説明

血圧データ管理システムおよび血圧データ管理方法

【課題】遠隔地の血圧計により測定される血圧データを、インターネットを介してサーバへ容易に転送し管理する。
【解決手段】インターネット6に接続されたサーバ7及びドクター用コンピュータ8と、血圧計1と、携帯電話5と、複数のデータ転送装置とを備え、血圧データをデータ転送装置により、携帯電話を用いインターネットを経由してサーバに転送する。データ転送装置は、血圧データを取得するデータ取得部13と、識別ナンバーが格納されたメモリと、血圧データに識別ナンバー及び送信命令データを併せた転送データを作成して携帯電話に転送するデータ転送部14とを備える。サーバは、携帯電話を介して、患者の服薬有無情報、血圧データ、及び脈拍データを受信して、識別ナンバーと対応させて蓄積し、ドクター用コンピュータは、サーバに蓄積された当該データを取得して、経時変化を示すグラフを服薬有無情報とともに、患者と対応させて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計から得られる血圧データを、インターネットを経由して収集するための血圧データ管理システム、および血圧データ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の血圧計等の装置データを収集するためのシステムの構成を模式的に示す図である。このデータ収集システムは、患者の血圧を測定するための血圧計31と、パーソナルコンピュータ32と、インターネット33に接続された血圧データを蓄積するためのサーバ34とから構成されている。
【0003】
血圧計31は、シリアルケーブル35を介してパーソナルコンピュータ32に接続される。パーソナルコンピュータ32は、インターネット33を経由してサーバ34と接続可能である。このデータ収集システムにより、血圧計31によって測定された患者の血圧を示す血圧データを、サーバ34に蓄積することができる。
【0004】
このように構成されたデータ収集システムにおいては、血圧計31によって患者の血圧が測定されると、測定された血圧を示す血圧データは、シリアルケーブル35を通ってパーソナルコンピュータ32へ転送される。パーソナルコンピュータ32へ転送された血圧データは、インターネット33を経由してサーバ34に蓄積される。
【0005】
このデータ収集システムにより、遠隔地に居住する患者の血圧データを収集することが容易になり、遠隔地に居住する患者の血圧に関連する健康状態を医師が診断することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−355305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなデータ収集システムの構成では、血圧計31によって測定された患者の血圧データをサーバ34へ転送するためには、パーソナルコンピュータ32を操作してインターネット33に接続する必要がある。パーソナルコンピュータ32は、電源をオンにしてから操作可能な状態になるまでの起動時間が長く、また血圧データをサーバ34へ転送するためのソフトウェアを動作させるために、マウスおよびキーボード等の入力機器の操作が煩雑である。
【0008】
このようなデータ収集システムを利用して診断を受ける患者は、パーソナルコンピュータ等の操作に習熟していない高齢者である場合が多く、操作が煩雑であることは影響が大きい。そのため、遠隔地に居住する患者が、自らの血圧データをインターネット33を経由してサーバ34に転送することが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、遠隔地に設けられた血圧計により取得される血圧データ等のデータを、インターネットに接続されたサーバへ容易に転送し管理することを可能とする血圧データ収集システム、及び血圧データ管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の血圧データ管理システムは、インターネットに接続されたサーバと、前記サーバに蓄積されたデータを分析するために前記インターネットに接続されたドクター用コンピュータと、血圧データを電気信号として出力する血圧計と、前記インターネットに接続可能な携帯電話と、前記携帯電話及び前記血圧計に接続可能な複数のデータ転送装置とを備え、前記データ転送装置により前記血圧計から取得した血圧データを、前記携帯電話を用い前記インターネットを経由して前記サーバに転送するように構成される。
【0011】
前記データ転送装置は、前記血圧計から前記血圧データを取得するデータ取得部と、データ転送装置を相互に識別するための識別ナンバーが格納されたメモリと、前記血圧データに前記識別ナンバー及び送信命令データを併せた転送データを作成して前記携帯電話に転送するデータ転送部とを備える。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の血圧データ管理システムによれば、前記サーバは、前記携帯電話を介して、前記患者が所定の薬剤を服用したか否かを示す服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを受信して、前記識別ナンバーと対応させて蓄積し、前記ドクター用コンピュータは、前記サーバに蓄積された前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び前記脈拍データを取得して、それらの経時的な変化を示すグラフを前記服薬有無情報とともに、前記識別ナンバーに基づき前記患者と対応させて表示する。
