説明

薬用人参の加工方法及び組成物

薬用人参の植物体又はその抽出物に、微生物または酵素に接触させる工程と、酸またはアルカリと反応させる工程を含む加工を行うことにより、肝機能改善作用、止血作用、抗ストレス作用、抗腫瘍作用、抗老化作用、抗酸化作用などの薬用人参の有する効果を増強することが期待でき、食品や医薬品、化粧品等として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬用人参の加工方法および加工により得られる組成物に関する。本願は、2003年9月30日に出願された特願2003−339752号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活スタイル特に食生活などの変化(例えば、脂肪食の摂取量の増加、喫煙および飲酒等)による体内への脂肪やストレスの蓄積、肝機能の低下などに伴い、糖尿病、高脂血症、高血圧、痛風等のいわゆる生活習慣病が急激に増加し、社会的な問題になっている。これらの疾病は病状の進行とともに合併症を併発し、心臓病や脳卒中など死因の上位に位置づけられる疾患へと移行する。このため、その治療および予防は極めて重要である。これらの疾病については、いくつかの治療薬、例えば合成医薬品など、が開発されている。しかし、副作用などの問題が懸念され、合併症を併発した場合には、さらに複数の薬物を摂取する必要があることから、副作用が重篤化する恐れがある。従って、これらの疾病あるいは合併症に対し、治療あるいは予防効果があり、かつ安全性の高い素材が望まれている。
【0003】
これらの要望に応え得る素材のひとつに、薬用人参が挙げられる。薬用人参は、古くから中国で用いられ、漢方薬として広く利用されている。薬用人参には、動脈硬化、高脂血症、血栓、高血圧、免疫機能低下、肝機能低下、腫瘍、高血糖値及びストレス等に対する薬効及び予防効果が知られている。しかしながら、それらの効果は十分満足できるものではなかった。
【0004】
これらの問題を解決するための方法としては、薬用人参を加工することが考えられる。例えば、薬用人参を酵母で醗酵させる方法(例えば、特許文献1)が報告されている。しかし、この方法は風味の改善が目的であり、薬効の改善効果は不十分であった。また、紅参の抽出物を糖加水分解酵素と作用させる方法(例えば、特許文献2)も報告されているが、十分な薬効が得られたとは言えず、改良の余地が依然残されていた。
【0005】
【特許文献1】特開平3−277246号公報
【特許文献2】特開2002−348245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬用人参の薬効改善のための加工方法及び加工により得られる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記問題点を踏まえ鋭意検討を行った結果、薬用人参に、微生物または酵素に接触させる工程(a)と、酸またはアルカリと反応させる工程(b)を含む加工を行うことにより、薬用人参が有する薬効が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と、薬用人参を酸またはアルカリと反応させる工程(b)、を含み、前記工程のどちらか一方で薬用人参を処理した後に、処理された前記人参を残りの工程でさらに処理を行う、薬用人参の加工方法に関するものである。
【0009】
また、本発明は、薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と、薬用人参を酸またはアルカリと反応させる工程(b)とが、この順で実施されて加工が行われてよい、薬用人参の加工方法に関するものである。
【0010】
また、本発明は、工程(a)が酵素に接触させる工程、工程(b)が酸と反応させる工程、であってよい薬用人参の加工方法に関するものである。
【0011】
また、本発明は、微生物または酵素に接触させる工程(a)と、酸またはアルカリと反応させる工程(b)と、を含む薬用人参の加工方法により得られる組成物に関するものである。
【0012】
更に、本発明は上記組成物を含む食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬用人参の加工方法は、特殊な操作、施設を必要としない。また、加工により得られる組成物は、極めて高い肝保護作用(肝機能改善作用)、抗動脈硬化、老化防止等の効果を示すことから、食品、医薬品および化粧品等として広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、薬用人参の薬効改善のための加工方法及び加工により得られる組成物を提供することを目的とするものである。本発明で用いられる薬用人参としては、田七人参(Panax notoginseng(Burk.)F.H.Chen)、高麗人参(Panax ginseng C.A.Meyer)、竹節人参(Panax japonicus C.A.Meyer)、アメリカ人参(Panax quinquefolium L.)、ベトナム人参(Panax vietnamensis Ha et Grushv.)、姜状三七(Panax zingiberensis C.Y.Wu et K.M.Feng)、屏辺三七(Panax stipuleanatus H.T.Tsai etK.M.Feng)及びヒマラヤ人参(Panax pseudo−ginsengWall.subsp.himalaicus Hara)等が挙げられる。高麗人参、田七人参が好ましく、特に田七人参が好ましい。また、これらの薬用人参は複数を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
