説明

表皮成形品、表皮成形品の成形方法、および表皮付発泡成形部材の成形方法

【課題】表皮付発泡成形部材に適用する表皮の取り扱い性を改善することによって、製品としての表皮付発泡成形部材の外観品質の低下を防ぎ得る表皮成形品、表皮成形品の成形方法、および表皮付発泡成形部材の成形方法を提供する。
【解決手段】表皮成形品20は、芯材11と、芯材に向かい合う表皮12と、芯材と表皮との間の空間13に充填される発泡体14とを有する表皮付発泡成形部材10を成形する際に用いられる。この表皮成形品は、表皮付発泡成形部材の表皮をなす表皮部30と、表皮部の周囲に配置され表皮部を保持する枠形状をなすインサート部品40と、を有している。表皮部およびインサート部品は、RIM成形により一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮成形品、表皮成形品の成形方法、および表皮付発泡成形部材の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家庭などで用いられる内装部品は、樹脂単層成形体のタイプと、表皮付成形体のタイプとがある。近年、後者のなかでも、表皮層−発泡体層−芯材層の3層構造を有する表皮付発泡成形部材を多用している(特許文献1を参照)。表皮層には、RIM成形(反応射出成形)により成形した柔軟な表皮が用いられる。
【特許文献1】特開2001−145926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
表皮は非常に柔らかいので、表皮を取り扱っているとき、あるいは表皮付発泡成形部材用の成形型に表皮をセットするときなどに、表皮が折れてしまうことがある。このような場合には、製品としての表皮付発泡成形部材の表面に折れジワが残ってしまい、外観品質が低下するという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、表皮付発泡成形部材に適用する表皮の取り扱い性を改善することによって、製品としての表皮付発泡成形部材の外観品質の低下を防ぎ得る表皮成形品、表皮成形品の成形方法、および表皮付発泡成形部材の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の表皮成形品は、芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材を成形する際に用いられる表皮成形品であって、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部と、前記表皮部の周囲に配置され前記表皮部を保持する枠形状をなすインサート部品と、を有している。前記表皮部および前記インサート部品は、RIM成形により一体化されている。
【0006】
上記目的を達成するための本発明の表皮成形品の成形方法は、芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材を成形する際に用いられる表皮成形品の成形方法であって、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成されたRIM成形型に、枠形状をなすインサート部品をセットする工程と、前記表皮を形成するためのRIM成形材料を用いてRIM成形し、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部および前記表皮部を保持する前記インサート部品を一体化する工程と、を有している。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の表皮付発泡成形部材の成形方法は、芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材の成形方法であって、前記表皮付発泡成形部材の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成された成形型に、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部および前記表皮部の周囲に配置され前記表皮部を保持する枠形状をなすインサート部品がRIM成形により一体化されてなる表皮成形品をセットする工程と、前記成形型に前記表皮成形品に向かい合うように芯材をセットする工程と、前記表皮成形品と前記芯材との間の空間に発泡体を充填する工程と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表皮成形品によれば、表皮成形品を取り扱うとき、あるいは表皮成形品を表皮付発泡成形部材の成形型にセットするときなどには、インサート部品を把持して作業を行うことができ、表皮部が折れてしまう不具合が生じることがない。したがって、本発明の表皮成形品によれば、表皮付発泡成形部材に適用する表皮の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0009】
本発明の表皮成形品の成形方法によれば、上記の表皮成形品を得ることによって、表皮付発泡成形部材に適用する表皮の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0010】
