血圧測定装置
【課題】所定期間全体にわたった血圧変動パターンを取得する。
【解決手段】所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置であって、被検者の血圧を測定するための血圧測定部100と、血圧の変動に関連する情報であって所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、満たすと判定されるとき、血圧測定部100を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、所定条件を、所定期間内において計時される時間の関数として表わす。
【解決手段】所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置であって、被検者の血圧を測定するための血圧測定部100と、血圧の変動に関連する情報であって所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、満たすと判定されるとき、血圧測定部100を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、所定条件を、所定期間内において計時される時間の関数として表わす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置に関し、特に、血圧測定の起動タイミングを制御する血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は、睡眠中に気道が物理的に閉塞し、最長2分にもわたって呼吸が停止する疾病である。無呼吸発作では、血圧が一時的に上昇する(以下、夜間血圧サージという)。たとえば、平常時に120〜130mmHgの血圧は200mmHg超まで上昇する。したがって、無呼吸発作の度に、突然死や脳卒中、心不全などの心血管疾患やリスクが生じる。したがって、夜間血圧サージを正確に測定することが要求される。
【0003】
夜間血圧サージの測定には、呼吸の停止に伴い血中酸素飽和度が低下する。そこで、血中酸素飽和度をオキシメータで計測し、計測した血中酸素飽和度が設定された基準を下回ったとき、血圧測定を起動する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−155829号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A New Technique for Detecting Sleep BP Apnea-Related "Midnight” Surge of Blood Pressure Shirasaki et al Hypertens Res Vol,29,No.9(2006)p695-702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重症のOSA患者では一晩に数百回も無呼吸発作が起こり、およびそれに伴う低酸素状態が起こる。したがって、特許文献1のように、血中酸素飽和度が手動設定された基準を下回ったときに血圧測定を起動する場合には、重症のOSA患者では、血圧測定回数が膨大となり、被検者の睡眠を著しく阻害してしまう。
【0007】
また、非特許文献1では、閾値を最初は比較的高いレベルに設定しておき、測定開始後に現れる血中酸素飽和度の最低値を逐次記憶しておいて、血中酸素飽和度が前回の最低値を下回った時に血圧測定を行う機能を追加的に持たせている。こうすることによって、軽症者から重症者にわたって閾値を個人個人に合わせて自動調整することができる。ところが、この方法においては、その晩の一番重度の低呼吸状態が睡眠初期に現れた場合、それ以降、血圧測定が一切行われないと言う課題が残されている。
【0008】
本発明の目的は、所定期間全体にわたった血圧変動パターンを取得することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置は、被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、血圧の変動に関連する情報であって前所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、満たすと判定されるとき、血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、所定条件を、所定期間内において計時される時間の関数として表わす。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定期間全体にわたった血圧変動パターンを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置のハードウェア構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパルスオキシメータの測定部位への装着態様を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る血圧測定装置の機能構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るメモリ部の内容例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る測定データ記憶部の内容例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る測定処理のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。
【図8】本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を説明するためのグラフである。
【図10】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、閾値を固定にした測定と比較して説明するためのグラフである。
【図11】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、ABPMによる測定と比較して説明するためのグラフである。
【図12】本発明に実施の形態2に係る血圧測定装置のハードウェア構成図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る気流センサの外観を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る血圧測定装置の機能構成図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る呼吸信号とトリガ出力との関係を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明の実施の形態2に係る測定処理のフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3に係る測定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0013】
本実施の形態では、被検者の血圧を除いた情報を取得し、取得した情報に基づき、血圧測定部を起動する。ここで、起動とは、血圧測定部による血圧測定に係る処理を開始させることを言う。
【0014】
<実施の形態1>
(血中酸素飽和度)
本実施の形態1では、被検者の血中酸素飽和度をモニタし、モニタの結果である時系列の血中酸素飽和度に基づき血圧測定部を起動する。
【0015】
(ハードウェア構成)
図1は本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1Aのハードウェア構成図である。図1Aを参照して、血圧測定装置1Aは、本体部10A、被検者の血圧測定部位、たとえば上腕に巻付けるためのカフ20、本体部10Aとカフ20とを接続するためのエアチューブ24、および血中酸素飽和度の測定部位、たとえば指先に装着するためのセンサユニット50を備える。本体部10とセンサユニット50とは、配線51を介して電気的に接続される。
【0016】
本体部10Aには、測定結果などを表示するための表示部40と、ユーザ(代表的には被検者)からの指示の入力を受付けるための操作部41とが配置される。操作部41は、たとえば、電源のON/OFFを切替えるために操作されるスイッチ、被検者を識別するために操作されるスイッチ、測定開始および停止の指示を入力するために操作されるスイッチおよびスイッチ、ならびに過去の測定データによる情報を読出して表示する指示を入力するために操作されるスイッチを含む。表示部40は、たとえば液晶等のディスプレイにより構成される。
【0017】
血圧測定装置1Aのカフ20は、空気が内包される空気袋21を含む。空気袋21は、エアチューブ24を介して、本体部10に内蔵されたエア系25と接続される。
【0018】
エア系25は、空気袋21内の圧力(以下、「カフ圧」という)を検出するための静電容量型の圧力センサ32と、空気袋21に空気を供給するためのポンプ33と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁34とを含む。
【0019】
センサユニット50は、いわゆるパルスオキシメータに相当する。図2には、本発明の実施の形態1に係るパルスオキシメータの測定部位への装着態様が示される。図2を参照して、パルスオキシメータは、指先などの赤外線が透過しやすい測定部位に装着されるプローブ筐体を備える。プローブ筐体は、少なくとも2つの異なる中心波長を持つ赤外線を発光する発光素子501,502と、発光素子から照射され測定部位を透過した赤外線量を検出する受光素子503を含む。
【0020】
本体部10Aは、発光素子501,502の発光動作を制御する発光素子駆動回路52、受光素子503の出力を波長別に増幅してAD(Analog/Digital)変換する増幅・AD変換回路53を備える。
【0021】
さらに本体部10Aは、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)1000A、電源部42、各種データおよびプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含むメモリ部39、現在時間(年、月、日、時、分、秒)を計時して出力するタイマ43、情報処理装置46とCPU1000Aとの通信を制御する通信I/F(インターフェイス)44、およびSDメモリカード(Secure Digital memory card)など各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU1000Bの制御の元にアクセスする外部I/F45を備える。ここでは、情報処理装置46は、通信機能、データ処理機能および表示などのデータ出力機能を備える装置であればよく、限定されるものではない。
【0022】
また、本体部10は、エア系25に関連して、発振回路35、ポンプ33を駆動するためのポンプ駆動回路36、排気弁34を駆動するための弁駆動回路37を備える。
【0023】
ポンプ駆動回路36は、CPU1000Bから与えられる制御信号に基づいて、ポンプ33の駆動を制御する。弁駆動回路37は、CPU1000Aから与えられる制御信号に基づいて、排気弁34の開閉制御を行なう。
【0024】
圧力センサ32は、カフ圧により容量値が変化し、その容量値を指す信号は、圧力センサ32が内蔵するアンプ(増幅回路)により増幅された後に、出力される。発振回路35は、圧力センサ32の出力信号に基づき、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU1000Aに出力する。CPU1000Aは、発振回路35から得られる信号を圧力に変換することにより、カフ圧を検知する。
【0025】
電源部42は、操作部41からの電源ONの指示によりCPU1000Aに電力を供給する。CPU1000Aは供給される電力を各部に出力する。
【0026】
(機能構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る血圧測定装置1Aの機能構成図である。図3には、血圧測定装置1AのCPU1000Aが有する機能構成が、その周辺回路とともに示される。図2を参照してCPU1000Aは、血圧測定部100、酸素飽和度測定制御部200、トリガTRと血圧測定部100に出力するトリガ出力部300A、メモリ部39にデータを格納するための記憶処理部500、メモリ部39からデータを読出すための読出部600、表示部40の表示情報を生成するためのVRAM(Video Random Access Memory)などを有する表示情報生成部800、表示部40の表示制御のためのデジタル信号処理回路などを有する表示制御部850、操作部41によるユーザの操作を受付け操作に対応する指示(指令)を各部へ出力する操作受付部900を含む。これらの各部は、メモリ部39に格納されるプログラム・データおよび/または回路モジュールを用いて構成される。
