説明

薄膜蒸着用マスク及びこれを用いた有機電界発光素子の製造方法

【課題】有機電界発光素子などに有機薄膜や導電層を形成するために用いられる薄膜蒸着用マスク及びこれを用いた有機電界発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース部材11と;ベース部材を厚さ方向に貫通し、所定の長さを有して第1方向に延びる複数のスリット13と;複数のスリットのうち第1方向と所定の角度を有する第2方向において最外側に位置する最外郭のスリット14と、最外郭のスリットに隣接するリブ16との間に設けられるリブ支持部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストライプ状のスリットを備えた薄膜蒸着用マスク及びこのマスクを用いた有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機物蒸着装置は、10−7Torr以上の真空下で、蒸着しようとする物質に電流を加え、物質を基板上に膜状に形成する装置である。有機物蒸着装置には、基板上に所望する形状の有機膜を形成するためにマスクが用いられる。一定の大きさ以上の大型基板に有機物を蒸着する場合、マスクは、所望するパターンの安定した有機物の蒸着のために、高い耐久性及び強度を有するメタルマスクが使用可能である。
【0003】
高精細メタルマスク(FMM:Fine Metal Mask)は、大型基板に高精細パターンの有機物を蒸着するためのマスクである。FMMを用いると、基板の所定の位置に多数個の所望する高精細パターンの有機物を一度に形成することができる。所望するパターンの有機物の蒸着のために、FMMは、有機物が通過する複数の長方形のスロットを備えるか、ストライプ状のスリットを備えることができる。ここで、複数の長方形のスロットまたはストライプ状のスリットは、単位マスキング部を形成することができ、FMMは、複数の単位マスキング部を備えることができる。この高精細メタルマスクを用いた蒸着技術は、大型の有機電界発光表示装置などを製造するための有機物の蒸着と、カソード電極を形成する工程に利用可能である。
【0004】
メタルマスクを基板上に固定するために、通常、磁石アレイが用いられる。磁石アレイは、メタルマスクが基板に密着固定されるように、基板を挟んでメタルマスクを引き寄せるように設けられる。磁石アレイは、一定の長さを有する複数のストライプ状の磁石をアレイフレーム上に固定した構造として設置され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2005−0091506号
【特許文献2】大韓民国特許公開第2003−0023202号
【特許文献3】大韓民国特許公開第2008−0011573号
【特許文献4】大韓民国特許公開第2003−0027168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、複数のストライプ状のスリットを備えた高精細メタルマスクでは、スリット間のリブの幅が狭いために、外力によりリブの曲がりが生じ得る。特に、メタルマスクにおいて、スリットの長さ方向と略直角の幅方向において単位マスキング部の最外側に位置する最外郭のスリットに隣接するリブは、ストライプ磁石の長さ方向における末端部にかかる強い磁力により、他のスリット間のリブよりも強い力を受けることになる。このとき、最外郭のスリットに隣接するリブは、磁力により曲がり得る。
【0007】
有機物蒸着装置内において、メタルマスクの最外郭のスリットに隣接するリブが曲がると、有機物の蒸着時、最外郭のスリットに隣接するスリット領域をきちんとマスキングすることができず、有機物の蒸着不良を生じ得る。最外郭のスリットに隣接するスリット領域における有機物の蒸着不良は、有機電界発光素子の有機発光層として用いられる有機物の蒸着不良であり得る。この場合、有機電界発光素子の点灯時、最外郭のスリットに隣接するスリット領域に位置する少なくとも1つのセルが不要な特異な色を発現させ、素子不良をもたらしてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、ストライプ状のスリットを備えた高精細マスクにおいて、最外郭のスリットに隣接するリブの変形を防止することにより、薄膜蒸着工程におけるマスキング不良を防止することのできる薄膜蒸着用マスクを提供しようとするものである。
【0009】