本発明の表皮付発泡成形部材の成形方法によれば、芯材、表皮成形品および発泡体を一体化することによって、表皮付発泡成形部材に適用する表皮の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材の外観品質の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1(A)は、本発明を適用して成形した表皮付発泡成形部材10を示す断面図、図1(B)は、トリミング工程の前の、一体となった芯材11、表皮成形品20および発泡体14を示す断面図である。
【0013】
図1(A)を参照して、表皮付発泡成形部材10は、例えば、ドアトリムなどの自動車内装部品に適用する。表皮付発泡成形部材10は、芯材11と、芯材11に向かい合う表皮12と、芯材11と表皮12との間の空間13に充填される発泡体14と、を有している。芯材11の内表面が発泡体14によって表皮12と一体となっている。表皮12は、自動車内装部品の表面を形成する。芯材11、および発泡体14のそれぞれには、公知の材質を適宜選択することができる。例えば、芯材11の材質としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)などを用いることができる。発泡体14は、例えば、発泡ポリウレタン樹脂を用いることができる。表皮12は、RIM成形あるいは真空成形などを適用できるが、本実施形態では、表皮12を、ポリウレタン樹脂(RIM成形材料に相当する)を用いてRIM成形により形成している。なお、本発明におけるRIM成形材料をポリウレタン樹脂に限定する主旨ではなく、他の成形材料を使用してもよい。
【0014】
図1(B)は、発泡体14を充填する工程が終わり、一体となった芯材11、表皮成形品20および発泡体14を成形型200(図8を参照)から取り出した状態を示す断面図である。図示するように、本実施形態では、表皮付発泡成形部材10を成形する際には、表皮成形品20を用いている。
【0015】
図2(A)は、表皮付発泡成形部材10を成形する際に用いられる表皮成形品20を示す斜視図、図2(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う断面図である。図3(A)は、表皮成形品20のインサート部品40を示す斜視図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う断面図である。図4は、表皮成形品20をラック61に収納した状態を概念的に示す断面図、図5は、表皮成形品20を積層してストックした状態を概念的に示す断面図である。図6は、表皮成形品20を成形するRIM成形型100にインサート部品40をセットした状態を示す斜視図、図7は、図6に示す状態から、上下型101、102を閉じた状態を示す断面図である。
【0016】
図2および図3を参照して、表皮成形品20は、表皮付発泡成形部材10を成形する際に用いられ、表皮付発泡成形部材10の表皮12をなす表皮部30と、表皮部30の周囲に配置され表皮部30を保持する枠形状をなすインサート部品40と、を有し、これら表皮部30およびインサート部品40をRIM成形により一体化してある。
【0017】
インサート部品40は、中央に開口41が形成されたプレート形状を有している。開口41の周りに、段差部42を形成している。インサート部品40の一部に、RIM成形型100(図6を参照)にセットしたときにゲート106に連通してRIM成形材料を導入する通路部43を形成している。図示例では、インサート部品40は、額縁のような矩形枠形状を有している。ただし、インサート部品40は、表皮部30を保持し得る形状であれば足り、矩形枠形状のように閉じた形状に限定されるものではない。例えば、矩形形状の表皮部30であれば、表皮部30の周囲の少なくとも3辺を保持する枠形状、つまり「コ」の字形状でもよい。
【0018】
インサート部品40は、表皮付発泡成形部材10の成形型200にセットするときの位置を定める突起部44を有している。インサート部品40の両面のうちRIM成形材料が流動する側の一の面45a(図において上面)は、平坦面に形成している。突起部44は、インサート部品40の両面のうちRIM成形材料が流動しない側の他の面45b(図において下面)に設けている。以下の説明では、説明の便宜上、インサート部品40の両面のうちRIM成形材料が流動する側の一の面を「表面45a」ともいい、インサート部品40の両面のうちRIM成形材料が流動しない側の他の面を「裏面45b」ともいう。
【0019】
突起部44は、RIM成形型100にセットするときのインサート部品40の位置を定める突起部として兼用している(図7を参照)。RIM成形型100および表皮付発泡成形部材10の成形型200に対するインサート部品40の位置を定めるための部材を兼用することにより、インサート部品40の構成を簡素にできる。
【0020】
表皮成形品20は、表皮部30とインサート部品40とを接合するストッパ部50を有している。インサート部品40には、表面45aから裏面45bまで貫通する貫通穴46を多数形成している。貫通穴46は、段差部42に形成している。貫通穴46を通してRIM成形材料が裏面45bの側に流出することによって、ストッパ部50を形成している。ストッパ部50は、貫通穴46よりも大きい大きさを備えている。インサート部品40は、RIM成形材料に対して非接着性の構成である。例えば、インサート部品40は、ポリプロピレン、あるいは外表面をフッ素系樹脂コーティングやシリコンコートした金属などから製作している。ストッパ部50を設けることによって、インサート部品40をRIM成形材料に対して非接着性構造体としても、表皮部30とインサート部品40とを接合しておくことができる。