【0027】
血圧測定部100は、カフ圧制御部101と血圧算出部102を含む。カフ圧制御部110は、ポンプ駆動回路36および弁駆動回路37の動作を制御することによりカフ20のカフ圧を調整する。血圧測定部100は、発振回路35の出力信号を入力し、入力信号の発振周波数を検出して、検出した発振周波数を圧力値信号に換算する。圧力値信号をHPF(High Pass Filter)処理することにより容積脈波信号を抽出して出力するHPF部と、圧力値信号をLPF(Low Pass Filter)処理することにより圧力絶対値信号(以下、カフ圧信号という)を抽出して出力するLPF部とを含む。
【0028】
血圧算出部102は、HPF部により抽出された容積脈波信号を入力し、入力した容積脈波信号を所定手順に従い処理することにより、最高血圧(収縮期血圧SBP(systolic blood pressure))および最低血圧(拡張期血圧DBP(Diastolic blood pressure))を算出するとともに、周知の手順に従い、脈拍数を算出する。血圧の算出手順は、ここではカフ20で測定部位を所定圧まで加圧し、その後徐々に減圧する過程で検出されるカフ圧に基づき血圧を測定するオシロメトリック法に従うと想定するが、算出方法は限定されない。
【0029】
酸素飽和度測定制御部200は、タイマ43の出力する時間に同期したクロック信号を出力するクロック201、脈波振幅算出部202、脈波振幅比較部203、および酸素飽和度算出部204を含む。
【0030】
酸素飽和度測定制御部200は、発光素子501,502が2つの波長の赤外線を交互に発光するように、クロック201が規定するタイミングで発光素子駆動回路12を制御する。被検者の測定部位を透過して受光素子503に到達した赤外線は、受光素子503によって検出される。その際、動脈内圧の拍動に伴う動脈容積変化が、透過光量の変化として受光素子503の出力に反映される。これを光電脈波(以下、単に「脈波」)という。脈波信号が受光素子503から増幅・AD変換回路13に送られると、クロック201が規定するタイミングで波長の異なる脈波が別個に増幅・AD変換される。AD変換された脈波信号は、脈波振幅算出部202に送られる。
【0031】
脈波振幅算出部202は、増幅・AD変換回路13より得られる脈波を1拍単位で検出し、それぞれの脈波の振幅を算出する。脈波振幅比較部203は、脈波振幅算出部202により算出された2つの波長の脈波振幅の比を求める。酸素飽和度算出部204は、算出された脈波振幅の比に基づいて、血液中酸素飽和度を算出する。酸素飽和度算出部204は、予めメモリ部39に記憶されている脈波振幅比と酸素飽和度との関係に基づいて、被検者の血中酸素飽和度を算出する。
【0032】
血中酸素飽和度は、たとえば5秒ごとに算出され、算出された血中酸素飽和度は、CPU1000Bの内部メモリに先頭アドレスから測定順に従う時系列に格納される。内部メモリの血中酸素飽和度を指示するためにポインタ型の変数iが用いられる。測定が終了すると、内部メモリは初期化される。
【0033】
本実施の形態において、発光素子501,502、受光素子503、発光素子駆動回路12、増幅・AD変換回路13および酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定部として機能する。なお、本発明に従った血圧測定装置1Aにおいて採用される、酸素飽和度測定部の構成、および、血中酸素飽和度算出方法は、上記に限定されるものではない。
【0034】
(メモリ構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係るメモリ部39の内容例を示す図である。図4を参照して、メモリ部39は、各被検者に対応して測定データ記憶部391を有する。図5は、本発明の実施の形態1に係る測定データ記憶部391の内容例を示す図である。
【0035】
図5を参照して測定データ記憶部391は、データベースの形式で測定データを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータ、および1つまたは複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において測定(または算出)された血中酸素飽和度SpO2、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PLを含む。
【0036】
図5では、レコードRを用いて、これらデータは関連付けされて格納されるとしているが、関連付けることができればレコードRを用いた格納形式に限定されない。
【0037】
(フローチャート)
図6は、本発明の実施の形態1に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Aが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。ここでは、測定期間を睡眠期間としているが、無呼吸状態が生じ得る期間であれば、睡眠期間に特定されるものではない。
【0038】
測定に際して被検者は、カフ20とセンサユニット50をそれぞれの測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Aの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0039】
CPU1000Aは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Aは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0040】
処理が開始されると、トリガ出力部300Aは、変数T0に値0をセットするとともに、血中酸素飽和度を評価するための閾値THを初期値TH0に設定する。初期値TH0の値は、軽度の無呼吸発作しか示さない軽症のOSA患者でも血中酸素飽和度が低下する程度に設定するのが望ましく、例えば90%程度に設定される(ステップST301)。続いて、血中酸素飽和度の最小値を記憶するための変数Sminに生理的上限の100(単位:%)を設定する(ステップST302)。なお、被検者から測定される血中酸素飽和度は、この生理的上限値(100%)以下であると想定する。
【0041】
トリガ出力部300Aは、内部メモリの時系列の血中酸素飽和度を指示するための変数iの値を1インクリメントし(ステップST303)、内部メモリから変数iが指示するアドレスに格納される血中酸素飽和度を読出し、読出した血中酸素飽和度を変数SpO2(i)に設定する(ステップST304)。
【0042】
トリガ出力部300Aは、変数SpO2(i)の血中酸素飽和度の値が閾値TH未満であるか否かを判定する(ステップST305)。未満であると判定すると(ステップST305でYES)、ステップST306の処理に移行するが、未満ではないと判定すると(ステップST305でNO)、ステップST303に戻ってステップST303〜305の処理を繰返す。
【0043】
血中酸素飽和度の値が閾値TH未満であると判定されると、トリガ出力部300AはトリガTRを血圧測定部100に出力する。血圧測定部100はトリガTRを入力すると起動されて、血圧測定が行われる(ステップST306)。測定データは、記憶処理部500を介して測定データ記憶部391に格納される。
【0044】
続いて、トリガ出力部300Aは、変数iを1インクリメントし(スップST307)、内部メモリから変数iが指示する次位の血中酸素飽和度を読出し、変数SpO2(i)に設定する(ステップST308)。続いて、変数SpO2の血中酸素飽和度の値が変数Sminの値未満であるか否かを判定する(ステップST309)。未満であると判定すると(ステップST309でYES)、変数Sminの値を更新する(ステップST310)。つまり、変数Sminに変数SpO2(i)が指示する血中酸素飽和度の値をセットし(ステップST310)、変数Tpの値を、変数T0にセットし(ステップST311)、その後、ステップST307に戻って、ステップST307〜311の処理を繰返す。なお、変数Tpの値は、タイマ43が出力する時刻データを用いて常時更新される。したがって、変数Tpは現在時刻を表す。
【0045】
一方、変数SpO2(i)の血中酸素飽和度の値が変数Sminの値未満ではないと判定すると(ステップST309でNO)、被検者の血中酸素飽和度は上昇過程に移行を開始したことが判定される。すなわち、血中酸素飽和度が時系列に変化する過程で極小値になったことが検出される。極小値が検出されると、トリガ出力部300Aは変数iを1インクリメントし(ステップST312)、内部メモリから変数iが指示する次位の血中酸素飽和度を読出し、変数SpO2(i)にセットする(ステップST313)。そして、トリガ出力部300は、閾値THを式(TH=Smin+V(Tp−T0))に従って更新する(ステップST314)。このように、血中酸素飽和度が時系列に変化する過程で抽出される特徴値(すなわち極小値)を用いて閾値THが算出(更新)される。
【0046】
次に、トリガ出力部300Aは、変数SpO2(i)の値が閾値TH未満であるか否かを判定する(ステップST315)。未満であると判定すると(ステップST315でYES)、ステップST306に戻ってそれ以降の処理を実行するが、未満でないと判定すると(ステップST315でNO)、閾値THと初期値TH0とを比較する(ステップST316)。比較結果に基づき、閾値THは初期値TH0以上であると判定されると(ステップST316でYES)、処理はステップST301に戻って、それ以降の処理を繰返す。閾値THは初期値TH0未満であると判定されると(ステップST316でNO)、処理はステップST312に戻り、それ以降の処理が行われる。
【0047】
(閾値THの更新式について)
ステップST314における、閾値THを更新するための計算式について説明する。
【0048】
本実施の形態では、前回(直近)の血圧測定が起動されてからの経過時間が比較的短い期間においては、前回と同程度の低酸素状態では血圧測定を起動せず、比較的に長い期間が経過していれば、前回の血圧測定時よりも軽度の低酸素状態でも血圧測定を起動するような動作を実現する。つまり、比較的に軽度の低酸素状態であっても、前回の血圧測定を起動してから長い時間経過していれば血圧測定を起動させることにする。つまり、経過時間が長いほど、閾値の変位が大きくなるように更新する。そのために、実施の形態では、血圧測定を起動する血中酸素飽和度(変数SpO2(i))の閾値THを、ステップST314の式により決定する。
【0049】
ここで、式の変数Vは、1時間当たりの閾値変化速度を指し、例えば、10(%/時)に設定される。式の変数Tpは現在時間、変数T0は前回の血圧測定が起動された時間を指す。また、この式によって閾値THが初期値TH0(90%)以上となった場合は、閾値THに、初期値TH0を設定する。なお、ここでは、時間依存性の関数を、時間の1次関数の式としたが、関数の形はこれに限定されるものではない。
【0050】
実施の形態1では、血圧測定を起動するか否かを決定するための閾値THを、被検者の最低(極小値)の血中酸素飽和度を用いて逐次再設定する。また、最低の血中酸素飽和度(変数Smin)が更新されない間は、閾値THを上述の式に従って時間依存的に上昇させる。これらによって、前回の血圧測定を起動してから長時間経過後には、最低の血中酸素飽和度(変数Smin)よりも大きい血中酸素飽和度の軽度の低酸素状態でも、血圧測定を起動することができる。この結果、測定開始から終了までの期間のうちの比較的に初期において最低の血中酸素飽和度が測定される場合でも、それ以降の期間においても血圧測定が可能となり、測定期間(たとえば、被検者の睡眠期間)全体に亘って、血圧測定データを取得することができる。
【0051】
(閾値THの変化速度について)
図7と図8は、本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。上述したステップST314の式における変数Vは、閾値THの変化速度(以下、RCOTと呼ぶ)を指す。図7と図8は、発明者らによる血圧測定装置1Aを用いたシミュレーションの結果を示す。結果から、閾値THの変化速度は、1時間当たり10%と決定した。
【0052】
このシミュレーションでは9名(軽症、中度、重症の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ患者それぞれ3名ずつ)から測定される血中酸素飽和度のデータを用い、RCOTを6%、10%、20%に設定して血圧測定を起動する動作を模擬的に実行させた。
【0053】
