説明

薬物誘導性の心毒性の代謝バイオマーカー

本発明は、医薬品、環境要因、化合物および生物療法に対する心臓代謝応答を評価するための方法およびバイオマーカーを提供する。本発明は、心毒性である医薬品、環境要因、化合物および生物療法への露出に応答して、初代心筋細胞、心筋細胞前駆細胞、成人の心臓に由来するクローン心筋細胞、不死化心筋細胞、ヒト胚性幹細胞(hESC)由来の心筋細胞、ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)由来の心筋細胞、または心筋細胞特異的マーカーを示すあらゆる細胞によって分泌される細胞代謝産物を同定するための方法を提供する。心筋細胞によって分泌される細胞代謝産物は心毒性の代謝サインを提供し、医薬品、鉛化合物および候補薬物化合物、生物製剤、ならびにその他の治療法の心毒性の影響をスクリーニングするために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年10月6日に出願された米国仮特許出願第61/249,150号(この全体は、参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、医薬品、生物製剤ならびにその他の化合物および環境要因の心毒性の影響を識別するための方法およびバイオマーカーを提供する。本発明は特定的に、心毒性化合物へのインビトロでの露出に応答して心筋細胞が分泌する低分子量代謝産物を同定するための方法を提供する。化合物、医薬品、生物製剤または環境要因と接触した心筋細胞によって生成されて分泌される低分子量代謝産物を測定することによって心毒性を予測する候補バイオマーカーを同定するためのメタボロミクスの方法が提供される。本明細書においては、心毒性の影響に対する予測バイオマーカーも同定されて提供される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
心毒性は、医薬鉛化合物の減少、およびその後の市場からのFDA認可薬物の撤回の主要な原因の1つとなっている。安全な薬物開発をより一層可能にし、かつ臨床前の薬物の失敗に関連して急激に増加する経済的損失の低減を助けるために、心毒性予測に対する特異性および正確性を提供するスクリーニング法の開発が必要である。
【0004】
現在、心毒性は主に、パッチ−クランプ手順を用いて心筋細胞における活動電位持続時間(action potential duration:APD)のインビトロでの変化を測定することによって推測することしかできない。電気生理学アッセイによって非常に貴重な知識がもたらされるにもかかわらず、パッチクランプ手順は非常に時間がかかってスループットが低い。簡単に言うと、医薬化合物に対するAPD応答は一度に1個の細胞が測定されるものであり、たとえばPatchExpress(登録商標)などのいわゆる「高スループット」系であっても、1回のアッセイ当たり数十個の細胞の記録しかできない。しかし最も重要なのは、薬理学的心毒性のメカニズムが薬物全体で同じではないことである。つまり、電気生理学記録は、複数の化合物の心毒性を予測する能力が限られている。ある特定の化合物は主に心臓のイオンチャネルの適切な機能を阻害することによってその毒性を発揮する(これはAPDの変化につながるため、従来のアッセイを用いて検出できる)が、他の化合物は心筋細胞代謝を乱すことが知られており、これは現在アッセイされていない。たとえば、癌治療法に用いられる化学療法およびキナーゼ阻害剤の一次毒性は、心筋細胞における代謝指標の顕著な変化をもたらす。メカニズムに関わらず、心毒性は最終的に、心筋細胞からの低分子量分子の総合的コレクションに変化を与える。
【0005】
代謝産物の合成、処理および存在量の調節不全は、心毒性に関連付けられてきた。化学療法および抗腫瘍レジメンは、酸化的リン酸化への干渉およびATP合成の阻害を含むミトコンドリア機能、筋原線維の構造、ならびにエネルギー代謝のその他の局面の顕著な変化を伴う。(非特許文献1)。癌薬物の心毒性に関係するその他の代謝プロセスは、脂質過酸化、タンパク質およびDNAの酸化、ならびにグルタチオンおよびピリジンヌクレオチド還元当量の減少を含む。心毒性の副作用は医薬化合物に限らない。なぜならモノクローナル抗体療法および生物製剤による心毒性が観察されているからである。パクリタキセル処理レジメンに関連するHER2/ERBB2モノクローナル抗体およびトラスツズマブなどの治療用抗体は、成人心筋細胞に対して相乗効果的悪影響を有することが示されている。(非特許文献2)。心臓の安全性に対する生物製剤の有害な影響は、併用療法に関わらず一般的になっている。たとえば、トラスツズマブを用いる患者の11パーセントに心臓毒性が発生する(非特許文献3)。
【0006】
本技術分野においては、医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因の心毒性を信頼性高く決定するためのインビトロの方法がなおも必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】TakemuraおよびFugiwara、Progress in Cardiovascular Diseases(2007)49(5):330〜352
【非特許文献2】Pentassugliaら、Experimental Cell Research(2007)313:1588〜1601
【非特許文献3】Guarneriら、Journal of Clinical Oncology(2006)24:4107〜4115
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物または環境要因に応答して、好ましくは心筋細胞またはhESC由来もしくはヒトiPS由来の心臓特異的細胞から分泌される複数の低分子量分子を同定するための試薬および方法を提供する。加えて本発明は、特定の実施形態においては、医薬品、生物製剤、その他の化合物または環境要因に応答して心筋細胞によって生成される特定の代謝産物を、他の実施形態においては、医薬品、生物製剤、その他の化合物または環境要因に応答して心筋細胞によって生成される複数の細胞代謝産物を同定するための試薬および方法を提供することによって、たとえば特定の医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因への露出に応答して、心毒性の結果として生成され分泌される特定の代謝産物の代謝プロファイルをも提供する。よって本発明は、医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因の心毒性の影響を、こうした薬剤にインビトロで接触したヒト心筋細胞のメタボロミクス分析によって同定された低分子量代謝産物のプロファイルを用いて予測するための試薬および方法を提供する。
【0009】
低分子量代謝産物は、たとえ少量であっても当該技術分野において公知の方法および技術によって感度良く検出でき、その方法は最も特定的には液体クロマトグラフィ高分解能質量分析(liquid chromatography high resolution mass spectrometry:LC−MS)および/またはエレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(electrospray ionization time of flight mass spectrometry:ESI−TOF)の変形を含む。本明細書に開示されるとおり、医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因に応答して心筋細胞によって生成される代謝産物を検出するためにこうした方法を適用することによる感度は、当該技術分野において公知のもっと頑強性の少ない方法に比べて、心毒性検出の結果を改善させる。本明細書に開示される本発明の方法の利点は、それらが心毒性応答の直接的生成物、すなわち医薬品、環境要因、化合物および/または生物療法からの侵入に応答して心筋細胞によって生成される代謝産物を提供することを含む。本明細書に開示される本発明は、有利には心筋細胞を特定の医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因にインビトロで接触させることによって生成される代謝産物プロファイルも提供する。これらのプロファイルは、候補バイオマーカーの非限定的コレクションで構成され、心毒性を示す生化学的代謝サインを提供する。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、特定の医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因の心毒性に関連する代謝産物を検出するために、心筋細胞を用いるインビトロスクリーニングのための試薬および方法を提供する。代謝産物バイオマーカーのパターンおよびコレクションは、こうした心筋細胞が、特定の医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因との接触によって生成される心毒性に対して特徴的な代謝応答を有することを確証する。
【0011】
提供される方法の実施は、心筋細胞メタボロームを示し、疾患および心毒性応答に対する潜在的ヒトバイオマーカーを含む。これらのバイオマーカーは、心筋細胞を特定の医薬品、環境要因、化合物および生物療法に接触させることによって同定される。本明細書に示される結果は、心筋細胞を公知の心毒性薬物に露出することによって異なる代謝経路に顕著な変化が誘発されたことを示し、これは心臓毒として公知の活性に一致し、さらに、特徴付けされていない医薬品、生物製剤、ならびにその他の化合物および環境要因とともに本発明の方法を実施することによってこれらの化合物の示すあらゆる心毒性の程度を決定することの見本を提供する。