【0021】
表皮部30およびインサート部品40は、ストッパ部50を除去することによって分離自在となっている(後述する図13参照)。ストッパ部50は、切断することによって、簡単に除去できる。表皮部30から分離したインサート部品40は、再利用可能に構成されている。インサート部品40はRIM成形材料に対して非接着性の構成であるので、インサート部品40から表皮部30を簡単に剥がして分離でき、分離したインサート部品40を簡単に再利用できる。
【0022】
図4を参照して、表皮成形品20をラック61に収納する場合に、インサート部品40の周囲を、ラック61に収納するときのガイドとして機能させることができる。表皮成形品20をラック61に簡単に収納することができ、取り出しも容易になる。また、表皮部30同士が付着しないので、表皮部30の破損を防止することができる。
【0023】
図5を参照して、表皮成形品20を積層してストックする際に、インサート部品40の突起部44を、積層方向に隣り合う表皮部30同士が付着することを防止するスペーサとして機能させることができる。表皮部30同士が付着しないので、表皮部30の破損を防止することができ、表皮成形品20の取り出しも容易になる。図中符号62は、図中右側に示される高さの低い突起部44と下位側のインサート部品40との間の隙間を調整するためのカラーを示している。
【0024】
次に、表皮成形品20の製造方法について説明する。
【0025】
図6および図7を参照して、表皮成形品20をRIM成形する際には、表皮付発泡成形部材10の表皮12の外形形状に合致した内面形状のキャビティ103が形成されたRIM成形型100を使用する。RIM成形型100は、相対的に接近離反移動自在な上型101および下型102を有している。上型101および下型102を閉じることによって、表皮12の形状に合致したキャビティ103が形成される。インサート部品40は、下型102にセットする。下型102には、インサート部品40の突起部44が嵌まり込む係合穴104を形成している。また、下型102には、インサート部品40の貫通穴46の位置に合わせて、ストッパ部50の外形形状に合致した内面形状の凹部105を形成している。
【0026】
まず、図6に示すように、上型101および下型102を相対的に開く。枠形状をなすインサート部品40を下型102にセットする(セット工程)。インサート部品40は、通路部43がゲート106に連通するように下型102にセットする。
【0027】
セット工程において、インサート部品40に設けられ表皮付発泡成形部材10の成形型200にセットするときの位置を定める突起部44を用いて、RIM成形型100にセットするときの位置を定めている。すなわち、突起部44は、RIM成形型100にセットするときのインサート部品40の位置を定める突起部として兼用している。RIM成形型100および表皮付発泡成形部材10の成形型200に対するインサート部品40の位置を定めるための部材を兼用することにより、インサート部品40の構成を簡素にできる。インサート部品40は、RIM成形材料が流動する側の表面45aを平坦面に形成し、突起部44をRIM成形材料が流動しない側の裏面45bに設けている。
【0028】
次いで、図7に示すように、上型101および下型102を相対的に閉じる。ゲート106は、通路部43を介して、キャビティ103に連通する。表皮12を形成するためのRIM成形材料を用いてRIM成形する。RIM成形材料は、ゲート106および通路部43を通ってキャビティ103に射出される。これにより、表皮付発泡成形部材10の表皮12をなす表皮部30および表皮部30を保持するインサート部品40が一体化する(RIM工程)。
【0029】
上述したように、インサート部品40は、表面45aを平坦面に形成し、突起部44を裏面45bに設けている。本実施形態のように、インサート部品40を使用しない場合には、表皮自体に、表皮付発泡成形部材10の成形型200に対する位置を定めるための凹凸形状を付与しなければならない。型の凹凸形状によってRIM成形材料の流動が乱され、エアを巻込んでボイドが発生する虞がある。ボイドの発生は、表皮の外観品質の低下を招いてしまう。
【0030】
これに対して本実施形態ではインサート部品40に位置決めのための突起部44を形成したことから、表皮12をなす表皮部30自体には、位置決めのための凹凸形状を付与する必要がない。したがって、インサート部品40の表面45aを平坦面に形成して、RIM成形材料の流動が乱されないようにすることができる。これにより、ボイドの発生を防止し、表皮12の外観品質の低下を防止することができる。
【0031】
RIM工程において、RIM成形材料は、インサート部品40の表面45aから裏面45bまで貫通する貫通穴46を通って裏面45bの側に流出し、下型102の凹部105に流入する。これによって、貫通穴46よりも大きい大きさを備えるストッパ部50を形成する。インサート部品40はRIM成形材料に対して非接着性構造体であるが、ストッパ部50によって、表皮部30とインサート部品40とを接合しておくことができる。