まず、血圧測定を行うべき無呼吸発作(必要点)と血圧測定を見送るべき無呼吸発作(不要点)を、上記9名から得た血中酸素飽和度の実データ上に指定した。必要点の要件は、一晩のうちで最低となる血中酸素飽和度を伴う発作であることと、最低血中酸素飽和度が測定された後の3時間以上の長い時間を経てほぼ同等の血中酸素飽和度低下を伴う発作であることとした。不要点の要件は、血中酸素飽和度の低下量に関わらず、必要点から長い時間を経ない無呼吸発作とした。RCOTを6%、10%、20%と変化させ、計114点の指定無呼吸発作(必要点82点と不要点32点)についてシミュレーションを実行させた。成功率を指定どおりの動作(すなわち、必要点の検出と不要点の見送り)の頻度と定義し、90%以上を許容範囲としてRCOT毎に評価した。結果、必要点についての6%、10%、20%のRCOTそれぞれの成功率は、86.6%、95.1%、100.0%であった(図7参照)。不要点の成功率は、いずれのRCOTでも100.0%であった。したがって、成功率から評価したRCOTの値としては、10%と20%が適切であろうとの知見を得た。
【0054】
次に、1晩当たりの血圧測定回数を評価した。上記9名から測定した血中酸素飽和度のデータには指定点以外にも多くの無呼吸発作が存在したが、実用的見地から、1晩当たりの血圧測定回数は15回以下と考えた。何故なら、現在、夜間睡眠時の血圧測定で広く用いられている自由行動下血圧モニタリング(ambulatory blood pressure monitoring:ABPMと略す)では、一般に1時間当たりの測定頻度は2回と設定されることが多く、8時間の睡眠時間を想定すると、1晩当たりの測定回数は15〜16回になるからである。6%、10%、20%のRCOTによるシミュレーションの結果、15回以上の血圧測定が実行されることになる被検者数は、それぞれ0名、0名、5名(56%)であった(図8参照)。したがって、血圧測定で評価したRCOTの値としては、6%と10%が適切であるとの知見を得た。発明者らは、上述の2つのシミュレーション結果により、閾値の変化速度(変数V)として10%を最適値として採用した。
【0055】
(閾値(固定)との比較)
図9および図10(A)と(B)は、本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、閾値を固定にした測定と比較して説明するためのグラフである。図9および図10(A)と(B)は、同一被検者について、測定時間の経過に従って測定される血中酸素飽和度の変化と、血圧測定の起動BPのタイミングとを関連付けて示している。
【0056】
図9は、測定期間に亘って閾値変化速度Vを用いて閾値THが可変に変更される実施の形態1のケースである。図9のグラフからは、血中酸素飽和度SpO2が時系列に変化する過程で抽出される特徴値を用いて、すなわち極小値を用いて閾値が算出される(ステップST314)ことで、血中酸素飽和度が相対的に低い状態および高い状態のいずれにおいても、すなわち血圧測定が測定期間の全体にわたって行われていることが示される。これに対して、図10(A)は、従来のように閾値を固定(変化させない)としたケースであって、グラフからは、低酸素状態が起こる度に血圧測定が起動され、膨大な血圧測定回数になっていることが示される。図10(B)は、血中酸素飽和度の最低値によって閾値を更新させる方法によるもので、最も大きな血中酸素飽和度の低下が測定期間の初期に起こったことにより、それ以降、血圧測定は行われていないことが示される。したがって、実施の形態1によれば、血中酸素飽和度が低い状態において血圧測定を起動しながら、且つ測定期間(たとえば、被検者の睡眠期間)全体に亘って、血圧測定データを取得することができる。
【0057】
(ABPMとの比較)
図11は、本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、ABPMによる測定と比較して説明するためのグラフである。グラフは、発明者らの実験によるものである。図11の最上段には、被検者の睡眠時間(19:00−6:00)において測定される血中酸素飽和度の変化が示される。ABPMは、1時間当たり2回の血圧測定を行う。図中の折れ線グラフはABPMによって測定された血圧(収縮期血圧SBP)の変化を示す。ABPMによれば、血中酸素飽和度の変化にかかわらず、一定間隔で血圧が測定されることから、血中酸素飽和度が低下したタイミングに同期して血圧測定がなされていないことがわかる。
【0058】
これに対して、実施の形態1の血圧測定装置1Aで測定をした場合には、グラフ中の黒丸でプロットされているように、血中酸素飽和度が低下する毎に血圧測定が起動されて、その結果、血中酸素飽和度が低下するタイミングに同期して測定データ(収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBP、脈拍数)を取得できることが分かる。
【0059】
<実施の形態2>
被検者の血中酸素飽和度は、すなわち被検者の呼吸パターンに依存する。そこで、本実施の形態2では、被検者の呼吸をモニタし、モニタの結果である時系列の呼吸変化(吸気・排気)に基づき血圧測定部を起動する。
【0060】
(血圧測定装置)
図12には、本発明に実施の形態2に係る血圧測定装置1Bのハードウェア構成が示される。図12を参照して、血圧測定装置1Bと血圧測定装置1Aとを比較し異なる点は、血圧測定装置1Bは、本体部10Aに代替して本体部10Bを備え、血中酸素飽和度を測定するためのセンサユニット50Aに代替して気流センサ50Bを備える点にある。血圧測定装置1Bの他の構成は血圧測定装置1Aと同様であり説明を略し、相違する点のみを説明する。なお、図12には、血圧測定装置1Bの周囲の温度を計測する温度センサ48を備えるが、この温度センサ48は、実施の形態2に係る測定に必須の要件ではないので、詳細は後述する。
【0061】
本体部10Bは、発光素子駆動回路52および増幅・AD変換回路53に代替して呼吸モニタ53Bを含み、CPU1000Aに代替してCPU1000Bを含む。本体部10Bの他の構成は本体部10Aと同じであり、それらの説明は繰返さない。
【0062】
呼吸モニタ53Bは、気流センサ50Bからの検出信号を入力し、入力する検出信号に基づき被検者の呼吸の状態をモニタし、モニタ結果を示す呼吸信号をCPU1000Bに出力する。
【0063】
図13は、本発明の実施の形態2に係る気流センサ50Bの外観を示す図である。図13を参照して、気流センサ50Bは、被検者の鼻腔付近に固定して装着される。気流センサ50Bは、内蔵する圧力センサ(図示せず)によって鼻腔付近の気圧を検出し、検出信号を出力する。吸気の際は鼻腔付近の気圧は低下し、排気の際は上昇する。
【0064】
呼吸モニタ53Bは、気流センサ50Bからの検出信号に基づき鼻腔付近の気圧の変化パターンを導出し、導出する変化パターンに基づき被検者の鼻腔からの吸気と排気を検出する。具体的には、被検者の通常の吸気と排気のそれぞれについての変化パターンを予め記憶しておき、この記憶された変化パターンと、測定時に導出された変化パターンとをパターンマッチングすることによって、吸気または排気を検出する。検出の結果は呼吸信号としてCPU1000Bに出力される。ここで、呼吸信号は、たとえば電圧信号であり、吸気の期間は正の電圧信号が、排気の期間には負の電圧信号が出力される。呼吸モニタ53Bは、上述のパターンマッチングによって、呼気でもなく排気もないと判定する期間は、つまり無呼吸の期間は零の電圧信号を出力する。
【0065】
なお、CPU1000Bは、呼吸モニタ53Bが出力する呼吸信号を、たとえば1秒毎に入力し、また、呼吸モニタ53Bは、1秒よりも十分に短い周期で気流センサ50Bからの検出信号を入力し、気流センサ50Bは当該周期よりも短い周期で気圧を検出し、検出信号を出力すると想定する。
【0066】
図14は、本発明の実施の形態2に係る血圧測定装置1Bの機能構成図である。図14を参照して、CPU1000BとCPU1000Aとを比較し異なる点は、CPU1000Bは、トリガ出力部300Aに代替してトリガ部300Bを備える。他の機能はCPU1000Aが備える機能と同じであり、説明は略す。
【0067】
トリガ出力部300Bは、呼吸モニタ53からの呼吸信号に基づき無呼吸を検出すると、血圧測定を起動するためのトリガTRを血圧測定部100に出力する。
【0068】
(呼吸に基づくトリガ出力)
図15は、本発明の実施の形態に係る呼吸信号とトリガTRの出力との関係を示すタイミングチャートである。トリガ出力部300Bは、呼吸信号に基づき吸気を開始してから、その直後の排気を開始するまでの時間が、所定時間よりも長くなることを検出すると、無呼吸を検出する。つまり、吸気が開始した時点で、トリガ出力部300Bは、カウンタ(図示せず)によるカウントアップを開始し、排気が開始された時点でカウンタのカントアップを停止してカウント値をクリア(初期化)する。なお、トリガ出力部300Bは、タイマ43からの出力に同期してカウンタによるカウントアップ動作を行う。
【0069】
図15の上段は吸気信号A〜Qを含む呼吸信号を示し、下段は当該呼吸信号に同期して変化するカウンタ値CT(i)を示す。さらに、カウンタ値CT(i)に関連して閾値THの変化が示される。図15における下向き矢印は、血圧測定が起動された時点を指す。図15を参照して、吸気信号A〜Cの期間のように、無呼吸を検出しない正常な期間は、カウンタ値CT(i)は比較的小さな値に留まって、次の吸気が始まる。ところが、図15の吸気信号Dの吸気から直後の排気開始までの期間のように、無呼吸期間においては、排気が起こらないために、カウンタ値CT(i)は非常に大きな値にまで増大する。トリガ出力部300Bは、このように変化するカウンタ値CT(i)に従って閾値THを変化させる。
【0070】
図示されるように、閾値THは測定開始時の最初は、初期値TH0に設定され、カウンタ値CT(i)が増加し閾値THよりも大きくなると、閾値THは増加するカウンタ値CT(i)と同じ値を指示するように更新される。閾値THは、その後に排気が始まって無呼吸が停止する時点のカウンタ値CT(i)にまで増加する。その後は、閾値THは一定の速度で減少して行き、初期値TH0を指示した時点で減少は停止する。
【0071】
このように、閾値THの増減の速度を可変にすることによって、吸気信号Dの直後のように重度の無呼吸が起こった後しばらくは、それに近いレベルの無呼吸(吸気信号Gの直後の無呼吸)は看過し、充分時間が経過した場合(吸気信号Mの直後の無呼吸)は軽度の無呼吸でも血圧測定が起動されるようにする。つまり、血圧測定からの経過時間が長いほど、閾値の変位が大きくなるように更新する。
【0072】
(フローチャート)
図16は、本発明の実施の形態2に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Bが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。ここでは、測定期間を被検者の睡眠期間としているが、無呼吸状態が生じ得る期間であれば、睡眠期間に特定されるものではない。
【0073】
測定に際して被検者は、カフ20と気流センサ50Bをそれぞれの測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Bの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0074】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Bは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0075】
処理が開始されると、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)の値が示す無呼吸期間の長さを評価するための閾値THを、初期値TH0に設定する(ステップST401)。この初期値TH0は、正常な呼吸周期では到達されないほど高く、軽度の無呼吸発作しか示さない軽症のOSA患者には到達される程低く設定するのが望ましく、例えば15秒程度に設定される。
【0076】
そして、信号の時間を示す変数iの値を1インクリメントし(ステップST402)、それに対応するカウンタ値CT(i)に、タイマ43からの時間を設定する(ステップST403)。
【0077】
次に、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値TH(秒)より大きいか否かを判定し(ステップST404)、大きいと判定すると(ステップST404)後述のステップST405に移行し、カウンタ値CT(i)が閾値TH以下であると判定すると(ステップST404でNO)、ステップST402に戻り、ステップST402〜404の動作を繰返す。
【0078】
トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値THより大きいと判定すると、トリガTRを出力する。これにより、血圧測定部100による血圧測定が起動する(ステップST405)。さらに、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)をカウンタ値の最大値が設定される変数CTmにセットし(ステップST406)、変数iの値を1インクリメントする(ステップST407)。
