説明

表示板及びその製造方法

【課題】様々なデザイン・成形加工に対応可能な表示板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂基板15と、その上の少なくとも一部にインクジェット印刷により形成された印刷層2とを有する表示板1及びその製造方法である。印刷層2は、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物21、22、23、25からなる。印刷層2は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの硬化物21、22、23、25を有している。表示板の作製にあたっては、インクジェット印刷により、樹脂基板15上の少なくとも一部に、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つ以上のUV硬化性インクを噴射し、UVを照射して該UV硬化性インクを硬化させて硬化物21、22、23、25を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に装備される計器等の表示装置に用いられる表示板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車等の車両には、運転席の正面部分に計器等の表示装置が配設されている。一般に、車両用表示装置(自動車メータ計器盤)は、目盛りや文字等からなる意匠部(印刷層)を有する表示板、及びこの表示板の裏面側に配設された光源等から構成されている(特許文献1参照)。表示板においては、意匠部の目盛りや文字を除く部分は光が透過しない不透過部として構成され、目盛りや文字の部分は光が透過する透過部として構成される。このような構成により、夜間等に光源にて表示板を照明することで、表示板の文字、目盛り等の透過部を明るく表示させることができる。また、車両用表示装置等に用いられる表示板においては、高級感、視認性、質感等が求められ、上記表示板を真空成形、圧空成形、インサート成形等により加熱成形し、立体的な形状を有する表示板が用いられるようになってきた。
【0003】
上記表示板は、通常、ポリカーボネート等の樹脂製透明基板の表面に不透過部(ベタ隠蔽画像部)をスクリーン印刷によって印刷することで製造される。また、印刷後には、外形を所望の形状にするため、切断加工が施されたり、表示板上に穴等を形成するために、パンチで抜き加工等が行われる。
【0004】
スクリーン印刷とは、印刷データから印刷画像が描かれたスクリーン(版)を制作し、このスクリーンを通して例えば溶剤乾燥型又は加熱硬化型インク等を基板に印刷する方法であり、不透過部の印刷濃度が濃くなるように、一度に印刷することができるという利点がある。しかし、スクリーン印刷は、単色印刷で行われるため、文字等の意匠を形成するためには、色の異なるインキを用いて多層印刷しなければならない。そのため、加工工数や加工時間が増大するという問題がある。また、スクリーン印刷においては、一般に印刷位置の精度や解像度が低いため、形成可能なデザインが制限されてしまうという問題があった。
【0005】
また、乗用車等の車両用の表示板においては、車種、排気量、及びグレード等に応じて多様な意匠部が形成された表示板が要求される。即ち、車両の種類毎に、表示板に形成すべき印刷内容が異なる。スクリーン印刷では、版及びインクの交換、印刷条件の設定等の段取りを表示板の種類毎に行う必要があるため、コストが増大するという問題があった。また、大量印刷手法であるスクリーン印刷においては、試作品や補給品のような少量品を作製するには不向きである。即ち、製版や刷版製作等も付帯するため、コストが増大するという問題があった。
【0006】
これに対し、オンデマンド印刷と称される印刷データから版を製作することなく直接描画が可能な印刷方法が近年めざましい進歩を遂げている。特に、インクジェット法は、電子制御されたヘッドノズルからインクを噴霧することで印刷を行う方法である。この方法は、装置機構が簡素な構成であり、イニシャルコストが低く、画像解像度が高いため、特にOAプリンタ等の分野で急速に普及している。また、看板用途等においては溶剤系のインクを用いた長寿命タイプも開発されている。
【0007】
しかし、インクジェット印刷を表示板の印刷層の形成に採用するには、以下のような問題があった。
即ち、車両等に用いられる上記表示板においては、光透過性と耐熱性を必要とするため、基材はポリカーボネートあるいはポリエチレンテレフタレート等の素材を用いる必要があり、これらにインクジェット印刷を行うと水性インクではインクの液滴が表面ではじかれてしまい、また、溶剤系インクでは乾燥するまでにインクの液滴が凝集してしまったり、基板を溶解させて変形さてしまうおそれがあった。
【0008】
近年、UV硬化性インクを利用したインクジェット印刷が開発され(特許文献2及び3参照)、さらにUV硬化性インクを用いて樹脂基板上に印刷層を形成して表示板を作製する技術が開発されている(特許文献4参照)。
UV硬化性インクを用いたインクジェット印刷においては、一定以上の画質を維持するために、インクジェット印刷装置のヘッドのノズルから噴射されたUV硬化性インクが基板上に着弾した後、数秒以内にUV硬化性インクを硬化させる必要がある。そのため、インクジェット印刷装置においては、ヘッドとUV照射機とを並べて配置し、インクが噴射されて基材に着弾後、即時露光できるシステムが採用されている。一方、UV硬化性インクについても、UV照射により硬化し易く、反応性の高いインクが要求されている。
【0009】
また、上記車両用表示装置等に用いられる上記表示板は、上述のごとく所定の形状の型により成形されたり、打ち抜き加工や切断加工等が施されたりする。そのため、上記UV硬化性インクとしては、延伸性及び密着性に優れたインクを用いることが望まれていた。
延伸性及び密着性が不十分なインクを用いて表示板を作製した場合には、所定の形状の型により成形したり、打ち抜き加工や切断加工等を施したりする際に、印刷層に割れが発生するおそれがあった。
また、上記表示板においては、インク硬化後に、印刷層の表面にべたつきが残存しないインクを用いることが望まれていた。
