表皮一体発泡成形品の表皮
【課題】縫目ラインの蛇行や皺を抑えて品質向上を実現させる表皮一体発泡成形品の表皮を提供する。
【解決手段】複数の表皮片2〜5を縫い合わせて袋状表皮1に縫製し、該袋状表皮内Cに発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品Aの表皮1であって、前記表皮片2が外皮シート片21と、その裏面に配されるスラブシート片22と、を具備し、且つ前記袋状表皮1に縫製する縫合部位6の表皮片2に係る前記スラブシート片22の外縁22aが、前記外皮シート片21の外縁21a及び前記縫合部位6の縫目ライン21よりも内方へ引っ込んで配設される。
【解決手段】複数の表皮片2〜5を縫い合わせて袋状表皮1に縫製し、該袋状表皮内Cに発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品Aの表皮1であって、前記表皮片2が外皮シート片21と、その裏面に配されるスラブシート片22と、を具備し、且つ前記袋状表皮1に縫製する縫合部位6の表皮片2に係る前記スラブシート片22の外縁22aが、前記外皮シート片21の外縁21a及び前記縫合部位6の縫目ライン21よりも内方へ引っ込んで配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表皮片で縫製される袋状表皮で、表皮一体発泡成形品の表皮に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドレストや座席シートとして、複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製した後、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品が用いられることがある。図12はヘッドレスト用表皮であるが、表皮片92に皮革などの高級材料を採用して表皮一体発泡成形品を作製する場合は、通常、皮革製表皮片921の裏面にウレタンスラブなどのスラブシート922を重合させ、これを袋状表皮9に縫製してから、表皮一体発泡成形品に造られる。成形後の製品たる表皮一体発泡成形品にソフト感が求められるからである。
ところが、皮革製表皮片921はファブリック表皮片951などと比較して伸び率が小さくて硬い。この皮革製表皮片921の裏面にウレタンスラブ等の軟らかなスラブシート922を配して袋状表皮9に縫製すると、図12のごとく、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりする不具合が出易くなる。袋状表皮9は裏返し状態で縫製されるが(図13のイ)、その後、該袋状表皮9を表返しにすると(図13のロ)、縫目ラインstの縫糸thにストレスがかかり、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりするのである。縫目ラインstが直線に近いほどストレスは小さくて蛇行mや皺vが少ないが、袋状表皮9にするため、表皮片92,95の曲線形状部分CVで、且つその曲率半径が小さくなればなるほどストレスが大きくなり、蛇行m,皺vが増える傾向にある。そこで、こうした問題を改善しようとする発明も提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−222404公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の発明は、その請求項1に記載のごとく「複数枚の表皮片をこれら縫い代において縫い合わせて袋状に形成し、その縫い代が内側になるように表裏反転されて使用されるクッションパッド用の表皮において、湾曲した縫製部における縫い代をそれより曲率の大きい他の部分よりも幅狭にしたことを特徴とするクッションパッド用の表皮」であって、効果が限定的であった。対策として、縫い代の一部を幅狭にカットしているが、縫目ライン及びその近くでは、依然として皮革とスラブシートの両方が残っており、伸び率の小さい表皮においては、その残り代の量によっては、蛇行,皺の直接要因が完全に取り除かれなかった。そして、スラブシートの厚みが厚くなるほど、蛇行が大きくなる傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、縫目ラインの蛇行や皺を抑えて品質向上を実現させる表皮一体発泡成形品の表皮を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製し、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品の表皮であって、前記表皮片が外皮シート片と、その裏面に配されるスラブシート片と、を具備し、且つ前記袋状表皮に縫製する縫合部位の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする表皮一体発泡成形品の表皮にある。
請求項2の表皮一体発泡成形品の表皮は、請求項1で、縫目ラインを形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片が用いられ、且つ両表皮片のうちで伸び率の小さい方の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、その表皮片に係る前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする。請求項3の表皮一体発泡成形品の表皮は、請求項1又は2で、表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表皮一体発泡成形品の表皮は、構成要素になる表皮片に皮革表皮片を用いたときでも、縫目ラインの曲線形状部分で起き易かった蛇行や皺を消失させて、袋状表皮に縫製でき、さらに発泡成形時の発泡原料の袋状表皮外への流出を抑えることができるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の表皮一体発泡成形品の表皮を使ったヘッドレストの全体斜視図である。
【図2】図1の表皮を構成する各表皮片で、スラブシートのある裏面側から見た平面図である。
【図3】各表皮片の縫合を裏返し状態で終えた表皮の斜視図である。
【図4】図3から表返し状態にした表皮の斜視図である。
【図5】図2のV-V線矢視図である。
【図6】図2のVI-VI線矢視図である。
【図7】互いの意匠面同士を対向させて、表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図である。
【図8】図1のVIII-VIII線矢視図である。
【図9】表皮片同士を縫合わせする様子を示す他態様の説明断面図を示し、図7に対応する断面図である。
【図10】図9の表皮を表返しにした状態の断面図で、図8に対応する断面図である。
【図11】また別態様の表皮で、縫目ライン周りの断面図である。
【図12】従来技術の表皮の斜視図である。
