説明

表示システム、スクリーンおよびプロジェクター

【課題】臨場感溢れる映像を表示可能な表示システムを提供する。
【解決手段】本発明の表示システム1は、不可視光L2が入射した領域ごとに、可視光L1を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わるスクリーン2と、スクリーン2に可視光L1による画像を投射する画像投射系31と、画像投射系31により画像が投射される領域が散乱状態になるように、スクリーン2に不可視光L2を投射する不可視光投射系32と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム、スクリーンおよびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーン上にプロジェクター等により映像を表示する技術が知られている。近年、透明なスクリーンに映像光を拡散、散乱させて映像を表示する技術が提案されている。この技術を用いると、スクリーンが配置される実空間の人物や物体がスクリーンを透かして観察され、映像を実空間と同化させることができる。
【0003】
例えば、ウインドウディスプレイされた展示品に関する情報をウインドウガラスに映すことにより、展示品の観察を妨げずに情報を効果的に表示することができる。銀行等の窓口にて、来訪者の情報を受付者側に表示したり、受付者の情報を来訪者側に表示したりすることにより、窓口業務を円滑に進めることが可能になる。テレビ会議や無人受付などにおいて、人物のみを切り出した映像を映すことにより、あたかも人物が居合わせているようなリアリティを提供することができる。
【0004】
このように、透明なスクリーンを用いると、ディスプレイというデバイスの存在を観察者に感じさせないで映像表現することができ、効果的な情報提供や臨場感溢れる映像演出が可能となる。透明なスクリーンとして、特許文献1、2に開示されているものが挙げられる。特許文献1には、非拡散光である参照光と、光拡散体から拡散された物体光との干渉によるパターンを記録するホログラムスクリーンの製造方法が提案されている。特許文献2には、液晶層により透過/散乱を切替え可能なスクリーンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−75139号公報
【特許文献2】特開平6−82748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スクリーンには高品質な映像を表示可能であることが求められ、さらに透明なスクリーンにはディスプレイを意識させない観点で透明性の向上が期待される。特許文献1、2の技術には、映像品質と透明性とを両立させる観点で、改善すべき点がある。
【0007】
特許文献1のホログラムスクリーンは、参照光と物体光の干渉パターンを記録しているので、視野角を広くすると透明性が低下し、スクリーン自体が観察されるので演出効果が低下してしまう。透明性を高くすると視野角が狭くなり、映像を観察しづらくなるので映像品質が低下してしまう。
【0008】
特許文献2の液晶スクリーンは、透過/散乱を切替える単位領域をTFT等のアクティブ素子により駆動する構成にすると、アクティブ素子が反射・散乱媒質となるため透明性が低下してしまう。単位領域をパッシブ駆動にしてアクティブ素子を画面内に配置しない構成にすると、散乱性液晶のVT閾値特性により走査線数がせいぜい4本程度になってしまう。すると、透過/散乱を切替える単位領域が映像に比べて格段に低解像度になり、映像の周辺が大面積の散乱領域になることにより透明性が低下してしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を鑑みて提案されたものであり、映像部の高散乱性と非映像部の高透明性とを両立することにより、臨場感溢れる映像を表示可能なスクリーン、プロジェクターおよび表示システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、前記目的を達成するために以下の手段を採用している。
本発明の表示システムは、不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わるスクリーンと、前記スクリーンに可視光による画像を投射する画像投射系と、前記スクリーンにおいて前記画像のうちの所望の部分が投射される領域が前記散乱状態になるように、前記スクリーンに不可視光を投射する不可視光投射系と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、画像の所望の部分が投射される領域のスクリーンが不可視光投射系により散乱状態になり、この領域に入射した画像光が散乱して観察されて、画像の所望の部分が表示される。スクリーンにおいて不可視光が投射される領域を制御することにより、散乱状態になる領域を制御することができる。したがって、スクリーンの散乱・透過状態を領域ごとに制御する制御素子をスクリーン内に設ける必要が低くなり、制御素子による可視光の散乱や反射、吸収が格段に低減される。よって、スクリーンが認識されにくくなり、臨場感溢れる画像を表示可能になる。
【0012】
本発明に係る表示システムは、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
前記スクリーンは、一対の透明電極と、前記一対の透明電極の間に配置された高分子分散型液晶層と、前記一対の透明電極の少なくとも一方の電極と前記高分子分散型液晶層との間に配置されて前記不可視光の入射によりインピーダンスが変化する光導電層と、を有しているとよい。
【0013】
このようにすれば、不可視光が入射した領域の光導電層のインピーダンスが変化し、この領域にて高分子分散型液晶層に印加される電界の強度が変化する。したがって、不可視光の入射領域に対応する高分子分散型液晶層の散乱状態と透過状態とが切替えられ、画像投射系により画像が投射される領域を散乱状態にすることができる。
【0014】
前記スクリーンは、前記不可視光投射系から前記光導電層を経て射出された前記不可視光が入射する位置に設けられて該不可視光を反射させるとともに前記可視光を透過させる波長選択膜を有しているとよい。
【0015】
このようにすれば、光導電層を通った不可視光が波長選択膜で反射して、再度光導電層に入射する。これにより、光導電層に一次的に入射した不可視光に加えて、波長選択膜で反射して光導電層に二次的に入射した不可視光によっても光導電層のインピーダンスが変化する。したがって、不可視光投射系から射出された不可視光の光量あたりのインピーダンスの変化量を増加させることができ、不可視光投射系の出力を下げることができる。
【0016】
また、波長選択膜に対して光導電層と反対側から外光由来の不可視光が入射した場合に、この不可視光が波長選択膜で反射して光導電層に入射しにくくなる。したがって、外光に由来する不可視光が入射した領域においてスクリーンが所望の透過状態あるいは散乱状態にならなくなることが回避され、透過状態あるいは散乱状態にする領域を高精度に制御することができる。
【0017】
特に、高分子分散型液晶層と光導電層との間に波長選択膜を配置すれば、不可視光投射系に由来する不可視光が高分子分散型液晶層に入射しにくくなる。これにより、不可視光が高分子分散型液晶層で散乱された後に光導電層に入射することが回避され、透過状態あるいは散乱状態にする領域を高精度に制御することができる。
【0018】
前記スクリーンは、前記光導電層に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収する光吸収層を有しているとよい。
このようにすれば、光導電層に特定の波長帯の色光が吸収されることによるスクリーンの色づきを防止することができる。また、スクリーンを無彩色とすることができるため視刺激を低減でき、観察者にスクリーンを意識させにくくすることが可能となる。また、スクリーンの色づきを防止する観点で光導電層の材料選択に制約が加わることを回避することができ、光導電層の材料選択の自由度が高くなる。
【0019】
前記高分子分散型液晶は、電界非印加状態で前記透過状態になるとよい。