【0032】
表皮部30およびインサート部品40は、ストッパ部50を除去することによって分離自在である。インサート部品40はRIM成形材料に対して非接着性の構成であるので、インサート部品40から表皮部30を簡単に剥がして分離でき、分離したインサート部品40を簡単に再利用できる。このため、今回セットしたインサート部品40は、再利用に供されたインサート部品を用いている。
【0033】
次に、表皮成形品20を用いた表皮付発泡成形部材10の製造方法について説明する。
【0034】
図8は、表皮付発泡成形部材10を成形する成形型200、芯材11、および表皮成形品20を示す斜視図、図9は、芯材11および表皮成形品20を成形型200にセットした状態を示す断面図、図10は、表皮成形品20と芯材11との間の空間13に発泡体14を充填した状態を示す断面図、図11は、一体となった芯材11、表皮成形品20および発泡体14をトリミングする状態を示す断面図、図12(A)は、製品としての表皮付発泡成形部材10から取り除かれた端材70を示す斜視図、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線に沿う断面図、図13は、端材70における表皮部30の周囲残部31とインサート部品40とを分離した状態を示す断面図である。
【0035】
図8および図9を参照して、表皮付発泡成形部材10を成形する際には、表皮付発泡成形部材10の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成された成形型200を使用する。成形型200は、相対的に接近離反移動自在な上型201および下型202を有している。上型201および下型202を閉じることによって、表皮付発泡成形部材10の形状に合致したキャビティ203が形成される。芯材11は、上型201にセットする。表皮成形品20は、下型202にセットする。下型202には、表皮成形品20のインサート部品40の突起部44が嵌まり込む係合穴204を形成している。
【0036】
まず、図8に示すように、上型201および下型202を相対的に開く。芯材11を上型201にセットし、表皮成形品20を下型202にセットする(表皮成形品20のセット工程)。表皮成形品20は、上述したように、表皮付発泡成形部材10の表皮12をなす表皮部30、および表皮部30の周囲に配置され表皮部30を保持する枠形状をなすインサート部品40がRIM成形により一体化されている。
【0037】
表皮成形品20のセット工程において、インサート部品40に設けられた突起部44を用いて、成形型200にセットするときの位置を定めている。
【0038】
表皮成形品20は、表皮12をなす表皮部30を枠形状のインサート部品40が保持している。このため、表皮成形品20を取り扱うとき、あるいは表皮成形品20を成形型200にセットするときなどには、インサート部品40を把持して作業を行うことができ、表皮12が折れてしまう不具合が生じることがない。したがって、表皮付発泡成形部材10に適用する表皮12の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材10の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0039】
さらに、インサート部品40の突起部44によって成形型200にセットするときの表皮成形品20の位置を定めている。このため、成形型200に対する表皮部30の位置、ひいては表皮12の位置が、ショット毎にばらつくことがなくなり、成形後の表皮12のシワやだぶつきの発生を防止できる。
【0040】
次いで、成形型200に表皮成形品20に向かい合うように芯材11をセットする(芯材11のセット工程)。
【0041】
次いで、図9に示すように、上型201および下型202を相対的に閉じる。次に、図10に示すように、表皮成形品20と芯材11との間の空間13に発泡体14を充填する(充填工程)。これにより、芯材11、表皮成形品20および発泡体14が一体化する。説明の便宜上、一体となった芯材11、表皮成形品20および発泡体14を、「中間成形品」ともいう。
【0042】
次いで、図11および図12に示すように、中間成形品を成形型200から取り出し(図1参照)、表皮成形品20の表皮部30の周囲をトリミングし、製品としての表皮付発泡成形部材10を残すように、表皮部30の周囲残部31とインサート部品40とが一体となった端材70を取り除く(トリミング工程)。トリミングは、専用のトリミング治具300にセットして行なう。トリミング治具300として、例えば、熱刃301を備える熱刃打ち抜き治具を用いる。他のトリミング工法として、ウォータージェットを適用することも可能である。
【0043】