また、本発明は、前述した薄膜蒸着用マスクを用いることにより、有機物の蒸着不良を防止することのできる有機電界発光素子の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によれば、ベース部材と;ベース部材を貫通し、所定の長さを有して第1方向に延びる複数のスリットと;複数のスリットのうち第1方向と所定の角度を有する第2方向において最外側に位置する最外郭のスリットと、最外郭のスリットに隣接するリブとの間に設けられるリブ支持部とを備える薄膜蒸着用マスクが提供される。
【0011】
好ましくは、上記リブ支持部は、ベース部材と一体に形成され得る。
【0012】
上記リブ支持部の幅は、10μm〜100μmであり得る。
【0013】
上記スリットの長さは、2cm以上であり得る。
【0014】
上記ベース部材は、金属材料を含むことができる。
【0015】
上記薄膜蒸着用マスクは、中央に開口部を有し、互いに対向配置された一対の第1辺、及び互いに対向配置された一対の第2辺を有するフレームをさらに備えることができる。このとき、フレームの第1辺及び第2辺のうち少なくともいずれか1つには、ベース部材の縁が接合され得る。
【0016】
上記薄膜蒸着用マスクは、ベース部材、ベース部材に設けられる複数のスリット、及びリブ支持部を備えた第1マスクストリップと、第2ベース部材、及び第2ベース部材に設けられる複数のスリットとを備えており、最外郭のスリットと最外郭のスリットに隣接するリブとの間にリブ支持部を備えていない第2マスクストリップと、中央に開口部を有し、互いに対向配置された一対の第1辺、及び互いに対向配置された一対の第2辺を有するフレームとを備えることができる。このとき、第1マスクストリップの長さ方向の両端と第2マスクストリップの長さ方向の両端とは、フレームの第1辺に接合され、第1マスクストリップの最外郭のスリットは、フレームの第2辺に最も隣接して配置され得る。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、基板上に互いに対向する第1電極及び第2電極と、第1電極と第2電極との間に備えられた有機発光膜とを備える有機電界発光素子の製造方法において、有機発光膜は、本発明の第1の観点による薄膜蒸着用マスクにより蒸着形成される有機電界発光素子の製造方法が提供される。
【0018】
上記有機電界発光素子の製造方法は、有機電界発光素子が形成される基板に薄膜蒸着用マスクが密着するように、基板を挟んでマスクを引き寄せる磁力を印加する工程をさらに含むことができる。このとき、磁力を印加するために設けられる磁石アレイは、複数のストライプ状の磁石を備え、磁石の延長方向は、マスクの複数のスリットの長さ方向と所定の角度を有することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、薄膜蒸着用マスクの最外郭のスリットと、それに隣接するスリットにおいてマスキング不良が発生するのを防止することができる。また、有機電界発光素子の製造工程において、有機発光層や電極層に対する高精細蒸着パターンを安定的に得ることができ、それにより製造された有機電界発光表示装置の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の薄膜蒸着用マスクの主要部を示す部分斜視図である。
【図2a】比較例のメタルマスクを説明するための斜視図である。
【図2b】比較例のメタルマスクを説明するための斜視図である。
【図3】本発明の一実施例による薄膜蒸着用マスクの分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例による薄膜蒸着用マスクの分解斜視図である。
【図5】本発明の薄膜蒸着用マスクを用いる薄膜蒸着工程を説明するための蒸着装置の概略図である。
【図6a】図5の蒸着装置に適用可能な磁石アレイの主要部を示す斜視図である。
【図6b】図6aにおける磁石アレイのI−I’断面図である。
【図7】本発明の薄膜蒸着用マスクを用いて製造されたパッシブマトリクス型有機電界発光表示装置の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の薄膜蒸着用マスクを用いて製造されたアクティブマトリクス型有機電界発光表示装置の副画素の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の薄膜蒸着用マスクの主要部を示す部分斜視図である。
【0023】
同図に示すように、本実施例の薄膜蒸着用マスク10は、ベース部材11と、ベース部材11を厚さ方向に貫設するスリット13とを備える。スリット13は、リブ15を介在して第1方向またはY方向に延びるストライプ状に形成される。
【0024】