【0079】
その後、呼吸信号に基づき被検者の排気が始まったかを判定する(ステップST408)。排気は始まっていないと判定すると(ステップST408でNO)、処理はステップST406に戻り、それ以降の処理を繰返す。一方、排気が始まったと判定すると(ステップST408でYES)、変数CTmにカウンタ値CT(i)をセットする(ステップST409)。そして、その時点でタイマ43が出力する現在時間を示す変数Tpの値を、変数T0にセットする(ステップST410)。
【0080】
そして、トリガ出力部300Bは、変数iの値を1インクリメントし(ステップST411)、それに対応するカウンタ値CT(i)に、タイマ43からの時間を設定する(ステップST412)。そして、閾値THを式(TH=CTm−V(Tp−T0))に従って再設定するが(ステップST413)、詳細は後述する。
【0081】
次に、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値THより大きいか否かを判定する(ステップST414)。大きいと判定すると(ステップST414でYES)、処理はステップST405に戻り、それ以降の処理を繰返す。カウンタ値CT(i)が閾値TH以下であると判定すると(ステップST414でNO)、閾値THは初期値TH0より小さいか否かを判定する(ステップST415)。閾値THは初期値TH0より小さいと判定すると(ステップST415でYES)、ステップST401に戻り、それ以降の処理が繰返されるが、閾値THは初期値TH0以上であると判定すると(ステップST415でNO)、ステップST411〜415の処理を繰返す。
【0082】
次に、ステップST413における閾値THの更新に用いられる式を説明する。本実施の形態2では、前回の血圧測定が起動されてあまり時間が経過していない間は、前回と同程度の期間長さ継続する無呼吸では血圧測定を起動せず、ある程度時間が経過していれば、前回より軽度の無呼吸(無呼吸期間が短い)であっても起動するような動作を実現する。つまり、どれ程軽度の無呼吸であっても血圧測定を起動するか否かを、直近(前回)の血圧測定を起動してからの経過時間の長さに依存させることにしている。そこで、血圧測定を起動するために参照される閾値TH(無呼吸期間の長さ(カウンタ値CT(i)の値)を評価するための値)を、血圧測定を起動してからの経過時間の長さに依存して更新するために当該式を用いる。
【0083】
式の変数Vは、1時間当たりの閾値TH変化速度を指す。また、この計算式により算出された閾値THが初期値TH0を未満となった場合には(ステップST415でYES)、閾値THに初期値TH0を設定する(ステップST401)。なお、ここでは、時間依存性の関数を、式に示すように時間の1次式としたが、関数の形はこれに限定されるものではない。
【0084】
<実施の形態3>
本実施の形態3に係る血圧測定装置は、測定時の被検者の周囲の環境温度の変化があると血圧は急激に変化することに着目し、周囲温度を測定して得られた時系列の温度データに基づき、急激な温度変化が起こった時から一定時間後に、血圧測定が実行されるように動作する。
【0085】
実施の形態3に係る血圧測定装置は、図14の血圧測定装置1Bのトリガ出力部300Bが呼吸モニタ53Bに代替して温度センサ48からの温度信号を入力するように構成される。温度センサ48は、血圧測定装置1Bの周囲の環境温度を測定し、温度信号をトリガ出力部300Bに出力する。血圧測定装置1Bの気流センサ50Bは装置に着脱自在に装着される。気流センサ50Bが装着されない態様では、トリガ出力部300Bは温度センサ48からの温度信号を入力する。
【0086】
図17は、本発明の実施の形態3に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Bが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。なお、後述の変数T0は、直近の血圧測定が起動された時間が設定される変数であって、図17のフローチャートの開始時には初期値0が設定される。
【0087】
測定に際して被検者は、カフ20を測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Bの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0088】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Bは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0089】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチによって測定開始の操作が行われたかを監視し(ステップST101)、操作があった時点で(ステップST101でYES)、以降の処理を開始する。次に、測定停止スイッチによって測定終了の操作が行われたかどうかを監視し(ステップST102)、測定停止操作があった場合には、全ての動作を終了するが、ない場合には各種変数を初期化し、次の処理(ステップST103)に移行する。
【0090】
トリガ出力部300Bは、温度データの時系列を表す変数iを1インクリメントし(ステップST103)、温度センサ48からの温度信号が示す環境温度を変数Te(i)にセットし(ステップST104)、タイマ43からの計時データに基づく現在時間を変数Tpにセットする(ステップS105)。ここで、トリガ出力部300Bが、温度センサ48から温度信号を読込む間隔は、例えば5秒などに設定する。
【0091】
続いて、トリガ出力部300Bは、環境温度に急激な変化が起こったかを評価するための値が設定される変数TA1とTA2を、後述の式(1)と式(2)により更新する(ステップST106、107)。
【0092】
ここで、ステップST106、107で実行される変数TA1とTA2の値の更新に用いる計算式を説明する。本実施の形態3では、環境温度に急激な変化が起こった時から一定時間後に血圧測定が実行されるような動作を実現する。一定時間をおくのは、急激な温度変化に対する生体の血圧反応時間を考慮しているためである。変数TA1は、その時点の環境温度を含んだ一定時間前の環境温度の平均値を表し、式(1)により算出される。また、変数TA2は、変数TA1よりも前の時間における、変数TA1と同じ時間幅において測定された環境温度の平均値を指し、式(2)より算出される。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
式(1)と式(2)の変数Nは、平均値を算出するために用いる環境温度データの個数を指し、任意の値が用いられる。例えばトリガ出力部300Bは、温度センサ48から5秒間隔で温度信号を入力する場合には、すなわち環境温度データを5秒間隔で取得する場合には、平均値を算出する時間幅を10分とすると変数Nの値は120となる。
【0096】
トリガ出力部300Bは、((TA1<TH)OR(|TA1−TA2|>ΔTe))の条件式が成立するか否かを判定する(ステップST108)。
【0097】
この条件式は、その時点の環境温度を含んだ一定期間前の環境温度の平均値TA1が予め設定されている閾値TH未満であるか、または変数TA1とTA2との差の絶対値が予め設定された閾値ΔTeよりも大きいかの判定をするための式を指す。当該条件式が成立しないと判定されると(ステップST108でNO)、処理はステップST102〜108が繰返される。
【0098】
条件式が成立すると判定されると(ステップST108でYES)、トリガ出力部300Bは、変数T0と、タイマ43から入力する計時データに基づく現在時間が設定される変数Tpとを比較して、(Tp−T0>ΔT)の条件式が成立するか否かを判定する(ステップST109)。ここで、変数ΔTは、血圧測定の起動を禁止する時間を指し、予め設定された時間を指す。
【0099】
トリガ出力部300Bは、条件式が成立しないと判定すると(ステップST109でNO)、処理はステップST102に戻り、それ以降の処理が繰返される。
【0100】
一方、条件式が成立すると判定すると(ステップST109でYES)、トリガ出力部300Bは、トリガTRを血圧測定部100に出力する。これにより、血圧測定が起動される(ステップST110)。血圧測定が起動されると、トリガ出力部300Bは、変数T0に、変数Tpの現在時間をセットする(ステップST111)。その後、処理はステップST102に戻り、測定停止のスイッチが操作されるまで、以降の処理が繰返される。
【0101】
上述の実施の形態1〜3では、血圧変動に関連する情報、すなわち血圧の変動を引き起こす要因(事象)を指す情報として、被検者の生体に関連する血圧を除く生理情報と周囲環境の情報をあげた。生理情報としては血中酸素飽和度および呼吸パターンを例示し、周囲環境の情報としては周囲温度を例示したが、これらは一例にすぎず、他の種類の情報を適用してもよい。
【0102】
<実施の形態4>
上述の各実施の形態のフローチャートに従う測定方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。たとえば、図1の構成では、CPU1000Aを備えてコンピュータの機能を有する血圧測定装置1Aには、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU1000Aは、外部I/F45を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0103】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPUにより読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0104】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1A,1B 血圧測定装置、46 情報処理装置、48 温度センサ、50A センサユニット、50B 気流センサ、100 血圧測定部、300A,300B トリガ出力部、391 測定データ記憶部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置に関し、特に、血圧測定の起動タイミングを制御する血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)は、睡眠中に気道が物理的に閉塞し、最長2分にもわたって呼吸が停止する疾病である。無呼吸発作では、血圧が一時的に上昇する(以下、夜間血圧サージという)。たとえば、平常時に120〜130mmHgの血圧は200mmHg超まで上昇する。したがって、無呼吸発作の度に、突然死や脳卒中、心不全などの心血管疾患やリスクが生じる。したがって、夜間血圧サージを正確に測定することが要求される。
【0003】
夜間血圧サージの測定には、呼吸の停止に伴い血中酸素飽和度が低下する。そこで、血中酸素飽和度をオキシメータで計測し、計測した血中酸素飽和度が設定された基準を下回ったとき、血圧測定を起動する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−155829号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A New Technique for Detecting Sleep BP Apnea-Related "Midnight” Surge of Blood Pressure Shirasaki et al Hypertens Res Vol,29,No.9(2006)p695-702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重症のOSA患者では一晩に数百回も無呼吸発作が起こり、およびそれに伴う低酸素状態が起こる。したがって、特許文献1のように、血中酸素飽和度が手動設定された基準を下回ったときに血圧測定を起動する場合には、重症のOSA患者では、血圧測定回数が膨大となり、被検者の睡眠を著しく阻害してしまう。
【0007】
また、非特許文献1では、閾値を最初は比較的高いレベルに設定しておき、測定開始後に現れる血中酸素飽和度の最低値を逐次記憶しておいて、血中酸素飽和度が前回の最低値を下回った時に血圧測定を行う機能を追加的に持たせている。こうすることによって、軽症者から重症者にわたって閾値を個人個人に合わせて自動調整することができる。ところが、この方法においては、その晩の一番重度の低呼吸状態が睡眠初期に現れた場合、それ以降、血圧測定が一切行われないと言う課題が残されている。
【0008】