【0013】
また、本発明の血圧データ管理方法は、インターネットに接続されたサーバと、前記サーバに蓄積されたデータを分析するために前記インターネットに接続されたドクター用コンピュータと、血圧データを電気信号として出力する血圧計と、前記血圧計に接続可能な複数のデータ転送装置と、前記インターネットに接続可能な携帯電話とを用い、前記血圧計から取得される血圧データを、前記携帯電話から前記インターネットを経由して前記サーバに転送することにより血圧データを管理する方法である。前記データ転送装置としては、上記血圧データ管理システムを構成するものと同様のデータ転送装置を用いる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の血圧データ管理方法によれば、前記携帯電話を介して、前記患者が所定の薬剤を服用したか否かを示す服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを前記サーバへ送信し、前記サーバにより、前記携帯電話を介して受信する前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを前記識別ナンバーと対応させて蓄積し、前記ドクター用コンピュータにより、前記サーバに蓄積された前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び前記脈拍データを取得して、それらの経時的な変化を示すグラフを前記服薬有無情報とともに、前記識別ナンバーに基づき前記患者と対応させて表示させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の血圧データ収集システムによれば、遠隔地に設けられた血圧計により取得された血圧データを、携帯電話からインターネットを経由して、所定のサーバへ容易に収集し、管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるデータ収集システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】同システムの構成に用いられるデータ転送装置の構成を示すブロックである。
【図3】同データ転送装置の外観を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態におけるデータ収集システムのサーバに蓄積された血圧データ等を、グラフによって表示した画面を示す図である。
【図5】同データ収集システムのサーバに蓄積された血圧データ等の数値を表示した画面を示す図である。
【図6】同データ収集システムの血圧計を使用する患者のデータを表示した画面を示す図である。
【図7】同データ収集システムの血圧計を使用する患者のリストを表示した画面を示す図である。
【図8】従来のデータ収集システムの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の血圧データ収集システムは、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0018】
すなわち、前記データ転送装置は、始動スイッチを備え、前記始動スイッチの操作により、前記データ取得部及び前記データ転送部の前記動作を開始させる構成とすることができる。
【0019】
また、前記サーバは、前記血圧データが異常であるときに異常報告メールを前記ドクター用コンピュータへ送信する異常血圧値処理部を含み、前記異常血圧処理部は、前記ドクター用コンピュータから送信された処置指示に基づいて処置指示メールを前記携帯電話へ送信する構成とすることができる。
【0020】
この構成において、前記異常血圧処理部は、予め用意された複数種類の処置指示メールのうちの1つを前記携帯メールへ送信する構成とすることができる。
【0021】
また、前記処置指示メールは、前記患者が服用すべき服用薬の服用量の変更を指示する記載を含む構成とすることができる。
【0022】
また、前記携帯電話から、前記患者の有害症状を示す有害症状情報を前記サーバへ送信可能であり、前記サーバは、前記有害症状情報に基づいて有害症状報告を前記ドクター用コンピュータへ送信する有害症状処理部を含み、前記有害症状処理部は、前記ドクター用コンピュータから送信された処置指示に基づいて処置指示メールを前記携帯電話へ送信する構成とすることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態におけるデータ収集システムの構成を模式的に示す。このデータ収集システムは、複数の血圧計1から、各患者の血圧をそれぞれ測定した血圧データを収集するためのシステムである。各血圧計1には、シリアルケーブル2を介してデータ転送装置3がそれぞれ接続される。各データ転送装置3は、転送ケーブル4を介して携帯電話5に接続される。各携帯電話5は、インターネット6に接続可能である。