本発明で用いられる薬用人参の使用部位は、植物体のすべてを使用することができる。例えば根、根茎、茎、枝根、ひげ根、塊根、葉、花、実、種子、芽、むかご等を単独または混合して使用することができ、好ましくは根又は根茎を用いることができる。また植物体は、粉砕、破砕、修治、裁断、焙煎、及び/または、乾燥等加工して使用することができる。
【0016】
また本発明で使用される薬用人参、あるいは本発明により工程(a)及び/または工程(b)にて加工された薬用人参は、植物体を極性溶媒又は食用油で抽出して得られる抽出液、その希釈液、濃縮液、エキス、これを乾燥して得られる乾燥物として、用いられてもよい。抽出に用いられる極性溶媒の例としては、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;これらの混合液等が挙げられる。好ましくは、水、メタノール、エタノールおよびこれらの混合液、特に好ましくは、水、エタノールおよびその混合液である。抽出に用いられる食用油の例としては、菜種油、ヒマワリ油、サラダ油、大豆油、オリーブ油、コーン油、ごま油、サフラワー油、アマニ油、シソ油、エゴマ油およびキリ油等が挙げられる。
【0017】
薬用人参の抽出物の製法としては、一般公知の方法により行うことができるが、例えば、植物体またはその乾燥物を粉砕、破砕、または裁断したものに前記の極性溶媒を加え、0℃〜100℃、好ましくは20〜70℃で10分間〜24時間、好ましくは30分間〜10時間放置し、必要に応じて濾過又は遠心分離等の操作により不溶物を除き、濃縮することにより行うことができる。また、必要に応じて、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサンなどの非極性溶媒で洗浄し、水で抽出することにより精製することもできる。
【0018】
本発明の加工方法における微生物との反応は、一般公知の方法により行うことができる。例えば、微生物もしくは予め適当な培地で培養した微生物と、薬用人参の植物体、その抽出物、またはこれらを工程(b)により加工したもの、またはその抽出物を水に溶解又は懸濁させたもの、等を混合し、反応させることができる。このとき、必要に応じて適宜炭水化物(ブドウ糖、ショ糖等)、タンパク質(米糠、ふすま等)等を加えてもよい。反応時の温度は、微生物の活動温度範囲なら特に制限されない。10〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応終了後、必要に応じて、加熱処理および/または濾過又は遠心分離等の操作により不溶物を除き、濃縮又は乾燥させることにより目的物を得ることができる。
【0019】
本発明の加工方法における微生物との反応に用いる微生物としては、例えば、アスペルギルス属(例えばAspergillus japonicus、Aspergillus flavus、Aspergillus wentii、Aspergillus niger、Aspergillus niger awamori、Aspergillus oryzae、Aspergillus pulverlentus等)、バチルス属(例えばBacillus acidopullalyticus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus cereus、Bacillus circulans、Bacillus licheniformis、Bacillus polymyxa等)、ラクトバシルス属(例えば、Lactobacillus brevis、Lactobacillus pentoaceticus、Lactobacillus pastorianus、Lactobacillus Lactobacillus casei、Lactobacillus cucumeris、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus jugurti、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus plantrum、Lactobacillus acidophilus等)、リゾプス属(例えばRhizopus delemar、Rhizopus oryzae等)等に属する乳酸菌、酵母、糸状菌等の微生物が挙げられる。アスペルギルス属、バチルス属、ラクトバシルス属が好ましく、アスペルギルス属が特に好ましい。また、アスペルギルス属ではAspergillus niger、Aspergillus niger awamori、Aspergillus oryzaeが好ましく、特にAspergillus oryzaeが好ましい。なおこれらの微生物は単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明の加工方法における酵素反応は、一般公知の方法により行う事ができる。例えば薬用人参の植物体、その抽出物、またはこれらを工程(b)により加工したもの、またはその抽出物を水に溶解または懸濁させたもの、に必要量の酵素、例えば薬用人参に対し0.001〜1重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%を加え、適宜攪拌しながら0〜90℃、好ましくは20〜70℃、より好ましくは30〜50℃で1時間〜1週間、好ましくは5時間〜5日間、放置する。その後、加熱処理により酵素を失活させ、必要に応じて例えば濾過及び/又は遠心分離等の操作により不溶物を除き、濃縮又は乾燥させることにより、目的物を得ることができる。
