説明

血清コレステロールおよび/または血清トリグリセリドを低下させるための組成物

本発明は、哺乳動物において高脂血症および高脂血症と関連する障害を治療するための方法ならびに組成物を提供する。本発明の実施に有用な組成物には、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質阻害剤(「MTPI」)、ならびにコレステロール吸収阻害剤(「CAI」)、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも2種類の他のコレステロール低下薬が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/788,616号(2006年4月3日出願)および米国仮特許出願第60/727,664号(2005年10月18日出願)に対する優先権を主張し、これらの全開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、医薬組成物および高脂血症の治療におけるそれらの使用の分野に関し、より詳細には、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質阻害剤と、少なくとも2種類の他のコレステロール低下薬とを含む治療剤の組合せ、および高脂血症の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
西洋社会の主な死亡原因であるアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)にはいくつかの公知の危険因子がある。1つの重要な危険因子は、血漿中に高濃度の脂質が存在する高脂血症である。様々な疫学研究によって、薬物がもたらす総コレステロール(TC)および低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)の低下が、心血管事象の有意な減少と関連することを示されてきた。全米コレステロール教育プログラム(NCEP)の更新済みガイドラインによると、ハイリスク患者の全体的な目的は、100mg/dL未満のLDLを達成することであり、このような患者が70mg/dL未満のLDL濃度を達成する目的を設定することが治療法の選択肢であると推奨している。
【0004】
高脂血症の1つの形態は、高トリグリセリド血症として知られており、血液中のトリグリセリド量の増加をもたらす。トリグリセリドは健康のために必要であるが、正常より高いトリグリセリド濃度は、心疾患の公知の危険因子と関連する場合が多い。
【0005】
血液中に高濃度のコレステロールが存在する高コレステロール血症として知られる高脂血症の他の形態は、多遺伝子性疾患である。生活習慣の変更および従来の薬物療法は、コレステロール濃度を減少させることにおいて通常成功する。しかし、家族性高コレステロール血症(FH)におけるような一部の例では、原因は一遺伝子性の欠陥である。FHを有する患者の治療は、従来の治療法を積極的に使用するにも関わらずLDL−C濃度は高いままであるので、より難しい可能性がある。
【0006】
例えば、FHの1種類であるホモ接合型の家族性高コレステロール血症(hoFH)は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体における変異についてのホモ接合または複合ヘテロ接合に起因する重大な生命を脅かす遺伝性疾患である。hoFHを有する患者は、400mg/dL超の血漿総コレステロール濃度を通常有し、早発性アテローム硬化性血管疾患となる。治療せずにいると、大部分の患者は20歳前にアテローム性動脈硬化を発症し、一般に30歳を超えて生存しない。しかし、hoFHと診断された患者は、大部分が従来の薬物療法に反応せず、治療法の選択肢が限定されている。具体的には、コレステロール合成阻害および肝臓のLDL受容体の上方制御によってLDL−Cを減少させるスタチンによる治療は、LDL受容体に欠損または障害のある患者においてはごくわずかな影響しか有さない。スタチンの極量(80mg/日で投与されるアトルバスタチンまたはシンバスタチン)で治療した遺伝子型が確認されたhoFHの患者において、平均でLDL−Cがわずか約20%未満減少することが、最近報告された。10mg/日のエゼチミベをこの投与計画に加えることによって、全体で27%のLDL−C濃度の減少となったが、これはまだ最適とはかけ離れている。門脈大静脈吻合および回腸バイパスなどの外科的介入、ならびに同所性肝移植を含めて非薬理学的な選択肢もまた試されたが、明らかな不都合および危険性がある。したがって、hoFHのための新規な薬物療法への極めて大きないまだ対処されていない医学的な必要性が存在する。
【0007】
ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)阻害剤は、MTPによって媒介される中性脂肪転送作用の強力な阻害剤として開発されてきた。MTPは、小さな単膜小胞間のトリグリセリド、コレステリルエステル、およびホスファチジルコリンの輸送を触媒する。1つの代表的なMTP阻害剤はBristol−Myers Squibb社によって開発されたBMS−201038である。特許文献1、および特許文献2を参照されたい。ホモ接合型FHについての動物モデルを使用した研究によって、BMS−201038が、血漿コレステロール濃度を用量依存的に、例えば25mg/日で効果的に減少させたことが示され、これはこの化合物はhoFHを有する患者の治療のために効果的であり得ることを示唆した。しかし、25mg/日のBMS−201038で治療を受けた特定の患者が、特定の有害事象、例えば消化器障害、肝機能の異常、および肝脂肪症を患ったことが指摘された。見込みのある治療剤ではあるが、BMS−201038の大規模な臨床試験は、中断されてきた。インプリタピドとして知られている他の強力なMTP阻害剤が開発されてきた。特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照されたい。臨床試験の間、80mg/日以上のインプリタピドの投与量は、治療的に有効であるが、特定の有害事象、例えば、消化器障害、肝機能の異常、および肝脂肪症をもたらしたことが見出された。インプリタピドを使用した大規模な臨床試験もまた、中断されてきた。
【特許文献1】米国特許第5,739,135号明細書
【特許文献2】米国特許第5,712,279号明細書
【特許文献3】米国特許第6,265,431号明細書
【特許文献4】米国特許第6,479,503号明細書
【特許文献5】米国特許第5,952,498号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、公表されたガイドライン、例えば、NCEPガイドラインに基づいた治療目標の達成率を向上させるために、例えば循環しているコレステロールおよびトリグリセリド濃度を効果的に低下させる、高脂血症を積極的に治療する方法であって、しかし、単独療法においてMTP阻害剤のより高い投与量のみが使用された場合に通常もたらされる有害な作用が、少ないか軽減される方法への必要性が、いまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡潔な要旨)
本発明は、少なくとも2種類の他のコレステロール低下薬と組み合わせた、MTP阻害剤を含む阻害剤の開発に部分的に基づいている。活性成分の組合せは、目標達成の度合いの向上をもたらすだけでなく、その目標を個々の活性成分のより低い投与量で達成することもまた可能にし、したがって個々の活性成分と関連する用量関連の有害事象の発生率および/または重篤度を減少させるであろうことが意図されている。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびコレステロール吸収阻害剤(CAI)と組み合わせてMTP阻害剤を使用することによって、例えば、早期臨床試験においてすでに達成された濃度未満に、血液中のLDL濃度を低下させることによって、心血管事象率の減少および/またはプラーク退縮においてさらなる改善が実現されるであろうことが意図されている。
【0010】
例えばこれらの組成物は、哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド空腹時濃度を減少させるために使用され、臨床的エンドポイントを達成することができるが、(i)臨床的エンドポイントを達成するのに十分な投与量で、単独療法においてMTP阻害剤が単独で投与される時よりも、または(ii)臨床的エンドポイントを達成するのに十分な投与量で、MTP阻害剤および他のコレステロール低下薬が投与される場合に、MTP阻害剤が他のコレステロール低下薬と共に投与される時よりも、有害事象がより少ないか軽減される。
