説明

薬液供給装置

【課題】 調剤時間の短縮化を図ることができながらも、目的とする薬液以外の薬液が投入容器内に入り込むことがないだけでなく、泡立ち難い状態で薬液の投入が行える薬液供給装置を提供する。
【解決手段】 薬液を吐出する複数の供給ノズル36と、供給ノズル36を介して薬液容器内の薬液を投入容器2に供給するポンプと、供給ノズル36の供給口36Aが投入容器2の開口2Aに臨むように供給ノズル36を移動させる移動手段22とを備え、供給ノズル36の供給口36Aが投入容器2の開口2Aから所定距離離間した待機位置と待機位置よりも両者が接近した供給位置とに位置するように、供給ノズル36を高さ方向に移動させる昇降手段50とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が収納された複数の薬液容器から投入容器に供給ノズルを用いて薬液を供給するための薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調剤薬局などでは、液状の薬液の調剤が行われている。薬液の調剤では、処方箋に従って、複数種類の薬液が所定量ずつ投薬瓶に順次注入される。
【0003】
特許文献1には、投薬瓶を水平方向に移動させて、投薬瓶の上端の開口の上方に所定の薬瓶の吐出管の吐出口を位置させてから、投薬瓶を上昇させて薬瓶の吐出管の吐出口を投薬瓶の内部に挿入し、その状態から投薬瓶に薬液を投入して調剤する調剤装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−14618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1では、薬液を投薬瓶に投入する場合に、投薬瓶を上昇させて薬瓶の吐出管の吐出口を投薬瓶の内部にまで挿入する構成であるため、投薬瓶の上昇時間が多くかかるだけでなく、続いて他の種類の薬液を投薬瓶に入れる場合には、下降した投薬瓶を吐出管の吐出口が外部に位置するまで一旦上昇させて次の薬液を投入する動作を行わなければならず、投薬瓶の上昇時間も多くかかる結果、特に複数種類の薬液を入れる場合に、調剤する時間が非常に多くかかるものであった。
【0005】
因みに、投薬瓶の上方に投薬瓶の開口に近接するように吐出管の吐出口を常に位置させておけば、投薬瓶を昇降させる時間が不要になるものの、次のような不都合があった。
つまり、投薬瓶の開口から吐出管の吐出口までの距離が短いため、例えば1番目の薬瓶の薬液の供給が完了してから3番目に位置する投薬瓶の薬液を供給する場合に、2番目の薬瓶が投薬瓶上を通過する時において、2番目の薬瓶の吐出管の吐出口に水滴状の薬液(目的以外の薬液)が垂れ下がっていると、その垂れ下がった薬液が投薬瓶の上端の開口縁に接触して投薬瓶内に誤って入り込んでしまうことがあった。
このため、投薬瓶の開口から吐出管の吐出口を大きく離間する構成にすることが考えられるが、薬液の投入距離が長くなるため、投入される薬液が投薬瓶内で泡立ち易くなるという不都合があり、実施し難いものであった。
【0006】
本発明の目的は、調剤時間の短縮化を図ることができながらも、目的とする薬液以外の薬液が投入容器内に入り込むことがないだけでなく、泡立ち難い状態で薬液の投入が行える薬液供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、薬液が収納された複数の薬液容器と、該複数の薬液容器毎に対応して設けられた供給ノズルと、該供給ノズルを介して薬液容器内の薬液を投入容器に供給する薬液供給手段と、前記供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように該供給ノズル及び投入容器の少なくとも一方を水平方向に移動させる移動手段とを備えた薬液供給装置であって、前記供給ノズルの供給口と前記投入容器の開口とが所定距離離間した待機位置と該待機位置よりも該両者が接近した位置で薬液の供給を行う供給位置とに位置するように、該両者のうちの少なくとも一方を高さ方向に移動させる昇降手段を備え、前記移動手段によって供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口縁上方を通過する前に前記供給ノズルと前記投入容器とが待機位置に位置するように、前記昇降手段を駆動することを特徴としている。
【0008】