特に、本実施例の薄膜蒸着用マスク10は、一群のスリット13のうち、第1方向と一定の角度を有する第2方向またはX方向において最外側に位置する最外郭のスリット14を横切って設けられるリブ支持部17を備える。リブ支持部17は、最外郭のスリット14に隣接するリブ、すなわち、最外郭のスリット14の第1面を形成するリブ15と、最外郭のスリット14の第1面と対向する第2面を形成するベース部材11とを互いに連結する。
【0025】
リブ支持部17は、ベース部材11と一体に形成される。一方、前述したリブ支持部17と同じ機能及び作用効果を得るために、リブ支持部の代わりに別の部材を用いることができる。しかし、別の部材を用いてリブ支持部17を設ける場合、最外郭のスリット14の内側領域を横切って延びるように、最外郭のスリット14に隣接するリブ16とベース部材11との間に別の部材を設けなければならないため、マスク製作工程が複雑になり得る。
【0026】
本実施例において、最外郭のスリット14は、他のスリット13と区別されるように、他の参照番号で表示し、最外郭のスリット14に隣接するリブ16は、他のリブ15と区別されるように、他の参照番号で表示した。しかし、以下の説明において、最外郭のスリット14及びリブ16は、基本的に、単位マスキングパターン部12を形成する一群のスリット13及びリブ15にそれぞれ含まれるものとして考えられる。
【0027】
一群のスリット13及び該スリット間のリブ15は、長方形の単位マスキングパターン部12を形成する。図1には、第1〜第3の単位マスキングパターン部12と、第4の単位マスキングパターン部の一部とが示されている。各単位マスキングパターン部12は、1つの有機電界発光表示装置の有機発光層や電極層の蒸着のために、一定のパターンで有機物や導電性材料を通過させることができるように、一定のパターンで設けられる。例えば、隣接する2つの単位マスキングパターン部12の間には、パターン空間部18が設けられ、パターン空間部18により、隣接する2つの単位マスキングパターン部12は、第1方向に一定の間隔をおいて互いに離れて設けられる。
【0028】
本実施例の薄膜蒸着用マスク10は、電鋳工程などの素材成形技術により製造され得る。電鋳工程を用いると、微細なパターニング及び優れた表面平滑性を得ることができる。
【0029】
もちろん、本実施例の薄膜蒸着用マスク10は、エッチング法によっても製造可能である。例えば、薄膜蒸着用マスク10の最外郭のスリット14を含むスリット13は、フォトレジストを用いて、自らと同じパターンを有するレジスト層を薄板のベース部材11に形成したり、または自らと同じパターンを有するフィルムをベース部材11に付着した後、ベース部材11をエッチングすることによって形成され得る。
【0030】
各単位マスキングパターン部12において、各スリット13の長さL1は、約2cm以上であり、スリット13の幅W1及び最外郭のスリット14の幅W3は、約50μmであり、スリット13間の距離、すなわち、リブ15の幅W2は、10μm〜100μmである。また、最外郭のスリット14に隣接するリブ16の幅W2も、10μm〜100μmである。リブ支持部17の幅L2を含む最外郭のスリット14の全長L1が約2cm以上であり、リブ16の幅W2が約10μm〜約100μmであれば、リブ16は、磁石アレイの磁力により曲がり得る。しかし、このとき、リブ支持部17は、リブ16の曲がりを防止することができる。
【0031】
最外郭のスリット14は、最外郭のスリット14に隣接するスリット13’に対するマスキング効果が、他のスリット13に対するマスキング効果と同様になるように設けられたダミースリットであり得る。この場合、リブ支持部17の幅L2は、最外郭のスリット14に隣接するリブ16を支持できる長さを有し、かつ、最外郭のスリット14に隣接するスリット13’のマスキング効果に悪影響を及ぼさない範囲で任意に調節可能である。
【0032】
ベース部材11は、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル−コバルト合金などで形成され得る。ニッケル−コバルト合金を用いた場合、微細パターンの形成が容易であり、表面粗さが非常に良いという長所がある。
【0033】
以下では、本実施例の薄膜蒸着用マスク10のリブ支持部17が設けられていない場合に生じ得る問題について、より詳細に説明する。
【0034】
図2a及び図2bに示すように、メタルマスク110a、110bは、ストライプ状のスリット113aと、該スリット間に設けられるリブ115aとを備える。スリット113aの長さ方向と直交する幅方向において最外側に位置する最外郭のスリット114aは、最外郭のスリット114aに隣接するリブ、すなわち、最外郭のスリット114aの一面を形成するリブ116aとベース部材111aとの間に設けられる。
【0035】
