説明

衝突予測装置

【課題】衝突予測装置において、車両の障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合でも、衝突予測の信頼性を容易に維持させる技術を提供する。
【解決手段】自車両における車体幅を区分けした複数の区画に対して、自車両と障害物との関係から算出される衝突予測位置及び信頼度を当てはめ、複数の区画のうちから障害物が衝突すると予測される衝突予測区画を判定するものであって、区画Xn(nは整数)は、自車両における車体幅にかかわらず障害物検出センサの検出精度によって決定された一定幅に設定されており、複数の区画X1〜X5は、自車両における車体幅に対して、区画Xnが1列に隙間無く並ぶ状態(図2(a))か、又は、区画Xnが重なった部分を有しつつ区画Xnが隙間無く並ぶ状態(図2(b))のどちらかの状態に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周囲における他車両等の障害物との衝突を予測する衝突予測装置が知られている。衝突を予測することで、乗員の安全性を向上させたり、衝突を回避したりすることができる。このような衝突予測装置では、自車両の車体幅等を複数の区画に区分けし、複数の区画のうち、自車両に対して障害物が衝突すると予測される衝突予測区画を判定する。この技術において、区画を他の区画と互いに重なるように設定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214832号公報
【特許文献2】特開2008−302904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基準となる車両の車体幅を区分けした複数の区画を、車体幅が異なる車種の車両に適用する場合には、車種毎の車体幅に合わせて区画幅を変更して複数の区画を設定していた。このため、衝突予測の信頼性を維持させるように、信頼度を整合させるデータ収集を行い、各種の閾値や係数等のパラメータを基準となる車両の値から大幅に変更する必要があった。このように、多種多様な車両の車体幅等のように、車両の障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合に対して、衝突予測の信頼性を維持させるのは、パラメータ変更が煩雑な為に困難が伴うものであった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、本発明の目的は、衝突予測装置において、車両の障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合でも、衝突予測の信頼性を容易に維持させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
自車両に搭載され、障害物を検出するセンサと、
前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域を区分けした複数の区画に対して、前記自車両と前記障害物との関係から算出される衝突予測値を当てはめ、前記複数の区画のうちから前記障害物が衝突すると予測される衝突予測区画を判定する衝突予測区画判定手段と、
を備えた衝突予測装置であって、
前記区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域にかかわらず前記センサの検出精度によって決定された一定幅に設定されており、
前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域に対して、区画が1列に隙間無く並ぶ状態か、又は、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態のどちらかの状態に設定されていることを特徴とする衝突予測装置である。
【0007】
本発明によると、各区画が一定幅に設定され、複数の区画は、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域に対して、区画が1列に隙間無く並ぶ状態か、又は、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態のどちらかの状態に設定されている。これ
により、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合であっても、同じ一定幅の区画を用いて複数の区画を隙間無く設定できる。
【0008】
本発明の一定幅の区画は、センサの検出精度から決定されており、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合であっても区画幅は変更しない。よって、同じ一定幅の区画を用いることで、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合であっても、衝突予測区画を予測する為の区画についてのパラメータの値を共有できる。このため、区画幅を変更させる為に必要な、信頼度を整合させるデータ収集を行う必要が無く、各種の閾値や係数等のパラメータの値について大幅な変更も必要が無い。従って、車両の障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合でも、衝突予測の信頼性を容易に維持させることができる。