次いで、図13に示すように、端材70における表皮部30の周囲残部31とインサート部品40とを分離自在に接合しているストッパ部50を除去する。ストッパ部50の除去は、ニッパなどの切断具を用いて行う。インサート部品40から表皮部30の周囲残部31を簡単に剥がして分離でき、分離したインサート部品40を他の表皮成形品20の成形のために簡単に再利用できる。今回セットした表皮成形品20は、再利用に供されたインサート部品を用いている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の表皮成形品20は、表皮付発泡成形部材10の表皮12をなす表皮部30と、表皮部30の周囲に配置され表皮部30を保持する枠形状をなすインサート部品40と、を有し、表皮部30およびインサート部品40がRIM成形により一体化されているので、表皮成形品20を取り扱うとき、あるいは表皮成形品20を表皮付発泡成形部材10の成形型200にセットするときなどには、インサート部品40を把持して作業を行うことができ、表皮部30が折れてしまう不具合が生じることがない。したがって、上記の表皮成形品20によれば、表皮付発泡成形部材10に適用する表皮12の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材10の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0045】
インサート部品40は、表皮付発泡成形部材10の成形型200にセットするときの位置を定める突起部44を有し、インサート部品40の表面45aを平坦面に形成し、突起部44をインサート部品40の裏面45bに設けてあるので、表皮12をなす表皮部30自体には、位置決めのための凹凸形状を付与する必要がない。したがって、インサート部品40の表面45aを平坦面に形成して、RIM成形材料の流動が乱されないようにすることができる。これにより、ボイドの発生を防止し、表皮部30ひいては表皮12の外観品質の低下を防止することができる。
【0046】
インサート部品40の突起部44を、RIM成形型100にセットするときのインサート部品40の位置を定める突起部44と兼用しているので、位置決めのための部材を別個に設ける場合に比べて、インサート部品40の構成を簡素にできる。
【0047】
表皮成形品20は、インサート部品40に形成され表面45aから裏面45bまで貫通する貫通穴46と、貫通穴46を通してRIM成形材料が裏面45bの側に流出することによって形成され貫通穴46よりも大きい大きさを備え表皮部30とインサート部品40とを接合するストッパ部50と、を有しているので、インサート部品40を、RIM成形材料に対して非接着性の構成にしても、ストッパ部50によって表皮部30とインサート部品40とを接合しておくことができる。
【0048】
表皮部30およびインサート部品40が、ストッパ部50を除去することによって分離自在であり、インサート部品40が、再利用可能に構成されているので、インサート部品40から表皮部30を簡単に剥がして分離でき、分離したインサート部品40を簡単に再利用できる。
【0049】
インサート部品40の周囲がラック61に収納するときのガイドとして機能し、あるいは、インサート部品40の突起部44が表皮成形品20を積層してストックする際に積層方向に隣り合う表皮部30同士が付着することを防止するスペーサとして機能することから、表皮成形品20の収納が容易となり、表皮部30同士が付着しないので表皮部30の破損を防止することができる。
【0050】
また、本実施形態の表皮成形品20の成形方法は、表皮付発泡成形部材10の表皮12の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成されたRIM成形型100に、枠形状をなすインサート部品40をセットする工程と、表皮12を形成するためのRIM成形材料を用いてRIM成形し、表皮付発泡成形部材10の表皮12をなす表皮部30および表皮部30を保持するインサート部品40を一体化する工程と、を有するので、上述した特徴的な作用および効果を有する表皮成形品20を得ることができる。表皮成形品20を得ることによって、表皮付発泡成形部材10に適用する表皮12の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材10の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0051】
インサート部品40をRIM成形型100にセットする工程において、インサート部品40に設けられ表皮付発泡成形部材10の成形型200にセットするときの位置を定める突起部44を用いて、RIM成形型100にセットするときの位置を定めているので、上述したように、インサート部品40の構成を簡素にできる。また、インサート部品40は、表面45aを平坦面に形成し、突起部44を裏面45bに設けているので、上述したように、表皮12をなす表皮部30自体には、位置決めのための凹凸形状を付与する必要がないので、RIM成形材料の流動が乱されないようにすることができる。これにより、ボイドの発生を防止し、表皮部30ひいては表皮12の外観品質の低下を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態の表皮付発泡成形部材10の成形方法は、表皮付発泡成形部材10の成形型200に表皮成形品20をセットする工程と、成形型200に表皮成形品20に向かい合うように芯材11をセットする工程と、表皮成形品20と芯材11との間の空間13に発泡体14を充填する工程と、を有するので、芯材11、表皮成形品20および発泡体14が一体化する。このとき、表皮成形品20は、表皮12をなす表皮部30を枠形状のインサート部品40が保持しているため、表皮成形品20を取り扱うとき、あるいは表皮成形品20を成形型200にセットするときなどには、インサート部品40を把持して作業を行うことができ、表皮12が折れてしまう不具合が生じることがない。したがって、表皮付発泡成形部材10に適用する表皮12の取り扱い性を改善することができ、製品としての表皮付発泡成形部材10の外観品質の低下を防ぐことができる。
