説明

薬剤充填済み容器体を収容した包装体

【課題】投与準備操作が容易であり、投与時に容器体の薬剤収納部に直接光があたることを防止する薬剤充填済み容器体を収容した包装体を提供する。
【解決手段】薬剤充填済み容器体を収容した包装体1は、遮光性を有しかつ密封された包装材2と、包装材2内に収納された薬剤を収納した容器体3とからなる。容器体は、容器本体31と排出口32と容器体3の薬剤収納部34内に収納された薬剤とを備える。包装体1は、容器体を薬剤収納部より上部にて包装材2に固着する固着部22を有する。包装材2はその側部であって、容器体の排出口より上方かつ薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部24aを備える。包装体1は、包装体1を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔5を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤充填済み容器体を収容した包装体に関するものである。更に詳しくは、本発明は、充填された薬剤を光による劣化を防止し安定に保つことのできるとともに、薬剤投与時における薬剤の光による劣化も防止できる薬剤充填済み容器体を収容した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液剤や注射液に含有される薬剤には、光により分解、劣化するものがある。特に、ビタミンA,B,K,B2,B12などが光により分解もしくは劣化するといわれている。近年では、輸液用の薬剤容器としては、破損しにくいこと、取り扱いが容易であることより、合成樹脂製容器がほとんどであり、通常合成樹脂製容器は、光を透過する。
このため、光により分解、劣化の可能性のある薬剤を収納した薬剤容器は、遮光包装材に収納された状態にて、提供されている。しかし、包装材より取り出した後には、光を浴びることになるので、使用時には、遮光カバーを取り付けた状態として、投与が行われている。
このような遮光カバーとしては、例えば、実公平1−37636号公報(特許文献1)のものがあり、また、特開2008−167050号公報(特許文献2)のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平1−37636号公報
【特許文献2】特開2008−167050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、可視光透過性の可撓性プラスチックに可視光透過性の紫外線防止剤をコートした輸液容器用カバーである。このカバーにおいても効果を有するが、カバーを取り付ける操作を行わなければならない。
特許文献2の点滴容器包装袋1は、矩形状の合成樹脂シートに、下端辺1aに平行状の下部切裂き案内線2と、下部切裂き案内線2の上方に平行する下部上側切裂き案内線3と、上中央部1bに上部切裂き案内線4とを設け、表裏シートを接着、融着などによりシート体の四周辺を密封して袋体として形成し、好ましくは表裏シートの左右側辺と下辺の三辺を密封し、点滴容器6を袋内に収納した上で、他の一辺すなわち上辺を密封することにより密封してなっており、袋上中央部1bを切裂くことにより開口部5を形成でき、下部切裂き案内線2及び下部上側切裂き案内線3を切裂くことにより包装袋下側を開口できるものとなっている。
【0005】
この点滴容器包装袋1を使用するためには、下部切裂き案内線2の一方のノッチ7a側から幅方向に切裂いて袋の下部を開封する。次に、下部上側切裂き案内線3の一方のノッチ7b側から幅方向に切裂いて袋1の下部を切除し、開口下端部を形成する。その後、上部切裂き案内線4を上端から抉り取るように切裂いて開口部5を形成し、開口部5からフック部6aを露出させ、フック9などに引っ掛け、点滴容器6を吊下げることにより、投与可能となる。
投与準備のための操作が煩雑である。また、この点滴容器包装袋1では、フック部6aは、投与時、開口部5から露出するために、露出部もしくはその隙間より、光が点滴容器に当たる可能性があり、また、下部切裂き案内線2を用いて切裂いて袋の下部を開封した後は、包装袋より、点滴容器6を取り出し可能であり、取り出した状態にて、フック9に吊下げること、すなわち、包装袋がない状態での投与を可能としている。
そこで、本発明の目的は、投与準備のための操作が極めて簡単であり、かつ、投与時における容器体の薬剤収納部に直接光があたることを確実に防止することができる薬剤充填済み容器体を収容した包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 遮光性を有しかつ密封された包装材と、該包装材内に収納された薬剤を収納した容器体とからなる薬剤充填済み容器体を収容した包装体であって、前記容器体は、容器本体と、該容器本体の下部に取り付けられた排出口と、前記容器体の薬剤収納部内に収納された前記薬剤とを備え、前記包装体は、前記容器体を該容器体の前記薬剤収納部もしくは該薬剤収納部より上部にて、前記包装材に固着する固着部を有し、前記包装材は、該包装材の側部であって、前記容器体の前記排出口より上方かつ前記薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部を備え、さらに、前記包装体は、該包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔を有する薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(2) 遮光性と熱シール性を有しかつ密封された包装材と、該包装材内に収納された薬剤を収納した容器体とからなる薬剤充填済み容器体を収容した包装体であって、前記容器体は、熱可塑性樹脂により形成され、かつ上部シール部を有する容器本体と、該容器本体の下部に取り付けられた排出口と、前記容器体の薬剤収納部内に収納された前記薬剤とを備え、前記包装体は、前記容器体を前記上部シール部にて、前記包装材に固着する固着部を有し、前記包装材は、該包装材の側部であって、前記容器体の前記排出口より上方かつ前記薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部を備え、さらに、前記包装体は、該包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔を有する薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【0008】
