発明では特に、半導体層の形成領域及びゲート電極の形成領域を除く領域において、シリコン窒化膜に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して半導体層に水素を供給する。即ち、本発明では特に、先ず、基板上におけるシリコン窒化膜が形成された領域のうち半導体層の形成領域(即ち、半導体層が形成された領域)とゲート電極の形成領域(即ち、ゲート電極が形成された領域)とを除く領域、言い換えれば、基板上において、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が形成されているが半導体層及びゲート電極が形成されていない領域に、シリコン窒化膜を貫通する貫通孔を例えばエッチングにより形成する。シリコン窒化膜に貫通孔を形成することにより、シリコン窒化膜下に形成したシリコン酸化膜の一部を露出させる。次に、例えば、半導体層、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びゲート電極等が形成された基板を水素雰囲気に曝すことにより、シリコン窒化膜に形成した貫通孔を介して半導体層に水素を供給する。この際、貫通孔内でシリコン酸化膜の一部が露出しているので、水素は、貫通孔からシリコン酸化膜内に侵入及び拡散することにより、半導体層に到達する。即ち、本発明によれば、水素が透過しにくいシリコン窒化膜に形成した貫通孔を介して水素をシリコン酸化膜内に侵入及び拡散させることによって、半導体層に水素を供給する(即ち、半導体層に水素化処理を行う)ことができる。ここで、半導体層の形成領域及びゲート電極の形成領域を除く領域に貫通孔を形成するので、貫通孔を例えばエッチングにより形成する際、半導体層にオーバーエッチングが生じることはない。
【0012】
よって、本発明に係る薄膜トランジスターの製造方法によれば、例えば半導体層にオーバーエッチングが生じることを回避できるとともに半導体層に水素化処理を確実に行うことができる。したがって、駆動能力の高い薄膜トランジスターを製造することが可能となる。
【0013】
本発明に係る薄膜トランジスターの製造方法の一態様では、前記半導体層にチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を形成する工程と、前記ゲート電極上に前記基板を覆うように絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜に、前記ソース領域又は前記ドレイン領域の一部が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、を有し、前記貫通孔を形成する工程は、前記貫通孔と前記チャネル領域との距離が、前記コンタクトホールと前記チャネル領域との距離よりも小さくなるように、前記貫通孔を形成する。
【0014】
この態様によれば、貫通孔とチャネル領域との距離が、コンタクトホールとチャネル領域との距離よりも小さいので、貫通孔を介して半導体層に水素を供給する効率を高めることができる。即ち、この態様によれば、貫通孔がチャネル領域に比較的近接して形成されるので、貫通孔及びシリコン酸化膜を介して水素を半導体層に供給する水素化処理を確実に行うことが可能となる。なお、貫通孔が半導体層に近いほど、半導体層に水素化処理をより確実に行うことができる。また、貫通孔はチャネル領域により近いほうが好ましい。貫通孔がチャネル領域に近いほど、チャネル領域に水素化処理をより確実に行うことができ、薄膜トランジスターの駆動能力をより確実に高めることができる(即ち、薄膜トランジスターのオン電流をより一層増大させることができる)。
【0015】
前述した、半導体層にチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を形成する工程を有する態様では、前記貫通孔を形成する工程は、前記チャネル領域を取り囲むように、前記貫通孔を複数形成してもよい。
【0016】
この場合には、半導体層のチャネル領域により均一に水素を供給することができる。即ち、半導体層のチャネル領域に水素化処理をより均一に行うことができる。よって、薄膜トランジスターの駆動能力をより高めることができる。
【0017】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るTFTの構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係るTFTが有する半導体層及びゲート電極の平面形状を示す平面図である。
【図3】第1実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図(その1)である。
【図4】第1実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図(その2)である。
【図5】第1実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図(その3)である。
【図6】第1実施形態に係る水素供給ホールを形成する工程を示す平面図である。
【図7】第1実施形態に係る水素供給ホールを形成する工程を示す断面図である。