【0012】
本発明の特定の実施形態は、以下の特定の好ましい実施形態のより詳細な説明および請求項によって明らかになるだろう。
【0013】
本発明のこれらの目的および特徴ならびにその他の目的および特徴は、図面とともに与えられる以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、心臓アルファアクチンに対する免疫組織化学的(immunohistochemical:IHC)処理を受けた心臓細胞の写真である。アルファアクチンのIHC染色によって、ドキソルビシン、パクリタキセルおよびタモキシフェンに露出した細胞が心臓由来であることを確認した。心毒性の予測代謝バイオマーカーの同定のために、心臓細胞が薬物処理を受けた。
【図2】図2は、トリパンブルー染料含有物によって測定された、抗腫瘍薬物への露出に応答したヒト心筋細胞の細胞死のパーセンテージを示すグラフである。
【図3】図3は、0.05偽発見率(False Discovery Rates:FDR)におけるドキソルビシン(doxorubicin:DOX)、パクリタキセル(paclitaxel:PAC)、およびタモキシフェン(tamoxifen:TAM)で処理したヒト心筋細胞における異なる代謝産物を表す、統計的に有意な質量特徴(mass features)を示すベン図である。強い心毒性物質DOXおよびPACに対して73の特徴が共通していた。
【図4A】図4Aは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(ion extracted chromatograms:EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(controls)(黒の実線)およびドキソルビシン培地(media)(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4B】図4Bは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4C】図4Cは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4D】図4Dは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4E】図4Eは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4F】図4Fは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4G】図4Gは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4H】図4Hは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4I】図4Iは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4J】図4Jは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4K】図4Kは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4L】図4Lは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4M】図4Mは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4N】図4Nは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4O】図4Oは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4P】図4Pは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4Q】図4Qは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4R】図4Rは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4S】図4Sは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4T】図4Tは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4U】図4Uは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4V】図4Vは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4W】図4Wは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4X】図4Xは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4Y】図4Yは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4Z】図4Zは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AA】図4AAは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AB】図4ABは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AC】図4ACは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AD】図4ADは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AE】図4AEは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AF】図4AFは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図4AG】図4AGは、ヒト心筋細胞において検出された統計的に有意な質量特徴(すなわち心毒性の候補代謝産物バイオマーカー)からのイオン抽出クロマトグラム(EICs)であり、26μMのドキソルビシンで処理したヒト心筋細胞(点線)を未処理の対照(黒の実線)およびドキソルビシン培地(線の指示についてはグラフ内の凡例を参照)と比較したもの、ならびに15μMのパクリタキセルで処理した心筋細胞(破線)を未処理の対照(黒の実線)および培地(凡例を参照)と比較したものを示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、およびタモキシフェン(TAM)。
【図5】図5は、さまざまな実験処理後のメタボロミクス特徴の階層的クラスター化を示す図である。NIPALS Principal Cluster Analysis(PCA)は、類似の傾向を示す(クラスター化する)強い心毒性物質(DOX、PAC)を、弱い心毒性物質(TAM)と比較して示す。ドキソルビシン(DOX)、パクリタキセル(PAC)、タモキシフェン(TAM)、およびハーセプチン(Herceptin:HER)。
【図6】図6は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M203T507のイオン抽出クロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体における対称ジメチルアルギニンまたは非対称ジメチルアルギニンの蓄積の統計的に有意な減少を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図7】図7は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の質量特徴M194T69のイオン抽出クロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地における(R)−N−メチルサルソリノールまたは(S)−N−メチルサルソリノールの欠乏を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図8】図8は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M192T522の抽出イオンクロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地における3−メチルヒスチジンまたは1−メチルヒスチジンの蓄積の統計的に有意な減少を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図9】図9は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M188T354のイオン抽出クロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地における3−ピリジンブタン酸、ノルサルソリノールまたはフェニルアラニンの蓄積の