そのため、上記UV硬化性インクには、ある程度の硬化性も望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現在開発されているUV硬化性インクは、延伸性及び密着性に優れる反面、硬化性が不十分なインクであったり、硬化性に優れる反面、延伸性及び密着性が不十分なインクであった。
延伸性及び密着性と硬化性は、一般に相反する性質であるために、両方の特性を非常に高いレベルで兼ね備えたインクの開発は非常に困難であった。
【0011】
特に、上記表示板を例えば上記車両用表示装置等に用いる場合には、上記表示板はケース内に配置される。このとき、上記表示板をケース内に固定するために、上記表示板の一部をケースに挟み込むことが行われていた。この場合には、上記ケースと上記表示板との嵌合部において、上記表示板が押圧され、押圧部には例えば1MPaという大きな応力がかかる場合がある。よってこの場合には、上記表示板の印刷層に割れ等が発生しないように、硬化性が特に高いUV硬化性インクを用いることが望まれていた。しかし、押圧時の割れを防止する程度にまで硬化性の高いインクを用いると、延伸性・密着性が損なわれてしまう。よってこの場合には、上記表示板の成形・加工が困難になるという問題があった。
【0012】
したがって、UV硬化性インクを用いたインクジェット印刷により、表示板を作製する場合には、表示板の用途、上記押圧部の位置、及び成形・加工等の後工程を予め考慮し、デザインを決定する必要があった。即ち、成形量・加工量を小さくしたり、押圧部に印刷層を設けないデザインにしたりする必要があり、表示板のデザインには限界があった。
【0013】
【特許文献1】特開2001−343260号公報
【特許文献2】特開2003−261799号公報
【特許文献3】特開2006−8998号公報
【特許文献4】特開2006−214906号公報
【0014】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、様々なデザイン・成形加工に対応可能な表示板及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、樹脂基板と、該樹脂基板上の少なくとも一部にインクジェット印刷により形成された印刷層とを有する表示板において、
上記印刷層は、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物からなり、
上記印刷層は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有していることを特徴とする表示板にある(請求項1)。
【0016】
上記第1の発明の表示板において最も注目すべき点は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有する上記印刷層が上記樹脂基板上に形成されている点にある。
即ち、上記表示板において、上記印刷層は、鉛筆硬度の高い上記硬化物と鉛筆硬度の低い上記硬化物を少なくとも有する。そして、上記表示板において、鉛筆硬度の異なる上記硬化物を形成する位置は、上記表示板の作製時に適宜決定することができる。
そのため、上記表示板においては、例えば他部材と接触して押圧がかかる押圧部に鉛筆硬度の高い上記硬化物を形成させたり、例えば成形及び/又は加工等を行う成形部及び/又は加工部に鉛筆硬度の低い上記硬化物を形成させることができる。
【0017】
それ故、上記表示板においては、上記印刷層にほとんど割れを生じさせることなく、所定の形状の型により成形したり、打ち抜き加工や切断加工等を施したりすることが可能になる。また、例えば上記表示板を他部材に押圧させて用いる場合においても、上記表示板の押圧部にかかる応力によって上記印刷層に割れ等が発生することを防止することができる。
【0018】
また、上記UV硬化性インクの上記硬化物の鉛筆硬度は、例えば上記UV硬化性インク中に含まれるUVモノマーの組成を調整すること等により変えることができる。そのため、上記UV硬化性インクの色を変更することなく、同色であっても異色であっても鉛筆硬度を変えることができる。それ故、上記表示板においては、上記鉛筆硬度の異なる上記硬化物は、同色又は異色のいずれでも形成することができ、様々なデザインで上記印刷層を形成することができる。
【0019】
したがって、上記表示板においては、従来のように、成形時及び/又は加工時の成形量及び/又は加工量を小さくしたり、印刷形成する意匠のデザインを変更したりする必要性がほとんどなくなる。
よって、上記第1の発明によれば、様々なデザイン・成形加工に対応可能な表示板を提供することができる。
【0020】
第2の発明は、樹脂基板と、該樹脂基板上の少なくとも一部に、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物からなると共に、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有する印刷層とを有する表示板の製造方法において、
インクジェット印刷により、上記樹脂基板上の少なくとも一部に、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクを噴射し、UVを照射して該UV硬化性インクを硬化させて上記硬化物を形成することを特徴とする表示板の製造方法にある(請求項10)。
【0021】
上記第2の発明においては、インクジェット印刷により、上記樹脂基板上の少なくとも一部に、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つ以上の上記UV硬化性インクを噴射し、UVを照射して該UV硬化性インクを硬化させて上記硬化物を形成する。
そのため、鉛筆硬度の高い上記硬化物と鉛筆硬度の低い上記硬化物を少なくとも有する上記印刷層を上記樹脂基板上に形成することができる。そして、鉛筆硬度の異なる上記硬化物を形成する位置は、上記インクジェット印刷時に適宜決定することができる。
そのため、上記表示板においては、例えば他部材と接触して押圧がかかる押圧部に鉛筆硬度の高い上記硬化物を形成させたり、例えば成形及び/又は加工等を行う成形部及び/又は加工部に鉛筆硬度の低い上記硬化物を形成させることができる。