【0025】
データ収集システムはさらに、各血圧計1によって測定された血圧データを蓄積するためにインターネット6に接続されたサーバ7と、インターネット6に接続可能なドクター用コンピュータ8とを含む。ドクター用コンピュータ8は、サーバ7に蓄積された血圧データを医師が分析するために設けられる。
【0026】
サーバ7には、服薬症状判定部7a、異常血圧値処理部7b、及び有害症状処理部7cが設けられている。服薬症状判定部7aは、血圧計1を使用する患者が所定の薬剤を服用したか否かの服薬有無情報に基づいて、薬剤の服用に関する警告メールを携帯電話5へ送信する。そのために患者は、携帯電話5を用いて服薬有無情報をサーバ7に送信し、サーバ7は服薬有無情報を蓄積する。異常血圧値処理部7bは、血圧計1によって測定され携帯電話5を介して転送された患者の血圧データに異常があるときに、異常報告メールをドクター用コンピュータ8へ送信する。有害症状処理部7cは、携帯電話5から送信される患者の有害症状を示す有害症状情報に基づいて、有害症状報告をドクター用コンピュータ8へ送信する。
【0027】
図2は、本実施の形態におけるデータ収集システムに用いられるデータ転送装置3の構成、および血圧計1、携帯電話5との接続構造を示すブロック図である。データ転送装置3は、シリアルケーブル2の一端と接続されるシリアル端子9、及び転送ケーブル4の一端と接続される転送端子10を備えている。シリアルケーブル2の他端は、血圧計1に設けられたシリアル端子11と接続される。転送ケーブル4の他端は、携帯電話5の端子12と接続される。各ケーブルと端子とは、接続・分離が自在である。
【0028】
データ転送装置3は、主要な要素として、データ取得部13、データ転送部14、及び制御部15を有する。それらの要素は、マイクロプロセッサにより構成することができる。データ取得部13には、シリアル端子11、シリアルケーブル2、及びシリアル端子9を介して、血圧計1の出力が供給される。データ取得部13の出力は、データ転送部14に供給される。データ転送部14の出力は、転送端子10、転送ケーブル4、及び転送端子12を経由して携帯電話5に供給される。制御部15は、データ取得部13及びデータ転送部14の動作を制御する。
【0029】
制御部15には、押しボタンスイッチ6が接続され、その操作により、制御部15は、データ取得部13とデータ転送部14による一連の動作が開始されるように制御する。制御部15には、シリアル端子9及び転送端子10が接続され、シリアルケーブル2の接続状態と転送ケーブル4の接続状態の良否を判定する。判定方法は通常のどのような方法を用いてもよいので、具体的な説明は省略する。判定結果は、ランプ17により示される。
【0030】
データ取得部13は、制御部15による制御により始動し、血圧計1から、測定された血圧データ、および血圧を測定した日時を特定するデータを含む血圧計データを取得してデータ転送部14に供給する。
【0031】
データ転送部14は、データ作成部18及び転送処理部19を含む。データ転送部14にはメモリ20が接続され、メモリ20には、各データ転送装置3を識別するためのシリアルナンバー、及び送信命令データが格納されている。データ作成部18は、データ取得部13から得られる血圧計データに、メモリ20から得られるシリアルナンバー及び送信命令データを付加して転送データを作成し、転送処理部19に供給する。転送処理部19では、キーボードエミュレーション形式に従って、転送データを、携帯電話5のキーなどを押した状態を表すエミュレーションコードに変換して携帯電話5に転送する。
【0032】
携帯電話5では、転送されたデータに含まれる送信命令データに基づき、インターネット6への接続処理と、血圧計データ及びシリアルナンバーをサーバ7へ送信する処理が行われる。その結果、携帯電話5からインターネット6を経由して、サーバ7へ血圧計データ及びシリアルナンバーが転送される。
【0033】
携帯電話5からの転送処理は、例えば、インターネットのPOST/GETメソッドに基づいて行われる。そのため、データ転送装置3のメモリ20に格納される送信命令データには、携帯電話5のメニュー選択、インターネットに接続するための携帯電話5の機能の起動及び接続、転送すべきサーバのURL入力に関するデータが含まれる。転送処理部19では、それらの送信命令データと、血圧計データ数値及びシリアルナンバーを、エミュレーションコードに変換して出力する。なお、携帯電話5がエミュレータを有する場合は、転送処理部19による変換処理は不要である。
【0034】
データ転送装置3に設けられた電源21は、例えば乾電池によって構成されており、データ取得部13、データ転送部14、制御部15、ランプ17およびメモリ20が動作するための電圧を供給する。
【0035】
図3は、本実施の形態に係るデータ転送装置3の外観を示す斜視図である。データ転送装置3は、略直方体形状をしており、その上面の中央に、楕円形状をした押しボタンスイッチ16が設けられている。押しボタンスイッチ16の隣には、三日月形状をしたランプ17が設けられている。
【0036】