本比較例のメタルマスク110a、110bは、蒸着装置内に設けられた磁石アレイにより基板上に密着することができる。ここで、磁石アレイは、ストライプ状の磁石がスリット113aの長さ方向と直交する幅方向に延びるように配置され得る(図5、図6a及び図6b参照)。このとき、リブ116aは、ストライプ状の磁石の一側の末端部に隣接して位置することができる。この場合、ストライプ状の磁石は、他の部分よりもその両側の末端部に磁力が集中するため、リブ116aは、磁石の末端部に印加される強い磁力により、他のリブ115aに比べて曲がりやすくなり得る。すなわち、リブ116aは、図2aに示すように、最外郭のスリット114aの幅が狭くなるように曲がるか、図2bに示すように、最外郭のスリット114aの幅が広くなるように曲がり得る。
【0036】
このように、リブ116aは、磁石アレイの磁力により曲がり得る。この場合、最外郭のスリット114aに隣接するスリット113aを介して蒸着される有機発光層に蒸着不良が発生し、これにより、有機電界発光表示装置の点灯時、当該スリットを介して蒸着された領域に位置する少なくとも1つのセルが不要な特異な色を発現させ、素子不良をもたらし得る。
【0037】
図3は、本発明の一実施例による薄膜蒸着用マスクの分解斜視図である。
【0038】
同図に示すように、本実施例のマスクアセンブリは、大量生産のための装置であって、マスク10aと、フレーム20aとを備える。
【0039】
マスク10aは、有機電界発光素子をなす単位基板を一度に複数枚ずつ蒸着できるように、金属薄板のベース部材11aに形成された複数の単位マスキングパターン部12aを備える。複数の単位マスキングパターン部12aは、格子状に配列され得る。各単位マスキングパターン部12aは、1つの素子に有機物を蒸着することができるものであり、所望する形状にパターニングされた複数のスリット13aと、隣接するスリット間に位置するリブ15aとを備える。
【0040】
特に、本実施例のマスク10aは、磁石アレイに備えられるストライプ状の磁石の末端部に位置する単位マスキングパターン部12aにリブ支持部17aを備える。リブ支持部17aは、ストライプ状の磁石がX軸方向に延設される場合を考慮して、X軸方向の両端部に位置する単位マスキングパターン部12aの最外郭のスリット14aの内側に設けられる。つまり、リブ支持部17aは、マスク10aのX軸方向において両側の最外側に位置する2グループの単位マスキングパターン部の各最外郭のスリット14aを横切って延び、最外郭のスリット14aに隣接するリブ、すなわち、最外郭のスリット14aの一面を形成するリブ16aを、最外郭のスリット14aの一面と対向する他面に位置するベース部材11aに連結する。
【0041】
マスク10aは、大量生産時、特定の素子に対するマスキング不良を防止するために、フレーム20aに引張力が加えられるように固定される。すなわち、マスク10aの各単位マスキングパターン部12aに形成されたスリット13aの幅が、既定の公差範囲内に維持されるように、マスク10aは、四角リング状のフレーム20aに所定の引張力を有して固定される。
【0042】
フレーム20aは、マスク10aを支持できるように、剛性を有する部材で形成される。フレーム20aは、互いに平行した一対の第1辺21aと、一対の第1辺21aの両端をそれぞれ連結する一対の第2辺22aとを備える。フレーム20aの第1辺21aと第2辺22aとは一体に形成されるが、これに限定されず、第1サブフレームと第2サブフレームとで別途に製造され、結合され得る。
【0043】
図4は、本発明の他の実施例による薄膜蒸着用マスクの分解斜視図である。
【0044】
同図に示すように、本実施例のマスクアセンブリは、大量生産のための装置であって、マスク10bと、フレーム20bとを備える。
【0045】
マスク10bは、フレーム20bの一側に設けられる第1マスクストリップ11bと、フレーム20bの他側に設けられる第2マスクストリップ11cと、フレーム20bの中間に設けられる第3マスクストリップ11dとを備える。マスク10bは、有機電界発光素子をなす単位基板を一度に複数枚ずつ蒸着できるように、金属薄板ストリップ状の複数のベース部材にそれぞれ形成された複数の単位マスキングパターン部12bを備える。複数の単位マスキングパターン部12bは、Y軸方向に一定の間隔をおいて一列に配列され得る。各単位マスキングパターン部12bは、1つの素子に有機物を蒸着することができるものであり、所望する形状にパターニングされた複数のスリット13bと、隣接するスリット間に位置するリブ15bとを備える。
【0046】
