説明

薬物動態が改善された四量体サイトカインをドック・アンド・ロック(DNL)技術により調製するためのモジュール法

本発明は、ドック・アンド・ロック(dock‐and‐lock)技術を用いてサイトカイン‐抗体複合体を形成するための方法および組成物に関する。好適な実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL複合体は、それぞれがDDD(ドッキング/二量体化ドメイン)部分に付加された2つのAD(アンカードメイン)部分および4つのサイトカインに付加されたIgGを含む。DDD部分は、AD部分と結合する二量体を形成し、その結果、DDDとADが2:1の比で結合する。当該サイトカイン‐MAb複合体は、改善された薬物動態を示し、裸のサイトカインまたはペグ化サイトカインよりも有意に長い血中半減期を有する。当該サイトカイン‐MAb複合体は、サイトカイン単独、抗体単独、非コンジュゲートサイトカインと抗体あるいは無関係抗体を組み込んだサイトカイン‐MAbに比べ、有意に改善されたインビトロおよびインビボ効果も示す。DNL複合体を形成するために、他の抗体およびサイトカインおよびサイトカインが用いられてきたが、最も好ましくは、当該複合体は、4つのIFN〜α2b部分とコンジュゲートした抗CD20IgG抗体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2008年4月10日に出願された米国仮特許出願第61/043,932号、2008年10月13日に出願された同第61/104,916号および2008年12月3日に出願された同第61/119,542号の利益を主張する。本出願は、2006年3月28日に出願された米国特許出願第11/391,584の分割出願であった、2009年3月3日に出願された同第12/396,965号;2006年3月24日に出願された同第11/389,358号;2006年6月29日に出願された同第11/478,021号;2006年12月5日に出願された第11/633,729の分割出願であった、2009年3月3日に出願された同第12/396,605号;2007年5月8日に出願された同第11/745,692号;および2007年10月26日に出願された同第11/925,408号の一部継続出願である。これらの出願は、米国特許法第119条(e)の下、2005年4月6日に出願された米国仮特許出願第60/668,603号;2005年10月20日に出願された同第60/728,292号;2005年12月16日に出願された同第60/751,196号、2006年3月14日に出願された同第60/782,332号;2006年5月15日に出願された同第60/800,342号;および2006年11月6日に出願された同第60/864,530号の利益を主張する。各優先出願の内容全体が、参照により本明細書で援用される。
【0002】
本発明は、インビトロでの活性を保持しかつ増強されたインビボでの有効性を示す多量体サイトカインの設計および生成に関する。サイトカインベースのDDD部分と組換えIgGとの部位特異的コンジュゲーションによりヒト化モノクローナル抗体(MAb)に固定される四量体サイトカインを産生するために、2つの抗体重鎖がそれぞれAD部分と融合されかつDDD部分の二量体が各AD部分と結合する、ドック・アンド・ロック(dock‐and‐lock)(DNL)法を使用する。好適な実施形態において、ヒト化抗CD20MAb(hA20)をインターフェロン‐α2b(IFNα2b)とコンジュゲートさせて、4コピーのIFNα2bを含む20‐2bDNL構築物を形成する。サイトカイン‐MAb構築物は、様々な病態を治療するのに有用であり、腫瘍のような標的細胞に対して、親MAb単独、サイトカイン単独、コンジュゲートされていないMAbとサイトカインとの併用または対照MAbとコンジュゲートされたサイトカインよりも大きな効力を示す。
【背景技術】
【0003】
関連技術
インターフェロン‐α(IFNα)は、癌の動物モデル(Ferrantiniら、1994、J.Immunol.、153:4604‐15)およびヒト癌患者(Guttermanら、1980、Ann.Intern.Med.、93:399‐406)の双方において抗腫瘍活性を有することが報告されている。IFNαは、癌遺伝子の下方制御、腫瘍抑制因子の上方制御、腫瘍表面のMHCクラスIタンパク質発現の増加を介した免疫認識の増強、アポトーシスの増強および化学療法剤に対する感作を含めた、種々の直接的な抗腫瘍作用を発揮し得る(Guttermanら、1994、PNAS USA、91:1198‐205;Matarreseら、2002、Am.J.Pathol.、160:1507‐20;Mecchiaら、2000、Gene Ther.、7:167‐79;Sabaawyら、1999、Int.J.Oncol.、14:1143‐51;Takaokaら、2003、Nature、424:516‐23)。一部の腫瘍に対しては、IFNαは、STAT1の活性化により直接的かつ強力な抗増殖性作用を有し得る(Grimleyら、1998、Blood、91:3017‐27)。間接的には、IFNαは、血管新生を阻害し(SidkyおよびBorden、1987、Cancer Res.、47:5155‐61)、宿主免疫細胞を刺激し得るが、このことは、抗腫瘍応答全体にとって重要であり得るにもかかわらず、ほとんど過小評価されてきた(Belardelliら、1996、Immunol.Today、17:369‐72)。IFNαは、骨髄細胞(Raefskyら、1985、J.Immunol.、135:2507‐12;Luftら、1998、J.Immunol.、161:1947‐53)、T細胞(Carreroら、2006、J.Exp.Med.、203:933‐40;Pillingら、1999、Eur.J.Immuol.,、29:1041‐50)およびB細胞(Leら、2001、Immunity、14:461‐70)への作用を介した、免疫応答に対する多面的な影響を有する。自然免疫系の重要なモジュレーターとして、IFNαは、樹状細胞の急速な分化および活性化を誘導し(Belardelliら、2004、Cancer Res.、64:6827‐30;Paquetteら、1998、J.Leukoc.biol.、64:358‐67;Santiniら、2000、J.Exp.Med.、191:1777‐88)、NK細胞の細胞傷害性、遊走、サイトカイン産生および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強する(Bironら、1999、Annu.Rev.Immunol.、17:189‐220;Brundaら、1984、Cancer Res.、44:597‐601)。
【0004】
癌治療法としてのIFNαの有望性は、主にその短い循環血中半減期および全身毒性により妨げられてきた。ペグ化形態のIFNα2では、循環時間の増加が見られ、それによりその生物学的有効性が増強される(HarrisおよびChess、2003、Nat.Rev.Drug Discov.、2:214‐21;Osbornら、2002、J.Pharmacol.Exp.Ther.、303:540‐8)。IFNαとモノクローナル抗体(MAb)との融合により、腎クリアランスの減少、溶解性および安定性の向上ならびに循環血中半減期の顕著な増加を含めた、ペグ化と同様の効果をもたらすことができる。これによる直接的な臨床上の利点は、低頻度および低用量のための要件であり、治療濃度の延長を可能にする。腫瘍関連抗原(TAA)に対するMAbを使用した、IFNαの腫瘍への標的化により、IFNαの全身濃度を制限すると同時に、腫瘍への付着および保持を有意に増進させ、それにより治療指数を増加させることができる。IFNαの腫瘍への集積度増加により、IFNαの直接的な抗増殖性、アポトーシス性および抗血管新生の活性を増強し、さらに抗腫瘍免疫応答を刺激しかつそれに焦点を当てることができる。実際、同系のマウスIFNα分泌トランスジェニック腫瘍を用いたマウスにおける研究では、IFNαの局所的集積により誘発された免疫応答の増強が実証された(Ferrantiniら、2007、Biochimie、89:884‐93)。
【0005】
CD20は、MAb‐IFNαを用いたB細胞リンパ腫治療のための興味ある候補TAAである。リツキシマブによる抗CD20免疫療法は、比較的毒性が低く、最も成功を収めたリンパ腫に対する治療法の1つである(McLaughlinら、1998、J.Clin.Oncol.、16:2825‐33)。リツキシマブは、一部の患者群において免疫原性を示す可能性があり、初回投与の注入時間がかなり長いため(Chesonら、2008、NEJM、359:613‐26)、より優れたCD20標的化の候補は、ヒト化MAbのベルツズマブ(veltuzumab)である(Steinら、2004、Clin.Cancer Res.、10:2868‐78)。
【0006】
現在臨床評価中のリツキシマブとIFNαとの併用療法においては、リツキシマブ単独の場合よりも効果の向上が見られた(Kimbyら、2008、Leuk.Lymphoma、49:102‐12;Sallesら、2008、Blood、112:4824‐31)。これらの研究では、この併用のいくつかの利点とともに、IFNαに関連した欠点も実証されている。週1回のリツキシマブ注入に加え、患者は通常、IFNαを3回/週で数ヶ月間投与され、IFNα療法に付随する一般的な副作用である、インフルエンザ様の症状に悩まされる。そしてこのことにより、耐容量が制限される。抗CD20MAb‐IFNαコンジュゲートであれば、単一の薬剤をより少ない頻度と用量で投与して、副作用を制限または除去することが可能であり、はるかに優れた効果をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インビボでの効果の改善、毒性の低下および優れた薬物動態特性を示す、改善された抗体‐サイトカインコンジュゲートが、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、ドック・アンド・ロック(DNL)法(Changら、2007、Clin.Cancer Res.、13:5586s‐91s)を用いて調製される、サイトカインと抗体とのコンジュゲートのための方法および組成物を開示する。ドック・アンド・ロック法により、インビボ適用に適した、安定で明確なコンジュゲートが生成される。好適な実施形態において、DNL複合体は、IFNα2bのようなサイトカインを4コピー含み、各サイトカインは、二量体化/ドッキングドメイン(DDD)部分に付加されている。DDD部分は自発的に二量体化し、各DDD二量体は、アンカードメイン(AD部分)と結合する。より好適な実施形態において、AD部分は、IgG抗体の各重鎖の定常領域C末端に付加され、四量体のサイトカイン‐IgG・DNL複合体を生じる。
【0009】
しかし、2009年3月3日に出願された米国特許第12/396,965号;2006年3月24日に出願された同第11/389,358号;2006年3月28日に出願された同第11/391,584号;2006年6月29日に出願された同第11/478,021号、2009年3月3日に出願された同第12/396,605号、2006年12月5日に出願された同第11/633,729号;および2007年10月26日に出願された同第11/925,408号(各特許の実施例の節は、参照により本明細書で援用される)に開示されるような、異なる構造および異なるサイトカイン/抗体(もしくは抗体フラグメント)比を有する他のタイプのDNL複合体が構築され、かつ本明細書で特許請求される方法および組成物の範囲内で使用され得ることを、当業者は理解するであろう。本明細書においては、便宜上、対象とするDNL構築物を、一般にサイトカイン‐MAb構築物と称する。しかし、「MAb」という名称は、抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を示す一般名称として使用されることを、当業者は理解する。
【0010】
任意の既知の抗体またはその抗原結合フラグメントを、サイトカイン‐MAb・DNL構築物に組み込み得ることを、当業者はさらに理解されよう。好適な実施形態において、当該複合体は癌治療に有用であり、抗体が腫瘍関連抗原(TAA)と結合する。様々な腫瘍関連抗原が当該分野において公知であり、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF‐1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a‐e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEAC AM‐6、B7、フィブロネクチンED‐B、H因子、FHL‐1、Flt‐3、葉酸受容体、GROB、HMGB‐1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様成長因子‐1(ILGF‐1)、IFN‐γ、IFN‐α、IFN‐β、IL‐2、IL‐4R、IL‐6R、IL‐13R、IL‐15R、IL‐17R、IL‐18R、IL‐6、IL‐8、IL‐12、IL‐15、IL‐17、IL‐18、IL‐25、IP‐10、MAGE、mCRP、MCP‐1、MIP‐1A、MIP‐1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、PAM4抗原、NCA‐95、NCA‐90、Ia、HM1.24、EGP‐1、EGP‐2、HLA‐DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、トムソン‐フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、TNF‐α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5および癌遺伝子産物が挙げられるが、これらに限定されない。異なる病態の抗体ベースの治療には、その他のタイプの標的抗原が有用であり、そのような別の任意の抗原を標的とする抗体を組み込んだサイトカイン‐MAb・DNL構築物が、本明細書で特許請求される方法および組成物において使用され得る。
【0011】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物に使用され得る抗癌抗体の例としては、hR1(抗IGF‐1R、2009年1月20日に出願された米国仮特許出願第61/145,896号)、hPAM4(anti‐MUC1、米国特許第7,282,567号)、hA20(抗CD20、米国特許第7,251,164号)、hA19(抗CD19、米国特許第7,109,304号)、hIMMU31(抗AFP、米国特許第7,300,655号)、hLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)、hLL2(抗CD22、米国特許第7,074,403号)、hMu‐9 (抗CSAp、米国特許第7,387,773号)、hL243(抗HLA‐DR、米国仮特許出願第11/368,296号)、hMN‐14(抗CEA、米国特許第6,676,924号)、hMN‐15(抗CEA、米国仮特許出願第10/672,278号)、hRS7(抗EGP‐1、米国特許第7,238,785号)およびhMN‐3(抗CEA、米国特許出願第10/672,278号)が挙げられるが、これらに限定されない。引用された各特許または各特許出願の実施例の節は、参照により本明細書で援用される。ここに列記したものは限定的なものではなく、他の任意の既知の抗TAA抗体が、サイトカイン‐MAb・DNL構築物に組み込まれ得ることを、当業者は理解されよう。
【0012】
キメラ抗体はマウス抗体ほど強いヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発しないため、キメラ抗体の使用が好ましい。HAMA反応誘発の可能性をさらに減少させるために、ヒト化抗体の使用がさらにより好ましい。以下で論じるように、マウスのフレームワークおよび定常領域配列と、対応するヒト抗体のフレームワークおよび定常領域配列との置換によるマウス抗体のヒト化技術は、当該分野で公知であり、多くのマウス抗癌抗体に応用されてきた。抗体のヒト化は、ヒトフレームワークの1つまたは複数のアミノ酸残基を、元のマウスフレームワーク領域配列由来の対応する残基と置換することも含み得る。以下でも論じるように、ヒト抗体の作製技術もまた公知であり、このような抗体は、本発明のサイトカイン‐MAb構築物に組み込まれ得る。
【0013】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物に組み込まれ得るサイトカインの例として、MIF(マクロファージ遊走阻止因子)、HMGB‐1(高移動度タンパク質1)、TNF‐α、IL‐1、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐11、IL‐12、IL‐13、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐19、IL‐23、IL‐24、CCL19、CCL21、IL‐8、MCP‐1、RANTES、MIP‐1A、MIP‐1B、ENA‐78、MCP‐1、IP‐10、Gro‐β、エオタキシン、インターフェロン‐α、‐β、‐λ、G‐CSF、GM‐CSF、SCF、PDGF、MSF、Flt‐3リガンド、エリスロポエチン、トロンボポエチン、CNTF、レプチン、オンコスタチンM、VEGF、EGF、FGF、PIGF、インスリン、hGH、カルシトニン、VIII因子、IGF、ソマトスタチン、組織プラスミノーゲン活性化因子およびLIFが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
ある実施形態は、少なくとも1つの治療剤または少なくとも1つの診断剤と結合した、治療または診断用のサイトカイン‐MAb・DNL構築物コンジュゲートに関し得る。同じまたは異なるタイプの治療剤を複数有する構築物も包含される。あるいは、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を、サイトカイン‐MAb構築物の前、同時または後に投与される少なくとも1つの治療剤との併用で投与してもよい。以下でより詳細に論じるように、放射性核種、免疫調節物質、抗血管新生剤、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、ホルモン、薬物、プロドラッグ、酵素、オリゴヌクレオチド、siRNA、アポトーシス促進剤、光活性治療剤、細胞傷害剤、化学療法剤、毒素、その他の抗体またはその抗原結合フラグメントを非限定的に含めた当該分野で既知の任意の治療剤を、サイトカイン‐MAb・DNL構築物と併用して、または当該構築物に付加して使用してもよい。
【0015】
サイトカイン‐MAb複合体は、癌、自己免疫疾患、過形成、敗血症、糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、喘息およびオスラー‐ウェーバー症候群を非限定的に含めた様々な疾患または病状の治療に有用である。
【0016】
特定の実施形態において、本明細書に開示する方法および組成物は、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、若年性糖尿病、ヘノッホ‐シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬または線維性肺胞炎のような自己免疫疾患を治療するのに有用であり得る。
【0017】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物で治療され得る癌のタイプの例として、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌、神経膠腫、黒色腫、肝臓癌、前立腺癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、膠芽腫、神経細胞芽腫、黒色腫、皮膚癌、肝臓癌、甲状腺髄様癌腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
さらに他の実施形態は、サイトカイン‐DDD融合タンパク質またはFab‐AD融合タンパク質のような融合タンパク質をコードするDNA配列、そのDNA配列を含有するベクターおよび宿主細胞ならびにサイトカイン‐MAb・DNL構築物を作製する方法に関する。
【0019】
特に好適な実施形態は、ヒト化抗CD20抗体(hA20)に付加された4つのIFNα2bグループを含むIFNα‐MAb・DNL構築物である、20‐2bに関する。20‐2b構築物は、インビトロ増殖、エキソビボでのリンパ腫細胞減少およびインビボ治療の研究により、元の抗体単独、IFNαサイトカイン単独または非標的化IFNα‐MAbよりも優れた抗リンパ腫剤であることが見出された。20‐2b構築物は、リンパ腫、白血病、骨髄腫および関連状態の治療に特に有用である。
【0020】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において、「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the」という用語は、文脈上明らかに単数のみを意味するものでない限り、単数または複数を指し得る。
【0021】
本明細書において、「約」という用語は、ある数値プラスまたはマイナス10パーセント(10%)を意味する。例えば「約100」であれば、90から110の間の任意の数値を指す。
【0022】
抗体は、完全長の(すなわち、天然に発生する、または通常の免疫グロブリン遺伝子フラグメントの組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)または抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部位を指す。
【0023】
抗体フラグメントとは、F(ab´)、F(ab)、Fab´、Fab、Fv、scFvなどのような、抗体の一部分のことである。構造を問わず、抗体フラグメントは、インタクトな抗体により認識されるものと同じ抗原と結合する。「抗体フラグメント」という用語は、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離フラグメントならびに軽および重可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により連結されている組換え一本鎖ポリペプチド分子も包含する。本明細書において「抗体フラグメント」という用語は、Fcフラグメントまたは単一アミノ酸残基のような、抗原結合活性をもたない抗体の部分は包含しない。