【0053】
表皮成形品20を成形型200にセットする工程において、インサート部品40に設けられた突起部44を用いて、成形型200にセットするときの位置を定めているので、成形型200に対する表皮部30の位置、ひいては表皮12の位置が、ショット毎にばらつくことがなくなり、成形後の表皮12のシワやだぶつきの発生を防止できる。
【0054】
一体となった芯材11、表皮成形品20および発泡体14を成形型200から取り出し、表皮成形品20の表皮部30の周囲をトリミングし、製品としての表皮付発泡成形部材10を残すように、表皮部30の周囲残部31とインサート部品40とが一体となった端材70を取り除くトリミング工程をさらに有している。これにより、製品としての表皮付発泡成形部材10を得る。
【0055】
端材70における表皮部30の周囲残部31とインサート部品40とを分離自在に接合しているストッパ部50を除去し、インサート部品40から表皮部30の周囲残部31を簡単に剥がして分離でき、分離したインサート部品40を他の表皮成形品20の成形のために簡単に再利用できる。トリミングされ廃棄物となるのは表皮部30の周囲残部31のみであることから、再利用可能なインサート部品40を使用しない場合に比較して、表皮12の形成材料の無駄を減少し、材料の歩留まりを高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(A)は、本発明を適用して成形した表皮付発泡成形部材を示す断面図、図1(B)は、トリミング工程の前の、一体となった芯材、表皮成形品および発泡体を示す断面図である。
【図2】図2(A)は、表皮付発泡成形部材を成形する際に用いられる表皮成形品を示す斜視図、図2(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う断面図である。
【図3】図3(A)は、表皮成形品のインサート部品を示す斜視図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う断面図である。
【図4】表皮成形品をラックに収納した状態を概念的に示す断面図である。
【図5】表皮成形品を積層してストックした状態を概念的に示す断面図である。
【図6】表皮成形品を成形するRIM成形型にインサート部品をセットした状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示す状態から、上下型を閉じた状態を示す断面図である。
【図8】表皮付発泡成形部材を成形する成形型、芯材、および表皮成形品を示す斜視図である。
【図9】芯材および表皮成形品を成形型にセットした状態を示す断面図である。
【図10】表皮成形品と芯材との間の空間に発泡体を充填した状態を示す断面図である。
【図11】一体となった芯材、表皮成形品および発泡体をトリミングする状態を示す断面図である。
【図12】図12(A)は、製品としての表皮付発泡成形部材から取り除かれた端材を示す斜視図、図12(B)は、図12(A)の12B−12B線に沿う断面図である。
【図13】端材における表皮部の周囲残部とインサート部品とを分離した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 表皮付発泡成形部材、
11 芯材、
12 表皮、
13 空間、
14 発泡体、
20 表皮成形品、
30 表皮部、
31 表皮部の周囲残部、
40 インサート部品、
41 開口、
42 段差部、
43 通路部、
44 突起部、
45a 表面(RIM成形材料が流動する側の一の面)、
45b 裏面(RIM成形材料が流動しない側の他の面)、
46 貫通穴、
50 ストッパ部、
61 ラック、
62 カラー、
70 端材、
100 RIM成形型、
101 上型、
102 下型、
103 キャビティ、
104 係合穴、
105 凹部、
106 ゲート、
200 表皮付発泡成形部材の成形型、
201 上型、
202 下型、
203 キャビティ、
204 係合穴、
300 トリミング治具、
301 熱刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材を成形する際に用いられる表皮成形品であって、
前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部と、
前記表皮部の周囲に配置され前記表皮部を保持する枠形状をなすインサート部品と、を有し、
前記表皮部および前記インサート部品がRIM成形により一体化されてなる表皮成形品。
【請求項2】
前記インサート部品は、前記表皮付発泡成形部材の成形型にセットするときの位置を定める突起部を有し、
前記インサート部品の両面のうちRIM成形材料が流動する側の一の面が平坦面に形成され、
前記突起部が、前記インサート部品の両面のうちRIM成形材料が流動しない側の他の面に設けられている請求項1に記載の表皮成形品。
【請求項3】