以上のように構成されたデータ収集システムの動作について、以下に説明する。データ転送装置3の電源がオンされると、制御部15は、シリアルケーブル2及び転送ケーブル4の接続状態の良否を検出する。接続状態が良好であるときはランプ17を点灯させ、シリアルケーブル2、または転送ケーブル4のいずれかの接続状態が不良であるときは、ランプ17を点滅させる。それにより、シリアルケーブル2または転送ケーブル4の接続状態を修正することができ、接続不良を原因とする血圧計データの転送エラーを防止することができる。
【0037】
次に、押しボタンスイッチ16が患者によって押下されると、データ取得部13は、血圧計1によって測定された血圧計データを、シリアル通信によって取得する。取得された血圧計データは、データ転送部14に供給される。
【0038】
次に、データ転送部14では、まずデータ作成部18により、メモリ20に格納されたシリアルナンバー及び送信命令データを血圧計データに付加して、転送処理部19に供給する。転送処理部19では、携帯電話5のキーボードエミュレーション形式に従ってデータを変換し、携帯電話5に転送する。
【0039】
携帯電話5は、データ転送部14から受け取った転送データ中の送信命令データに従い、インターネット6と接続するための動作、血圧計データおよびシリアルナンバーを、インターネット6を介してサーバ7へ送信する動作を行う。そして、サーバ7は、各携帯電話5から送信された血圧計データおよびシリアルナンバーを受信して蓄積する。
【0040】
以上の結果、ドクター用コンピュータ8により、サーバ7に蓄積された血圧計データを、インターネット6を介して取得して分析することが可能となる。
【0041】
このように、本実施の形態のデータ収集システムによれば、データ転送装置3は、血圧計1によって測定された血圧計データを、携帯電話5から、インターネット6を経由してサーバ7にほぼ自動的に転送する。従って、操作が煩雑なパーソナルコンピュータを使用することなく、血圧計データを簡便に送信することができる。すなわち、データ転送装置3の操作は、シリアルケーブル2及び転送ケーブル4を用いた接続と、押しボタンスイッチ16のワンプッシュだけであるので、極めて簡単である。
【0042】
次に、ドクター用コンピュータ8の機能について説明する。ドクター用コンピュータ8により、サーバ7に蓄積された血圧データをインターネット6を介して取得し、分析が行われる。図4は、サーバ7に蓄積された血圧データを、ドクター用コンピュータ8によりグラフで表示した画面を示す。図5は、血圧、体重、脈拍、体重等のデータを数値で表示し、あるいは服用薬剤名等を表示した画面を示す。図6は血圧計1を使用する患者に関して、履歴、病歴、服用履歴等のデータを表示した画面を示す。図7は、このデータ収集システムを利用している患者のリストを表示した画面を示す。
【0043】
図4および図5に示すように、患者は患者IDによって特定され、年齢、性別、薬剤の服用の開始時期、薬剤のメーカ名、および薬剤の名称が画面に表示される。
【0044】
図4および図5には、患者IDが00030003である患者の2003年8月1日7時37分から8月7日0時4分までのデータが表示されている。図4の折れ線22上の●は最高血圧データ、折れ線23上の●は最低血圧データを示す。折れ線24上の▲は患者の体重データ、■は脈拍データ、及び縦棒26は摂取した塩分量データを示す。これらのデータは、必要に応じて、携帯電話5に入力してサーバ7へ送信可能なように構成される。また、図5の画面には、図4の画面に示したデータが、数値で表示される。
【0045】
さらに図4の画面には、1種類の薬剤(薬剤1)が服用され、薬剤のメーカーは「A社」であり、その薬剤名は「アダラート」であることが表示されている。また、薬剤の使用期間は2003年7月28日21時0分48秒から2003年12月16日13時49分57秒であることが示されている。図4の横棒28は、薬剤1が服用された期間を示す。
【0046】
患者が服用すべき薬剤を服用したか否かを示す服薬有無情報は、携帯電話5から入力可能である。入力された服薬有無情報は、携帯電話5からサーバ7に送信される。サーバ7に設けられた服薬状況判定部7aは、送信された服薬有無情報に基づいて、薬剤の服用に関する警告メールを携帯電話5へ送信する。例えば、服薬率が80%未満である場合、3日連続して服薬していない場合、あるいは服薬有無情報が3日連続して送信されてない等の場合に、服薬状況判定部7aは警告メールを送信する。このため、服薬忘れ、勘違い等を患者に気づかせることができる。
【0047】
サーバ7に設けられた異常血圧値処理部7bは、データ転送装置3から携帯電話5を介して送信された血圧データが異常であるときに、異常報告メールをドクター用コンピュータ8へ送信する。ドクター用コンピュータ8からは、異常報告メールに基づいて、異常血圧値処理部7bへ処置指示が送信される。異常血圧値処理部7bは、ドクター用コンピュータ8から送信された処置指示に基づいて、処置指示メールを携帯電話5へ送信する。
【0048】
サーバ7には、複数種類の処置指示メールが予め準備されている。この複数種類の処置指示メールは、血圧データの異常の程度に応じてグレードが分けられている。例えば、服用量を原則として4週間毎に増減させる降圧薬の治験の場合には、次の3種類のメールが用意される。