【0024】
抗体融合タンパク質という用語は、同一のまたは異なる特異性を有する、同一のまたは異なる一本鎖抗体または抗体フラグメントのセグメントが1つまたは複数結合した、組換えにより産生される抗原結合分子を指し得る。融合タンパク質の結合価、すなわち一価、二価、三価または多価は、その融合タンパク質が単一の抗原またはエピトープに対する結合腕または結合部位をいくつ有するかを示す。抗体融合タンパク質の多価性とは、1つの抗原と結合する際に、複数の相互作用を利用することができ、したがって抗原との結合の親和力を増大し得ることを意味する。特異性、すなわち単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性とは、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープと結合することができるかを示す。これらの定義を用いれば、天然の抗体、例えばIgGは、2つの結合アームを有するが、1種類のエプトープと結合するので、二価である。単一特異性で多価の融合タンパク質は、1種類のエプトープに対して1つ以上の結合部位を有するが、1種類のエプトープのみと結合する。融合タンパク質は、単一の抗体成分、異なる抗体成分の多価または多重特異性の組合せ、あるいは同一抗体成分の複数のコピーを含み得る。融合タンパク質は、抗体または抗体フラグメントならびに治療剤をさらに含み得る。このような融合タンパク質に適する治療剤の例として、免疫調節物質および毒素が挙げられる。1つの好適な毒素には、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組換えRNaseが含まれる。しかし、当該用語は限定的なものでなく、様々なタンパク質エフェクターまたはペプチドエフェクターが、融合タンパク質に組み込まれ得る。別の非限定的な例において、融合タンパク質は、以下で論じるように、DNL構築物を作製するためのADまたはDDD配列を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】サイトカイン‐DDD2(C)発現のための遺伝子構造(AおよびB)ならびにIgG‐AD2(D)DNLモジュールを表した模式図である。これらのモジュールが結合して、IgG(E)と融合した4つのサイトカインからなるDNL構造が形成される。
【図2】ペグ化または天然のIFNαと比較した、サイトカイン‐MAb・DNL構築物におけるインビトロでのIFNα活性を示す図である。比活性(IU/pmol)を実施例に記載通り測定した。既知濃度の各被検試料の活性は、rhIFNα2bの標準曲線から推定した。濃度を増加させた20‐2b(●)、734‐2b(■)、v‐mab(○)、v‐mab+734‐2b(□)、PEGASYS(登録商標)(▼)、PEG‐INTRON(登録商標)(▲)または1R‐2b(▽)の存在下で培養物を増殖させ、相対的生細胞密度をMTSで測定した。未治療の細胞から得られたシグナルの%を、モル濃度の対数に対してプロットした。用量反応曲線およびEC50値は、Prismソフトウェアを用いて算出した。エラーバーはSDを表す。図2(A)は細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイの図である。図2(B)はEMCウイルスおよびA549細胞によるウイルス防御アッセイの図である。図2(C)はDaudi細胞を用いたインビトロでのリンパ腫増殖アッセイの図である。図2(D)はJeko‐1細胞を用いたインビトロでのリンパ腫増殖アッセイの図である。
【図3】Swiss‐Websterマウスにおける薬物動態解析の結果を表した図である。マウスに20‐2b、α2b‐413、PEG‐INTRONまたはPEGASYSを投与し、血清試料のIFNα2b濃度を、ELISA法により96時間にわたり解析した。血中消失曲線を示す。血中半減期(T1/2)消失率および平均滞留時間(MRT)を、挿入した表にまとめる。
【図4】図4(A)は20‐2bのADCCエフェクター機能を表した図である。DaudiまたはRaji細胞を、新たに単離したPBMCの存在下で、5μg/mlの20‐2b、22‐2b、v‐mab、エピラツズマブ(e‐mab)またはh734と共に4時間インキュベートした後、細胞溶解の定量化を行った。図4(B)は20‐2bのCDCエフェクター機能を表した図である。Daudi細胞を、ヒト補体の存在下で、20‐2b(●)、734‐2b(■)またはv‐mab(○)の段階希釈によりインキュベートした。nM濃度の対数に対する%補体対照(補体のみで処置した細胞と比較した、試験試料中の生細胞数)をプロットした。エラーバーはSDを表す。
【図5】20‐2bによる、全血からのNHL細胞枯渇の増強を示す図である。新鮮なヘパリン化ヒト血液をDaudiまたはRamosと混合し、0.01、0.1または1nMの20‐2b(●)、v‐mab(○)、734‐2b(■)またはv‐mab+734‐2b(□)と共に2日間インキュベートした。これらの処置のリンパ腫および末梢血リンパ球に対する効果を、フローサイトメトリーを用いて評価した。エラーバーはSDを表す。
【図6】図6(A)は播種性バーキットリンパ腫(Daudi)異種移植モデルにおける20‐2bの治療効果を示す生存曲線を描いた図である。0日目に、CB.17SCID雌マウスにDaudi細胞を静注投与した。処置は、単回皮下用量で投与された20‐2b(●)、734‐2b(■)、v‐mab(○)、PEGASYS(▼)または生理食塩水(×)で構成された。処置日を矢印で示す。生存曲線は、Prismソフトウェアを用いて解析した。初期Daudiモデルにおいて、1日目に、0.7pmol(実線)または0.07pmol(破線)の1回量を、10匹のマウスからなる各グループに投与した。図6(B)は進行Daudiモデルにおける図6(A)と同様の実験を示す図である。7日目に、0.7pmol(実線)、7pmol(破線)または70pmol(灰色線)の1回量を、10匹のマウスからなる各グループに投与した。
【図7】図7(A)は播種性バーキットリンパ腫(RajiおよびNAMALWA)異種移植モデルにおける20‐2bの治療効果を示す生存曲線を表した図である。0日目に、CB.17SCID雌マウスにNHL細胞を静注投与した。処置は、単回皮下用量で投与された20‐2b(●)、734‐2b(■)、v‐mab(○)または生理食塩水(×)で構成された。処置日を矢印で示す。生存曲線はPrismソフトウェアを用いて解析した。進行Rajiモデルにおいて、5、7、9、12、14および16日目に、250pmolの用量を、10匹のマウスからなる各グループに投与した。図7(B)は初期NAMALWAモデルにおける図7(A)と同様の実験を示す図である。1、3、5、8、10および12日目に、250pmol用量の20‐2bもしくは734‐2bを、または1、5、9、13、17、21および25日目に、3.5nmol用量のv‐mabを、6匹のマウスからなる各グループに投与した。
【図8】EPO標準品、734‐EPOまたはEPO‐DDD2で72時間処置したTF1細胞を用いた、EPO活性に関する細胞ベースのアッセイの結果を示す図である。用量反応曲線およびEC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを用いて算出した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ドック・アンド・ロック(DNL)法
DNL法は、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットとAキナーゼアンカータンパク質(AKAPs)のアンカードメイン(AD)との間に生じる特異的なタンパク質/タンパク質相互作用を利用する(Baillieら、FEBS Letters、2005、579:3264;WongおよびScott、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2004、5:959)。PKAは、セカンドメッセンジャーcAMPとRサブユニットとの結合により誘発される、最も研究されているシグナル伝達経路の1つにおいて中心的役割を果たし、1968年にウサギ骨格筋から最初に単離された(Walshら、J.Biol.Chem.、1968、243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性型に保持されている2つの触媒サブユニットからなる(Taylor、J.Biol.Chem.、1989、264:8443)。PKAのアイソザイムには、2つのタイプのRサブユニット(RIおよびRII)が見出されており、各タイプにはαおよびβアイソフォームが存在する(Scott、Pharmacol.Ther.、1991、50:123)。Rサブユニットは、安定な二量体としてのみ単離されており、その二量体化ドメインは、最初の44のアミノ末端残基からなることが示されている(Newlonら、Nat.Struct.Biol.、1999、6:222)。cAMPとRサブユニットとの結合により、広範囲なセリン/スレオニンキナーゼ活性に向けて活性触媒サブユニットの解離が生じ、これらはPKAとAKAPとのドッキングを介したPKAの区画化により選択された基質へと向かう(cottら、J.Biol.Chem.、1990、265;21561)。
【0027】
1984年に、微小管結合タンパク質2である最初のAKAPが特徴付けられて以来(Lohmannら、Proc.Natl.Acad.Sci USA.、1984、81:6723)、細胞膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリアおよび小胞体を含めた様々な細胞内部位に局在する50以上のAKAPが、酵母からヒトに至る種において多様な構造で同定されている(WongおよびScott、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2004、5:959)。PKAに対するAKAPのADは、14〜18残基の両親媒性へリックスである(Carrら、J.Biol.Chem.、1991、266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAP間で非常に変化に富み、RII二量体に関しては、2〜90nMにわたる結合親和性が報告されている(Altoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、2003、100:4445)。興味深いことに、AKAPは、二量体Rサブユニットとのみ結合する。ヒトRIIαでは、ADは23アミノ末端残基により形成される疎水性表面と結合する(ColledgeおよびScott、Trends Cell Biol.、1999、6:216)。したがって、ヒトRIIαの二量体化ドメインおよびAKAP結合ドメインは共に、同じN末端44アミノ酸配列内に存在し(Newlonら、Nat.Struct.Biol.、1999、6:222;Newlonら、EMBO J.、2001、20:1651)、本明細書ではこれをDDDと称する、。
【0028】
リンカーモジュールとしてのヒトRIIα のDDDおよびAKAPのAD
本発明者らは、ヒトRIIαのDDDおよび特定のアミノ酸配列のADを、任意の2つの要素(以下AおよびBと呼ぶ)をドッキングさせて非共有結合複合体を形成するための優れたリンカーモジュールのペアとして用いるためのプラットフォーム技術を開発した。さらに当該技術では、DDDおよびADの双方の枢要な位置へシステイン残基を導入して、ジスルフィド結合の形成を促進することにより、形成された複合体が安定なテザー構造内へロックされ得る。「ドック・アンド・ロック」アプローチの概略的な方法論は以下の通りである。DDD配列と要素Aの前駆体とを結合させて要素Aを構築し、第1の構成要素(以下aと呼ぶ)を生成する。DDD配列は、自発的な二量体形成に作用するため、Aはaで構成されることになる。AD配列と要素Bの前駆体とを結合させて要素Bを構築し、第2の構成要素(以下bと呼ぶ)を生成する。a中に含まれる二量体DDDモチーフに、b中に含まれるAD配列と結合するためのドッキング部位が生じることで、aとbとの即時の結合が促進され、これによりabで構成される2成分の三量体複合体が形成される。この結合事象は、それに続く反応により、ジスルフィド架橋を介した共有結合により2つの要素が固定されて、不可逆性となる。この反応は、有効局所濃度の原理に基づいて非常に効率的に起こり、これは、最初の結合相互作用により、DDDおよびADの双方上に存在する反応性チオール基が近接して(Chimuraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、2001、98:8480)、部位特異的に結合するためであると考えられる。
【0029】
好適な実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL構築物は、IgG免疫グロブリン分子がそのC末端で2コピーのAD部分に付加される、ab構造の変異に基づく。各AD部分は、二量体の形態で2つのDDD部分と結合することができる。サイトカインを各DDD部分に付加させることにより、各IgG分子に4コピーのサイトカインがコンジュゲートする。より好適な実施形態において、DNL構築物中の4つの各サイトカインは同一のものである。
【0030】
2つの前駆体の官能基から離れたDDDとADとを付加させることにより、このような部位特異的結合が、2つの前駆体の元の活性を保持することも期待される。このアプローチは本来モジュール的であり、広範な物質を部位特異的かつ共有結合的に結合させることに応用可能である。DNL法は、2005年10月20日に出願された米国仮特許出願第60/728,292号;2005年12月16日に出願された同第60/751,196号;および2006年3月14日に出願された同第60/782,332;ならびに2006年3月24日に出願された米国特許出願第11/389,358号;2006年3月28日に出願された同第11/391,584号、2006年6月29日に出願された同第11/478,021号;2006年12月5日に出願された同第11/633,729号および2007年10月26日に出願された同第11/925,408に開示された。
【0031】
好適な実施形態において、以下の実施例で説明するように、エフェクター部分は、DDDユニットまたはADユニットと結合して融合タンパク質または融合ペプチドを形成することができるタンパク質またはペプチドである。核酸の合成、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅により、対象とする融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を生成することを含めた、融合タンパク質作製のための様々な方法が知られている。このような二本鎖核酸を、標準的な分子生物学的手法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、A laboratory manual、第2版、1989を参照のこと)により、融合タンパク質作製用の発現ベクターに挿入してもよい。このような好適な実施形態において、ADおよび/またはDDD部分を、エフェクタータンパク質またはエフェクターペプチドのN末端またはC末端に付加してもよい。しかし、ADまたはDDD部分のエフェクター部分への付加部位は、生理活性に関与するエフェクター部分の化学的性質およびエフェクター部分の部位(単数または複数)によって異なり得ることを、当業者は理解されよう。様々なエフェクター部分の部位特異的付加は、二価架橋試薬の使用および/またはその他の化学的コンジュゲーション技術のような、当該分野で公知の技術を用いて行われ得る。
【0032】
サイトカインおよびその他の免疫調節物質
ある好適な実施形態において、エフェクター部分は免疫調節物質である。免疫調節物質は、それが存在する場合、体の免疫系を変化させるか、抑制するか、または刺激する作用物質である。有用な免疫調節物質として、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびこれらの組合せが挙げられ得る。特に有用なものは、腫瘍壊死因子(TNF)のようなリンホトキシン、インターロイキン(IL)のような造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)のようなコロニー刺激因子、インターフェロン‐α、‐βまたは‐γのようなインターフェロンならびに「SI因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子である。
【0033】
より好適な実施形態において、エフェクター部分は、サイトカイン、例えばリンホカイン、モノカイン、増殖因子および伝統的ポリペプチドホルモンである。サイトカインとして、ヒト成長ホルモン、N‐メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンのような成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH)のような糖タンパク質ホルモン;胎盤増殖因子(PIGF)、肝増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子‐αおよび‐β;ミューラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF‐βのような神経成長因子;血小板増殖因子;TGF‐αおよびTGF‐βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子‐Iおよび‐II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン‐α、‐βおよび‐γ;マクロファージ‐CSF(M‐CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);IL‐I、IL‐1α、IL‐2、IL‐3、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐11、IL‐12; IL‐13、IL‐14、IL‐15、IL‐16、IL‐17、IL‐18、IL‐21、IL‐25のようなインターロイキン、LIF、kit‐リガンドまたはFLT‐3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子(TNF‐αのようなTNF)およびLTが挙げられる。
【0034】
サイトカインのようなタンパク質免疫調節物質またはペプチド免疫調節物質のアミノ酸配列は、当該分野で公知であり、そのような任意の既知の配列が、本発明の実施において使用され得る。サイトカインの配列に関する多くの公開情報源が当業者に既知である。例えば、NCBIデータベースには、エリスロポエチン(GenBank、NM000799)、IL‐1β(GenPept、AAH08678)、GM‐CSF(GenPept、AAA52578)、TNF‐α(GenPept、CAA26669)、インターフェロン‐α(GenPept、AAA52716.1)、インターフェロン‐α2b(GenPept、AAP20099.1)および実質上任意の上記ペプチド免疫調節物質またはタンパク質免疫調節物質のような、数多くのサイトカインおよび免疫調節物質に関するタンパク質およびコード核酸の配列が共に収められている。対象とする実質上任意のタンパク質エフェクターまたはペプチドエフェクター部分に対する適切なアミノ酸および/または核酸配列を同定することは、当業者にとって慣例となっていることである。
【0035】
抗体および抗体フラグメント
様々な実施形態において、抗体または抗体の抗原結合フラグメントを、多量体サイトカインに付加し得る。抗原結合抗体フラグメントは、F(ab´)、F(ab)、Fab´、Fab、Fv、scFvなどのように、当該分野で公知であり、任意のこのような既知のフラグメントを用い得る。本明細書において、抗原結合抗体フラグメントとは、インタクトまたは元の抗体により認識される抗原と同じ抗原と結合する、任意の抗体フラグメントを指す。対象とする実質上任意の抗体またはフラグメントのADおよび/またはDDD複合体の調製技術は、公知である(例えば、米国特許出願第11/633,729号)。
【0036】
治療剤とコンジュゲートされていない抗体またはそのフラグメント(「裸の」抗体またはそのフラグメントと呼ぶ)を使用し得る。代替的実施形態において、抗体またはフラグメントを、1つまたは複数の治療剤および/または診断剤とコンジュゲートさせてもよい。種々のこのような治療剤および診断剤が当該分野で公知であり、以下でより詳細に論じるように、任意のこのような既知の治療剤および診断剤を用い得る。
【0037】
実質上任意の標的抗原に対するモノクローナル抗体の調製技術は、当該分野で公知である。例えば、KohlerおよびMilstein、「Nature」、256:495(1975)ならびにColiganら編、「CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY」、第1巻、p.2.5.1〜2.6.7 (John Wiley & Sons 、1991)を参照のこと。簡潔に述べれば、モノクローナル抗体は以下のようにして得ることができる。抗原を含む組成物をマウスに注射し、脾臓を取り出してBリンパ球を採取する。このBリンパ球をミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマをクローニングする。抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択して、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、このハイブリドーマ培養液から抗体を単離する。
【0038】
MAbは、すでに確立された様々な技術によりハイブリドーマ培養液から単離および精製することができる。このような単離技術として、プロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coliganら、p.2.7.1〜2.7.12およびp.2.9.1〜2.9.3を参照のこと。また、Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、第10巻、p.79‐104(The Humana Press, Inc.、1992)も参照のこと。