特に、本実施例の第1マスクストリップ11bは、X軸方向において第3マスクストリップ11dから最も遠くに位置する各単位マスキングパターン部12bの最外郭のスリット14bの内側にリブ支持部17bを備える。同じように、第2マスクストリップ11cは、X軸方向において第3マスクストリップ11dから最も遠くに位置する各単位マスキングパターン部の最外郭のスリット14cの内側にリブ支持部17cを備える。リブ支持部17b、17cは、磁石アレイのストライプ状の磁石がX軸方向に延設される場合を考慮して、X軸方向の両端部に位置する単位マスキングパターン部の最外郭のスリット14b、14cの内側にそれぞれ設けられる。つまり、リブ支持部17b、17cは、マスク10bのX軸方向において最外側に位置する2グループの単位マスキングパターン部の各最外郭のスリット14b、14cを横切って延びるように、最外郭のスリット14b、14cにそれぞれ隣接するリブ、すなわち、最外郭のスリット14b、14cの一面を形成するリブ16b、16cを、最外郭のスリット14b、14cの一面と対向する他面に位置するベース部材にそれぞれ連結する。
【0047】
各マスクストリップ11b、11c、11dは、大量生産時、特定の素子に対するマスキング不良を防止するために、フレーム20bに引張力が加えられるように固定される。すなわち、各単位マスキングパターン部に形成されたスリット13b、13cの長さまたは幅が、既定の公差範囲内に維持されるように、各マスクストリップ11b、11c、11dは、四角リング状のフレーム20bの対向する一対の第1辺21bに所定の引張力を有して固定される。
【0048】
フレーム20bは、各マスクストリップ11b、11c、11dを支持できるように、剛性を有する部材で形成される。フレーム20bは、互いに平行した一対の第1辺21bと、一対の第1辺21bの両端をそれぞれ連結する一対の第2辺22bとを備える。フレーム20bの第1辺21bと第2辺22bとは一体に形成されるが、これに限定されず、第1サブフレームと第2サブフレームとで別途に製造され、結合され得る。
【0049】
一方、フレーム20bの構造は、図4及びそれに関する説明に限定されず、実施形態の多様な変更により実現可能であることはいうまでもない。例えば、フレーム20bにマスクストリップの接合を容易にするための構造または別の部材が使用可能である。
【0050】
本実施例によるマスクアセンブリは、各種の薄膜蒸着用として使用可能であり、特に、有機膜のパターニング工程に使用可能である。例えば、本実施例のマスクアセンブリは、有機電界発光表示装置の有機発光膜のパターニングに使用可能であり、パッシブマトリクス型有機電界発光表示装置では、カソード電極の蒸着工程にも適用することができる。それだけでなく、有機薄膜トランジスタの形成にも適用することができる。
【0051】
図5は、本発明の薄膜蒸着用マスクを用いる薄膜蒸着工程を説明するための蒸着装置の概略図である。
【0052】
同図に示すように、本実施例の蒸着装置30は、図4を参照して先に説明した本実施例の薄膜蒸着用マスク10bを用いることができる。
【0053】
有機電界発光表示装置の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の有機発光膜を蒸着するために、真空チャンバ31に設置された有機膜蒸着容器(crucible)60の上部にマスク10bを設け、マスク10b上に薄膜が形成される基板50を取り付ける。そして、基板50上に、マスク10bを基板50に密着させるための磁石アレイ40を駆動させ、マスク10bが基板50に密着するようにする。この状態で、有機膜蒸着容器60を作動させると、有機膜蒸着容器60に装着された有機物は気化し、マスク10bのスリットを通過して一定のパターンで基板50に蒸着される。
【0054】
図6aは、図5の蒸着装置に適用可能な磁石アレイの主要部を示す斜視図である。図6bは、図6aにおける磁石アレイのI−I’断面図である。
【0055】
図6a及び図6bに示すように、本実施例のマスクを用いて有機蒸着装置で有機物を蒸着する場合、マスクを基板の一面上に密着固定するために、磁石アレイ40が用いられる。このとき、磁石アレイ40は、比較的大きなマスク10bを磁力で適宜支持するために、通常、複数の棒状の磁石44が一列に並ぶように設けられる。例えば、磁石アレイ40は、複数の棒状の磁石44と、各磁石44が挿入される溝43を有する本体42とを備えることができる。
【0056】
前述の場合、マスク10bのスリットがY軸方向に延びる場合、磁石アレイ40の各棒状の磁石44がX軸方向に延びるように配置されると、各磁石44の両端部に位置する最外郭のスリットに隣接するリブは、大きな磁力を受けることになる。このとき、従来のメタルマスクでは、最外郭のスリットとこれに隣接するスリットとの間に位置するリブが、磁石の磁力により曲がり得る。しかし、本実施例のマスク10bは、リブ支持部を備えることにより、最外郭のスリットとこれに隣接するスリットとの間に位置するリブが曲がるのを防止することができる。