【0049】
1)次回(4週目)から服用量を変更(増量または減量)する処置指示メール
2)早めに服用量を変更(増量または減量)する処置指示メール
3)至急来院することを指示する処置指示メール
異常血圧値処理部7bは、このように予め用意された複数種類の処置指示メールのうちの1つを、ドクター用コンピュータ8から送信された処置指示に基づき選択して、携帯電話5に送信する。このように、異常値が自動的に医師に連絡されるため、患者に安心感を与えることができる。
【0050】
また患者は、自らの身体に生じた有害症状を示す有害症状情報を、携帯電話5によりサーバ7へ送信可能である。有害症状情報は、例えば頭痛、ふらつき、吐き気およびじんましんに関する情報等である。
【0051】
サーバ7に設けられた有害症状処理部7cは、携帯電話5から送信された有害症状情報に基づいて、有害症状報告をドクター用コンピュータ8へ送信する。ドクター用コンピュータ8は、有害症状処理部7cから送信された有害症状報告に基づいて処置指示を有害症状処理部7cへ返信する。有害症状処理部7cは、ドクター用コンピュータ8からの処置指示に基づいて処置指示メールを携帯電話5へ送信する。
【0052】
このデータ収集システムにおいて、データ転送装置3は乾電池によって構成される電源21によって動作するので、取り扱いに便利である。データ転送装置3に接続すべき携帯電話は、広く普及して入手が容易であり、小型であるため取り扱いも便利である。従って、例えば、遠隔地の患者が血圧計1によって自らの血圧を毎日、1日に3回ないし4回測定し、その血圧計データをその夜に毎日1回インターネットに接続されたサーバ7へ送信することは容易である。あるいは、1日分をまとめてサーバ7へ送信することも容易である。
【0053】
送信する際の操作手順としては、例えば、まず携帯電話5の電源を入れ、そしてデータ転送装置3の電源と血圧計1の電源とを入れる。次に、データ転送装置3と携帯電話5とを転送ケーブル4によって接続し、またデータ転送装置3と血圧計1とをシリアルケーブル2によって接続する。その後、データ転送装置3の押しボタンスイッチ16を押すと、その日に測定した血圧データが血圧計1から携帯電話5およびインターネット6を経由してサーバ7へ自動的に送信される。
【0054】
また、携帯電話5からインターネット6上をサーバ7に向かって転送される血圧計データおよびシリアルナンバーは、数字の羅列によって構成されているので、インターネット6上においてこれらのデータを傍受しても、患者のIDを知ることはできない。このため、患者のプライバシーを守ることができる。
【0055】
医師は、サーバ転送されたシリアルナンバーおよび患者IDを照合して、初めて患者を特定できる。上記シリアルナンバーは、各データ転送装置3に付与されているため、血圧計や携帯電話を識別するための手段は必要はない。例えば、血圧計や携帯電話にIDを入力する必要がなく、操作が簡便である。また、1台のデータ転送装置を1人の患者と対応させることができるので、血圧計や携帯電話は複数人で兼用可能である。さらに医師は、サーバ7に収集された血圧データを、ドクター用コンピュータ8によって即時に分析することができるので、血圧データに異常値があれば、ジャストタイムで認識することができる。このため、患者に対して速やかに治療等を開始することができる。
【0056】
なお、上述の実施の形態では、データ転送装置3を血圧計1に接続する例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、取り扱うデータをシリアル通信によって転送可能な電気機器であれば、本実施の形態のデータ転送装置3に接続して、同様の効果を得ることが可能である。例えば、患者の脈拍を測定するための脈拍計、透析機器、血糖値計等の他の医療機器にデータ転送装置を接続してもよい。
【0057】
また、電気の消費量を測定するための電気メータ、水道水の消費量を測定する水道メータ等にデータ転送装置3を接続してもよい。あるいは、物を生産するための生産設備にデータ転送装置3を接続し、生産設備の動作状態に関連するログデータを転送することもできる。あるいは、家電製品にデータ転送装置3を接続して、家電製品の動作状態を示すデータ、例えばバッテリー切れの有無を示すデータ等を転送することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のデータ収集システムによれば、遠隔地に設けられた血圧計等の装置から取得される血圧データ等の装置データを、インターネットを経由して簡便に収集することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 自動取得部
2 自動転送部
3 押しボタンスイッチ
4 シリアル端子
5 転送端子
6 ランプ
7 メモリ
8 血圧計
9 シリアル端子
10 シリアルケーブル
11 携帯電話
12 転送ケーブル
13 インターネット
14 サーバ
15 電源
16 ドクターPC
100 コンバータ
