説明

薄膜付き吸音パネル及びクリーンルーム

【課題】 充填材の片面又は両面に表面材を貼着した間仕切り用パネルであって、吸音機能を備えると共に、クリーンルームを構成するパネルとして使用できる吸音パネルの提供。
【解決手段】 正面側の表面材1aに複数の小さい穴3,3・・を貫通し、内部に充填した充填材2は上記穴3,3・・から進入した音波を吸収・減衰する機能を備え、そして表面材1aには支えを設けて僅かな隙間を残して膜4を張着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は間仕切りパネルにおいて、吸音機能の他に防塵機能、防水機能、調湿機能を備えた薄膜付き吸音パネル、及び該吸音パネルを用いたクリーンルームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
間仕切りパネルとはワンフロアーの大きな建物空間を個々の広さをもった部屋に仕切る為に用いられている。図10は従来の一般的な間仕切り装置の断面を含む斜視図を表しているが、パネル(イ)は巾木(ロ)に載って起立し、その上端は天井レール(ハ)に嵌っている。巾木(ロ)は床面に敷設した床レール(ニ)に配置しているアジャスター(ホ)にて適当な高さに支持され、この巾木(ロ)にパネル(イ)が載置されている。
【0003】
そして、各パネル(イ)、(イ)間にはスタッド(ヘ)が介在して互いに連結している。このように、大きな空間が上記パネル(イ)、(イ)・・・にて仕切られ、適当な大きさの部屋空間を作ることが出来る。ところで、上記パネル(イ)は芯材となるペーパーコア(ト)の両面に金属製の表面材(チ)、(チ)を貼着した構造であり、該パネル(イ)は遮音性を備えている。すなわち、パネル(イ)、(イ)・・・にて仕切られることで、隣の部屋に音は伝わり難いが、部屋内部で発生した音を吸収する機能は存在しない。音はパネル面に当って反射するに過ぎず、減衰するには時間がかかる。
【0004】
勿論、間仕切り用のパネル(イ)として、表面に金属製の表面材(チ)、(チ)を貼着すると共に、該表面材(チ)、(チ)の上にクロスを貼り合せた構造のパネルであれば、部屋内部で発生する音をある程度速やかに吸収する機能を有している。しかし、部屋の用途や使用によってはパネル面をクロス貼りとするに適さない場合も多い。また、チリやホコリを嫌う部屋(例えばクリーンルーム)等においては、このクロス貼りパネルを使用することは出来ない。
【0005】
特開2000−120216号に係る「間仕切りパネル構造」は、薄く軽量で、かつ高遮音な間仕切り用多層パネル構造であり、2枚の板を板厚方向に間隔を設けて配置し、断面コの字形で枠体状の連結部材を用いて当該板の周囲を連結することによりパネルを構成し、パネルを複数枚空気層を設けて併設すると共に空気層には吸音材が配置され、当該パネルの周囲の一部を断面コの字形の接続部材を用いて接続し一体化している。
【0006】
特開2002−146727号に係る「透光性防音板および防音壁」は、日照や視界を妨げることにない透光性と透視性を有し、かつ好ましい吸音性と遮音性を備えた防音板および防音壁である。
この透光性防音板は、ポリフッ化ビニール、ポリフッ化エチレンなどの厚さ2mm以下の薄膜状材料に、多数の2mm以下の孔を設けてなる透光性吸音材、パネル枠材、内部に配置する吸音材、およびポリカーボネート、塩化ビニール、メタクリル樹脂などの透光性遮音板などが、その透光性吸音材と遮音板の間には空気層を設けた形態として、リベット、ビス、接着剤などを用いて組み立てられている。
【0007】
このように吸音機能を備えたパネルや壁板は色々存在する。基本的には音波が当った際に反射することなく減衰することが出来る性質の材料でなくてはならないが、減衰効果のある材質としてはロックウールやグラスウールなどの多孔質材料、フレキシブルボード、木毛板、ハードファイバーボード等、色々存在している。
【0008】
ところで、近年の技術進歩に基づき、大気中の汚染から隔離した空間内での作業が求められる場合が往々にしてあり、その空間を形成するクリーンルームが多用されている。例えば、コンピュータ技術分野、バイオ技術分野、医療分野などでは、ミクロの微粒子を排除し、温度、湿度を制御する超清浄空間であるクリーンルームでなくてはならない。
【0009】
従来のクリーンルームは、その形態は一般的なブースと同じように間仕切りパネルを配列して組立てられ、しかも隙間がないように各パネルの連結部及び床面や天井との間はシールされた構造と成っている。このように、超清浄空間を作ることは従来のクリーンルームで可能であるが、作業中に発生する音を吸収することは出来ない。
【0010】