【0057】
図7は、本発明の薄膜蒸着用マスクを用いて製造されたパッシブマトリクス型有機電界発光表示装置の一例を示す断面図である。
【0058】
同図に示すように、ガラス基板220上に第1電極層221がストライプパターンで形成され、第1電極層221上に、有機層226及び第2電極層227が順次形成される。第1電極層221の各ライン間には、絶縁層222が介在し得る。第2電極層227は、第1電極層221のパターンと直交するパターンで形成され得る。
【0059】
有機層226は、低分子または高分子有機層が使用可能である。低分子有機層を使用する場合、有機層226は、ホール注入層、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)などを含む第1有機層223と、有機発光層224と、電子輸送層、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などを含む第2有機層225とが単一または複合された構造で積層されて形成され得る。有機層226に使用可能な有機材料としては、銅フタロシアニン(CuPc:copper phthalocyanine)、N、N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N、N’−ジフェニルベンジジン(diphenylbenzidine:NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などが適用可能である。これらの低分子有機層は、真空蒸着法により形成され得る。
【0060】
高分子有機層を使用する場合、有機層226は、ホール輸送層を含む第1有機層223と、有機発光層224との構造を有することができる。このとき、第2有機層225は使用しないこともあり得る。高分子有機層226の材料において、ホール輸送層としては、PEDOTを用い、発光層としては、PPV(Poly−Phenylenevinylene)系やポリフルオレン(Polyfluorene)系などの高分子有機物質を用いることができる。
【0061】
有機発光層224は、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)を備えることでフルカラーを実現するように形成され得る。有機発光層224は、薄膜蒸着用マスクを用いて形成されるが、本実施例のマスクを用いると、マスクの最外郭のスリットに隣接するリブの曲がりによりマスクパターン不良が発生するのを防止することにより、有機発光層224の蒸着パターン不良の発生を防止することができる。
【0062】
前述した第1電極層221は、アノード電極の機能を果たし、第2電極層227は、カソード電極の機能を果たす。前記第1電極層221及び第2電極層227の極性が逆になるように実現可能であることはいうまでもない。
【0063】
第1電極層221は、透明電極または反射型電極として備えられるが、透明電極として用いられたときには、ITO、IZO、ZnO、またはInで形成され得る。そして、第1電極層221が反射型電極として用いられたときには、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、及びこれらの化合物などで反射膜を形成した後、その上に、ITO、IZO、ZnO、またはInで形成され得る。
【0064】
一方、第2電極層227も、透明電極または反射型電極として備えられるが、透明電極として用いられたときには、第2電極層227がカソード電極として用いられるため、仕事関数の小さい金属、すなわち、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物が有機発光層226の方向に向かうように蒸着した後、その上に、ITO、IZO、ZnO、またはInなどの透明電極形成用物質で補助電極層またはバス電極ラインを形成することができる。そして、第2電極層227が反射型電極として用いられたときには、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物を蒸着して形成され得る。
【0065】
図示していないが、このような有機電界発光表示装置は、外部の酸素及び水分の浸透が遮断されるように密封される。
【0066】
図8は、本発明の薄膜蒸着用マスクを用いて製造されたアクティブマトリクス型有機電界発光表示装置の副画素の一例を示す断面図である。
【0067】