上記のように、移動手段によって移動される供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口縁上方を通過する前に前記供給ノズルと前記投入容器とが投入容器の開口から離間した待機位置に位置するように、前記昇降手段を駆動することによって、供給ノズルの供給口に水滴となって垂れ下がっている薬液が投入容器の開口縁に接触することがない。しかも、供給ノズルの供給口が投入容器の開口縁上方を通過して投入容器の開口に臨んだ後、供給ノズルの供給口から投入容器へ薬液を投入する場合に、待機位置よりも両者が接近した供給位置に位置することによって、供給ノズルの供給口から投入される薬液が投入容器内で泡立ち難くすることができる。さらに、薬液供給時に投入容器内に供給ノズルを挿入することがなく、供給ノズルの供給口が投入容器の開口から所定距離離間した待機位置と待機位置よりも両者が接近した供給位置とに位置させるだけで済むから、調剤時間を短縮することができる。
【0009】
前記供給ノズルの軸芯が前記投入容器の上下方向軸線に対して傾斜していてもよい。
【0010】
前記待機位置における供給ノズルの供給口と投入容器の開口との距離を5mm以上に設定することが好ましい。
【0011】
前記供給ノズルに、チューブの一端が接続され、該チューブの他端が前記薬液容器内に挿入され、前記薬液供給手段が、前記移動手段によって移動可能に備えられ、前記チューブの一部を押圧して前記供給ノズルへ薬液を移送するための複数のチューブポンプと、チューブポンプを駆動するポンプ駆動ユニットを備え、該チューブポンプが、外周部に複数のローラが設けられた回転自在なロータを有し、前記ポンプ駆動ユニットが、前記移動してきた特定のチューブポンプのロータを回転させるべく、該ロータの被連結部に連結される連結部を有するポンプ駆動用モータと、該ポンプ駆動用モータを駆動軸方向に移動させて該モータの連結部をチューブポンプのロータの被連結部に連結させる連結状態と連結解除状態とに切り替えるためのアクチュエータとを備え、該アクチュエータによるポンプ駆動用モータの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように構成してもよい。
【0012】
前記全ての供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨んでいない状態において、該所定の供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように前記移動手段による供給ノズルの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように構成してもよい。
【0013】
前記複数の薬液容器、これに対応する前記チューブ及び供給ノズルが、上下方向軸線周りに回転自在な回転体に備えられ、該回転体を回転させることにより、前記供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、供給ノズルの供給口と投入容器の開口とが所定距離離間した待機位置に位置させることによって、供給ノズルの供給口に水滴となって垂れ下がっている薬液が投入容器の開口縁に接触することがなく、目的以外の薬液が投入容器内に入り込むことがない信頼性の高い薬液供給装置を提供することができる。
しかも、供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨んだ後、供給ノズルの供給口から前記投入容器へ薬液を供給する場合に、待機位置よりも両者が接近した供給位置に位置することによって、供給ノズルの供給口から供給される薬液が投入容器内で泡立ち難くすることができる。
さらに、供給ノズルの供給口が投入容器の開口から所定距離離間した待機位置と待機位置よりも両者が接近した供給位置とに位置させるだけで済むから、調剤時間を短縮することができる薬液供給装置を提供することができる。
【0015】
前記供給ノズルの軸芯を前記投入容器の上下方向軸線に対して傾斜させることによって、投入容器の側壁内面に供給ノズルからの薬液を当てながら投入することができるから、投入容器の底面に鉛直方向に薬液を当てながら投入する場合に比べて薬液の泡立ちが更に発生し難くできる。
【0016】
アクチュエータによるポンプ駆動用モータの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように構成することによって、ポンプ駆動用モータの移動が完了した後、昇降手段の駆動を行う場合に比べて、時間短縮を図ることができる。
【0017】
前記全ての供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨んでいない状態において、該所定の供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように前記移動手段による供給ノズルの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように前記制御部を構成することによって、供給ノズルの移動が完了した後、昇降手段の駆動を行う場合に比べて、時間短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の一形態の薬液供給装置1を示す正面図である。図2は、図1の切断面線A−Aから見た断面図である。図3は、図1の切断面線B−Bから見た断面図である。本実施の形態の薬液供給装置1は、投入容器である投薬瓶2に、液状の薬液を供給するために用いられる。