【0021】
本発明の加工方法における酵素反応において用いられる酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ラクターゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、ヘスペリジナーゼおよびナリンギナーゼ等が挙げられる。好ましくはラクターゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびペクチナーゼが挙げられ、特に好ましくはβ−ガラクトシダーゼである。これらの酵素は、反応温度に合わせて2種以上をあわせて用いることもできる。
【0022】
本発明の加工方法における酸またはアルカリとの反応は、一般公知の方法により行うことができる。例えば、薬用人参の植物体、その抽出物、またはこれらを工程(a)により加工したもの、またはその抽出物、を、0.001〜50%、好ましくは、0.5〜10%濃度の酸またはアルカリに溶解又は懸濁する。この後、80〜150℃、好ましくは、100〜130℃で、5分間〜4時間、好ましくは30分〜2時間加熱処理する。その後必要に応じて中和、又は濾過及び/又は遠心分離等の操作により不溶物を除き、溶媒を除去し、濃縮又は乾燥させることにより目的物を得ることができる。
【0023】
本発明の加工方法における酸またはアルカリ反応に用いられる酸またはアルカリは、特に限定されない。酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸等及び食酢(例えば、穀物酢、果実酢等の醸造酢や合成酢等)が挙げられる。好ましくは塩酸、酢酸、クエン酸および食酢である。これら酸は、一種のみで用いても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。またアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリが挙げられる。好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。これらアルカリは、一種のみで用いても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の加工方法における酸またはアルカリ反応との反応において、好ましい酸のpHは、酸との反応においては、1.0<pH<4.5、より好ましくは2.0<pH<4.0、さらに好ましくは、2.0<pH<3.8である。また、アルカリとの反応においては、好ましいアルカリのpHは、7.5<pH<11.0、より好ましくは、8.0<pH<10.0、さらに好ましくは、8.5<pH<10.0である。
【0024】
本発明の薬用人参の加工方法は、薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と、薬用人参を酸またはアルカリと反応させる工程(b)と、を含むものである。その順序は任意で選択できるが、薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と酸またはアルカリと反応させる工程(b)とを、この順で、順次反応させるのが好ましい。また、それぞれの行程においては、薬用人参の薬効効果の改善の点から、工程(a)では酵素に接触させる反応が好ましく、工程(b)では酸との反応が好ましい。このことから、酵素に接触させる工程、酸と反応させる工程の順で順次反応させるのがより好ましい。
【0025】
本発明の加工方法により得られた組成物は、さらに抽出および/またはカラムで精製して用いることができる。抽出は前記方法により行うことができる。カラムでの精製は、例えば、本発明の組成物を精製水に溶解後、あるいは懸濁後、巨大網状樹脂のカラムに加え、精製水で不要物を洗浄し、続いて70〜90%のエタノールで溶出し、この溶出液を濃縮することにより目的物を得ることができる。必要に応じて(例えば、脱色するために)さらにエタノール溶出液をイオン交換樹脂カラムに通過させた後、70〜90%のエタノールで溶出しても良い。この溶出液を濃縮することにより、本発明組成物を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる巨大網状樹脂とは、例えばスチレン、ジフェニルスチレン或いはa−メチルアクリルエステルなどにより重合した多孔質重合体であり、大きな表面積を持ち、細孔と呼ばれる微細な連続孔が重合体の粒子内部にまで発達しているものをいう。この構造上の特徴から、有機物を効率よく吸着することが知られており、天然物や醗酵生成物などの濃縮・精製に用いられている。巨大網状樹脂としては一般公知のものが用いられる。例えばアンバーライトXAD−1、アンバーライトXAD−2(以上ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、セパビーズSP825、セパビーズSP850、セパビーズSP207、ダイヤイオンHP2MG(以上、三菱化学株式会社製)等を用いることができる。