【図13】(イ)が表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図で、(ロ)が縫合わせを終えた表皮を表返しにしたときの縫合わせ部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る表皮一体発泡成形品の表皮について詳述する。図1〜図11は本発明に係る表皮一体発泡成形品の表皮(以下、単に「表皮」という。)の一形態で、図1がその表皮を使ったヘッドレストの全体斜視図、図2が図1の表皮を構成する各表皮片の平面図、図3が各表皮片の縫合を裏返し状態で終えた斜視図、図4が図3から表返し状態にした表皮の斜視図、図5が図2のV-V線矢視図、図6が図2のVI-VI線矢視図、図7が表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図、図8が図1のVIII-VIII線矢視図である。図9は他態様の袋状表皮で、表皮片同士を縫合わせする様子を示した説明断面図、図10は図9の表皮を表返しにした状態の断面図、図11は別態様の表皮で、縫目ライン周りの断面図である。
尚、図2で表す縫糸及び縫目ラインは、この平面図では実在しない仮想のものである。ただ、袋状表皮に縫合される時に各表皮片が縫われる位置を表しやすいため、説明用として便宜的に図示している。図3の左下円内は拡大図を表し、図7は図3のVII-VII線矢視図に近い断面図になっている。
【0010】
本表皮一体発泡成形品の表皮1は、図1のようなヘッドレスト用表皮に適用する。複数の表皮片2〜5を縫い合わせて袋状表皮1に縫製後、該袋状表皮内Cに発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形ヘッドレストAの表皮1である。
本実施形態は二種類の表皮片を用いる。所定形状に裁断した皮革製表皮片2と、所定形状に裁断した他の複数の樹脂製表皮片3〜5とが縫合されてヘッドレスト用表皮1となる。皮革製表皮片2の一枚と樹脂製表皮片3〜5の三枚を使用して、ヘッドレスト用袋状表皮1が造られる(図2)。二枚の樹脂製表皮片3,4が縫目ライン74を形成してヘッドレスト底面をつくり、ヘッドレストAの車両装着時における前方側の表皮片3と、図2でいえば、舌片状の皮革製表皮片2に係る上縁部分2dとが縫目ライン72を形成する。皮革製表皮片2は乗員頭部が当接する車両進行方向の前面から後方へ向かい、その外周縁21aが横長の表皮片5の外周部と縫合して縫目ライン71を形成する。さらに、表皮片5が表皮片3,4とで縫目ライン73を形成して、ヘッドレスト用表皮1を完成させる。車両のシートバック上端に、該表皮1で造られたヘッドレストAを装着すると、皮革製表皮片2の前記上縁部分2dは、底面をつくる表皮片3に接してヘッドレストAの下側となり、縫目ライン72が乗員の視線から隠れる。符号4bは表皮4に設けたインサート8のステー81用挿通孔を示す。
【0011】
皮革製表皮片2は、車幅方向にヘッドレストAとしての所定幅を有して、乗員頭部が当接するヘッドレストAの前面部分から後方へ向かい、最上部を越える領域までを担う舌片状体で、ヘッドレストAの外観主要部を形成する(図1,図2)。皮革製表皮片2は、皮革製の外皮シート片21と、該外皮シート片の裏面に配されるスラブシート片22と、を具備する。
皮革製の外皮シート片21は、動物のなま皮を薬品処理し、革類製品に使用できるバックスキン状態にあり、これが舌片状の所定形状に裁断されたものである(図2)。スラブシート片22は発泡体で造られたシート状体で、所定形状に裁断されている。スラブシート片22には例えば厚みが1.0〜3.0mmのウレタンスラブが用いられる。
【0012】
前記皮革製の外皮シート片21の裏面には、図2,図5のごとく前記スラブシート片22が貼着される。ここで、袋状表皮1に縫製する縫目ライン71における表皮片2,5にあっては、表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aが、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配設される。
【0013】
具体的には、図2のごとく舌片状の皮革製外皮シート片21に、これよりも一回り小さなスラブシート片22が貼着されて皮革製表皮片2が出来上がる。図2で、表皮片3とで縫目ライン72を形成する皮革製表皮片2の上縁部分2dは、舌片状外皮シート片21とスラブシート片22とが一致する。一方、表皮片5とで縫目ライン71を形成する皮革製表皮片2のU字形外周縁部分は、スラブシート片22の外縁22aを、外皮シート片21のU字形外縁21aよりも所定幅2fだけ内方へ引っ込め、また縫合部位6のU字形縫目ライン71よりも所定幅2gだけ内方へ引っ込めており、該スラブシート片22が皮革製表皮片21よりも一回り小さくなっている。表皮片2と表皮片5との縫合部位6では、表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを、縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて、該スラブシート片22が該外皮シート片21に貼着一体化されている。二つの表皮片の両意匠面を対向させて裏返し状態で縫目ラインを形成した後、表返しにして正規の袋状表皮1になるが、後述のごとく、曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し難くなるからである。皮革製外皮シート片21の表皮片2で袋状表皮1にしたとき、従来は図12のごとく曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し易かったが、そのような不具合が解消される。
【0014】
複数の前記樹脂製表皮片3〜5については、いずれも合成樹脂製でレザータイプの外皮シート片31,41,51と、該外皮シート片の裏面に配されるスラブシート片32,42,52と、を具備する。本実施形態の外皮シート片31,41,51は塩化ビニル樹脂製の合成皮革からなる。スラブシート片32,42,52は、前記スラブシート片22と同様、発泡体で造られたシート状体で、所定形状に裁断されている。
各表皮片3〜5は所定形状に裁断されるが、図2のごとく、いずれも外皮シート片31(41,51)とスラブシート片32(42,52)の大きさを同じにし、且つ外周縁を一致させて両者がピッタリと重なり合って貼着一体化されている。
【0015】
既述のごとく、表皮片3,4が縫目ライン74を形成してヘッドレスト底面をつくるが、意匠面E同士を対向させて表皮片3,4を重ね合わせ、縫糸7で縫目ライン74が形成される。縫目ライン74では、図13と同様、表皮片3に係る外皮シート片31及びスラブシート片32と、表皮片4に係る外皮シート片41及びスラブシート片42と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン74ができる。縫目ライン74のない表皮片3,4に係る張出部3a,4aの上縁部分は、袋状表皮1が出来上がったとき、発泡原料の注入口10になる。
縫目ライン73でも、表皮片3(4)に係る外皮シート片31(41)及びスラブシート片32(42)と、表皮片5に係る外皮シート片51及びスラブシート片52と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン73が形成される。また、縫目ライン72でも、表皮片3に係る外皮シート片31及びスラブシート片32と、皮革製表皮片2に係る外皮シート片21及びスラブシート片22と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン72が形成される。
【0016】
一方、表皮片5と皮革製表皮片2は、意匠面E同士を対向させて表皮片5,2を重ね合わせ、縫糸7で縫目ライン71が形成されるが、該縫目ライン71周りの断面図は図7,図8のごとくであり、縫目ライン72〜74周りの断面図と大きく異なる。表皮片5に係る外皮シート片51及びスラブシート片52は、縫糸7に取り込まれて縫合され、縫目ライン71ができるが、皮革製表皮片2については、皮革製外皮シート片21だけが縫糸7に取り込まれて縫合される。尚、前記縫目ライン72は皮革製表皮片2が縫合されるが、該縫目ライン72が直線状であり、また乗員の視線から隠れるところであり、縫目ライン71周りのような構成を採らない。