本発明の目的は、所定期間全体にわたった血圧変動パターンを取得することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置は、被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、血圧の変動に関連する情報であって前所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、満たすと判定されるとき、血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、所定条件を、所定期間内において計時される時間の関数として表わす。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定期間全体にわたった血圧変動パターンを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る血圧測定装置のハードウェア構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るパルスオキシメータの測定部位への装着態様を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る血圧測定装置の機能構成図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るメモリ部の内容例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る測定データ記憶部の内容例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る測定処理のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。
【図8】本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を説明するためのグラフである。
【図10】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、閾値を固定にした測定と比較して説明するためのグラフである。
【図11】本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、ABPMによる測定と比較して説明するためのグラフである。
【図12】本発明に実施の形態2に係る血圧測定装置のハードウェア構成図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る気流センサの外観を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る血圧測定装置の機能構成図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る呼吸信号とトリガ出力との関係を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明の実施の形態2に係る測定処理のフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態3に係る測定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0013】
本実施の形態では、被検者の血圧を除いた情報を取得し、取得した情報に基づき、血圧測定部を起動する。ここで、起動とは、血圧測定部による血圧測定に係る処理を開始させることを言う。
【0014】
<実施の形態1>
(血中酸素飽和度)
本実施の形態1では、被検者の血中酸素飽和度をモニタし、モニタの結果である時系列の血中酸素飽和度に基づき血圧測定部を起動する。
【0015】
(ハードウェア構成)
図1は本発明の実施の形態に係る血圧測定装置1Aのハードウェア構成図である。図1Aを参照して、血圧測定装置1Aは、本体部10A、被検者の血圧測定部位、たとえば上腕に巻付けるためのカフ20、本体部10Aとカフ20とを接続するためのエアチューブ24、および血中酸素飽和度の測定部位、たとえば指先に装着するためのセンサユニット50を備える。本体部10とセンサユニット50とは、配線51を介して電気的に接続される。
【0016】
本体部10Aには、測定結果などを表示するための表示部40と、ユーザ(代表的には被検者)からの指示の入力を受付けるための操作部41とが配置される。操作部41は、たとえば、電源のON/OFFを切替えるために操作されるスイッチ、被検者を識別するために操作されるスイッチ、測定開始および停止の指示を入力するために操作されるスイッチおよびスイッチ、ならびに過去の測定データによる情報を読出して表示する指示を入力するために操作されるスイッチを含む。表示部40は、たとえば液晶等のディスプレイにより構成される。
【0017】
血圧測定装置1Aのカフ20は、空気が内包される空気袋21を含む。空気袋21は、エアチューブ24を介して、本体部10に内蔵されたエア系25と接続される。
【0018】
エア系25は、空気袋21内の圧力(以下、「カフ圧」という)を検出するための静電容量型の圧力センサ32と、空気袋21に空気を供給するためのポンプ33と、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために開閉される排気弁34とを含む。
【0019】
センサユニット50は、いわゆるパルスオキシメータに相当する。図2には、本発明の実施の形態1に係るパルスオキシメータの測定部位への装着態様が示される。図2を参照して、パルスオキシメータは、指先などの赤外線が透過しやすい測定部位に装着されるプローブ筐体を備える。プローブ筐体は、少なくとも2つの異なる中心波長を持つ赤外線を発光する発光素子501,502と、発光素子から照射され測定部位を透過した赤外線量を検出する受光素子503を含む。
【0020】
本体部10Aは、発光素子501,502の発光動作を制御する発光素子駆動回路52、受光素子503の出力を波長別に増幅してAD(Analog/Digital)変換する増幅・AD変換回路53を備える。
【0021】
さらに本体部10Aは、各種演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)1000A、電源部42、各種データおよびプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含むメモリ部39、現在時間(年、月、日、時、分、秒)を計時して出力するタイマ43、情報処理装置46とCPU1000Aとの通信を制御する通信I/F(インターフェイス)44、およびSDメモリカード(Secure Digital memory card)など各種の記録媒体が着脱自在に装着されて、装着された記録媒体をCPU1000Bの制御の元にアクセスする外部I/F45を備える。ここでは、情報処理装置46は、通信機能、データ処理機能および表示などのデータ出力機能を備える装置であればよく、限定されるものではない。
【0022】
また、本体部10は、エア系25に関連して、発振回路35、ポンプ33を駆動するためのポンプ駆動回路36、排気弁34を駆動するための弁駆動回路37を備える。
【0023】
ポンプ駆動回路36は、CPU1000Bから与えられる制御信号に基づいて、ポンプ33の駆動を制御する。弁駆動回路37は、CPU1000Aから与えられる制御信号に基づいて、排気弁34の開閉制御を行なう。
【0024】
圧力センサ32は、カフ圧により容量値が変化し、その容量値を指す信号は、圧力センサ32が内蔵するアンプ(増幅回路)により増幅された後に、出力される。発振回路35は、圧力センサ32の出力信号に基づき、圧力センサ32の容量値に応じた発振周波数の信号をCPU1000Aに出力する。CPU1000Aは、発振回路35から得られる信号を圧力に変換することにより、カフ圧を検知する。
【0025】
電源部42は、操作部41からの電源ONの指示によりCPU1000Aに電力を供給する。CPU1000Aは供給される電力を各部に出力する。
【0026】
(機能構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係る血圧測定装置1Aの機能構成図である。図3には、血圧測定装置1AのCPU1000Aが有する機能構成が、その周辺回路とともに示される。図2を参照してCPU1000Aは、血圧測定部100、酸素飽和度測定制御部200、トリガTRと血圧測定部100に出力するトリガ出力部300A、メモリ部39にデータを格納するための記憶処理部500、メモリ部39からデータを読出すための読出部600、表示部40の表示情報を生成するためのVRAM(Video Random Access Memory)などを有する表示情報生成部800、表示部40の表示制御のためのデジタル信号処理回路などを有する表示制御部850、操作部41によるユーザの操作を受付け操作に対応する指示(指令)を各部へ出力する操作受付部900を含む。これらの各部は、メモリ部39に格納されるプログラム・データおよび/または回路モジュールを用いて構成される。
【0027】
血圧測定部100は、カフ圧制御部101と血圧算出部102を含む。カフ圧制御部110は、ポンプ駆動回路36および弁駆動回路37の動作を制御することによりカフ20のカフ圧を調整する。血圧測定部100は、発振回路35の出力信号を入力し、入力信号の発振周波数を検出して、検出した発振周波数を圧力値信号に換算する。圧力値信号をHPF(High Pass Filter)処理することにより容積脈波信号を抽出して出力するHPF部と、圧力値信号をLPF(Low Pass Filter)処理することにより圧力絶対値信号(以下、カフ圧信号という)を抽出して出力するLPF部とを含む。
【0028】
血圧算出部102は、HPF部により抽出された容積脈波信号を入力し、入力した容積脈波信号を所定手順に従い処理することにより、最高血圧(収縮期血圧SBP(systolic blood pressure))および最低血圧(拡張期血圧DBP(Diastolic blood pressure))を算出するとともに、周知の手順に従い、脈拍数を算出する。血圧の算出手順は、ここではカフ20で測定部位を所定圧まで加圧し、その後徐々に減圧する過程で検出されるカフ圧に基づき血圧を測定するオシロメトリック法に従うと想定するが、算出方法は限定されない。
【0029】
酸素飽和度測定制御部200は、タイマ43の出力する時間に同期したクロック信号を出力するクロック201、脈波振幅算出部202、脈波振幅比較部203、および酸素飽和度算出部204を含む。
【0030】
酸素飽和度測定制御部200は、発光素子501,502が2つの波長の赤外線を交互に発光するように、クロック201が規定するタイミングで発光素子駆動回路12を制御する。被検者の測定部位を透過して受光素子503に到達した赤外線は、受光素子503によって検出される。その際、動脈内圧の拍動に伴う動脈容積変化が、透過光量の変化として受光素子503の出力に反映される。これを光電脈波(以下、単に「脈波」)という。脈波信号が受光素子503から増幅・AD変換回路13に送られると、クロック201が規定するタイミングで波長の異なる脈波が別個に増幅・AD変換される。AD変換された脈波信号は、脈波振幅算出部202に送られる。
【0031】
脈波振幅算出部202は、増幅・AD変換回路13より得られる脈波を1拍単位で検出し、それぞれの脈波の振幅を算出する。脈波振幅比較部203は、脈波振幅算出部202により算出された2つの波長の脈波振幅の比を求める。酸素飽和度算出部204は、算出された脈波振幅の比に基づいて、血液中酸素飽和度を算出する。酸素飽和度算出部204は、予めメモリ部39に記憶されている脈波振幅比と酸素飽和度との関係に基づいて、被検者の血中酸素飽和度を算出する。
【0032】
血中酸素飽和度は、たとえば5秒ごとに算出され、算出された血中酸素飽和度は、CPU1000Bの内部メモリに先頭アドレスから測定順に従う時系列に格納される。内部メモリの血中酸素飽和度を指示するためにポインタ型の変数iが用いられる。測定が終了すると、内部メモリは初期化される。
【0033】
本実施の形態において、発光素子501,502、受光素子503、発光素子駆動回路12、増幅・AD変換回路13および酸素飽和度測定制御部200は、血中酸素飽和度を測定するための酸素飽和度測定部として機能する。なお、本発明に従った血圧測定装置1Aにおいて採用される、酸素飽和度測定部の構成、および、血中酸素飽和度算出方法は、上記に限定されるものではない。
【0034】
(メモリ構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係るメモリ部39の内容例を示す図である。図4を参照して、メモリ部39は、各被検者に対応して測定データ記憶部391を有する。図5は、本発明の実施の形態1に係る測定データ記憶部391の内容例を示す図である。