【0011】
さらにこれらの組成物は、治療前に少なくとも130mg/dLの循環しているLDL濃度を有する患者の集団において、70mg/dL以下のLDL濃度とする目標を達成するために、血液LDL濃度を少なくとも55%、60%、または65%減少するために使用することができる。この場合、(i)集団中の患者の2%未満が、標準的な臨床検査室の範囲の正常上限の3倍を超える肝機能検査の結果を有する、あるいは(ii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の許容される最大用量を投与される患者と比較して、患者が骨格筋の副作用(例えば、筋肉痛および/またはミオパチー)を有することが統計的に有意に低い。このような文脈において、「許容される」という用語は、規制機関、例えば米国食品医薬品局によって許容される最大投与量を意味する。
【0012】
さらに、組成物は、レシピエントに投与される場合、レシピエントがコレステロールの目標を達成することを可能にするだけでなく、血管壁にプラーク、例えば、アテローム動脈硬化性プラークが蓄積するのを遅らせるか停止させるであろうことが意図されている。特定の状況下で、組成物が投与された場合、すでにあるプラークの退縮ももたらすであろうことが意図されている。
【0013】
1つの態様によれば、本発明は、(i)MTP阻害剤、(ii)CAI、ならびに(iii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む医薬組成物を提供する。他の態様では、本発明は、(i)MTPI、(ii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iii)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
医薬組成物が、MTPI、(ii)CAI、(iii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iv)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、およびナイアシンからなる群から選択されるコレステロール低下薬を含むことができる場合がある。
【0015】
MTPIは、BMS−201038、インプリタピド、JTT−130およびCP−346086、ならびにSLx−4090からなる群から選択される公知の化合物から選択することができる。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、メバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、テニバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンからなる群から選択することができる。CAIは、エゼチミベまたはその誘導体、MD−0727、FM−VP4、LPD−179、LPD84、およびLPD145からなる群から選択することができる。胆汁酸捕捉剤は、コレスチラミン、コレセベラムおよびコレスチポールからなる群から選択することができる。フィブリン酸誘導体は、フェノフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、およびゲンフィブロジルからなる群から選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(1)定義
便宜のため、明細書、実施例および添付の特許請求の範囲中で使用される特定の用語をここにまとめる。
【0017】
「併用療法」という表現は、本明細書で使用する場合、MTP阻害剤および少なくとも2種類の他のコレステロール低下薬を同時投与することを意味し、例えばその場合、これらの治療剤の共同作用から有益な効果を得ることを意図した特定の治療計画の一部として、1つがHMG−CoAレダクターゼであり、他方がCAIである。組合せの有益な効果には、これらだけに限らないが、治療剤の組合せから得られる薬物動態学的または薬力学的共同作用が含まれる。組み合わせたこれらの治療剤の投与は、通常決められた期間に亘って行われる(通常、選択した組合せによって数週、数カ月または数年)。併用療法は、複数の治療剤の順次の態様での投与、すなわち、各治療剤が異なる時に投与される場合と、これらの治療剤、または治療剤の少なくとも2種類が実質的に同時の態様で投与される場合とを包含することを意図している。実質上の同時投与は、例えば、各治療剤の一定比率を有する単一の錠剤またはカプセル剤、あるいは治療剤の各々毎に複数の単一のカプセル剤を対象に投与することによって実現することができる。各治療剤の順次投与または実質上の同時投与は、それだけに限らないが、経口経路、静脈内経路、筋内経路、および粘膜組織を通した直接吸収が挙げられる任意の適切な経路によって行うことができる。治療剤は、同一の経路または異なる経路によって投与することができる。例えば、選択した組合せの第1の治療剤は、静脈内注射によって投与され、一方組合せの他の治療剤は経口で投与され得る。あるいは、例えば全ての治療剤を経口で投与し、または全ての治療剤を静脈内注射で投与し得る。
【0018】
併用療法はまた、他の生物活性のある成分および非薬物治療とさらに組み合わせた、上記のような治療剤の投与も包含することができる。併用療法が非薬物療法をさらに含む場合、非薬物療法は、治療剤および非薬物療法の組合せの共同作用から有益な効果がもたらされる限りは、任意の適切な時に行ってもよい。例えば適切な場合には、治療剤の投与から、非薬物療法が一時的に、恐らく数日またはさらに数週間、除かれた場合でも、有益な効果はまだ達成される。
【0019】
組合せの成分は、同時にまたは順次、患者に投与し得る。成分は、同一の医薬として許容される担体中にあり、したがって、同時に投与され得ることを理解されたい。あるいは活性成分は、同時にまたは順次に投与することのできる従来の経口剤形などの別々の医薬担体中にあってもよい。
【0020】
「個人」「患者」または「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用され、動物、例えば、霊長類、例えば、ヒト、および他の動物、例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、およびウマを含めた任意の哺乳動物が含まれる。本発明の化合物を、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、また他の哺乳動物、例えば、獣医の治療を必要としている動物、例えば、家庭用動物(domestic animal)(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)でよい。
【0021】
「スタチン単独療法に耐性を示す患者」という用語は、本明細書で使用する場合、従来のスタチン単独療法の効果がない、または所望よりも効果が少ないと見出された患者を含む。患者に脂質減少の治療を計画する医師であれば、診断および定期的な血液コレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の観察によって、その患者がスタチン単独療法に耐性を示している、または示してきたかを決定することができるであろう。
【0022】
「スタチン不耐性患者」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば血清脂質減少のための従来のスタチン治療が、効果がないと見出された患者、および/あるいはスタチンの効果的に脂質を減少させる用量が多すぎて許容されない、または特定の用量と関連する受け入れがたい有害事象がある患者が含まれる。例えば、スタチン治療は、肝機能検査の異常、筋肉の痛みおよび疼痛または炎症(筋肉痛または筋炎)、筋肉の有害事象を示す酵素(CK)の上昇などの有害事象に対する懸念によって、医師/患者によって中止し得る。患者に脂質減少の治療を計画している医師であれば、診断および定期的な血液コレステロールおよび/またはトリグリセリド濃度の観察によって、その患者がスタチン不耐性であるかを決定することができるであろう。
【0023】