(3) 前記懸垂孔は、前記包装体および前記容器体の上部シール部を貫通するように形成されている上記(2)に記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
(4) 前記懸垂孔は、前記固着部にて前記包装体および前記容器体の上部シール部を貫通するように形成されている上記(2)に記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
(5) 前記包装材は、前記開封用切欠部から該切欠部が設けられた側部と向かい合う側部に向かって手で直線状に引き裂くことが可能な易裂性包装材である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
(6) 前記包装材は、前記開封用切欠部が設けられた側部と向かい合う側部に、前記開封用切欠部と向かい合うように設けられた第2の開封用切欠部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
(7) 前記遮光性は、難紫外線透過性かつ透明性を有するものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体は、遮光性を有し密封された包装材と、包装材内に収納された薬剤を収納した容器体とからなる。容器体は、容器本体と、容器本体の下部に取り付けられた排出口と、容器体の薬剤収納部内に収納された薬剤とを備える。包装体は、容器体を容器体の薬剤収納部もしくは薬剤収納部より上部にて、包装材に固着する固着部を有する。包装材は、包装材の側部であって、容器体の排出口より上方かつ薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部を備える。そして、包装体は、包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔を有している。このため、包装材に設けられた開封用切欠部より包装体を破断することにより、薬剤を収納した容器体を排出口が露出した状態とすることができ、格別な操作を必要とせず、投与準備を行うことができる。かつ、容器体は包装材に固着されているため、取りはずし不能となっており、薬剤を収納した薬剤収納部が包装材に被包された状態に維持することができ、投与中における光による薬剤の劣化を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示した本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体に用いられる薬剤充填済み容器体の正面図である。
【図4】図4は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の他の実施例の正面図である。
【図5】図5は、図4の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の線状易開封部を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の他の実施例の正面図である。
【図7】図7は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の他の実施例の正面図である。
【図8】図8は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の他の実施例の正面図である。
【図9】図9は、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の他の実施例の正面図である。
【図10】図10は、図1に示した薬剤充填済み容器体を収容した包装体の作用を説明するための説明図である。
【図11】図11は、図1に示した薬剤充填済み容器体を収容した包装体の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体を図面に示した実施例を用いて詳細に説明する。
本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体1は、遮光性を有し密封された包装材2と、包装材2内に収納された薬剤36を収納した容器体3とからなる。容器体3は、容器本体31と、容器本体31の下部に取り付けられた排出口32と、容器体3の薬剤収納部34内に収納された薬剤36とを備える。包装体1は、容器体3を容器体3の薬剤収納部34もしくは薬剤収納部34より上部にて、包装材2に固着する固着部22を有する。包装材2は、包装材2の側部21b(21c)であって、容器体3の排出口32より上方かつ薬剤収納部34より下方となる部分に形成された開封用切欠部24a(24b)を備える。そして、包装体1は、包装体1を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔5を有している。