【0009】
ここで、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域とは、車両における車体幅や車体長であったり、車体幅や車体長のうち特に限定された一部領域等であったりする。
【0010】
前記区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態の前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域の中心と1つの区画の中心とを合わせ、当該中心を合わせた区画の両側に同数の他の区画を前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域からはみ出すまで1列に並べた数の区画を用いて、区画が2重に重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているとよい。
【0011】
本発明によると、複数の区画に用いられる区画の数を必要最小限の数とし、衝突予測にかかるデータ処理量を必要最小限の量とすることができ、計算量を少なくして衝突予測の応答性を向上することができる。
【0012】
前記区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態の前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域のうちの衝突保護の重要度が高い部位に区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているとよい。
【0013】
本発明によると、衝突保護の重要度が高い部位での衝突予測値を正確に反映した衝突予測区画を判定できる。
【0014】
前記衝突予測区画判定手段は、前記衝突予測値が前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域のうち前記区画が重なった部分に当てはまる場合には、当該重なった区画の全てに対して、前記衝突予測値の当てはめを行うとよい。
【0015】
本発明によると、区画が重なった部分での衝突予測値を反映した衝突予測区画を精度良く判定できる。
【0016】
前記衝突予測区画判定手段によって判定された衝突予測区画に基き、衝突前に前記自車両について保護動作を行う衝突前保護動作手段を更に備えるとよい。
【0017】
本発明によると、衝突前に自車両について保護動作を行い、衝突に対する安全性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、衝突予測装置において、車両の障害物と衝突する可能性のある領域が異なる場合でも、衝突予測の信頼性を容易に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る衝突予測装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る複数の区画の設定を示す図であり、図2(a)は1列に隙間無く並ぶ状態を示し、図2(b)は区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態を示す。
【図3】実施例1に係る衝突予測装置の制御を示すフローチャートである。
【図4】従来技術の複数の区画の設定を示す図である。
【図5】実施例1に係る衝突位置推定のばらつきに基いて区画の一定幅の値と、閾値マップ記憶部に記憶させる閾値マップの閾値を決定する様子を示す図である。
【図6】実施例1に係る複数の区画に用いる区画数を決定する様子を示す図である。
【図7】実施例1に係る決定された区画数で複数の区画の配置を決定する様子を示す図である。
【図8】実施例1の他例に係る複数の区画の設定を示す図である。
【図9】実施例1の他例に係る複数の区画の設定を示す図である。
【図10】実施例1の他例に係る複数の区画の設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
<実施例1>
(衝突予測装置)
図1に本実施例に係る衝突予測装置1を示す。衝突予測装置1は、車両に搭載され、この自車両と、他の車両等の障害物と、の衝突を予測するものである。図1に示す衝突予測装置1は、システムECU(Electronic Control Unit)2を備えている。システムEC
U2には、障害物検出センサ3、操舵角センサ4、ヨーレートセンサ5、及び車輪速センサ6が接続されている。また、システムECU2には、警報装置7、衝突回避支援装置8、シートベルト制御装置9、シート位置制御装置10、ブレーキ制御装置11、及びエアバッグ制御装置12が接続されている。
【0021】
障害物検出センサ3は、言い換えれば他の車両を捕捉する相手車捕捉センサとも言え、ミリ波センサやCCD(Charge Coupled Device)カメラ等の画像センサである。障害物
検出センサは、車両の中心位置に前方を向いて搭載され、障害物を検出する。障害物検出センサが本発明のセンサに対応する。
操舵角センサ4は、車両のステアリングロッド等に取り付けられ、運転者が操作したステアリングホイールの操舵角を検出する。