このようにすれば、電界非印加状態でスクリーンが認識されにくくなるので、スクリーンの消費電力を抑制しつつスクリーンが視界の妨げになることを回避することができる。
【0020】
前記高分子分散型液晶層に二色性色素が分散されているとよい。
このようにすれば、スクリーンに入射する外光が二色性色素に吸収されるので、外光の散乱によるコントラスト比の低下が緩和される。
【0021】
前記二色性色素は、前記光導電層に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収するとよい。
このようにすれば、外光の散乱によるコントラスト比の低下が緩和されるとともに、観察者にスクリーンを認識させにくくすることができる。
【0022】
前記スクリーンに入射前の前記可視光と該スクリーンから射出後の前記可視光との色相変化を打ち消すように、前記画像投射系に供給される画像データを補正する画像補正部を備えているとよい。
このようにすれば、補正された画像データに対応した可視光が画像投射系から射出される。画像投射系から射出された可視光は、スクリーンを経ることによるカラーバランスの変化が画像データの補正により相殺されるので、補正前の画像データに忠実な画像を表示することができる。
【0023】
入力画像のうちで表示すべき範囲を示す範囲データを前記不可視光投射系に供給するとともに、前記入力画像の前記範囲に含まれる画像データを前記画像投射系に供給する、データ供給部を備え、前記画像投射系が前記画像データに基づいて前記画像を投射し、前記不可視光投射系が前記範囲データに基づいて前記不可視光を投射するとよい。
このようにすれば、データ供給部が、範囲データを不可視光投射系に供給するとともに範囲データに整合した画像データを画像投射系に供給するので、スクリーンにおいて散乱状態になる領域と、画像の所望の部分が投射される領域とを高精度に対応させることが容易になる。
【0024】
前記画像投射系により投射される光を前記不可視光投射系により投射される光と合成する合成素子を備えているとよい。
このようにすれば、可視光が不可視光と合成素子により合成されてスクリーンに投射されるので、可視光により表示される画像の位置およびサイズを、不可視光により散乱状態になる領域の位置およびサイズと高精度に対応させることが容易になる。
【0025】
前記画像投射系は、前記可視光を射出する第1光源系および該第1光源系から射出された光を変調する第1光変調素子を有し、前記不可視光投射系は、前記不可視光を射出する第2光源系および該第2光源系から射出された光を変調する第2光変調素子を有しており、前記色合成素子は、前記第1光変調素子により変調された光および前記第2光変調素子により変調された光を合成し、前記合成素子により合成された光を投射する投射光学系を備えているとよい。
このようにすれば、第1光源系から射出された可視光が第1光変調素子により変調されることにより、可視光の画像を形成することができる。第2光源系から射出された不可視光が第2光変調素子により変調されることにより、画像と対応したパターンの不可視光の画像を形成することができる。可視光の画像および不可視光の画像が合成されて投射されるので、画像投射系と不可視光投射系とで投射光学系を共通化することができ、表示システムを低コストにすることや小型にすることが可能になる。
【0026】
本発明のスクリーンは、不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わることを特徴とする。
このようにすれば、不可視光が入射した領域に応じてスクリーンの散乱状態と透過状態とが切替わるので、散乱状態になる領域をスクリーンの外部から制御することができる。したがって、スクリーンを領域ごとに散乱状態に制御する制御素子をスクリーン内に設ける必要が低くなり、スクリーンが認識されにくくなるので臨場感溢れる画像を表示可能になる。
【0027】
本発明のプロジェクターは、不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わるスクリーンに画像を表示するプロジェクターであって、前記スクリーンに可視光による画像を投射する画像投射系と、前記スクリーンにおいて前記画像のうちの所望の部分が投射される領域が前記散乱状態になるように、前記スクリーンに不可視光を投射する不可視光投射系と、を備えていることを特徴とする。
このようにすれば、スクリーンにおいて画像投射系により画像が投射される領域が不可視光投射系により散乱状態になり、この領域に入射した画像光が散乱して観察されて画像が表示される。散乱状態になる領域をプロジェクターにより制御するので、スクリーンを領域ごとに散乱状態に制御する制御素子をスクリーンに設ける必要が低くなる。したがって、スクリーンが認識されにくくなり、臨場感溢れる画像を表示可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】表示システム1の構成図(a)、使用例を示す図(b)である。
【図2】プロジェクター3の概略構成を示す模式図である。
【図3】スクリーン2Aの断面図(a)、等価回路図(b)である。
【図4】スクリーンの動作原理を示す説明図である。
【図5】表示システム1Bの構成図(a)、スクリーン2Bの断面図(b)である。
【図6】スクリーン2Cの断面図(a)、光吸収スペクトルのグラフ(b)である。
【図7】第4実施形態におけるスクリーン2Dの構成を示す断面拡大図である。
【図8】第5実施形態の表示システム1Eの概略構成を示す模式図である。
【図9】(a)〜(c)は、画像処理部の特性を示す説明図である。
【図10】第6実施形態の表示システム1Fの概略構成を示す模式図である。
【図11】第7実施形態の表示システム1Gの概略構成を示す模式図である。
【図12】第8実施形態の表示システム1Hの概略構成を示す模式図である。
【図13】カラーホイールの構成図(a)、変形例の構成図(b)である。
【図14】第9実施形態におけるスクリーン2Kの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。なお、以下の第1〜10実施形態で説明するスクリーンは、いずれも本発明のスクリーンを適用したものである。
【0030】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態の表示システム1の概略構成を示す模式図、図1(b)は表示システム1の使用例を示す図である。図1に示すように表示システム1は、スクリーン2およびプロジェクター3を含んでいる。プロジェクター3は、データ供給部30、画像投射系31および不可視光投射系32を含んでいる。スクリーン2は本発明のスクリーンを適用したものであり、プロジェクター3は本発明のプロジェクターを適用したものである。
【0031】
図1(a)、(b)に示すXYZ直交座標系は、スクリーン2の主面に沿う方向をX方向、Y方向とし、スクリーン2の主面の法線方向をZ方向としている。X方向およびZ方向は例えば水平方向であり、Y方向は例えば鉛直方向である。
【0032】
第1実施形態の表示システム1は、概略すると以下のように動作する。スクリーン2は、アドレス光(不可視光)L2が入射した領域において、可視光に対する散乱状態と透過状態とが切替わるようになっている。データ供給部30は、パーソナルコンピューター等の信号源9からプロジェクター3に対する入力画像データD0を受け取る。データ供給部30は、入力画像の一部である画像Pに対応する画像データD1を画像投射系31に出力する。データ供給部30は、スクリーン2において画像Pを表示する範囲を示す範囲データD2を不可視光投射系32に出力する。
【0033】
不可視光投射系32は、スクリーン2において画像Pを表示する表示領域Aを散乱状態にすべく、アドレス光L2を表示領域Aに対応したパターンでスクリーン2に投射する。画像投射系31は、画像データD1に基づいて可視光の画像Pを形成し、画像Pに対応する画像光(可視光)L1をスクリーン2に投射する。
【0034】
