説明

薬剤容器

容器(2)と圧着栓(3)とを有する薬剤源(1)。この栓は、定量式放出弁を容器に対して封止的に保持しており、その弁の吐出口(4)のみが外から見える。容器は頸部(5)、および圧着部の位置にある突出する縁部(6)を有する。容器は、成形された高分子材(7)からなり、アルミニウム製の穴の明いた外側スリーブ(8)を有して、圧力保持のための機械的強度を与える。ともに圧力保持のために、頸部は比較的厚い壁厚を有し、端部(9)は内向きの半球形である。高分子材は、3つの層または薄板からなる。最も内側の層(11)は、薬剤およびその高圧ガスがこの層といかようにも反応または結合しない不活性層をなすように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材からなる。中間の高分子層は、分子がPTFE層を通過できる可能性のある高圧ガスを収容するための耐高圧ガス層(12)をなすように、ナイロン材からなる。外側の高分子層(14)は、容器の耐水性および機械的完全性の両方を与えるために、ポリプロピレン(PP)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤用の容器に関し、より具体的には、非限定的に、加圧された薬剤源での使用のための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
定量放出弁を有する薬剤源は、従来、薬剤のアルミニウム製容器を備えている。そのため、使用者は、薬剤の残量を見ることができない。
残りの投与回数を使用者が判断できるように、弁の操作回数を計数する高価な計数器が備えられつつある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、すなわち視覚的に、上記判断を与える代替手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様に従って、薬剤源における薬剤用の容器が提供され、この容器は、
薬剤源の栓のための縁部を備えた口を有し、
上記容器が、高分子材料からなる複数の層を含み、これらの層が、
撥物質性の内側の層と、
気密性および液体不透過性の外側の層と
を少なくとも備え、これら2つの層が透明または少なくとも半透明の材料からなる。
【0005】
本発明の第2の態様に従って、薬剤源における薬剤用の容器が提供され、この容器は、
薬剤供給源の栓のための縁部を備えた口を有し、
上記容器が、高分子材料からなる複数の層を含み、これらの層が
撥物質性の内側の層と、
気密性の第2の層と、
液体不透過性の第3の層と
を少なくとも備え、これら3つの層が透明または少なくとも半透明の材料からなる。
【0006】
気密性の層は、液体不透性の層の内側にあっても、または外側にあってもよい。
他の形態の栓、特に溶接栓が考えられるが、通常の栓は圧着栓であることが望ましい。
内側の層は、容器の内側の表面が、薬剤、または容器の材料による薬剤の吸着によって濡れるのを防止するために設けられる。好適には、ポリテトラフルオロエチレンが内側の層に使用可能である。
【0007】
容器が加圧された薬剤源において用いられる場合(これは普通のことだが)、圧力の下で薬剤が容器を通って浸透しないように、また、高圧ガスを容器内に保持するように、第2の気密層が設けられる。好適には、ナイロンが第2層に使用可能である。
【0008】
第3の層は、通常は水である、薬剤の液体担体を保持するように設けられる。好適には、ポリプロピレンが第3の層に使用可能である。第3の層のさらなる目的は、特に薬剤が水分の存在で劣化する可能性がある場合、容器がなくても水分の浸入を止めることである。
【0009】
補強層が設けられてもよい。補強層は、穴の明いた金属層または繊維補強材であってよい。補強層は、容器の成形の後に加えられてもよく、または成形の際に容器の中に組み込まれてもよい。
【0010】
補強層は、容器内の薬剤の高さが判定可能であるように、通常、穴の明いたもの、糸目の粗い織物、または場合によっては螺旋状に巻回されたものである。
本発明の第3の態様に従って、第1の態様の容器を作製する方法が提供され、本方法は、
層状のプリフォームを射出成形するステップと、
そのプリフォームを最終形状にブロー成形するステップと
を含む。
【0011】
プリフォームを適切な形状にブロー成形する前に、補強層がブロー成形型に含められてもよい。
本発明の理解を助けるために、ここで、例によって、また添付の図面を参照して、本発明の特定の実施形態が説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図を参照して、図1の薬剤源1は、本発明の容器2と、圧着栓3とを有する。この栓は、定量式放出弁(図1ではその吐出口4のみが見えている)を容器に対して封止的に保持する。