【0027】
本発明で用いられるイオン交換樹脂は、特殊なものを必要とせず、一般公知のものを用いることができる。イオン交換樹脂の例としては、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、混合樹脂が挙げられ、特に強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂および混合樹脂が挙げられる。
【0028】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物は、種々の薬効(予防および治療効果)を有している。例えば肝保護作用(肝機能改善作用)、抗動脈硬化、老化防止、抗腫瘍作用、抗高脂血症、抗血栓、血圧降下作用、免疫機能改善、血糖値低下作用、鎮痛作用、強心作用、抗炎症作用、末梢血流改善作用、止血作用、抗酸化作用など及び抗ストレス等の効果がある。よってそれらの治療に用いられても良い。なお本発明の組成物、その抽出物、及びカラム精製物は、互いに組み合わせて使用することも可能である。また、本発明の方法で得られた複数の組成物を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物は、用途に合わせて食品、医薬品、化粧品あるいは口腔用組成物(歯磨き剤)として用いることができる。
食品として用いる場合には、他の食品素材を本発明組成物に対し配合することができる。例えば肝保護作用(肝機能改善作用)を与える事を目的とする場合には、プロポリス、ウコン、マリアアザミ、ナツメグ、枸杞子、イソフラボン、ローヤルゼリー、ラクトフェリンおよびその抽出物、肝臓抽出エキス等を配合することができる。抗酸化効果を与える事を目的とする場合には、アスタキサンチン、ブドウ種子(プロアントシアニジン)、ビタミンE、ポリフェノール、カテキン等を配合することができる。抗動脈硬化を与える事を目的とする場合には、甘草、牡丹皮、オウギ、丹参、ブドウ種子(プロアントシアニジン)、亜麻仁種子等およびその抽出物を配合することができる。抗血栓を与える事を目的とする場合には、ナットウキナーゼ、亜麻仁種子等およびその抽出物を配合することができる。血糖値低下を目的とする場合には、バナバ、サラシアオブロンガ、サラシアレティキュラータ、白甘薯、ヤーコン、トンブリ、霊芝およびその抽出物、プロシアニジン等を配合することができる。血圧降下作用を与える事を目的とする場合には、γ−アミノ酪酸、イワシペプチド、カツオペプチド、マグロペプチド、プロポリス、ケール、霊芝、ノニ、ブドウ種子(プロアントシアニジン)等およびその抽出物を配合することができる。これらの配合可能なものは一種のみを配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
なお、本発明組成物に配合することができる食品素材は、前記素材に限定されるものでなく、その用途、目的にあわせて適宜配合することができる。また、必要に応じて賦形剤を配合でき、例えば、セルロース、結晶セルロース、乳糖、ショ糖脂肪酸エステル、乳糖、還元麦芽糖、α化澱粉、パインファイバー、デキストリン、パインデックス等を適宜配合することができる。
【0030】
食品としての形態は、例えば、固形食品、クリーム状又はジャム状の半流動食品、ゲル状食品、錠剤、散剤、キャプレットの他、ソフトカプセルあるいはハードカプセルに充填して用いることができる。この場合、カプセル皮膜がゼラチンの場合には、例えば、皮膜の不溶化を防止するために、カプセル剤の充填内容物総量に対し、ホスファチジルエタノールアミンおよびこれを含有する大豆レシチン、卵黄レシチンまたはアミノ糖(グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸等のアミノ基を有する糖類あるいはグルコサミンのポリマーであるキトサン)0.05〜20質量%と、有機酸(フィチン酸等のイノシトールリン酸誘導体、クエン酸等)0.05〜20質量%を、配合することができる。
【0031】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物を充填内容物とするソフトカプセル剤は一般公知の方法により製造することができる。例えば、ゼラチンを水に溶解し(この時熱を加えてもよい。また、必要に応じて可塑剤、防腐剤、アミノ酸等を加えることができる。)、得られた溶液を水分含量5〜20%、より好ましくは7〜15%まで乾燥させることによりカプセル皮膜を得る。このカプセル皮膜に、本発明の組成物、大豆レシチン、フィチン酸および必要に応じて賦形剤を添加した充填内容物を、液状、懸濁状、のり状、粉末状または顆粒状などの形で充填するか、または上記カプセル皮膜で充填内容物を被包成形することにより、製造することができる。
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物が、食品に含まれる配合量は任意に選択できる。