【0039】
免疫原に対する初回抗体産生の後、この抗体の配列を決定し、次いで組換え技術によりこれを調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、当業者に公知である。ヒト化、キメラ化またはヒト抗体由来の抗体成分の使用により、マウス定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題が未然に防がれる。
【0040】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含めたマウス抗体の可変領域と置換された、組換えタンパク質である。キメラ抗体は、被検体に投与された場合、免疫原性の減少および安定性の増加を示す。マウス免疫グロブリン可変ドメインの一般的なクローニング技術は、例えば、Orlandiら、「Proc.Nat'l Acad.Sci.USA」、86:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体の構築技術は当業者に公知である。一例として、Leungらは、抗CD22モノクローナル抗体であるマウスLL2のVκおよびVドメインをコードするDNA配列を、それぞれヒトκおよびIgG定常領域ドメインと組み合わせることにより、LL2キメラを作製した(Hybridoma、1994、13:469)。
【0041】
ヒト化抗体
ヒト化MAbの作製技術は当該分野で公知である(例えば、Jonesら、Nature、321:522(1986)、Riechmannら、Nature、332:323(1988)、Verhoeyenら、Science、239:1534(1988)、Carterら、Proc.Nat'l Acad.Sci.USA、89:4285(1992)、Sandhu、Crit.Rev.Biotech.、12:437(1992)およびSingerら、J.Immun.、150:2844(1993)を参照のこと)。マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインへ移転することにより、キメラまたはマウスモノクローナル抗体をヒト化し得る。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)もまた、ヒトFR配列と置換される。単にマウスCDRをヒトFRに移転するだけでは、抗体親和性の低下または喪失さえも生じる場合が多いため、マウス抗体本来の親和性を回復するために、さらなる改変が必要となり得る。このことは、FR領域中の1つまたは複数のヒト残基を、それらのマウスの対応部分と置換して、エピトープに対する十分な結合親和性を有する抗体を得ることにより達成され得る。例えば、Tempestら、「Biotechnology」、9:266(1991)およびVerhoeyenら、「Science」、239:1534(1988)を参照のこと。一般に、マウスの対応部分とは異なりかつ1つまたは複数のCDRアミノ酸残基と近接または接触しているヒトFRアミノ酸残基が置換の候補になるであろう。
【0042】
ヒト抗体
コンビナトリアルアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座を移入したトランスジェニック動物を用いる完全ヒト抗体の作製方法は、当該分野で公知である(例えば、Manciniら、2004、New Microbiol.、27:315‐28;ConradおよびScheller、2005、Comb.Chem.High Throughput Screen.、8:117‐26;BrekkeおよびLoset、2003、Curr.Opin.Phamacol.、3:544‐50)。完全ヒト抗体は、遺伝子または染色体トランスフェクション法ならびにファージディスプレイ技術により構築することが可能であり、これらは全て当該分野で公知である。例えば、McCaffertyら、「Nature」、348:552‐553(1990)を参照のこと。このような完全ヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体に比べさらに少ない副作用を示ことおよびインビボにおいて実質的に内在性のヒト抗体として機能することが期待される。ある実施形態において、このような技術により作製されるヒト抗体が、本明細書で特許請求される方法および手順において使用され得る。
【0043】
別の一方法において、ファージディスプレイ技術を用いてヒト抗体を生成し得る(例えば、Dantas‐Barbosaら、2005、Genet.Mol.Res.、4:126‐40)。ヒト抗体は、正常なヒトまたは癌のような特定の病態を示すヒトから生成し得る(Dantas‐Barbosaら、2005)。罹患個体からヒト抗体を構築する利点は、循環抗体レパートリーが、疾患関連抗原に対する抗体へと偏り得ることである。
【0044】
この方法論の非限定的な一例において、Dantas‐Barbosaら(2005)は、骨肉腫患者由来のヒトFab抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリーを構築した。概略的には、循環血リンパ球から全RNAを得た(同上)。組換えFabを、μ、γおよびκ鎖抗体レパートリーからクローニングして、ファージディスプレイライブラリーに挿入した(同上)。重鎖および軽鎖免疫グロブリン配列に対して特異的なプライマーを用い、RNAをcDNAに変換して、FabのcDNAライブラリー作製に使用した(Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581‐97)。ライブラリー構築は、Andris‐Widhopfらに従い行った(2000、Phage Display Laboratory Manual、 Barbasら編、第1版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、pp.9.1‐9.22に掲載)。最終的なFabフラグメントを制限酵素で消化して、バクテリオファージゲノムへ挿入し、ファージディスプレイライブラリーを作製した。このようなライブラリーは、当該分野で公知の標準的なファージディスプレイ法によりスクリーニングし得る(例えば、PasqualiniおよびRuoslahti、1996、Nature、380:364‐366;Pasqualini、1999、The Quart.J.Nucl.Med.、43:159‐162を参照のこと)。
【0045】
ファージディスプレイは様々な形式で行うことができ、総説としては、例えば、JohnsonおよびChiswell、「Current Opinion in Structural Biology」、3:5564‐571(1993)を参照のこと。ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞により生成してもよい。米国特許第5,567,610号および同第5,229,275(その内容全体が参照により本明細書で援用される)を参照のこと。これらの技術は、例示的なものであり、ヒト抗体および抗体フラグメントの作製およびスクリーニングの任意の既知の方法を用い得ることを、当業者は理解されよう。
【0046】
別の方法において、標準的な免疫化プロトコールを用いて、実質上任意の免疫原性標的に対する抗体を生成するために、ヒト抗体を産生するよう遺伝子操作されたトランスジェニック動物を使用し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、Greenら(1994、Nature Genet.、7:13)、Lonbergら(1994、Nature、368:856)およびTaylorら(1994、Int.Immun.、6:579)により開示されている。このような系の非限定的な一例は、Abgenix社(Fremont、CA)のXenoMouse(登録商標)(例えば、Greenら、1999、J.Immunol.Methods、231:11‐23)である。XenoMouseおよび類似の動物では、マウス抗体遺伝子が不活性化されて、機能的なヒト抗体遺伝子と置換されているが、残りのマウス免疫系は元の状態に保たれている。
【0047】
XenoMouseは、可変領域の大部分を含むヒトIgHおよびIgκ遺伝子座の一部をアクセサリー遺伝子および調節配列と共に含有する、生殖系列構成のYAC(酵母人工染色体)で形質転換されたものである。ヒト可変領域レパートリーを用いて抗体産生B細胞を作製してもよく、このB細胞を既知の技術で処理してハイブリドーマにしてもよい。標的抗原で免疫化されたXenoMouseは、通常の免疫応答によりヒト抗体を産生し、この抗体を上述の標準的な技術により収集および/または製造してもよい。様々な系統のXenoMouseが利用可能であり、それぞれの系統は異なるクラスの抗体を産生することができる。遺伝子導入により産生されたヒト抗体は、通常のヒト抗体の薬物動態特性を保持しつつ治療能力を有することが示されている(Green et al.,1999)。本明細書で特許請求される組成物および方法は、XenoMouse系の使用に限定されるものではなく、ヒト抗体を産生するよう遺伝子操作された任意のトランスジェニック動物を使用し得ることを、当業者は理解されよう。
【0048】
抗体フラグメント
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントを、既知の技術により生成することができる。抗体フラグメントとは、F(ab´)、Fab´、F(ab)、Fab、Fv、sFvなどのような、抗体の抗原結合部分のことである。F(ab´)フラグメントは、抗体分子のペプシン消化により作製することができ、Fab´フラグメントは、F(ab´)フラグメントのジスルフィド架橋の還元により生成することができる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab´フラグメントの同定を迅速かつ簡便に行えるように、Fab´発現ライブラリーを構築することができる(Huseら、1989、Science、246:1274‐1281)。F(ab)フラグメントは、抗体のパパイン消化により生成してもよく、Fabフラグメントは、ジスルフィドの還元により得てもよい。
【0049】
一本鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含む。このVLドメインとVHドメインが会合されて標的結合部位を形成する。これら2つのドメインはさらに、ペプチドリンカー(L)により共有結合する。scFv分子の作製および適切なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.RaagおよびM.Whitlow、「Single Chain Fvs」FASEB、第9巻:73‐80(1995)ならびにR.E.BirdおよびB.W.Walker、「Single Chain Antibody Variable Regions」、TIBTECH、第9巻:132‐137(1991)に記載されている。
【0050】
単一ドメイン抗体(DAB)の作製技術もまた当該分野で公知であり、例えば、Cossinsら(2006、Prot.Express.Purif.、 51:253‐259)により開示されており、参照により本明細書で援用される。
【0051】
抗体フラグメントを、完全長抗体のタンパク質分解性加水分解により、あるいはフラグメントをコードするDNAを大腸菌(E.coli)または別の宿主内で発現させることにより調製することができる。抗体フラグメントは、従来の方法で完全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得ることができる。これらの方法は、例えば、Goldenberg(米国特許第4,036,945号および同第4,331 ,647号ならびにこれらに含まれる参考文献)により記載されている。また、Nisonoffら、「Arch.Biochem.Biophys.」、89:230(1960);Porter、「Biochem.J.」、73:119(1959)、Edelmanら、「METHODS IN ENZYMOLOGY」第1巻、p.422 (Academic Press 1967)ならびにColigan、同書、p.2.8.1‐2.8.10および2.10.‐2.10.4.も参照のこと。
【0052】
既知の抗体
使用する抗体は、広範な種々の既知の提供元から購入し得る。例えば、種々の抗体を分泌するハイブリドーマ系は、American Type Culture Collection (ATCC、Manassas、VA)から入手可能である。腫瘍関連抗原を非限定的に含む様々な疾患標的に対する数多くの抗体が、ATCCに保管されおよび/または可変領域配列が公開されており、本明細書で特許請求される方法および組成物での使用のために入手可能である。例えば、米国特許第7,312,318号;同第7,282,567号;同第7,151,164号;同第7,074,403号;同第7,060,802号;同第7,056,509号;同第7,049,060号;同第7,045,132号;同第7,041,803号;同第7,041,802号;同第7,041,293号;同第7,038,018号;同第7,037,498号;同第7,012,133号;同第7,001,598号;同第6,998,468号;同第6,994,976号;同第6,994,852号;同第6,989,241号;同第6,974,863号;同第6,965,018号;同第6,964,854号;同第6,962,981号;同第6,962,813号;同第6,956,107号;同第6,951,924号;同第6,949,244号;同第6,946,129号;同第6,943,020号;同第6,939,547号;同第6,921,645号;同第6,921,645号;同第6,921,533号;同第6,919,433号;同第6,919,078号;同第6,916,475号;同第6,905,681号;同第6,899,879号;同第6,893,625号;同第6,887,468号;同第6,887,466号;同第6,884,594号;同第6,881,405号;同第6,878,812号;同第6,875,580号;同第6,872,568号;同第6,867,006号;同第6,864,062号;同第6,861,511号;同第6,861,227号;同第6,861,226号;同第6,838,282号;同第6,835,549号;同第6,835,370号;同第6,824,780号;同第6,824,778号;同第6,812,206号;同第6,793,924号;同第6,783,758号;同第6,770,450号;同第6,767,711号;同第6,764,688号;同第6,764,681号;同第6,764,679号;同第6,743,898号;同第6,733,981号;同第6,730,307号;同第6,720,15号;同第6,716,966号;同第6,709,653号;同第6,693,176号;同第6,692,908号;同第6,689,607号;同第6,689,362号;同第6,689,355号;同第6,682,737号;同第6,682,736号;同第6,682,734号;同第6,673,344号;同第6,653,104号;同第6,652,852号;同第6,635,482号;同第6,630,144号;同第6,610,833号;同第6,610,294号;同第6,605,441 号;同第6,605,279号;同第6,596,852号;同第6,592,868号;同第6,576,745号;同第6,572;856号;同第6,566,076号;同第6,562,618号;同第6,545,130号;同第6,544,749号;同第6,534,058号;同第6,528,625号;同第6,528,269号;同第6,521,227号;同第6,518,404号;同第6,511,665号;同第6,491,915号;同第6,488,930号;同第6,482,598号;同第6,482,408号;同第6,479,247号;同第6,468,531号;同第6,468,529号;同第6,465,173号;同第6,461,823号;同第6,458,356号;同第6,455,044号;同第6,455,040, 6,451,310号;同第6,444,206' 6,441,143号;同第6,432,404号;同第6,432,402号;同第6,419,928号;同第6,413,726号;同第6,406,694号;同第6,403,770号;同第6,403,091号;同第6,395,276号;同第6,395,274号;同第6,387,350号;同第6,383,759号;同第6,383,484号;同第6,376,654号;同第6,372,215号;同第6,359,126号;同第6,355,481号;同第6,355,444号;同第6,355,245号;同第6,355,244号;同第6,346,246号;同第6,344,198号;同第6,340,571号;同第6,340,459号;同第6,331,175号;同第6,306,393号;同第6,254,868号;同第6,187,287号;同第6,183,744号;同第6,129,914号;同第6,120,767号;同第6,096,289号;同第6,077,499号;同第5,922,302号;同第5,874,540号;同第5,814,440号;同第5,798,229号;同第5,789,554号;同第5,776,456号;同第5,736,119号;同第5,716,595号;同第5,677,136号;同第5,587,459号;同第5,443,953号;同第5,525,338を参照のこと。これらは例示的なもの過ぎず、広範な種々の他の抗体およびそのハイブリドーマが当該分野で公知である。ほぼどの疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマも、対象とする特定の疾患関連標的に対する抗体に関してATCC、NCBIおよび/またはUSPTOのデータベースを検索するだけで入手され得る。クローン抗体の抗原結合ドメインを、当該分野で公知の標準的な技術を用いて、増幅し、切り出し、発現ベクター内にライゲートし、適合した宿主細胞内にトランスフェクトして、タンパク質産生に使用し得る。
【0053】
アミノ酸置換
ある実施形態において、本明細書に開示される方法および組成物は、1つまたは複数の置換されたアミノ酸残基を有するタンパク質またはペプチドの作製および使用を包含し得る。上述のように、実質上任意の標的抗原に対するモノクローナル抗体の作製方法は、当該分野で公知である。通常、これらの方法により、標的抗原に対するマウス抗体が作製される。当該分野で公知のように、マウスモノクローナル抗体の抗原結合特異性は、主として超可変性の相補性決定領域(CDR)配列により決定される。マウス抗体は一般に、抗体の軽鎖上に3つおよび重鎖上に3つ、つまり6つのCDR配列を含む。上で詳述したように、マウスCDR配列を、例えばヒト抗体のフレームワークおよび定常領域配列に挿入する、CDR移植のような技術により、あるいはマウス可変領域配列全体をヒト抗体の定常領域配列に付加することにより、キメラ、ヒト化またはヒトバージョンのマウス抗体を構築し得る。別の実施形態において、抗体の可変領域配列を、例えば、抗体の軽および重鎖可変領域全体をコードするオリゴヌクレオチドの化学的合成およびアセンブリにより構築し得る。
【0054】
様々な実施形態において、天然、キメラ、ヒト化またはヒト抗体の構造的、物理的および/または治療的特性を、1つまたは複数のアミノ酸残基を置換することにより最適化し得る。例えば、ヒト化抗体の機能的特性は、限定された数のヒトフレームワーク領域(FR)アミノ酸を、元のマウス抗体の対応するFRアミノ酸と置換することにより改善され得る。このことは、フレームワーク領域のアミノ酸残基がCDR残基と非常に接近している場合に特に当てはまる。
【0055】
別の場合には、標的抗原に対する結合親和性、標的抗原からの抗体解離速度またはオフ速度あるいは抗体によるCDC(補体依存性細胞傷害)またはADCC(抗体依存性細胞傷害)の誘導効率さえのような抗体の治療的特性が、限定された数のアミノ酸置換により最適化され得る。
【0056】
別の実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を作製するために使用されるDDDおよび/またはAD配列は、例えば、DDD‐AD結合親和性を増加させるために最適化され得る。DDDまたはAD配列において可能な配列バリエーションを以下の実施例で論じる。
【0057】
一般に、アミノ酸置換は通常、あるアミノ酸を、特性が比較的類似した別のアミノ酸と置き換えること(すなわち、保存的アミノ酸置換)を包含することを、当業者は理解されよう。種々のアミノ酸の特性およびアミノ酸置換のタンパク質の構造および機能に及ぼす影響は、当該技術分野における広範な研究および知識の主題である。
【0058】
例えば、アミノ酸のハイドロパシー指標が考慮され得る(KyteおよびDoolittle、1982、J.Mol.Biol.、157:105‐132)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性が、生じるタンパク質の二次構造に寄与し、それによりタンパク質の他の分子との相互作用が決定される。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づきハイドロパシー指標が以下のように割り当てられている(KyteおよびDoolittle、1982):イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。保存的置換を行う場合、ハイドロパシー指標が±2以内のアミノ酸の使用が好ましく、より好ましくは±1以内のアミノ酸、さらにより好ましくは±0.5のアミノ酸の使用である。
【0059】
アミノ酸置換は、アミノ酸残基の親水性も考慮し得る(例えば、米国特許第4,554,101号)。アミノ酸残基には以下のように親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0);グルタミン酸(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン (0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5 ±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。親水性が類似した他のアミノ酸との置換が好ましい。
【0060】