【0035】
図5を参照して測定データ記憶部391は、データベースの形式で測定データを記憶する。具体的には、対応の被検者を一意に識別するためのIDデータ、および1つまたは複数のレコードRを記憶する。各レコードRは、当該レコードを一意に識別するためのNoデータ、測定時間を示す時間データ、ならびに当該時間において測定(または算出)された血中酸素飽和度SpO2、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PLを含む。
【0036】
図5では、レコードRを用いて、これらデータは関連付けされて格納されるとしているが、関連付けることができればレコードRを用いた格納形式に限定されない。
【0037】
(フローチャート)
図6は、本発明の実施の形態1に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Aが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。ここでは、測定期間を睡眠期間としているが、無呼吸状態が生じ得る期間であれば、睡眠期間に特定されるものではない。
【0038】
測定に際して被検者は、カフ20とセンサユニット50をそれぞれの測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Aの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0039】
CPU1000Aは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Aは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0040】
処理が開始されると、トリガ出力部300Aは、変数T0に値0をセットするとともに、血中酸素飽和度を評価するための閾値THを初期値TH0に設定する。初期値TH0の値は、軽度の無呼吸発作しか示さない軽症のOSA患者でも血中酸素飽和度が低下する程度に設定するのが望ましく、例えば90%程度に設定される(ステップST301)。続いて、血中酸素飽和度の最小値を記憶するための変数Sminに生理的上限の100(単位:%)を設定する(ステップST302)。なお、被検者から測定される血中酸素飽和度は、この生理的上限値(100%)以下であると想定する。
【0041】
トリガ出力部300Aは、内部メモリの時系列の血中酸素飽和度を指示するための変数iの値を1インクリメントし(ステップST303)、内部メモリから変数iが指示するアドレスに格納される血中酸素飽和度を読出し、読出した血中酸素飽和度を変数SpO2(i)に設定する(ステップST304)。
【0042】
トリガ出力部300Aは、変数SpO2(i)の血中酸素飽和度の値が閾値TH未満であるか否かを判定する(ステップST305)。未満であると判定すると(ステップST305でYES)、ステップST306の処理に移行するが、未満ではないと判定すると(ステップST305でNO)、ステップST303に戻ってステップST303〜305の処理を繰返す。
【0043】
血中酸素飽和度の値が閾値TH未満であると判定されると、トリガ出力部300AはトリガTRを血圧測定部100に出力する。血圧測定部100はトリガTRを入力すると起動されて、血圧測定が行われる(ステップST306)。測定データは、記憶処理部500を介して測定データ記憶部391に格納される。
【0044】
続いて、トリガ出力部300Aは、変数iを1インクリメントし(スップST307)、内部メモリから変数iが指示する次位の血中酸素飽和度を読出し、変数SpO2(i)に設定する(ステップST308)。続いて、変数SpO2の血中酸素飽和度の値が変数Sminの値未満であるか否かを判定する(ステップST309)。未満であると判定すると(ステップST309でYES)、変数Sminの値を更新する(ステップST310)。つまり、変数Sminに変数SpO2(i)が指示する血中酸素飽和度の値をセットし(ステップST310)、変数Tpの値を、変数T0にセットし(ステップST311)、その後、ステップST307に戻って、ステップST307〜311の処理を繰返す。なお、変数Tpの値は、タイマ43が出力する時刻データを用いて常時更新される。したがって、変数Tpは現在時刻を表す。
【0045】
一方、変数SpO2(i)の血中酸素飽和度の値が変数Sminの値未満ではないと判定すると(ステップST309でNO)、被検者の血中酸素飽和度は上昇過程に移行を開始したことが判定される。すなわち、血中酸素飽和度が時系列に変化する過程で極小値になったことが検出される。極小値が検出されると、トリガ出力部300Aは変数iを1インクリメントし(ステップST312)、内部メモリから変数iが指示する次位の血中酸素飽和度を読出し、変数SpO2(i)にセットする(ステップST313)。そして、トリガ出力部300は、閾値THを式(TH=Smin+V(Tp−T0))に従って更新する(ステップST314)。このように、血中酸素飽和度が時系列に変化する過程で抽出される特徴値(すなわち極小値)を用いて閾値THが算出(更新)される。
【0046】
次に、トリガ出力部300Aは、変数SpO2(i)の値が閾値TH未満であるか否かを判定する(ステップST315)。未満であると判定すると(ステップST315でYES)、ステップST306に戻ってそれ以降の処理を実行するが、未満でないと判定すると(ステップST315でNO)、閾値THと初期値TH0とを比較する(ステップST316)。比較結果に基づき、閾値THは初期値TH0以上であると判定されると(ステップST316でYES)、処理はステップST301に戻って、それ以降の処理を繰返す。閾値THは初期値TH0未満であると判定されると(ステップST316でNO)、処理はステップST312に戻り、それ以降の処理が行われる。
【0047】
(閾値THの更新式について)
ステップST314における、閾値THを更新するための計算式について説明する。
【0048】
本実施の形態では、前回(直近)の血圧測定が起動されてからの経過時間が比較的短い期間においては、前回と同程度の低酸素状態では血圧測定を起動せず、比較的に長い期間が経過していれば、前回の血圧測定時よりも軽度の低酸素状態でも血圧測定を起動するような動作を実現する。つまり、比較的に軽度の低酸素状態であっても、前回の血圧測定を起動してから長い時間経過していれば血圧測定を起動させることにする。つまり、経過時間が長いほど、閾値の変位が大きくなるように更新する。そのために、実施の形態では、血圧測定を起動する血中酸素飽和度(変数SpO2(i))の閾値THを、ステップST314の式により決定する。
【0049】
ここで、式の変数Vは、1時間当たりの閾値変化速度を指し、例えば、10(%/時)に設定される。式の変数Tpは現在時間、変数T0は前回の血圧測定が起動された時間を指す。また、この式によって閾値THが初期値TH0(90%)以上となった場合は、閾値THに、初期値TH0を設定する。なお、ここでは、時間依存性の関数を、時間の1次関数の式としたが、関数の形はこれに限定されるものではない。
【0050】
実施の形態1では、血圧測定を起動するか否かを決定するための閾値THを、被検者の最低(極小値)の血中酸素飽和度を用いて逐次再設定する。また、最低の血中酸素飽和度(変数Smin)が更新されない間は、閾値THを上述の式に従って時間依存的に上昇させる。これらによって、前回の血圧測定を起動してから長時間経過後には、最低の血中酸素飽和度(変数Smin)よりも大きい血中酸素飽和度の軽度の低酸素状態でも、血圧測定を起動することができる。この結果、測定開始から終了までの期間のうちの比較的に初期において最低の血中酸素飽和度が測定される場合でも、それ以降の期間においても血圧測定が可能となり、測定期間(たとえば、被検者の睡眠期間)全体に亘って、血圧測定データを取得することができる。
【0051】
(閾値THの変化速度について)
図7と図8は、本発明の実施の形態1に係る閾値変化速度について説明するためのグラフである。上述したステップST314の式における変数Vは、閾値THの変化速度(以下、RCOTと呼ぶ)を指す。図7と図8は、発明者らによる血圧測定装置1Aを用いたシミュレーションの結果を示す。結果から、閾値THの変化速度は、1時間当たり10%と決定した。
【0052】
このシミュレーションでは9名(軽症、中度、重症の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ患者それぞれ3名ずつ)から測定される血中酸素飽和度のデータを用い、RCOTを6%、10%、20%に設定して血圧測定を起動する動作を模擬的に実行させた。
【0053】
まず、血圧測定を行うべき無呼吸発作(必要点)と血圧測定を見送るべき無呼吸発作(不要点)を、上記9名から得た血中酸素飽和度の実データ上に指定した。必要点の要件は、一晩のうちで最低となる血中酸素飽和度を伴う発作であることと、最低血中酸素飽和度が測定された後の3時間以上の長い時間を経てほぼ同等の血中酸素飽和度低下を伴う発作であることとした。不要点の要件は、血中酸素飽和度の低下量に関わらず、必要点から長い時間を経ない無呼吸発作とした。RCOTを6%、10%、20%と変化させ、計114点の指定無呼吸発作(必要点82点と不要点32点)についてシミュレーションを実行させた。成功率を指定どおりの動作(すなわち、必要点の検出と不要点の見送り)の頻度と定義し、90%以上を許容範囲としてRCOT毎に評価した。結果、必要点についての6%、10%、20%のRCOTそれぞれの成功率は、86.6%、95.1%、100.0%であった(図7参照)。不要点の成功率は、いずれのRCOTでも100.0%であった。したがって、成功率から評価したRCOTの値としては、10%と20%が適切であろうとの知見を得た。
【0054】
次に、1晩当たりの血圧測定回数を評価した。上記9名から測定した血中酸素飽和度のデータには指定点以外にも多くの無呼吸発作が存在したが、実用的見地から、1晩当たりの血圧測定回数は15回以下と考えた。何故なら、現在、夜間睡眠時の血圧測定で広く用いられている自由行動下血圧モニタリング(ambulatory blood pressure monitoring:ABPMと略す)では、一般に1時間当たりの測定頻度は2回と設定されることが多く、8時間の睡眠時間を想定すると、1晩当たりの測定回数は15〜16回になるからである。6%、10%、20%のRCOTによるシミュレーションの結果、15回以上の血圧測定が実行されることになる被検者数は、それぞれ0名、0名、5名(56%)であった(図8参照)。したがって、血圧測定で評価したRCOTの値としては、6%と10%が適切であるとの知見を得た。発明者らは、上述の2つのシミュレーション結果により、閾値の変化速度(変数V)として10%を最適値として採用した。
【0055】
(閾値(固定)との比較)
図9および図10(A)と(B)は、本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、閾値を固定にした測定と比較して説明するためのグラフである。図9および図10(A)と(B)は、同一被検者について、測定時間の経過に従って測定される血中酸素飽和度の変化と、血圧測定の起動BPのタイミングとを関連付けて示している。
【0056】
図9は、測定期間に亘って閾値変化速度Vを用いて閾値THが可変に変更される実施の形態1のケースである。図9のグラフからは、血中酸素飽和度SpO2が時系列に変化する過程で抽出される特徴値を用いて、すなわち極小値を用いて閾値が算出される(ステップST314)ことで、血中酸素飽和度が相対的に低い状態および高い状態のいずれにおいても、すなわち血圧測定が測定期間の全体にわたって行われていることが示される。これに対して、図10(A)は、従来のように閾値を固定(変化させない)としたケースであって、グラフからは、低酸素状態が起こる度に血圧測定が起動され、膨大な血圧測定回数になっていることが示される。図10(B)は、血中酸素飽和度の最低値によって閾値を更新させる方法によるもので、最も大きな血中酸素飽和度の低下が測定期間の初期に起こったことにより、それ以降、血圧測定は行われていないことが示される。したがって、実施の形態1によれば、血中酸素飽和度が低い状態において血圧測定を起動しながら、且つ測定期間(たとえば、被検者の睡眠期間)全体に亘って、血圧測定データを取得することができる。
【0057】
(ABPMとの比較)
図11は、本発明の実施の形態1に係る閾値を可変にした測定を、ABPMによる測定と比較して説明するためのグラフである。グラフは、発明者らの実験によるものである。図11の最上段には、被検者の睡眠時間(19:00−6:00)において測定される血中酸素飽和度の変化が示される。ABPMは、1時間当たり2回の血圧測定を行う。図中の折れ線グラフはABPMによって測定された血圧(収縮期血圧SBP)の変化を示す。ABPMによれば、血中酸素飽和度の変化にかかわらず、一定間隔で血圧が測定されることから、血中酸素飽和度が低下したタイミングに同期して血圧測定がなされていないことがわかる。