【0032】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物を化粧品として用いる場合には、その使用目的にあわせて本発明の効果を損なわない範囲で化粧料に配合でき、固形分として化粧料全体中の0.000005〜10.0重量%、好ましくは0.00001〜5.0重量%配合することができる。また、必要に応じてビタミンC、ビタミンE、アスタキサンチン、ブドウ種子(プロアントシアニジン)、コラーゲン、コンドロイチンおよびグルコサミンなどを適宜選択して配合して用いることもできる。これらは一種を使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物をシャンプー成分として用いる場合には、その使用目的にあわせて本発明の効果を損なわない範囲で、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、増泡剤、増粘剤、粉体、スクラブ剤、酸化防止剤、防腐剤、油剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、ポリマー類、無機パール剤、抗フケ剤、キレート剤、pH調整剤、電解質、着色剤、香料、頭皮またはヘアケア用の美容成分等、その他一般に化粧料に用いられる成分の配合が可能である。これら成分は一種を使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物が、シャンプーに含まれる配合量は任意に選択できる。
【0034】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物を口腔用組成物(歯磨き剤など)の成分として用いる場合には、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、発泡剤、その他一般に口腔用組成物(歯磨き剤)に用いられる成分を配合することができる。これら成分は一種を使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物が、口腔用組成物として用いられる場合、それに含まれる配合量は任意に選択できる。
【0035】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物を、医薬として使用する場合、注射、経直腸等の非経口投与、固形若しくは液体形態での経口投与等のための製薬上許容し得る担体と共に組成物として処方することができる。これら成分は一種を使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物、またはカラム精製物が、医薬に含まれる配合量は任意に選択できる。
【0036】
注射剤のための本発明による組成物の形態としては、製薬上許容し得る無菌水、非水溶液、懸濁液又は乳濁液が挙げられる。上記に使用されうる適当な非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。このような注射剤のための組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の補助剤をも含有することができる。これらの組成物は、例えば細菌保持フィルターによる濾過することにより、又は使用直前に、滅菌水あるいは若干の他の滅菌注射可能な媒質に溶解し得る無菌固形組成物の形態で滅菌剤を混入することにより、滅菌することができる。
【0037】
経口投与のための固形製剤としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。この固形製剤の調製に際しては、一般に本発明化合物を少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばスクロース、乳糖、でんぷん等、と混和する。この製剤には、通常の製剤化において不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム等)をさらに包含させることができる。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、緩衝剤をも包含し得る。錠剤及び丸剤には更に腸溶性被膜を施すこともできる。
【0038】
経口投与のための液体製剤としては、当業者間で普通に使用される不活性希釈剤、例えば水を含む製薬上許容し得る乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、エリキシール剤等が挙げられる。かかる不活性希釈剤に加えて、組成物には湿潤剤、乳化、懸濁剤、甘味剤、調味剤、香味剤等の補助剤をも配合することができる。経直腸投与のための製剤の場合、本発明化合物に加えてカカオ脂、坐剤ワックス等の賦形剤を含有するのが好ましい。
【0039】
本発明の加工方法により得られた組成物、その抽出物またはカラム精製物の投与量は、投与される組成物、その抽出物またはカラム精製物の性状、投与経路、所望の処置期間及びその他の要因によって左右される。一般に一日当り約0.1〜100mg/kg、特に約0.5〜50mg/kgが好ましい。また、所望によりこの一日量を2〜4回に分割して投与することもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を説明するがこれらは本発明を限定するものではない。
実施例1
【0041】