【0019】
薬液供給装置1は、後述する薬液瓶23からの薬液を投入容器としての投薬瓶2に供給する薬液供給手段3と、投薬瓶2に収容される薬液の重量を検出する重量検出手段4とを備え、重量検出手段4によって検出される検出重量値に基づいて薬液供給手段3を制御している。これらの各手段3,4は、筐体6に設けられる。筐体6は、直方体形状に形成され、起立した状態で水平な設置面7に設置される。
【0020】
筐体6の内部には、支持フレーム8が設けられる。支持フレーム8は、筐体6の底板9と筐体6の天板10との間に配置され、詳しくは筐体6の天板10寄りに配置される。筐体6の内部空間は、支持フレーム8によって、支持フレーム8よりも上方の上部空間11と支持フレーム8よりも下方の下部空間12とに仕切られる。筐体6の前面部13には、上部空間11に連なる上部開口14と、下部空間12に連なる下部開口15とが形成される。下部開口15は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16bの間で上下に延びるように形成される。
【0021】
薬液供給手段3は、下部空間12に配置され、支持フレーム8に対して鉛直な軸線(以下、「ドラム軸線」という)L1まわりに回転自在に設けられる回転体である回転ドラム21と、回転ドラム21を、支持フレーム8に対してドラム軸線L1まわりに回転させるドラム回転用モータ22と、回転ドラム21に設けられ、薬液が収納された複数の薬液容器としての薬液瓶23から投薬瓶2に薬液を移送する複数のポンプ24と、各ポンプ24を駆動するポンプ駆動ユニット25とを有する。各薬液瓶23には、異なる薬液が収容される。本実施の形態では、薬液瓶23は10本であり、ポンプ24は10個であるが、薬液瓶23及びポンプ24の個数は目的に応じて変更できる。
【0022】
回転ドラム21の上端部26には、ドラム軸線L1と同軸のリング部材27が固定される。リング部材27の外周には、リング部材27を支持する3つ以上の支持部材28が設けられる。各支持部材28は、ドラム軸線L1を中心とする周方向(以下、「ドラム周方向」という)に等間隔をあけて配置される。
【0023】
各支持部材28は、支持フレーム8に対してドラム軸線L1に平行な軸線まわりに回転自在に設けられる。各支持部材28の外周部には、全周にわたって凹条29が形成される。リング部材27の外周部には、全周にわたって凸条30が形成される。リング部材27の凸条30は、各支持部材28の凹条29に嵌り込む。このような構成によって、支持フレーム8に対して回転ドラム21を円滑に回転させることができる。
【0024】
回転ドラム21は、各ポンプ24を保持するポンプ保持体31と、ポンプ保持体31の下方に設けられ、各薬液瓶23を保持する薬液瓶保持体32とを有する。ポンプ保持体31には、各ポンプ24が、ドラム周方向に等間隔をあけて配置される。薬液瓶保持体32には、各薬液瓶23が、ドラム周方向に等間隔をあけて配置される。
【0025】
ドラム回転用モータ22は、支持フレーム8に固定される。ドラム回転用モータ22の回転軸には、原動歯車が固定される。回転ドラム21の上端部26には、原動歯車に噛合する従動歯車33が固定される。ドラム回転用モータ22の回転は、駆動歯車および従動歯車33を介して、回転ドラム21に伝達される。
【0026】
ドラム回転用モータ22は、前記複数の薬液瓶23毎に対応して設けられた供給ノズル36の下端に形成された供給口36Aが前記投薬瓶2の上端に形成された開口2Aに臨むように供給ノズル36を水平方向に移動させる移動手段を構成している。ここでは、複数の供給ノズル36の他、複数の薬液瓶23、後述するチューブ34が回転ドラム21にて一体回動されるようになっているが、伸縮式のチューブなどを用いることによって、複数の供給ノズル36のみを回動する構成であってもよい。
【0027】
図5(a)に示すように、前記各供給ノズル36の軸芯X1が前記投薬瓶2の上下方向軸線X2に対して傾斜しており、供給ノズル36から吐出する薬液を側壁の内面に当てながら投入するようにして、薬液を投薬瓶2の底面に垂直に当てながら投入する場合に比べて泡立ち難いようにしている。尚、傾斜角度は、投薬瓶2の形状や大きさに基づいて適宜変更可能である。
【0028】
前記ドラム回転用モータ22により回転される回転ドラム21の回転位置の検出は、回転ドラム21の円周上の所定箇所を検出する複数の光電型のセンサ(図示せず)からの検出情報を用いるようにしてもよい。また、ドラム回転用モータ22をエンコーダ付のモータから構成する又はエンコーダをドラム回転用モータ22に外付けし、エンコーダからの回転数に基づいて回転ドラム21の回転位置を検出することができるようにしてもよい。