図8において、副画素は、少なくとも1つのTFTと、自発光素子の有機電界発光素子OLEDとを備える。TFTは、必ずしも図8に示す構造だけが可能なものではなく、その数及び構造は、多様に変形可能である。このようなアクティブマトリクス型有機電界発光表示装置をより詳細に説明すると、次のとおりである。
【0068】
同図に示すように、基板220上にバッファ層230が形成されており、このバッファ層230上にTFTが備えられる。TFTは、バッファ層230上に形成された半導体活性層231と、活性層231を覆うように形成されたゲート絶縁膜232と、ゲート絶縁膜232上のゲート電極233とを備える。ゲート電極233を覆うように層間絶縁膜234が形成され、層間絶縁膜234上にソース及びドレイン電極235が形成される。ソース及びドレイン電極235は、ゲート絶縁膜232及び層間絶縁膜234に形成されたコンタクトホールにより、活性層231のソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接続される。
【0069】
活性層231は、ソース領域及びドレイン領域を連結するチャネル領域を備える。この活性層231は、無機半導体または有機半導体から選択されて形成され得、ソース領域及びドレイン領域にn型またはp型不純物がドープされて形成され得る。
【0070】
活性層231を形成する無機半導体は、CdS、GaS、ZnS、CdSe、CaSe、ZnSe、CdTe、SiC、及びSiを含むものであり得る。
【0071】
そして、活性層231を形成する有機半導体は、バンドギャップが1eV〜4eVの半導体性有機物質で備えられるが、高分子として、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリチオフェンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びその誘導体を含むことができ、低分子として、ペンタセン、テトラセン、ナフタレンのオリゴアセン及びこれらの誘導体、α−6−チオフェン、α−5−チオフェンのオリゴチオフェン及びこれらの誘導体、金属を含有するかまたは含有しないフタロシアニン及びこれらの誘導体、ピロメリット酸無水物またはピロメリット酸ジイミド及びこれらの誘導体、ペリレンテトラカルボン酸無水物またはペリレンテトラカルボン酸ジイミド及びこれらの誘導体を含むことができる。
【0072】
ゲート絶縁膜232は、SiOなどで形成され得るが、このほか、SiNxなどが使用可能であり、SiOとSiNxとの二重膜として形成され得る。ゲート絶縁膜232上の所定の領域には、MoW、Al、Cr、Al/Cuなどの導電性金属膜でゲート電極233が形成される。ゲート電極233を形成する物質は、必ずしもこれに限定されず、導電性ポリマーなどの多様な導電性物質がゲート電極233として使用可能である。ゲート電極233が形成される領域は、活性層231のチャネル領域に対応する。
【0073】
層間絶縁膜234は、SiOやSiNx、またはこれらの化合物で形成され得、ソース及びドレイン電極235は、ゲート電極233と同じ材質で形成され得る。
【0074】
ソース及びドレイン電極235上には、SiO、SiNxなどからなるパッシベーション膜236が形成され、パッシベーション膜236上には、アクリル、ポリイミドなどからなる平坦化膜237が形成され得る。
【0075】
図示していないが、TFTには、少なくとも1つのキャパシタが接続される。
【0076】
ソース及びドレイン電極235は、有機電界発光素子OLEDのアノード電極となる第1電極層221に接続される。第1電極層221は、平坦化膜237上に形成され、第1電極層221を覆うように画素画定膜238が形成される。そして、画素画定膜238に所定の開口部を形成した後、有機電界発光素子OLEDを形成する。
【0077】
有機電界発光素子OLEDは、電流の流れにより、赤色、緑色、青色の光を発光して所定の画像情報を表示するものであり、TFTのソース及びドレイン電極235に接続され、TFTからプラス(+)電源を受ける第1電極層221と、全体の画素を覆うように備えられ、マイナス(−)電源を供給する第2電極層227と、前記第1電極層221と第2電極層227との間に配置されて発光する有機層226とから構成される。
【0078】
有機層226は、先に説明した図7の有機層と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0079】
本実施例のアクティブマトリクス型有機電界発光表示装置においても、有機発光層(EML)は、先に説明した本実施例のマスクで形成されるため、最外郭のスリットに隣接するリブの曲がりによりマスクパターンに不良が発生するのを防止することができる。
【0080】