【0012】
特に、この実施例の薬剤充填済み容器体を収容した包装体1では、遮光性と熱シール性を有しかつ密封された包装材2と、包装材2内に収納された薬剤36を収納した容器体3とからなり、容器体3は、熱可塑性樹脂により形成され、かつ上部シール部33を有する容器本体31と、容器本体31の下部に取り付けられた排出口32と、容器体3の薬剤収納部34内に収納された薬剤36とを備え、包装体1は、容器体3を上部シール部33にて、包装材2に固着する固着部22を有し、包装材2は、包装材2の側部21b(21c)であって、容器体3の排出口32より上方かつ薬剤収納部34より下方となる部分に形成された開封用切欠部24a(24b)を備え、さらに、包装体1は、包装体1を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔5を有している。
【0013】
図1ないし図3に示す実施例の薬剤充填済み容器体を収容した包装体を用いて本発明を説明する。
この薬剤充填済み容器体を収容した包装体1は、包装材2と、包装材2内に収納された容器体3とを備える。
包装材2としては、後述する容器体3に充填された薬剤の安定性に応じて適切な遮光性を有する材料を種々選択して採用することができる。紫外線に対して不安定な薬剤が充填されている場合は、見た目には透明であるが紫外光を遮断するものが好ましく、つまり、難紫外線透過性かつ透明性(可視光透過性)であることが好ましく、可視光に対して不安定な薬剤が充填されている場合は、可視光も薬剤が安定に保存するために必要な程度に遮断するものが好ましい。
包装材2としては、包装材の持つ遮光性が難紫外線透過性かつ透明性である場合は、難紫外線透過性かつ透明性を有する軟質シートからなる袋状のものが好ましく、周縁部に形成されたシール部21を有する。
【0014】
軟質シートは、難紫外線透過性として、450nmより短い波長の光(具体的には、290〜450nmの光)の透過率が低減されたものであることが好ましく、例えば、波長390nm以下における透過率が5%未満であることが好ましく、特に、1%未満であることが好ましい。また、シートは、透明性として、波長600nm以上の可視光の透過率が高いことが好ましく、例えば、波長600nm以上の透過率が55%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
また、包装材2の遮光性が可視光領域も必要量遮断されたものである場合には、包装材を構成する軟質シートは、可視光領域遮光性として、450nm〜600nmの波長の光の透過率が収納された容器の状態が確認可能な程度に低減されたものであることが好ましく、例えば、波長600nmにおける透過率が55%〜80%であることが好ましく、特に70%〜80%であることが好ましい。
なお、収納された容器の状態を確認する必要のない場合には、包装材は、実質的に完全に遮光されたものであっても良い。
そして、包装材2は、包装材2の側部であって、収納された容器体3の排出口32より上方かつ薬剤収納部34より下方となる部分に形成された開封用切欠部24aを備えている。包装材2は、開封用切欠部24aが設けられた側部と向かい合う側部に、この開封用切欠部24aと向かい合うように設けられた第2の開封用切欠部24bを備えていることが好ましい。
【0015】
包装材2に用いられるシートとしては、樹脂製基材層の一方の面に、紫外線吸収剤を含有した薄膜を有するもの、また、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に、紫外線吸収層を有する多層フィルムなどが用いられる。
紫外線吸収剤を含有した薄膜を有するシートは、樹脂基材層の表面に、紫外線吸収剤を被膜形成物質に含有させコーティングすることにより形成することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、トリアリールトリアジン系化合物等が使用できる。また、被膜形成物質としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等の樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが使用される。また、基材層の形成材料としては、波長600nm以下における可視光の透過率が80%以上である樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリブデン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレイト樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセタール系樹脂フィルム、フッ素系樹脂等を使用することができる。
【0016】
さらに、包装材2は、開封用切欠部24aからこの切欠部24aが設けられた側部と向かい合う側部に向かって手で直線状に引き裂くことが可能な易裂性包装材であることが好ましい。上述した樹脂製基材層として、切欠部24aが設けられた側部から向かい合う側部方向に延伸された1軸延伸フィルムを用いることにより、包装材に易裂性を付与することができる。易裂性包装材の樹脂製基材層としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂などの延伸配向性を有する樹脂の1軸延伸フィルムが好適である。
また、包装体に用いられるシートとしては、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間に、紫外線吸収層を有する多層フィルムであってもよい。第1の樹脂層および第2の樹脂層の形成性材料としては、波長600nm以上の可視光の透過率が80%以上である樹脂が好ましく、具体的には、上述した基材層の形成材料が好適に使用できる。また、紫外線吸収層としては、上述した紫外線吸収剤を所定濃度で含有する樹脂層が好ましい。樹脂層形成材料としては、上述した基材層の形成材料および被膜形成物質が好適に使用できる。