田七人参末100gとAspergillus oryzaeを起源とする酵素剤ラクターゼF「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)を10g測り取り、それに水2.5Lを添加し溶解、懸濁させ、50℃のインキュベーターに入れ、時々振とうさせながら、5日間反応させた。その後、1v/v%酢酸濃度となるように酢酸を添加し、加熱処理(120℃、40分)し反応させ、同時に酵素を失活させ、本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末113gを得た。
実施例2
【0042】
高麗人参100gとAspergillus oryzaeを起源とする酵素剤ラクターゼF「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)を10g測り取り、それに水2.5Lを添加し溶解、懸濁させ、50℃のインキュベーターに入れ、時々振とうさせながら、5日間反応させた。その後、1v/v%酢酸濃度となるように酢酸を添加し、加熱処理(120℃、40分)し反応させ、同時に酵素を失活させ、本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末98gを得た。
実施例3
【0043】
田七人参末100gとAspergillus nigerを起源とする酵素剤セルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)5gを測り取り、それに水2.5Lを添加し、50℃のインキュベーターに入れ、時々振とうさせながら5日間反応させた。その後、5%塩酸を10mL添加し、加熱処理(120℃、40分)し反応させ、同時に酵素を失活させた。本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末108gを得た。
実施例4
【0044】
田七人参末100gとAspergillus nigerを起源とする酵素剤セルロシンHC(阪急バイオインダストリー株式会社製)10gを測り取り、それに水2.5Lを添加し、50℃のインキュベーターに入れ、時々振とうさせながら5日間反応させた。その後、クエン酸5gを添加し、加熱処理(120℃、40分)し反応させ、同時に酵素を失活させた。本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末115gを得た。
実施例5
【0045】
実施例1で得られた粉末5.0gを精製水100mLに溶解する。この溶液をダイアイオンHP20(三菱化学株式会社製)200CCのカラムに加え、カラム容積の10倍量の精製水で不要物を洗い出す。続いてカラム容積の5倍量の70%のエタノールで溶出する。溶出液を回収し、さらにイオン交換樹脂・ダイヤイオンSK104(三菱化学株式会社製)に通過させた後、カラム容積の等倍量の70%のエタノールで溶出する。溶出液を濃縮し、減圧乾燥を経て固体粉末400mgを得た。
【0046】
(試験例1)
実施例1で得られた組成物と未処理の田七人参との肝保護作用を比較するためにラットのガラクトサミン誘発肝障害モデルを用いて実験を実施した。このガラクトサミン誘発肝障害モデルは、臨床との相関を考慮した場合、一般的な免疫学的肝障害モデルとして知られている。また、肝細胞が障害を受けると、細胞中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(GOT)やアラニンアミノトランスフェラーゼ(GPT)などの酵素が血液中に遊離し、これらの酵素活性が急上昇する。すなわち、血液中のこれらGOTおよびGPT活性は、肝臓の機能障害を示す指標として知られているため、以下のとおり実験を行った。
Wistar系雄性ラット(6週齢)を1週間の予備飼育後、実験に用いた。実験群は、ノーマル群、コントロール群、田七人参3.0g/kg投与群および田七人参加工処理物(実施例1)3.3g/kg投与群の4群とし、ノーマル群は5匹、その他の群は1群10匹にて行った。投与液はすべて20mL/kgの容量でラットに経口投与し、コントロール群には蒸留水を同量、経口投与した。ノーマル群を除く3群に7日間、被検物質を1日1回経口投与し、その最終日にガラクトサミン400mg/kgを静脈内投与し肝障害を惹起させた。ガラクトサミン投与24時間後に、腹部大動脈より採血を行い、血漿中のGPTおよびGOT活性をトランスアミナーゼCIIテストワコーにて測定した。検定は、1元配置分散分析後、Tukeyの多重検定を行った。その結果を図1および図2に示す。実施例1の田七人参加工処理物は、田七人参と比較して、GPTおよびGOT活性の有意な抑制結果が得られ(p<0.01)、肝保護作用を有することが認められた。
【0047】
(軟カプセル製造例)
ゼラチン43重量%、グリセリン17重量%及び水40重量%からなるゼラチン溶液を80℃で溶解、脱泡した後、約10時間静置してロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)を用いて、実施例1の粉末150mgを溶解したシソ油180mg、大豆レシチン2mg、フィチン酸18mgを充填した。カプセル充填後、温度27℃、湿度50%以下で、皮膜水分8%まで乾燥した。ソフトカプセル剤が製造された。
【0048】
(参考例1)
田七人参末100gを測り取り、それに水2.5Lを添加し溶解、懸濁させた。さらに1v/v%酢酸濃度となるように酢酸を添加し、加熱処理(120℃、40分)し反応させ、本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末101gを得た。
【0049】