【0029】
薬液供給装置1により調剤を行う前の初期状態及び調剤終了後は、供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置していない状態、つまり、円周方向で隣り合う供給ノズル36,36間に投薬瓶2が位置する状態になるように前記ドラム回転用モータ22の駆動を後述する制御部Sにより制御している。
【0030】
各ポンプ24は、チューブポンプによって実現される。各ポンプ24は、チューブ34と、チューブ34が挿通されるポンプ本体35とを有する。図1〜図3では、正面のポンプ24を除く各ポンプ24については、チューブ34を省略している。
【0031】
チューブ34は、可撓性および弾発性を有する。チューブ34は、シリコンチューブによって実現される。チューブ34の一端部34aは、薬液瓶23に挿入される。チューブ34の他端部34bには、供給ノズル36が設けられる。各ポンプ24の供給ノズル36は、ドラム軸線L1を中心とする仮想円上でドラム周方向に等間隔をあけて配置される。
【0032】
ポンプ本体35は、ポンプ保持体31に固定される基部と、基部に対してドラム軸線L1を中心とする半径方向に平行な軸線L2まわりに回転自在に設けられるロータと、ロータの外周部に設けられる複数のローラと、各ローラの周軌道の外周に設けられる周壁部とを有する。ロータと周壁部との間には、チューブ34の一部が挿通される。ロータの回転によって、少なくとも1つローラが、チューブ34の一部を周壁部に向けて押圧して圧迫しながら移動し、これによってチューブ34内の薬液を移送することができる。
【0033】
ポンプ駆動ユニット25は、支持フレーム8に固定される固定部37と、ポンプ保持体31の内方に配置され、固定部37に対して前後方向Aに移動自在に設けられる移動部38と、固定部37に固定され、移動部38を固定部37に対して前後方向Aに移動させるアクチュエータとしての移動用モータ39と、移動部38に固定され、ポンプ本体35のロータを回転させるポンプ駆動用モータ40とを有する。
【0034】
ポンプ駆動用モータ40によって回転駆動される駆動軸41には、連結部である連結部材42が固定される。各ポンプ24のロータの回転軸43には、連結部材42が連結される被連結部である被連結部材44が固定される。連結部材42と被連結部材44とが連結されることで、ポンプ駆動用モータ40の回転をポンプ24に伝達することができる。薬液の供給速度は、ポンプ駆動用モータ40の回転速度(以下、「ポンプ回転速度」という)が高速になるほど、高速になる。
【0035】
前記移動用モータ39を正転方向又は逆転方向に駆動することによって、ポンプ駆動用モータ40を駆動軸方向に移動させることで、ポンプ駆動用モータ40の連結部材42をチューブポンプ24のロータの被連結部材44に連結させる連結状態と連結解除状態とに切り替えることができるようになっている。
【0036】
例えば、移動用モータ39の正転方向の駆動によって移動部38を前進させることで、連結部材42と被連結部材44とを連結することができる。また、移動用モータ39の逆転方向の駆動によって移動部38を後退させることで、連結部材42と被連結部材44との連結を解除することができる。連結解除状態では、回転ドラム21を支持フレーム8に対して回転させることができる。従って、連結解除状態でドラム回転用モータ22を駆動することによって、制御部Sに入力された処方箋情報によって選択された特定のポンプ24をポンプ駆動用モータ40に対面する位置まで回転ドラム21を回転させ、回転後において前記連結状態に切り替えることによって、選択された特定のポンプ24を駆動して、所望の薬液供給手段3から供給される薬液を投薬瓶2に投入することができる。尚、前記連結部材42と被連結部材44とは、共にギヤで構成されているが、動力を伝達可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
【0037】
重量検出手段4は、下部開口15に配置される。重量検出手段4は、電子天秤45と、電子天秤45を収容するケーシング46と、電子天秤45に載置されて固定され、投薬瓶2を、起立した状態に保持する投薬瓶保持体47とを有する。電子天秤45は、検出重量値を逐次に後述する制御部S(図5(a)参照)に与えて、所定重量になることにより前記ポンプ24の駆動を停止するように構成している。電子天秤45は、音叉式である。電子天秤45は、ロードセル式であってもよく、あるいは電磁式であってもよい。ケーシング46は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16bの下部に設けられる。投薬瓶保持体47は、投薬瓶2が載置される載置台48と、載置台48に設けられ、投薬瓶2を保持する保持具49とを有する。