一方、第1電極層221は、前述したパッシブマトリックス型のように、透明電極または反射型電極で形成され得るが、各副画素の開口の形状に対応する形状に形成され得る。また、第2電極層227は、透明電極または反射型電極をディスプレイ領域の全体に全面蒸着して形成することができる。しかし、第2電極層227は、必ずしも全面蒸着される必要はなく、多様なパターンで形成され得ることはいうまでもない。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0082】
10 薄膜蒸着用マスク
11 ベース部材
12 単位マスキングパターン部
13、13’ スリット
14 最外郭のスリット
15、16 リブ
17 リブ支持部
220 基板(ガラス基板)
221 第1電極層
222 絶縁層
226 有機層
227 第2電極層
230 バッファ層
231 半導体活性層
232 ゲート絶縁膜
233 ゲート電極
234 層間絶縁膜
235 ソース及びドレイン電極
236 パッシベーション膜
237 平坦化膜
238 画素画定膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と;
前記ベース部材を貫通し、所定の長さを有して第1方向に延びる複数のスリットと;
前記複数のスリットのうち前記第1方向と所定の角度を有する第2方向において最外側に位置する最外郭のスリットと、前記最外郭のスリットに隣接するリブとの間に設けられるリブ支持部と;
を備えることを特徴とする、薄膜蒸着用マスク。
【請求項2】
前記リブ支持部は、前記ベース部材と一体に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項3】
前記リブ支持部の幅は、10μm〜100μmであることを特徴とする、請求項2に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項4】
前記スリットの長さは、2cm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項5】
前記ベース部材は、金属材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項6】
中央に開口部を有し、互いに対向配置された一対の第1辺、及び互いに対向配置された一対の第2辺を有し、前記第1辺及び第2辺のうち少なくともいずれかに前記ベース部材の縁が接合されるフレームをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項7】
前記ベース部材、前記複数のスリット、及び前記リブ支持部を備えた第1マスクストリップと、
第2ベース部材、及び前記第2ベース部材に設けられる複数のスリットを備えており、最外郭のスリットと前記最外郭のスリットに隣接するリブとの間に前記リブ支持部を備えていない第2マスクストリップと、
中央に開口部を有し、互いに対向配置された一対の第1辺、及び互いに対向配置された一対の第2辺を有するフレームと、
を備え、
前記第1マスクストリップの長さ方向の両端と前記第2マスクストリップの長さ方向の両端とは、前記第1辺に接合され、前記第1マスクストリップの最外郭のスリットは、前記第2辺に最も隣接して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜蒸着用マスク。
【請求項8】
基板上に互いに対向する第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた有機発光膜とを備える有機電界発光素子の製造方法において、
前記有機発光膜は、請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜蒸着用マスクにより蒸着形成されることを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機電界発光素子が形成される基板に前記薄膜蒸着用マスクが密着するように、前記基板を挟んで前記マスクに磁力を印加する工程をさらに含み、
前記磁力を印加するために設けられる磁石アレイは、複数のストライプ状の磁石を備え、
前記磁石の延長方向は、前記マスクの複数のスリットの長さ方向と所定の角度を有することを特徴とする、請求項8に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−62125(P2010−62125A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7724(P2009−7724)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】