統計的に有意な増加を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図10】図10は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M148T497_1のイオン抽出クロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地におけるN−アセチルセリン、グルタミン酸、L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩、またはO−アセチルセリンの蓄積の統計的に有意な増加を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図11】図11は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M145T109の抽出イオンクロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地におけるエリトリトールまたはトレイトールの蓄積の統計的に有意な減少を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図12】図12は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M134T504の抽出イオンクロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地におけるアスパラギン酸またはイミノジアセテートの蓄積の統計的に有意な減少を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【図13】図13は、ドキソルビシン(26uM)で24時間処理し、次いでパクリタキセル(15uM)で48時間処理した心臓前駆細胞の細胞培養培地中の統計的に有意な質量特徴M134T504の抽出イオンクロマトグラムである。このEICは、処理された心臓前駆体の細胞培養培地におけるアスパラギン酸またはイミノジアセテートの蓄積の統計的に有意な減少を示している。Y軸は強度、X軸は秒による時間である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明をより特定的に説明しており、本明細書に示される実施例は例示的なものとしてのみ意図される。なぜなら、実施例における多数の修正および変形が当業者に明らかになるためである。
【0016】
本明細書の記載およびそれに続く請求項全体にわたって用いられる「a」、「an」および「the」の意味は、状況が明らかに別様を示さない限り、複数形の言及を含む。本明細書において用いられる用語は、本発明の状況および各用語が用いられる特定の状況において、一般的に当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明の説明に関して実務家(practioner)に追加のガイダンスを提供するために、以下においていくつかの用語をより特定的に定義している。特に、本明細書において用いられる「細胞(cell)」という用語は単数形であっても複数形であってもよいが、好ましい実施形態においては複数形である。
【0017】
一実施形態において、本発明は、心毒性化合物への露出の細胞的および/または生化学的影響を定めるための試薬および方法を含む。本明細書において用いられる「細胞代謝産物(cellular metabolite)」またはその複数形「細胞代謝産物(cellular metabolites)」という用語は、細胞によって分泌される低分子量分子を示す。一般的に、代謝産物のサイズは約55ダルトンから約1500ダルトンの範囲である。細胞代謝産物は、次のタイプの低分子量分子を含んでもよいがそれに限定されない:酸、塩基、脂質、糖、グリコシド、アミン、有機酸、脂質、アミノ酸、オキシム、エステル、ジペプチド、トリペプチド、脂肪酸、コレステロール、オキシステロール、グリセロール、ステロイド、および/またはホルモン。代替的な実施形態において、細胞代謝産物は心筋細胞、ヒト胚性幹細胞(human embryonic stem cell:hESC)由来の心筋細胞、またはヒト誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS)由来の心筋細胞から分泌される。好ましい実施形態において、細胞代謝産物は、次の低分子量分子を含むがそれに限定されない:トリエチルアミン;NN−ジエチルアミン;ヘキシルアミン;p−グルコシルオキシマンデロニトリル;(s)−4−ヒドロキシマンデロニトリルベータ−D−グルコシド;13,14−ジヒドロPGE1(プロスタグランジンE1);7−ケトコレステロール;1,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン;ホルモノネチン7−O−グルコシド−6’’−O−マロン酸塩;イソクロロゲン酸b;13−ジカフェオイルキナ酸;3−ヘキサプレニル−4−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸;2−フェニルグリシン;(E)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;(Z)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;ベタイン;2−エチルヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸塩;グリセロホスホコリン;N−アセチルガラクトサミン;CGP52608;ビオチン;DL−ホモシスチン;エテノデオキシアデノシン;キューイン;N−アセチルアスパルチルグルタミン酸;テトラヒドロコルチゾン;環状ホスファチジン酸;2−メトキシエストロン3−グルクロニド;ジアシルグリセロール;ケルセチン3−(2G−キシロシルルチノシド);ナイアシンアミド;アスパラギン酸;イミノジアセテート;エリトリトール;D−トレイトール;N−アセチルセリン;L−グルタミン酸;L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド;2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩;O−アセチルセリン;DL−グルタミン酸塩;DL−グルタミン酸;2−アミノグルタル酸;グルタミン酸塩;D−グルタミン酸;3−ピリジンブタン酸;ノルサルソリノール;D−フェニルアラニン;D−アルファ−アミノ−ベータ−フェニルプロピオン酸;L−フェニルアラニン;3−メチルヒスチジン;1−メチルヒスチジン;(R)−N−メチルサルソリノール;(S)−N−メチルサルソリノール;対称ジメチルアルギニン;または非対称ジメチルアルギニン。
【0018】
本明細書において用いられる「異なって(differentially)生成された...1つまたは複数の細胞代謝産物を同定する」という語句は、試験化合物に露出させた細胞と未処理(すなわち対照)の細胞との比較を含むがそれに限定されない。実験細胞と対照細胞との間の、細胞が分泌した低分子量分子集団の変動の検出または測定がこの定義に含まれる。本明細書において用いられる「分泌する(secrete)」、「分泌する(secreting)」および「分泌(secretion)」という用語は、細胞が生成した細胞代謝産物を細胞の外側に移動させるあらゆる細胞プロセスを包含することが意図される。代謝産物もしくは小分子、特に細胞によって分泌、排出もしくは消費される種、または細胞を通って流される代謝産物は、病理学的または化学的侵入に対する細胞応答の機能的メカニズムに関与する。代謝産物はアポトーシスまたはネクローシスの結果として生成されることもある。
【0019】
好ましい実施形態においては、処理細胞対未処理細胞における低分子量分子の変化のプロファイルを定めることによって、細胞または細胞活性の変化を測定する。異なる量、タイプもしくは濃度、持続時間または強度の心毒性化合物または潜在的心毒性化合物で処理した細胞同士の比較も含まれる。
【0020】
たとえば糖、有機酸、アミノ酸、脂肪酸、および低分子量化合物などの細胞代謝産物の変化が測定されて、心筋細胞における生化学経路に対する特定の医薬品、環境要因、化合物および生物療法の影響を評価するために用いられる。スクリーニングされる低分子量化合物(すなわち代謝産物)は、炎症、消炎、血管拡張、神経保護、脂肪酸代謝、コラーゲンマトリックス分解、酸化ストレス、抗酸化活性、DNA複製および細胞周期調節、メチル化、ヌクレオチド、炭水化物、アミノ酸および脂質の生合成などを含むがそれに限定されないさまざまな生物活性に応答して分泌される。分泌される低分子量分子は、インビボの生化学反応の前駆体、中間体および/または最終生成物である。分子の特定の部分集合における変化は特定の生化学経路に対応し、よって心毒性の生化学的影響を明らかにする。
【0021】
本明細書に記載される「心筋細胞(cardiomyocyte)」または「心筋細胞(cardiomyocyte cell(s))」という用語は、初代心筋細胞、心筋細胞前駆細胞、成人の心臓に由来するクローン心筋細胞、不死化心筋細胞、ヒト胚性幹細胞(hESC)由来の心筋細胞、ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)由来の心筋細胞、または心筋細胞特異的マーカーを示すためにその細胞が心筋細胞特異的もしくは心筋細胞由来であることを病理学者、科学者もしくは検査技師が認識するようなあらゆる細胞を示す。