その他の考慮すべき事柄として、アミノ酸側鎖の大きさが挙げられる。例えば、グリシンまたはセリンのような小型の側鎖を有するアミノ酸を、例えば、トリプトファンまたはチロシンのような大型の側鎖を有するアミノ酸と置換するのは、一般に好ましくないであろう。タンパク質の二次構造に及ぼす様々なアミノ酸残基の影響も1つの考慮事項である。実証研究により、様々なアミノ酸残基が、α‐へリックス、β‐シートまたはリバースターンというタンパク質ドメインの二次構造の採用傾向に及ぼす影響が解明されており、当該分野で公知である(例えば、ChouおよびFasman、1974、Biochemistry、13:222‐245;1978、Ann.Rev.Biochem.、47:251‐276;1979、Biophys.J.、26:367‐384を参照のこと)。
【0061】
このような考慮事項および広範な実証研究に基づいて、保存的アミノ酸置換表が作成されており、当該分野で公知である。例えば:アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリン、ロイシンとイソロイシン。あるいは:Ala(A)leu、ile、val;Arg(R)gln、asn、lys;Asn(N)his、asp、lys、arg、gln;Asp(D)asn、glu;Cys(C)ala、ser;Gln(Q)glu、asn;Glu(E)gln、asp;Gly(G)ala;His(H)asn、gln、lys、arg;He(I)val、met、ala、phe、leu;Leu(L)val、met、ala、phe、ile;Lys(K)gln、asn、arg;Met(M)phe、ile、leu;Phe(F)leu、val、ile、ala、tyr;Pro(P)ala;Ser(S)、thr;Thr(T)ser;Trp(W)phe、tyr;Tyr(Y)trp、phe、thr、ser;Val(V)ile、leu、met、phe、ala。
【0062】
その他のアミノ酸置換に関する考慮事項として、残基がタンパク質の内側にあるか否か、あるいは溶媒に曝露されているか否かがある。内側の残基に関しては、保存的置換として:AspとAsn;SerとThr;SerとAla;ThrとAla;AlaとGly;HeとVal;ValとLeu;LeuとIle;LeuとMet;PheとTyr;TyrとTrpが挙げられるであろう(例えば、「rockefeller.edu」にあるウェブサイト「PROWL」を参照のこと)。溶媒に曝露されている側鎖に関しては、保存的置換として: AspとAsn;AspとGlu;GluとGln;GluとAla;GlyとAsn;AlaとPro;AlaとGly;AlaとSer;AlaとLys;SerとThr;LysとArg;ValとLeu;LeuとIle;HeとVal;PheとTyrが挙げられるであろう(同上)。アミノ酸置換の際に役立つように、PAM250スコアリングマトリックス、Dayhoffマトリックス、Granthamマトリックス、McLachlanマトリックス、Doolittleマトリックス、Henikoffマトリックス、Miyataマトリックス、Fitchマトリックス、Jonesマトリックス、Raoマトリックス、LevinマトリックスおよびRislerマトリックスのような様々なマトリックスが作成されている(同上)。
【0063】
アミノ酸置換を決定する際に、正荷電残基(例えば、His、Arg、Lys)と負荷電残基(例えば、Asp、Glu)との間のイオン結合(塩橋)または隣接するシステイン残基間のジスルフィド結合の形成のような、分子間または分子内結合の存在も考慮され得る。
【0064】
コードされたタンパク質配列において任意のアミノ酸を他の任意のアミノ酸と置換する方法は、公知でありかつ当業者にとってはルーティン化された実験方法であり、例えば、部位特異的突然変異誘発技術による方法、またはアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドを合成およびアセンブリして、発現ベクター構築物内にスプライスすることによる方法がある。
【0065】
治療剤
別の実施形態において、細胞傷害剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素またはその他の薬剤を、本明細書に記載の多量体サイトカインに対する補完療法として使用し得る。有用な薬物は、抗有糸分裂剤、抗キナーゼ剤、アルキル化剤、抗代謝剤、抗生剤、アルカロイド、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤およびこれらの組合せからなる群より選択される薬剤特性を有し得る。
【0066】
有用な薬物の例として、5‐フルオロウラシル、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオシタチン‐1、ブスルファン、カリチアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10‐ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox‐2阻害剤、イリノテカン(CPT‐11)、SN‐38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2‐ピロリノドキソルビシン(2P‐DOX)、シアノ‐モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’‐O‐ジオレオイル‐FudR(FUdR‐dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル‐タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L‐アスパラギナーゼ、レナリドマイド、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6‐メルカプトプリン、メソトレキセート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI‐341、ラロキシフェン、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(DTICの水性形態)、トランスプラチナ、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンカアルカロイドを挙げ得る。
【0067】
有用な毒素として、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)(例えば、オンコナーゼ、DNaseI)、ブドウ球菌エンテロトキシン‐A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシンおよびシュードモナスエンドトキシンを挙げ得る。
【0068】
有用なケモカインとして、RANTES、MCAF、MIP1‐α、MIP1‐βおよびIP‐10を挙げ得る。
【0069】
ある実施形態において、アンジオスタチン、バキュロスタチン、カンスタチン、マスピン、抗VEGF抗体、抗PIGFペプチドおよび抗PIGF抗体、抗血管増殖因子抗体、抗Flk‐1抗体、抗Fit‐1抗体および抗Fit‐1抗体ペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン‐12、IP‐10、 Gro‐β、トロンボスポンジン、2‐メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CMlOl、マリマスタット、ポリ硫酸ペントサン、アンジオポエチン‐2、インターフェロン‐α、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチン断片、リノマイド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP‐470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンジオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM‐1470、血小板因子4またはミノサイクリンのような抗血管新生剤が有用であり得る。
【0070】
その他の有用な治療剤には、オリゴヌクレオチド、特に、好ましくは癌遺伝子および癌遺伝子産物に対する、bcl‐2またはp53のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれ得る。好ましい形態の治療用オリゴヌクレオチドはsiRNAである。
【0071】
診断剤
診断剤は、好ましくは、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤および光活性剤からなる群より選択される。このような診断剤は公知であり、任意のこのような既知の診断剤を使用し得る。診断剤の非限定的な例として、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154‐158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Srあるいはその他のガンマ、ベータまたは陽電子放射体を挙げ得る。有用な常磁性イオンとして、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)またはエルビウム(III)が挙げられ得る。金属造影剤として、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)またはビスマス(III)を挙げ得る。超音波造影剤には、ガス封入リポソームのようなリポソームが包含され得る。放射線不透過性の診断剤は、バリウム化合物、ガリウム化合物およびタリウム化合物のような化合物から選択され得る。広範な種々の蛍光標識が当該分野で公知であり、フルオレセインイソチアシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o‐フタルデヒドおよびフルオレサミンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な化学発光標識として、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩またはシュウ酸エステルを挙げ得るが、これらに限定されない。
【0072】
イムノコンジュゲート
ある実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL構築物の抗体成分を、1つまたは複数の治療剤または診断剤とコンジュゲートし得る。複数の治療剤は同一である必要はなく、例えば、薬物と放射性同位元素のように、異なっていてもよい。例えば、131Iを抗体または融合タンパク質のチロシン中に組み込み、薬物をリジン残基のイプシロンアミノ基に付加してもよい。治療剤および診断剤を、例えば、還元SH基および/または炭化水素側鎖に付加してもよい。治療剤または診断剤と抗体または融合タンパク質との共有結合的または非共有結合的コンジュゲートを作製するための多くの方法が当該分野で公知であり、任意のこのような既知の方法を用いてもよい。
【0073】
治療剤または診断剤を、ジスルフィド結合形成を介して、還元抗体成分のヒンジ領域に付加してもよい。あるいは、このような薬剤を、N‐スクシニル3‐(2‐ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて付加してもよい(Yuら、Int.J.Cancer、56:244(1994))。このようなコンジュゲーションのための一般的技術は、当該分野で公知である。例えば、Wong、「CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS‐LINKING」(CRC Press、 1991);「MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS」、Birchら編、(Wiley‐Liss、Inc.、1995)に掲載の、Upeslacisら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、p.187‐230;「MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION」、Ritterら編、(Cambridge University Press、1995)に掲載の、Price、「Production and Characterization of Synthetic Peptide‐Derived Antibodies」 、p.60‐84 を参照のこと。あるいは、治療剤または診断剤を、抗体のFc領域中の炭水化物部分を介して、コンジュゲートしてもよい。チオール基と結合した同一薬剤の装薬量を増大させるために炭水化物基を用いてもよく、あるいは異なる治療剤または診断剤を結合させるために炭水化物部分を用いてもよい。
【0074】
ペプチドを、抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にコンジュゲートするための方法は、当業者に公知である。例えば、Shihら、Int.J.Cancer、41:832(1988);Shihら、Int.J.Cancer、46:1101(1990);Shihら、米国特許第5,057,313号(その内容全体が参照により本明細書で援用される)を参照のこと。一般的な方法として、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、遊離アミン官能基を少なくとも1つ有する担体ポリマーと反応させることが挙げられる。この反応により、まずシッフ塩基(イミン)結合が形成され、これを第2級アミンに還元することで安定化させて、最終的なコンジュゲートを形成する。
【0075】
イムノコンジュゲートの抗体成分として用いられる抗体が、抗体フラグメントである場合、Fc領域が欠如し得る。しかし、炭水化物部分を完全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に導入することは可能である。例えば、Leungら、J.Immunol.、154:5919(1995);Hansenら、米国特許第5,443,953号(1995)、Leungら、米国特許第6,254,868号(その内容全体が参照により本明細書で援用される)を参照のこと。改変された炭水化物部分を用いて、治療剤または診断剤を付加する。
【0076】
いくつかの実施形態において、キレート剤を抗体、抗体フラグメントまたは融合タンパク質に付加して、放射性核種のような治療剤または診断剤をキレート化するために使用し得る。キレート剤の例として、DTPA(Mx‐DTPAなど)、DOTA、TETA、NETAまたはNOTAが挙げられるが、これらに限定されない。コンジュゲーション法ならびにキレート剤を使用して金属またはその他のリガンドをタンパク質に付加する方法は、当該分野で公知である(例えば、その内容全体が参照により本明細書で援用される、米国特許出願第12/112,289号を参照のこと)。
【0077】
ある実施形態において、放射性金属または常磁性イオンを、イオンを結合させるための多様なキレート基を付加し得る長い尾部を有する試薬と反応させて、タンパク質またはペプチドに付加し得る。このような尾部は、ポリリジン、多糖または、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス‐チオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的に有用であると知られている同様な基のようなキレート基が結合可能なペンダント基を有する他の誘導体化されたまたは誘導体化可能な鎖のような、ポリマーであってよい。
【0078】
キレートを、例えば、米国特許第4,824,659号(その内容全体が参照により本明細書で援用される)に開示されているように、抗体またはペプチドに直接結合させ得る。特に有用な金属‐キレートの組合せとして、1251、131I、123I、1241、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、150、76Brのような一般的エネルギー範囲が60〜4000keVの診断用アイソトープとともに放射性イメージングに用いられる、2‐ベンジル‐DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレートが、マンガン、鉄およびガドリニウムのような非放射性金属と錯体化した場合は、MRIに有用である。NOTA、DOTAおよびTETAのような大環状キレートは、様々な金属および放射性金属とともに、最も具体的には、それぞれガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種とともに用いられる。このような金属キレート錯体は、対象とする金属に環のサイズを合わせることにより、非常に安定させることができる。RAITに対する223Raのような安定に結合する核種を対象とする、大環状ポリエーテルのような他の環型キレートが包含される。
【0079】
ごく最近では、PETスキャン技術で使用される18F標識の方法、例えば、F‐18とアルミニウムのような金属または他の原子との反応による方法が開示されている。18F‐Alコンジュゲートは、抗体に直接付加する、またはプレターゲティング法において標的となり得る構築物を標識するために使用される、DOTA、NOTAまたはNETAのようなキレート基と錯体化され得る。このようなF‐18標識技術は、2008年4月30日に出願された米国特許出願第12/112,289号(その内容全体が参照により本明細書で援用される)に開示されている。
【0080】
治療的処置の方法
様々な実施形態が、哺乳類、例えばヒトや、イヌおよびネコなどの飼い馴らされたまたは伴侶用のペットのような被検体における処置方法に関するものであり、治療有効量のサイトカイン‐MAb・DNL構築物を被検体に投与することを含む。好適な実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL構築物は、以下の実施例でさらに詳細に記載されるような、20‐2b構築物である。
【0081】
標的細胞表面上の別の抗原と結合または反応する治療有効量の別の抗体を、同時にまたは逐次的に投与することにより、サイトカイン‐MAb・DNL構築物の投与を補完することができる。好適な追加のMAbは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、IGF‐1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD95、CD126、CD133、CD138、CD154、CEACAM5、CEACAM6、B7、AFP、PSMA、EGP‐1、EGP‐2、炭酸脱水酵素IX、PAM4抗原、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、Ia、MIF、HMl.24、HLA‐DR、テネイシン、Flt‐3、VEGFR、P1GF、ILGF、IL‐6、IL‐25、テネイシン、TRAIL‐R1、TRAIL‐R2、補体因子C5、癌遺伝子産物またはこれらの組み合わせと反応するMAbからなる群より選択される、ヒト化、キメラまたはヒトMAbを少なくとも1つ含む。抗CD19、抗CD20および抗CD22抗体のような種々の有用な抗体が当業者に既知である。例えば、Ghetieら、Cancer Res.、48:2610(1988);Hekmanら、Cancer Immunol.Immunother.、32:364(1991);Longo、Curr.Opin.Oncol.、5:353(1996)、米国特許第5,798,554号;同第6,187,287号;同第6,306,393号;同第6,676,924号;同第7,109,304;同第7,151,164号;同第7,230,084号;同第7,230,085号;同第7,238,785号;同第7,238,786号;同第7,282,567号;同第7,300,655号;同第7,312,318号;ならびに米国特許出願公開第2008/0131363号;同第2008/0089838号;同第2007/0172920号;同第2006/0193865号;同第2006/0210475号;同第2008/0138333号;および同第2008/0146784号(それぞれが参照により本明細書で援用される)を参照のこと。
【0082】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物療法は、少なくとも1つの治療剤の同時または逐次的投与によりさらに補完することができる。例えば、「CVB」(1.5g/mシクロホスファミド、200〜400mg/mエトポシドおよび150〜200mg/mカルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫の治療に用いられるレジメンである(Pattiら、Eur.J.Haematol.、57:18(1993))。その他の適切な併用化学療法レジメンが当業者に公知である。例えば、「CANCER MEDICINE」、第2巻、第3版、Hollandら編(Lea & Febiger、1993)に掲載のFreedmanら、「Non‐Hodgkin's Lymphomas」、p.2028‐2068を参照のこと。例えば、中悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)治療用の第一世代の化学療法レジメンとして、C‐MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法レジメンは、m‐BACOD(メソトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)であり、一方、適切な第三世代のレジメンは、MACOP‐B(メソトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)である。有用な薬物として、さらにフェニルブチレート、ベンダムスチンおよびブリオシタチン‐1が挙げられる。