【図8】第1実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図(その4)である。
【図9】第1実施形態に係る水素化処理を行う工程を示す断面図である。
【図10】第1実施形態に係る水素化処理を行う工程を示す平面図である。
【図11】第1実施形態に係る水素供給ホールの配置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るTFTの製造方法について、図1から図11を参照して説明する。
【0021】
先ず、本実施形態に係るTFTの製造方法によって製造されるTFTの構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るTFTの構成を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るTFTが有する半導体層及びゲート電極の平面形状を示す平面図である。なお、図1は、図2のA−A’線断面図に相当する。
【0023】
図1において、本実施形態に係るTFT100は、例えばガラス基板、石英基板等である基板10上に形成されたTFTであり、半導体層110と、シリコン酸化膜130と、シリコン窒化膜140と、ゲート電極120と、ソース電極150aと、ドレイン電極150bとを備えている。
【0024】
半導体層110は、高温ポリシリコン(HTPS)から形成されており、チャネル領域111、ソース領域112a及びドレイン領域112bを有している。なお、チャネル領域111とソース領域112aとの界面、又は、チャネル領域111とドレイン領域112bとの界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
【0025】
図2に示すように、半導体層110は、所定の平面形状を有している。
【0026】
図1において、シリコン酸化膜130は、半導体層110上に基板10を覆うように形成されたシリコン酸化膜である。シリコン酸化膜130は、基板10上に形成された半導体層110を覆うように、基板10の概ね全面に形成されている。
【0027】
シリコン窒化膜140は、シリコン酸化膜130上に基板10を覆うように形成されたシリコン窒化膜である。シリコン窒化膜140は、シリコン酸化膜130と同様に、基板10上に形成された半導体層110を覆うように、基板10の概ね全面に形成されている。
【0028】
ゲート電極120は、シリコン窒化膜140上に導電性材料から形成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、ゲート電極120は、所定の平面形状を有しており、ゲート電極120の一部が半導体層110のチャネル領域111に重なっている。
【0030】
シリコン酸化膜130及びシリコン窒化膜140のうち半導体層110とゲート電極140との間に位置する部分が、TFT100のゲート絶縁膜として機能する。このように、TFT100は、ゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜130に加えてシリコン窒化膜140が用いられるので、例えばゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜130のみを用いる場合と比較して、TFT100の駆動能力を高めることができる。
【0031】
ソース電極150aは、ゲート電極120の上層側に形成された絶縁膜41上に導電性材料から形成されている。ソース電極150aは、絶縁膜41、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130を貫通するコンタクトホール81aを介して、半導体層110のソース領域112aに電気的に接続されている。
【0032】
ドレイン電極150bは、ソース電極150aと同様に、絶縁膜41上に導電性材料から形成されている。ドレイン電極150bは、絶縁膜41、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130を貫通するコンタクトホール81bを介して、半導体層110のドレイン領域112bに電気的に接続されている。
【0033】
絶縁膜41は、例えばシリコン酸化物から形成されている。
【0034】
次に、前述したように構成されたTFT100の製造方法について、図3から図11を参照して説明する。
【0035】
図3から図5は、本実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図である。なお、図3から図5は、図1に示した断面図に対応して示してある。
【0036】
先ず、図3に示すように、基板10上に所定の平面形状(図2参照)を有するように、半導体層110を高温ポリシリコンから形成する。次に、半導体層110上に基板10を覆うようにシリコン酸化膜130を形成する。即ち、基板10上に形成された半導体層110を覆うように、基板10の概ね全面にシリコン酸化膜130を形成する。次に、シリコン酸化膜130上に基板10を覆うようにシリコン窒化膜140を形成する。即ち、シリコン酸化膜130と同様に、基板10上に形成された半導体層110を覆うように、基板10の概ね全面にシリコン窒化膜140を形成する。次に、シリコン窒化膜140上に導電材料からなる導電膜121を形成する。