【0058】
これに対して、実施の形態1の血圧測定装置1Aで測定をした場合には、グラフ中の黒丸でプロットされているように、血中酸素飽和度が低下する毎に血圧測定が起動されて、その結果、血中酸素飽和度が低下するタイミングに同期して測定データ(収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBP、脈拍数)を取得できることが分かる。
【0059】
<実施の形態2>
被検者の血中酸素飽和度は、すなわち被検者の呼吸パターンに依存する。そこで、本実施の形態2では、被検者の呼吸をモニタし、モニタの結果である時系列の呼吸変化(吸気・排気)に基づき血圧測定部を起動する。
【0060】
(血圧測定装置)
図12には、本発明に実施の形態2に係る血圧測定装置1Bのハードウェア構成が示される。図12を参照して、血圧測定装置1Bと血圧測定装置1Aとを比較し異なる点は、血圧測定装置1Bは、本体部10Aに代替して本体部10Bを備え、血中酸素飽和度を測定するためのセンサユニット50Aに代替して気流センサ50Bを備える点にある。血圧測定装置1Bの他の構成は血圧測定装置1Aと同様であり説明を略し、相違する点のみを説明する。なお、図12には、血圧測定装置1Bの周囲の温度を計測する温度センサ48を備えるが、この温度センサ48は、実施の形態2に係る測定に必須の要件ではないので、詳細は後述する。
【0061】
本体部10Bは、発光素子駆動回路52および増幅・AD変換回路53に代替して呼吸モニタ53Bを含み、CPU1000Aに代替してCPU1000Bを含む。本体部10Bの他の構成は本体部10Aと同じであり、それらの説明は繰返さない。
【0062】
呼吸モニタ53Bは、気流センサ50Bからの検出信号を入力し、入力する検出信号に基づき被検者の呼吸の状態をモニタし、モニタ結果を示す呼吸信号をCPU1000Bに出力する。
【0063】
図13は、本発明の実施の形態2に係る気流センサ50Bの外観を示す図である。図13を参照して、気流センサ50Bは、被検者の鼻腔付近に固定して装着される。気流センサ50Bは、内蔵する圧力センサ(図示せず)によって鼻腔付近の気圧を検出し、検出信号を出力する。吸気の際は鼻腔付近の気圧は低下し、排気の際は上昇する。
【0064】
呼吸モニタ53Bは、気流センサ50Bからの検出信号に基づき鼻腔付近の気圧の変化パターンを導出し、導出する変化パターンに基づき被検者の鼻腔からの吸気と排気を検出する。具体的には、被検者の通常の吸気と排気のそれぞれについての変化パターンを予め記憶しておき、この記憶された変化パターンと、測定時に導出された変化パターンとをパターンマッチングすることによって、吸気または排気を検出する。検出の結果は呼吸信号としてCPU1000Bに出力される。ここで、呼吸信号は、たとえば電圧信号であり、吸気の期間は正の電圧信号が、排気の期間には負の電圧信号が出力される。呼吸モニタ53Bは、上述のパターンマッチングによって、呼気でもなく排気もないと判定する期間は、つまり無呼吸の期間は零の電圧信号を出力する。
【0065】
なお、CPU1000Bは、呼吸モニタ53Bが出力する呼吸信号を、たとえば1秒毎に入力し、また、呼吸モニタ53Bは、1秒よりも十分に短い周期で気流センサ50Bからの検出信号を入力し、気流センサ50Bは当該周期よりも短い周期で気圧を検出し、検出信号を出力すると想定する。
【0066】
図14は、本発明の実施の形態2に係る血圧測定装置1Bの機能構成図である。図14を参照して、CPU1000BとCPU1000Aとを比較し異なる点は、CPU1000Bは、トリガ出力部300Aに代替してトリガ部300Bを備える。他の機能はCPU1000Aが備える機能と同じであり、説明は略す。
【0067】
トリガ出力部300Bは、呼吸モニタ53からの呼吸信号に基づき無呼吸を検出すると、血圧測定を起動するためのトリガTRを血圧測定部100に出力する。
【0068】
(呼吸に基づくトリガ出力)
図15は、本発明の実施の形態に係る呼吸信号とトリガTRの出力との関係を示すタイミングチャートである。トリガ出力部300Bは、呼吸信号に基づき吸気を開始してから、その直後の排気を開始するまでの時間が、所定時間よりも長くなることを検出すると、無呼吸を検出する。つまり、吸気が開始した時点で、トリガ出力部300Bは、カウンタ(図示せず)によるカウントアップを開始し、排気が開始された時点でカウンタのカントアップを停止してカウント値をクリア(初期化)する。なお、トリガ出力部300Bは、タイマ43からの出力に同期してカウンタによるカウントアップ動作を行う。
【0069】
図15の上段は吸気信号A〜Qを含む呼吸信号を示し、下段は当該呼吸信号に同期して変化するカウンタ値CT(i)を示す。さらに、カウンタ値CT(i)に関連して閾値THの変化が示される。図15における下向き矢印は、血圧測定が起動された時点を指す。図15を参照して、吸気信号A〜Cの期間のように、無呼吸を検出しない正常な期間は、カウンタ値CT(i)は比較的小さな値に留まって、次の吸気が始まる。ところが、図15の吸気信号Dの吸気から直後の排気開始までの期間のように、無呼吸期間においては、排気が起こらないために、カウンタ値CT(i)は非常に大きな値にまで増大する。トリガ出力部300Bは、このように変化するカウンタ値CT(i)に従って閾値THを変化させる。
【0070】
図示されるように、閾値THは測定開始時の最初は、初期値TH0に設定され、カウンタ値CT(i)が増加し閾値THよりも大きくなると、閾値THは増加するカウンタ値CT(i)と同じ値を指示するように更新される。閾値THは、その後に排気が始まって無呼吸が停止する時点のカウンタ値CT(i)にまで増加する。その後は、閾値THは一定の速度で減少して行き、初期値TH0を指示した時点で減少は停止する。
【0071】
このように、閾値THの増減の速度を可変にすることによって、吸気信号Dの直後のように重度の無呼吸が起こった後しばらくは、それに近いレベルの無呼吸(吸気信号Gの直後の無呼吸)は看過し、充分時間が経過した場合(吸気信号Mの直後の無呼吸)は軽度の無呼吸でも血圧測定が起動されるようにする。つまり、血圧測定からの経過時間が長いほど、閾値の変位が大きくなるように更新する。
【0072】
(フローチャート)
図16は、本発明の実施の形態2に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Bが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。ここでは、測定期間を被検者の睡眠期間としているが、無呼吸状態が生じ得る期間であれば、睡眠期間に特定されるものではない。
【0073】
測定に際して被検者は、カフ20と気流センサ50Bをそれぞれの測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Bの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0074】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Bは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0075】
処理が開始されると、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)の値が示す無呼吸期間の長さを評価するための閾値THを、初期値TH0に設定する(ステップST401)。この初期値TH0は、正常な呼吸周期では到達されないほど高く、軽度の無呼吸発作しか示さない軽症のOSA患者には到達される程低く設定するのが望ましく、例えば15秒程度に設定される。
【0076】
そして、信号の時間を示す変数iの値を1インクリメントし(ステップST402)、それに対応するカウンタ値CT(i)に、タイマ43からの時間を設定する(ステップST403)。
【0077】
次に、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値TH(秒)より大きいか否かを判定し(ステップST404)、大きいと判定すると(ステップST404)後述のステップST405に移行し、カウンタ値CT(i)が閾値TH以下であると判定すると(ステップST404でNO)、ステップST402に戻り、ステップST402〜404の動作を繰返す。
【0078】
トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値THより大きいと判定すると、トリガTRを出力する。これにより、血圧測定部100による血圧測定が起動する(ステップST405)。さらに、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)をカウンタ値の最大値が設定される変数CTmにセットし(ステップST406)、変数iの値を1インクリメントする(ステップST407)。
【0079】
その後、呼吸信号に基づき被検者の排気が始まったかを判定する(ステップST408)。排気は始まっていないと判定すると(ステップST408でNO)、処理はステップST406に戻り、それ以降の処理を繰返す。一方、排気が始まったと判定すると(ステップST408でYES)、変数CTmにカウンタ値CT(i)をセットする(ステップST409)。そして、その時点でタイマ43が出力する現在時間を示す変数Tpの値を、変数T0にセットする(ステップST410)。
【0080】
そして、トリガ出力部300Bは、変数iの値を1インクリメントし(ステップST411)、それに対応するカウンタ値CT(i)に、タイマ43からの時間を設定する(ステップST412)。そして、閾値THを式(TH=CTm−V(Tp−T0))に従って再設定するが(ステップST413)、詳細は後述する。
【0081】
次に、トリガ出力部300Bは、カウンタ値CT(i)が閾値THより大きいか否かを判定する(ステップST414)。大きいと判定すると(ステップST414でYES)、処理はステップST405に戻り、それ以降の処理を繰返す。カウンタ値CT(i)が閾値TH以下であると判定すると(ステップST414でNO)、閾値THは初期値TH0より小さいか否かを判定する(ステップST415)。閾値THは初期値TH0より小さいと判定すると(ステップST415でYES)、ステップST401に戻り、それ以降の処理が繰返されるが、閾値THは初期値TH0以上であると判定すると(ステップST415でNO)、ステップST411〜415の処理を繰返す。
【0082】
次に、ステップST413における閾値THの更新に用いられる式を説明する。本実施の形態2では、前回の血圧測定が起動されてあまり時間が経過していない間は、前回と同程度の期間長さ継続する無呼吸では血圧測定を起動せず、ある程度時間が経過していれば、前回より軽度の無呼吸(無呼吸期間が短い)であっても起動するような動作を実現する。つまり、どれ程軽度の無呼吸であっても血圧測定を起動するか否かを、直近(前回)の血圧測定を起動してからの経過時間の長さに依存させることにしている。そこで、血圧測定を起動するために参照される閾値TH(無呼吸期間の長さ(カウンタ値CT(i)の値)を評価するための値)を、血圧測定を起動してからの経過時間の長さに依存して更新するために当該式を用いる。
【0083】
式の変数Vは、1時間当たりの閾値TH変化速度を指す。また、この計算式により算出された閾値THが初期値TH0を未満となった場合には(ステップST415でYES)、閾値THに初期値TH0を設定する(ステップST401)。なお、ここでは、時間依存性の関数を、式に示すように時間の1次式としたが、関数の形はこれに限定されるものではない。
【0084】
<実施の形態3>
本実施の形態3に係る血圧測定装置は、測定時の被検者の周囲の環境温度の変化があると血圧は急激に変化することに着目し、周囲温度を測定して得られた時系列の温度データに基づき、急激な温度変化が起こった時から一定時間後に、血圧測定が実行されるように動作する。
【0085】
実施の形態3に係る血圧測定装置は、図14の血圧測定装置1Bのトリガ出力部300Bが呼吸モニタ53Bに代替して温度センサ48からの温度信号を入力するように構成される。温度センサ48は、血圧測定装置1Bの周囲の環境温度を測定し、温度信号をトリガ出力部300Bに出力する。血圧測定装置1Bの気流センサ50Bは装置に着脱自在に装着される。気流センサ50Bが装着されない態様では、トリガ出力部300Bは温度センサ48からの温度信号を入力する。
【0086】
図17は、本発明の実施の形態3に係る測定処理のフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、予めメモリ部39の所定の記憶領域に格納され、CPU1000Bが当該プログラムをメモリ部39から読出し、実行することにより、処理フローチャートに従う機能が実現される。なお、後述の変数T0は、直近の血圧測定が起動された時間が設定される変数であって、図17のフローチャートの開始時には初期値0が設定される。