【0017】
皮革製外皮シート片21を有する皮革製表皮片2は、合成皮革製の外皮シート片51を有する表皮片5に比べて、伸び率が小さい。さらに、該皮革製表皮片2には厚みのあるクッション性のスラブシート片22が加わっている。図3のごとく裏返し状態にして袋状表皮1に縫製された後、表返しにされるが、曲線形状部分CVにして曲率半径が小さな部位の縫目ライン71では、一般的な縫目ライン72〜74の構成にすると、縫糸7に大きなストレスがかかる。皮革製外皮シート片21を用いた表皮片2は、合成皮革製外皮シート片31〜51を用いた表皮片3〜5と比較し、伸び率が小さくて曲線形状部分CVに沿うよう変形させるのが難しい。さらに、縫目ライン71では、その変形に従う形でスラブシート片22が窮屈且つ無理な形で押し潰される。こうしたことから、皮革製表皮片がつくる縫目ラインでは、曲線形状部分CVには蛇行mや皺vが寄り易くなっている。そこで、本袋状表皮1は、図7の裏返し状態下における縫製段階に先立ち、伸び率の異なる二つの両表皮片2,5のうちで伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配設する。伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に対し、厚みのあるスラブシート片22を縫目ライン71から遠ざけることで、曲線形状部分CVで曲率半径が小さな箇所で蛇行mや皺vが寄るのを回避する。
【0018】
詳しくは、皮革製表皮片2の縫目ライン71が形成される部位で、縫い代Nの幅2eを例えば5mmに設定すると、スラブシート片22は、その外縁22aが皮革製外皮シート片2の外縁21aから内方へ10mmほどの幅2fだけ内方へ引っ込むようにして、皮革製外皮シート21に貼着される。縫い代Nの幅を2eとすると、皮革外皮シート片外縁21aからスラブシート片外縁22aまでの幅2fは、2e[mm]〜(2e+5)[mm]の範囲が好ましい。(2e+5)[mm]を設定するのは、この値を越えると、蛇行mや皺vを解消できても、表皮一体発泡成形時に、表皮1への発泡原料の含浸が目立つようになるからである。ここで、本発明でいう縫い代Nとは、表皮片のなかで、縫目ラインよりも外縁に在る部分を指す。
本実施形態は、縫目ライン71に関わる皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ5mmの幅2gだけ引っ込めて配設する。斯かる構成によって、表皮片3〜5よりも伸び率の小さな皮革製表皮片2も、縫目ライン71周りで、皮革製外皮シート片21がスラブシート片22に邪魔されることなく図8のごとくスムーズに曲がり、表皮片5と同じように屈曲して綺麗な曲線形状部分CVをつくる。皮革製表皮片2を用いた縫目ライン71で、且つ袋状表皮の縫製で曲線形状部分CVの箇所でも、図12で見られた蛇行mや皺vが消失する。裏返し状態にして平面状で縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、蛇行m,皺vが出ず、滑らかなラインSMになる。曲率半径の小さな曲線形状部分CVでも、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなり、蛇行mや皺vが寄り難くなると考えられる。
【0019】
ここで、表皮片の前記伸び率とは、以下の円形モジュラス試験法による伸び率をいう。一の表皮片について、所定大きさ(本実施形態は直径30cmφ)の円形試験片にした後、該円形試験片の水平両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する(把持間隔20cm)。また一の表皮片で、別の円形試験片の上下両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。初期荷重1.96Nとし、引張り速度20cm/分で20%伸長時まで引張り、5%伸長時の荷重で、水平方向と上下方向での表皮片の伸び率を比較する。
一方、他の表皮片についても、一の表皮片と同じようにして、円形試験片の水平両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。また他の表皮片で、別の円形試験片の上下両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。初期荷重1.96Nとし、引張り速度20cm/分で20%伸長時まで引張り、5%伸長時の荷重で、水平方向と上下方向での表皮片の伸び率を比較する。
そうして、二つの対比表皮片(一の表皮片と他の表皮片)で、5%伸長時の荷重が大きい値を示した表皮片が、伸び率が小さい表皮片となる。尚、前記水平方向と前記上下方向の伸び率が異なる場合、本発明に係る表皮片の伸び率は、伸び率の大きい方の値が用いられる。本円形モジュラス試験法は、特開2001-316953に記載の<表皮材の伸び特性試験法(円形モジュラス試験法>の内容と同じである。
【0020】
ところで、前記縫目ライン71では、伸び率の異なる二つの表皮片2,5が用いられ、図7,図8のごとく、伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配したが、図9,図10のような他態様の表皮1とすることもできる。
【0021】
図9,図10の表皮片2,5では、皮革製表皮片2に加え、伸び率の大きい表皮片5も、そのスラブシート片52の外縁52aが、外皮シート片51の外縁51a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配される。図9のごとく、皮革製表皮片2側のスラブシート片22の外縁22aが縫目ライン71から内方へ後退するだけでなく、表皮片5側のスラブシート片52の外縁52aも縫目ライン71から内方へ後退する。図9のごとく、縫目ライン71でのトータル厚みが減る分、裏返し状態下での縫目ライン71の縫製が楽になる。さらに袋状表皮1を完成させて表返しにした際、曲線形状部分CVは図10のごとくスムーズに曲がり、より一層綺麗な曲線形状部分CVをつくる。縫目ライン72〜74も、図9,図10と同様の構成をとることができる。
ここで、図10の表皮1を縫目ライン72〜74へも適用を広げると、皮革製表皮片2のみならず、レザータイプの合成樹脂製表皮片3〜5についても、表皮片3〜5に係るスラブシート片の外縁32a,42a,52aを、外皮シート片の外縁31a,41a,51a及び縫合部位6の縫目ライン72〜74よりも内方へ引っ込めて配することになる。伸び率の異なる二つの表皮片のうちで、伸び率の小さい方の表皮片に係るスラブシート片の外縁を、縫目ラインよりも内方へ引っ込めて配するだけでも、曲率半径の小さな曲線形状部分CVでの蛇行m,皺vの消失が可能である。多少の品質向上が確保できても、作業負担,コスト等を鑑みると、図7,図8の構成がより好ましいと考えられる。
但し、縫目ラインを形成する両者が共に、合成樹脂製表皮片と比較し、伸び率の小さな皮革製表皮片である場合は、蛇行m,皺vの発生を回避するのに、図9,図10の表皮片構造が有効となる。縫目ラインを形成する二つの皮革製表皮片に係るスラブシート片の外縁が、それぞれ対応する外皮シート片の外縁及び縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されるのが好ましい。