【0083】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物を既知の方法に従って製剤化して、薬学的に有用な組成物を調製することができ、これにより、サイトカイン‐MAb・DNL構築物が、薬学的に適切な添加剤との混合物に組み合わされる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水が薬学的に適切な添加剤の一例である。その他の適切な添加剤は当業者に公知である。例えば、Anselら、「PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS」、第5版(Lea & Febiger、1990)およびGennaro編、「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、第18版(Mack Publishing Company、1990)およびこれらの改訂版を参照のこと。
【0084】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物は、例えば、ボーラス注入または持続注入による静脈内投与のために製剤化することができる。好ましくは、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を約4時間未満にわたり、より好ましくは、約3時間未満にわたり注入する。例えば、最初の25‐50mgを30分以内で、好ましくは15分以内さえで注入し、残りは次の2〜3時間にわたり注入する。注入用の製剤は、単位剤形で、例えば、保存剤を添加したアンプルまたは多回用量容器に入れて、提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液のような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤用剤を含有することができる。あるいは使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌無パイロジェン水を用いて構成するために、有効成分は粉末形態であってもよい。
【0085】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物の作用持続時間を制御するために、さらなる薬学的方法を用い得る。ポリマーを使用してサイトカイン‐MAb・DNL構築物を複合体形成し、または吸着することにより、放出制御製剤を調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとして、ポリ(エチレン‐co‐酢酸ビニル)のマトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ無水共重合体のマトリックスが挙げられる(Sherwoodら、Bio/Technology、10:1446(1992))。このようなマトリックスからの放出速度は、サイトカイン‐MAb・DNL構築物の分子量、マトリックス内のサイトカイン‐MAb・DNL構築物の量および分散粒子の大きさに依存する(Saltzmanら、Biophys.J.、55:163(1989);Sherwoodら、同上)。その他の固形剤形は、Anselら、「PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS」、第5版、(Lea & Febiger、1990)およびGennaro編、「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」、第18版(Mack Publishing Company、1990)およびこれらの改訂版に記載されている。
【0086】
サイトカイン‐MAb・DNL構築物は、哺乳動物に、皮下により、または他の非経口経路によってさえも投与し得る。さらに、投与は、持続注入によるあるいは単回のまたは複数回のボーラスによるものであってもよい。好ましくは、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を、約4時間未満にわたり、およびより好ましくは、約3時間未満にわたり注入する。
【0087】
より一般的には、ヒトに対して投与されるサイトカイン‐MAb・DNL構築物の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全般的病状および既往歴のような因子により異なるであろう。受容者には、単回の静脈注射として約1mg/kg〜25mg/kgの範囲のサイトカイン‐MAb・DNL構築物用量を提供することが望まれ得るが、状況に応じてこれよりも低いまたは高い用量を投与してもよい。例えば、70kgの患者に対する1〜20mg/kgの投与量は70〜1,400mgであり、または1.7mの患者に対しては41〜824mg/mである。この投与量は、必要に応じて、例えば、週1回で4〜10週間、週1回で8週間または週1回で4週間繰り返してもよい。また、維持療法での必要に応じて、隔週で数ヶ月間あるいは毎月または3ヶ月毎に何ヶ月間もというように、より低頻度で投与してもよい。
【0088】
あるいは、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を、1投与量を2週間または3週間毎に、少なくとも合計3投与量になるまで繰り返し投与してもよい。または、構築物を、週2回で4〜6週間投与してもよい。投与量を約200〜300mg/mまで(1.7mの患者に対して340mg/投与または70kgの患者に対して4.9mg/kg)減らした場合、週に1回または2回でさえ4〜10週間投与してもよい。あるいは、投与計画を減らす、すなわち2週間または3週間に1回で2〜3ヶ月間にしてもよい。しかし、20mg/kgを週1回または2〜3週間に1回のようなさらに高い用量でも、反復投与サイクルで緩徐な静注により投与できることが確認されている。用量および計画を適切に調節することにより、投与計画を他の間隔で任意に繰り返すことができかつ様々な非経口経路で投与してもよい。
【0089】
好適な実施形態において、サイトカイン‐MAbDNL構築物は、癌治療に有用である。癌の例として、癌腫、リンパ腫、膠芽腫、黒色腫、肉腫ならびに白血病、骨髄腫またはリンパ性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例が以下に記載され:扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌腫を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含めた胃癌、膵臓癌、多形膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、肝細胞癌腫、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、分化甲状腺癌腫、乳癌、卵巣癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌腫、陰茎癌腫および頭頸部癌が挙げられる。「癌」という用語には、原発性の悪性細胞または腫瘍(例えば、被検体の体において、元の悪性腫瘍部位または腫瘍部位以外に細胞がまだ移動していないもの)および続発性の悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、つまり悪性細胞または腫瘍細胞が元の腫瘍部位と異なる第二の部位へ移動することから生じるもの)が包含される。本発明の治療法をもたらす癌には、IGF‐1Rを発現するか、過剰発現するか、または異常に発現する細胞が包含される。
【0090】
癌または悪性腫瘍のその他の例として、小児急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌腫、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂・尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部および視覚路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原発性神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路および視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌腫、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、膵外分泌癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、胃腸管カルチノイド腫瘍、胃腸管腫瘍、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌腫、島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇・口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ球増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在性原発性扁平上皮頸癌、転移性原発性扁平上皮頸癌、転移性扁平上皮頸癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄球性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔・副鼻腔癌、上咽頭癌、神経細胞芽腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸癌、中咽頭癌、骨肉腫/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣低悪性度潜在性腫瘍、膵臓癌、異常タンパク血症、真性赤血球増加症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓細胞癌、腎盂・尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮頸癌、胃癌、テント上原発性神経外胚葉性および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂・尿管移行細胞癌、移行性腎盂・尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管・腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路および視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍および上記器官系に存在する新生物以外のその他の任意の高増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において記載および特許請求される方法および組成物は、上記の疾患を非限定的に含む悪性または前悪性の状態を治療するためにならびに腫瘍性または悪性の状態への進行を阻止するために使用され得る。このような使用は、腫瘍または癌への進行前であることが分かる、または疑われる状態、特に、過形成、化生または最も特に異形成からなる非腫瘍性の細胞増殖が生じた状態において必要とされる(このような異常な増殖状態に関する総説として、RobbinsおよびAngell、Basic Pathology、第2版、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、pp.68‐79(1976)を参照のこと)。
【0092】
異形成は癌の前兆である場合が多く、主として上皮に見られる。異形成は、非腫瘍性細胞増殖の最も無秩序な形態であり、個々の細胞の均一性および細胞の構造的配向の喪失を伴う。異形成は、慢性的な刺激または炎症が存在する部位に生じるのが特徴である。治療可能な異形成疾患として、無汗性外胚様異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成(atriodigital dysplasia)、気管支肺異形成、大脳異形成、子宮頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳眼異形成、骨端半肢異形成、多発性骨端異形成、点状骨端異形成、上皮異形成、顔面指趾生殖器異形成、家族性線維性顎異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、骨線維性異形成、開花性骨性異形成、遺伝性腎網膜異形成、発汗性外胚葉異形成、発汗減少症性外胚葉異形成、リンパ球減少性胸腺異形成、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、モンディーニ異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯牙異形成、眼下顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖端セメント質異形成、多骨性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、網膜異形成、眼中隔異形成、脊椎骨端異形成および心室橈骨異形成が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
さらに、治療可能な前腫瘍性疾患として、良性の異常増殖性疾患(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープまたは腸腺腫および食道異形成)、白板症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、日光口唇炎および日光角化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
好適な実施形態において、本発明の方法は、癌、特に上記の癌の増殖、進行および/または転移を抑制するために使用される。
【0095】
さらに、高増殖性の疾患、障害および/または症状として、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤血白血病を含む))および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病))、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、H鎖病ならびに線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎臓細胞癌腫、ヘパトーマ、胆管癌腫、絨毛癌腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス癌腫、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経細胞芽腫および網膜芽細胞腫のような肉腫および癌腫を非限定的に含む固形腫瘍のような悪性腫瘍および関連疾患の進行および/または転移が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
キット
様々な実施形態が、患者における患部組織の治療または診断に適した成分を含むキットに関し得る。典型的なキットは、本明細書に記載のような少なくとも1つまたは複数のサイトカイン‐MAb構築物を含み得る。投与のための成分を含有する組成物が、経口送達によるものなど、消化管を介した送達のために製剤化されていない場合、他の何らかの経路を通してキット成分を送達することが可能な装置が含まれ得る。非経口送達のような適用のための装置のタイプの1つは、組成物を被検体の体に注入するために使用される注射器である。吸入装置もまた使用され得る。ある実施形態において、治療剤を、滅菌された液剤または凍結乾燥調製物が充填された、注射器または自己注射ペンの形態で提供し得る。
【0097】
キット成分を、一緒にあるいは2つまたはそれ以上の容器に分けて収容してもよい。いくつかの実施形態において、容器は、再構成に適する、滅菌された凍結乾燥剤形の組成物を収容できる、バイアルであり得る。キットは、再構成および/または他の試薬の希釈に適した1つまたは複数の緩衝剤も含有し得る。使用し得るその他の容器として、パウチ、トレイ、箱、チューブなどが挙げられるが、これらに限定されない。キット成分を、容器内に収容して滅菌状態を維持してもよい。含まれ得る他の構成要素は、キットを使用する者のための使用説明書である。
【0098】
発現ベクター
さらに他の実施形態は、サイトカイン‐MAb構築物またはその構成成分の融合タンパク質をコードする核酸を含むDNA配列に関し得る。融合タンパク質は、以下の実施例でより詳細に論じるように、DNL構築物形成のために使用される、ADおよびDDDペプチドのような異なるペプチドまたはタンパク質に付加されている抗体またはサイトカインを含み得る。
【0099】
様々な実施形態が、コードDNA配列を含む発現ベクターに関し得る。ベクターは、キメラ、ヒト化またはヒト可変領域配列が付加され得るヒト免疫グロブリンの軽および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域をコードする配列を含み得る。ベクターは、コードされた1つまたは複数のタンパク質を、選択された宿主細胞内で発現するプロモーター、エンハンサーおよびシグナル配列もしくはリーダー配列をさらに含み得る。特に有用なベクターは、pdHL2またはGSである。より好ましくは、軽および重鎖定常領域ならびにヒンジ領域は、ヒトEU骨髄腫免疫グロブリンに由来してもよく、場合によっては、アロタイプの位置にある少なくとも1つのアミノ酸が、異なるIgG1アロタイプに見られるアミノ酸に変化し、そして場合によっては、EU番号システムに基づくEU重鎖のアミノ酸253が、アラニンと置換され得る。Edelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci USA、63:78‐85(1969)を参照のこと。他の実施形態において、IgG1配列は、IgG4配列に変換し得る。
【0100】
操作されたタンパク質を発現させるための、発現構築物の遺伝子操作および宿主細胞への挿入の方法は、当該分野で公知であり、ルーティン化された実験方法であることを、当業者は理解されよう。宿主細胞ならびにクローン抗体またはクローンフラグメントの発現方法は、例えば、2005年7月25日に出願された米国特許出願第11/187,863号;2005年10月20日に出願された同第11/253,666号および2006年7月14日に出願された同第11/487,215(それぞれその内容全体が参照により本明細書で援用される)に記載されている。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は説明ために提供されるものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するためのものではない。
【0102】
一般的方法
細胞株
Sp2/0‐Ag14(ATCC、Manassas、VA)の増強された変異株であるSp/ESF細胞を、2mMのL‐グルタミンおよび100単位/mLのペニシリン‐ストレプトマイシンを添加したハイブリドーマ無血清培地(H‐SFM)で維持した。Daudi、Ramos、Raji、NAMALWAおよびJeko‐1(ATCC)ヒトリンパ腫を、10%FBSを含み、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのL‐グルタミン、25mMのHEPESおよび100単位/mLのペニシリン‐ストレプトマイシン添加したRPMI1640培地で維持した。
【0103】
MAb‐IFNα構築物
それぞれSp/ESF内で発現させた2つのDNLモジュールであるCH3‐AD2‐IgG‐v‐mabとIFNα2b‐DDD2との連結を介したDNLにより、20‐2bを作製した。DNLでさらに生成した、20‐2b(ヒト化IgG1+4つのIFNα2b)と類似した設計であるが、異なる標的化MAbを有するMAb‐IFNα構築物を、対照としていくつかの実験で使用した:22‐2bは、AD2モジュールとして、CD22に対するものであり、リンパ腫と結合するCH3‐AD2‐IgG‐e‐mab(エピラツズマブ)を有し;734‐2bは、AD2モジュールとして、ハプテンであるIn‐DTPAに対するものであり、いかなる動物タンパク質または組織とも結合しないCH3‐AD2‐IgG‐h734を有し;およびRl‐2bは、ヒトインスリン様成長因子1受容体(IGF‐1R)と結合するCH3‐AD2‐IgG‐hR1を使用する。
【0104】
分析方法
IFNα構築物のタンパク質濃度を、市販のヒトIFNα2・ELISAキットを用いて製造者の示すプロトコールに従い測定し(PBL Interferon Source、Piscataway、NJ)、Bio‐Sil SEC 250カラム(Bio‐Rad、Hercules、CA)および移動相として0.04MのPBS、pH6.8、1mMのEDTAを用いて、Beckman System Gold Model 116でサイズ排除HPLCを行い確認した。還元および非還元SDS‐PAGE分析を、4〜20%のトリス‐グリシン勾配ゲル(Cambrex Bio Science、Rockland、ME)を用いて行った。すべての比色(ELISAおよびMTS)、発光(レポーター)および蛍光定量(CDCおよびADCC)アッセイを、EnVision2100マルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer、Waltham、MA)により定量化した。
【0105】
IFNα活性の測定
IFNα2bの比活性を、iLite Human Interferon Alpha Cell‐Based Assay Kitを用いて製造者の示すプロトコールに従い測定した(PBL Interferon Source)。PEGASYS(登録商標)、20‐2bおよびさらに7つのMAb‐IFNα構築物を、1%BSA‐PBS中で10、2.5および0.625ng/mLに希釈した。PEG‐INTRON(登録商標)を、1、0.25および0.0625ng/mLに希釈した。各希釈液を、供給された細胞とともに一晩インキュベーションして、三重反復でアッセイした。付属の標準品で作成した標準曲線から、比活性を推定した。抗ウイルス活性を、A549細胞に脳心筋炎(EMC)ウイルスを用いたインビトロでのウイルス曝露アッセイにより、独立分析機関(PBL Interferon Source)で測定した。
【0106】
インビトロ増殖
DaudiまたはJeko‐1を、96ウェルプレートに5,000細胞/ウェルで平板培養し、指示薬剤の濃度を増加させながら、4日(Daudi)または5日(Jeko‐1)間、37℃でインキュベートした。生細胞密度を、CellTiter 96 Cell Proliferation Assay(Promega、Madison、WI)を用いて測定した。