スクリーン2において、画像光L1の入射領域である表示領域Aはアドレス光L2により散乱状態になっており、表示領域Aを除くスクリーン2は透過状態になっている。スクリーン2の表示領域Aで画像光L1が散乱されて散乱光L3となり、散乱光L3が観察者Mに観察されることにより画像Pが表示される。スクリーン2に対して観察者Mと反対側の背景BGからの可視光L4は、スクリーン2の表示領域Aを除く部分を透過して観察者Mに観察される。実空間の背景BGと同化した画像Pが表示され、多彩な空間演出が可能になっている。以下、表示システム1の構成を詳しく説明する。
【0035】
図2は、プロジェクター3の構成を示す模式図である。図2に示すようにプロジェクター3は、データ供給部30、画像投射系31および不可視光投射系32を含んでいる。本実施形態のプロジェクター3は、入力画像のうちの所望の部分を部分画像とし、この部分画像を画像Pとして表示するようになっている。プロジェクター3は、例えばスクリーン2に対して表示側(観察者M)と反対側における、スクリーン2を通した観察者Mの視野範囲外に配置される。
【0036】
画像投射系31は、第1光源装置311、第1光変調素子312および第1投射光学系313を含んでいる。第1光源装置311は、ランプ光源や固体光源等を含んで構成され、可視光を含んだ光を射出する。第1光変調素子312は、透過型もしくは反射型の液晶ライトバルブ、又はデジタルミラーデバイス(DMD)等により構成される。第1光変調素子312は、第1光源装置311から射出された光を画像データD1に基づいて変調し、画像光L1として射出する。第1投射光学系313は、第1光変調素子312から射出された画像光L1をスクリーン2に投射する。
【0037】
画像投射系31は、実際には複数の色光(例えば赤、緑、青)ごとに画像光を形成し、複数の色光による画像光をダイクロイックプリズム等の色合成素子により合成した後に、第1投射光学系313によって投射する。複数の色光ごとに第1光変調素子が設けられている。
【0038】
画像投射系31の具体的な構成例として、第1光源装置としてのランプ光源から射出された光を、複数の色光に色分離して第1光変調素子に供給する構成がある。この構成では、色光ごとに第1光変調素子が設けられ、1つの第1光源装置に対して複数の第1光変調素子が設けられる。
この構成の他に、第1光源として、射出する色光の波長が互いに異なる複数の固体光源を採用するとともに、固体光源ごとに第1光変調素子が設けられている構成が挙げられる。この構成では、画像投射系が、複数の第1光源装置および複数の第1光変調素子を含んでいる。
【0039】
不可視光投射系32は、第2光源装置321、第2光変調素子322および第2投射光学系323を含んでいる。第2光源装置321は、ランプ光源や固体光源等により構成され、不可視光(ここでは近赤外光)を含んだ光を射出する。第2光変調素子322は、第1光変調素子312と同様に各種光変調素子により構成される。第2光変調素子322は、第2光源装置321から射出された光を範囲データD2に基づいて変調する。入射光は、第2光変調素子322の画素ごとに例えば2階調に(明又は暗の2値に)変調されて、画像Pに対応するパターンのアドレス光L2になる。換言すると、アドレス光L2は不可視光の画像になっており、この画像の輪郭は画像Pの輪郭と略一致している。
【0040】
第2投射光学系323は、第2光変調素子322から射出されたアドレス光L2を、スクリーン2上で画像光L1と重なるように投射する。本実施形態の第2投射光学系323は、第1投射光学系313と連動してフォーカスやズームが制御される。これにより、スクリーン2においてアドレス光L2が投射される領域(以下、IR入射領域と称する)を表示領域Aと高精度に対応させることが可能になっている。
【0041】
データ供給部30は、表示範囲設定部301および画像抽出部302を含んでいる。表示範囲設定部301は、入力画像において表示すべき範囲(部分画像の範囲)を示す範囲データD2を、画像抽出部302および第2光変調素子322に出力する。部分画像の範囲は、例えばユーザーの入力により設定される。画像抽出部302は、入力画像データD0において画像Pを構成する画素の階調値を保持し、画像P以外の画素の階調値をブランク(例えば黒)に書換えることにより、画像データD1を生成する。画像抽出部302は、画像データD1を第1光変調素子312に出力する。
【0042】
図3(a)は、スクリーン2の構成を示す断面拡大図、図3(b)はスクリーン2の等価回路図、図4はスクリーン2の動作原理を示す説明図である。図3(a)に示すようにスクリーン2は、一対の透明基板20、21、一対の透明電極22、23、光導電層24およびPDLC(高分子分散型液晶層)25を含んでいる。PDLC25は、高分子部251と液晶部252とを含んでいる。
【0043】
PDLC25は、透明基板20、21の間に配置されている。ここでは、画像光L1およびアドレス光L2が、透明基板20側から入射し、透明基板21側から射出される。PDLC25と透明基板20の間に透明電極22が配置されている。高分子分散型液晶25と透明基板21との間に透明電極23が配置されている。透明電極22、23は、スクリーン2上に表示される画像の画素サイズよりも広い範囲に連続して形成されている。ここでは、透明電極22が透明基板20の片面にベタ状に形成されており、透明電極23が透明基板21の片面にベタ状に形成されている。スクリーン2は、透明電極22、23が外部の電源26に電気的に接続された状態で使用される。光導電層24は、透明電極22とPDLC25との間、すなわちPDLC25に対してアドレス光L2の入射側に配置されている。
【0044】
透明基板20、21は、例えば透光性を有するガラス基板等からなる。透明電極22、23は、透光性を有する導電材料、例えばインジウム錫酸化物(ITO)等からなる。光導電層24は、赤外光や紫外光が入射した部分のインピーダンスが変化する材料からなる。光導電層24の形成材料としては、例えばアモルファスシリコン等の無機材料や金属フタルシアニン系化合物等の有機材料が挙げられる。
【0045】
有機材料からなる光導電層24を採用すれば、無機材料と比較して材料の選択自由度が高くなり、光導電層24の吸収波長帯を設計することが容易になる。光導電層24は、不可視光の入射によりインピーダンスが減少する低抵抗化型、不可視光の入射によりインピーダンスが増加する高抵抗化型のいずれであってもよい。本実施形態の光導電層24は、チタニルオキシフタルシアニン系化合物からなり、近赤外領域に吸収波長帯のピークを有し、赤外光の吸収によりインピーダンスが減少する低抵抗化型のものである。
【0046】
PDLC25は、透過状態と散乱状態とを印加電界の強度により切替え可能なものである。散乱状態は、PDLC25に入射した光が散乱する程度が透過状態よりも相対的に大きくなるモードである。散乱の程度は、例えば入射光および射出光で拡散角や強度分布の半値半幅を比較することにより評価可能である。一般に、入射光に対する射出光の拡散角の増分、あるいは半値半幅の増分が大きくなるほど拡散の程度は顕著である。
【0047】
PDLC25は、ノーマル型あるいはリバース型のいずれを採用してもよい。ノーマル型は、電界非印加状態で散乱状態となり、電界印加状態で透過状態となる。リバース型は、電界非印加状態で散乱状態となり、電界印加状態で透過状態となる。詳しくは後述するが、光導電層24のタイプとPDLC25のタイプとの組合せにより、アドレス光L2のIR入射領域と画像Pの表示領域Aとの関係が定まる。
【0048】
本実施形態のPDLC25は、リバース型のものである。PDLC25に電界を印加すると、高分子部251の方位角が変化しないのに対して、液晶部252に含まれる液晶分子の方位角が変化する。すると、高分子部251と液晶部252との間で屈折率が不連続に変化するようになり、PDLC25に入射した光が散乱する。
【0049】
光導電層24は、キャパシタンス成分C1と、光入力によりインピーダンスが変化する可変抵抗成分R1とが並列接続された回路要素とみなすことができる。PDLC25は、キャパシタンス成分C2と抵抗成分R2が並列接続され、光導電層24と直列接続された回路要素とみなすことができる。透明電極22、23に電圧が印加された状態で、抵抗成分R2に対して可変抵抗成分R1が小さくなるほど、キャパシタンス成分C2に印加される電圧、すなわちPDLC25に印加される電界の強度が大きくなる。透明電極22、23に電圧が印加されてアドレス光L2が入射していない状態で、PDLC25が散乱状態にならないように、抵抗成分R2に対する可変抵抗成分R1が所定値以上に設定されている。