【0022】
また、図11に別態様の表皮を示す。図10に示す表皮片2,5の二つを縫い合わせてできる縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが一の表皮片2側に倒され、さらに二つの該縫い代Nを取込んで、飾りステッチKが縫目ライン71に沿って設けられる。飾りステッチKによって縫合部位6が塞がれた格好になる。袋状表皮内Cに発泡原料を注入する発泡成形では、図11の白抜き矢印に向けて発泡原料の圧力がかかり、縫合部位6から該発泡原料が表皮1外へ漏れ出る虞がある。しかるに、縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが倒され、さらに飾りステッチKが設けられて、表皮1外への発泡原料の漏れを阻止できる構造になっている。図11の飾りステッチKは、図9の縫目ライン71の縫い代Nに適用したが、これに代え、図7の縫目ライン71の縫い代Nにも適用できる。
図中、網目模様は意匠面Eを示す。符号Gは発泡原料がつくる発泡体、符号Zは二つの表皮片の重ね合わせ面を示す。
【0023】
このように構成した表皮一体発泡成形品の表皮は、袋状表皮1に縫製する縫合部位6の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aが、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配設され、表皮片2のスラブシート片22が縫糸7に縫合されないので、縫目ライン71の縫合厚みがその分、小さくなって縫製が楽になる。そして、縫目ライン71からスラブシート片22が遠ざかるので、屈曲させても縫糸7に過大なストレスを与えなくなり、縫目ライン71周りの変形が容易く行える。ヘッドレストA等の袋状表皮1にあっては、図13のごとく、互いの意匠面Eを対向させて裏返し状態で縫目ライン71を形成後、表返しにして袋状表皮1とする。従来は表返しにすると縫目ラインにストレスがかかり曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し易くなるが、本袋状表皮1は縫目ライン71周りの表皮の変形がある程度自在になることからそのような事態を回避できる。
【0024】
袋状表皮1に、縫目ライン71を形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片2,5が用いられ、その一方に他方の表皮片5よりも伸び率の小さな皮革製表皮片2を採用する場合、特に有効となる。
皮革製表皮片2に係る皮革製外皮シート片21は、一般に伸び率が小さくて変形させるのに難儀する。他方の合成皮革製表皮片51(又は布製表皮片)に比べて、伸び率が小さく変形自由度に劣る。加えて、皮革製表皮片2には厚みがあるスラブシート片22が一体化しており、一般的な縫目ライン72〜74の構成のままでは、裏返し状態で袋状表皮1に縫製後、表返しにすると、曲線形状部分CVの縫目ライン71の縫糸7に大きなストレスがかかる。皮革製外皮シート片21では伸び率が小さくて曲線形状部分CVに沿うよう変形させるのが難しい。さらに、縫目ライン71ではその変形に従う形でスラブシート片22が無理な形で押し潰されるため、蛇行mや皺vが一層寄り易くなっている。
こうしたことから、本袋状表皮1は、伸び率の異なる二つの両表皮片2,5のうちで伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配設する。伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に対し、厚みのあるスラブシート片22を縫目ライン71から遠ざけることで、曲線形状部分CVで曲率半径が小さな箇所でも蛇行mや皺vが寄るのを回避できる。
伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを、その表皮片2に係る外皮シート片外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配することで、皮革製表皮片2側の縫目ライン71の縫目は皮革製外皮シート片21のみにできる。皮革製表皮片自体の伸び率は小さいが、縫目ライン71周りで、スラブシート片22に妨げられることなく、その皮革製外皮シート片21がもつ素材の変形自由度がそのまま維持される。袋状表皮1に表返しした状態下、縫目ライン71の周りで従来存在した窮屈さや無理な変形が避けられることによって、縫目ライン71にストレスが殆どかからなくなっている。したがって、皮革製表皮片2を用いた場合でも、図12で現れた蛇行mや皺vが消失するようになる。裏返し状態で袋状表皮1を縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなって、曲率半径の小さな曲線形状部分CVに蛇行m,皺vが出現しない。縫目ライン71の蛇行mや皺vを抑えて、高級皮革表皮片2を使用した袋状表皮1の品質向上を実現できる。
【0025】
また、表皮片2,5の二つを縫い合わせてできる縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが一の表皮片2側に倒され、さらに二つの該縫い代Nを取込んで、飾りステッチKが前記縫目ライン71に沿って設けられると、発泡成形段階での発泡原料の表皮1外への流出を止めることができ、ヘッドレスト製造の歩留り向上にも優れた効果を発揮する。
【0026】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。ヘッドレストA,袋状表皮1,皮革製表皮片2,表皮片3〜5,縫合部位6,縫目ライン71〜74,縫糸7,飾りステッチK等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態では袋状表皮1の縫製に、伸び率の異なる二種類の表皮片2,5を用いたが、伸び率の異なる三種類の表皮片を用いることもできる。伸び率が同じの表皮片を複数用いて袋状表皮1を縫製することも勿論できる。実施形態で説明したヘッドレストの他、座席シート等にも適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 表皮(袋状表皮)
2 表皮片(皮革製表皮片)
21 外皮シート片
21a 外皮シート片の外縁
22 スラブシート片
22a スラブシート片の外縁
3,4,5 表皮片(樹脂製表皮片)
31,41,51 外皮シート片
31a,41a,51a 外皮シート片の外縁
32,42,52 スラブシート片
32a,42a,52a スラブシート片の外縁
6 縫合部位
7 縫糸
71,72,73,74 縫目ライン
A 表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)
K 飾りステッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表皮片で縫製される袋状表皮で、表皮一体発泡成形品の表皮に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドレストや座席シートとして、複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製した後、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品が用いられることがある。図12はヘッドレスト用表皮であるが、表皮片92に皮革などの高級材料を採用して表皮一体発泡成形品を作製する場合は、通常、皮革製表皮片921の裏面にウレタンスラブなどのスラブシート922を重合させ、これを袋状表皮9に縫製してから、表皮一体発泡成形品に造られる。成形後の製品たる表皮一体発泡成形品にソフト感が求められるからである。