なお、実質的に完全に遮光された包装材とする場合には、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム等の遮光層をフィルムの中間層として設けることができる。
【0017】
そして、上記のタイプのシートを用いる包装材においても、開封用切欠部24aからこの切欠部24aが設けられた側部と向かい合う側部に向かって手で直線状に引き裂くことが可能な易裂性包装材であることが好ましい。上述した第1の樹脂層と第2の樹脂層として、切欠部24aが設けられた側部から向かい合う側部方向に延伸された1軸延伸フィルムを用いることにより、包装材に易裂性を付与することができる。易裂性包装材の第1の樹脂層と第2の樹脂層としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂などの延伸配向性を有する樹脂の1軸延伸フィルムが好適である。
【0018】
また、包装材に易裂性を付与する方法は、上述した1軸延伸フィルムを用いるものに限定されるものではなく、例えば、図4および図5に示す実施例の包装体10のようなものであってもよい。この包装体10における包装材2は、開封用切欠部24aからこの切欠部24aが設けられた側部と向かい合う側部に向かって延びる線状易裂性部27を有している。この包装体10における包装材2は、その全体が易裂性を有するものではない。そして、線状易裂性部27は、開封用切欠部24aからこの開封用切欠部24aと向かい合うように設けられた第2の開封用切欠部24bに到達するものとなっている。そして、図5に示すように、包装材は多層フィルムからなるシートが用いられており、線状易裂性部27は、紫外線吸収層ではない内部層に断続的かつ直線状に形成された欠損部により形成されている。この断続的かつ直線状に形成された欠損部部分は、他の部分より強度が低いため、容易に破断可能である。具体的には、このシート11は、第1の樹脂層51、第2の樹脂層52、第2の樹脂層の上面に設けられた紫外線吸収層53,第1の樹脂層51と紫外線吸収層53との間に設けられた断続的かつ直線状(波線状)に形成された欠損部55を有する中間層54を備えている。欠損部55部分は、他の部分より強度が低いため、線状易裂性部27部分にて、シートは容易に破断可能となっている。
また、包装材に用いられるシートの内側となる面に、密封のためおよび容器体との固着のための低融点樹脂層を設けることが好ましい。この低融点樹脂層は、シートの内側全面に設けてもよいが、ヒートシールされる部分もしくはその付近のみに設けてもよい。低融点樹脂層の形成材料としては、いわゆるホットメルト材料が用いられる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン(例えば、低分子ポリエチレン)やエチレン−酢酸ビニル共重合体のような低融点樹脂が用いられる。
【0019】
薬剤を充填した容器体3は、容器本体31と排出口32を備える。容器体3は、上部シール部33、下部シール部35と、閉鎖空間となっている薬剤収納部34,薬剤収納部内に充填された薬剤36を有する。排出口32は、下部シール部35により容器本体31に固定されて、薬剤収納部34内と連通し、薬剤を排出可能としている。排出口32は、筒状部材と、筒状部材の下端側に下端開口(混合溶液排出口)を密封するように配置された弾性部材と、弾性部材を固定するキャップ(弾性部材支持部材)からなる。弾性部材は、針管を刺通可能なものであり、必要時に針管を刺通して、容器体3内の薬剤を排出することができる。排出口32は、容器本体31を構成するシート材間に挟持され、融着固定されている。
【0020】
容器本体31は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体31は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体31は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法等の種々の方法により製造されたものでもよい。
容器本体31は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このような容器本体31の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
【0021】
また、容器本体31は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。
【0022】
容器本体31は、上記樹脂を用いてブロー成形することにより作製したもの、上記樹脂により形成された2枚のシートの周縁部を融着して形成したもの、上記樹脂により形成された1枚のシートを折り返すとともに周縁部を融着して形成したもの、上記樹脂を用いて押し出し成形により筒状に形成したものの開口周縁を融着することにより作製したもの等のいずれでもよい。
容器体3に充填される薬剤としては、どのようなものでもよいが、紫外線により分解もしくは劣化が生じるとされるものを用いる場合が有効である。そのような薬剤としては、例えば、ビタミンA 、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンEおよびビタミンKの単独もしくは任意の複合物、オザグレルナトリウム、アムホテリシンンB、シスプラチン、塩酸ラモセトロンなどが考えられる。なお、容器体3に充填される薬剤は、上記の薬剤を含有する水性製剤であることが好ましい。