【0022】
本明細書に記載される「心毒性」という用語は、心筋症、心疾患ならびに/または異常な心臓病態および生理機能を誘導する物質または処理、特に医薬品、生物製剤ならびにその他の化合物および環境要因を示す。本明細書において用いられるこの用語の定義に包含される心毒性の例は、薬物処理レジメンに起因するか、またはその結果である可能性のある、医者、心臓専門医または医学研究者によって認識される心臓異常を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、「化合物」または「試験化合物」という用語は、医薬品、環境要因、化合物および生物療法を含むがそれに限定されず、そこには抗体に基づく処理、ワクチン、または組み換えタンパク質および酵素が含まれる。特に好ましい実施形態において、心毒性化合物はタモキシフェン、ドキソルビシンおよびパクリタキセルを含む。さらなる実施形態においては、心毒性の可能性のある化合物を、すでに公知である心毒性化合物に対する代謝産物の類似性についてスクリーニングする。
【0024】
「心筋症」という用語は、心筋の炎症および心機能の低下を含むがそれに限定されない心疾患を示す。心筋症は原発性または続発性に分類でき、さらに拡張型、肥大型および拘束型心筋症を含み得る。心臓腔は拡張および伸展される可能性があり(例、心臓拡張)、正常にポンピングしないことがある。心臓の電気伝導において、不整脈および撹乱と呼ばれる異常な心拍リズムも起こり得る。この状態においては、左室の筋肉量が大きくなるかまたは「肥大する」。
【0025】
質量分析に基づくプラットフォームは、心毒性の候補バイオマーカーとしてペプチドおよびタンパク質を選択するための手段として提案されていたが、小分子代謝産物は対象ではなかった。たとえば、脳ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)およびN末端proBNP(N−terminal proBNP:NTproBNP)は、心不全の臨床的バイオマーカーである。圧力過負荷に応答して心室にBNPホルモンおよび不活性NTproBNPが主に分泌されるため、ラットにおける薬物性心肥大のマーカーとして研究されている。(Bernaら、2008,Anal Chem 80:561−566を参照)。加えて、ミオシンのサブユニットの1つの23kDaアイソフォームであるミオシン軽鎖1(myosin light chain 1:Myl3)およびトロポニンは、薬物性の心毒性を予測するための心臓ネクローシスのバイオマーカーとして提案されている(Adamcovaら、2005,Expert Opinion on Drug Safety 4(3):457−472を参照)。当該技術分野において、こうしたペプチドおよびタンパク質は、心筋症に伴う心筋の変性変化の産物であると認識されている。
【0026】
心筋細胞における心毒性に対する候補バイオマーカーを同定するためのメタボロミクスアプローチの有用性を示すために本明細書で用いられる化合物のうちのあるものは、公知の心毒性化合物である。つまりこれらの化合物は、心毒性に対するメタボロミクスマーカーを検出するための試薬および方法を説明するためのものであり、ドキソルビシン、パクリタキセルおよびタモキシフェンを含む。よって、複数の薬物処理レジメンへの露出に応答して心筋細胞が分泌する低分子量分子代謝産物の評価は、これらの臨床的特徴によって合理化され得る心毒性の候補バイオマーカーの新規のプロファイルを提供する。
【0027】
本明細書において用いられる「対照細胞」という用語は一般的に、心臓に由来しない細胞型を示す。好ましい実施形態において、対照細胞はヒト線維芽細胞を含む。
【0028】
本明細書において用いられる「対照心筋細胞」という用語は、対照条件に露出された心筋細胞または心筋細胞由来の細胞を示す。
【0029】
本明細書において用いられる「対照セット」という用語は、当業者が対照処理と認識するような条件に特定の細胞型を露出させることを示す。好ましい実施形態において、これは次の実験条件を含むがそれに限定されない:心臓細胞の無毒性化合物への露出、または非心臓細胞の心毒性化合物への露出。反対に、本明細書において用いられる「実験セット」は、たとえば特定の医薬品、生物製剤ならびにその他の化合物および環境要因などの対象化合物(例、試験化合物)に露出させた心臓特異的細胞を含む。
【0030】
本明細書において用いられる「減算する」という用語は、実験細胞および対照細胞によって分泌された共通の細胞代謝産物を同定した後、特定の心毒性応答の代謝サインまたはバイオマーカープロファイルからそれら共通の代謝産物を選択的に除去することを示す。
【0031】
心筋細胞が分泌する低分子量代謝産物を同定するとき、熟練した技術者または科学者は、たとえば細胞上清に分泌および/もしくは放出されたか、ならびに/または細胞抽出物中に存在する代謝産物などによって、ならびに分泌された分子の評価のために利用可能なさまざまなその他の方法によって、こうした代謝産物を測定できることを理解するだろう。同定される代謝産物は、細胞が排出する廃棄生成物であってもよい。
【0032】
「試験化合物への露出」という語句は、個々の化合物に別々に露出されるか、または複数の化合物に順次および/もしくは集合的に露出される細胞サンプルを示してもよい。一実施形態において、細胞は個々の試験化合物に露出される。さらなる実施形態において、細胞は複数の化合物に露出される。代替的な実施形態において、細胞はいずれの化合物にも露出されない(すなわち対照)。細胞は試験化合物の存在下または不在下で培養されてもよい。
【0033】
本明細書において用いられる「共通性のあるものを選択する」という語句は、2セット以上の細胞に共通して生成される分泌代謝産物を示す。よってたとえば、さまざまな細胞セット中の代謝産物が同定され、比較されて、共通のものが共通性のためにさらに選択されてもよい。
【0034】
本明細書において用いられる「物理的分離方法」という用語は、本発明の方法に従って医薬品、環境要因、化合物および生物療法に露出された細胞が生成する低分子量分子の変化および差異のプロファイルを生成するために十分な、当業者に公知のあらゆる方法を示す。特定の実施形態において、物理的分離方法は、酸、塩基、脂質、糖、グリコシド、アミン、有機酸、脂質、アミノ酸、オキシム、エステル、ジペプチド、トリペプチド、脂肪酸、コレステロール、オキシステロール、グリセロール、ステロイド、および/またはホルモンを含むがそれに限定されない低分子量分子の検出を可能にする。特定の実施形態において、この分析は液体クロマトグラフィ高分解能質量分析(LC−MS)および/または液体クロマトグラフィ/エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(LC−ESI−TOF−MS)によって行なわれるが、本明細書に示される低分子量化合物は、代替的な分光法または当該技術分野において公知の他の方法を用いても検出できることが理解されるだろう。たとえば核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)は、本発明の低分子量化合物を同定し得る別の方法である。当該技術分野における他の生体系にも類似の分析が適用されており(Wantら、2005,Chem Bio Chem 6:1941−51)、生体液において検出可能な疾患または毒性応答のバイオマーカーを提供している(Sabatineら、2005,Circulation 112:3868−875)。異なる機器は異なる低分子量化合物を検出し得ることが理解される。よってたとえば、LC−MSおよび/またはLC−ESI−TOF−MSによってもたらされたプロファイルは、NMRによってもたらされたプロファイルと同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
「生物学的サンプル」は、インビトロで培養された細胞、患者のサンプル、またはインビトロで分散され培養された生検細胞を含むがそれに限定されない。「患者」はヒトであっても動物であってもよい。「患者のサンプル」は血液、血漿、血清、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液またはあらゆるその他の生体液もしくは廃棄物を含むがそれに限定されない。
【0036】