すなわち、使用されるパネルは金属板を貼り付けた一般の間仕切りパネルであり、クリーンルーム内で発生した音はパネルに当って反射するだけであり、自然に減衰はするが吸収はされない。そこで、上記クロス貼りをして吸音機能を備えたパネルや防音壁を用いてクリーンルームを組立てる場合、内部で発生する音は吸収されて静かな空間と成るが、逆にクリーンルームとしての超清浄空間を作ることが出来なくなる。
【特許文献1】特開2000−120216号に係る「間仕切りパネル構造」
【特許文献2】特開2002−146727号に係る「透光性防音板および防音壁」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、クリーンルームに吸音機能を備えるには、仮に吸音パネルの連結部及び床面や天井面との間を隙間なくシールしても、超清浄空間を作ることは出来ない。すなわち、従来の吸音パネルや防音壁をクリーンルーム用のパネルとして用いることが出来ない。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、吸音機能を備えたクリーンルーム及び吸音パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るクリーンルームの基本構造は従来と同じであり、複数枚のパネルで構成している。パネルは両表面材の間に充填材を挟み込んだ構造とし、表側(内側)表面材には複数の小さな穴が貫通し、そして充填材は吸音機能を備え、穴から進入した音波は充填材にて吸収・減衰される。そこで、複数枚の吸音パネルはスタッド(ポール)などを介して隙間なく連結し、床面及び天井面との間にも隙間を残さないようにシールされている。ただし、該シールの具体的な手段は限定しない。
【0013】
ところで、本発明では該吸音パネルの表面に薄い膜が張着されている。膜は吸音パネル面との間に僅かな隙間を残してダブ付くことなく張着している。ここで、該膜の材質や厚さは限定せず、又両表面材に挟まれて充填される充填材の材質並びに吸音構造は限定しないが、上記膜とパネル表面材との間の隙間を均一に保つ為に、複数の支えを介在している。
【0014】
そして、本発明の吸音パネルはクリーンルーム用の間仕切りパネル以外に使用することは可能であり、その用途は自由とする。ここで、上記支えの具体的な形態は限定しないが、パネル表面に設けられることで、一定張力が付加されて張着された薄膜は該支えによって支持され、パネル表面に接することなく僅かな隙間が形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るクリーンルームは複数枚のパネルを組み立てて構成され、各パネル間、及び床面並びに天井面との間に隙間を残さず、その為に該クリーンルーム内は超清浄空間を形成することが出来る。そして、使用されるパネルは吸音機能を備えた吸音パネルである為に、内部で発生した音は周囲に広がるが、吸音パネルに当ることで直ちに減衰することが出来る。従って、静かなクリーンルーム空間と成る。
【0016】
ところで、該吸音パネルの表面には薄膜が取付けられて表面が被覆されている。従って、内部で発生した音の音波は膜を通過して吸音パネルの内部充填材に達して減衰することが出来ると共に、該膜によって吸音パネル面が被覆される為に、超清浄空間が実現する。すなわち、膜が介在することで表面材の穴を空気が流れることはなく、パネル内部の充填材に付着しているチリやホコリは膜にて遮断され、クリーンルーム内へ侵入することはない。
【0017】
そして、膜は複数の支えによって支持されてパネル表面材との隙間は一定となり、すなわち、表面材との隙間は環境の変化に伴う膜の伸縮に左右されることなく、一定に保たれて吸音効果の大きな隙間とすることが出来る。クリーンルームが超清浄空間であることは第1の条件であるが、作業中に発生した音が直ちに減衰して静かな空間に戻ることはクリーンルーム空間内で作業を行なう作業者に対しても大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る吸音パネルの正面図、断面図、及び背面図。
【図2】本発明に係る吸音パネルの断面図。
【図3】本発明に係る吸音パネルの展開図。
【図4】本発明に係る吸音パネルの一部断面拡大図。
【図5】吸音パネルと床面の接合構造。
【図6】吸音パネルと天井の接合構造。
【図7】音の周波数と吸音率を示すグラフ。
【図8】表面に張着する膜を支える為に田の字状に貼り付けた両面テープ。
【図9】表面に張着する膜を支える為の両面テープの形態。