【0087】
測定に際して被検者は、カフ20を測定部位に装着していると想定する。被検者は睡眠の前に血圧測定装置1Bの電源をONし、測定開始を指示するためのスイッチを操作し、起床したときに測定終了を指示するためのスイッチを操作する。
【0088】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチ操作によって測定開始指示を入力すると、処理を開始する。CPU1000Bは、処理中もスイッチ操作による測定終了の指示が入力されるかを監視する。終了指示を入力した場合には、処理を実行中であっても、強制的に処理を終了する。
【0089】
CPU1000Bは、測定開始のスイッチによって測定開始の操作が行われたかを監視し(ステップST101)、操作があった時点で(ステップST101でYES)、以降の処理を開始する。次に、測定停止スイッチによって測定終了の操作が行われたかどうかを監視し(ステップST102)、測定停止操作があった場合には、全ての動作を終了するが、ない場合には各種変数を初期化し、次の処理(ステップST103)に移行する。
【0090】
トリガ出力部300Bは、温度データの時系列を表す変数iを1インクリメントし(ステップST103)、温度センサ48からの温度信号が示す環境温度を変数Te(i)にセットし(ステップST104)、タイマ43からの計時データに基づく現在時間を変数Tpにセットする(ステップS105)。ここで、トリガ出力部300Bが、温度センサ48から温度信号を読込む間隔は、例えば5秒などに設定する。
【0091】
続いて、トリガ出力部300Bは、環境温度に急激な変化が起こったかを評価するための値が設定される変数TA1とTA2を、後述の式(1)と式(2)により更新する(ステップST106、107)。
【0092】
ここで、ステップST106、107で実行される変数TA1とTA2の値の更新に用いる計算式を説明する。本実施の形態3では、環境温度に急激な変化が起こった時から一定時間後に血圧測定が実行されるような動作を実現する。一定時間をおくのは、急激な温度変化に対する生体の血圧反応時間を考慮しているためである。変数TA1は、その時点の環境温度を含んだ一定時間前の環境温度の平均値を表し、式(1)により算出される。また、変数TA2は、変数TA1よりも前の時間における、変数TA1と同じ時間幅において測定された環境温度の平均値を指し、式(2)より算出される。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
式(1)と式(2)の変数Nは、平均値を算出するために用いる環境温度データの個数を指し、任意の値が用いられる。例えばトリガ出力部300Bは、温度センサ48から5秒間隔で温度信号を入力する場合には、すなわち環境温度データを5秒間隔で取得する場合には、平均値を算出する時間幅を10分とすると変数Nの値は120となる。
【0096】
トリガ出力部300Bは、((TA1<TH)OR(|TA1−TA2|>ΔTe))の条件式が成立するか否かを判定する(ステップST108)。
【0097】
この条件式は、その時点の環境温度を含んだ一定期間前の環境温度の平均値TA1が予め設定されている閾値TH未満であるか、または変数TA1とTA2との差の絶対値が予め設定された閾値ΔTeよりも大きいかの判定をするための式を指す。当該条件式が成立しないと判定されると(ステップST108でNO)、処理はステップST102〜108が繰返される。
【0098】
条件式が成立すると判定されると(ステップST108でYES)、トリガ出力部300Bは、変数T0と、タイマ43から入力する計時データに基づく現在時間が設定される変数Tpとを比較して、(Tp−T0>ΔT)の条件式が成立するか否かを判定する(ステップST109)。ここで、変数ΔTは、血圧測定の起動を禁止する時間を指し、予め設定された時間を指す。
【0099】
トリガ出力部300Bは、条件式が成立しないと判定すると(ステップST109でNO)、処理はステップST102に戻り、それ以降の処理が繰返される。
【0100】
一方、条件式が成立すると判定すると(ステップST109でYES)、トリガ出力部300Bは、トリガTRを血圧測定部100に出力する。これにより、血圧測定が起動される(ステップST110)。血圧測定が起動されると、トリガ出力部300Bは、変数T0に、変数Tpの現在時間をセットする(ステップST111)。その後、処理はステップST102に戻り、測定停止のスイッチが操作されるまで、以降の処理が繰返される。
【0101】
上述の実施の形態1〜3では、血圧変動に関連する情報、すなわち血圧の変動を引き起こす要因(事象)を指す情報として、被検者の生体に関連する血圧を除く生理情報と周囲環境の情報をあげた。生理情報としては血中酸素飽和度および呼吸パターンを例示し、周囲環境の情報としては周囲温度を例示したが、これらは一例にすぎず、他の種類の情報を適用してもよい。
【0102】
<実施の形態4>
上述の各実施の形態のフローチャートに従う測定方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。たとえば、図1の構成では、CPU1000Aを備えてコンピュータの機能を有する血圧測定装置1Aには、SDメモリカード47などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU1000Aは、外部I/F45を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0103】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされてCPUにより読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0104】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1A,1B 血圧測定装置、46 情報処理装置、48 温度センサ、50A センサユニット、50B 気流センサ、100 血圧測定部、300A,300B トリガ出力部、391 測定データ記憶部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置であって、
被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、
血圧の変動に関連する情報であって前記所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、
満たすと判定されるとき、前記血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、
前記所定条件を、前記所定期間内において計時される時間の関数として表わす、血圧測定装置。
【請求項2】
前記所定条件は、閾値を含み、
前記判定手段は、
前記情報取得手段により取得された情報が示す値と、前記閾値とを比較する比較手段を含み、
前記実行させるための手段は、
前記比較手段による比較の結果に基づき、前記血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させ、
前記関数は、前記閾値を、直近に前記血圧測定手段が起動されたときからの経過時間の長さに従って変化させる関数を指す、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記情報が前記時系列に変化する過程で示す値に基づき特徴値を取得する手段を、含み、
前記特徴値を用いて前記閾値を算出する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記関数は、前記経過時間が長いほど、前記閾値の変化量を大きくする関数である、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記情報取得手段によって取得される情報は、被検者の血圧を除く生理情報を指す、請求項3または4に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記生理情報は、被検者の血中酸素飽和度を含む、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記特徴値は、前記血中酸素飽和度の極小値を指す、請求項6に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記経過時間の長さに従って閾値が変化する速度は、毎時10%である、請求項6または7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記生理情報は、被検者の呼吸パターンを含む、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項10】
前記特徴値は、無呼吸期間の長さを指す、請求項9に記載の血圧測定装置。
【請求項11】
前記情報取得手段によって取得される情報は、血圧測定時の環境条件を指す、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項12】
前記環境条件は、血圧測定時の被検者の周囲温度を指す、請求項11に記載の血圧測定装置。
【請求項1】
所定期間内において血圧を測定する血圧測定装置であって、
被検者の血圧を測定するための血圧測定手段と、
血圧の変動に関連する情報であって前記所定期間において時系列に変化する情報を取得するための情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報が所定条件を満たすか否かを判定するための判定手段と、
満たすと判定されるとき、前記血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させるための手段と、を備え、
前記所定条件を、前記所定期間内において計時される時間の関数として表わす、血圧測定装置。
【請求項2】
前記所定条件は、閾値を含み、
前記判定手段は、
前記情報取得手段により取得された情報が示す値と、前記閾値とを比較する比較手段を含み、
前記実行させるための手段は、
前記比較手段による比較の結果に基づき、前記血圧測定手段を起動して血圧測定を実行させ、
前記関数は、前記閾値を、直近に前記血圧測定手段が起動されたときからの経過時間の長さに従って変化させる関数を指す、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記情報が前記時系列に変化する過程で示す値に基づき特徴値を取得する手段を、含み、
前記特徴値を用いて前記閾値を算出する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記関数は、前記経過時間が長いほど、前記閾値の変化量を大きくする関数である、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記情報取得手段によって取得される情報は、被検者の血圧を除く生理情報を指す、請求項3または4に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記生理情報は、被検者の血中酸素飽和度を含む、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記特徴値は、前記血中酸素飽和度の極小値を指す、請求項6に記載の血圧測定装置。
【請求項8】
前記経過時間の長さに従って閾値が変化する速度は、毎時10%である、請求項6または7に記載の血圧測定装置。
【請求項9】
前記生理情報は、被検者の呼吸パターンを含む、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項10】
前記特徴値は、無呼吸期間の長さを指す、請求項9に記載の血圧測定装置。
【請求項11】
前記情報取得手段によって取得される情報は、血圧測定時の環境条件を指す、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項12】
前記環境条件は、血圧測定時の被検者の周囲温度を指す、請求項11に記載の血圧測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−239808(P2012−239808A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115846(P2011−115846)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】
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