【0107】
全血由来のDaudiおよびRamosリンパ腫細胞のエキソビボ枯渇
健康な志願者由来のヒト全血中のNHL細胞および末梢血リンパ球に対する20‐2bの効果を、フローサイトメトリーを用いてエキソビボで評価し、v‐mab、734‐2bまたはv‐mabと734‐2bとの組合せと比較した。DaudiまたはRamos(5×10細胞)を、ヘパリン化した全血(150μl)と混合して、0.01、0.1または1nMの試験MAbとともに2日間37℃および5%COでインキュベートした。FITC標識した抗CD3、抗CD19またはマウスIgGアイソタイプの対照(BD Biosciences、San Jose、CA)で細胞を染色した。赤血球溶解後に、FACSCalibur(BD Biosciences)を用いてCell Questソフトウェアで細胞を解析した。DaudiおよびRamos細胞は共にCD19+であり、単球ゲート内にある。正常なB細胞およびT細胞はそれぞれCD19+細胞およびCD3+細胞であり、リンパ球ゲートにある。スチューデントt検定を用いて統計的有意性(p<0.05)を評価した。マウスにおけるインビボでの効果。体重約20gのC.B.17ホモ接合型の重症複合免疫不全(SCID)雌マウス(Taconic、Germantown、NY)において実験を行った。0日目に、1.5×10個のDaudi細胞、2.5×10個のRaji細胞または5×10個のNAMALWA細胞を各マウスに静脈接種した。治療用量はすべて皮下注射により投与した。対照治療として生理食塩水を使用した。毎日監視した動物が、後肢麻痺を発症した時点でまたは瀕死の状態になった場合、人道的に動物を屠殺した。さらに、開始時の20%を上回る体重を失った場合、マウスを屠殺した。Prism(v4.03)ソフトウェアパック(GraphPad Software社)を使用して、Kaplan‐Meierプロット(対数順位分析)により生存曲線を分析した。棄却z検定により判定された異常値は、分析から切り捨てた。
【0108】
実施例1.CH3‐AD2‐IgG発現ベクター
pdHL2哺乳動物発現ベクターが組換えIgG発現に用いられてきた(Quら、Methods、2005、36:84‐95)。任意のIgG‐pdHL2ベクターのCH3‐AD2‐IgG‐pdHL2ベクターへの変換を促進するために、プラスミドシャトルベクターを作製した。Fc(CH2およびCH3ドメイン)の遺伝子を、pdHL2ベクターである鋳型および以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCRにより増幅した:
Fc BglII 左側
AGATCTGGCGCACCTGAACTCCTG (配列番号1)
Fc Bam‐EcoRI 右側
GAATTCGGATCCTTTACCCGGAGACAGGGAGAG (配列番号2)。
【0109】
アンプリマーを、pGemTPCRクローニングベクター(Promega)中でクローニングした。Fc挿入フラグメントを、XbaIおよびBamHIでpGemTから切り出し、XbaIおよびBamHIによるh679‐Fab‐AD2‐pdHL2AD2‐pdHL2の消化により調製したAD2‐pdHL2ベクター(Rossiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2006、103:6841‐6)とライゲートして、シャトルベクターFc‐AD2‐pdHL2を作製した。IgG‐pdHL2発現ベクターをCH3‐AD2‐IgG‐pdHL2発現ベクターに変換するために、861bpのBsrGI/NdeI制限酵素断片を前者から切り出し、Fc‐AD2‐pdHL2ベクターから切り出した952bpの BsrGI/NdeI制限酵素断片と置換した。以下は、組換えヒト化IgG‐AD2モジュール作製のために生成され使用されたCH3‐AD2‐IgG‐pdHL2発現ベクターの一部のリストである:
H3‐AD2‐IgG‐hA20 (抗CD20)
H3‐AD2‐IgG‐hLL2 (抗CD22)
H3‐AD2‐IgG‐hL243 (抗HLA‐DR)
H3‐AD2‐IgG‐hLL1 (抗CD74)
H3‐AD2‐IgG‐hR1 (抗IGF‐1R)
H3‐AD2‐IgG‐h734 (抗インジウム‐DTPA)。
【0110】
実施例2.CH3‐AD2‐IgG産生
トランスフェクションおよび安定なCH3‐AD2‐IgG分泌細胞株の選択
すべての細胞株をハイブリドーマSFM(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で増殖させた。CH3‐AD2‐IgG‐pdHL2 ベクター(30μg)をSalI制限酵素で消化して直線化し、エレクトロポレーション(450ボルト、25μF)によりSp2/0‐Ag14(2.8×10細胞)内にトランスフェクトした。pdHL2ベクターは、クローン選択およびメソトレキセート(MTX)による遺伝子増幅を可能にする、ジヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子を含む。
【0111】
トランスフェクションの後、細胞を96ウェルプレートで平板培養し、0.2μMのMTXを含む培地中でトランスジェニッククローンを選択した。特異的抗イディオタイプMAbでコートした96ウェルマイクロタイタープレートを用いたサンドイッチELISA法により、CH3‐AD2‐IgG産生能についてクローンをスクリーニングした。推定クローンからの条件培地をマイクロプレートウェルに移し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG F(ab´)(Jackson Immuno Research Laboratories、West Grove、PA)を用いて融合タンパク質の検出を行った。最も高いシグナルを発するウェルを拡張して、最終的には産生に用いた。
【0112】
H3‐AD2‐IgGモジュールの産生および精製
融合タンパク質作製のために、ローラーボトル培養に2×10細胞/mlで播種し、ローラーボトルインキュベーター中で5%COの下、37℃で、細胞生存率が25%を下回るまで(〜10日)インキュベートした。培養ブロスを遠心分離により清澄して濾過し、限外濾過により50倍にまで濃縮した。CH3‐AD2‐IgGモジュール精製のために、濃縮した上清液をプロテインA(MAB Select)アフィニティーカラムに負荷した。カラムをベースラインまでPBSで洗浄し、pH2.5の0.1Mグリシンで融合タンパク質を溶出した。
【0113】
実施例3.インターフェロン(IFN)‐α2bベースのDDDモジュール生成
哺乳動物細胞内で発現するIFN‐α2b‐DDD2‐pdHL2の構築
IFN‐α2bのcDNA配列をPCRにより増幅して、XbaIおよびBamHIが制限部位であり、シグナルペプチドがIFN‐α2b由来でありかつ6Hisがヘキサヒスチジンタグであるという特徴を含む配列を得た:XbaI―シグナルペプチド―IFNα2b―6His―BamHI(6Hisは配列番号28で開示される)。得られた分泌タンパク質は、そのC末端で、以下の配列:
KSHHHHHHGSGGGGSGGGCGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号3)
のポリペプチドと融合しているIFN‐α2bで構成されていた。
【0114】
鋳型として完全長ヒトIFNα2bのcDNAクローン(Invitrogen、 Ultimate ORF ヒトクローン、カタログ番号HORF01クローンID IOH35221)をおよびプライマーとして以下のオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅を行った:
IFNA2 XbaI 左側
TCTAGACACAGGACCTCATCATGGCCTTGACCTTTGCTTTACTGG (配列番号4)
IFNA2 BamHI 右側
GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTTTCCTTACTTCTTAAACTTTCTTGC (配列番号5)。
【0115】
PCRアンプリマーをpGemTベクター内にクローニングした。IFN‐α2bとのライゲーション用に、DDD2‐pdHL2哺乳動物発現ベクターを以下のように調製した。CH1‐DDD2‐Fab‐hMN‐14‐pdHL2(Rossiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2006、103:6841‐6)ベクターを、DDD2コード配列を残しFab遺伝子配列をすべて除去するXbaIおよびBamHIで消化した。IFN‐α2bアンプリマーを、pGemTからXbaIおよびBamHIで切り出し、DDD2‐pdHL2ベクター内にライゲートして、発現ベクターIFN‐α2b‐DDD2‐pdHL2を生成した。
【0116】
哺乳動物細胞によるIFN‐α2b‐DDD2発現
IFN‐α2b‐DDD2‐pdHL2をSalIで消化して直線化し、エレクトロポレーションにより骨髄腫細胞内へ安定にトランスフェクトした(米国特許出願第11/877,728号(実施例の節が参照により本明細書で援用される)を参照のこと)。ELISA法により、2つのクローンが、検出可能なレベルのIFN‐α2bを有することがわかった。2つのクローンのうち95と称する一クローンが、実質的に産生能が低下することなく、無血清培地での増殖に適応した。次いで、このクローンを5週間にわたり、MTX濃度を0.1から0.8μMに増加させながら増幅した。この段階で、クローンを限界希釈によりサブクローニングし、最も産生能の高いサブクローン(95‐5)を拡大した。振盪フラスコ中で増殖した95‐5の産生能は、市販のrIFN‐α2b(Chemicon、IF007、ロット番号06008039084)を基準として用いて、2.5mg/Lであると推定された。
【0117】
ローラーボトル中で増殖したバッチ培養物からのIFN‐α2b‐DDD2精製
クローン95‐5を、0.8μMのMTXを含有する無血清ハイブリドーマSFM全20Lを含む34個のローラーボトルに拡大し、最終培養まで培養した。培養ブロスを処理して、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)により、IFN‐α2b‐DDD2を以下のように精製した。上清液を遠心分離により清澄し、0.2μMで濾過し、1X結合緩衝液(10mMイミダゾール、0.5MNaCl、50mMNaHPO、pH 7.5)中へダイアフィルター濾過して、310mLに濃縮し、最終濃度0.1%になるまでTween20を添加し、30mLNi‐NTAカラムに負荷した。試料負荷の後、カラムを、0.02%Tween20の1X結合緩衝液500mL、次いで30mMイミダゾール、0.02%Tween20、0.5MNaCl、50mMNaHPO、pH 7.5の溶液290mLで洗浄した。生成物を、250mMイミダゾール、0.02%Tween20、150mMNaCl、50mMNaHPO、pH7.5の溶液110mLで溶出した。約6mgのIFNα2b‐DDD2が精製された。
【0118】
大腸菌(E.coli)におけるIFN‐α2b‐DDD2産生
IFN‐α2b‐DDD2は、大腸菌においても、微生物発酵により、可溶性タンパク質として発現された。IFN‐α2b‐DDD2‐pdHL2DNAを鋳型として用いたPCRにより、コード配列を増幅した。アンプリマーを、Nde IおよびXhoI制限部位を用いて、IpET26b大腸菌発現ベクター内にクローニングした。18℃で12時間、100μMのIPTGを含むLB振盪フラスコでの誘導により、タンパク質をBL21pLysS宿主細胞において細胞内発現させた。可溶性IFN‐α2b‐DDD2を、上記IMACにより細胞溶解物から精製した。
【0119】
実施例4.CH3‐AD2‐IgGと結合した4つのIFN‐α2b‐DDD2部分を含むDNLコンジュゲートの生成
H3‐AD2‐IgGと結合した4つのIFN‐α2b‐DDD2部分を含むDNL複合体(図1)を以下のように作製した。簡潔に述べれば、選定したCH3‐AD2‐IgGを約2モル当量のIFN‐α2b‐DDD2と混合し、この混合物に1mMのEDTAおよび2mMの還元型グルタチオン(GSH)を添加した後、穏やかな条件下で一晩室温で還元した。酸化型グルタチオンを2mMになるまで添加し、この混合物をさらに12〜24時間、室温で保持した。DNLコンジュゲートをプロテインAアフィニティーカラムで精製した。20‐2b、22‐2b、hR1‐2bおよび243‐2bと称するこのような4つのDNLコンジュゲートを調製した。各コンジュゲートは、それぞれCH3‐AD2‐IgG‐hA20(CD20に対する特異性を有する)、CH3‐AD2‐IgG‐hLL2(CD22に対する特異性を有する)、CH3‐AD2‐IgG‐hR1(IGF‐1Rに対する特異性を有する)およびCH3‐AD2‐IgG‐hL243(HLA‐DRに対する特異性を有する)にアンカーされた、4コピーのIFN‐α2bを含んでいた。哺乳動物(m)または大腸菌(e)産生IFN‐α2b‐DDD2から生成された20‐2bのSE‐HPLC分析では、それぞれが、1つのIgGおよび4つのIFN‐α2bグループからなる共有結合複合体と一致した保持時間を有する主要ピークを示した(不掲載)。同様のSE‐HPLCプロファイルが、他の3つのIFN‐IgGコンジュゲートに関して見られた。
【0120】
実施例5.IFN‐IgGコンジュゲートのインビトロ活性
20‐2bのインビトロでのIFNα生物学的活性を、細胞ベースのレポーター、ウイルス防御およびリンパ腫増殖の各アッセイを用いて、市販のペグ化IFNα2剤であるPEGASYS(登録商標)およびPEG‐INTRON(登録商標)の生物学的活性と比較した。インターフェロン刺激応答エレメントと融合したレポーター遺伝子を含有するトランスジェニックヒト前単球細胞株を用いる細胞ベースのキットを使用して、比活性を測定した(図2A〜2D)。20‐2bの比活性(5300IU/pmol)は、PEGASYS(170IU/pmol)およびPEG‐INTRON(3400IU/pmol)双方よりも高かった(図2A)。20‐2bと同様に作製された734‐2b、1R‐2bおよびさらに5つのMAb‐IFNα構築物(データ不掲載)は、それぞれ同様の比活性(4000〜8000IU/pmol)を示し、これにより、このような構造物を生成するためのDNL法に一貫性があることが実証された(図2A)。4つのIFNα2bグループを有することが、MAb‐IFNαの効力増強に寄与した。IFNα当量に正規化すると、比活性/IFNαは、PEGASYS(登録商標)よりも約10倍高く、PEG‐INTRON(登録商標)よりも約2倍だけ低かった。
【0121】
インビトロでのウイルス防御アッセイにおけるMAb‐IFNα、PEGASYS(登録商標)およびPEG‐INTRON(登録商標)の比較により、MAb‐IFNαが、比活性がPEG‐INTRON(登録商標)と同等のおよびPEGASYS(登録商標)よりも10倍高いIFNα2b抗ウイルス活性を保有することが実証された(図2B)。
【0122】
IFNα2bは、一部の腫瘍株に対して直接的な抗増殖性または細胞傷害性作用を有し得る。20‐2bの活性を、IFNαに対して高感受性であるバーキットリンパ腫細胞株(Daudi)を用いたインビトロ増殖アッセイで測定した(図2C)。各IFNα2剤は、インビトロにおいて強力(EC50=4〜10pM)かつ効率的にDaudiを阻害した(>90%)。しかし、20‐2b(EC50=O.25pM)は、非標的化MAb‐IFNα構築物よりも約30倍強力であった。20‐2bの元の抗CD20MAbは、Daudiを含めた多くのリンパ腫細胞株に対して、かなりよリ高い濃度で(EC50>10nM)インビトロでの抗増殖性活性を有する(Rossiら、2008、Cancer Res.、68:8384‐92)。IFNαおよび抗CD20双方に対してより低感受性のマントル細胞リンパ腫株であるJeko‐1を用いた、20‐2bのインビトロ活性の評価も行った(図2D)。Jeko‐1は、元の抗CD20MAbに対してわずかに感受性であり、EC50がほぼ1nMで最大阻害率(Imax)が10%である。734‐2bで示されるように、Jeko‐1(Imax=43%;EC50=23pM)は、Daudi(Imax=90%;EC50=7.5pM)よりもIFNα2bに対する反応性が低い。734‐2bに比べ、20‐2bはJeko‐1をより高い程度(Imax=65%)で阻害し、二相性の用量反応曲線を示した(図2D)。10pM未満において、IFNα2b活性に起因する低濃度の反応が見られ、734‐2bと同様にImax=43%でプラトーに達する。高濃度の反応は、100pMを超える部分で明らかであり、Imaxは65%に達した。20‐2bの低濃度のIFNα2b反応(EC50=O.97pM)は、734‐2bよりも25倍強力であり、Daudiでの結果と同様であった。
【0123】
20‐2bの効力増大が、CD20およびIFNαシグナル伝達の相加/相乗作用によるものかを明らかにするために、元の抗CD20抗体と734‐2bとの組合せ(v‐mab+734‐2b)についてアッセイを行った。v‐mab+734‐2bの用量反応曲線は、1nMを超える部分を除いては734‐2b単独とほぼ同じであり、1nMを超える部分では、前者では増加したが、後者では増加しなかった。これらの結果は、20‐2bの低いEC50が、MAb標的化に起因するものであるが、そのより大きいImaxはおそらくIFNα2bおよびCD‐20シグナル伝達の相加活性によるものであることを示している。CD20シグナル伝達の作用は、20‐2bに対する高濃度の反応(EC50=O.85nM)においてのみ明らかであり、これはv‐mabに対する反応(EC50=1.5nM)に匹敵する。v‐mab+734‐2bに関しては、2つの反応がオーバーラップするため、二相性の用量反応曲線が明白ではなかった。しかし、1nMを超える濃度では相加作用が明らかであった。20‐2bのImax(65%)は、IFNα2b の反応(Imax=43%)とv‐mab (Imax=10%)の反応を加えたものよりも大きく、このことは、IFNα2bとv‐mabの作用間の相乗性の可能性を示唆している。
【0124】
ADCC活性
IFNαは、NK細胞およびマクロファージを活性化することにより、抗CD20免疫療法の基本的な作用機序(MOA)である、ADCC活性を増強し得る。本発明者らは、エフェクター細胞として末梢血単核細胞(PBMC)を使用して、2つのNHL細胞株で20‐2bとv‐mabのADCCを比較した。複数のドナー由来のPBMCを用いた反復アッセイにより、DaudiおよびRaji細胞双方について示すように、20‐2bの方が、v‐mabに比べADCCをより増強することが実証された(図4A)。この効果は、抗CD22MAbであるエピラツズマブを含み、ADCCをわずかに示すMAb‐IFNαである、22‐2bでも示された(Carnahanら、2007、Mol.Immunol.、44:1331‐41)。
【0125】
CDC活性
CDCは、I型抗CD20MAb(v‐mabおよびリツキシマブを含む)の重要なMOAであると考えられている。しかし、トシツモマブに代表されるII型MAbでは、この機能が欠如している(Cardarelliら、2002、Cancer Immunol.Immunother.、51:15‐24)にもかかわらず、抗リンパ腫活性を有する。v‐mabとは異なり、20‐2bはインビトロでのCDC活性を示さない(図4B)。これらの結果は、補体結合がおそらく立体的干渉により阻害されていると思われるCH3‐AD2‐IgG‐v‐mabモジュールベースの他のDNL構造物の結果(Rossiら、2008)と一致する。
【0126】
実施例6.20‐2bの薬物動態(PK)解析
雄のSwiss‐Websterマウスにおける20‐2bの薬物動態(PK)特性を評価し、PEGASYS(登録商標)、PEG‐INTRONおよびα2b‐413(DNLにより作製されたペグ化IFN、米国特許出願第11/925,408を参照のこと)のものと比較した。様々な時間における血清試料中のIFN‐α濃度を、製造者による説明書に従ってELISA法により測定した。簡潔に述べれば、血清試料を、キットに備付けのヒトIFN‐αの基準に従って適切に希釈した。マイクロタイタープレートウェルに結合した抗体は、インターフェロンを捕捉する。次いで二次抗体を用いて、結合したインターフェロンを検出し、テトラメチルベンジジン(TMB)を添加後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした抗二次抗体により定量化した。プレートを450nmで読み取った。図3はPK解析の結果を表し、20‐2bは他の薬剤と比べて、消失が有意に遅く、血中滞留時間が有意に長いことを示していた。210pmolの注入量において、時間単位で算出される薬物動態的な血中半減期は、8.0時間(20‐2b)、5.7時間(α2b‐413)、4.7時間(PEGASYS(登録商標))および2.6時間(PEG‐INTRON)であった。消失速度(1/h)は、0.087(20‐2b)、0.121(α2b‐413)、0.149(PEGASYS(登録商標))および0.265(PEG‐INTRON)であった。算出されたMRT0.08→∞(時間)は、22.2(20‐2b)、12.5(α2b‐413)、10.7(PEGASYS)および6.0(PEG‐INTRON)であった。薬物動態パラメーターは、個々の抗体またはサイトカインよりむしろ複合体の性質により決定されるため、サイトカイン‐DNL複合体のPK特性は、他のサイトカイン部分および抗体部分に一般化可能であり、上述の特定の20‐2b構築物に限定されないことが予想される。
【0127】
実施例7.20‐2bのインビボ活性
血中安定性
20‐2bは、37℃で、ヒト血清中(≧10日)または全血中(≧6日)において安定であった(不掲載)。20‐2b複合体の濃度を、二重特異性ELISAアッセイを用いて測定した。アッセイ時間にわたり、検出可能な全血または血清中における血中20‐2bレベルの変化は、実質的にはなかった。
【0128】
ヒト全血由来のリンパ腫細胞に対する20‐2bのエキソビボでの効果