(参考例2)
田七人参末100gとAspergillus oryzaeを起源とする酵素剤ラクターゼF「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)を10g測り取り、それに水2.5Lを添加し溶解、懸濁させ、50℃のインキュベーターに入れ、時々振とうさせながら、5日間反応させた。その後、加熱処理(105℃、10分間)し酵素を失活させ、本反応液をそのまま凍結乾燥し、褐色の粉末110gを得た。
【0050】
(試験例2)
実施例1で得られた組成物と未加工の田七人参、参考例1組成物、参考例2組成物との肝保護作用を検討するために、ラットのガラクトサミン誘発肝障害モデルおよび四塩化炭素誘発肝障害モデルを用いて実験を実施した。ガラクトサミン誘発肝障害モデルはウイルス性肝炎モデル、四塩化炭素誘発肝障害モデルは中毒性の肝炎モデルとして臨床成績との相関性が高いことが知られている。
Wistar系雄性ラット(6あるいは7週齢)を1週間の予備飼育後、7週齢となったラットはガラクトサミン誘発肝障害モデル、8週齢となったラットは四塩化誘発肝障害モデル実験に用いた。実験群は、ノーマル群、コントロール群、未加工田七人参3.0g/kg投与群、参考例1組成物3.0g/kg投与群、参考例2組成物3.3g/kg投与群および実施例1組成物3.3g/kg投与群の6群とし、ノーマル群は3匹、その他の群は1群10匹にて行った。投与液はすべて20mL/kgの容量でラットに経口投与し、コントロール群には蒸留水を同量、経口投与した。ガラクトサミン誘発肝障害モデルを用いた実験では、ノーマル群を除く5群に4日間、被検物質を1日1回経口投与し、その最終日にガラクトサミン400mg/kgを静脈内投与し肝障害を惹起させた。同様に四塩化炭素誘発肝障害モデルを用いた実験では、ノーマル群を除く5群に4日間、被検物質を1日1回経口投与し、その最終日に四塩化炭素0.75ml/kgを腹腔内投与し肝障害を惹起させた。ガラクトサミン(あるいは四塩化炭素)投与24時間後に、腹部大動脈より採血を行い、血漿中のGPT活性をトランスアミナーゼCIIテストワコーにて測定した。検定は、1元配置分散分析後、Tukeyの多重検定を行った。コントロール群と比較し有意な差が認められない場合は×、有意な差が認められる場合は○(p<0.05)、特に有意な差が認められる場合には◎(p<0.01)と標記し、その結果を表1に示す。実施例1組成物は、未加工田七人参や参考例1組成物、参考例2組成物と比較して、両モデルにおいて強いGPT活性上昇抑制効果が確認された。以上のことより、実施例1組成物は強い肝保護作用を有することが認められた。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、薬用人参がもつ様々な薬理効果の増強を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ガラクトサミンにより惹起された急性肝障害モデルにてGPT活性における肝保護作用の効果を比較した図である。
【図2】ガラクトサミンにより惹起された急性肝障害モデルにてGOT活性における肝保護作用の効果を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と、薬用人参を酸またはアルカリと反応させる工程(b)、を含み、
前記工程のどちらか一方で薬用人参を処理した後に、処理された前記人参を残りの工程でさらに処理を行う、薬用人参の加工方法。
【請求項2】
薬用人参を微生物または酵素に接触させる工程(a)と、薬用人参を酸またはアルカリと反応させる工程(b)とを、この順で加工する、請求項1記載の薬用人参の加工方法。
【請求項3】
工程(a)が薬用人参を酵素に接触させる工程、工程(b)が薬用人参を酸と反応させる工程、である請求項1記載の薬用人参の加工方法。
【請求項4】
薬用人参が田七人参である、請求項1記載の薬用人参の加工方法。
【請求項5】
請求項1記載の加工方法により得られる、組成物。
【請求項6】
請求項5記載の組成物を、抽出およびカラムの少なくとも1つで精製することにより得られる、組成物。
【請求項7】
請求項5記載の組成物を含有する、食品。
【請求項8】
請求項5記載の組成物を含有する、医薬。
【請求項9】
肝保護剤である、請求項8記載の医薬。
【請求項10】
請求項5記載の組成物を含有する、化粧品。
【請求項11】
請求項5記載の組成物を含有する、軟カプセル剤。
【請求項12】
請求項5記載の組成物が、肝保護作用、抗動脈硬化、老化防止、抗腫瘍作用、抗高脂血症、抗血栓、血圧降下作用、免疫機能改善、血糖値低下作用、鎮痛作用、強心作用、抗炎症作用、末梢血流改善作用、止血作用、抗酸化作用、抗ストレスからなる群から選択される少なくとも1つを示す組成物。
【請求項13】
請求項5記載の組成物を使用した治療方法。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/030235
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514260(P2005−514260)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014265
【国際出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】