ヨーレートセンサ5は、車体の中央位置に設けられており、車体にかかるヨーレートを検出する。
車輪速センサ6は、車両のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度を検出する。
【0022】
システムECU2は、電子制御する為のコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入
出力インターフェイス等を備えて構成されている。システムECU2は、推定カーブ半径演算部13、自車速演算部14、自車軌道演算部15、障害物速演算部16、障害物移動距離演算部17、障害物軌道演算部18、衝突予測位置演算部19、衝突予測分布演算部20、閾値マップ記憶部21、及び衝突判定部22を備えている。
推定カーブ半径演算部13は、操舵角センサ4から出力される操舵角信号と、ヨーレートセンサ5から出力されるヨーレート信号とに基いて、自車両の推定カーブ半径を演算によって算出する。推定カーブ半径演算部13は、算出した推定カーブ半径信号を自車軌道演算部15に出力する。
自車速演算部14は、車輪速センサ6から出力される車輪速度信号に基いて、自車両の車速を演算によって算出する。自車速演算部14は、算出した自車速信号を衝突予測位置
演算部19及び衝突判定部22に出力する。
自車軌道演算部15は、推定カーブ半径演算部13から出力される推定カーブ半径信号に基いて、自車両の軌道を演算によって算出する。自車軌道演算部15は、算出した自車両軌道信号を衝突予測位置演算部19に出力する。
障害物速演算部16は、障害物検出センサ3から送信される障害物情報に基いて、障害物の移動速度を演算によって算出する。障害物速演算部16は、算出した障害物移動速度信号を衝突予測位置演算部19及び衝突判定部22に出力する。
障害物移動距離演算部17は、障害物検出センサ3から送信された障害物情報に基いて、障害物検出センサ3が障害物を検出した後における障害物の移動距離を演算によって算出する。障害物移動距離演算部17は、算出した障害物移動距離信号を障害物軌道演算部18に出力する。
障害物軌道演算部18は、障害物移動距離演算部17から出力された移動距離信号に基いて、障害物の軌道を演算によって算出する。障害物軌道演算部18は、算出した障害物軌道信号を衝突予測位置演算部19に出力する。
衝突予測位置演算部19は、自車速演算部14から出力される自車速信号、自車軌道演算部15から出力される自車軌道信号、障害物速演算部16から出力される障害物移動速度信号、及び障害物軌道演算部18から出力される障害物軌道信号に基いて、自車両における障害物の衝突位置を演算によって予測する。衝突予測位置演算部19は、算出した衝突予測位置信号を衝突予測分布演算部20に出力する。
衝突予測分布演算部20は、衝突予測位置演算部19から出力される衝突予測位置信号に基いて、衝突予測位置が、自車両の車体幅を区分けした複数の区画のうちのどの区画に当てはまるかを判別する。衝突予測位置が本発明の衝突予測値に対応する。
ここで、自車両の車体幅を区分けした複数の区画は、図2(a)に示すように、車体幅に対して、区画Xn(nは整数、本実施例では5つの区画)が1列に隙間無く並ぶ状態に設定されている。この状態は、複数の区画X1〜X5が車体幅からはみ出すこともない状態でもある。各区画Xnは、自車両における車体幅にかかわらず障害物検出センサ3の検出精度によって決定された一定幅に設定されている。自車両における車体幅が、本発明の自車両における障害物と衝突する可能性のある領域に対応する。
また、衝突予測分布演算部20では、判定された区画に障害物が衝突する信頼度を算出する。信頼度が本発明の衝突予測値に対応する。さらに、衝突予測分布演算部20では、所定時間内に出力される衝突予測位置信号に基く各区画における信頼度を積算する。これにより、衝突予測分布演算部20では、各区画における信頼度の積算値を算出する。衝突予測分布演算部20は、算出した各区画における信頼度の積算値に基く信頼度信号を衝突判定部22に出力する。
閾値マップ記憶部21は、衝突判定部22からの読込信号に応じて、衝突判定部22に対して記憶している閾値マップを提供する。
衝突判定部22は、自車速演算部14から出力される自車速信号、障害物速演算部16から出力される障害物移動距離信号、衝突予測分布演算部20から出力される信頼度信号、及び閾値マップ記憶部21から読み込む閾値マップに基き、自車両のどの区画に障害物が衝突するかを判別する。衝突判定部22が衝突すると判定した区画が、衝突が予測される衝突予測区画である。衝突判定部22は、衝突予測区画に応じて、警報装置7、衝突回避支援装置8、シートベルト制御装置9、シート位置制御装置10、ブレーキ制御装置11、又はエアバッグ制御装置12のいずれか或いは複数の装置に衝突予測信号を出力する。即ち、衝突予測区画に基き、これらの装置を用い、衝突前に自車両について保護動作を行う。これにより、衝突前に自車両について保護動作を行い、衝突に対する安全性を向上できる。システムECU2、並びに警報装置7、衝突回避支援装置8、シートベルト制御装置9、シート位置制御装置10、ブレーキ制御装置11、及びエアバッグ制御装置12が、本発明の衝突前保護動作手段に対応する。
【0023】
警報装置7は、衝突判定部22から出力される衝突予測信号に基いて、警告音をスピー
カから発したり、警報をモニタに表示したりする。