【0050】
以上のような構成のスクリーン2において、一対の透明電極22、23の間に電圧が印加されていない電源オフ時に、PDLC25は透過状態になっている。図4に示すように、一対の透明電極22、23の間に電圧が印加された電源オン時に、光導電層24にアドレス光L2が入射すると、IR入射領域B1における光導電層24のインピーダンスが減少する。すると、光導電層24においてIR入射領域B1が選択的にPDLC25に対する電極として機能し、IR入射領域B1に対応するPDLC25に液晶部252の液晶分子の方位角を変化させる電界Eが印加される。これにより、IR入射領域B1のPDLC25が散乱状態になり、アドレス光L2のIR入射領域B1に入射した画像光L1は、PDLC25に前方散乱されて散乱光L3になる。
【0051】
アドレス光L2が入射しないIR非入射領域B2では、PDLC25が透過状態に保持されることにより、スクリーン2が透明になっている。IR非入射領域B2に入射した光は、スクリーン2でほとんど散乱されずにスクリーン2を通る。IR非入射領域B2に入射する光は、背景BGからの可視光L4や、画像投射系31から射出されて表示に寄与しない光、例えば入射画像において部分画像を除いた画像(以下、周辺画像という)に対応する画像光である。プロジェクター3がスクリーン2を通した視野範囲外に配置されていると、表示に寄与しない画像光は、スクリーン2を通った後に観察者Mと異なる方向に進行する。すなわち、表示に寄与しない光が観察者Mの眼球にほとんど入射せず、周辺画像がほとんど認識されない。
【0052】
このようにスクリーン2は、IR入射領域B1の位置やサイズを制御することにより、表示領域Aの位置やサイズを制御可能になっている。すなわち、画素等の区画された領域ごとに透過散乱状態の切替えを制御するためのスイッチング素子をスクリーン2の内部に設けなくとも、スクリーン2の外部から表示領域Aの位置やサイズを制御することが可能になっている。
【0053】
次に、画像Pの表示領域Aと、アドレス光L2のIR入射領域との関係について説明する。下記の表1は、光導電層24のタイプとPDLC25のタイプとの組合せごとに、アドレス光L2のIR入射領域と画像Pの表示領域Aとの関係を示す表である。表1において、電源オフは透明電極22、23の間に電圧が印加されていない状態、電源オンは透明電極22、23の間に電圧が印加されている状態を示す。また、IR非入射はアドレス光L2が入射していない状態、IR入射はアドレス光L2が入射している状態を示す。
【0054】
【表1】

【0055】
組合せ1は、上述した構成であり、光導電層24が低抵抗化型、PDLC25がリバース型である。組合せ1では、表示領域Aにアドレス光L2を投射すれば、表示領域Aが散乱状態に切替えられて表示領域Aに画像Pが表示され、非表示領域が透明に保持される。
【0056】
組合せ2は、光導電層が低抵抗化型、PDLCがノーマル型である。組合せ2のPDLCは、電源オフ時に散乱状態、電源オン時のアドレス光の非入射時に散乱状態である。組合せ2では、非表示領域にアドレス光L2を投射すれば、非表示領域が透明に変化するとともに、表示領域Aが散乱状態に保持されて表示領域Aに画像Pが表示される。
【0057】
組合せ3は、光導電層が高抵抗化型、PDLCがリバース型である。組合せ3のPDLCは、電源オフ時に透過状態、電源オン時のアドレス光の非入射時に散乱状態である。組合せ3では、非表示領域にアドレス光L2を投射すれば、非表示領域が透明に変化するとともに、表示領域Aが散乱状態に保持されて表示領域Aに画像Pが表示される。
【0058】
組合せ4は、光導電層が高抵抗化型、PDLCがノーマル型である。組合せ2のPDLCは、電源オフ時に散乱状態、電源オン時のアドレス光の非入射時に透過状態である。組合せ4では、表示領域Aにアドレス光L2を投射すれば、表示領域Aが散乱状態に切替えられて表示領域Aに画像Pが表示され、非表示領域が透明に保持される。
【0059】
このように組合せ1〜4のいずれを採用する場合でも、PDLCのタイプと高分子分散型液晶層のタイプとの組合せに応じてアドレス光L2のIR入射領域を設定することにより、表示領域Aに画像Pを表示しつつ、表示領域Aの除いたスクリーン2を透明にすることができる。
【0060】
リバース型のPDLCを採用すれば、電源オフ時にスクリーン2が透明になるので、電力消費を抑えつつスクリーン2が視界の妨げになることを回避可能である。
ノーマル型のPDLCを採用すれば、電源オフ時にスクリーン2が散乱状態になり、電力消費を抑えつつ通常のスクリーンとして使用することが可能である。
【0061】
組合せ1または組合せ4を選択すれば、電源オン時に画像を表示しない状態でもスクリーンが透明になるので、スクリーンが視界の妨げになりにくい。なお、組合せ2または組合せ4を採用する場合に、電源オン時に画像を表示しない状態でスクリーンを透明にするには、スクリーン全体に対してアドレス光を投射しておけばよい。
【0062】
第1実施形態の表示システム1にあっては、スクリーン2の外部からアドレス光L2を投射することにより、スクリーン2において散乱状態になる領域の位置やサイズを制御することができる。したがって、散乱状態になる領域を制御するためにスイッチング素子等をスクリーン2の内部に設ける必要がなくなり、スイッチング素子等による光の反射や吸収、散乱をなくすことができるので、スクリーン2の透明性を高めることができる。よって、スクリーン2自体を認識させずに画像Pを表示することができ、多彩な空間演出が可能になる。例えば、コンテンツがあたかもスクリーン2と同じ空間に存在しているように、臨場感溢れる画像でコンテンツを示すことができる。
【0063】
スクリーン2において、PDLC25よりもアドレス光L2の入射側に光導電層24が配置されているので、光導電層24に入射するアドレス光L2がPDLC25の散乱効果を受けにくくなる。したがって、光導電層24においてアドレス光L2が入射する領域を高精度に制御することができ、散乱状態になる領域を表示領域Aと高精度に対応させることができる。
【0064】
画像投射系31をスクリーン2に対して観察者Mの反対側に配置しているので、反射散乱光により画像を表示する場合と比較して、高コントラストの画像を表示することが容易になる。また、表示すべき部分画像を除いた入力画像に対応する画像光が、観察者に認識されにくくなるので、入力画像において所望の領域のみを選択的に表示することが容易になる。
【0065】
このような表示システム1によりテレプレゼンシステムを構築すれば、格段に臨場感が得られるので、テレビ会議や無人受付等において円滑なコミュニケーションを図ることが可能になる。また、表示システム1をデジタルサイネージやウインドウディスプレイ等に適用することもできる。例えば、観察者から見てスクリーン2の背後に展示品を配置するとともにスクリーン2に展示品情報等を表示させることに、展示品情報を効果的に表示することができる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、図5(a)、(b)を参照しつつ第2実施形態の表示システムについて説明する。
図5(a)は、第2実施形態の表示システム1Bの概略構成を示す模式図、図5(b)は、スクリーン2Bの構成を示す断面拡大図である。表示システム1Bが第1実施形態と異なる点は、画像投射系31Bが不可視光投射系32と独立した装置として構成されている点である。
【0067】
画像投射系31Bは、信号源9から供給される画像データD2に基づいて、画像光L1をスクリーン2Bに投射する。画像投射系31Bは、例えば投写型もしくは走査型のプロジェクターにより構成される。画像投射系31Bを通常のプロジェクターにより構成することも可能である。
【0068】
不可視光投射系32は、信号源9から供給される範囲データD1に基づいて、アドレス光L2をスクリーン2Bに投射する。不可視光投射系32は、スクリーン2Bに対して画像投射系31Bと反対側に配置されている。不可視光投射系32は、例えば投写型もしくは走査型のプロジェクターにより構成される。