【0022】
それ故、上記印刷層にほとんど割れを生じさせることなく、所定の形状の型により成形したり、打ち抜き加工や切断加工等を施したりすることが可能な上記表示板を製造することができる。また、例えば上記表示板を他部材に押圧させて用いる場合においても、上記表示板の押圧部にかかる応力によって上記印刷層に割れ等が発生することを防止できる上記表示板を製造することができる。
【0023】
また、上記UV硬化性インクの上記硬化物の鉛筆硬度は、例えば上記UV硬化性インク中に含まれるUVモノマーの組成を調整すること等により変えることができる。そのため、上記UV硬化性インクの色を変更することなく、同色であっても異色であっても、その鉛筆硬度を変えることができる。それ故、上記表示板においては、上記鉛筆硬度の異なる上記硬化物は、同色又は異色のいずれでも形成することができ、様々なデザインで上記印刷層を形成することができる。
【0024】
したがって、上記表示板においては、従来のように、成形時及び/又は加工時の成形量及び/又は加工量を小さくしたり、印刷形成する意匠のデザインを変更したりする必要性がほとんどなくなる。
よって、上記第2の発明によれば、様々なデザイン・成形加工に対応可能な表示板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明において、上記表示板は、樹脂基板と、該樹脂基板上の少なくとも一部にインクジェット印刷により形成された印刷層とを有する。該印刷層は、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物からなる。
上記樹脂基板は透光性を有し、上記印刷層は、可視光を透過する透過部と、可視光を透過しない不透過部とを有することが好ましい。そして、使用者が視認する面(意匠面)とは反対側の裏面から上記表示板に光を照射することにより、上記印刷層における上記透過部を明るく表示させるバックライト式の表示板に用いられることが好ましい。
この場合には、上記表示板における上記印刷層の優れた意匠性を最大限に発揮することができる。そしてこの場合には、上記表示板を、例えば自動車室内の運転席前部のインストルメントパネル等の自動車メータ計器盤用の表示板、又はエアコンの表示板等に好適に用いることができる。
【0026】
バックライト式の表示板に用いた例として、自動車メータ計器盤用の表示板を図1に示す。この表示板(自動車メータ計器盤用表示板)においては、樹脂基板上に形成された目盛りや文字等の印刷層(UV硬化性インクの硬化物)又は非印刷層が透過部を形成し、樹脂基板の裏面側に配置される光源からの光によって透過部の意匠を明るく表示させることができる。また、樹脂基板上の透過部以外の部分には、黒色のUV硬化性インクからなる印刷層(UV硬化性インクの硬化物)が形成されており、この黒色の印刷層が不透過部を形成する。
上記透過部及び上記不透過部は、上記印刷層の色、厚み、印刷密度を調整することにより形成できる。上記透過部は、例えば上記印刷層の厚みを小さくしたり、印刷密度を小さくしたり、また、色の濃度を薄くしたりして形成できる。一方、上記不透過部は、例えば上記印刷層の厚みを大きくしたり、黒色のUV硬化性インクからなる印刷層を積層させたりして形成できる。
【0027】
また、本発明において、上記印刷層は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有している。
上記硬化物の鉛筆硬度は、JIS K 5400(2004年)に規定の方法により測定することができる。
【0028】
好ましくは、上記印刷層は、鉛筆硬度2H以上の上記硬化物と、鉛筆硬度HB以下の上記硬化物を有することがよい。
この場合には、上記表示板は、2H以上という鉛筆硬度の大きな上記硬化物が形成された部位において、優れた硬度を示し、外部からの押圧に対してより優れた耐久性を示すことができる。一方、HB以下という鉛筆硬度の小さな上記硬化物が形成された部位においては、上記表示板は、優れた延伸性を示すことができ、より優れた加工性及び成形性を示すことができる。
さらに好ましくは、上記印刷層は、鉛筆硬度2H以上の上記硬化物と、鉛筆硬度2B以下の上記硬化物を有することがよい。
【0029】
上記樹脂基板としては、ポリカーボネートあるいはポリエチレンテレフタレート等からなる基板を用いることができる。
この場合には、上記樹脂基板に透光性を付与することができるため、上記表示板を上述のバックライト式の表示板に好適に用いることができる。
【0030】
上記第1の発明において、上記印刷層は、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物として、同色で形成された上記硬化物を有していることが好ましい(請求項2)。
また、上記第2の発明において、上記インクジェット印刷においては、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとして、同色のインクを用いることが好ましい(請求項11)。
これらの場合には、上記鉛筆硬度の異なる2つ以上の上記硬化物の境界が外観上ほとんど区別できない上記印刷層を形成することができる。そのため、上記表示板の意匠性をより向上させることができる。
【0031】
上記第1の発明において、上記UV硬化性インクは、上記UVモノマーとして、単官能モノマーと多官能モノマーとを含有し、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記多官能モノマーの含有量が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクで形成されていることが好ましい(請求項3)。
また、上記第2の発明において、上記UV硬化性インクは、上記UVモノマーとして、単官能モノマーと多官能モノマーとを含有し、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとしては、上記多官能モノマーの含有量が異なる少なくとも2つのインクを用いることが好ましい(請求項12)。
これらの場合には、上記鉛筆硬度の異なる上記硬化物を簡単に形成することができる。