また、本発明の薬剤を充填した容器体は、加熱滅菌処理した後に、包装材に封入することが好ましい。水性製剤を充填した容器体の加熱滅菌処理は、高圧蒸気滅菌法、水浴滅菌法、スプレー滅菌法(シャワー菌滅法)などのいずれの方法で行ってもよく、そのうちでも高圧蒸気滅菌法が好ましく採用される。
【0023】
そして、包装体1は、容器体3を容器体3の薬剤収納部34もしくは薬剤収納部34より上部にて、包装材2に固着する固着部22を有している。特に、この実施例の包装体1では、容器体3は、上部シール部33にて、包装材2に固着部22により固着されている。この固着部22を有することにより、容器体3は、包装材2より取り出し不能となっている。固着部22は、ヒートシールにより形成することが好ましいが、接着剤により行ってもよい。また、固着部22は、上記のように、薬剤収納部ではない、上部シール部にて行うことが好ましい。
そして、図1に示す実施例の包装体1では、固着部22を形成するヒートシール部は、上部シール部の全幅に渡り形成されており、さらに、その側部は、包装材2の側部シール部21b、21cに到達するものとなっている。このようにすることにより、包装材2と容器体3との固着は確実なものとなる。
なお、図6に示す実施例の包装体10のように、固着部22aを形成するヒートシール部は、上部シール部の横方向に所定長形成されているものの、その側部は、上部シール部の側端に到達しない状態にて終端するものであってもよい。
また、図7に示す実施例の包装体30のように、固着部22bを形成するヒートシール部は、上部シール部の横方向に所定長形成されており、かつ、その上部が、包装材2の上方シール部21aに到達するものであってもよい。このようにすることにより、包装材2と容器体3との固着は確実なものとなる。
また、図8に示す実施例の包装体40のように、容器体3の上部シール部の上方部分が、包装材2の上方シール部21aの領域内に侵入し、侵入した部分において、固着部22cを形成するヒートシール部が形成されているものであってもよい。このようにすることにより、包装材2と容器体3との固着は確実なものとなる。
【0024】
そして、容器体を包装材に固着する固着部は、包装材の一方の面に設けられていればよいが、図2に示すように、包装材の両面、言い換えれば、容器体の両面に固着部22,26が設けられていることが好ましい。裏面側固着部26の形態は、上述した表面側の固着部22と同じ形態であっても、異なる形態であってもよい。
そして、本発明の包装体は、包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔5を有している。この実施例の包装体1では、懸垂孔5は、包装材2および容器体3の上部シール部33を貫通するように形成されている。具体的には、固着部22を形成するヒートシール部の中央部、言い換えれば、固着部により一体化した包装材と容器体の上部シール部を打ち抜くように懸垂孔5が設けられている。このため、懸垂孔付近は、ハンガー等への吊り下げ時に耐用可能な十分な強度を有する。
なお、懸垂孔5の形態は、上記の形態に限定されるものではなく、例えば、図7に示した包装体30のように、包装材2にのみ設けてもよい。また、図8に示した包装体40では、包装材2および容器体3の上部シール部33かつ固着部22を貫通するように形成されている。懸垂孔5は、包装材2と容器体3との固着部22に形成することが好ましい。また、懸垂孔は、図9に示す包装体50のように、包装材2の上縁部にあらかじめ形成されているものであってもよい。この包装材2では、上方シール部21aの上縁部の中央部には、上方に延出する湾曲部21eと、その内部に懸垂孔5aが形成されている。
そして、上述した実施例のように、懸垂孔5は、包装体内と外部雰囲気を連通しないものとなっている。このため、そのまま懸垂できるにもかかわらず、包装体内の容器体は外部雰囲気と隔離されており、製造時の状態を維持できる。包装後滅菌されている場合は滅菌雰囲気を維持することができる。
【0025】
そして、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体は、例えば、以下のようにして製造することができる。容器体は、加熱滅菌処理した後に、包装材に封入することが好ましい。水性製剤を充填した容器体の加熱滅菌処理は、高圧蒸気滅菌法、水浴滅菌法、スプレー滅菌法(シャワー菌滅法)などのいずれの方法で行ってもよく、そのうちでも高圧蒸気滅菌法が好ましく採用される。包装材2は、下端もしくは上端が開口したものを準備し、開口部より包装体内に容器体を挿入し、包装材2の側部に設けられている切欠部が、容器体の排出口より上方かつ薬剤収納部より下方となるように配置する。その状態を確保し、包装材2の外側かつ容器体3の外面上(好ましくは、上部シール部上)となる部分に加熱型を当て、ヒートシールし、容器体3を包装材2に固着する。そして、下端もしくは上端の開口部をヒートシールして下部シール部21dを形成し、封止する。そして、包装材と容器体との固着部を所定の大きさにて打ち抜き、懸垂孔を形成することにより、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体が製造される。
【0026】