衝突回避支援装置8は、衝突判定部22から出力される衝突予測信号に基いて、衝突を回避或いは衝突による衝撃を緩和するための自動操舵装置における操舵方向及び操舵量を算出し、算出した操舵方向及び操舵量に基いて自動操舵装置を制御する。
シートベルト制御装置9は、衝突判定部22から出力された衝突予測信号に基いて、シートベルトの締付力を算出し、必要に応じてシートベルトに締付力を付加する。
シート位置制御装置10は、衝突判定部22から出力された衝突予測信号に基いて、衝突による乗員への衝撃を緩和する為のシート位置を算出し、算出したシート位置へシート位置移動装置を制御する。
ブレーキ制御装置11は、衝突判定部22から出力された衝突予測信号に基いて、自車両に付与する減速力を算出し、算出した減速力に基いてブレーキを制御する。
エアバッグ制御装置12は、衝突判定部22から出力された衝突予測信号に基いて、エアバッグを展開させるか或いはエアバッグの展開準備を行わせるようにエアバッグを制御する。
【0024】
(衝突予測装置の制御)
図3に本実施例に係る衝突予測装置の制御フローを示す。図3に示すように、システムECUでは、まず、障害物検出センサから出力される障害物情報を取得する(S101)。障害物情報としては、障害物移動速度や障害物移動距離や障害物幅等である。
次に、推定カーブ半径の算出を行う(S102)。推定カーブ半径の算出は、推定カーブ半径演算部において、操舵角センサから出力される操舵角信号、及びヨーレートセンサから出力されるヨーレート信号に基いて行われる。
推定カーブ半径の算出後、衝突予測位置の予測を行う(S103)。衝突予測位置の予測は、自車軌道演算部において、推定カーブ半径演算部から出力される推定カーブ半径に基いて算出された自車量の軌道、及び障害物軌道演算部において、障害物移動距離演算部から出力される移動距離信号に基いて算出された障害物の軌道、並びに、自車速信号や障害物移動速度信号に基いて行われる。
次に、自車両の車体幅を区分けした複数の区画のうちのどの区画に衝突が予測されるかの信頼度の積算値を算出する(S104)。信頼度の積算値の算出は、衝突予測分布演算部において、衝突予測位置演算部から出力される衝突予測位置信号に基いて行われる。
そして、障害物が自車両のどの衝突予測区画に衝突するか判別する(S105)。この判別は、衝突判定部において、閾値マップ記憶部から閾値マップを読み出し、閾値マップに、衝突予測分布演算部から出力される信頼度信号を対応させることで判別される。
S105において否定判定された場合には、障害物が自車両の衝突予測区画に衝突しないので、そのまま衝突予測装置による制御を終了する。
一方、S105において肯定判定された場合には、障害物が自車両に衝突する衝突予測区画が決定されるので、衝突予測区画、衝突時間、及び信頼度の積算値に応じて、警報装置、衝突回避支援装置、シートベルト制御装置、シート位置制御装置、ブレーキ制御装置、又はエアバッグ制御装置のいずれか或いは複数の装置を作動させ、衝突前保護動作を行う(S106)。そして、衝突予測装置による制御を終了する。
ここで、S101〜S105までのステップが衝突予測区画を判定する衝突予測区画判定手段に対応する。即ち、衝突予測区画判定手段は、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域に対応する車体幅を区分けした複数の区画に対して、自車両と障害物との関係から算出される衝突予測値に対応する衝突予測位置及び信頼度を当てはめ、信頼度を積算して複数の区画のうちから障害物が衝突すると予測される衝突予測区画を判定する。
【0025】
(複数の区画の設定)
上記の衝突予測装置1については、図2(a)に示すように、自車両の車体幅を区分けした複数の区画X1〜X5が、車体幅に対して、はみ出すこと無く、1列に隙間無く並ぶ状態に設定されていた。
従来では、上記のような基準となる車両の車体幅を区分けした複数の区画を、車体幅が異なる車種の車両に適用する場合には、図4(a)では区画Ynとし、図4(b)では区画Znとするように、車種毎の車体幅に対して、同数の複数の区画を設定して1列に隙間無く並ぶ状態となるようにしていた。このとき、区画Znの幅は区画Ynの幅とは異なる。このようにする為に、車種毎の車体幅に合わせて区画幅を変更して複数の区画を設定していた。このため、衝突予測の信頼性を維持させるように、信頼度を整合させるデータ収集を行い、各種の閾値や係数等のパラメータを基準となる車両の値から大幅に変更する必要があった。このように、多種多様な車両の車体幅に対して、衝突予測の信頼性を維持させるのは、パラメータ変更が煩雑な為に困難が伴うものであった。
【0026】
そこで、本実施例では、区画は、自車両における車体幅にかかわらず障害物検出センサの検出精度によって決定された一定幅に設定されており、複数の区画は、自車両における車体幅に対して、区画が1列に隙間無く並ぶ状態か、又は、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態のどちらかの状態に設定されているようにした。