【図10】従来の間仕切り装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明に係る間仕切り用の吸音パネルの外観を示す実施例であり、(a)は正面図、(b)は縦断面図、(c)は背面図を夫々表している。パネルの基本構造は充填材2を表面材1a,1bで挟み込んだものであるが、本発明の吸音パネルはその表面材1aに複数の小さい穴3,3・・を設けている。表面材1aに穴3,3・・・を設けることで音が該穴3,3・・・を通過して内部へ進入し、内部の充填材2にて吸収されるように構成している。すなわち、吸音機能を備えたパネルを構成している。
【0020】
そして、表面材1aの側には薄い膜4が張着されていて、該表面材1aに設けている穴3,3・・・を被覆した構造としている。これら穴3,3・・を表面化する場合、チリやホコリが穴3,3・・・が通過して内部の充填材2に付着・蓄積し、その結果、クリーンルーム内部を超清浄空間に形成することが出来なくなる。その為に、これら穴3,3・・・を塞ぐ為に薄い膜4が張着されている。しかし、該膜4は音波が通過できないように遮断するものであってはならず、一般には厚さ10μ〜25μとしている。
【0021】
同図に示す膜4は表面材1aとの間に僅かな隙間を介在し、例えば、0.1mm〜1mmの隙間を設けて膜4を取付けている。この場合には、表面材1aの周囲に所定厚さの桟を表面から突出して取着し、膜4の周辺部をこの桟に固定することが出来る。何れの場合にも、穴3,3・・・は被覆され、充填材2に付着・堆積したチリやホコリが穴3,3・・から流出することはない。
【0022】
ところで、パネル表面に張着される上記膜4は該パネル表面との間に0.1mm〜1mmの隙間を介在しているが、大きなパネル表面全域にわたってこの隙間を確保することは容易でない。膜4は張着されることで一定の張力が負荷されるが、気温の変化、湿度の変化によって膜4は伸縮し、その結果、パネル表面との隙間は変化する。そこで、本発明ではパネル表面の所々に支えを設けて膜4がパネル表面に接しないように支持すると共に、支えによってパネル表面と薄膜との間の隙間を全面にわたって均一化している。
【0023】
一方、背面側(外側)の表面材1bには上記穴3,3・・・はなく、勿論、膜4も貼着されていない。本発明のクリーンルームは穴3,3・・を設けた表面材1aを内側とし、穴3,3・・を有さない表面材1bを外側として配置している。そこで、クリーンルーム内で発生した音は薄い膜4を通して表面材1aに形成した穴3,3・・を通過し、内部の充填材2へ進入する。充填材2は音のエネルギーを吸収し、音は直ちに減衰することが出来る構造と成っている。
【0024】
ところで、本発明の吸音パネルは音のエネルギーを吸収することが出来る具体的な充填材2の構造は限定しないが、以下に、1具体例を説明する。
表面材1aに複数の小さい穴3,3・・・を貫通することで、音波はこれら穴3,3・・・を通過してパネル内部へ進入する。穴3,3・・・のない領域に音波が当る場合は反射する。そして、反射した音波は別のパネルの穴3,3・・・を通過して内部へ進入する。
【0025】
図2は吸音パネルの内部の充填材2を示す断面図である。同図の1aは内側の表面材、1bは外側の表面材であって、両表面材1a,1bの間には3枚のハニカムコア6a,6b,6cが積層されている。そして、各ハニカムコア6a,6bの間には薄いシート7aが介在し、同じくハニカムコア6b,6cの間にも薄いシート7bが介在している。そして表面材1aには薄い膜4が張着され、各穴3,3・・を塞いでいる。ここで、上記シート7a,7bの具体的な材質は限定せず、例えばアルミニウムなどの金属製シートであったり、樹脂製シートとすることも可能である。
【0026】
図3は吸音パネルの一部展開図であり、膜4、両表面材1a,1b、3枚のハニカムコア6a,6b,6c、及び2枚のシート7a,7bを夫々表している。ここで、上記ハニカムコア6a,6b,6cとは一定厚さの紙製又は金属製や樹脂製の構造体であり、複数の仕切られた空間8a,8a・・・、8b,8b・・・、8c、8c・・・を形成している。そして、この空間8aは隣の空間8aと側壁9aにて仕切られているだけで、両面側は開口した貫通穴と成っている。
【0027】
従って、ハニカムコア間にシート7aを介在することで、この貫通穴は閉じられるが、該シート7aには小さい穴10,10・・が設けられている。本発明では充填材2としての上記ハニカムコア6は広義に解釈し、側壁9,9・・にて仕切られる空間8,8・・を形成しているものであれば、充填材2として使用することが出来る。また、該空間8の形状も特に限定しないことにする。
【0028】
ところで、図4に断面拡大図を示しているが、吸音パネルによって仕切られるクリーンルーム内で音が発生した場合、その音波は周囲に拡散し、その一部は該吸音パネルに当る。そして、吸音パネルの薄い膜4を通過し、表面材1aに設けた小さな穴3を通ってハニカムコア6aの空間8aに進入する。この空間8aは表面材1aの小さい穴3とシート7aに設けている小さい穴10があるのみで、該空間8aに進入した音波はハニカムコア6aの側壁9aやシート7aを振動させてエネルギーを消耗し、直ちに減衰する。