本発明者らは、20‐2b、v‐mab、734‐2bまたはv‐mab+734‐2bが、エキソビボ環境でリンパ腫または正常なB細胞を全血から除去する能力を比較した(図5)。裸の抗CD20MAbの治療効果は、3つの作用機序(MOA)、すなわちシグナル伝達誘導性アポトーシスもしくは増殖停止、ADCCおよびCDCを介して得られると考えられている(Glennieら、2007、Mol.Immunol.、44:3823‐37)。このアッセイにおいて、v‐mabは、3つのMOAすべてを利用し得るのに対し、インビトロの所見では、20‐2bは、シグナル伝達および増強されたADCCを利用できる可能性があるが、CDCはない。この短期モデルにおいて、20‐2bおよび734‐2bのIFNα2bグループは、腫瘍細胞に直接作用し、v‐mabのADCC活性を増強しかつおそらくは免疫刺激作用をいくつか有し得る。しかし、インビボで生じ得る自然および適応免疫系の、IFNα仲介による活性化の全領域は、この2日のエキソビボアッセイでは実現されない。
【0129】
0.01nMでは、20‐2b(60.5%)が、v‐mab(22.8%)、734‐2b(38.6%)またはv‐mab+734‐2b(41.7%)よりも、有意にDaudi細胞を枯渇させた(図5)。0.1nMでは、20‐2bおよびv‐mab+734‐2bが同程度(88.9%)にDaudi細胞を枯渇させ、これは、v‐mab(82.4%)または734‐2b(40.7%)よりも多かった(図5)。1nMでは、734‐2b(55.7%)以外、各薬剤ともDaudi枯渇が95%を超えた(図5)。示される差はそれぞれ統計的に有意であった(p<0.01)。
【0130】
Ramosは、IFNα2bおよびv‐mab双方に対してDaudiよりも低感受性である。734‐2bの効果は中等度に過ぎず、各濃度におけるRamos枯渇は20%未満であった(図5)。0.01および0.1nM双方において、20‐2bの方が、v‐mab+734‐2bよりもRamosを枯渇させ、そしてv‐mab+734‐2bの方が、v‐mabよりも多くの細胞を除去した(図5)。1nMでは、734‐2bを除くすべての処置により同様のRamos枯渇(75%)が得られた(図5)。示される差はそれぞれ統計的に有意であった(p<0.02)。
【0131】
734‐2bで実証されたように、このアッセイでは、IFNα2b単独では、正常なB細胞を枯渇させない。これらの低濃度では、20‐2b、v‐mabおよびv‐mab+734‐2bは、それぞれ同様な用量反応的なB細胞枯渇を示し、これはDaudiまたはRamosの枯渇よりも著しく低い。どの処置でもT細胞の有意な枯渇は得られなかった(データ不掲載)。
【0132】
SCIDマウスにおける20‐2bのインビボ効果
マウスモデルの限界は、マウス細胞がヒトIFNα2bに対して非常に低感受性であるということである。ヒトにおいて得られ得る20‐2bの全般的な治療上の利点として、先天および適応免疫双方の増強を挙げることができる。これらの限界を考慮して、本発明者らは、SCIDマウスにおける播種性のバーキットリンパ腫モデルに対する、20‐2bのインビボでの抗リンパ腫効果を調べた。始めに本発明者らは、高感受性の初期Daudiモデルを試験した(図6A)。接種の1日後に、各群に1低用量の20‐2b、v‐mabまたは734‐2bを投与した。v‐mabまたは734‐2bの1用量0.7pmol(170ng)では、生理食塩水と比較した場合の生存率において、v‐mabに関しては有意な改善が得られた(p<P〈0.0001)が、無関係対照MAb‐IFNαである734‐2bでは得られなかった(図6A)。この改善はわずかであり、生存期間中央値(MST)は生理食塩水での27日からv‐mabでの34日に増加した。しかし、20‐2bの1用量0.7pmol(170ng)では、MSTにおいて、生理食塩水およびv‐mab群双方を100日よりも多く上回る改善が得られた(p<O.0001)(図6A)。19週間後にこの実験を終了し、その時点で、0.7pmolの20‐2b処置群中の7個体の長期生存例を剖検したところ、疾患の明白なエビデンスは見られなかった(治癒した)(図6A)。注目すべきことに、最低用量0.07pmol(17ng)の20‐2bでさえもMSTが2倍を超えた(図6A)。
【0133】
次に発明者らは、マウスにおいて処置前に実質上より多くの腫瘍量が発現する、より困難な進行Daudiモデルにおいて20‐2bの効果を評価した(図6B)。腫瘍接種の7日後、各群に1回低用量(0.7、7.0または70pmol)の20‐2b、v‐mab、734‐2bまたはPEGASYS(登録商標)を投与した。生理食塩水の対照マウスのMSTは21日であった(図6B)。それぞれ(組換えIFNαと比べて)PKを増強するが、腫瘍を標的としない最高用量(70pmol)のPEGASYS(登録商標)または734‐2bでは、MSTが2倍であった(42日;p<O.0001)(図6B)。100倍低い用量(0.7pmol)での20‐2b処置では、最高用量(70pmol)のPEGASYS(登録商標)または734‐2bと同様の結果(38.5日)が得られた(図6B)。10倍低い用量(7pmol)の20‐2b処置では、70pmolのPEGASYS(登録商標)または734‐2b処置よりも、有意な生存率の改善(80.5日、20%LTS)が得られた(p<O.0012)(図6B)。試験した最高用量(70pmol)では、20‐2bにより105日を超えるMSTに改善され、LTSは100%であった(図6B)。本発明者らはこれまでに、v‐mabが比較的低用量(3.5pmol)で担Daudiマウスの生存率を増加させ得るとともに、より高用量でLTSが得られることを、初期腫瘍モデルを用いて実証した。しかし、今回の進行腫瘍モデルでは、1回量70pmolのv‐mabの生存率に対する効果は、有意ではあるがほんのわずかであった(MST=24日、p=0.0001)(図6B)。
【0134】
次いで本発明者らは、IFNαによる直接的阻害に対してDaudiよりも低感受性でありかつv‐mabによる免疫療法に対して低反応性である、より困難な腫瘍モデルにおいて20‐2bをアッセイした。Rajiは、IFNα2bの直接作用に対してDaudiに比べて〜1000倍低感受性である。しかし、RajiはDaudiに匹敵するCD20抗原密度を有し(Steinら、2006、Blood、108:2736‐44)、Daudiにはかなり劣るものの、v‐mabに対して反応性である(Goldenbergら、2009、Blood、113;1062‐70)。腫瘍接種5日後に治療を開始する進行Rajiモデルにおいて、20‐2bの効果を調べた(図7A)。各群に、2週間にわたり計6回(各250pmol)注射を施した。734‐2bでは、生理食塩水よりも生存率が改善されず(MST=16日)、RajiのIFNαに対する非感受性と一致した(図7A)。v‐mabでは、生理食塩水よりも生存率が有意に改善された(MST=26日、p<O.0001)(図7A)。20‐2bは、他のすべての処置を上回っていた(MST=33日、p<PO.0001)(図7A)。
【0135】
最後に本発明者らは、NAMALWAを用いて20‐2bの効果を調べた(図7B)。NAMALWAは、IFNαの直接作用に対して低感受性で、CD20抗原密度がDaudiまたはRajiに比べて〜25倍低いヒトリンパ腫であり、抗CD20免疫療法に対して耐性であると考えられている(Steinら、2006)。各群に、計6用量(各250pmol)の20‐2bまたは734‐2bを投与した。別の1群に、計7用量(各3.5nmol)のv‐mabを投与した。生理食塩水で処置した群のMSTは17日であった(図7B)。734‐2bによる処置では、有意ではあるが、非常にわずかな生存率の改善が見られた(MST=20日、p=0.0012)(図7B)。20‐2b(MST=34日)は、734‐2B(P=0.0004)および14倍高い用量で投与したv‐mab(MST=24日、P=0.0026)を上回っていた(図7B)。
【0136】
結論
以上の結果は、抗CD20MAbを用いたIFNαの標的化により、単独の薬剤または薬剤の組合せよりも、免疫サイトカインがより強力かつ効果的になることを明白に実証している。腫瘍に対するMAbによるIFNα標的化は、単一薬剤の投与計画の頻度を減らし、IFN療法に付随する副作用を低減または除去し、非常に増大した効果をもたらし得る。さらに標的化IFNαは、腫瘍に対する急性免疫応答を誘導し、おそらくは、先天および適応免疫の多面的な刺激を介して免疫記憶を誘発することができる(Belardelliら、2002、Cytokine Growth Factor Rev.、12:119‐34)。別のグループは、化学的コンジュゲーションにより作製されるMAb‐IFNαを産生し、このような構築物の潜在的な臨床的有用性が明らかとなった(Pelhamら、1983、Cancer Immunol Immunother.、15:210‐16;Ozzelloら、1998、Breast Cancer Res.Treat.、48:135‐47)。マウスIFNαおよび抗HER2/neuMAbを含む組換えMAb‐IFNαは、免疫正常マウスにおいて、トランスジェニック(HER2/neu)マウスB細胞リンパ腫の強力な阻害を示し、さらに免疫記憶による防御的な適応免疫応答の誘導も可能であった(Huangら、2007、J.Immunol.、179:6881‐88)。
【0137】
本発明者らは、20‐2bによる治療が、NK、T4、T8および樹状細胞を含めた多くの免疫細胞の局所的な動員および活性化を刺激して、細胞傷害性およびADCCの増強をもたらし、さらに腫瘍に対する免疫記憶を潜在的に誘導し得るであろうと考える。しかし、ヒト細胞に比べ、マウス細胞はヒトIFNα2bに対して極めて低感受性(〜4log)である(Kramerら、1983、J.Interferon Res.、3:425‐35;Weekら、1981、J.Gen.Virol.、57:233‐37)。したがって、上記マウスモデルのインビボ実験における20‐2bの抗リンパ腫活性は、マウス免疫応答のIFNα2b活性化には起因し得ず、仮に起因し得ても極わずかである。むしろ殺傷性は、主としてリンパ腫細胞に対するIFNα2bの直接作用によるものである。
【0138】
本発明者らは、20‐2bが、抗CD20免疫療法の最も重要なMOAであり得るADCCを増強することを示した。しかし、ヒトIFNα2bは、マウス宿主の免疫エフェクター細胞を極わずかしか刺激しないため、IFNαに増強されたADCCは、おそらくヒトにおけるほどは認められないであろう。これらの制限に関わらず、インビボでの結果により、20‐2bが、IFNα感受性のDaudiモデルにおいて、v‐mabまたは非標的化MAb‐IFNαの100倍を超える効力を示し、非常に効果的な抗リンパ腫薬剤であり得ることが実証された。IFNαの直接作用に対して比較的非感受性であるリンパ腫モデル(Raji/NAMALWA)または抗CD20免疫療法に対して耐性であるリンパ腫モデル(NAMALWA)に対してさえも、20‐2bは、v‐mabまたは非標的化MAb‐IFNαよりも優れた効果を示した。
【0139】
IFNα2bをv‐mabと融合させることで、循環時間が延長され、腫瘍標的化が可能となることにより、そのインビボでの効力が増大する。Daudiモデルにおいて、Pkの治療上の重要性が示され、ここでは、PEGASYS(登録商標)を緩やかに除去する方が、より高い比活性を有するPEG‐INTRON(登録商標)を急速に除去するよりも優れていた(データ不掲載)。20‐2bは、PEGASYS(登録商標)または734‐2bよりもかなり強力であったが、このことは、抗CD20MAbを介したリンパ腫標的化が、20‐2bの優れた効力および効果にとって重要であることを示唆している。驚くべきことに、標的化の効果は、インビトロアッセイにおいてさえも明らかであった。シグナル伝達を介したリンパ腫阻害のみ可能なインビトロ増殖実験において、20‐2bは、単独のまたはv‐mabと組合せた場合の非標的化MAb‐IFNαよりも25倍低い濃度で活性を示した。エキソビボ環境においては、3つの抗CD20MOAすべての関与が可能である。20‐2bは、CDC活性が無くても、血液由来リンパ腫の枯渇において、単独のIFNαまたはv‐mabならびにその組合わせよりも効果的であったが、このことは標的化の重要性を示している。MAb、エフェクターおよび標的細胞はすべて、実験を通して制限されていたため、インビボ/エキソビボ実験におけるMAb標的化の影響は、いささか驚くべきことである。本発明者らは、20‐2bが、ヒト患者において実質上より大きなインビボ効果を有するであろうと考える。
【0140】
20‐2bのIFNα2bおよびv‐mab成分はおそらく、相加的または相乗的に作用して20‐2bの効力増強に寄与している可能性がある。インビトロ増殖アッセイでは、少なくとも1つの相加効果が示唆され、これはv‐mabおよび734‐2bの組合せが、どちらの薬剤単独よりも優れているというエキソビボ実験の結果により裏付けられた。この効果は、20‐2bの一部としてのv‐mabのADCC活性増加を介して、または734‐2bと組合わされた場合に実現され得るが、ADCCはインビトロ増殖アッセイにおいては機能せず、このことは、さらなる機序の存在を示唆する。v‐mab結合CD20により伝達されるシグナルが、IFNαシグナルを増強することで、効力増大が生じる可能性がある。あるいは、徐々に内部移行するMAbであるv‐mabの結合が、I型IFN受容体の内部移行/下方制御を妨げることで、より持続的かつ効果的なIFNα誘導性シグナルが生じる可能性がある。
【0141】
実施例8.エリスロポエチン(EPO)ベースのDDDモジュール生成
哺乳動物細胞内で発現するEPO‐DDD2‐pdHL2の構築
EPOのcDNA配列をPCRにより増幅して、XbaIおよびBamHI が制限部位であり、シグナルペプチドがヒトEPO由来でありかつ6Hisがヘキサヒスチジンタグである、以下の特徴配列を得た:Xbal―シグナルペプチド―EPO―6His―BamHI(6Hisは、配列番号28で開示される)。得られた分泌タンパク質は、そのC末端で、以下の配列:
KSHHHHHHGSGGGGSGGGCGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTR
LREARA(配列番号3)
からなるポリペプチドと融合しているEPOで構成されていた。
【0142】
鋳型として完全長ヒトEPOcDNAクローンをおよびプライマーとして以下のオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅行った:
EPO XbaI 左側
TCTAGACACAGGACCTCATCATGGGGGTGCACGAATGTCC(配列番号6)
EPO BamHI 右側
GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTTCTGTCCCCTGTCCTGCAG(配列番号7)。
【0143】
PCRアンプリマーを、pGemTベクター内にクローニングした。EPOとのライゲーション用に、DDD2‐pdHL2哺乳動物発現ベクターを、XbaIおよびBamHI制限酵素で消化して調製した。EPOアンプリマーを、XbaIおよびBamHIでpGemTから切り出し、DDD2‐pdHL2ベクター内にライゲートして、発現ベクターEPO‐DDD2‐pdHL2を生成した。
【0144】
哺乳動物細胞におけるEP0‐DDD2発現
EPO‐pdHL2を、SalI酵素で消化して直線化し、エレクトロポレーションによりSp/ESF骨髄腫細胞内に安定にトランスフェクトした。クローンを、0.15μMのMTXを含む培地で選択した。His‐タグ融合タンパク質を捕捉するためのNunc Immobilizer Nickel‐Chelateプレートおよび抗EPO抗体による検出を用いたELISA法により、クローン番号41、49および37がそれぞれ、〜0.5mg/LのEPOを産生することが示された。9.6リットルの無血清ローラーボトル培養から、IMACにより約2.5mgのEPO‐DDD2が精製された。
【0145】
実施例9.CH3‐AD2‐IgG‐h734と結合した4つのEPO‐DDD2部分を含むDNLコンジュゲートである734‐EPOの生成
734‐EPOを、20‐2bに関して上記した通り作製した。プロテインAで精製した734‐EPOのSE‐HPLC分析では、比較的大きい分子サイズの主要ピークおよびショルダーが見られた(不掲載)。主要ピークの保持時間は、1つのIgGと4つのEPOとのグループからなる共有結合複合体と一致した。ショルダーは、IgG‐EPOコンジュゲートの非共有結合二量体によるものと思われた。クーマシーブルー染色を用いたSDS‐PAGE分析および抗EPOイムノブロット分析では、非還元条件下において作製物は、推定されるMW(〜310kDa)と一致する260kDaを超えるMrを有することが示された(不掲載)。還元条件下において、734‐EPOの3つの成分ポリペプチド(EPO‐DDD2、重鎖‐AD2および軽鎖)を表すバンドが明瞭であり、量的に類似しているようであった(不掲載)。非作製物の夾雑物は検出されなかった。
【0146】
EPO‐DDD2および734‐EPOがEPO応答性TF1細胞(ATCC)の増殖を刺激する能力について、組換えヒトEPO(Calbiochem)を陽性対照としてアッセイを行った。TF1細胞を、1×10細胞/ウェルを含む96ウェルプレートで、20%FBS添加かつM‐CSF無添加であるRPMI1640培地中で増殖させた。EPO構築物の濃度(units/ml)を、市販のキット(ヒトエリスロポエチンELISAキット、Stem Cell Research、カタログ番号01630)を用いて測定した。細胞を、900U/ml〜0.001 U/mlの範囲の濃度のrhEPO、EPO‐DDD2または734‐EPO存在下で72時間培養した。MTS試薬20μl/ウェルを用いたMTSアッセイにより、生細胞密度を比較した。このアッセイでは、6時間のインキュベート後、96ウェルプレートリーダーでOD490を測定した。用量反応曲線およびEC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて算出した(図8)。EPO‐DDD2および734‐EPOは共に、rhEPOの約10%であるインビトロでの生物学的活性を示した。
【0147】
実施例10.顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)ベースのDDDモジュール生成
哺乳動物細胞内で発現するG‐CSF‐DDD2‐pdHL2の構築
G‐CSFのcDNA配列をPCRにより増幅して、シグナルペプチドがヒトG‐CSF由来でありかつ6Hisがヘキサヒスチジンタグである、以下の特徴を含む配列を得た:XbaI―シグナルペプチド―G‐CSF―6His―BamHI(6Hisは、配列番号28で開示される)。得られた分泌タンパク質は、そのC末端で、配列番号3からなるポリペプチドと融合しているG‐CSFから構成されていた。
【0148】
鋳型として完全長ヒトG‐CSFcDNAクローン(Invitrogen、IMAGEヒト、カタログ番号97002RG、クローンID5759022)をおよびプライマーとして以下のオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅を行った:
G‐CSF XbaILeft
TCTAGACACAGGACCTCATCATGGCTGGACCTGCCACCCAG(配列番号8)
G‐CSF BamHI‐Right
GGATCCATGATGGTGATGATGGTGTGACTTGGGCTGGGCAAGGTGGCGTAG(配列番号9)。
【0149】
PCRアンプリマーをpGemTベクター内にクローニングした。G‐CSFとのライゲーション用に、DDD2‐pdHL2哺乳動物発現ベクターを、XbaIおよびBamHI制限酵素で消化して調製した。G‐CSFアンプリマーを、XbaIおよびBamHIでpGemTから切り出し、DDD2‐pdHL2ベクター内にライゲートして、発現ベクターG‐CSF‐DDD2‐pdHL2を生成した。
【0150】
哺乳動物細胞におけるG‐CSF‐DDD2発現
G‐CSF‐pdHL2を、SalI酵素で消化して直線化し、エレクトロポレーションによりSp/ESF骨髄腫細胞内に安定にトランスフェクトした。クローンを、0.15μMのMTXを含む培地で選択した。サンドイッチELISA法により、クローン番号4が0.15mg/LのG‐CSF‐DDD2を産生することが示された。
【0151】
ローラーボトル中で増殖したバッチ培養からのG‐CSF‐DDD2精製
クローン番号4を、0.4μMのMTXを含有するハイブリドーマSFMを計20L含む34個のローラーボトルに拡大し、最終培養まで培養した。上清液を遠心分離により清澄して、濾過し(0.2μM)、1X結合緩衝液(10mMイミダゾール、0.5MNaCl、50mM
NaHPO、pH7.5)中へダイアフィルター濾過して濃縮した。濃縮物をIMACにより精製した。
【0152】
大腸菌におけるG‐CSF‐DDD2の構築および発現
G−CSF−DDD2は、大腸菌においても、微生物発酵により、可溶性タンパク質として発現された。コード配列を、G‐CSF‐DDD2‐pdHL2 DNAを鋳型として用いたPCRにより、コード配列を増幅した。アンプリマーを、NdeIおよびXhoI制限部位を用いて、IpET26b大腸菌発現ベクター内にクローニングした。18℃で12時間、100μMのIPTGを含むLB振盪フラスコでの誘導により、タンパク質をBL21pLysS宿主細胞において細胞内発現させた。可溶性G‐CSF‐DDD2を、IMACにより細胞溶解物から精製した。
【0153】
大腸菌におけるN‐DDD2‐G‐CSF(C17S)の構築および発現
DDD2配列とペプチドスペーサーを、G‐CSF(C17S)のN末端で融合することにより、別のG‐CSF‐DDD2モジュールを作製した。G‐CSF(C17S)は、17位の不対システイン残基がセリンで置換されている点で、野生型とは異なる。N‐DDD2‐G‐CSF(C17S)を大腸菌内で発現させ、IMACにより精製した。
【0154】
実施例11.CH3‐AD2‐IgG‐hR1と結合した4つのN‐DDD2‐G‐CSF(C17S)部分を含むDNLコンジュゲートであるhR1‐17Sの生成
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる精製後、CH3‐AD2‐IgG‐hR1と過剰のN‐DDD2‐G‐CSF(C17S)を酸化還元条件下で混合してhR1‐17Sを作製した。プロテインAで精製したhR1‐17SのSE‐HPLC分析では、比較的大きい分子サイズの主要ピークおよびショルダーが見られた(不掲載)。主要ピークの保持時間は、1つのIgGと4つのG‐CSFとのグループからなる共有結合複合体と一致した。ショルダーは、IgG‐G‐CSFコンジュゲートの非共有結合二量体によるものと思われた。クーマシーブルー染色を用いたSDS‐PAGE分析および抗G‐CSFイムノブロット分析では、非還元条件下において、作製物は、推定されるMW(〜260kDa)と一致するMrを有することが示された(不掲載)。還元条件下において、hR1‐17Sの3つの成分ポリペプチド(N‐DDD2‐G‐CSF(C17S)、重鎖‐AD2および軽鎖)を表すバンドが検出された(不掲載)。