ところが、皮革製表皮片921はファブリック表皮片951などと比較して伸び率が小さくて硬い。この皮革製表皮片921の裏面にウレタンスラブ等の軟らかなスラブシート922を配して袋状表皮9に縫製すると、図12のごとく、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりする不具合が出易くなる。袋状表皮9は裏返し状態で縫製されるが(図13のイ)、その後、該袋状表皮9を表返しにすると(図13のロ)、縫目ラインstの縫糸thにストレスがかかり、縫目ラインstが蛇行mしたり皺vになったりするのである。縫目ラインstが直線に近いほどストレスは小さくて蛇行mや皺vが少ないが、袋状表皮9にするため、表皮片92,95の曲線形状部分CVで、且つその曲率半径が小さくなればなるほどストレスが大きくなり、蛇行m,皺vが増える傾向にある。そこで、こうした問題を改善しようとする発明も提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−222404公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の発明は、その請求項1に記載のごとく「複数枚の表皮片をこれら縫い代において縫い合わせて袋状に形成し、その縫い代が内側になるように表裏反転されて使用されるクッションパッド用の表皮において、湾曲した縫製部における縫い代をそれより曲率の大きい他の部分よりも幅狭にしたことを特徴とするクッションパッド用の表皮」であって、効果が限定的であった。対策として、縫い代の一部を幅狭にカットしているが、縫目ライン及びその近くでは、依然として皮革とスラブシートの両方が残っており、伸び率の小さい表皮においては、その残り代の量によっては、蛇行,皺の直接要因が完全に取り除かれなかった。そして、スラブシートの厚みが厚くなるほど、蛇行が大きくなる傾向にあった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、縫目ラインの蛇行や皺を抑えて品質向上を実現させる表皮一体発泡成形品の表皮を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製し、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品の表皮であって、前記表皮片が外皮シート片と、その裏面に配されるスラブシート片と、を具備し、且つ前記袋状表皮に縫製する縫合部位の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする表皮一体発泡成形品の表皮にある。
請求項2の表皮一体発泡成形品の表皮は、請求項1で、縫目ラインを形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片が用いられ、且つ両表皮片のうちで伸び率の小さい方の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、その表皮片に係る前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする。請求項3の表皮一体発泡成形品の表皮は、請求項1又は2で、表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表皮一体発泡成形品の表皮は、構成要素になる表皮片に皮革表皮片を用いたときでも、縫目ラインの曲線形状部分で起き易かった蛇行や皺を消失させて、袋状表皮に縫製でき、さらに発泡成形時の発泡原料の袋状表皮外への流出を抑えることができるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の表皮一体発泡成形品の表皮を使ったヘッドレストの全体斜視図である。
【図2】図1の表皮を構成する各表皮片で、スラブシートのある裏面側から見た平面図である。
【図3】各表皮片の縫合を裏返し状態で終えた表皮の斜視図である。
【図4】図3から表返し状態にした表皮の斜視図である。
【図5】図2のV-V線矢視図である。
【図6】図2のVI-VI線矢視図である。
【図7】互いの意匠面同士を対向させて、表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図である。
【図8】図1のVIII-VIII線矢視図である。
【図9】表皮片同士を縫合わせする様子を示す他態様の説明断面図を示し、図7に対応する断面図である。
【図10】図9の表皮を表返しにした状態の断面図で、図8に対応する断面図である。
【図11】また別態様の表皮で、縫目ライン周りの断面図である。
【図12】従来技術の表皮の斜視図である。
【図13】(イ)が表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図で、(ロ)が縫合わせを終えた表皮を表返しにしたときの縫合わせ部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る表皮一体発泡成形品の表皮について詳述する。図1〜図11は本発明に係る表皮一体発泡成形品の表皮(以下、単に「表皮」という。)の一形態で、図1がその表皮を使ったヘッドレストの全体斜視図、図2が図1の表皮を構成する各表皮片の平面図、図3が各表皮片の縫合を裏返し状態で終えた斜視図、図4が図3から表返し状態にした表皮の斜視図、図5が図2のV-V線矢視図、図6が図2のVI-VI線矢視図、図7が表皮片同士を縫合わせする様子を示す説明断面図、図8が図1のVIII-VIII線矢視図である。図9は他態様の袋状表皮で、表皮片同士を縫合わせする様子を示した説明断面図、図10は図9の表皮を表返しにした状態の断面図、図11は別態様の表皮で、縫目ライン周りの断面図である。
尚、図2で表す縫糸及び縫目ラインは、この平面図では実在しない仮想のものである。ただ、袋状表皮に縫合される時に各表皮片が縫われる位置を表しやすいため、説明用として便宜的に図示している。図3の左下円内は拡大図を表し、図7は図3のVII-VII線矢視図に近い断面図になっている。
【0010】
本表皮一体発泡成形品の表皮1は、図1のようなヘッドレスト用表皮に適用する。複数の表皮片2〜5を縫い合わせて袋状表皮1に縫製後、該袋状表皮内Cに発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形ヘッドレストAの表皮1である。
本実施形態は二種類の表皮片を用いる。所定形状に裁断した皮革製表皮片2と、所定形状に裁断した他の複数の樹脂製表皮片3〜5とが縫合されてヘッドレスト用表皮1となる。皮革製表皮片2の一枚と樹脂製表皮片3〜5の三枚を使用して、ヘッドレスト用袋状表皮1が造られる(図2)。二枚の樹脂製表皮片3,4が縫目ライン74を形成してヘッドレスト底面をつくり、ヘッドレストAの車両装着時における前方側の表皮片3と、図2でいえば、舌片状の皮革製表皮片2に係る上縁部分2dとが縫目ライン72を形成する。皮革製表皮片2は乗員頭部が当接する車両進行方向の前面から後方へ向かい、その外周縁21aが横長の表皮片5の外周部と縫合して縫目ライン71を形成する。さらに、表皮片5が表皮片3,4とで縫目ライン73を形成して、ヘッドレスト用表皮1を完成させる。車両のシートバック上端に、該表皮1で造られたヘッドレストAを装着すると、皮革製表皮片2の前記上縁部分2dは、底面をつくる表皮片3に接してヘッドレストAの下側となり、縫目ライン72が乗員の視線から隠れる。符号4bは表皮4に設けたインサート8のステー81用挿通孔を示す。