「有害な作用を最小化する」、「有害事象を減少させる」または「有害事象の減少」という表現は、本明細書で使用する場合、本発明のMTP阻害剤の使用に関連する1種以上の望ましくない副作用の寛解または解消を意味する。MTP阻害剤の従来の使用の副作用には、これらだけに限らないが、悪心、消化器疾患、脂肪便、腹部のけいれん、膨張、肝機能検査値の上昇、脂肪肝(肝脂肪症)、肝脂肪蓄積、多発性神経障害、末梢神経障害、横紋筋融解、関節痛、筋肉痛、胸痛、鼻炎、めまい、関節炎、末梢浮腫、胃腸炎、肝機能検査異常、大腸炎、直腸出血、食道炎、おくび、口内炎、胆管痛、口唇炎、十二指腸潰瘍、嚥下障害、腸炎、下血、歯肉出血、胃潰瘍、しぶり、潰瘍性口内炎、肝炎、膵臓炎、胆汁うっ滞性黄疸、知覚異常、健忘症、性欲減退、情動不安定、共調運動不能、斜頚、顔面神経麻痺、運動亢進症、うつ、触覚鈍麻、筋緊張亢進、足のけいれん、滑液包炎、腱鞘炎、筋無力症、腱拘縮、筋炎、高血糖症、クレアチニンホスホキナーゼ増加、痛風、体重増加、低血糖、アナフィラキシー、血管運動神経性浮腫、ならびに(多形性紅斑、スティーブンスジョンソン症候群、および中毒性表皮壊死症を含めた)水疱性発疹が挙げられる。したがって、本明細書に記載する方法は、効果的な治療を提供し、同時により少ないまたはより重大でない有害事象を実現する。
【0024】
特定の実施形態では、副作用が部分的に解消される。本明細書で使用する場合、「部分的に解消される」という表現は、単独療法の間の25mg/日のBMS−201038、あるいは単独療法の間の80mg/日または160mg/日のインプリタピドの投与によって見出されたのと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%および99%の特定の副作用の重篤度、程度、または期間の減少を意味する。特定の実施形態では、副作用は完全に解消される。当業者は、副作用の重篤度、程度、または期間、および副作用の寛解の程度を見出し段階付ける資質があると考えられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の副作用が寛解する。
【0025】
「治療的に有効な」という用語は、活性成分、例えば、BMS−201038およびインプリタピドの、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている生物学的または医学的反応を誘発する能力を意味する。非限定的実施例には、患者におけるコレステロール(例えば、LDL−C)および/またはトリグリセリド濃度の減少、血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの量の減少などが挙げられる。
【0026】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている生物学的または医学的反応を誘発するであろう、活性成分、例えば、EMS−201038およびインプリタピドの量が含まれる。本発明の化合物は、血液中のコレステロール濃度および/または血液中のトリグリセリド濃度を低下させ、ならびに/あるいは1つまたは複数の血管の血液と接触する壁に蓄積するプラーク、例えば、動脈プラークの量を減少させるのに効果的な量で投与される。あるいは、活性成分の治療有効量は、(例えば、エンドポイントを達成するための)状態と関連する兆候における防止または減少をもたらす活性成分の量などの、所望の治療および/または予防効果を達成するのに必要な化合物の量である。
【0027】
「医薬として許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、必要に応じて、動物またはヒトに投与した場合、有害なアレルギー反応または他の有害反応を生じない分子的実体および組成物を意味する。「医薬として許容される担体」という用語には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が意図される。補足的活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。
【0028】
「治療する」または「治療」という用語は、状態、疾患、または障害の改善をもたらす任意の効果、例えば、低減、阻害、減少、調節、または解消を意味する。
(2)併用療法のための製剤
本明細書において提供する組成物は、血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリドの上昇した濃度に関連するいくつかの障害の治療に有用である。組成物は、少なくとも2種類の他のコレステロール低下薬と組み合わせたMTP阻害剤を含む。
【0029】
1つの態様によれば、これらの組成物は、(i)MTP阻害剤、(ii)CAI、ならびに(iii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む。3種類の活性成分が使用される場合、これを3種類の組合せと称する。しかし、本発明の実施において、3種類を超える活性成分を使用できることが意図されている。
【0030】
他の態様では、これらの組成物は、(i)MTP阻害剤、(ii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iii)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む。本発明の実施において、3種類を超える活性成分を使用できることが意図されている。
【0031】
活性成分の組合せは、より多くの目標達成をもたらすだけでなく、個々の活性成分のより低い投与量での目標達成も可能にし、したがって個々の活性成分と関連する用量関連の有害事象の発生率および/または重篤度を減少させるであろうことが意図されている。例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびCAIと組み合わせてMTP阻害剤を使用することによって、早期臨床試験においてすでに達成された濃度未満に、例えば血液中のLDL濃度を低下させることによって、心血管事象率の減少および/またはプラーク退縮のさらなる改善が実現されるであろうことが意図されている。
【0032】
例えばこれらの組成物は、哺乳動物の血液中のコレステロールおよび/またはトリグリセリド空腹時濃度を減少させるために使用して、臨床的エンドポイントを達成することができるが、(i)臨床的エンドポイントを達成または実質的に達成(例えば、10%以内)するのに十分な投与量で、MTP阻害剤が単独療法において単独で投与される時よりも、または(ii)臨床的エンドポイントを達成または実質的に達成するのに十分な投与量で、MTP阻害剤および他のコレステロール低下薬が投与される場合に、MTP阻害剤が他のコレステロール低下薬と共に投与される時よりも、有害事象がより少ないか軽減される。
【0033】
さらに、これらの組成物は、治療前に少なくとも130mg/dLの循環しているLDL濃度を有する患者の集団において、70mg/dL以下のLDL濃度とする目標を達成するために、血液LDL濃度を少なくとも55%、60%、または65%減少するために使用することができる。この場合、(i)集団中の患者の2%未満が、標準的な臨床検査室の範囲の正常上限の3倍を超える肝機能検査の結果を有し、あるいは(ii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の許容される最大用量を投与される患者と比較して、患者が骨格筋の副作用(例えば、筋肉痛および/またはミオパチー)を有することが統計的に有意に低い。
【0034】
さらに、これらの組成物は、レシピエントに投与した場合、レシピエントがコレステロールの目標を達成するのを可能にするだけでなく、血管壁にプラーク、例えば、アテローム動脈硬化性プラークが蓄積するのを遅らせるか停止させるであろうことが意図されている。特定の状況下で、これらの組成物が投与された場合、すでにあるプラークの退縮ももたらすであろうことが意図されている。
【0035】
本明細書に記載する臨床的エンドポイントを達成するために組み合わせることができる好ましい活性剤を、下記に示す。
【0036】
A MTP阻害剤
一実施形態では、MTP阻害剤は、BMS201038(M1と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「BMS−201038」という表現は、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−9−[4−[4−[[[4’−(トリフルオロメチル)[1,1’ビフェニル]−2−イル]カルボニル]アミノ]−1−ピペリジニル]ブチル]9H−フルオレン−9−カルボキサミドとして知られる、式
【0037】
【化1】