【0032】
上記第1の発明及び上記第2の発明において、上記UV硬化性インクは、上記単官能モノマーとして、少なくともフェノキシエチルアクリレートを含有し、該フェノキシエチルアクリレートを主成分とすることが好ましい(請求項6、請求項16)。
この場合には、延伸性及び密着性に優れると共に、硬化後のべたつきが抑制された上記硬化物を形成することができる。
【0033】
また、上記UV硬化性インクは、フェノキシエチルアクリレート(PEA)以外にも他の単官能モノマーを含有することもできる。
上記単官能モノマーとしては、例えば環状構造を有するモノマーを用いることができる。具体的には、例えばシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ペンジルアクリレート、メチルフニノキシエチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N一アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等がある。単官能モノマーとしては、これらから選ばれる1種、又は2種以上のモノマーを用いることができる。
【0034】
さらにこれらの中でもインクジェット適性が高いモノマーとしては、シクロヘキシルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、イソボルニルアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをより好適に用いることができる。
【0035】
またさらに、安全性や塗膜性能という観点から、メチルブェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート(あるいは、そのエチレンオキサイド並び/またはプロピレンオキサイド付加モノマー)、イソボルニルアクリレート、ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェノキシブロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートをより好適に用いることができる。
またさらに、安定性という観点から、2−フェノキシエチルアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドをより好適に用いることができる。
【0036】
また、上記多官能モノマーとしては、下記に示すごとく、環状構造を有するモノマーを用いることができる。
具体的には、例えばビスフェノールAジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ニトキシ化ピスフニノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等がある。多官能モノマーとしては、これらから選ばれる1種、又は2種以上のモノマーを用いることができる。
【0037】
さらにこの中でもインクジェット適性が高いモノマーとして、ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをより好適に用いることができる。
【0038】
上記単官能モノマー及び多官能モノマーとして、上記のような環状構造を有するモノマーを配合すると、上記印刷層(上記硬化物)の樹脂基板に対する密着性を向上させることができる。その原理は定かではないが、環構造部分が面で上記樹脂基板と密着し、ファンデルワールス(VanDerWaars)力の上昇により、密着性が向上すると考えられる。
【0039】
また、上記単官能モノマー及び多官能モノマーとしては、必要に応じて、環状構造を有しないモノマーを使用することもできる。
環状構造を有しない単官能モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β−カルボキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、及びN一ビニルホルムアミド等を用いることができる。単官能モノマーとしては、これらから選ばれる1種、又は2種以上のモノマーを用いることができる。
【0040】
また、環状構造を有しない多官能モノマーとして、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタニリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等を用いることができる。多官能モノマーとしては、これらから選ばれる1種、又は2種以上のモノマーを用いることができる。
【0041】
また、上記環状の有無に関わらず、さらに高い延性を求める場合には、上記多官能モノマーとして2官能モノマーを用いることが好ましい。
また、これちのUVモノマーは、低粘度インキとして仕上げるため、または長時間の印刷画像安定性を確保するために、分子量2000未満であることが好ましく、UVモノマーとして分子量2000以上のモノマーを含まないことが、より好ましい。
【0042】
また、上記UV硬化性インクは、上述のUVモノマーの他に、各色の顔料、重合開始剤、分散剤等を含有することができる。
【0043】
上記第1の発明において、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクと、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインクとによって形成されていることが好ましい(請求項4)。
また、上記第2の発明において、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとしては、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクと、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインクとを用いることが好ましい(請求項13)。
これらの場合には、上記鉛筆硬度が充分に異なる上記硬化物を簡単に形成することができる。