【0011】
皮革製表皮片2は、車幅方向にヘッドレストAとしての所定幅を有して、乗員頭部が当接するヘッドレストAの前面部分から後方へ向かい、最上部を越える領域までを担う舌片状体で、ヘッドレストAの外観主要部を形成する(図1,図2)。皮革製表皮片2は、皮革製の外皮シート片21と、該外皮シート片の裏面に配されるスラブシート片22と、を具備する。
皮革製の外皮シート片21は、動物のなま皮を薬品処理し、革類製品に使用できるバックスキン状態にあり、これが舌片状の所定形状に裁断されたものである(図2)。スラブシート片22は発泡体で造られたシート状体で、所定形状に裁断されている。スラブシート片22には例えば厚みが1.0〜3.0mmのウレタンスラブが用いられる。
【0012】
前記皮革製の外皮シート片21の裏面には、図2,図5のごとく前記スラブシート片22が貼着される。ここで、袋状表皮1に縫製する縫目ライン71における表皮片2,5にあっては、表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aが、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配設される。
【0013】
具体的には、図2のごとく舌片状の皮革製外皮シート片21に、これよりも一回り小さなスラブシート片22が貼着されて皮革製表皮片2が出来上がる。図2で、表皮片3とで縫目ライン72を形成する皮革製表皮片2の上縁部分2dは、舌片状外皮シート片21とスラブシート片22とが一致する。一方、表皮片5とで縫目ライン71を形成する皮革製表皮片2のU字形外周縁部分は、スラブシート片22の外縁22aを、外皮シート片21のU字形外縁21aよりも所定幅2fだけ内方へ引っ込め、また縫合部位6のU字形縫目ライン71よりも所定幅2gだけ内方へ引っ込めており、該スラブシート片22が皮革製表皮片21よりも一回り小さくなっている。表皮片2と表皮片5との縫合部位6では、表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを、縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて、該スラブシート片22が該外皮シート片21に貼着一体化されている。二つの表皮片の両意匠面を対向させて裏返し状態で縫目ラインを形成した後、表返しにして正規の袋状表皮1になるが、後述のごとく、曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し難くなるからである。皮革製外皮シート片21の表皮片2で袋状表皮1にしたとき、従来は図12のごとく曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し易かったが、そのような不具合が解消される。
【0014】
複数の前記樹脂製表皮片3〜5については、いずれも合成樹脂製でレザータイプの外皮シート片31,41,51と、該外皮シート片の裏面に配されるスラブシート片32,42,52と、を具備する。本実施形態の外皮シート片31,41,51は塩化ビニル樹脂製の合成皮革からなる。スラブシート片32,42,52は、前記スラブシート片22と同様、発泡体で造られたシート状体で、所定形状に裁断されている。
各表皮片3〜5は所定形状に裁断されるが、図2のごとく、いずれも外皮シート片31(41,51)とスラブシート片32(42,52)の大きさを同じにし、且つ外周縁を一致させて両者がピッタリと重なり合って貼着一体化されている。
【0015】
既述のごとく、表皮片3,4が縫目ライン74を形成してヘッドレスト底面をつくるが、意匠面E同士を対向させて表皮片3,4を重ね合わせ、縫糸7で縫目ライン74が形成される。縫目ライン74では、図13と同様、表皮片3に係る外皮シート片31及びスラブシート片32と、表皮片4に係る外皮シート片41及びスラブシート片42と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン74ができる。縫目ライン74のない表皮片3,4に係る張出部3a,4aの上縁部分は、袋状表皮1が出来上がったとき、発泡原料の注入口10になる。
縫目ライン73でも、表皮片3(4)に係る外皮シート片31(41)及びスラブシート片32(42)と、表皮片5に係る外皮シート片51及びスラブシート片52と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン73が形成される。また、縫目ライン72でも、表皮片3に係る外皮シート片31及びスラブシート片32と、皮革製表皮片2に係る外皮シート片21及びスラブシート片22と、を取り込んで、縫糸7で縫合され縫目ライン72が形成される。
【0016】
一方、表皮片5と皮革製表皮片2は、意匠面E同士を対向させて表皮片5,2を重ね合わせ、縫糸7で縫目ライン71が形成されるが、該縫目ライン71周りの断面図は図7,図8のごとくであり、縫目ライン72〜74周りの断面図と大きく異なる。表皮片5に係る外皮シート片51及びスラブシート片52は、縫糸7に取り込まれて縫合され、縫目ライン71ができるが、皮革製表皮片2については、皮革製外皮シート片21だけが縫糸7に取り込まれて縫合される。尚、前記縫目ライン72は皮革製表皮片2が縫合されるが、該縫目ライン72が直線状であり、また乗員の視線から隠れるところであり、縫目ライン71周りのような構成を採らない。
【0017】
皮革製外皮シート片21を有する皮革製表皮片2は、合成皮革製の外皮シート片51を有する表皮片5に比べて、伸び率が小さい。さらに、該皮革製表皮片2には厚みのあるクッション性のスラブシート片22が加わっている。図3のごとく裏返し状態にして袋状表皮1に縫製された後、表返しにされるが、曲線形状部分CVにして曲率半径が小さな部位の縫目ライン71では、一般的な縫目ライン72〜74の構成にすると、縫糸7に大きなストレスがかかる。皮革製外皮シート片21を用いた表皮片2は、合成皮革製外皮シート片31〜51を用いた表皮片3〜5と比較し、伸び率が小さくて曲線形状部分CVに沿うよう変形させるのが難しい。さらに、縫目ライン71では、その変形に従う形でスラブシート片22が窮屈且つ無理な形で押し潰される。こうしたことから、皮革製表皮片がつくる縫目ラインでは、曲線形状部分CVには蛇行mや皺vが寄り易くなっている。そこで、本袋状表皮1は、図7の裏返し状態下における縫製段階に先立ち、伸び率の異なる二つの両表皮片2,5のうちで伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配設する。伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に対し、厚みのあるスラブシート片22を縫目ライン71から遠ざけることで、曲線形状部分CVで曲率半径が小さな箇所で蛇行mや皺vが寄るのを回避する。
【0018】