【0038】
前記投薬瓶2を載置する載置台48及びケーシング46は、図4に示す昇降手段50により昇降させることができるようになっている。
この昇降手段50は、昇降用の電動モータ51と、この電動モータ51によって駆動されるベルト機構とを備えている。このベルト機構は、前記ケーシング46の一側壁に固定されたベルト固定具52と、前記電動モータ51の駆動プーリ51A及び上下に配置したプーリ53,54に巻回される無端状のベルト55と、このベルト55にテンションを与えるテンションプーリ56とを備えている。従って、電動モータ51を駆動することによりベルト55を回動させることで、載置台48及びケーシング46を昇降させることができるようになっている。
【0039】
そして、電動モータ51の駆動によって、図5(b)に示すように、前記投薬瓶2をセットするための初期位置と、該初期位置よりも前記供給ノズル36の供給口36Aに前記投薬瓶2の上端開口2Aが接近した待機位置と、該待機位置よりも該投薬瓶2と供給ノズル36とが接近して薬液の供給を行う供給位置の3位置に位置させることができるようになっている。
【0040】
前記3つの位置に投薬瓶2が位置したことを検出するためのセンサ57を配置している。各センサ57は、発光部57Aと受光部57Bとからなる光電式のセンサから構成しているが、磁気式又は超音波式のセンサで構成する他、接触式のリミットセンサなどで構成することも可能である。また、図5(b)では、3位置を3つのセンサにてそれぞれ検出するように構成したが、磁気式又は超音波式の単数のセンサを投薬瓶2の上端との距離を検出するべく、投薬瓶2の上方に配置して構成してもよい。また、エンコーダ付の電動モータを用いる又は電動モータにエンコーダを外付けすることによって、エンコーダの回転数に基づいて投薬瓶2の高さ位置を検出できるように構成してもよい。この場合、投薬瓶2の高さに応じて投薬瓶2の高さ位置を演算する演算装置を備えておけば、複数種類の高さを有する投薬瓶2にも対応することができる利点がある。
【0041】
図5(a)に示すように、薬液供給装置1は、前記移動手段22及び昇降手段50を制御するためのコンピュータ等から構成される制御部Sを備えている。従って、制御部Sは、移動手段22によって移動される供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置する前に前記供給ノズル36Aが待機位置(図5(a)の実線で示す位置)に位置するように、昇降手段50を駆動するようにしている。
【0042】
このように構成することによって、回転ドラム21の回転に伴って移動してきた供給ノズル36の供給口36Aに水滴となって垂れ下がっている薬液が、投薬瓶2の開口2Aの縁に接触することがない。従って、調剤中に誤って他の薬液が投薬瓶2に入ってしまうことがない。前記待機位置において供給ノズル36の供給口36Aと前記投薬瓶2の開口2Aとの距離を5mm以上に設定しておけば、調剤中に誤って他の薬液が投薬瓶2に入ってしまうことを確実に防止することができる。また、供給位置における供給ノズル36の供給口36Aと前記投薬瓶2の開口2Aとの距離は、短い方が好ましいが、待機位置のときの距離よりも短いのであれば、どのような値に設定してもよい。前記投薬瓶2の開口2Aは、投薬瓶2の上端の内側に形成される円形(四角形や三角形あるいは多角形など他の形状であってもよい)の開口を指し、その開口2Aを形成する薬瓶2の上端部を開口縁と称する。
【0043】
次に、前記制御部Sによる投薬瓶Sへ調剤を行う場合の制御を、図6〜図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
まず、投薬瓶2を載置台48にセットし、調剤開始制御を開始するためのスイッチ(図示せず)をONすると、図6に示すように、制御部Sは、投薬瓶2の上昇指示を昇降手段50に出力する(ステップS1)。このとき、制御部Sは、図7で示す別のフローチャートにより投薬瓶2の上昇動作を行うようにしている。つまり、投薬瓶2の上昇指示があると(ステップS21)、投薬瓶2の上昇動作に入り、投薬瓶2の上昇が完了すると、完了通知を行う(ステップS24)。前記投薬瓶2の上昇動作は、図8(a)に示すサブルーチンに示されている。上昇動作では、投薬瓶2の上昇を開始し(ステップS31)、投薬瓶2が供給位置に位置したか否かを判断し(ステップS32)、投薬瓶2が供給位置に達すると、投薬瓶2の上昇を停止(ステップS33)する。
【0045】
前記制御部Sは、上昇の完了通知を受けて投薬瓶2の上昇が完了したと判断すると(ステップS2)、退避指示を出力し(ステップS3)、調剤したい薬液瓶23の供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置するように、回転ドラム21を回転させる(ステップS4)。