本明細書において用いられる「バイオマーカー」という用語はとりわけ、特に心毒性化合物への露出に関して実験細胞セットと対照細胞セットとの間で顕著な変化を示す、本明細書に示されるような低分子量化合物を示す。特定の実施形態において、バイオマーカーはたとえばLC−MSおよび/またはLC−ESI−TOF−MSなどを含む方法によって、上に示されるとおりに同定される。特定の実施形態においては、以下の低分子量分子が単独またはあらゆる有益な組み合わせで、心毒性のバイオマーカーとして本明細書において提供される:トリエチルアミン;NN−ジエチルアミン;ヘキシルアミン;p−グルコシルオキシマンデロニトリル;(s)−4−ヒドロキシマンデロニトリルベータ−D−グルコシド;13,14−ジヒドロPGE1(プロスタグランジンE1);7−ケトコレステロール;1,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン;ホルモノネチン7−O−グルコシド−6’’7−O−マロン酸塩;イソクロロゲン酸b;13−ジカフェオイルキナ酸;3−ヘキサプレニル−4−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸;2−フェニルグリシン;(E)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;(Z)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;ベタイン;2−エチルヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸塩;グリセロホスホコリン;N−アセチルガラクトサミン;CGP52608;ビオチン;DL−ホモシスチン;エテノデオキシアデノシン;キューイン;N−アセチルアスパルチルグルタミン酸;テトラヒドロコルチゾン;環状ホスファチジン酸;2−メトキシエストロン3−グルクロニド;ジアシルグリセロール;ケルセチン3−(2G−キシロシルルチノシド);ナイアシンアミド;アスパラギン酸;イミノジアセテート;エリトリトール;D−トレイトール;N−アセチルセリン;L−グルタミン酸;L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド;2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩;O−アセチルセリン;DL−グルタミン酸塩;DL−グルタミン酸;2−アミノグルタル酸;グルタミン酸塩;D−グルタミン酸;3−ピリジンブタン酸;ノルサルソリノール;D−フェニルアラニン;D−アルファ−アミノ−ベータ−フェニルプロピオン酸;L−フェニルアラニン;3−メチルヒスチジン;1−メチルヒスチジン;(R)−N−メチルサルソリノール;(S)−N−メチルサルソリノール;対称ジメチルアルギニン;または非対称ジメチルアルギニン。好ましい実施形態において、本明細書の表2A〜2Dに記載される低分子量分子は、単独またはあらゆる有益な組み合わせで用いられる、心毒性の信頼性高いバイオマーカーである。同定される低分子量分子の多くは一意の質量特徴サイズまたは中性質量によって同定されるが、いくつかの分子は化合物名によってさらに同定される。
【0037】
本明細書において用いられる「代謝サイン」および「代謝プロファイル」という用語は、本発明の方法によって同定された1つまたは複数の代謝産物を示す。本発明に従う代謝サインおよびプロファイルは、心毒性の影響の分子「フィンガープリント」を提供して、心毒性である医薬品、環境要因、化合物および生物療法への露出後に顕著に変化した低分子量化合物を同定できる。特定の実施形態においては、代謝サインまたは代謝プロファイルを用いて化合物の心毒性を予測できる。代替的な実施形態において、代謝サインまたはプロファイルは、薬物処理レジメン、医薬品、環境要因、化合物または生物療法からの心毒性の影響を診断してもよい。
【0038】
特定の実施形態において、試験化合物の心毒性は、単一の公知の心毒性バイオマーカーの心筋細胞分泌によって識別されてもよい。一例として、単一のマーカーはベタインまたはグリセロホスホコリンを含んでもよい。これは、単一の確立された心毒性化合物(例、ドキソルビシン)への露出に応答して分泌される代謝産物を含んでもよい。他の実施形態においては、2つまたはそれ以上の公知の心毒性化合物(例、ドキソルビシンおよびパクリタキセル、またはドキソルビシン、パクリタキセルおよびタモキシフェン)に応答して心筋細胞が一般的に生成する代謝サイン(すなわち1つまたは複数の低分子量代謝産物)の検出によって、心毒性が確認される。さらなる実施形態においては、表2A〜2D中に提供されているか、または図4A〜4AGおよび図6〜13のクロマトグラムに記載されている細胞代謝産物の1つまたは複数を含む心毒性の代謝サインが提供される。
【0039】
統計分析のためのデータは、Agilent Mass Hunterソフトウェア(製品No.G3297AA,Agilent Technologies,Inc.,Santa Clara,CA)を用いてクロマトグラムから抽出した;代替的な統計分析法が用いられてもよいことが理解されるだろう。質量が10ppm以内であって2分間の保持期間以内に溶出されたとき、それらの質量を一緒にビニングした。ビニングされた質量は、異なるLC−ESI−TOF−MS分析にわたって同じ分子であるとみなされた(本明細書においては「正確な質量」と呼び、これは±10ppmであると理解される)。データのビニングは、実験全体の質量の統計分析および比較のために必要である。単一サンプル内の同じ保持時間に同じ質量を有する複数のピークがMass Hunterによって検出されたときは、それらを平均してデータ分析を補助した。天然の同位体分布を欠く質量、または1000未満の絶対高度を有する質量は、分析の前にデータから取り除いた。このアッセイからの結果は、10ppm以内の注釈を付けられた値に従って評価される相対値を提供することによって、検出された分子量に対する同一性を提供することが理解されるだろう。よって10ppm以内の質量シフトは、たとえば異なる実験間または異なる機器の使用など、イオン化源および計測の違いのために、前に注釈を付けた特定の細胞代謝産物の同一性を定めることに矛盾しないと考えられる。
【0040】
本明細書において用いられるとき、最初にデータを質量および保持時間によって分別する簡単なアルゴリズムを用いるLC/ESI−TOF−MS実行にわたって、質量は同じであるとみなされた。分別後に、ある化合物が0.1分以下の規則正しい保持時間差と、重み付けした式以下の質量差とを有するとき、その化合物は一意であるとみなされた。連続した質量は、175Da未満なら10ppm違わず、175Daから300Daの範囲では7ppm違わず、300Daより大きいときは5ppm違わなかった。一連の測定値がこの定義に合うとき、それは同じ化合物からのものであるとみなされた。質量または保持時間のいずれかが上に挙げた限界よりも多く変動するとき、それは異なる化合物とみなされて新しい一意の名称が与えられた。
【0041】
最も再現性のある質量特徴からのデータを、統計分析の前に対数底2で変換し、中央値を中央にした。統計分析は、オープンソースの統計プログラミングおよび分析ソフトウェアRを用いて行なわれた。個々の質量特徴の統計的有意性は、並べ替えに基づく検定統計値またはウエルチT検定を用いて、対照と薬物処理との間に存在量の差は存在しないという帰無仮説の下で行なわれた。帰無仮説を検定するために、条件付き分布の正規近似を仮定した一元配置の並べ替えに基づくt検定が使用され、プログラミングコードの寄与パッケージであるPermutation Test Framework(Coin)ライブラリ内のConditional Inference Proceduresを用いて実施された。統計検定は、欠測値を補完するのではなく、自由度を下げる欠測値の置換なしに行なわれた。この一元配置検定法は、検定されるすべての特徴が正規分布を有すると仮定できないような複雑なデータセットの分析に理想的に適する(Hothornら、2006,Amer.Statistician,60:257−263)。偽発見率(FDR)はQ値推定量を用いて制御され(Storeyら、2003,Proc Natl Acad Sci.,100:9440−5)、Rにおけるq値(qvalue)ライブラリを用いて実施された(Dabneyら、2003,qvalue:Q−value estimation for false discovery rate control.R package version 1.10.0.,www.CRAN.R−project.org)。
【0042】
特定の実施形態において、心毒性バイオマーカーは、公知の心臓毒への露出に続いて心筋細胞が生成する細胞代謝産物の1つまたはコレクションに言及してもよい。心毒性代謝サインは、約1個、または約6個、または約10個、または約20個、または約30個の異なって分泌された低分子量分子を含んでもよく、本明細書に開示される心毒性サインは約1個から約30個の代謝産物を含み、本明細書の表2A〜2Dに示される低分子量分子を含むが、前記心毒性サインは一般的に、実験試験化合物が心毒性であることを独立的に識別するために十分な数の代謝産物を含む。未処理細胞と処理細胞との間の代謝産物分泌の微分倍率変化(differential fold change)は、各代謝産物によって変動し得ることが当業者に理解されるだろう。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態およびそのさまざまな用法を説明するためのものである。それらは説明の目的のためにのみ示されており、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0044】
実施例1
心毒性薬剤への露出後の心臓特異的細胞の検証および心臓細胞死の測定
ヒト心筋細胞、成人の心臓に由来するクローン心筋細胞(Celprogen 36044−15at,San Pedro,CA)または心臓前駆細胞を、心毒性の影響を有することが公知である薬理的化合物の変動用量で処理した。心筋細胞を、強い毒性物質であるドキソルビシンおよびパクリタキセル、ならびに弱い毒性物質であるタモキシフェンによって、24時間または48時間処理した。いくつかの組み合わせ処理レジメンは、相乗的な心毒性の影響を示すことが明らかになった(例、ドキソルビシンおよびトラスツズマブの併用療法についてはPentassugliaら、2007,Experimental Cell Research 313:1588−1601を参照;パクリタキセルおよびドキソルビシンの併用療法についてはRobert,2007,Cardiovasc Toxicol 7:135−139を参照)。