【0013】
図2に示すように、容器は、頸部5と、圧着部の位置にある突出した縁部6とを有する。容器は、成形された高分子材7からなり、圧力保持のための機械的強度を与える、アルミニウム製のスリーブである外側の穴明きスリーブ8を有する。頸部は、圧力保持を可能にする比較的厚い壁厚の高分子材を有し、高分子材の端部9は、これも圧力保持のために内向きの半球形である。
【0014】
高分子材は、3つの層または薄板からなる。最も内側の層はポリテトラフロオロエチエン(PTFE)材からなる。これは、薬剤およびその高圧ガスが、その層といかようにも反応または結合しないように、不活性層として設けられる。中間の高分子層は、ナイロン材からなる。これは、分子がPTFE層を通過できる可能性のある高圧ガスを収容するために、耐高圧ガス層12として設けられる。外側の高分子層14は、ポリプロピレン(PP)からなる。この層は、容器の耐水性および機械的完全性の両方を与えるために、他の2つの層より厚い。3つの層は互いに密着し、またPP層がアルミニウム材と密着している。
【0015】
図3および4を参照して、容器2は、図3に示すプリフォームからブロー成形品として成形され、そのプリフォームは、図4に示す成形型で射出成形される。プリフォームは、容器をより短くずんぐりさせた形状であり、プリフォームの層が、
内側PTFE層21
中間ナイロン層22
外側PP層24
と称される以外は、別に説明されない。
【0016】
成形型25の作動部品のみが示され、その作動部品は、雄部26と雌部27とを有する。雄部は、雄芯部262に取り付けられた空気抜きタペット弁261を除いて、動作部を有さない従来式のもので、雄芯部262は、支持板263と一体になっている。一方、雌部は、PTFE用の2721、ナイロン用の2722、およびPP用の2723の3つのゲートを有する中央ゲート271を含む、複数の動作部を有する。ゲート部は、層22および24に対応する厚みだけ可動する、すなわち、PTFE層の射出および成形のために、中央部が雄芯部262に向かって前進され、PTFEの厚み分だけ雄芯部から離間される。次に、ナイロン層の射出のために、ナイロン部の厚み分だけ中央部が後退され、PP層の射出のために、PP層の厚み分だけ中央部がさらに後退される。中央部および成形型全般の構成における機械的および油圧的な詳細は、当業者の能力のうちにあると考えられるため、さらなる詳細は説明されない。
【0017】
雄芯部262および雌ゲート部271と同軸であるのは、3つのスリーブ273、274、275であり、すべて個々に、かつ選択的に、雄支持板263から離れるように後退されることができる。PTFE層21の成形のためには、第1のスリーブが図4に示す前進位置にある。PTFE層21は、雄芯部と、雌ゲート部と、スリーブ273との間に形成された空洞部の中で成形される。ナイロン層の成形のためには、スリーブ273がゲート部271とともに、第1後退位置まで後退される。こうして、PTFE層21と、スリーブ274と、ゲート部との間に、成形用の空洞部ができ、ナイロン層がこの中へ射出される(図5を参照)。
【0018】
PTFE層およびナイロン層の両方は、環状の円筒形であり、一方の端部が開放し、他方が閉鎖している。PP層は、肩部すなわち縁部6を有する以外は、同様である。PP層を形成するには、スリーブ274が後退されるだけではなく、外側スリーブ275も部分的に後退される。こうして、型の空洞部が、肩部を備えて完成するPP層の成形に適する形状に形成される(図6を参照)。この肩部の円周部は、雌型部の固定部277に対して形成される。
【0019】
その結果生じる型が射出成形型から排出され、図7に示すブロー成形型301に移される。ブロー成形型は、プリフォームの挿入の前に補強スリーブ8が設けられること以外は、概ね従来式の型である。プリフォームは、その肩部6を型の特徴部分302によって把持され、使用時の全長まで棒303によって延伸される。棒の孔304を介してプリフォーム内にガスが射出され、プリフォームはその全径まで膨らまされて、そこでPP層がアルミニウム製のスリーブに密着する。
【0020】
本発明は、上述の実施形態の詳細に対して制限を受けるように意図されていない。たとえば、PTFE、ナイロン、およびPPのそれぞれと同様の特性を有する他の高分子材が使用されてもよい。また、繊維補強材などの他の補強材が使用可能である。さらに、補強材は全く必要ない可能性も考えられる。また、本発明の容器を製作するために、プリフォームおよびブロー成形以外の他の工程が用いられてもよい。