を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0038】
他の実施形態では、MTP阻害剤には、BMS201038のベンズイミダゾールをベースとした類似体(M2と示す)が含まれてよい。本明細書で使用する場合、「M2」は、下記に示す式
【0039】
【化2】

(式中、nは0〜10でよい)を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0040】
他の実施形態では、MTP阻害剤は、インプリタピド(M3と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「インプリタピド」という表現は、(2S)−2−シクロペンチル−2−[4−[(2,4−ジメチル−9H−ピリド[2,3−b]インドール−9−イル)メチル]フェニル]−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]エタンアミドという下記に示す構造
【0041】
【化3】

を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0042】
他の実施形態では、MTP阻害剤は、Aggarwalら、BMC CARDIOVASC.DISORD.27;5(1):30頁(2005年)に記載された、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたJTT−130m(M4と示す)でよい。他の実施形態では、MTP阻害剤は、Chandlerら、J.LIPID.RES.44(10)号:1887〜901頁(2003年)に記載された、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたCP−346086(M5と示す)でよい。
【0043】
他のMTP阻害剤には、Surface Logix、Inc.によって開発されたもの、例えば、SLx−4090(M6と示す)が挙げられる。
【0044】
B 他のコレステロール低下薬
本明細書に記載する組成物および方法に使用し得るコレステロール低下薬には、以下が挙げられる。
【0045】
1 コレステロール吸収阻害剤(CAI)
一実施形態では、CAIは、エゼチミベ(Zetiaとしても知られている)(C1と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「エゼチミベ」という表現は、下記
【0046】
【化4】

に示す構造を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0047】
一実施形態では、CAIは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたMD−0727(C2と示す)でよい。他の実施形態では、CAIは、FM−VP4(C3と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「FM−VP4」という表現は、その構造が下記
【0048】
【化5】

に示される化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0049】
他の実施形態では、CAIは、Ritterら、Org.Biomol.Chem.、3(19)号、3514〜3523頁、(2005年)に記載されているような、下記
【0050】
【化6】

の構造(C4と示す)、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルでよい。
【0051】
他の実施形態では、CAIはLPD179(C5と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「LDP179」という表現は、下記
【0052】
【化7】

に示す構造を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0053】
他の実施形態では、CAIは、LPD84(C6と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「LPD84」という表現は、下記
【0054】
【化8】

に示す構造を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0055】
他の実施形態では、CAIは、LPD145(C7と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「LPD145」という表現は、下記
【0056】
【化9】