【0037】
次に、図4に示すように、導電膜121上に、図2に示したゲート電極120の平面形状に対応する所定の平面形状を有するようにレジスト膜810を形成する。次に、レジスト膜810をマスクとして、導電膜121をエッチングによりパターニングすることで、ゲート電極120(図5参照)を形成する。
【0038】
図6は、本実施形態に係る水素供給ホールを形成する工程を示す平面図である。図7は、本実施形態に係る水素供給ホールを形成する工程を示す断面図である。図7は、図6のB−B’線断面図に相当する。
【0039】
図6及び図7に示すように、ゲート電極120を形成した後に、半導体層11の形成領域及びゲート電極120の形成領域を除く領域において、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130を貫通する水素供給ホール210を形成する。即ち、基板10上におけるシリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130が形成された領域のうち半導体層110が形成された領域とゲート電極120が形成された領域とを除く領域(言い換えれば、基板10上において、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130が形成されているが半導体層110及びゲート電極120が形成されていない領域)に、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130を貫通する水素供給ホール210を例えばエッチングにより形成する。この際、シリコン窒化膜140及びシリコン酸化膜130に水素供給ホール210を形成することにより、シリコン窒化膜140下に形成したシリコン酸化膜130の一部を露出させる。なお、水素供給ホール210は本発明に係る「貫通孔」の一例である。なお、水素供給ホール210は、シリコン酸化膜130が露出するようにシリコン窒化膜140に形成されればよく、シリコン窒化膜140のみを貫通するように形成されてもよい。
【0040】
図8は、本実施形態に係るTFTの製造工程を示す断面図である。なお、図8は、図1に示した断面図に対応して示してある。
【0041】
次に、図8に示すように、例えばゲート電極120をマスクとして半導体層110に不純物をドープすることにより、チャネル領域111、ソース領域112a及びドレイン領域112bを形成する。次に、ゲート電極120の上層側に絶縁膜41を例えばシリコン酸化物等の絶縁材料から形成する。絶縁膜41を形成した後に、高温ポリシリコンからなる半導体層10に水素を供給する水素化処理を行う。
【0042】
図9は、本実施形態に係る水素化処理を行う工程を示す断面図である。図10は、本実施形態に係る水素化処理を行う工程を示す平面図である。なお、図9は、図7に示した断面図に対応して示してある。
【0043】
図9及び図10に示すように、本実施形態に係る水素化処理では、半導体層10、シリコン酸化膜130、シリコン窒化膜140及びゲート電極120等が形成された基板10を水素雰囲気に曝すことにより、水素供給ホール210を介して半導体層110に水素を供給する。この際、水素供給ホール210内でシリコン酸化膜130の一部が露出しているので、水素は、水素供給ホール210からシリコン酸化膜130内に侵入及び拡散することにより、半導体層210に到達する(図中、矢印P1参照)。即ち、本実施形態に係る水素化処理によれば、水素が透過しにくいシリコン窒化膜140に形成した水素供給ホール210を介して水素をシリコン酸化膜130内に侵入及び拡散させることによって、半導体層110に水素を供給する(即ち、半導体層110に水素化処理を行う)ことができる。ここで、半導体層110の形成領域及びゲート電極120の形成領域を除く領域に水素供給ホール210を形成するので、水素供給ホール210を例えばエッチングにより形成する際、半導体層110にオーバーエッチングが生じることはない。なお、絶縁膜41は、例えばシリコン酸化物等の絶縁材料から形成され、水素を透過させることができる。
【0044】
このように水素化処理を行った後に、図1に示したコンタクトホール81a及び81bを絶縁膜41に形成する。次に、絶縁膜41上にソース電極150a及びドレイン電極150bを形成する。この際、ソース電極150aとソース領域112aとがコンタクトホール81aを介して電気的に接続されるようにソース電極150aを形成し、ドレイン電極150bとドレイン領域112bとがコンタクトホール81bを介して電気的に接続されるようにドレイン電極150bを形成する。
【0045】
以上のようにして、図1に示したTFT100を製造することができる。ここで、本実施形態では特に、前述したように、半導体層110の形成領域及びゲート電極12の形成領域を除く領域において、水素供給ホール210を形成し、この水素供給ホール210を介して半導体層110に水素を供給するので、半導体層110にオーバーエッチングが生じることを回避できるとともに半導体層110に水素化処理を確実に行うことができる。したがって、駆動能力の高いTFT100を製造することが可能となる。