【0029】
しかし、シート7aに設けた小さい穴10からは減衰しない一部の音波が通過し、積層されている隣のハニカムコア6bの空間8bへ進入する。そして、上記空間8aの場合と同じように、空間8bの側壁9bやシート7bを振動させて減衰する。さらに、減衰しない音波はハニカムコア6cの空間へ進入する。ハニカムコア6cは背面側の表面材1bにて閉じられている為に、クリーンルームの外へ音が伝わることは殆どない。
【0030】
このように、本発明の吸音パネルは内側の表面材1aに設けた穴3,3・・・から内部のハニカムコア6a,6b,6cの仕切り空間8a,8b,8cに進入して減衰することが出来る。そして、背面側の表面材1bには穴3,3・・・が設けられていないために、外へ音が伝わることはない。ここで、該膜4の具体的な性質は限定せず、樹脂製フイルムであったり、金属製のフイルムとすることも可能である。クリーンルーム内部で発生した音は、該薄膜4を振動させて穴3,3・・・からハニカムコア6aに進入することが出来る。膜4を振動させるだけでも音のエネルギーは一部消費されて減衰することが出来る。
【0031】
ところで、上記充填材2の構造・形態は前記図2の場合に限定されず、ロックウールやグラスウールを用いることも出来る。小さな穴3,3・・から進入した音波はロックウールやグラスウールにて直ちに減衰する。勿論、表面材1aには薄い膜4が張着され、ロックウールやグラスウールのチリやホコリが付着しないようにし、クリーンルーム内の超清浄空間を形成することが出来る。一方、該膜4は超清浄空間を形成するだけでなく、防水、調湿効果を合わせ持つこともある。
【0032】
ところで、本発明のクリーンルームは上記吸音パネルを据付けて構成される。クリーンルームの具体的な構造は自由であるが、各吸音パネル間に隙間が生じないように、又床面及び天井面との間にも隙間が残らないようにシールされる。図5は吸音パネル11と床面5との接合構造を示す具体例である。該吸音パネル11の下端は床レール12に嵌合して支持され、床レール12にはアジャスター13が配置され、アジャスター13にて適当な高さにある支持板14に載っている。
【0033】
そして吸音パネル11の下端部は床レール12の両側片15,15に挟持され、側片先端に設けている気密ゴム16,16はパネル表面に当接し、隙間を残さない状態で密着している。側片15はその中間部位にてアジャスター13の基台17の脚18,18が支持片19,19に係止することで、該側片15,15の外方向への倒れを防止し、パネル表面との間に隙間が生じないようにしている。
【0034】
そして、先端に設けている気密ゴム16はパネル表面に密着し、吸音パネル11との間の気密性を保つことが出来る。同じく、床レール12の底片20の下面にも気密ゴム16を設けていて、床面5との間の隙間を完全に無くし、気密性が保たれている。勿論、気密ゴム16の代わりにシリコンシールをコーキングすることも可能である。
【0035】
図6は吸音パネル11と天井面との接合構造を示す具体例である。天井面には笠木21が取付けられ、この笠木21は本体部22と補助部23の2ピースから成り、概略L型断面をした本体部22の上片24は天井にネジ止めされ、取り付けされた本体部22に該補助部23が係止状態で取付けられている。勿論、補助部23の取付けには何らネジを使用せず、上片24に形成している係止部材に係止され、着脱自在となっている。ただし、同図に示すような2ピース構造の笠木21ではなく、単一部材として構成することは自由である。
【0036】
ところで、この笠木21も本体部22に補助部23を取り付けした状態では断面が概略コ型を成し、両側片25,25の内側先端には床レール12の場合と同じような凹溝が形成され、この凹溝には気密ゴム16,16が嵌合して取り付けられている。そして該気密ゴム16はパネル表面に隙間なく接し、笠木21と吸音パネル11間の気密性を保っている。又上片24の上面には同じく凹溝を形成し、この凹溝にも気密ゴム16が嵌合して天井面と隙間なく接している。従って、床面部及び天井部からクリーンルーム内に外気が侵入することは出来ない。
【0037】