また、上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物は、優れた延伸性・密着性を発揮することができ、かかる硬化物が形成された部位においては、印刷層に割れ等をほとんど発生させることなく、上記表示板の成形・加工を行うことができる。
また、上記高濃度多官能モノマーからなる上記硬化物は、高い硬度を示すことができ、かかる硬化物が形成された位置においては、印刷層に割れ等をほとんど発生させることなく、上記表示板を他部材に押圧させることが可能になる。
【0044】
上記低濃度多官能モノマーインクにおける上記多官能モノマーの含有量が5重量部を越える場合には、優れた延伸性・密着性を発揮できる上記硬化物を形成することができなくなるおそれがある。そのため、成形・加工時に上記印刷層に割れや剥がれ等が発生するおそれがある。より好ましくは、上記低濃度多官能モノマーインクにおける上記多官能モノマーの含有量は3重量部以下がよい。
一方、上記高濃度多官能モノマーインクにおける上記多官能モノマーの含有量が10重量部未満の場合には、硬度が充分に優れた上記硬化物を形成することができなくなるおそれがある。そのため、上記表示板の上記印刷層を他部材に押圧させたときに、割れ等が発生するおそれがある。
【0045】
上記第1の発明において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に他部材を押圧させる押圧部を有し、上記印刷層は、少なくとも上記押圧部に上記高濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を有していることが好ましい(請求項5)。
また、上記第2の発明において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に他部材を押圧させる押圧部を有し、上記インクジェット印刷においては、上記樹脂基板上における少なくとも上記押圧部に、上記高濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を形成することが好ましい(請求項14)。
これらの場合には、上記高濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物の優れた硬度を充分に生かすことができる。即ち、この場合には、上記表示板を上記押圧部において他部材に押圧させて用いても、上記印刷層に割れ等が発生することを防止することができる。
【0046】
上記第1の発明において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に成形及び/又は加工が施される成形部及び/又は加工部を有し、上記印刷層は、少なくとも上記成形部及び/又は上記加工部に上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を有していることが好ましい(請求項6)。
また、上記第2の発明において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に成形及び/又は加工が施される成形部及び/又は加工部を有し、上記インクジェット印刷においては、上記樹脂基板上における少なくとも上記成形部及び/又は上記加工部に、上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を形成することが好ましい(請求項15)。
これらの場合には、上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物の優れた延伸性及び密着性を充分に生かすことができる。即ち、上記表示板を上記成形部及び/又は上記加工部において成形及び/又は加工しても、上記印刷層に割れや剥がれ等が発生することを防止することができる。
【0047】
上記第1の発明において、上記鉛筆強度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記樹脂基板上において、積層状態であるいは略同一平面内に並列状態で形成することができる(請求項8)。
また、上記第2の発明においては、上記インクジェット印刷により、上記鉛筆強度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を、上記樹脂基板上において、積層状態であるいは略同一平面内に並列状態で形成することができる(請求項17)。
【0048】
即ち、図6及び図7に示すごとく、樹脂基板15上において、鉛筆強度の異なる少なくとも2つの硬化物21、25を略同一平面内に並列状態で形成して印刷層2を設けることができる。
図6は、インクジェット印刷による印刷されるドットを平面状に重ね合わせて印刷し、比較的大きな範囲に形成された硬化物21と硬化物25が略同一平面に並列状態で形成した様子を示してある。
一方、図7は、インクジェット印刷によって、硬化後の鉛筆硬度の異なる少なくとも2つのUV硬化性インクを部分的に1ピッチ毎に交互に印刷し、互いに異なる鉛筆硬度を有する硬化物21と硬化物25とが交互に形成された様子を示してある。
【0049】
また、図8及び図9に示すごとく、樹脂基板15上において、鉛筆強度の異なる少なくとも2つの硬化物21、25を少なくとも部分的に積層状態で形成して印刷層2を設けることができる。
図8は、鉛筆強度の小さな硬化物21上に、鉛筆強度の大きな硬化物25を部分的に積層形成した様子を示してある。
一方、図9は、鉛筆強度の大きな硬化物25上に、鉛筆強度の大きな硬化物21を部分的に積層形成した様子を示してある。
【0050】
上記第1の発明及び上記第2の発明において、上記表示板は、自動車メータ計器盤に用いられることが好ましい(請求項9、請求項19)。
この場合には、様々なデザイン・成形加工に対応可能な上記表示板を特徴を生かして、車種、排気量、及びグレード等に応じて多様な意匠部が形成された自動車メータ計器盤に対応することができる。
【0051】