200 データ収集システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットに接続されたサーバと、前記サーバに蓄積されたデータを分析するために前記インターネットに接続されたドクター用コンピュータと、血圧データを電気信号として出力する血圧計と、前記インターネットに接続可能な携帯電話と、前記携帯電話及び前記血圧計に接続可能な複数のデータ転送装置とを備え、前記データ転送装置により前記血圧計から取得した血圧データを、前記携帯電話を用い前記インターネットを経由して前記サーバに転送するように構成された血圧データ管理システムにおいて、
前記データ転送装置は、前記血圧計から前記血圧データを取得するデータ取得部と、データ転送装置を相互に識別するための識別ナンバーが格納されたメモリと、前記血圧データに前記識別ナンバー及び送信命令データを併せた転送データを作成して前記携帯電話に転送するデータ転送部とを備え、
前記サーバは、前記携帯電話を介して、前記患者が所定の薬剤を服用したか否かを示す服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを受信して、前記識別ナンバーと対応させて蓄積し、
前記ドクター用コンピュータは、前記サーバに蓄積された前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び前記脈拍データを取得して、それらの経時的な変化を示すグラフを前記服薬有無情報とともに、前記識別ナンバーに基づき前記患者と対応させて表示することを特徴とする血圧データ管理システム。
【請求項2】
前記データ転送装置は、始動スイッチを備え、前記始動スイッチの操作により、前記データ取得部及び前記データ転送部の前記動作を開始させる請求項1記載の血圧データ管理システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記血圧データが異常であるときに異常報告メールを前記ドクター用コンピュータへ送信する異常血圧値処理部を含み、
前記異常血圧処理部は、前記ドクター用コンピュータから送信された処置指示に基づいて処置指示メールを前記携帯電話へ送信する請求項1に記載の血圧データ管理システム。
【請求項4】
前記異常血圧処理部は、予め用意された複数種類の処置指示メールのうちの1つを前記携帯メールへ送信する請求項3に記載の血圧データ管理システム。
【請求項5】
前記処置指示メールは、前記患者が服用すべき服用薬の服用量の変更を指示する記載を含む請求項3に記載の血圧データ管理システム。
【請求項6】
前記携帯電話から、前記患者の有害症状を示す有害症状情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、前記有害症状情報に基づいて有害症状報告を前記ドクター用コンピュータへ送信する有害症状処理部を含み、
前記有害症状処理部は、前記ドクター用コンピュータから送信された処置指示に基づいて処置指示メールを前記携帯電話へ送信する請求項1に記載の血圧データ管理システム。
【請求項7】
インターネットに接続されたサーバと、前記サーバに蓄積されたデータを分析するために前記インターネットに接続されたドクター用コンピュータと、血圧データを電気信号として出力する血圧計と、前記血圧計に接続可能な複数のデータ転送装置と、前記インターネットに接続可能な携帯電話とを用い、前記血圧計から取得される血圧データを、前記携帯電話から前記インターネットを経由して前記サーバに転送することにより血圧データを管理する方法において、
前記データ転送装置は、前記血圧計から前記血圧データを取得するデータ取得部と、データ転送装置を相互に識別するための識別ナンバーが格納されたメモリと、前記血圧データに前記識別ナンバー及び送信命令データを併せた転送データを作成して前記携帯電話に転送するデータ転送部とを備え、
前記携帯電話を介して、前記患者が所定の薬剤を服用したか否かを示す服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを前記サーバへ送信し、
前記サーバにより、前記携帯電話を介して受信する前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び脈拍データを前記識別ナンバーと対応させて蓄積し、
前記ドクター用コンピュータにより、前記サーバに蓄積された前記服薬有無情報、前記血圧データ、及び前記脈拍データを取得して、それらの経時的な変化を示すグラフを前記服薬有無情報とともに、前記識別ナンバーに基づき前記患者と対応させて表示させることを特徴とする血圧データ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−172398(P2009−172398A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76511(P2009−76511)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【分割の表示】特願2005−506400(P2005−506400)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【出願人】(504292819)
【Fターム(参考)】