そして、隣り合う吸音パネル11,11間にも隙間が生じないようにシールされている。例えば、特開平11−217885号に係る「間仕切り等のパネル接合構造」をそのまま採用することも出来、その他の連結構造とすることも可能である。特開平11−217885号に係る「間仕切り等のパネル接合構造」とは、パネルは補強材を枠組した枠体にペーパーコア等を充填材として収容し、両面には表面材を貼着してなり、パネル側部の縦補強材にはパネル中立面に対して対称に断面が概略L型をしたジョイント部を形成し、隣り合うパネルのジョイント部にて気密材を挟み込んで目地空間には断面コ型の目地材を嵌合し、目地材の脚先端をジョイント部に係止して連結している。
【0038】
図7は450mm×450mmの正方形パネルを使用し、このパネル表面に膜4を張着してテストした場合の音の周波数と吸音率を示すグラフである。
テスト条件は次の通りである。
a.膜(フイルム)の厚さは12μ、16μ、25μの3種類とした。
b.膜4の張着形態は、パネル面に接した直張りした場合、図8に示すように両面テープを田の字に貼り付け、該両面テープの上に膜4を張着することでパネル面との間に僅かな隙間を設けた場合。
c.両面テープの厚さは1,35mm、幅15mmを使用。
d.音の周波数は、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzとした。
【0039】
図7のグラフから明らかなように、パネル面に膜4が存在していない方が吸音率は高くなる。しかし、クリーンルームを構成するパネルの場合、この膜4が無いと充填材の微細なチリやホコリが表面材に設けている穴3,3・・・から外へ出て、クリーンルーム内を浮遊する。特に、穴3,3・・・から進入した音波が充填材に当って該充填材を振動し、その結果、充填材に付着しているチリやホコリが離れて穴3,3・・・からパネルの外へ出てくる。本発明ではこのような現象を防止する為に薄い膜4をパネル表面に張着している。
【0040】
しかも、該膜4はパネル面に当接状態で張着するよりも田の字に貼着した両面テープを介すことで僅かな隙間を残した状態の方が吸音率が好ましく、また膜4は薄い12μの場合は高音域での吸音率は高くなる。
ところで、パネル表面と膜4との間に僅かな隙間を介在する場合、パネル面に田の字ではなく図9に示すような形態とすることも出来る。(a)はX形をした支え、(b)は4個の円を配置した支え、(c)は波形の支えをそれぞれ示している。
そして、膜4を張着する手段としては上記両面テープではなく別の部材を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 表面材
2 充填材
3 穴
4 膜
5 床面
6 ハニカムコア
7 シート
8 空間
9 側壁
10 穴
11 吸音パネル
12 床レール
13 アジャスター
14 支持板
15 側片
16 気密ゴム
17 基台
18 脚
19 支持片
20 底片
21 笠木
22 本体部
23 補助部
24 上片
25 側片
26 両面テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材の片面又は両面に表面材を貼着した間仕切り用パネルにおいて、上記正面側の表面材には複数の小さい穴を貫通し、内部に充填した充填材は上記穴から進入した音波を吸収・減衰する機能を備え、そして表面材には支えを設けて間に僅かな隙間を残して膜を張着したことを特徴とする薄膜付き吸音パネル。
【請求項2】
上記隙間を0.1mm〜1.0mmとした請求項1記載の薄膜付き吸音パネル。
【請求項3】
上記膜の厚さを10μ〜25μとした請求項1、又は請求項2記載の薄膜付き吸音パネル。
【請求項4】
上記充填材は複数の空間に仕切った一定厚さのハニカムコアを複数枚積層した構造とし、ハニカムコアの間には複数の小さい穴を設けた薄いシートを介在した請求項1、請求項2、又は請求項3記載の薄膜付き吸音パネル。
【請求項5】
複数枚のパネルを配列し、各パネル間に隙間が生じないようにすると共に、床面及び天井面との間にも隙間を残さない接合構造にて据付けて成るクリーンルームにおいて、上記パネルは充填材の片面又は両面に表面材を貼着し、上記正面側の表面材には複数の小さい穴を貫通し、内部に充填した充填材は上記穴から進入した音波を吸収・減衰する機能を備え、そして表面材には支えを設けて間に僅かな隙間を残して膜を張着したことを特徴とする薄膜付き吸音パネルで構成したクリーンルーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−241435(P2012−241435A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113253(P2011−113253)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000105693)コマニー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】