また、上記第2の発明において、上記インクジェット印刷は、硬化後の鉛筆強度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクをそれぞれ収容する少なくとも2つのインクタンクを備えたインクジェット印刷装置を用いて行うことが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記インクジェット印刷により、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記硬化物を有する上記印刷層を簡単に形成することができる。
【0052】
具体的には、図5に示すごとく、インクジェット印刷装置7は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のUV硬化性インクをそれぞれ収容し、かつ各色のUV硬化性インクについてさらに硬化後の鉛筆硬度がそれぞれ異なる上記UV硬化性インクをそれぞれ収容する少なくとも2つのインクタンク71、72を備えることができる(図5参照)。
この場合には、上記インクジェット印刷装置1は、各インクタンク71、72における各色のヘッドノズルから鉛筆硬度が異なる各色のUV硬化性インク200、250を上記樹脂基板15上に噴射することができる。そのため、各インクタンク71、72から各UV硬化性インク200、250の噴射を制御して印刷を行って、所望のデザインの上記印刷層2を形成できると共に、鉛筆硬度及び色の異なる上記硬化物を簡単に形成することができる。
【0053】
また、上記第1の発明及び第2の発明において、上記表示板には、使用者が視認する側の面(意匠面)の最外層には、表面つや消し用の透明のオーバコート層を形成することができる。該オーバーコート層は、インクジェット印刷又はスクリーン印刷等によって形成することができる。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
次に、本発明の実施形態例について説明する。
本例においては、まず表1に示すごとく、組成の異なる複数のUV硬化性インクを作製し、これらを樹脂基板上に印刷して表示板用のインクとしての特性を評価した。
まず、下記の表1に示すように、組成の異なる複数のUV硬化性インク(試料X1〜
試料X3)を作製した。
これらのインクは、表1に示す組成で単官能モノマー、多官能モノマー(二官能モノマー)、及び顔料を含有する。また、各インクは、その他に重合開始剤、及び分散材等を含有する。UVモノマー及び顔料以外の成分は、各インクにおいて、それぞれほぼ同量である。
【0055】
次に、ポリカーボネートからなる、厚さ0.5mmの樹脂基板を準備した。この樹脂基板上に、インクジェット印刷により、各UV硬化性インク(試料X1〜X3)を印刷し、UV照射により硬化させて、UV硬化性インクの硬化物からなる印刷層を形成した。
インクジェット印刷は、各UV硬化性インクを東芝テック(株)製のCa4ヘッドに充填し、ヘッド内部にてUV硬化性インクを温度45℃に加温して吐出時のインク粘度約10mPa・sの状態にて印刷を行った。また、インクジェット印刷においては、液滴量を12pl、ヘッド走査速度を約20m/分に設定し、600dpi×1200dpiの印刷物を8パスのインク滴下で印刷し、インク硬化物からなる上記印刷層を形成した。インクの硬化には、インクジェット装置に付帯のUV露光機をピーク波長365nm、照度1000mWに調整して使用した。
【0056】
照度はGSユアサ製N−1照度計(365nm波長測定用)を用い測定した。
本例において、樹脂基板上に形成する印刷層は、従来、シルクスクリーン印刷において印刷形成されていた印刷物の代替として利用できるものであり、一般に紙への印刷や看板等で用いられるインクジェットの印刷濃度では透過画像として成立しない。ゆえに、各色の印刷濃度がそれぞれ黒2.0〜5.0、シアン0.4〜0.6、マゼンタ0.7〜1.0、イエロー0.1〜0.2という透過濃度になるように印刷した。これらの測定はX−RIGHT製の透過濃度計にて測定した。
【0057】
また、UVインクの硬化性はUV照度の強さ、照射エネルギー(積算光量)、インクジェットにて一度に滴下するインク量、インク自体の透過濃度にて変化することが知られている。
本例の表示板製造時の印刷条件としては、以下の好適な条件を利用できる。
即ち、UV照射は600mW〜1500mWで行うことができる。UV照度が1500mwを超えると樹脂基板が熱によって膨張したり、樹脂基板がUVにより劣化し黄色変色するおそれがあるからである。一方、600mW未満では照度が不足し、内部に透過するUV強度が不足して硬化不足になるおそれがあるからである。
また、一般に、照射時間はインクジェットヘッドと並列に置かれたUVランプによりインク滴下後瞬時にランプがインクを通過する動作を繰り返すため主操作時のへッド操作速度で決まる。
また、操作最高速度はヘッドの周波数で決まる。これら生産性と硬化性を鑑みた結果、主操作のワンパスでの積算光量は100〜300mJで行うことができる。インクの滴下量は印刷物の画質の劣化を抑制するために、最大液滴量を12plとする。液滴量が20plを超えると、樹脂基板に着弾時の濡れ広がりにより、例えば直線上にインクジェット印刷を行った際に直線の端面がにじんでしまうおそれがある。シルクスクリーンレベルのライン解像度を実現するには12pl以下が好適である。
【0058】
また、インク自体の透過濃度としては最もUV光の透過性が悪い黒のインク濃度がポイントになる。黒のインク濃度を薄く設定すると硬化性は飛躍的によくなるが、何回も重ね印刷を施さねば所望の透過濃度を発現させることが困難になる。一方、顔料比を上げた場合は著しく硬化が悪くなるおそれがある。したがって、10μm厚の印刷層の透過濃度が1.05〜1.25であることが好適である。