上記の衝突予測装置1では、図2(a)に示すように、自車両の車体幅を区分けした複数の区画X1〜X5が、車体幅に対して、はみ出すこと無く、区画Xnが1列に隙間無く並ぶ状態に設定されている。しかし、例えば、上記の衝突予測装置1を適用した車両よりも車体幅が狭い車両に適用する場合には、一定幅の区画Xnを減らして設定してしまうと隙間ができてしまうし、上記と同数であると、複数の区画X1〜X5の両端がはみ出してしまう。はみ出したままの設定としてしまうと、そのはみ出した部分では、障害物が自車両に衝突しないにもかかわらず、衝突すると予測してしまい衝突予測精度が低下してしまう。
このため、本実施例では、複数の区画X1〜X5を、自車両における車体幅に対して、区画Xnが1列に隙間無く並ぶ状態に設定できない場合には、図2(b)に示すように、複数の区画X1〜X5は、自車両における車体幅に対して、はみ出すこと無く、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているようにした。
【0027】
図2(b)に示す複数の区画X1〜X5は、詳しくは、自車両における車体幅の中心と1つの区画X1の中心とを合わせ、当該中心を合わせた区画X1の両側に同数の他の区画を自車両における車体幅からはみ出すまで1列に並べた数の区画Xnを用いて、区画Xnが2重に重なった部分を有しつつ区画Xnが隙間無く並ぶ状態に設定されている。このように設定されていることで、複数の区画X1〜X5に用いられる区画Xnの数を必要最小限の数とし、衝突予測にかかるデータ処理量を必要最小限の量とすることができ、計算量を少なくして衝突予測の応答性を向上することができる。
【0028】
本実施例では、各区画が一定幅に設定され、複数の区画は、自車両における車体幅に対して、区画が1列に隙間無く並ぶ状態か、又は、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態のどちらかの状態に設定されている。これにより、自車両における車体幅が異なる場合であっても、同じ一定幅の区画を用いて複数の区画を隙間無く設定できる。
本実施例の一定幅の区画は、障害物検出センサの検出精度から決定されており、自車両における車体幅が異なる場合であっても区画幅は変更しない。よって、同じ一定幅の区画を用いることで、自車両における車体幅が異なる場合であっても、衝突予測区画を予測する為の区画についてのパラメータの値を共有できる。このため、区画幅を変更させる為に必要な、信頼度を整合させるデータ収集を行う必要が無く、各種の閾値や係数等のパラメータの値の大幅な変更も必要が無い。従って、車体幅が異なる場合でも、衝突予測の信頼性を容易に維持させることができる。
【0029】
尚、衝突予測装置の構成は、複数の区画X1〜X5が図2(a),(b)のどちらの状態に設定されていても図1に示す同様の構成であり、制御も図3に示すものである。しかし、複数の区画X1〜X5が、図2(b)に示す区画Xnが重なった部分を有しつつ区画
Xnが隙間無く並ぶ状態に設定さている場合には、衝突予測分布演算部20は、衝突予測位置が、区画Xnが重なった部分に当てはまる場合には、当該重なった区画Xnの全てに対して、衝突予測位置の当てはめを行う。このため、1回の衝突予測位置の当てはめで、幾つかの区画Xnが当てはめられる場合がある。このように衝突予測装置1が制御されると、区画Xnが重なった部分での衝突予測位置を反映した衝突予測区画を精度良く判定できる。
【0030】
(複数の区画の設定方法)
車両における車体幅に対する複数の区画の設定方法について説明する。まず、図5に示すように、自車両の中央に対して障害物が衝突する衝突模擬データを取得し、衝突位置推定のばらつきに基いて区画の一定幅の値と、閾値マップ記憶部に記憶させる閾値マップの閾値を決定する。以上の決定は、どの車種の車両で行っても良い。
次に、車種毎の車体幅から複数の区画の区画数を決める。図6に示すように、自車両における車体幅の中心と1つの区画の中心とを合わせ、当該中心を合わせた区画の両側に同数の他の区画を自車両における車体幅からはみ出すか、車体幅と一致するまで1列に並べた数を、複数の区画に用いる区画数と決定する。
決定された区画数で、車体幅の中心と1つの区画の中心とを合わせる。次に、図7に示すように、車体幅の両端と両端に一致させるように左右両端の区画の端とを合わせる。残りの区画を半分ずつ中心の区画と左右両端の区画との間に均等配置する。これにより、図2(a),(b)に示すように、複数の区画X1〜X5が設定される。尚、残りの区画を半分ずつ中心の区画と左右両端の区画との間に均等配置しなくても良く、適宜設定変更可能である。ただし、区画間に隙間を設けることはできない。
【0031】
(その他)
上記実施例では、車両における車体幅に対して複数の区画が設定されているものであった。しかしこれに限られない。例えば、図8に示すように、複数の区画(ここでは、X1〜X13)が、車両における車体長に対して設定されているものであってもよい。尚、図8では、自車両の車体長を区分けした複数の区画X1〜X13が、車体長に対して、はみ出すこと無く、区画Xnが1列に隙間無く並ぶ状態に設定されている。しかしこれに限られず、複数の区画が、自車両における車体長に対して、はみ出すこと無く、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているようにしてもよい。また、図9に示すように、複数の区画が車両における車体幅の一部に対して設定されているものであってもよい。また同様に、複数の区画が車両における車体長の一部に対して設定されているものであってもよい。