【0069】
図5(b)に示すようにスクリーン2Bは、PDLC25に対してアドレス光L2の入射側に光導電層24が配置されている。本実施形態の不可視光投射系32は、スクリーン2Bに対する相対位置が固定されており、スクリーン2Bとスクリーンシステムを構成している。これにより、スクリーン2Bにおけるアドレス光L2のIR入射領域の位置やサイズを高精度に制御することが容易になっている。
【0070】
ここでは、スクリーン2Bに対して不可視光投射系32の配置側が表示側になっている。不可視光投射系31は、第1実施形態と同様に、スクリーン2Bに対して画像投射系31B側に配置されていてもよい。また、スクリーン2Bに対して画像投射系31Bの配置側が表示側になっていてもよい。
【0071】
以上のような構成の表示システム1Bにより画像を表示するには、例えば画像光L1がスクリーン2Bに入射する位置を調整した状態で、画像投射系31Bから画像光L1を投射させる。すると、第1実施形態と同様に表示領域Aに画像が表示され、非表示領域が透明になる。このように第2実施形態では、例えば通常の構成のプロジェクターによって通常と同様の方法により画像光を投射させても、臨場感溢れる画像が表示されるようになっている。
【0072】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の表示システムを説明する。第3実施形態が第1、第2実施形態と異なる点は、光導電層に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収する光吸収層をスクリーンが有している点である。
【0073】
図6(a)は、第3実施形態の表示システムにおけるスクリーン2Cの構成を示す断面拡大図、図6(b)は光導電層および光吸収層の光吸収スペクトルを示すグラフである。図6(b)に示すグラフの横軸は波長を示し、縦軸は透過率を示している。
【0074】
図6(a)に示すようにスクリーン2Cは、光吸収層27を有している。光吸収層27は、透明基板21における透明電極23の反対側の表面に形成されている。光吸収層27は、例えばカラーフィルター等により構成される。
【0075】
第1実施形態で説明したように、光導電層24は近赤外領域に吸収波長帯のピークを有している。光導電層24の吸収波長帯は、可視光の波長帯(比視感度を考慮して、概ね、400nm以上700nm以下)の一部に及んでいる。光導電層24において、入射光の波長に対する透過率は、可視光の波長帯の長波長側で短波長側よりも相対的に低くなっている。光吸収層27の透過率は、可視光の波長帯の長波長側で短波長側よりも相対的に高くなっている。ここでは、可視光の波長帯の任意の波長における、光導電層24の透過率と光吸収層27の透過率との積が、可視光の波長帯で略均一になるように、光吸収層27の材質が選択されている。
【0076】
以上のような構成の表示システムにおいて、スクリーン2Cに入射した光は、その一部が光導電層24に吸収される。光導電層24に吸収される色光の光量は、長波長側(例えば赤色光)が短波長側(例えば青色光)よりも多い。光導電層24を通った光は、光吸収層27に入射してその一部が吸収される。光吸収層27に吸収される色光の光量は、短波長側(例えば青色光)が長波長側(例えば赤色光)よりも多い。したがって、光導電層24に色光が吸収されることによるカラーバランスの変化が、光吸収層27に色光が吸収されることによるカラーバランスの変化と相殺され、スクリーン2Cを通る光のスクリーン2C内でのカラーバランスの変化が格段に低減される。
【0077】
例えば、スクリーン2Cに入射した光は、赤色光が選択的に光導電層24に吸収されて青みが増加した後、赤色光に対して滅法混色の補色になる青色光が光吸収層27に吸収されて青みが減少する。このように、スクリーン2Cを通った光は、スクリーン2Cに入射する前と同様のカラーバランスになり、スクリーン2Cを通る光の色づきが防止される。非表示領域に入射した外光の色づきが防止されるので、スクリーン2Cの無彩色性を高めることができる。表示領域に入射した画像光L1の色づきが防止されるので、画像の品質低下が防止される。
【0078】
なお、光吸収層27は、透明基板20、21の間に配置されていてもよいし、透明基板20に対して透明電極22と反対側に配置されていてもよい。光吸収層27の特性については、光導電層24を含んだ複数の層の全体としての光吸収スペクトルに基づいて設定してもよい。例えば、光吸収層27を除いたスクリーン2Cに吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収するように、光吸収層27の光吸収スペクトルを設定してもよい。これにより、スクリーン2Cの全体としての無彩色性を高めることができる。
【0079】
[第4実施形態]
次に、図7を参照しつつ第4実施形態の表示システムを説明する。図7は、第4実施形態の表示システムにおけるスクリーン2Dの構成を示す断面拡大図である。図7に示すように、スクリーン2DにおいてPDLC25Dの液晶部252Dには、液晶分子253とともに二色性色素254が分散されている。
【0080】
二色性色素254は、光導電層24にアドレス光L2が入射していないIR非入射領域B2で、長軸方向がスクリーン2Dの厚み方向になるように配向している。アドレス光L2が入射したIR入射領域B1(表示領域A)では、PDLC25Dに液晶分子25の方位角を変化させる電界Eが印加される。すると、二色性色素254の短軸方向がスクリーン2Dの厚み方向になるように、二色性色素254の方位角が変化する。これにより、スクリーン2Dの表面に対する二色性色素254の投影面積が増加し、スクリーン2Dの表面に入射する光のうちで二色性色素254に吸収される光量が増加する。スクリーン2Dに入射する光は、画像投射系からの画像光L1や室内灯等からの外光L5であり、画像光L1の一部および外光L5が二色性色素254に吸収される。画像投射系から射出される画像光L1の強度は外光L5の強度よりも格段に強いので、二色性色素254に外光L5が吸収されることにより外光散乱によるコントラスト比の低下が格段に抑制される。
【0081】
以上のような構成の第4実施形態の表示システムにあっては、外光散乱によるコントラスト比の低下が格段に抑制されるので、高品質な画像を表示することができる。二色性色素254としては、黒色のものを採用してもよいが、光導電層24に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収するものを採用してもよい。これにより、第3実施形態で説明したのと同様の理由により、光導電層24が特定の波長帯の色光を選択的に吸収することによるスクリーンの色づきを回避することができる。
【0082】
[第5実施形態]
次に、図8、図9(a)〜(c)を参照しつつ第6実施形態の表示システム1Eを説明する。図8は、第5実施形態の表示システム1Eの概略構成を示す模式図、図9(a)〜(c)は画像処理部の特性を示す説明図である。表示システム1Eは、スクリーン2、および本発明を適用したプロジェクター3Eを含んでいる。スクリーン2としては、本発明を適用したスクリーンのいずれを採用してもよい。
【0083】
プロジェクター3Eが、第1実施形態で説明したプロジェクター3と異なる点は、画像補正部33を含んでいる点である。本実施形態の画像補正部33は、データ供給部30から画像データD1を受け取って補正した後に、補正画像データD3を第1光変調素子312に出力する。画像補正部33は、スクリーン2の光吸収スペクトルに基づいて、スクリーン2での色相変化を打ち消すように画像データD1を補正する。第1光変調素子311は、第1光源装置311から射出された可視光を補正画像データD3に基づいて変調して画像光L1を形成する。画像光L1は、投射光学系313によりスクリーン2Bに投射される。
【0084】
図9(a)は、入射光の波長に対するスクリーン2の透過率を示すグラフ、図9(b)は画像補正部におけるゲインの波長特性を示すグラフ、図9(c)は、元画像と表示画像の光量比を示すグラフである。
【0085】