に示す構造を有する化合物、およびその立体異性体、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0057】
他の有用で例示的なエゼチミベ誘導体、その合成および使用は、例えば、国際公開第WO2005/033100号に記載されている。
【0058】
2 HMG−CoAレダクターゼ阻害剤
本明細書において開示されている医薬組成物および方法は、「スタチン」としても知られている1種以上のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤をさらに含むことができる。スタチンは、コレステロールの体内生成を抑制し、酵素HMG−CoAレダクターゼによって触媒されるヒドロキシメチルグルタリル−コエンザイムAのメバロン酸への生物変換を阻害する。
【0059】
一実施形態では、スタチンには、アトルバスタチン(S1と示す)が挙げられる。本明細書で使用する場合、「アトルバスタチン」という用語は、アトルバスタチン(7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−(フェニルカルバモイル)−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、ブランド名:Lipitor)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0060】
他の実施形態では、スタチンはフルバスタチン(S2と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「フルバスタチン」という用語は、フルバスタチン(ナトリウム7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−プロパン−2−イル−インドール−2−イル]−3,5−ジヒドロキシ−ヘプタ−6−エノアート、ブランド名:Lescol)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0061】
他の実施形態では、スタチンはロバスタチン(S3と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「ロバスタチン」という用語は、ロバスタチン(8−[2−(4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロピラン−2−イル)エチル]−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン−1−イル]2−メチルブタノアート、ブランド名:Altocor、Mevacor)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0062】
他の実施形態では、スタチンはプラバスタチン(S4と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「プラバスタチン」という用語は、プラバスタチン(5−ジヒドロキシ−7−[6−ヒドロキシ−2−メチル−8−(2−メチルブタノイルオキシ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン−1−イル]−ヘプタン酸、ブランド名:Pravachol)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0063】
他の実施形態では、スタチンはロスバスタチン(S5と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「ロスバスタチン」という用語は、ロスバスタチン(7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−(1−メチルエチル)−2−(メチル−メチルスルホニルアミノ)−ピリミジン−5−イル]−3,5−ジヒドロキシ−ヘプタ−6−エン酸、ブランド名:Crestor)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0064】
他の実施形態では、スタチンはピタバスタチン(S6と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「ピタバスタチン」という用語は、ピタバスタチンとして当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0065】
他の実施形態では、スタチンはテニバスタチン(S7と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「テニバスタチン」という用語は、テニバスタチンとして当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0066】
他の実施形態では、スタチンはシンバスタチン(S8と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「シンバスタチン」という用語は、シンバスタチン(7−(2,6−ジメチル−8−(2,2−ジメチルブチリルオキシ)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフチル)−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸、ブランド名:Zocor)として当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0067】
他の実施形態では、スタチンはリバスタチン(S9と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「リバスタチン」という用語は、リバスタチンとして当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0068】
他の実施形態では、スタチンはメバスタチン(S10と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「メバスタチン」という用語は、メバスタチンとして当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0069】
他の実施形態では、スタチンはセリバスタチン(S11と示す)でよい。本明細書で使用する場合、「セリバスタチン」という用語は、セリバスタチンとして当技術分野において公知の化合物、ならびに医薬として許容されるその塩およびエステルを意味する。
【0070】
3 胆汁酸捕捉剤
樹脂としても知られている胆汁酸捕捉剤は、LDL濃度の低下を促進する。
【0071】
一実施形態では、胆汁酸捕捉剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたコレスチラミン(ブランド名:Locholest、Prevalite、Questran)(B1と示す)でよい。
【0072】
一実施形態では、胆汁酸捕捉剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたコレセベラム(ブランド名:Welchol)(B2と示す)でよい。
【0073】
一実施形態では、胆汁酸捕捉剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたコレスチポール(ブランド名:Colestid)(B3と示す)でよい。
【0074】
4 フィブラート
(フィブリン酸誘導体としても知られている)フィブラートは、体内のトリグリセリド(脂肪)の量を減少させ、(HDL、または高密度リポタンパク質とも称される)「良い」コレステロール濃度を増加させることによって、コレステロールの低下を促進する。
【0075】
一実施形態では、フィブラートは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたフェノフィブラート(1−メチルエチル2−[4−(4−クロロベンゾイル)−フェノキシ]−2−メチルプロパノアート、ブランド名:Tricor)(F1と示す)でよい。
【0076】
一実施形態では、フィブラートは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたベザフィブラート(F2と示す)でよい。
【0077】
一実施形態では、フィブラートは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたシプロフィブラート(F3と示す)でよい。
【0078】
一実施形態では、フィブラートは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたクロフィブラート(F4と示す)でよい。
【0079】
一実施形態では、フィブラートは、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたゲンフィブロジル(5−(2,5−ジメチルフェノキシ)−2,2−ジメチル−ペンタン酸、ブランド名:Lopid)(F5と示す)でよい。
【0080】
5 ナイアシン
組成物は、ビタミンBである(ニコチン酸とも称される)ナイアシン(N1と示す)をさらに含み得ることが意図されている。大量に投与された場合、ナイアシンは、トリグリセリドおよびLDLコレステロール濃度を低下させ、HDLコレステロール濃度を増加させることができる。
【0081】
6 スクアレンシンテターゼ阻害剤
スクアレンシンテターゼ阻害剤には、酵素スクアレンシンテターゼによって触媒されるスクアレンを形成するためのファルネシルピロリン酸の分子の縮合を阻害する化合物が挙げられる。標準的なアッセイ(例えば、Meth.Enzymol、15号、393〜454頁(1969年)およびMeth.Enzymol、110号、359〜373頁(1985年))にしたがって、当業者であれば阻害を容易に決定する。種々のこれらの化合物は、例えば、ザラゴジン酸を含めた微生物MF5465(ATCC74011)の発酵産物を開示している米国特許第5,026,554号において当業者には公知である。他のスクアレンシンテターゼ阻害剤の概要が、編集されてきた(Curr.Op.Ther.Patents、3号、861〜4頁(1993年))。
【0082】
一実施形態では、スクアレンシンテターゼ阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたTAK−475(SQ1と示す)でよい。
【0083】
一実施形態では、スクアレンシンテターゼ阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたER−27856(SQ2と示す)でよい。
【0084】
一実施形態では、スクアレンシンテターゼ阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたRPR−107393(SQ3と示す)でよい。
【0085】
7 ACAT阻害剤
ACAT阻害剤は、酵素アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼによって食事性コレステロールの細胞内エステル化を阻害する化合物を意味する。このような阻害は、Heiderら、Journal of Lipid Research.、24号、1127頁(1983年)において記載されているような方法などの標準的なアッセイにしたがって、当業者であれば容易に決定し得る。種々のこれらの化合物は、例えば、米国特許第5,510,379(カルボキシスルホナート)、WO96/26948およびWO96/10559(ACAT阻害活性を有する尿素誘導体)、DL−メリナミド(英国特許第1,123,004号およびJapan.J.Pharmacol.、42号、517〜523頁(1986年)、2,2−ジメチル−N−(2,4,6トリメトキシフェニル)ドデカンアミド(米国特許第4,716,175号)、ならびにN−[2,6−ビス(1メチルエチル)フェニル]−N’−[[1−(4−ジメチルアミノフェニル)シクロペンチル]−メチル尿素(米国特許第5,015,644号)において当業者に周知である。
【0086】
一実施形態では、ACAT阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたアバシミブ(ACAT1と示す)でよい。
【0087】
一実施形態では、ACAT阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたパクチミベ(ACAT2と示す)でよい。
【0088】
一実施形態では、ACAT阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたHL−004(ACAT3と示す)でよい。
【0089】
8 CETP阻害剤
CETP阻害剤には、コレステロールエステル転送タンパク(CETP)が媒介するHDLからLDLおよびVLDLへの様々なコレステリルエステルおよびトリグリセリドの転送を阻害する化合物が挙げられる。このようなCETP阻害活性は、標準的なアッセイ(例えば、米国特許第6,140,343号)にしたがって、当業者であれば容易に決定する。種々のCETP阻害剤は、米国特許第6,140,343号(4−アミノ置換−2−置換−1,2,3,4テトラヒドロキノリン)、同第5,512,548号(ポリペプチド誘導体)およびCETP阻害性ロセノノラクトン誘導体およびコレステリルエステルのホスファート含有類似体(各々、J.ANTIBIOT.、49(8)号、815〜816頁(1996年)、およびBIOORG.MED.CHEM LETT.、6号、1951〜1954頁(1996年))を含めて当業者には公知であろう。
【0090】
一実施形態では、CETP阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたトルセトラピブ(CETP1と示す)でよい。
【0091】
一実施形態では、CETP阻害剤は、医薬として許容されるその塩およびエステルを含めたJTT−705(CETP2と示す)でよい。
【0092】
9 化合物の他の部類
MTPI阻害剤と組み合わせて使用することができる化合物の他の部類には、マルグリタザーなどのPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)α、δ、またはγアゴニスト、抗炎症剤;LXR(肝臓X受容体)、FXR、およびRXR(レチノイドX受容体)アゴニスト;ABC(ATP結合カセット)輸送体;およびリモナバント(5−(4−クロロフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−メチル−N−(ピペリジン−1−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド;Sanofi−Synthelabo社製)などのCB−1(カンナビノイド)アンタゴニストが挙げられる。この開示の組成物および方法に使用するために意図されている化合物にはまた、ω−3脂肪酸、回腸胆汁酸共輸送体およびその阻害剤(IBAT)、ナイアシン受容体アゴニスト、メトホルミン、DPP−IVアンタゴニスト、スルホニル尿素(SU)、FABタンパク質阻害剤、およびGLP−1アゴニストが挙げられる。特に例えばインスリン抵抗性を有する2型糖尿病の予防のために、MTPIとの併用療法のために有用であり得るさらに意図されている化合物には、耐糖能異常および/または空腹時耐性異常を治療するために使用されるそれらの化合物が挙げられる。
【0093】
MTP阻害剤、CAIおよびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例示的な組合せを、表1においてより詳細に記載する。
【0094】
(表1)
【0095】
【表1−1】