【0045】
これらの細胞が心臓由来であることは、心臓アルファアクチンタンパク質に対する抗体を用いた免疫組織化学によって確認した(図1)。細胞死のパーセンテージは、本質的に、かつ薬物処理の後に、トリパンブルー染色によって算出した(図2)。細胞死は、ドキソルビシンまたはパクリタキセル(50〜55%)で処理したヒト心筋細胞の方が、タモキシフェン(18%)および未処理対照(7%)よりも有意に高かった。
【0046】
実施例2
心毒性薬理物質に露出した心筋細胞によって生成される代謝産物の同定
心毒性化合物への露出の後に心筋細胞または心臓前駆体によって分泌される低分子量代謝産物を同定するために、上の実施例1に記載されるとおりの細胞をドキソルビシン、パクリタキセル、およびタモキシフェンによって24時間または48時間処理した。
【0047】
処理細胞および未処理細胞からの細胞外培地を、メタボロミクス分析のための低分子量分子(<3kD)の抽出のために、Cezarら(2007,Stem Cells Development 16:869−882、この出版物を引用により援用する)に記載されるとおりに処理した。各サンプル内に存在する低分子量分子の全スペクトルのイオン化および検出のために、細胞外低分子量分子調製物を液体クロマトグラフィに続くエレクトロスプレーイオン化飛行時間型(LC−ESI−TOF−MS)質量分析によって分離した。より特定的には、ESI_Luna_HILIC_95t06OACN_16min法(HILICクロマトグラフィ)を用いてサンプルを分離した。以下に記載されるとおり(Cezarら(2007,同上)にも提供されている)、その後の脱アイソトープ(deisotoped)ESI−TOF−MS質量特徴のバイオインフォマティクスおよびインシリコマッピングによって、統計的差異を推測した。
【0048】
簡単に言うと、Agilent 6520 Accurate−Mass Q−TOFにおける拡張したダイナミックレンジおよびポジティブモードにおいて、イオン化(100m/z〜1500m/z)を得た。2つの独立した方法を用いて質量特徴を生成した。第1に、MassHunter定性分析を用いて、分子特徴抽出アルゴリズム(Molecular Feature Extraction algorithm:MFE)を用いて質量特徴を生成した。MFEによって生成された特徴をRにおいてビニングし、薬物処理に応答した蓄積の相違を分析した。さらに、AgilentのMassHunter定性分析ワークステーションを用いて、AgilentデータファイルをmzDataファイルフォーマットに変換した。薬物の存在下で異なって存在する質量特徴ビンを見出すためにソフトウェアライブラリXCMSを用いて、RにおいてmzDataファイルを分析した。MassHunterMFEバージョン44を用いて、MFEによって作成されたMHDファイルをテキストファイルに変換した。このMHDテキストファイルをRにロードし、ファイル名、細胞系(Celprogen心筋細胞または溶媒)、プレート(0、1、2または3)、ウェル(溶媒、A、BまたはC)、実験複製、細胞(上清、未培養培地または溶媒)、細胞培養継代数、薬物処理(15uMタモキシフェン、15μMパクリタキセル、対照、26μMドキソルビシン)、特徴保持時間グループ、保持時間、特徴中性質量、質量特徴質量標準偏差、存在量、飽和、高度、特徴におけるイオンの数、最小電荷、最大電荷、電荷数、幅、およびグループ特徴カウントに対応するメタデータを各ファイルに加えた。
【0049】
細胞毒性薬物処理に応答して心筋細胞が分泌する代謝産物を同定するために、類似の細胞継代からの心筋細胞に対してメタボロミクス分析を行なった。細胞毒性薬物処理の間で共通する統計的に有意な特徴を識別した。対照および薬物処理心筋細胞のLC−MSサンプルの少なくとも25%に存在した質量特徴を選択した。個々の質量特徴の統計的有意性は、スチューデントのt検定などの並べ替えに基づく検定統計値を用いて、対照と薬物処理との間に存在量の差は存在しないという帰無仮説の下で判定した。帰無仮説を検定するために、条件付き分布の正規近似を仮定した一元配置検定(Horthonら、2006a,The American Statistician 60(3):257−263を参照)が用いられ、RにおけるPermutation Test Framework(Coin)ライブラリ内のConditional Inference Proceduresを用いて実施された(Horthonら、2006b,Conditional Inference Procedures in a Permutation Test Framework,R package version 0.4−5,CRAN.R−project.orgを参照)。統計検定は、対数底2で変換し、中央値を正規化した存在量値に対して行なわれ、欠測値が存在するときには、自由度を減じる欠測値の置換なしに行なわれた。偽発見率(FDR)はQ値推定量を用いて(Storeyら、2003,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:9440−45)ラムダ0によって制御され、Rにおけるq値ライブラリを用いて実施された(Dabneyら、2003,qvalue:Q−value estimation for false discovery rate control.R package versions 1.10;CRAN.R−project.org;R Development Core Team.R:A Language and Environment for Statistical Computing.Vienna,Austria:R Foundation for Statistical Computing:2007.ISBN 3−900051−07−0;www.R−project.org)。統計を行なった後、FDR調整したp値に基づいて、各薬物処理に対する対照の比較から統計的に有意な質量特徴の母集団(universe)を作成した。ブール論理を用いて、異なる薬物処理間に共通する統計的に有意な特徴を見出した。細胞生存率に影響する薬物(DOX、PAC)においては統計的に有意な差を示したが、(TAM)においては統計的に有意ではなかった質量特徴の共通部分を選択した。この共通部分は、細胞毒性処理において統計的に有意な変化を示したが、非細胞毒性処理においては統計的に有意な変化を示さなかったものであるため、心毒性に関連する共通の質量特徴を表したものである。
【0050】
上に記載したソフトウェアおよび方法によって行なわれるような、データを質量および保持時間によって分別する簡単なアルゴリズムを用いるLC/ESI−MS実行にわたって、質量は同じであるとみなされた。処理細胞に対して用いられた基準は、検出器効率を補償するための滑り質量スケール(sliding mass scale)に基づくものであった。流速のため、1.5minの保持時間差によって175Da未満のときに(0.00001×質量)以内であるとき、176〜300Daのときに(0.000007×質量)以内であるとき、および300Daより大きいときに(0.000005×質量)以内であるとき、その質量は同等であるとみなした。一連の測定値がこの定義に合うとき、それは各実験内の同じ化合物からのものであるとみなされた。質量または保持時間のいずれかが上に挙げた限界よりも多く変動するとき、その化合物は異なるものであるとみなされて異なるビン記載が与えられた。特定的には、774,645の特徴がMassHunterソフトウェアによって同定され、LC/MS実行当たりでは平均6455および中央値5869の特徴であった。次いで質量特徴を質量および保持時間グループ化によって分別し、違いのなかった質量および保持グループ化の各セットに対して特徴IDビンを作成した。
【0051】
LC−ESI−TOF−MSによって検出された各化合物の中性の正確な質量および/または実験化学式の候補同一性について、公共の検索可能なデータベースMETLIN(metlin.crips.edu)、The Human Metabolome Database(hmda.ca)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(genome.jp/keg)、およびBiological Magnetic Resonance Bank(bmrb.wisc.edu/metabolomics)に照会した。LC−MS測定した質量シグナルは、その正確な質量が百万分率で10(0.00001×質量)以内であれば、データベース内に存在する小分子と一致した。正確な質量測定値および化学式は一般的に、特定のサイズまでの小分子に対しては曖昧ではない。比較LC−MSに対して、分析グレードの化学標準物質がSigmaから販売されていた。実験に用いられた条件付き培地のアリコートに1mMの化学標準物質を加えた後、上述のとおりに標準LC−ESI−TOF−MSを行なった。条件付き培地に加えられた標準化合物に対する中性の正確な質量および保持時間を用いて、Analystソフトウェア(Agilent)を用いて実験サンプル中のピークを再抽出した。
【0052】
各化合物に対する用量は公表された標準に基づき、それは可能な限り治療的循環レベルに等しくした(表1を参照)。上記の濃度を用いたトリパンブルー排除/細胞死アッセイは、これらの用量が公表された所見を実証することを示し、実施例1に記載されるとおり、ドキソルビシンおよびパクリタキセルは有意に高い細胞死を誘導した。(図2)。
【0053】
【表1】