前記突起部が、RIM成形型にセットするときの前記インサート部品の位置を定める突起部として兼用される請求項2に記載の表皮成形品。
【請求項4】
前記インサート部品に形成され、RIM成形材料が流動する側の一の面からRIM成形材料が流動しない側の他の面まで貫通する貫通穴と、
前記貫通穴を通してRIM成形材料が前記他の面の側に流出することによって形成され、前記貫通穴よりも大きい大きさを備え前記表皮部と前記インサート部品とを接合するストッパ部と、を有し、
前記インサート部品が、RIM成形材料に対して非接着性の構成である請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の表皮成形品。
【請求項5】
前記表皮部および前記インサート部品が、前記ストッパ部を除去することによって分離自在であり、
前記インサート部品が、再利用可能に構成されている請求項4に記載の表皮成形品。
【請求項6】
前記インサート部品の周囲が、ラックに収納するときのガイドとして機能する請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の表皮成形品。
【請求項7】
前記インサート部品の前記突起部が、表皮成形品を積層してストックする際に、積層方向に隣り合う前記表皮部同士が付着することを防止するスペーサとして機能する請求項2に記載の表皮成形品。
【請求項8】
芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材を成形する際に用いられる表皮成形品の成形方法であって、
前記表皮付発泡成形部材の前記表皮の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成されたRIM成形型に、枠形状をなすインサート部品をセットする工程と、
前記表皮を形成するためのRIM成形材料を用いてRIM成形し、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部および前記表皮部を保持する前記インサート部品を一体化する工程と、を有する表皮成形品の成形方法。
【請求項9】
前記インサート部品を前記RIM成形型にセットする工程において、前記インサート部品に設けられ前記表皮付発泡成形部材の成形型にセットするときの位置を定める突起部を用いて、RIM成形型にセットするときの位置を定めてなり、
前記インサート部品の両面のうちRIM成形材料が流動する側の一の面が平坦面に形成され、
前記突起部が、前記インサート部品の両面のうちRIM成形材料が流動しない側の他の面に設けられている請求項8に記載の表皮成形品の成形方法。
【請求項10】
RIM成形材料が流動する側の一の面からRIM成形材料が流動しない側の他の面まで貫通する前記インサート部品に形成された貫通穴を通して、RIM成形材料を前記他の面の側に流出させることによって、前記貫通穴よりも大きい大きさを備えるストッパ部を形成し、前記表皮部と前記インサート部品とを接合してなり、
前記インサート部品が、RIM成形材料に対して非接着性の構成である請求項8または請求項9に記載の表皮成形品の成形方法。
【請求項11】
前記表皮部および前記インサート部品が、前記ストッパ部を除去することによって分離自在であり、
前記インサート部品が、再利用に供されたインサート部品である請求項10に記載の表皮成形品の成形方法。
【請求項12】
芯材と、芯材に向かい合う表皮と、芯材と表皮との間の空間に充填される発泡体とを有する表皮付発泡成形部材の成形方法であって、
前記表皮付発泡成形部材の外形形状に合致した内面形状のキャビティが形成された成形型に、前記表皮付発泡成形部材の前記表皮をなす表皮部および前記表皮部の周囲に配置され前記表皮部を保持する枠形状をなすインサート部品がRIM成形により一体化されてなる表皮成形品をセットする工程と、
前記成形型に前記表皮成形品に向かい合うように芯材をセットする工程と、
前記表皮成形品と前記芯材との間の空間に発泡体を充填する工程と、を有する表皮付発泡成形部材の成形方法。
【請求項13】
前記表皮成形品を前記成形型にセットする工程において、前記インサート部品に設けられた突起部を用いて、前記成形型にセットするときの位置を定めている請求項12に記載の表皮付発泡成形部材の成形方法。
【請求項14】
一体となった前記芯材、前記表皮成形品および前記発泡体を前記成形型から取り出し、前記表皮成形品の前記表皮部の周囲をトリミングし、製品としての表皮付発泡成形部材を残すように、前記表皮部の周囲残部と前記インサート部品とが一体となった端材を取り除くトリミング工程をさらに有する請求項12または請求項13に記載の表皮付発泡成形部材の成形方法。
【請求項15】
前記端材における前記表皮部の周囲残部と前記インサート部品とを分離自在に接合しているストッパ部を除去し、前記インサート部品を他の表皮成形品の成形のために再利用する請求項14に記載の表皮付発泡成形部材の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−119755(P2009−119755A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297289(P2007−297289)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】