【0096】
【表1−2】

【0097】
【表1−3】

【0098】
【表1−4】

表1に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0099】
MTP、CAIおよびフィブリン酸誘導体の例示的な組合せを、表2に示す。
【0100】
(表2)
【0101】
【表2−1】

【0102】
【表2−2】

【0103】
【表2−3】

表2に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0104】
MTP阻害剤、CAIおよびナイアシンの例示的な組合せを、表3に示す。
【0105】
(表3)
【0106】
【表3−1】

【0107】
【表3−2】

表3に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0108】
MTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびフィブリン酸誘導体の例示的な組合せを、表4に示す。
【0109】
(表4)
【0110】
【表4−1】

【0111】
【表4−2】

【0112】
【表4−3】

表4に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。活性成分のこの組合せは、血液中のトリグリセリド濃度を低下させるのに特に効果的であろう、したがって、高トリグリセリド血症の治療に役立つであろうことが意図されている。その結果、これらの組合せは、血液中のトリグリセリド濃度が高い患者における膵臓炎のリスクを減少させるのに役立つであろう。
【0113】
MTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびナイアシンの例示的な組合せを、表5に示す。
【0114】
(表5)
【0115】
【表5】

表5に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0116】
MTP阻害剤、CAIおよびスクアレンシンテターゼ阻害剤の例示的な組合せを、表6に示す。
【0117】
(表6)
【0118】
【表6】

表6に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0119】
MTP阻害剤、CAIおよびACAT阻害剤の例示的な組合せを、表7に示す。
【0120】
(表7)
【0121】
【表7−1】

【0122】
【表7−2】

表7に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0123】
MTP阻害剤、CAIおよびCETP阻害剤の例示的な組合せを、表8に示す。
【0124】
(表8)
【0125】
【表8−1】

【0126】
【表8−2】

表8に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0127】
MTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびスクアレンシンテターゼ阻害剤の例示的な組合せを、表9に示す。
【0128】
(表9)
【0129】
【表9−1】

【0130】
【表9−2】

表9に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0131】
MTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびACAT阻害剤の例示的な組合せを、表10に示す。
【0132】
(表10)
【0133】
【表10−1】

【0134】
【表10−2】

表10に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0135】
MTP阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤およびCETP阻害剤の例示的な組合せを、表11に示す。
【0136】
(表11)
【0137】
【表11−1】

【0138】
【表11−2】

表11に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0139】
MTP阻害剤、フィブラートおよびスクアレンシンテターゼ阻害剤の例示的な組合せを、表12に示す。
【0140】
(表12)
【0141】
【表12−1】

【0142】
【表12−2】

表12に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0143】
MTP阻害剤、フィブラートおよびACAT阻害剤の例示的な組合せを、表13に示す。
【0144】
(表13)
【0145】
【表13−1】

【0146】
【表13−2】

表13に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0147】
MTP阻害剤、フィブラートおよびCETP阻害剤の例示的な組合せを、表14に示す。
【0148】
(表14)
【0149】
【表14】

表14に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0150】
MTP阻害剤、ナイアシンおよびスクアレンシンテターゼ阻害剤の例示的な組合せを、表15に示す。
【0151】
(表15)
【0152】
【表15】

表15に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0153】
MTP阻害剤、ナイアシンおよびACAT阻害剤の例示的な組合せを、表16に示す。
【0154】
(表16)
【0155】
【表16】

表16に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0156】
MTP阻害剤、ナイアシンおよびCETP阻害剤の例示的な組合せを、表17に示す。
【0157】
(表17)
【0158】
【表17】