なお、上述した説明では、包装材として、軟質シートを用いた実施例について説明したが、包装材としては、そのようなものに限定されるものではなく、ブリスター包装材であってもよい。そして、ブリスター包装としては、いわゆるソフトブリスタータイプのもの、また、いわゆるハードブリスタータイプ(例えば、特許2881662号公報)のようなものであってもよい。ブリスター包装材は、ある程度の保形性を有し、内部に容器体を収納可能なトレー部とその開口部を密封するシート状の蓋体とから構成され、それらの周縁部がシールされることにより、密封した包装材を形成する。そして、トレー部および蓋体の両者が、上述したような遮光性を有するものが用いられる。さらに、蓋体またはトレー部もしくは両者の一部が、容器体の上部シール部に固着され、上述した実施例と同様に、固着部が形成される。そして、その固着部に懸垂孔が打設される。さらに、このタイプの包装材においても、包装材の側部であって、容器体の排出口より上方かつ薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部が形成される。そして、このタイプの包装材においても、開封用切欠部から切欠部が設けられた側部と向かい合う側部に向かって手で直線状に破断可能であることが好ましい。このために、トレー部および蓋体の両者が、直線状に破断可能性を有することが望ましい。
【0027】
次に、本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体の使用方法について、図10および図11を用いて説明する。本発明の薬剤充填済み容器体を収容した包装体を準備し、図10に示すように、包装材2に設けられた開封用切欠部24aより包装材2を破断すると、その破断ラインは、第2の開封用切欠部(24b)に到達し、それにより、包装材2の下部が切り取られ、図11に示す状態となる。この状態において、薬剤を収納した容器体3は、排出口32は露出するものの薬剤収納部は、包装材に被包された状態となっている。そして、このまま、包装体1を懸垂孔5を用いてハンガー等に吊り下げ、排出口に輸液セットを接続することにより、薬剤投与可能となる。なお、この包装体1では、薬剤投与中においても薬剤収納部は、遮光性を有する包装材により被包されているので、薬剤の劣化が生じにくい。
【符号の説明】
【0028】
1 薬剤充填済み容器体を収容した包装体
2 包装材
3 容器体
5 懸垂孔
22 固着部
24a、24b 開封用切欠部
31 容器本体
32 排出口
33 上部シール部
34 薬剤収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性を有しかつ密封された包装材と、該包装材内に収納された薬剤を収納した容器体とからなる薬剤充填済み容器体を収容した包装体であって、前記容器体は、容器本体と、該容器本体の下部に取り付けられた排出口と、前記容器体の薬剤収納部内に収納された前記薬剤とを備え、前記包装体は、前記容器体を該容器体の前記薬剤収納部もしくは該薬剤収納部より上部にて、前記包装材に固着する固着部を有し、前記包装材は、該包装材の側部であって、前記容器体の前記排出口より上方かつ前記薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部を備え、さらに、前記包装体は、該包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔を有することを特徴とする薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項2】
遮光性と熱シール性を有しかつ密封された包装材と、該包装材内に収納された薬剤を収納した容器体とからなる薬剤充填済み容器体を収容した包装体であって、前記容器体は、熱可塑性樹脂により形成され、かつ上部シール部を有する容器本体と、該容器本体の下部に取り付けられた排出口と、前記容器体の薬剤収納部内に収納された前記薬剤とを備え、前記包装体は、前記容器体を前記上部シール部にて、前記包装材に固着する固着部を有し、前記包装材は、該包装材の側部であって、前記容器体の前記排出口より上方かつ前記薬剤収納部より下方となる部分に形成された開封用切欠部を備え、さらに、前記包装体は、該包装体を吊り下げるための上部に形成された懸垂孔を有することを特徴とする薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項3】
前記懸垂孔は、前記包装体および前記容器体の上部シール部を貫通するように形成されている請求項2に記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項4】
前記懸垂孔は、前記固着部にて前記包装体および前記容器体の上部シール部を貫通するように形成されている請求項2に記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項5】
前記包装材は、前記開封用切欠部から該切欠部が設けられた側部と向かい合う側部に向かって手で直線状に引き裂くことが可能な易裂性包装材である請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項6】
前記包装材は、前記開封用切欠部が設けられた側部と向かい合う側部に、前記開封用切欠部と向かい合うように設けられた第2の開封用切欠部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。
【請求項7】
前記遮光性は、難紫外線透過性かつ透明性を有するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の薬剤充填済み容器体を収容した包装体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−333(P2011−333A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147074(P2009−147074)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】