最初の研究で観察された代謝産物の傾向を図5に示しており、ここでは強い心毒性化合物が類似の質量特徴(低分子量分子)を示し、よって管理されていない多変量分析(NIPALS Principal Cluster Analysis)の際にともにクラスター化する。
【0054】
同定された特徴を表2A〜2Dに提供する。具体的には、表2Aはパクリタキセル処理およびドキソルビシン処理の間に共通性を有する同定質量特徴を提供する。表2Bはパクリタキセル処理、ドキソルビシン処理、およびタモキシフェン処理の間に共通性を有する同定質量特徴を提供する。表2Dは、ドキソルビシンで処理した後にパクリタキセルで処理した心臓前駆細胞から分泌された同定質量特徴を提供する。
【0055】
【表2−1】

【0056】
【表2−2】

【0057】
【表2−3】

【0058】
【表2−4】

【0059】
【表2−5】

【0060】
【表2−6】

【0061】
【表2−7】

【0062】
【表2−8】

【0063】
【表2−9】

【0064】
【表2−10】

【0065】
【表2−11】

【0066】
【表2−12】

【0067】
【表2−13】

【0068】
【表2−14】

【0069】
【表2−15】

【0070】
【表2−16】

【0071】
【表2−17】

【0072】
【表2−18】

【0073】
【表2−19】

【0074】
【表2−20】

【0075】
【表2−21】

【0076】
【表2−22】

【0077】
【表2−23】

【0078】
【表2−24】

【0079】
【表2−25】

【0080】
【表2−26】

【0081】
【表2−27】

【0082】
【表2−28】

【0083】
【表2−29】

【0084】
【表2−30】

【0085】
【表2−31】

【0086】
【表2−32】

前に報告されたアプローチを用いて、新規または注釈を付けられなかった低分子量分子について、代謝産物分泌における統計的に有意な変化を調べることができる(Cezar et al,2007,Stem Cells and Development 16:869−882)。最初の実験は、ヒト代謝産物の部分集合が、心筋症の強い誘導物質である医薬品すなわちドキソルビシンおよびパクリタキセルに応答して、タモキシフェンなどの弱い/中程度の誘導物質よりも確かに統計的に有意に変化することを示した。(図3)。
【0087】
データは、心毒性の程度が異なる次の3つの実験処理へのヒト心筋細胞(Celprogen 36044−15at,San Pedro,CA)の露出に続くn=107の質量分析注入からもたらされた:(1.)ドキソルビシン;(2.)パクリタキセル;および(3.)タモキシフェン(弱い毒性物質)。偽発見率(FDR0.05)調整による統計分析の後、ドキソルビシンに応答して187の有意な特徴(例、候補バイオマーカー)を同定し、パクリタキセルに応答して185の有意な特徴を同定し、タモキシフェンに応答して148の有意な特徴を同定した。好ましい実施形態において記載したとおり、強い心毒性物質ドキソルビシンおよびパクリタキセルに対して、73の統計的に有意な特徴が共通していることが見出された。(図3および表2A)。
【0088】
化学データベース中のこうした特徴の正確な中性質量の推定注釈によって、いくつかの候補バイオマーカーがたとえばNADPH:酸素酸化還元酵素活性、UDPグルクロン酸ベータ−D−グルクロノシルトランスフェラーゼ、解糖、糖新生および酸化ストレスなどのエネルギー代謝経路に位置することが明らかになった。これらの結果は、これらの特定の化合物に対する心毒性のメカニズムについての公表された報告と一致する。
【0089】
3つの確立された心臓毒、すなわちパクリタキセル、ドキソルビシンおよびタモキシフェンへのヒト心筋細胞の露出後に同定された低分子量分子の強い頑強性および高い再現性が観察された。2つまたは3つの心臓毒に応答して心筋細胞が分泌する代謝産物の同定によって、候補バイオマーカーを豊富にすることができ、心毒性の代謝サインが提供された。
【0090】
加えて、請求される本発明は開示された実施形態に制限されることは意図されない。前述の開示は本発明の特定の実施形態を強調するものであって、それと同等の代替物のすべての変更は添付の請求項において示される本発明の趣旨および範囲内にあることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物の存在下または不在下で心筋細胞において異なって生成される細胞代謝産物を同定する方法であって、前記方法は、
a)心筋細胞を試験化合物に接触させるステップと、
b)前記心筋細胞から分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの複数の細胞代謝産物を分離するステップと、
c)前記試験化合物に接触させなかった心筋細胞に比べて、前記試験化合物に接触させた心筋細胞から異なって分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの1つまたは複数の細胞代謝産物を同定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させた心筋細胞においてより大量に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させなかった心筋細胞においてより大量に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞代謝産物は物理的分離方法を用いて分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記物理的分離方法は、液体クロマトグラフィ/エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(LC/ESI−TOF−MS)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
候補の前記細胞代謝産物は中性質量によって同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試験化合物は心毒性化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞代謝産物は、表2A〜2Dに示される細胞代謝産物のうちの1つまたは複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞代謝産物は、トリエチルアミン;NN−ジエチルアミン;ヘキシルアミン;p−グルコシルオキシマンデロニトリル;(s)−4−ヒドロキシマンデロニトリルベータ−D−グルコシド;13,14−ジヒドロPGE1(プロスタグランジンE1);7−ケトコレステロール;1,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン;ホルモノネチン7−O−グルコシド−6’’−O−マロン酸塩;イソクロロゲン酸b;13−ジカフェオイルキナ酸;3−ヘキサプレニル−4−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸;2−フェニルグリシン;(E)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;(Z)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;ベタイン;2−エチルヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸塩;グリセロホスホコリン;N−アセチルガラクトサミン;CGP52608;ビオチン;DL−ホモシスチン;エテノデオキシアデノシン;キューイン;N−アセチルアスパルチルグルタミン酸;テトラヒドロコルチゾン;環状ホスファチジン酸;2−メトキシエストロン3−グルクロニド;ジアシルグリセロール;ケルセチン3−(2G−キシロシルルチノシド);ナイアシンアミド;アスパラギン酸;イミノジアセテート;エリトリトール;D−トレイトール;N−アセチルセリン;L−グルタミン酸;L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド;2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩;O−アセチルセリン;DL−グルタミン酸塩;DL−グルタミン酸;2−アミノグルタル酸;グルタミン酸塩;D−グルタミン酸;3−ピリジンブタン酸;ノルサルソリノール;D−フェニルアラニン;D−アルファ−アミノ−ベータ−フェニルプロピオン酸;L−フェニルアラニン;3−メチルヒスチジン;1−メチルヒスチジン;(R)−N−メチルサルソリノール;(S)−N−メチルサルソリノール;対称ジメチルアルギニン;または非対称ジメチルアルギニンのうちの1つまたは複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法によって同定される前記細胞代謝産物は、心毒性化合物に対する心筋細胞応答に特有の代謝プロファイルを構成する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記方法によって同定される細胞代謝産物は、試験化合物に対する心筋細胞応答に特有の代謝プロファイルを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数の心毒性試験化合物の存在下または不在下で心筋細胞によって異なって生成される細胞代謝産物を同定するための方法であって、前記方法は、
a)心筋細胞の複数の実験セットの各々を異なる心毒性試験化合物に別々に接触させるステップと、
b)細胞の各実験セットから分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの複数の細胞代謝産物を分離するステップと、
c)前記心毒性試験化合物に接触させなかった心筋細胞に比べて、前記心毒性試験化合物の各々に接触させた心筋細胞から異なって分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの1つまたは複数の細胞代謝産物を同定するステップと、
d)前記試験化合物に露出された心筋細胞の実質的にすべての前記実験セットによって異なって生成された1つまたは複数の細胞代謝産物を同定するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させた心筋細胞においてより大量に生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させなかった心筋細胞においてより大量に生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞代謝産物は物理的分離方法を用いて分離される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記物理的分離方法は、液体クロマトグラフィ/エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(LC/ESI−TOF−MS)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