表17に示されるように、3種類の組合せ中に存在するMTP阻害剤は、M1またはM2またはM3またはM4またはM5またはM6として示されるMTP阻害剤であり得ることを理解されたい。
【0159】
本明細書において示したような(1種類、2種類、3種類、またはそれ以上の活性成分との)製剤は、安全および効果的であると考えられ、望ましくない生物学的副作用または望まれない相互作用をもたらすことなく個人に投与し得る材料から構成される、医薬として許容される「担体」を使用して調製し得る。「担体」は、活性成分以外に製剤中に存在する全ての成分である。「担体」という用語には、それだけに限らないが、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、およびコーティング組成物が挙げられる。
【0160】
さらに、組成物は、例えば、「Remington − The science and practice of pharmacy」(第20版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000)に記載されているように、例えば拡散系または浸透系として調製され、持続放出製剤として配合することができることが意図されている。拡散系は通常、容器およびマトリックスの2種類の機構からなり、当技術分野で周知であり説明されている。マトリックス機構は一般に、ゆっくりと溶解するポリマー担体と共に、錠剤の形態に圧縮することによって調製される。マトリックス機構の調製に使用される材料の3種類の主要なタイプは、不溶性プラスチック、親水性ポリマー、および脂肪族化合物である。プラスチックマトリックスには、それだけに限らないが、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンが挙げられる。親水性ポリマーには、それだけに限らないが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびカルボポール934、ポリエチレンオキシドが挙げられる。脂肪族化合物には、それだけに限らないが、カルナウバワックスおよびトリステアリン酸グリセリルなどの様々なワックスが挙げられる。
【0161】
組合せの成分の各々の通常の投与量範囲を下記に示す。MTP阻害剤の投与量範囲には、例えば、0.5〜160mg/日、より詳細には、0.01〜1mg、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、または80mgが挙げられる。例えば、BMS−201038は、約2.5mg/日〜約10mg/日、または約25mg/日、またはそれ以上、例えば2.5mg/日、5mg/日または10mg/日の用量で投与し得る。インプリタピドは、例えば20〜60mg/日、20〜50mg/日、または20〜30mg/日、例えば、20mg/日、35mg/日、または45mg/日を含めた用量で投与し得る。
【0162】
CAIの投与量範囲には、例えば、1〜50mg/日、より詳細には、0.01〜1mg/日、2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、15mg/日、20mg/日、または25mg/日が挙げられる。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の投与量範囲には、例えば、1mg/日〜約20mg/日、25mg/日、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日または80mg/日が挙げられる。フィブラートの投与量範囲には、例えば、10mg/日〜750mg/日、25mg/日〜500mg/日および25mg/日〜200mg/日、225mg/日、250mg/日、300mg/日、325mg/日、350mg/日または400mg/日が挙げられる。スクアレンシンテターゼ阻害剤の投与量範囲には、例えば、10〜200mg/日、より詳細には、10〜50mg/日が挙げられる。ナイアシンの投与量範囲には、例えば、100mg〜10g/日、より詳細には、250mg〜7g/日が挙げられる。他のコレステロール低下薬の投与量範囲は、特定の活性成分がヒトにおいて安全および/または効果的である場合の投与量範囲内である。さらに、MTP阻害剤および/または他のコレステロール低下薬は、増加する用量で投与し得ることが意図されている。
【0163】
いくつかの実施形態では、活性成分、または活性成分の混合物は、毎日投与される。しかし、その期間は、状況、例えば慢性障害の治療の間の状況によって、数週間から、数カ月、数年まで変動し得る。例えば活性成分は、1日から1週間、1日から2週間、1日から3週間、1日から4週間、1日から5週間、1日から6週間、1日から7週間、1日から2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、または12カ月、および2年、3年、4年、5年、6年、またはそれ以上の年数の間投与し得る。
(3)方法および投与
活性成分は、同時にまたは順次に投与され得ることが意図されている。
【0164】
活性成分が同時に投与される場合、同一の製剤または異なる製剤中で投与され得る。同一の製剤中で投与される場合、活性成分は同一の経路、例えば、非経口または非経口でない経路によって投与されるであろう。異なる製剤中で投与される場合、1種類の製剤を、1種類の経路、例えば非経口経路によって投与し、一方他の活性成分を、1種以上の非経口でない経路によって投与し得る。あるいは、全ての製剤を同一の経路によって投与し得る。
【0165】
活性成分が順次に投与される場合、同一または異なる経路によって投与することができる。
(4)使用方法
本発明は、血液中の高濃度のコレステロールおよびトリグリセリドと関連する疾患または障害を治療するための方法および組成物を提供する。例えば、組成物および方法は、アテローム性動脈硬化症、膵臓炎、肥満症、(例えば、高コレステロール血症および高トリグリセリド血症を含めた)高脂血症を予防し、抑制し、または治療するために使用することができる。
【0166】
本明細書において開示されている方法は、血清コレステロール濃度を減少または低下させ得る。血清総コレステロールは、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、LDLおよびカイロミクロンからもたらされると理解される。したがって、併用療法は、血液総コレステロール、あるいはVLDL、IDL、LDLおよびカイロミクロンからもたらされるか関連するコレステロールを減少させ得ることが意図されている。さらに、本明細書において開示されている方法は、血清トリグリセリド濃度を減少または低下させ得る。血清トリグリセリドは、VLDLおよびカイロミクロンによって、およびそれほどではないにせよIDLおよびLDLによってもたらされる場合があると理解される。したがって、併用療法は、VLDL、IDL、LDLおよびカイロミクロンによってもたらされるか関連するトリグリセリドを減少させ得ることが意図されている。
【0167】
特定の実施形態では、本明細書に記載する組成物は、上記の障害の1つを予防し、抑制し、治療し、一方同時に、悪心、嘔吐、脂肪便、腹部のけいれん、膨張、肝機能検査値の上昇、脂肪肝、肝脂肪蓄積、多発性神経障害、末梢神経障害、横紋筋融解、関節痛、筋肉痛、胸痛、鼻炎、めまい、関節炎、末梢浮腫、胃腸炎、肝機能検査異常、大腸炎、直腸出血、食道炎、おくび、口内炎、胆管痛、口唇炎、十二指腸潰瘍、嚥下障害、腸炎、下血、歯肉出血、胃潰瘍、しぶり、潰瘍性口内炎、肝炎、膵臓炎、胆汁うっ滞性黄疸、知覚異常、健忘症、性欲減退、情動不安定、共調運動不能、斜頚、顔面神経麻痺、運動亢進症、うつ、触覚鈍麻、筋緊張亢進、足のけいれん、滑液包炎、腱鞘炎、筋無力症、腱拘縮、筋炎、高血糖症、クレアチニンホスホキナーゼ増加、痛風、体重増加、低血糖、アナフィラキシー、血管運動神経性浮腫、ならびに(多形性紅斑、スティーブンスジョンソン症候群、および中毒性表皮壊死症を含めた)水疱性発疹の少なくとも1つを最小化することにおいて治療上の利点を実現し得る。いくつかの実施形態では、副作用の最小化は、対象への調査票によって、度合い、重篤度、程度、または期間を評価することによって決定される。
【0168】
本明細書に記載する組成物は、血管壁のプラーク、例えば動脈プラークの発生を遅らせもしくは停止させ、および/または安定化させるのに有用であり得ることもまた意図されている。さらに、特定の状況下で、本明細書に記載する組成物は、プラーク退縮を効果的にもたらすであろうことが意図されている。特定の状況下で、プラーク退縮の程度は、当初のプラーク蓄積の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、および99%が治療開始後に消失するという結果になり得る。動脈プラークの程度、およびその減少は、例えば、磁気共鳴映像法、コンピュータ断層撮影法、および核シンチグラフィーを含めた、種々の従来の非侵襲性であり当技術分野で公知の技術を使用して測定することができる。
【0169】
本明細書に記載する方法および組成物は、医師が希望し、ならびに/あるいはガイドライン、例えば、NCEPにより規定されたガイドラインによって概説されたコレステロールおよび/またはLDLコレステロールの目標を達成することができない患者、例えば、LDL低下に対する耐性患者を治療するために特に有用である。このように達成不能であることは、MTP阻害剤(例えば、BMS−201038)および/もしくはCAI(例えば、エゼチミベ)に対する耐容不能、または既存の薬剤が、これらの目標を達成するために十分なコレステロール低下をもたらすことができないことによる場合がある(例えば、活性成分はしかるべく作用するが、所望のエンドポイントを達成するために多すぎる活性成分を必要とする)。本明細書に記載する方法および組成物は、よりハイリスクな患者、例えば、冠動脈心疾患患者または冠状動脈事象の同様のリスクを有する患者に特に有用である。このような患者は、20%超の10年の冠状動脈事象のリスクを有し得る。