【0021】
さらに、本発明は、定量式の薬剤源と同様に、本発明の容器を用いた定量式でない加圧された薬剤源に同等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】薬剤源が本発明の容器を含む、定量式の薬剤源の側面図である。
【図2】図1の薬剤源の容器の同様の側面断面図である。
【図3】図2の容器のためのプリフォームの同様の図である。
【図4】容器の内側層の射出用に構成された射出成形型の縦断面図である。
【図5】第2層の射出用に構成された成形型の同様の図である。
【図6】第3層の射出用に構成された成形型の第3の図である。
【図7】ブロー成形用の空洞内で適切な大きさに膨らまされた、射出成形プリフォームの同様の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤源における薬剤用の容器であって、
前記薬剤源の栓のための縁部を備えた口を有し、
前記容器が、高分子材料からなる複数の層を含み、前記複数の層が、
撥物質性の内側の層と、
気密性および液体不透過性の外側の層と
を少なくとも備え、前記2つの層が透明または少なくとも半透明の材料からなる容器。
【請求項2】
薬剤源における薬剤用の容器であって、
前記薬剤源の栓のための縁部を備えた口を有し、
前記容器が、高分子材料からなる複数の層を含み、前記複数の層が、
撥物質性の内側の層と、
気密性の第2の層と、
液体不透過性の第3の層と
を少なくとも備え、前記3つの層が透明または少なくとも半透明の材料からなる容器。
【請求項3】
前記気密性の層が、前記液体不透性の層の内側にある請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記気密性の層が、前記液体不透性の層の外側にある請求項2に記載の容器。
【請求項5】
溶接栓を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
圧着栓を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記内側の層が、ポリテトラフルオロエチレンからなる請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記気密性の層が、ナイロン材からなる請求項1から7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
前記第3の層がある場合は、前記第3の層がポリプロピレン材からなる請求項1から8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
補強層を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
前記補強層が、穴の明いた金属層である請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記補強層が、繊維補強材を含む請求項10に記載の容器。
【請求項13】
前記補強層が、成形後の付加によって前記容器に組み込まれる請求項12に記載の容器。
【請求項14】
前記補強層が、成形の際に前記容器に組み込まれる請求項12に記載の容器。
【請求項15】
前記補強層が、前記容器内の前記薬剤の高さの目視判定のために、穴の明いたもの、糸目の粗い織物からなるもの、または螺旋状に巻回されたものである、請求項10から14のいずれか一項に記載の容器。
【請求項16】
層状のプリフォームを射出成形するステップと、
前記プリフォームを最終形状にブロー成形するステップと
を含む、請求項1または2に記載の容器を成形する方法。
【請求項17】
補強層が、前記プリフォームをブロー成形する前記ステップの前に、前記ブロー成形型に含められる請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−525277(P2008−525277A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547614(P2007−547614)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004834
【国際公開番号】WO2006/067383
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504356513)クリニカル・デザインズ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】