詳しくは、皮革製表皮片2の縫目ライン71が形成される部位で、縫い代Nの幅2eを例えば5mmに設定すると、スラブシート片22は、その外縁22aが皮革製外皮シート片2の外縁21aから内方へ10mmほどの幅2fだけ内方へ引っ込むようにして、皮革製外皮シート21に貼着される。縫い代Nの幅を2eとすると、皮革外皮シート片外縁21aからスラブシート片外縁22aまでの幅2fは、2e[mm]〜(2e+5)[mm]の範囲が好ましい。(2e+5)[mm]を設定するのは、この値を越えると、蛇行mや皺vを解消できても、表皮一体発泡成形時に、表皮1への発泡原料の含浸が目立つようになるからである。ここで、本発明でいう縫い代Nとは、表皮片のなかで、縫目ラインよりも外縁に在る部分を指す。
本実施形態は、縫目ライン71に関わる皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ5mmの幅2gだけ引っ込めて配設する。斯かる構成によって、表皮片3〜5よりも伸び率の小さな皮革製表皮片2も、縫目ライン71周りで、皮革製外皮シート片21がスラブシート片22に邪魔されることなく図8のごとくスムーズに曲がり、表皮片5と同じように屈曲して綺麗な曲線形状部分CVをつくる。皮革製表皮片2を用いた縫目ライン71で、且つ袋状表皮の縫製で曲線形状部分CVの箇所でも、図12で見られた蛇行mや皺vが消失する。裏返し状態にして平面状で縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、蛇行m,皺vが出ず、滑らかなラインSMになる。曲率半径の小さな曲線形状部分CVでも、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなり、蛇行mや皺vが寄り難くなると考えられる。
【0019】
ここで、表皮片の前記伸び率とは、以下の円形モジュラス試験法による伸び率をいう。一の表皮片について、所定大きさ(本実施形態は直径30cmφ)の円形試験片にした後、該円形試験片の水平両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する(把持間隔20cm)。また一の表皮片で、別の円形試験片の上下両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。初期荷重1.96Nとし、引張り速度20cm/分で20%伸長時まで引張り、5%伸長時の荷重で、水平方向と上下方向での表皮片の伸び率を比較する。
一方、他の表皮片についても、一の表皮片と同じようにして、円形試験片の水平両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。また他の表皮片で、別の円形試験片の上下両サイドの端を把持し、定速度伸長形の引張り試験機で測定する。初期荷重1.96Nとし、引張り速度20cm/分で20%伸長時まで引張り、5%伸長時の荷重で、水平方向と上下方向での表皮片の伸び率を比較する。
そうして、二つの対比表皮片(一の表皮片と他の表皮片)で、5%伸長時の荷重が大きい値を示した表皮片が、伸び率が小さい表皮片となる。尚、前記水平方向と前記上下方向の伸び率が異なる場合、本発明に係る表皮片の伸び率は、伸び率の大きい方の値が用いられる。本円形モジュラス試験法は、特開2001-316953に記載の<表皮材の伸び特性試験法(円形モジュラス試験法>の内容と同じである。
【0020】
ところで、前記縫目ライン71では、伸び率の異なる二つの表皮片2,5が用いられ、図7,図8のごとく、伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配したが、図9,図10のような他態様の表皮1とすることもできる。
【0021】
図9,図10の表皮片2,5では、皮革製表皮片2に加え、伸び率の大きい表皮片5も、そのスラブシート片52の外縁52aが、外皮シート片51の外縁51a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配される。図9のごとく、皮革製表皮片2側のスラブシート片22の外縁22aが縫目ライン71から内方へ後退するだけでなく、表皮片5側のスラブシート片52の外縁52aも縫目ライン71から内方へ後退する。図9のごとく、縫目ライン71でのトータル厚みが減る分、裏返し状態下での縫目ライン71の縫製が楽になる。さらに袋状表皮1を完成させて表返しにした際、曲線形状部分CVは図10のごとくスムーズに曲がり、より一層綺麗な曲線形状部分CVをつくる。縫目ライン72〜74も、図9,図10と同様の構成をとることができる。
ここで、図10の表皮1を縫目ライン72〜74へも適用を広げると、皮革製表皮片2のみならず、レザータイプの合成樹脂製表皮片3〜5についても、表皮片3〜5に係るスラブシート片の外縁32a,42a,52aを、外皮シート片の外縁31a,41a,51a及び縫合部位6の縫目ライン72〜74よりも内方へ引っ込めて配することになる。伸び率の異なる二つの表皮片のうちで、伸び率の小さい方の表皮片に係るスラブシート片の外縁を、縫目ラインよりも内方へ引っ込めて配するだけでも、曲率半径の小さな曲線形状部分CVでの蛇行m,皺vの消失が可能である。多少の品質向上が確保できても、作業負担,コスト等を鑑みると、図7,図8の構成がより好ましいと考えられる。
但し、縫目ラインを形成する両者が共に、合成樹脂製表皮片と比較し、伸び率の小さな皮革製表皮片である場合は、蛇行m,皺vの発生を回避するのに、図9,図10の表皮片構造が有効となる。縫目ラインを形成する二つの皮革製表皮片に係るスラブシート片の外縁が、それぞれ対応する外皮シート片の外縁及び縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されるのが好ましい。
【0022】
また、図11に別態様の表皮を示す。図10に示す表皮片2,5の二つを縫い合わせてできる縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが一の表皮片2側に倒され、さらに二つの該縫い代Nを取込んで、飾りステッチKが縫目ライン71に沿って設けられる。飾りステッチKによって縫合部位6が塞がれた格好になる。袋状表皮内Cに発泡原料を注入する発泡成形では、図11の白抜き矢印に向けて発泡原料の圧力がかかり、縫合部位6から該発泡原料が表皮1外へ漏れ出る虞がある。しかるに、縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが倒され、さらに飾りステッチKが設けられて、表皮1外への発泡原料の漏れを阻止できる構造になっている。図11の飾りステッチKは、図9の縫目ライン71の縫い代Nに適用したが、これに代え、図7の縫目ライン71の縫い代Nにも適用できる。
図中、網目模様は意匠面Eを示す。符号Gは発泡原料がつくる発泡体、符号Zは二つの表皮片の重ね合わせ面を示す。
【0023】
このように構成した表皮一体発泡成形品の表皮は、袋状表皮1に縫製する縫合部位6の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aが、外皮シート片21の外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込んで配設され、表皮片2のスラブシート片22が縫糸7に縫合されないので、縫目ライン71の縫合厚みがその分、小さくなって縫製が楽になる。そして、縫目ライン71からスラブシート片22が遠ざかるので、屈曲させても縫糸7に過大なストレスを与えなくなり、縫目ライン71周りの変形が容易く行える。ヘッドレストA等の袋状表皮1にあっては、図13のごとく、互いの意匠面Eを対向させて裏返し状態で縫目ライン71を形成後、表返しにして袋状表皮1とする。従来は表返しにすると縫目ラインにストレスがかかり曲線形状部分CVで蛇行mや皺vが発生し易くなるが、本袋状表皮1は縫目ライン71周りの表皮の変形がある程度自在になることからそのような事態を回避できる。