【0170】
例えば、開示された方法には、確立したガイドラインに基づいて治療にあたる医師によって決定された最大の許容される経口治療によって、NCEPのLDLコレステロールの目標の25%以内、より好ましくは15%以内を達成することができないLDL低下に対する耐性患者、例えば、冠動脈心疾患患者または任意の病因の重篤な高コレステロール血症を有する冠動脈心疾患リスクと同等のリスクを有する患者を含めることができる。
【0171】
他の実施形態では、本明細書に記載する方法および組成物は、最大の許容される経口治療によってNCEPのLDLコレステロールの目標の75mg/dLの目標を達成することができない、任意の病因の重篤な高コレステロール血症の治療に使用され得る。
【0172】
MTPI、CAIおよびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の組合せは、スタチン単独療法またはCAIと併せたスタチン併用療法によって70mg/dLのNCEPの目標を達成することができないCHDまたはCHD同等リスク(RE)患者の治療に有用であり得る。例えば、2005年3月におけるオーランドでの米国心臓病学会の会議でChristie Ballantyne医学博士により示された研究は、40mgの用量のLipitorによって、試験した患者の23%のみが目標、すなわち<70mg/dLを達成した結果となり、スタチンおよびCAIの組合せであるVytorin10/40(10mgのエゼチミベ(CAI)、および40mgのシンバスタチン(スタチン))によって、57%の患者のみにおいてLDL<70mg/dLが達成されたことが示された。したがってかなりの割合の患者が、NCEPの目標を達成するために、スタチン単独療法、またはCAIと組み合わせたスタチンを超えるものを必要とする。本明細書に記載する組合せは、ハイリスク患者の潜在的に90%超において目標達成を可能にし、これは既存の治療を超える顕著な改善であろう。
【0173】
本明細書において開示されている方法は、最大の許容される治療によって総トリグリセリド濃度を<1000mg/dLまたは<500mg/dLに減少することができない重篤な高トリグリセリド血症を有する患者を含み得る。特定の状況下で、本明細書に記載する3種類併用療法は、個人が空腹時血液中に70mg/dL未満のLDL、60mg/dL未満のLDL、50mg/dL未満のLDL、40mg/dL未満のLDL、30mg/dL未満のLDL、20mg/dL未満のLDL、または10mg/dL未満のLDLを有するという目標を達成することを可能にするであろう。
【0174】
均等物
記載された特定の方法、プロトコル、および試薬は変化し得るものであるので、開示した本発明は、それらに限定されないことを理解されたい。本明細書において使用した用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた理解されたい。
【0175】
参照による組込み
本明細書において言及した特許文献および化学論文の各々全部の開示は、全ての目的のために参照により組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質阻害剤(「MTPI」)、(ii)コレステロール吸収阻害剤(CAI)、ならびに(iii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む医薬組成物。
【請求項2】
(i)MTPI、(ii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iii)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む医薬組成物。
【請求項3】
前記MTPIが、BMS−201038、インプリタピド、JTT−130およびCP−346086である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記MTPIがBMS−201038である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記MTPIがインプリタピドである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、メバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン、テニバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害剤が、シンバスタチンまたはアトルバスタチンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記CAIが、エゼチミベまたはその誘導体、MD−0727、およびFM−VP4からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記CATがエゼチミベである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記胆汁酸捕捉剤が、コレスチラミン、コレセベラムおよびコレスチポールからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フィブリン酸誘導体が、フェノフィブラートおよびゲンフィブロジルからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(i)MTPI、(ii)CAI、ならびに(iii)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、およびナイアシンからなる群から選択されるコレステロール低下薬をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
1種以上の医薬として許容される担体をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記1種以上の医薬として許容される担体が、希釈剤、結合剤、滑沢剤、可溶化剤、安定化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、およびコーティング配合物からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
製剤が経口投与用である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物において血清コレステロール濃度を低下させる方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物において血清トリグリセリド濃度を低下させる方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物において高脂血症を治療する方法。
【請求項20】
(i)MTP阻害剤、(ii)CAI、ならびに(iii)HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む3種類の活性成分を投与するステップを含む、哺乳動物において血清コレステロールおよび/または血清トリグリセリド濃度を低下させる方法。
【請求項21】
(i)MTP阻害剤、(ii)HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iii)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む3種類の活性成分を投与するステップを含む、哺乳動物において血清コレステロールおよび/または血清トリグリセリド濃度を低下させる方法。
【請求項22】
プラークの退縮をもたらすために、(i)MTP阻害剤、(ii)CAI、ならびに(iii)HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む3種類の活性成分を投与するステップを含む、哺乳動物において血管壁のプラークの退縮を含む方法。
【請求項23】
プラークの退縮をもたらすために、(i)MTP阻害剤、(ii)HGM−CoAレダクターゼ阻害剤、ならびに(iii)胆汁酸捕捉剤、フィブリン酸誘導体、ナイアシン、およびスクアレンシンテターゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種類のコレステロール低下薬を含む3種類の活性成分を投与するステップを含む、哺乳動物において血管壁のプラークの退縮を含む方法。
【請求項24】
前記活性成分の少なくとも2種類を同時に投与する、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記活性成分の3種類全てを同時に投与する、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
3種類の活性成分全てを順次に投与する、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記活性成分を同時に投与する場合、同一の製剤中で投与する、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記活性成分を同時に投与する場合、異なる製剤中で投与する、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511639(P2009−511639A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536810(P2008−536810)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/040953
【国際公開番号】WO2007/047880
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508117695)エージェリオン ファーマシューティカルズ (1)
【Fターム(参考)】