また、上記実施例では、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態の複数の区画は、区画が2重に重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているものであった。しかしこれに限られない。複数の区画は、区画が多重に重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているものでもよい。
また、複数の区画は、自車両における障害物と衝突する可能性のある領域のうちの衝突保護の重要度が高い部位に区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されているものでもよい。例えば、図10に示すように、衝突保護の重要度が高い運転席側にだけ区画が重なった部分を有するように設定されているものでもよい。これによると、衝突保護の重要度が高い部位での衝突予測値を正確に反映した衝突予測区画を判定できる。
本発明に係る衝突予測装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 衝突予測装置
2 システムECU
3 障害物検出センサ
4 操舵角センサ
5 ヨーレートセンサ
6 車輪速センサ
7 警報装置
8 衝突回避支援装置
9 シートベルト制御装置
10 シート位置制御装置
11 ブレーキ制御装置
12 エアバッグ制御装置
13 推定カーブ半径演算部
14 自車速演算部
15 自車軌道演算部
16 障害物速演算部
17 障害物移動距離演算部
18 障害物軌道演算部
19 衝突予測位置演算部
20 衝突予測分布演算部
21 閾値マップ記憶部
22 衝突判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、障害物を検出するセンサと、
前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域を区分けした複数の区画に対して、前記自車両と前記障害物との関係から算出される衝突予測値を当てはめ、前記複数の区画のうちから前記障害物が衝突すると予測される衝突予測区画を判定する衝突予測区画判定手段と、
を備えた衝突予測装置であって、
前記区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域にかかわらず前記センサの検出精度によって決定された一定幅に設定されており、
前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域に対して、区画が1列に隙間無く並ぶ状態か、又は、区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態のどちらかの状態に設定されていることを特徴とする衝突予測装置。
【請求項2】
前記区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態の前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域の中心と1つの区画の中心とを合わせ、当該中心を合わせた区画の両側に同数の他の区画を前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域からはみ出すまで1列に並べた数の区画を用いて、区画が2重に重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の衝突予測装置。
【請求項3】
前記区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態の前記複数の区画は、前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域のうちの衝突保護の重要度が高い部位に区画が重なった部分を有しつつ区画が隙間無く並ぶ状態に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の衝突予測装置。
【請求項4】
前記衝突予測区画判定手段は、前記衝突予測値が前記自車両における前記障害物と衝突する可能性のある領域のうち前記区画が重なった部分に当てはまる場合には、当該重なった区画の全てに対して、前記衝突予測値の当てはめを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝突予測装置。
【請求項5】
前記衝突予測区画判定手段によって判定された衝突予測区画に基き、衝突前に前記自車両について保護動作を行う衝突前保護動作手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝突予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−113295(P2011−113295A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269015(P2009−269015)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】