【0024】
袋状表皮1に、縫目ライン71を形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片2,5が用いられ、その一方に他方の表皮片5よりも伸び率の小さな皮革製表皮片2を採用する場合、特に有効となる。
皮革製表皮片2に係る皮革製外皮シート片21は、一般に伸び率が小さくて変形させるのに難儀する。他方の合成皮革製表皮片51(又は布製表皮片)に比べて、伸び率が小さく変形自由度に劣る。加えて、皮革製表皮片2には厚みがあるスラブシート片22が一体化しており、一般的な縫目ライン72〜74の構成のままでは、裏返し状態で袋状表皮1に縫製後、表返しにすると、曲線形状部分CVの縫目ライン71の縫糸7に大きなストレスがかかる。皮革製外皮シート片21では伸び率が小さくて曲線形状部分CVに沿うよう変形させるのが難しい。さらに、縫目ライン71ではその変形に従う形でスラブシート片22が無理な形で押し潰されるため、蛇行mや皺vが一層寄り易くなっている。
こうしたことから、本袋状表皮1は、伸び率の異なる二つの両表皮片2,5のうちで伸び率の小さい方の表皮片2に係るスラブシート片22の外縁22aを縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配設する。伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に対し、厚みのあるスラブシート片22を縫目ライン71から遠ざけることで、曲線形状部分CVで曲率半径が小さな箇所でも蛇行mや皺vが寄るのを回避できる。
伸び率の小さい方の皮革製表皮片2に係るスラブシート片の外縁22aを、その表皮片2に係る外皮シート片外縁21a及び縫合部位6の縫目ライン71よりも内方へ引っ込めて配することで、皮革製表皮片2側の縫目ライン71の縫目は皮革製外皮シート片21のみにできる。皮革製表皮片自体の伸び率は小さいが、縫目ライン71周りで、スラブシート片22に妨げられることなく、その皮革製外皮シート片21がもつ素材の変形自由度がそのまま維持される。袋状表皮1に表返しした状態下、縫目ライン71の周りで従来存在した窮屈さや無理な変形が避けられることによって、縫目ライン71にストレスが殆どかからなくなっている。したがって、皮革製表皮片2を用いた場合でも、図12で現れた蛇行mや皺vが消失するようになる。裏返し状態で袋状表皮1を縫合した図7の姿態から図8のごとく表返しにしても、縫目ライン71にスラブシート片22がないことから、縫目ライン71の縫糸7に過大なストレスがかからなくなって、曲率半径の小さな曲線形状部分CVに蛇行m,皺vが出現しない。縫目ライン71の蛇行mや皺vを抑えて、高級皮革表皮片2を使用した袋状表皮1の品質向上を実現できる。
【0025】
また、表皮片2,5の二つを縫い合わせてできる縫目ライン71よりも外縁側に在る二つの縫い代Nが一の表皮片2側に倒され、さらに二つの該縫い代Nを取込んで、飾りステッチKが前記縫目ライン71に沿って設けられると、発泡成形段階での発泡原料の表皮1外への流出を止めることができ、ヘッドレスト製造の歩留り向上にも優れた効果を発揮する。
【0026】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。ヘッドレストA,袋状表皮1,皮革製表皮片2,表皮片3〜5,縫合部位6,縫目ライン71〜74,縫糸7,飾りステッチK等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態では袋状表皮1の縫製に、伸び率の異なる二種類の表皮片2,5を用いたが、伸び率の異なる三種類の表皮片を用いることもできる。伸び率が同じの表皮片を複数用いて袋状表皮1を縫製することも勿論できる。実施形態で説明したヘッドレストの他、座席シート等にも適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 表皮(袋状表皮)
2 表皮片(皮革製表皮片)
21 外皮シート片
21a 外皮シート片の外縁
22 スラブシート片
22a スラブシート片の外縁
3,4,5 表皮片(樹脂製表皮片)
31,41,51 外皮シート片
31a,41a,51a 外皮シート片の外縁
32,42,52 スラブシート片
32a,42a,52a スラブシート片の外縁
6 縫合部位
7 縫糸
71,72,73,74 縫目ライン
A 表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)
K 飾りステッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製し、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品の表皮であって、
前記表皮片が外皮シート片と、その裏面に配されるスラブシート片と、を具備し、且つ前記袋状表皮に縫製する縫合部位の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする表皮一体発泡成形品の表皮。
【請求項2】
前記縫目ラインを形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片が用いられ、且つ両表皮片のうちで伸び率の小さい方の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、その表皮片に係る前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設される請求項1記載の表皮一体発泡成形品の表皮。
【請求項3】
前記表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられる請求項1又は2に記載の表皮一体発泡成形品の表皮。
【請求項1】
複数の表皮片を縫い合わせて袋状表皮に縫製し、該袋状表皮内に発泡原料を注入して一体発泡成形される表皮一体発泡成形品の表皮であって、
前記表皮片が外皮シート片と、その裏面に配されるスラブシート片と、を具備し、且つ前記袋状表皮に縫製する縫合部位の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設されることを特徴とする表皮一体発泡成形品の表皮。
【請求項2】
前記縫目ラインを形成する表皮片に伸び率の異なる二つの表皮片が用いられ、且つ両表皮片のうちで伸び率の小さい方の表皮片に係る前記スラブシート片の外縁が、その表皮片に係る前記外皮シート片の外縁及び前記縫合部位の縫目ラインよりも内方へ引っ込んで配設される請求項1記載の表皮一体発泡成形品の表皮。
【請求項3】
前記表皮片の二つを縫い合わせてできる前記縫目ラインよりも外縁側に在る二つの縫い代が一の表皮片側に倒され、さらに二つの該縫い代を取込んで、飾りステッチが前記縫目ラインに沿って設けられる請求項1又は2に記載の表皮一体発泡成形品の表皮。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−156270(P2011−156270A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22197(P2010−22197)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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