【0155】
実施例12.配列変異体
特定の好適な実施形態において、サイトカイン‐MAb・DNL複合体に組み込まれるADおよびDDD配列は、以下の示すようなAD2およびDDD2のアミノ酸配列を含む:
DDD2
CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号10)
AD2
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号11)。
【0156】
しかし、別の実施形態において、配列変異体ADおよび/またはDDD部分をサイトカイン‐MAb・DNL複合体の構築に使用し得る。ADおよびDDDドメインの構造‐機能の関係が研究対象となってきた(例えば、Burns‐Hamuroら、2005、Protein Sci.、14:2982‐92;Carrら、2001、J.Biol.Chem.、276:17332‐38;Altoら、2003、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100:4445‐50;Hundsruckerら、2006、Biochem.J.、396:297‐306;Stokkaら、2006、Biochem.J.、400:493‐99;Goldら、2006、Mol.Cell、24:383‐95;Kindermanら、2006、Mol.Cell、24:397‐408(それぞれその全内容が参照により本明細書で援用される)を参照のこと)。
【0157】
例えば、Kindermanら(2006)は、AD‐DDD間の結合相互作用の結晶構造を調べ、ヒトDDD配列には、二量体形成またはAKAP結合において重要な保存アミノ酸残基(配列番号12の下線部)が数多く含まれると結論付けた(参照により本明細書で援用されるKindermanら(2006)の図1を参照のこと)。DDD配列の配列変異体の設計において、下線部のいかなる残基も変化させないことが望ましいと同時に、保存的アミノ酸置換は、二量体形成およびAKAP結合にあまり重要ではない残基に対して行われ得ることを、当業者は理解されよう。
タンパク質キナーゼA由来のヒトDDD配列
SHPPGTELLQGVLRQQPPDLVYFTRREARA(配列番号12)。
【0158】
Altoら(2003)は、様々なAKAPタンパク質のAD配列のバイオインフォマティック解析を行い、DDDに対して0.4nMの結合定数を有する、AKAP‐ISと呼ばれるRII選択的AD配列(配列番号17)を設計した。AKAP‐ISを、AKAPのPKAへの結合に対するペプチドアンタゴニストとして設計した。配列番号13において、AKAP‐IS配列中の残基のうち、置換によりDDDとの結合が低下する傾向にあるものに下線を付す。
AKAP‐IS配列
QIEYLKQIVDNAIQQA(配列番号13)
【0159】
同様に、Gold(2006)は、結晶構造解析およびペプチドスクリーニングを用いて、PKAのRIIアイソフォームに対し、RIアイソフォームに比べて5桁高い選択性を示すSuperAKAP‐IS配列(配列番号14)を開発した。下線を付した残基は、AKAP‐IS配列に比べて、RIIαのDDD部分との結合を増大させるアミノ酸置換の位置を示す。この配列において、N末端のQ残基には残基番号4を付し、C末端のA残基には残基番号20を付す。置換によりRIIαに対する親和性に影響を与え得た残基は、8、11、15、16、18、19および20であった(Goldら、2006)。特定の別の実施形態において、SuperAKAP‐IS配列をAKAP‐ISのAD部分の配列で置換して、サイトカイン‐MAb・DNL構築物を調製し得ると考えられる。AKAP‐ISのAD配列で置換し得る他の代替配列を、配列番号15〜17で示す。AKAP‐IS配列に対する置換には下線が付されている。配列番号11で示されるAKAP‐IS配列と同様に、AD部分にも、配列番号11で示されるようなN末端残基システインおよびグリシンならびにC末端残基グリシンおよびシステインがさらに含まれ得ることが予想される。
SuperAKAP‐IS
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号14)
代替AKAP配列
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号15)
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号16)
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号17)。
【0160】
Stokkaら(2006)もまた、配列番号18〜20で示すような、AKAPのPKAへの結合に対する競合ペプチドを開発した。このペプチドアンタゴニストは、Ht31(配列番号18)、RIAD(配列番号19)およびPV‐38(配列番号20)と称された。Ht31ペプチドが、PKAのRIIアイソフォームに対してより高い親和性を示したのに対し、RIADおよびPV‐38は、RIに対してより高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号18)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号19)
PV‐38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号20)。
【0161】
Hundsruckerら(2006)は、AKAPのPKAへの結合に対するさらに別の競合ペプチドを開発し、このペプチドは、RII型のPKAのDDDに対して0.4nMという低い結合定数を有していた。様々なAKAPアンタゴニストペプチドの配列が、Hundsruckerら(参照により本明細書で援用される)の表1に記載されている。異なるAKAPタンパク質のADドメイン間で高度に保存されていた残基を、AKAP‐IS配列に関して下線を付すことにより、以下に示す(配列番号13)。残基は、C末端アラニン残基を加えれば、Altoら(2003)により確認されたものと同じである(参照により本明細書で援用されるHundsruckerら(2006)の図4を参照のこと)。RIIのDDD配列に対して特に親和性の高いペプチドアンタゴニストの配列を、配列番号21〜23で示す。
AKAP‐IS
QIEYLKQIVDNAIQQ(配列番号13)
AKAP7δ‐wt‐pep
PEDAELVRLSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号21)
AKAP7δ‐L304T‐pep
PEDAELVRTSKRLVENAVLKAVQQY(配列番号22)
AKAP7δ‐L308D‐pep
PEDAELVRLSKRDVENAVLKAVQQY(配列番号23)。
【0162】
Carrら(2001)は、ヒトおよび非ヒトタンパク質由来の異なるAKAP結合DDD配列間の配列相同性の程度を調べ、異なるDDD部分間で最も高度に保存されていると思われる、DDD配列中の残基を同定した。これらを、配列番号12のヒトPKARIIαのDDD配列に関して下線を付すことにより、以下に示す。特に保存されていた残基は、さらにイタリック体で示す。これらの残基は、Kindermanら(2006)がAKAPタンパク質との結合に重要であると示唆したものと一部重複するが、同一ではない。
HIIPGLELLQGYTEVLRQPDLVEFAVEYFTRA(配列番号12)。
【0163】
一般に、異なるタンパク質由来のDDDおよびAD配列中で高度に保存されているこれらのアミノ酸残基は、アミノ酸置換を行う際にも変わらないことが望まれ得る残基であり、一方、それほど高度に保存されていない残基は、容易に変化させて本明細書に記載のADおよび/またはDDD配列の配列変異体を作製し得ることを、当業者は理解されよう。
【0164】
DDDおよび/またはAD部分の配列変異体に加え、ある実施形態において、抗体とAD配列とを繋ぐ抗体部分またはリンカーペプチド配列内に、配列変異を導入することが望まれ得る。一具体例では、上記20‐2b重鎖のC末端残基は、本来のリジン残基から変化したものである。野生型重鎖のC末端配列を、考え得る3つの融合タンパク質配列変異体と共に、配列番号24〜27で示す。
WT
QKSLSLSPGK(配列番号24)
(L)
QKSLSLSPGLGSGGGGSGGCG(配列番号25)
(A)
QKSLSLSPGAGSGGGGSGGCG(配列番号26)
(−)
QKSLSLSPGGSGGGGSGGCG(配列番号27)。
【0165】
重鎖定常領域配列中の野生型C末端リジンをロイシンで置換することにより、hA20(L)と称する配列変異体を作製した。20‐2b構築物形成のための上記例に記載のように、hA20(L)‐2b・DNL構築物を作製して、ロイシン置換配列を組み込んだ。変異体の薬物動態特性を比較するために、様々なDNL構築物注射後の1、2、3および4日のマウス血清試料を採取した。各時点におけるマウス血清中のインターフェロン血清中濃度は、20(L)‐2b構築物の方が20‐2b構築物よりも約2倍高いと測定された。しかし、hA20IgGの血清中濃度の比較では、20(L)‐2bおよび20‐2b構築物間における実質的な差は見られなかった。野生型リジンのロイシンへの置換が、抗体IgG部分由来のAD部分のタンパク質分解切断の低下をもたらし、また、タンパク質分解により複合体からIFNが失われ、次いで、非コンジュゲートIFNの血清からのクリアランス速度が、DNL構築物と結合したIFNのクリアランス速度に比べて高くなった、と結論付けられる。DNL構築物の抗体部分またはリンカー部分におけるこれらのおよびその他のアミノ酸置換は、得られるDNL構築物の治療的および/または薬物動態的特性を増強するために使用され得ることを、当業者は理解されよう。
【0166】
本明細書において開示および特許請求されるすべての組成物および方法は、本開示を踏まえれば、必要以上の実験を行うことなく作製および使用することができる。組成物および方法は、好適な実施形態という形で記載されているが、本明細書に記載の、組成物および方法に対して、ならびに方法の個々の段階においてまたは一連の段階において、本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく変更を加え得ることは、当業者にとって明らかである。より具体的には、化学的かつ生理学的に類似した特定の薬剤を、本明細書に記載の薬剤と置き換え得るが、同一または同様の結果が得られるであろう。当業者に明らかなこのような類似の代替および修正はすべて、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲および概念に含まれるものと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン‐抗体・DNL(ドック・アンド・ロック)複合体であって、
a)タンパク質キナーゼAの二量体化/ドッキングドメイン由来のペプチド配列を有するDDD(二量体化/ドッキングドメイン)部分に付加されたサイトカイン部分と、
b)AKAP(A‐キナーゼアンカータンパク質)のアンカードメイン由来のペプチド配列を有するAD(アンカードメイン)部分に付加された抗体部分と
を含み、前記DDD部分が、前記AD部分と結合する二量体を形成して、前記複合体を形成する、サイトカイン‐抗体・DNL複合体。
【請求項2】
前記DDDとADとの間にジスルフィド結合をさらに含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記DDD部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記AD部分が、配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記抗体部分が、IgG抗体および抗原結合抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記抗体部分がIgG抗体であり、かつ前記IgG抗体の各重鎖のC末端がAD部分に付加されている、請求項6に記載の複合体。
【請求項7】
各AD部分が2つのDDD部分と結合し、かつ前記複合体が4つのサイトカイン部分を含む、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記サイトカイン部分が、インターフェロン(IFN)‐α2b、G‐CSFおよびエリスロポエチンからなる群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記IgG重鎖および前記AD部分が第一の融合タンパク質を形成し、かつ前記サイトカイン部分および前記DDD部分が第二の融合タンパク質を形成する、請求項7に記載の複合体。
【請求項10】
前記サイトカイン‐抗体・DNL複合体が、前記サイトカイン単独およびペグ化形態の前記サイトカインよりも長い血中半減期を示す、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
前記サイトカイン‐抗体・DNL複合体が、リンパ腫細胞に対して、前記サイトカイン部分単独、前記抗体部分単独、非コンジュゲートサイトカイン部分と非コンジュゲート抗体部分との組合せおよびペグ化形態の前記サイトカイン部分よりも大きなインビボ効果を示す、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記抗体部分がhA20IgG抗体であり、かつ前記サイトカイン部分がヒトIFNα2bである、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
癌、自己免疫疾患および感染症からなる群より選択される疾患の治療方法であって、
a)請求項1によるサイトカイン‐抗体・DNL複合体を得る段階と、
b)前記複合体を、前記疾患を有する被検体に投与する段階と
を含む方法。
【請求項14】
前記疾患が癌であり、かつ前記抗体部分が腫瘍関連抗原(TAA)と結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
前記TAAが、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF‐1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a‐e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEACAM‐6、B7、フィブロネクチンED‐B、H因子、FHL‐1、Flt‐3、葉酸受容体、GROB、HMGB‐1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様成長因子‐1(ILGF‐1)、IFN‐γ、IFN‐α、IFN‐β、IL‐2、IL‐4R、IL‐6R、IL‐13R、IL‐15R、IL‐17R、IL‐18R、IL‐6、IL‐8、IL‐12、IL‐15、IL‐17、IL‐18、IL‐25、IP‐10、MAGE、mCRP、MCP‐1、MIP‐1A、MIP‐1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、PAM4抗原、NCA‐95、NCA‐90、Ia、HM1.24、EGP‐1、EGP‐2、HLA‐DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、トムソン‐フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、TNF‐α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5および癌遺伝子産物からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体部分が、hR1(抗IGF‐1R)、hPAM4(抗MUC1)、hA20(抗CD20)、hA19(抗CD19)、hIMMU31(抗AFP)、hLL1(抗CD74)、hLL2(抗CD22)、hMu‐9(抗CSAp)、hL243(抗CD74)、hMN‐14(抗CEA)、hMN‐15(抗CEA)、hRS7(抗EGP‐1)および hMN‐3(抗CEA)からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記DDD部分が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ前記AD部分が配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記複合体がIgG抗体を含み、かつ前記IgG抗体の各重鎖のC末端がAD部分に付加される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
各AD部分が2つのDDD部分と結合し、かつ前記複合体が4つのサイトカイン部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
前記サイトカイン部分が、インターフェロン(IFN)‐α2b、G‐CSFおよびエリスロポエチンからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
前記サイトカイン‐抗体・DNL複合体が、リンパ腫細胞に対して、前記サイトカイン部分単独、前記抗体部分単独、非コンジュゲートサイトカイン部分と非コンジュゲート抗体部分との組合せおよびペグ化形態の前記サイトカイン部分よりも大きなインビボ効果を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体部分がhA20IgG抗体であり、かつ前記サイトカイン部分がヒトIFNα2bである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
a)請求項1によるサイトカイン‐抗体・DNL複合体を得る段階と、
b)前記複合体を被検体に投与する段階と
を含む、サイトカイン送達方法。
【請求項24】
前記疾患が癌であり、かつ前記抗体部分が腫瘍関連抗原(TAA)と結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項25】
前記TAAが、炭酸脱水酵素IX、CCCL19、CCCL21、CSAp、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、IGF‐1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a‐e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、AFP、PSMA、CEACAM5、CEACAM‐6、B7、フィブロネクチンED‐B、H因子、FHL‐1、Flt‐3、葉酸受容体、GROB、HMGB‐1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、インスリン様成長因子‐1(ILGF‐1)、IFN‐γ、IFN‐α、IFN‐β、IL‐2、IL‐4R、IL‐6R、IL‐13R、IL‐15R、IL‐17R、IL‐18R、IL‐6、IL‐8、IL‐12、IL‐15、IL‐17、IL‐18、IL‐25、IP‐10、MAGE、mCRP、MCP‐1、MIP‐1A、MIP‐1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、PAM4抗原、NCA‐95、NCA‐90、Ia、HM1.24、EGP‐1、EGP‐2、HLA‐DR、テネイシン、Le(y)、RANTES、T101、TAC、Tn抗原、Thomson‐Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、TNF‐α、TRAIL受容体(R1およびR2)、VEGFR、EGFR、P1GF、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5および癌遺伝子産物からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体部分が、hR1(抗IGF‐1R)、hPAM4(抗MUC1)、hA20(抗CD20)、hA19(抗CD19)、hIMMU31(抗AFP)、hLL1(抗CD74)、hLL2(抗CD22)、hMu‐9(抗CSAp)、hL243(抗CD74)、hMN‐14(抗CEA)、hMN‐15(抗CEA)、hRS7(抗EGP‐1)およびhMN‐3(抗CEA)からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記DDD部分が配列番号10のアミノ酸配列を含み、かつ前記AD部分が配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記複合体がIgG抗体を含み、かつ前記IgG抗体の各重鎖のC末端がAD部分に付加される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
各AD部分が2つのDDD部分と結合し、かつ前記複合体が4つのサイトカイン部分を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項30】
前記サイトカイン部分が、インターフェロン(IFN)‐α2b、G‐CSFおよびエリスロポエチンからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体部分がhA20IgG抗体であり、かつ前記サイトカイン部分がヒトIFNα2bである、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−517684(P2011−517684A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504101(P2011−504101)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039619
【国際公開番号】WO2009/126558
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510116495)アイビーシー ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】