第3実施形態で説明したように、光導電層24の吸収波長帯は、可視光の波長帯の一部に及んでいる。図9(a)に示すようにスクリーン2の透過率は、主として光導電層24の吸収波長帯に起因して、可視光の波長帯の長波長側で短波長側よりも相対的に低くなっている。
【0086】
画像補正部33は、スクリーン2の光吸収スペクトルに基づいてゲインの波長特性が設定されている。図9(b)に示すように画像補正部33は、スクリーン2の透過率が相対的に低くなる波長でゲインが相対的に高くなり、スクリーン2の透過率が略一定になる波長帯でゲインが略一定になっている。すなわち、画像補正部33は、スクリーン2に入射する前の画像光L1に含まれる色光のうちでスクリーン2に相対的に吸収されやすい色光に対して、第1変調素子311から射出される色光の光量が画像データD1に規定された光量よりも多くなるように、画像データD1を補正する。
【0087】
スクリーン2に入射する画像光L1は、スクリーン2に相対的に吸収されやすい色光の光量が補正前の元画像と比較して増加しており、この増分がスクリーン2に吸収される。このようにしてスクリーン2での色相変化が相殺され、図9(c)に示すように、元画像の光量と表示画像の光量との比が可視光の波長帯で略均一になる。
【0088】
以上のような構成の第5実施形態の表示システム1Fにあっては、元画像のカラーバランスが忠実に再現された画像を表示することができ、スクリーン2の光吸収による画像の品質低下が防止される。なお、画像補正部33は、可視光を画像光に変調する素子に供給される画像データを補正するものであれば、その接続関係について適宜変更可能である。例えば、画像補正部が、信号源9から入力画像データを受け取り、補正画像データを画像抽出部に出力する構成にしてもよい。画像抽出部を設けない場合には、画像補正部が、信号源9から入力画像データを受け取り、補正画像データを第1光変調素子に出力する構成にしてもよい。
【0089】
[第6実施形態]
次に、図10を参照しつつ第6実施形態の表示システム1Fを説明する。図10は、第6実施形態の表示システム1Fの概略構成を示す模式図である。表示システム1Fは、スクリーン2、画像投射系31F、不可視光投射系32Fおよび合成素子34を含んでいる。スクリーン2としては、本発明を適用したスクリーンのいずれを採用してもよい。
【0090】
本実施形態の画像投射系31Fおよび不可視光投射系32Fは、互いに独立したプロジェクターにより構成されている。画像投射系31Fは、信号源9から供給される画像データD1に基づいて、画像光L1を射出する。不可視光投射系32Fは、信号源9から供給される範囲データD2に基づいて、アドレス光L2を射出する。画像光L1およびアドレス光L2は、合成素子34に入射する。
【0091】
本実施形態の合成素子34は、可視光を透過させるとともに不可視光を反射させる特性のものであり、例えばハーフミラーにより構成される。合成素子34に入射した画像光L1は、合成素子34を透過してスクリーン2に入射する。合成素子34に入射したアドレス光は、合成素子34で反射して光軸が折れ曲がり、合成素子34を透過した画像光L1と光軸が略同じになる。合成素子34で反射したアドレス光L2は、画像光L1とともにスクリーン2に入射する。
【0092】
以上のような構成の表示システム1Fにあっては、画像光L1の光軸とアドレス光L2の光軸を合成素子34により略一致させるので、スクリーン2においてアドレス光L2が入射する領域を画像光L1が入射する領域と高精度に対応させることができる。これにより、スクリーン2において散乱状態にする領域を、画像Pを表示すべき領域を高精度に対応させることができる。
【0093】
[第7実施形態]
次に、図11を参照しつつ第7実施形態の表示システム1Gを説明する。図11は、第7実施形態の表示システム1Gの概略構成を示す模式図である。表示システム1Gは、スクリーン2およびプロジェクター3Gを含んでいる。スクリーン2としては、本発明を適用したスクリーンのいずれを採用してもよい。プロジェクター3Gは、画像投射系31G、不可視光投射系32Gおよび合成素子34を含んでいる。
【0094】
画像投射系31は、第1光源装置311r、311g、311b、第1光変調素子312r、312g、312bおよび色合成素子314を含んでいる。画像投射系31Gには、信号源から画像データが供給される。画像データは、赤色用データ、緑色用データおよび青色用データを含んでいる。
【0095】
第1光源装置311rは赤色光Lrを射出し、第1光変調素子311rは赤色用データに基づいて赤色光Lrを変調する。第1光源装置311gは緑色光Lgを射出し、第1光変調素子311gは緑色用データに基づいて緑色光Lgを変調する。第1光源装置311bは青色光Lbを射出し、第1光変調素子311bは青色用データに基づいて青色光Lbを変調する。
【0096】
変調された赤色光Lr、緑色光Lgおよび青色光Lbは、色合成素子314に入射して合成され、合成された光はフルカラー画像に対応する画像光L1になる。色合成素子は、例えばダイクロイックプリズムにより構成される。
【0097】
不可視光投射系32Gは、第2光源装置321および第2光変調素子322を含んでいる。不可視光投射系32Gには、信号源から範囲データが供給される。第2光源装置321は赤外光IRを射出し、第2光変調素子322は範囲データに基づいて赤外光IRを二階調に変調してアドレス光L2を形成する。
【0098】
画像光L1およびアドレス光L2は、合成素子34に入射する。合成素子34は、可視光を透過させるとともに赤外光を反射させる特性を有している。合成素子34は、例えばダイクロイックミラーにより構成される。合成素子34に入射した画像光L1は、合成素子34を透過して投射光学系313によりスクリーン2に投射される。合成素子34に入射したアドレス光L2は、合成素子34で反射して光軸が折れ曲がり、合成素子34を透過した画像光L1と光軸が略同じになる。合成素子34で反射したアドレス光L2は、画像光L1とともに投射光学系313に入射し、スクリーン2に投射される。
【0099】
以上のような構成の表示システム1Gにあっては、画像光L1の光軸とアドレス光L2の光軸を合成素子34により略一致させるので、スクリーン2において画像Pを表示すべき領域を、散乱状態にする領域と高精度に対応させることができる。アドレス光L2を画像光L1と共通の投射光学系313により投射するので、アドレス光L2を画像光L1と独立した投射光学系により投射する構成と比較して、装置構成をシンプルにすることができる。また、2つの投射光学系でズームやフォーカスを互いに調整する必要がなくなり、スクリーン2において散乱状態にする領域を、画像Pを表示すべき領域を高精度に対応させることが容易になる。
【0100】
[第8実施形態]
次に、図12、図13(a)、(b)を参照しつつ第8実施形態の表示システム1Hを説明する。図12は、第8実施形態の表示システム1Hの概略構成を示す模式図、図13(a)はカラーホイール32Hの構成を示す模式図、図13(b)はカラーホイールの変形例を示す模式図である。
【0101】
図12に示すように表示システム1Hは、スクリーン2およびプロジェクター3Hを含んでいる。スクリーン2としては、本発明を適用したスクリーンのいずれを採用してもよい。プロジェクター3Hは、光源装置31H、カラーホイール32H、照度均一化素子33H、光変調素子34Hおよび投射光学系35Hを含んでいる。
【0102】
光源装置31Hは、可視光および赤外光を含んだ光L6を射出する。光L6は、カラーホイール32Hに入射する。図13(a)に示すようにカラーホイール32Hは、略円板状のものであり、複数の扇状部に分割されている。複数の扇状部の各々は、所定の波長帯の色光を透過させるカラーフィルターになっている。
【0103】
詳しくは、カラーホイール32Hの周方向に、赤外光が透過するカラーフィルター32a、赤色光が透過するカラーフィルター32b、緑色光が透過するカラーフィルター32cおよび青色光が透過するカラーフィルター32dがこの順に並んでいる。ここでは、これら4種類のカラーフィルターが、カラーホイール32Hの略180度の範囲に配置されており、残りの180度の範囲に4種類のカラーフィルターが再度配置されている。
【0104】