候補の前記細胞代謝産物は中性質量によって同定される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞代謝産物は、表2A〜2Dに示される細胞代謝産物のうちの1つまたは複数を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞代謝産物は、トリエチルアミン;NN−ジエチルアミン;ヘキシルアミン;p−グルコシルオキシマンデロニトリル;(s)−4−ヒドロキシマンデロニトリルベータ−D−グルコシド;13,14−ジヒドロPGE1(プロスタグランジンE1);7−ケトコレステロール;1,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン;ホルモノネチン7−O−グルコシド−6’’−O−マロン酸塩;イソクロロゲン酸b;13−ジカフェオイルキナ酸;3−ヘキサプレニル−4−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸;2−フェニルグリシン;(E)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;(Z)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;ベタイン;2−エチルヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸塩;グリセロホスホコリン;N−アセチルガラクトサミン;CGP52608;ビオチン;DL−ホモシスチン;エテノデオキシアデノシン;キューイン;N−アセチルアスパルチルグルタミン酸;テトラヒドロコルチゾン;環状ホスファチジン酸;2−メトキシエストロン3−グルクロニド;ジアシルグリセロール;ケルセチン3−(2G−キシロシルルチノシド);ナイアシンアミド;アスパラギン酸;イミノジアセテート;エリトリトール;D−トレイトール;N−アセチルセリン;L−グルタミン酸;L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド;2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩;O−アセチルセリン;DL−グルタミン酸塩;DL−グルタミン酸;2−アミノグルタル酸;グルタミン酸塩;D−グルタミン酸;3−ピリジンブタン酸;ノルサルソリノール;D−フェニルアラニン;D−アルファ−アミノ−ベータ−フェニルプロピオン酸;L−フェニルアラニン;3−メチルヒスチジン;1−メチルヒスチジン;(R)−N−メチルサルソリノール;(S)−N−メチルサルソリノール;対称ジメチルアルギニン;または非対称ジメチルアルギニンのうちの1つまたは複数を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法によって同定される前記細胞代謝産物は、心毒性化合物に対する心筋細胞応答に特有の代謝プロファイルを構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記試験化合物はドキソルビシン(doxirubicin)、タモキシフェンまたはパクリタキセルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試験化合物はドキソルビシン(doxirubicin)、タモキシフェンまたはパクリタキセルである、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞代謝産物は、表2A〜2Dに示される細胞代謝産物のうちの1つまたは複数を含む、請求項10または20に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞代謝産物は、トリエチルアミン;NN−ジエチルアミン;ヘキシルアミン;p−グルコシルオキシマンデロニトリル;(s)−4−ヒドロキシマンデロニトリルベータ−D−グルコシド;13,14−ジヒドロPGE1(プロスタグランジンE1);7−ケトコレステロール;1,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン;ホルモノネチン7−O−グルコシド−6’’−O−マロン酸塩;イソクロロゲン酸b;13−ジカフェオイルキナ酸;3−ヘキサプレニル−4−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸;2−フェニルグリシン;(E)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;(Z)−4−ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド−オキシム;ベタイン;2−エチルヘキシル−4−ヒドロキシ安息香酸塩;グリセロホスホコリン;N−アセチルガラクトサミン;CGP52608;ビオチン;DL−ホモシスチン;エテノデオキシアデノシン;キューイン;N−アセチルアスパルチルグルタミン酸;テトラヒドロコルチゾン;環状ホスファチジン酸;2−メトキシエストロン3−グルクロニド;ジアシルグリセロール;ケルセチン3−(2G−キシロシルルチノシド);ナイアシンアミド;アスパラギン酸;イミノジアセテート;エリトリトール;D−トレイトール;N−アセチルセリン;L−グルタミン酸;L−4−ヒドロキシグルタミン酸セミアルデヒド;2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−アミノ吉草酸塩;O−アセチルセリン;DL−グルタミン酸塩;DL−グルタミン酸;2−アミノグルタル酸;グルタミン酸塩;D−グルタミン酸;3−ピリジンブタン酸;ノルサルソリノール;D−フェニルアラニン;D−アルファ−アミノ−ベータ−フェニルプロピオン酸;L−フェニルアラニン;3−メチルヒスチジン;1−メチルヒスチジン;(R)−N−メチルサルソリノール;(S)−N−メチルサルソリノール;対称ジメチルアルギニン;または非対称ジメチルアルギニンのうちの1つまたは複数を含む、請求項10または20に記載の方法。
【請求項25】
心毒性化合物との接触または心毒性化合物の投与の結果生じる、患者における心毒性の影響を識別するための方法であって、前記方法は、
a)約10ダルトンから約1500ダルトンの分子量を有する1つまたは複数の細胞代謝産物の存在について、患者からの生物学的サンプルをアッセイするステップと、
b)心毒性応答の代謝プロファイルに存在する少なくとも1つの細胞代謝産物を同定するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
試験化合物の心毒性を評価する方法であって、
a)心筋細胞を前記試験化合物に接触させるステップと、
b)前記心筋細胞から分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの複数の細胞代謝産物を分離するステップと、
c)もし前記試験化合物に接触させた心筋細胞から異なって分泌された約10ダルトンから約1500ダルトンの少なくとも1つまたは複数の細胞代謝産物が、請求項10または20に記載の心毒性の代謝プロファイルを構成するならば、前記試験化合物を心毒性化合物として同定するステップと
を含む、方法。
【請求項27】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させた心筋細胞においてより大量に生成される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞代謝産物の少なくとも1つは、前記試験化合物に接触させなかった心筋細胞においてより大量に生成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞代謝産物は物理的分離方法を用いて分離される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記物理的分離方法は、液体クロマトグラフィ/エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(LC/ESI−TOF−MS)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
候補の前記細胞代謝産物は中性質量によって同定される、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図4M】
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【図4N】
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【図4O】
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【図4P】
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【図4Q】
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【図4R】
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【図4S】
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【図4T】
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【図4U】
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【図4V】
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【図4W】
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【図4X】
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【図4Y】
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【図4Z】
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【図4AA】
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【図4AB】
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【図4AC】
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【図4AD】
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【図4AE】
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【図4AF】
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【図4AG】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−506438(P2013−506438A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533284(P2012−533284)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051654
【国際公開番号】WO2011/044253
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(506223510)ウィスコンシン・アルムニ・リサーチ・ファウンデーション (11)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(512088718)ステミナ バイオマーカー ディスカバリー, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】