即ち、例えば自動車メータの表示器のように、LED等のバックライトを背面に設置させる表示板を作製する場合には、該表示板に、光を透過する透過部と光をほとんど透過させない不透過部を形成させる必要がある。この不透過性の実現には4.0の透過濃度が必要である。したがって、上記のごとく透過濃度1.0のインクを10μmの厚みで印刷する場合には、少なくとも4回以上印刷を繰り返して厚さ40μmの印刷層を形成する必要がある。また、4回印刷を繰り返しても液滴のバラツキを考慮すると不透過部を充分に形成することが困難になるおそれがある。さらに、5回以上、積層印刷して50μm厚の印刷層を形成すると、不透過部としては充分な濃度は達成できるが、印刷層の厚みが大きくなりすぎて印刷層に硬化収縮が起こったり、印刷層に大きなそりが発生したりするおそれがある。また、この場合には、不透過部と透過部とにおける凹凸差が大きくなり、外観上の見栄えが悪くなるおそれがある。さらには、表示板の表面につや消しやハードコート性を付与するためのオーバーコート層をシルクスクリーン等で印刷形成する際に、凹凸部分にインクが入り難くなるおそれがある。
したがって、黒インクは40μm以下で透過濃度4.0を達成することが重要となり、これを達成するために、10μm厚の印刷層の透過濃度が1.05〜1.25であることが好適になる。
【0059】
以上のような印刷条件で、各UV硬化性インク(試料X1〜試料X3)をそれぞれ樹脂基板上に印刷し、UV硬化性インクの硬化物からなる印刷層が形成された3種類の印刷基板を得た。
次に、各印刷基板について、それぞれ成形性、加工性、及び印刷層の耐久性の評価を行った。具体的には、下記の評価試験を行った。
【0060】
「延伸性」
各印刷基板からJIS K6257に規定するダンベル状試験片(幅5mm、印刷層の厚み20〜100μm、基板厚み0.5mm)を打ち抜いた。このダンベル状試験片を引張試験機により引張スピード50mm/minで引っ張った。そして、印刷層に割れが発生した時点での標点間距離の伸び率(延伸率;%)を測定した。測定は、測定温度180℃、チャック間距離40mm、初期標点間距離40mmという条件で行った。その結果を表1に示す。
【0061】
「密着性」
密着性の評価は、JIS D2020に規定のクロスカット剥離試験によって行った。即ち、まず、各印刷基板における印刷層を縦横約1mmの幅でカットして、格子状の切れ込みを形成する。次いで、切れ込みを入れた印刷層にセロハンテープを密着させた後、テープを剥離した。テープと共に印刷層が剥離しなかった場合を「○」とし、テープと共に印刷層の剥離が観察された場合を「×」として評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
「硬化性」
各印刷基板の印刷層を指の腹で押圧し、その後、印刷層に指紋の跡が残るか否かを目視により観察した。指紋の跡が目視にて確認できない場合を「○」とし、確認できる場合を「×」として判定した。その結果を表1に示す。
【0063】
「鉛筆硬度試験」
各印刷基板を温度90℃に設定したホットプレート上に配置し、印刷層を約90℃まで加熱させた。次いで、ホットプレート上でJIS K 5400(2004年)に規定する鉛筆硬度試験を行って、印刷層の鉛筆硬度を測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1より知られるごとく、試料X1〜試料X3は、いずれも優れた密着性を示すと共に、表面にべたつきを生じない程度の優れた硬化性を示した。その一方で、各試料は、それぞれ異なる延伸性及び鉛筆硬度を示した。
【0066】
次に、上記のようにして作製した各UV硬化性インクを用いて表示板を作製する。
本例においては、表示板1として、車両用計器のメータ文字盤を作製する(図1参照)。
図1〜図3に示すごとく、本例の表示板1は、樹脂基板15と、この樹脂基板15上の少なくとも一部にインクジェット印刷により形成された印刷層2とを有する。
印刷層2は、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物21、22、23、25からなる。また、印刷層2は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの硬化物21、22、23、25を有している。
【0067】
図1及び図2に示すごとく、本例の表示板1は、車両用計器のメータ文字盤である。図1は、本例の表示板1の正面図である。図2は、図1に示される表示板1の断面図である。図2に示すごとく、表示板1には、成形加工が施されており、中央部分が周囲よりも突出した構造を有している。図3は、成形加工前の表示板1の断面図を示している。
【0068】
以下、本例の表示板について詳細に説明する。
本例の表示板1は、図1〜図3に示すごとく、透光性の樹脂基板15と、その意匠面151上に積層形成された印刷層2とを有している。
図3に示すごとく、印刷層2は、鉛筆硬度が異なる2つの硬化物を有している。硬化物21、22、23は同じ鉛筆硬度を有しており、硬化物25は、硬化物21、22、23よりも高い(硬い)鉛筆硬度を有している。印刷層2において、硬化物22、23は、可視光を透過することが可能な透過部を形成しており、表示板における文字や記号等を形成している。硬化物21は、可視光を透過しない黒色の不透過部を形成している。また、他の硬化物21、22、23よりも鉛筆硬度の高い硬化物25も、黒色の不透過部を形成している。硬化物21と硬化物25とは、同色(黒色)であり、隣接して設けられているため、両者の境界は外観上ほとんど区別ができなくなっている。また、硬化物25は、他部材に押圧させる押圧部29に形成されている。
【0069】
本例において、各硬化物21、22、23、25は、UVモノマーとして単官能モノマーと多官能モノマーとを含有するUV硬化性インク(上記試料X1又はX2)からなる。
硬化物21、22、23は、UVモノマー100重量部中に多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクからなる。一方、硬化物25は、UVモノマー100重量部中に多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインク(上記試料X3)からなる。
【0070】
硬化物21、22、23、25は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの各色のUV硬化性インク又はそれらの混合物からなる。本例において、硬化物21、22、23、25を有する印刷層2は、樹脂基板15の意匠面151側とその裏面152側の両方に形成されている。
【0071】