カラーホイール32Hは、平面視した円の中心を軸として回転可能に保持されている。カラーホイール32Hの回転に伴って、光L6の入射する位置におけるカラーフィルターが切替わるようになっている。カラーホイール32Hから射出された光L7は、赤外光、赤色光、緑色光および青色光が、この順に時間順次で切替わる。光L7は、ロッドレンズ等により構成される照度均一化素子34Hに入射して照度分布が均一化された後、光変調素子34Hに入射する。
【0105】
光変調素子34Hは、デジタルミラーデバイスにより構成されている。光変調素子34Hには、信号源9から画像データD1および範囲データD2が供給される。画像データD1は、画像データは、赤色用データ、緑色用データおよび青色用データを含んでいる。光変調素子34Hは、光L7として赤外光が入射する期間に、範囲データD4に基づいて光L7を変調してアドレス光L7を形成する。光変調素子34Hは、光L7として赤色光が入射する期間に赤色用データに基づいて赤色画像光を形成する。光変調素子34Hは、緑色光が入射する期間に緑色用データに基づいて緑色画像光を形成し、青色光が入射する期間に青色用データに基づいて青色画像光を形成する。すなわち、光変調素子34Hは、アドレス光L2、および画像光L1としての赤色画像光と緑色画像光と青色画像光とを時間順次で射出する。
【0106】
光変調素子34Hから射出された画像光L1およびアドレス光L2は、投射光学系35Hによりスクリーン2に投射される。スクリーン2においてアドレス光L2が入射した領域は散乱状態となり、スクリーン2が散乱状態になっている期間に赤色画像、緑色画像および青色画像が時間順次で表示される。赤色画像、緑色画像および青色画像は、観察者Mに区別されない速度で切替えられる。赤色画像、緑色画像および青色画像が時間的に平均化されて観察されることにより、フルカラーの画像が表示される。
【0107】
以上のような構成の表示システム1Hにあっては、画像光L1とアドレス光L2とが同じ光源に由来しているので、画像光L1の光軸がアドレス光L2の光軸と略一致する。したがって、スクリーン2において散乱状態にする領域を、画像Pを表示すべき領域を高精度に対応させることができる。画像投射系と不可視光投射系とで、光源装置31H、光変調素子34Hおよび投射光学系35Hを共通化することができ、装置構成をシンプルにすることができる。
【0108】
このような構成の表示システム1Hおいて、スクリーン2が赤外光の入射により散乱状態となる期間が、赤色画像、緑色画像および青色画像を表示する期間に対して不足する場合がありえる。これは、光導電層のインピーダンスが低下する期間は、光導電層の材質により限界があるためである。このような場合には、図13(b)に示すような、変形例のカラーホイール32Jを採用するとよい。
【0109】
カラーホイール32Jでは、可視光に対応するカラーフィルターと不可視光に対応するカラーフィルターとが交互に配置されている。詳しくは、カラーホイール32Jの周方向に、赤外光用のカラーフィルター32a、赤色光用のカラーフィルター32bおよび赤外光用のカラーフィルター32aがこの順に並んでおり、以下同様に、緑色光用、赤外光用、青色光用、赤外光用のカラーフィルターがこの順に並んでいる。このようにすれば、可視光の少なくとも1つの色光により画像を表示する期間だけ散乱状態が保持されればよいので、画像が表示される期間にスクリーン2を散乱状態に保持することが容易になる。
【0110】
[第9実施形態]
次に、図14を参照しつつ、第9実施形態に係るスクリーンを説明する。図14は、第9実施形態に係るスクリーン2Kの概略構成を示す模式図である。スクリーン2Kが、第1実施形態のスクリーン2(図4参照)と異なる点は、波長選択膜28が設けられている点である。
【0111】
波長選択膜28は、不可視光投射系から光導電層24を経て射出された不可視光が入射する位置に配置されている。ここでは、PDLC25に対して光導電層24が、不可視光投射系からの不可視光の入射側になっており、波長選択膜28は、光導電層24とPDLCとの間に配置されている。
【0112】
波長選択膜28は、可視光投射系から射出された可視光を透過させるとともに、不可視光投射系から射出された不可視光を反射させる波長選択性を有している。波長選択膜28は、不可視光の反射率が高いものほどよく、また可視光の透過率が高いものほどよい。
【0113】
波長選択膜28は、互いに屈折率が異なる2種類以上の膜が周期的に積層されてなる多層膜、または単層膜により構成される。波長選択膜28を単層膜により構成する場合には、波長選択膜28の一方の面に当接する膜(ここでは光導電層24)に対する波長選択膜28の屈折率、および波長選択膜28の他方の面に当接する膜(ここではPDLC25)に対する波長選択膜28の屈折率に基づいて、波長選択膜28の膜厚を調整すればよい。
【0114】
不可視光投射系からスクリーン2Kに入射するアドレス光L2は、光導電層24を通った後に波長選択膜28で反射して光導電層24に再度入射する。IR入射領域B1における光導電層24は、不可視光投射系から1次的に入射するアドレス光L2および波長選択膜28で反射して2次的に入射するアドレス光L2により、インピーダンスが変化する。
【0115】
可視光投射系からスクリーン2Kに入射する画像光L1は、IR入射領域B1において、波長選択膜28を透過した後にPDLC25にて散乱されて散乱光L3になる。散乱光L3が観察者に視認されることにより、画像が表示される。
【0116】
波長選択膜28に対して光導電層24と反対側から入射した外光は、以下のように進行する。外光に含まれる不可視光L6は、PDLC25を通って、少なくともその一部が波長選択膜28で反射する。外光由来の不可視光L6は、波長選択膜28で反射した分だけ、光導電膜24に入射する光量が減少する。したがって、不可視光投射系からアドレス光L2を入射させないIR非入射領域B2において、外光由来の不可視光L6により光導電膜24のインピーダンスが変化することが回避される。外光に含まれる可視光L7は、PDLC25を通って、そのほとんどが波長選択膜28を透過してスクリーン2Kの透明基板20側から射出される
【0117】
以上のような構成のスクリーン2Kにあっては、不可視光投射系から射出されたアドレス光L2の光量あたりの光導電層24のインピーダンス変化量を増加させることができ、不可視光投射系の出力を下げることができる。したがって、不可視光投射系24の消費電力を下げることが可能になり、結果的に表示システムの消費電力を下げることができる。
【0118】
波長選択膜28に対して光導電層24と反対側からスクリーン2Kに入射した外光由来の不可視光L6が光導電層24に到達しにくくなる。したがって、不可視光L6が入射した領域(例えばIR非入射領域B2)において、スクリーン2Kが所望の透過状態あるいは散乱状態にならなくなることが回避され、透過状態あるいは散乱状態にする領域を高精度に制御することができる。
【0119】
PDLC25と光導電層24との間に波長選択膜28が配置されているので、アドレス光L2がPDLCに入射しにくくなる。これにより、アドレス光L2がPDLC25で散乱された後に光導電層24に入射することが回避され、透過状態あるいは散乱状態にする領域を高精度に制御することができる。
【0120】
なお、本発明の技術範囲は前記実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。例えば、スクリーンとしては、高分子分散型液晶層に代えて、動的散乱モードで駆動される液晶層を用いたものでもよい。この液晶層は、例えばホメオトロピック配向(垂直配向)のものである。液晶層に閾値以上の電圧を印加すると、液晶分子に対して電流による配向効果が電界による配向効果よりも大きくなり、流体力学的な不安定現象が生じる。この不安定現象は、カー・ヘルフリッヒ効果と呼ばれている。この効果により、液晶層中に乱流を生じて、液晶層が動的散乱状態(Dynamic Scattering)になる。アドレス光が入射した入射領域にて液晶層が動的散乱状態になるように、一対の透明電極の間に印加される電圧や、光導電層の厚み、光導電層の電気特性を設定するとよい。アドレス光の入射領域で液晶層が動的散乱状態になることにより、入射領域が透過状態から散乱状態に切替えられる。