【0046】
前記退避指示が出力されると、制御部Sは、図7で示す別のフローチャートにより投薬瓶2の退避動作を行うようにしている。つまり、投薬瓶2の退避指示があると(ステップS22)、投薬瓶2の退避動作に入り、投薬瓶2の退避が完了すると、完了通知を行う(ステップS24)。前記投薬瓶2の退避動作は、図8(b)に示すサブルーチンに示されている。退避動作では、投薬瓶2の下降を開始し(ステップS41)、投薬瓶2が待機位置に位置したか否かを判断し(ステップS42)、投薬瓶2が待機位置に達すると、投薬瓶2の下降を停止(ステップS43)する。
【0047】
続いて、回転ドラム21の回転が完了すると、制御部Sは、投薬瓶2の上昇指示を出力し(ステップS5)、ポンプ駆動用モータ40を前進させる(ステップS6)。尚、投薬瓶2の上昇指示が出力されると、前述同様に、図7で示す別のフローチャート及び図8(a)に示すサブルーチンによる上昇のための動作を行う。
【0048】
前記制御部Sは、上昇の完了通知を受けて投薬瓶2の上昇が完了したと判断すると(ステップS7)、ポンプ24を回転させて(ステップS8)、所定量の薬液を投薬瓶2に投入する。
【0049】
前記制御部Sは、全ての薬液が投入されたか否かを判断し(ステップS9)、全ての薬液が投入されたと判断した場合には、投薬瓶2の下降指示を出力し(ステップS10)、投薬瓶2の下降が完了したと判断すると(ステップS11)、調剤制御を終了する。
【0050】
前記下降指示が出力されると、制御部Sは、図7で示す別のフローチャートにより投薬瓶2の下降動作を行うようにしている。つまり、投薬瓶2の下降指示があると、投薬瓶2の下降動作を行うようにしている。つまり、投薬瓶2の下降指示があると(ステップS23)、投薬瓶2の下降動作に入り、投薬瓶2の下降が完了すると、完了通知を行う(ステップS24)。前記投薬瓶2の下降動作は、図8(c)に示すサブルーチンに示されている。下降動作では、投薬瓶2の下降を開始し(ステップS51)、投薬瓶2が初期位置に位置したか否かを判断し(ステップS52)、投薬瓶2が初期位置に達すると、投薬瓶2の下降を停止(ステップS53)する。
【0051】
前記制御部Sが、図6のステップS9において全ての薬液を投入していないと判断すると、次の薬液瓶23からの調剤動作を行う。つまり、投薬瓶2の退避指示を出力して(ステップS12)投薬瓶2を待機位置まで下げることにより、前述したように、回転ドラム21の回転に伴って移動してきた供給ノズル36の供給口36Aに水滴となって垂れ下がっている薬液が投薬瓶2の開口2Aの縁に接触することがなく、調剤中に誤って他の薬液が投薬瓶2に入ってしまうことがないようにしている。
【0052】
前記投薬瓶2の退避指示を出力してから、ポンプ駆動用モータ40を後退(ステップS13)した後、回転ドラム21を回転させて(ステップS4)、前述同様に調剤動作を行わせることになる。
【0053】
さらに、前記制御部Sによる調剤を行う場合の制御を、図9及び図10のタイムチャートに基づいて説明する。
【0054】
まず、投薬瓶2を載置台48にセットし、調剤開始制御を開始するためのスイッチ(図示せず)をONすると、初期位置にある投薬瓶2を所定の加速度で上昇させる。
【0055】
前記投薬瓶2の上昇を行って投薬瓶2が供給位置に達すると、上昇動作を停止し、設定時間経過後に待機位置に位置するまで投薬瓶2を下降させる。前記投薬瓶2の下降開始と同時に、回転ドラム21を回転させて調剤したい薬液瓶23の供給ノズル36の供給口36Aを前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置させるようにしている。
【0056】
このように、投薬瓶2の下降開始と同時に回転ドラム21の回転を開始することによって、投薬瓶2の下降が完了してから回転ドラム21の回転を開始する構成に比べて調剤にかかる時間を短縮することができる利点がある。
【0057】
調剤したい薬液瓶23の供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置させた後は、設定時間経過後に投薬瓶2を供給位置に位置させるべく、投薬瓶2の上昇を開始すると同時に、ポンプ駆動用モータ40の前進を開始する。
【0058】
このように、投薬瓶2の上昇開始と同時にポンプ駆動用モータ40の前進を開始することによって、投薬瓶2の上昇が完了してからポンプ駆動用モータ40の前進を開始する構成に比べて調剤にかかる時間を短縮することができる利点がある。
【0059】
ポンプ駆動用モータ40の前進が完了してから設定時間経過後に(完了後と同時でもよい)ポンプ24を回転させて投薬瓶2に所定量の薬液を投入する。
【0060】
前記ポンプ24の回転を停止して薬液の投入が完了した後、他の薬液を投入したい場合には、図10に示すように、供給位置にある投薬瓶2を待機位置に位置させるべく、投薬瓶2の下降を開始すると同時に、ポンプ駆動用モータ40の後退を開始する。