【0046】
次に、本実施形態に係る水素供給ホール210の配置について説明を加える。
【0047】
図11は、本実施形態に係る水素供給ホールの配置を説明するための模式図である。
【0048】
図11に示すように、本実施形態では特に、水素供給ホール210とチャネル領域111との距離D1が、コンタクトホール81bとチャネル領域111との距離D2よりも小さくなるように、水素供給ホール210を形成する。よって、例えば距離D1が距離D2よりも大きい場合と比較して、水素供給ホール210を介して半導体層110に水素を供給する効率を高めることができる。即ち、本実施形態では、水素供給ホール210がチャネル領域111に比較的近接して形成されるので、水素供給ホール210及びシリコン酸化膜130を介して水素を半導体層110に供給する水素化処理を確実に行うことが可能となる。なお、水素供給ホール210が半導体層110に近いほど、半導体層110に水素化処理をより確実に行うことができる。また、水素供給ホール210はチャネル領域111により近いほうが好ましい。水素供給ホール210がチャネル領域111に近いほど、チャネル領域111に水素化処理をより確実に行うことができ、TFT100の駆動能力をより確実に高めることができる(即ち、TFT100のオン電流をより一層増大させることができる)。
【0049】
更に、図6に示すように、本実施形態では特に、チャネル領域111を取り囲むように、水素供給ホール210を複数(具体的には、4個)形成する。よって、複数の水素供給ホール210を介して半導体層110のチャネル領域111により均一に水素を供給することができる。即ち、半導体層210のチャネル領域111に水素化処理をより均一に行うことができる。したがって、TFT100の駆動能力をより高めることができる。なお、本実施形態では、水素供給ホール210を4個形成する例を挙げたが、水素供給ホール210を1個だけ形成してもよいし、2個、3個或いは5個以上形成してもよい。水素供給ホール210の個数が多いほど、水素供給ホール210を介して半導体層110に水素を供給する効率を高めることができる。
【0050】
なお、本発明に係る薄膜トランジスターの製造方法は、例えばTFTアクティブマトリクス駆動形式の液晶装置、有機エレクトロルミネッセンス(El)装置等の電気光学装置を製造する製造プロセスに適用可能である。
【0051】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う薄膜トランジスターの製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10…基板、41…絶縁膜、81a、81b…コンタクトホール、100…TFT、110…半導体層、111…チャネル領域、112a…ソース領域、112b…ドレイン領域、120…ゲート電極、130…シリコン酸化膜、140…シリコン窒化膜、150a…ソース電極、150b…ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に前記基板を覆うようにシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜上に前記基板を覆うようにシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記半導体層の形成領域及び前記ゲート電極の形成領域を除く領域において、前記シリコン窒化膜に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を介して前記半導体層に水素を供給する工程と、
を有する薄膜トランジスターの製造方法。
【請求項2】
前記半導体層にチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を形成する工程と、
前記ゲート電極上に前記基板を覆うように絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、前記ソース領域又は前記ドレイン領域の一部が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、
を有し、
前記貫通孔を形成する工程は、前記貫通孔と前記チャネル領域との距離が、前記コンタクトホールと前記チャネル領域との距離よりも小さくなるように、前記貫通孔を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスターの製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔を形成する工程は、前記チャネル領域を取り囲むように、前記貫通孔を複数形成することを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−169328(P2012−169328A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26878(P2011−26878)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】