【0121】
光導電層が、高分子分散型液晶層に対して不可視光の射出側、例えば図3(a)に示した透明電極23と高分子分散型液晶層25との間に配置されていてもよい。また、光導電層が、高分子分散型液晶層25を挟む両側に配置されていてもよい。光導電層において、アドレス光の入射によりインピーダンスが変化する領域は、実際にアドレス光が入射した領域よりも外側に広がることがありえる。非表示領域を高精度な位置精度で透明にするには、インピーダンスが変化する領域の広がりを考慮して、IR入射領域を設定するとよい。例えば、表示領域にアドレス光を投射する場合には、インピーダンスが低下する領域が表示領域の外側に広がるので、この広がり分だけアドレス光を投射する領域を表示領域よりも狭く設定するとよい。
【0122】
画像投射系は、スクリーンに対して観察者と反対側に配置されていてもよいし、観察者側に配置されていてもよい。スクリーンに対して観察者側に画像投射系が配置されている場合には、スクリーンで反射散乱された画像光により画像が表示される。
【0123】
入力画像データD0に対して各種エッジ検出処理を施して、検出されたエッジを範囲データD2として取得するようにしてもよい。エッジ検出処理としては、例えば画像Pとして表示する表示対象物を含んだ入力画像と、表示対象物を含まない入力画像との差分から表示対象物のエッジを検出する処理や、顔認証システムに用いられるパターン識別処理等が挙げられる。
【0124】
信号源9等にて元画像から抽出された部分画像が、入力画像としてプロジェクターに供給されるようになっていてもよい。この場合には、画像抽出部302を省くこともできる。また、全体画像を示すデータが画像投射系に入力される構成になっていてもよく、この構成でもスクリーン自体が認識されにくくなる効果は得られる。また、全体画像において部分画像を除いた領域に対応する画像光は、ほとんど散乱されずにスクリーンを通りパターンとして認識されにくい。特に、スクリーン2を通した視角範囲の外側に画像投射系を配置すると、全体画像において部分画像を除いた領域の画像光が観察者の眼球に入射しにくくなり、部分画像を除いた領域を認識させなくすることができる。
【符号の説明】
【0125】
1、1B〜1H・・・表示システム、2、2B〜2D・・・スクリーン、
3、3E、3G、3H・・・プロジェクター、9・・・信号源、
20、21・・・透明基板、22、23・・・透明電極、24・・・光導電層、
25、25D・・・高分子分散型液晶、26・・・電源、27・・・光吸収層、
28・・・波長選択膜、30・・・データ供給部、31・・・画像投射系、
32・・・不可視光投射系、33・・・画像補正部、34・・・合成素子、
251・・・高分子部、252、252D・・・液晶部、253・・・液晶分子、
254・・・二色性色素、301・・・表示範囲設定部、302・・・画像抽出部、
311・・・第1光源装置、312・・・第1光変調素子、
313・・・第1投射光学系、321・・・第2光源装置、
322・・・第2光変調素子、323・・・第2投射光学系、
A・・・表示領域、B1・・・IR入射領域、B2・・・IR非入射領域、
BG・・・背景、C1、C2・・・キャパシタンス成分、D0・・・入力画像データ、
D1・・・画像データ、D2・・・範囲データ、E・・・電界、L1・・・画像光、
L2・・・アドレス光、L3・・・散乱光、L4・・・可視光、L5・・・外光、
L6・・外光由来の不可視光、L7・・・外光由来の可視光、M・・・観察者、
P・・・画像、R1・・・可変抵抗成分、R2・・・抵抗成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わるスクリーンと、
前記スクリーンに前記可視光による画像を投射する画像投射系と、
前記スクリーンにおいて前記画像のうちの所望の部分が投射される領域が前記散乱状態になるように、前記スクリーンに不可視光を投射する不可視光投射系と、
を備えていることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記スクリーンは、
一対の透明電極と、
前記一対の透明電極の間に配置された高分子分散型液晶層と、
前記一対の透明電極の少なくとも一方の電極と前記高分子分散型液晶層との間に配置されて前記不可視光の入射によりインピーダンスが変化する光導電層と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記スクリーンは、前記不可視光投射系から前記光導電層を経て射出された前記不可視光が入射する位置に設けられて該不可視光を反射させるとともに前記可視光を透過させる波長選択膜を有していることを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記スクリーンは、前記光導電層に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収する光吸収層を有していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記高分子分散型液晶は、電界非印加状態で前記透過状態になることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記高分子分散型液晶層に二色性色素が分散されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記二色性色素は、前記光導電層に吸収される色光に対して滅法混色の補色になる補色光を吸収することを特徴とする請求項6に記載の表示システム。
【請求項8】
前記スクリーンに入射前の前記可視光と該スクリーンから射出後の前記可視光との色相変化を打ち消すように、前記画像投射系に供給される画像データを補正する画像補正部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項9】
入力画像のうちで表示すべき範囲を示す範囲データを前記不可視光投射系に供給するとともに、前記入力画像の前記範囲に含まれる画像データを前記画像投射系に供給する、データ供給部を備え、
前記画像投射系が前記画像データに基づいて前記画像を投射し、前記不可視光投射系が前記範囲データに基づいて前記不可視光を投射することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項10】
前記画像投射系により投射される光を前記不可視光投射系により投射される光と合成する合成素子を備えていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項11】
前記画像投射系は、前記可視光を射出する第1光源系および該第1光源系から射出された光を変調する第1光変調素子を有し、
前記不可視光投射系は、前記不可視光を射出する第2光源系および該第2光源系から射出された光を変調する第2光変調素子を有しており、
前記色合成素子は、前記第1光変調素子により変調された光および前記第2光変調素子により変調された光を合成し、
前記合成素子により合成された光を投射する投射光学系を備えていることを特徴とする請求項10に記載の表示システム。
【請求項12】
不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わることを特徴とするスクリーン。
【請求項13】
不可視光が入射した領域において、可視光を散乱させる散乱状態と可視光を透過させる透過状態とが切替わるスクリーンに画像を表示するプロジェクターであって、
前記スクリーンに可視光による画像を投射する画像投射系と、
前記スクリーンにおいて前記画像のうちの所望の部分が投射される領域が前記散乱状態になるように、前記スクリーンに不可視光を投射する不可視光投射系と、
を備えていることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−81245(P2011−81245A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234286(P2009−234286)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】