【0061】
このように、投薬瓶2の下降開始と同時にポンプ駆動用モータ40の後退を開始することによって、投薬瓶2の下降が完了してからポンプ駆動用モータ40の後退を開始する構成に比べて調剤にかかる時間を短縮することができる利点がある。
【0062】
前記投薬瓶2の下降が完了した後、設定時間経過した後(完了後と同時でもよい)に、回転ドラム21を回転させて調剤したい薬液瓶23の供給ノズル36の供給口36Aを前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置させるようにしている。
【0063】
調剤したい薬液瓶23の供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置させた後は、前述同様に、設定時間経過後に投薬瓶2を供給位置に位置させるべく、投薬瓶2の上昇を開始すると同時に、ポンプ駆動用モータ40の前進を開始する。
【0064】
この場合も、投薬瓶2の上昇開始と同時にポンプ駆動用モータ40の前進を開始することによって、投薬瓶2の上昇が完了してからポンプ駆動用モータ40の前進を開始する構成に比べて調剤にかかる時間を短縮することができる利点がある。
【0065】
ポンプ駆動用モータ40の前進が完了してから設定時間経過後に(完了後と同時でもよい)ポンプ24を回転させて投薬瓶2に所定量の薬液を投入して、第2回目の薬液の投入が終了する。
【0066】
調剤を行う前の薬液供給装置1の初期状態では、供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置していない状態にしていたが、供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置する状態であってもよい。この場合、投薬瓶2の下降と回転ドラム21の回転とを同時に開始すると、図9で示した投薬瓶2が待機位置に位置するまでに供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aの縁を通過して、前述したように供給ノズル36の供給口36Aに水滴となって垂れ下がっている薬液が投薬瓶2の開口2Aの縁に接触してしまう場合が発生することもあり得るので、投薬瓶2が待機位置に位置してから回転ドラム21を回転させることが好ましい。
【0067】
前記実施形態では、供給ノズル36を回転させる構成を示したが、直線的に移動させて、供給ノズル36の供給口36Aが前記投薬瓶2の開口2Aに臨む位置に位置させる構成であってもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、投薬瓶2は固定状態で供給ノズル36を水平方向(横方向)に移動させる構成であったが、供給ノズル36は固定で投薬瓶2を移動させる構成であってもよいし、また、投薬瓶2と供給ノズル36の両方を水平方向(横方向)に移動させる構成であってもよい。
【0069】
さらに、前記実施形態では、供給ノズル36は固定状態で投薬瓶2を上下方向に移動させる構成であったが、投薬瓶2は固定で供給ノズル36を移動させる構成であってもよいし、また、投薬瓶2と供給ノズル36の両方を上下方向(縦方向)に移動させる構成であってもよい。尚、供給ノズル36を待機位置に位置させるタイミングは、供給ノズル36の供給口36Aが投薬瓶2の開口縁上方を通過する前であれば、いつでもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、供給ノズル36の軸芯X1が前記投薬瓶2の上下方向軸線X2に対して傾斜した場合を示したが、場合によっては傾斜させずに上下方向に沿う鉛直姿勢に供給ノズル36を配置して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の一形態の薬液供給装置を示す正面図である。
【図2】図1の切断面線A−Aから見た断面図である。
【図3】図1の切断面線B−Bから見た断面図である。
【図4】薬液供給装置を横から見た一部省略した側面図である。
【図5】(a)は薬液供給装置の制御部を示すブロック図、(b)は投薬瓶の高さ方向3位置を示す説明図である。
【図6】薬液供給装置による調剤動作を行うためのフローチャートである。
【図7】3つの高さ方向での動作を行うためのフローチャートである。
【図8】(a),(b),(c)は図7中で示した3つの動作を具体的に示したサブフローチャートである。
【図9】初期状態から第1回目の調剤動作を行う場合のタイムチャートである。
【図10】第2回目以降の調剤動作を行う場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1…薬液供給装置、2…投薬瓶(投入容器)、2A…開口、3…薬液供給手段、4…重量検出手段、6…筐体、7…設置面、8…支持フレーム、9…底板、10…天板、11…上部空間、12…下部空間、13…前面部、14…上部開口、15…下部開口、16a,16b…左右両側部、21…回転ドラム、22…ドラム回転用モータ(移動手段)、23…薬液瓶(薬液容器)、24…ポンプ(チューブポンプ)、25…ポンプ駆動ユニット、26…上端部、27…リング部材、28…支持部材、29…凹条、30…凸条、31…ポンプ保持体、32…薬液瓶保持体、33…従動歯車、34…チューブ、34a…一端部、34b…他端部、35…ポンプ本体、36…供給ノズル、36A…供給口、37…固定部、38…移動部、39…移動用モータ、40…ポンプ駆動用モータ、41…駆動軸、42…連結部材(連結部)、43…回転軸、44…被連結部材(被連結部)、45…電子天秤、46…ケーシング、47…投薬瓶保持体、48…載置台、49…保持具、50…昇降手段、51…電動モータ、51A…駆動プーリ、52… ベルト固定具、53,54…プーリ、55…ベルト、56…テンションプーリ、57…センサ、57A…発光部、57B…受光部、L1…ドラム軸線、L2…軸線、S…制御部、X1…軸芯、X2…上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収納された複数の薬液容器と、該複数の薬液容器毎に対応して設けられた供給ノズルと、該供給ノズルを介して薬液容器内の薬液を投入容器に供給する薬液供給手段と、前記供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように該供給ノズル及び投入容器の少なくとも一方を水平方向に移動させる移動手段とを備えた薬液供給装置であって、
前記供給ノズルの供給口と前記投入容器の開口とが所定距離離間した待機位置と該待機位置よりも該両者が接近した位置で薬液の供給を行う供給位置とに位置するように、該両者のうちの少なくとも一方を高さ方向に移動させる昇降手段を備え、前記移動手段によって供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口縁上方を通過する前に前記供給ノズルと前記投入容器とが待機位置に位置するように、前記昇降手段を駆動することを特徴とする薬液供給装置。
【請求項2】
前記供給ノズルの軸芯が前記投入容器の上下方向軸線に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記待機位置における供給ノズルの供給口と投入容器の開口との距離を5mm以上に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記供給ノズルに、チューブの一端が接続され、該チューブの他端が前記薬液容器内に挿入され、前記薬液供給手段が、前記移動手段によって移動可能に備えられ、前記チューブの一部を押圧して前記供給ノズルへ薬液を移送するための複数のチューブポンプと、チューブポンプを駆動するポンプ駆動ユニットを備え、該チューブポンプが、外周部に複数のローラが設けられた回転自在なロータを有し、前記ポンプ駆動ユニットが、前記移動してきた特定のチューブポンプのロータを回転させるべく、該ロータの被連結部に連結される連結部を有するポンプ駆動用モータと、該ポンプ駆動用モータを駆動軸方向に移動させて該モータの連結部をチューブポンプのロータの被連結部に連結させる連結状態と連結解除状態とに切り替えるためのアクチュエータとを備え、該アクチュエータによるポンプ駆動用モータの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記全ての供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨んでいない状態において、該所定の供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように前記移動手段による供給ノズルの移動に同期して前記昇降手段を駆動するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記複数の薬液容器、これに対応する前記チューブ及び供給ノズルが、上下方向軸線周りに回転自在な回転体に備えられ、該回転体を回転させることにより、前記供給ノズルの供給口が前記投入容器の開口に臨むように構成したことを特徴とする請求項4又は5記載の薬液供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−52788(P2010−52788A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221303(P2008−221303)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】