また、図4に示すごとく、本例の表示板1は、指針51、光源(LED照明)52、回路基板53、光拡散板54等と共に、ケース55内に収納されて、車両用計器5として用いられる。表示板1をケース55内に配置するときには、ケース(上記他部材)55に、表示板1の端部(押圧部29)を挟み込んで表示板1を固定する。
【0072】
表示板1においては、意匠面151とは反対の裏面152から光を照射したときに、可視光を透過する透過部22、23と可視光を透過しない不透過部21、25とが形成されている。
透過部22、23は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー等の色のUV硬化型インクを適宜混ぜ合わせて所望の色に着色させることができる。本例において、透光部22、23は、燃料量表示目盛り、方向指示、速度計目盛り、及びギア表示等を表している。そして、表示板1の裏面152側に配置される光源等の光によって、暗所においても透光部22、23を明るく表示させることができる。
また、不透過部21、25は、例えばブラックのUV硬化性インクにより形成することができる。
また、本例の表示板1は、その略中央部分が意匠面151側に突出した凸状構造を呈している(図2参照)。
【0073】
次に、本例の表示板の製造方法について、説明する。
本例においては、インクジェット印刷により、樹脂基板15上の少なくとも一部に、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクを噴射し、UVを照射して該UV硬化性インクを硬化させて硬化物21、22、23、25を形成する(図3参照)。これにより、図3に示すごとく、樹脂基板15と、該樹脂基板15上に形成された硬化物21、22、23、25からなる印刷層2とを有する表示板1を作製することができる。
【0074】
表示板1は、図1に示すような意匠画像をコンピュータにより作成し、この意匠画像に基づいて、フルカラーのUV硬化性インクを用いたインクジェット法により樹脂基板に画像を印刷し、インクを硬化させ、その後成形を行うによって作製した。
【0075】
本実施例では、表示板の製造装置として以下のものを用いる。即ち、画像の作成では、例えばAdobe社製画像処理用ソフトウェアを用いる。また、印刷装置として、UV硬化型インクジェット装置(インクジェットヘッド、UV照射光源同時駆動型ミマキエンジニアリング製UJF605C、最高解像度1200DPI)を用いる。
【0076】
図5に示すごとく、本例のインクジェット印刷装置7においては、鉛筆硬度が異なるUV硬化性インク210、250をそれぞれ収容する2つのインクタンク71、72を備えている。インクタンク71は、UV硬化性インクとして低濃度多官能モノマーインク(試料X2)を含有し、インクタンク72は、UV硬化性インクとして高濃度多官能モノマーインク(試料X3)を含有する。各インクタンク71、72は、それぞれさらに各色(C(シアン)、Y(イエロー)、K(黒)、M(マゼンタ))のインクを収容し、各色のインクを噴出するヘッドノズルを有している。
【0077】
また、印刷装置7には、インクタンク71、72の真横に紫外線(UV)76を照射する光源75が搭載されている。印刷装置7は、ヘッドのノズルからインク滴210、250を射出した後、射出したインク滴210、250に対して紫外線76を照射できる構成になっている。
【0078】
具体的には、以下のようにして表示板1を製造した。
まず、車両用計器のメータ文字盤としての画像(図1参照)をコンピュータで作成した後、この画像データをインクジェット印刷装置7(図5参照)に入力した。このとき、各インクの硬化物21、22、23、25の解像度、インクの液滴量、色および網点率等を指定することができる。
【0079】
そして、図5に示すごとく、ポリカーボネート等からなる樹脂基板15を用意し、上記画像データが入力されたインクジェット印刷装置7で、UV硬化性インクを用いたインクジェット法により、樹脂基板15の透過部22、23、不透過部21、25の形成予定領域(図3参照)に対して、UV硬化性インク210、250を印刷し、紫外線76を照射して硬化させた。本例においては、UV硬化性インクの液滴量を30pl以下で印刷を行い、液滴の噴射から1秒以内に紫外線76を照射して硬化させた。この液滴の噴射と紫外線の照射を繰り返して、樹脂基板15の意匠面151側にUV硬化性インクの硬化物21、22、23、25からなる印刷層2を形成した(図3参照)。
また、同様のUV硬化型インクジェット装置により、樹脂基板15の裏面152側にも印刷層2を形成した。
【0080】
本例においては、図3に示すごとく、表示板1の端部に、試料X3のUV硬化性インクからなる硬化物(不透過部)25を形成し、その他の領域には、試料X2のUV硬化性インクからなる硬化物21、22、23を形成した。硬化物25が形成された部分は、表示板1をケース55内に配置して車両用計器として用いたときに、ケース55に挟み込まれて押圧される押圧部29である(図4参照)。
【0081】
以上のようにして、図3に示すごとく、樹脂基板15の意匠面151及び裏面152上に硬化物21、22、23、25が形成された表示板1を製造した。これを試料E1とする。
【0082】
試料E1においては、上述のごとく、表示板の端部(押圧部29)に、試料X3のUV硬化性インクからなる硬化物25を形成し、それ以外の領域に、試料X2のUV硬化性インクからなる硬化物21、22、23を形成した。
本例においては、次に、表示板1の端部(押圧部29)に、試料X3のUV硬化性インクからなる硬化物25を形成し、それ以外の領域に、試料X1のUV硬化性インクからなる硬化物21、22、23を形成し、その他は上記試料E1と同様にして表示板1を作製した。これを試料E2とする(図3参照)。
【0083】
また、試料E1及び試料E2の比較用として、試料X1〜試料X3のUV硬化性インクをそれぞれ単独で用いて樹脂基板上に印刷層を形成し、その他は上記試料E1と同様にして表示板を作製した。これらをそれぞれ試料C1〜試料C3とする。
試料C1は、印刷層2における各硬化物21、22、23、25がいずれも試料X1で形成された表示板である(図3参照)。
試料C2は、印刷層2における各硬化物21、22、23、25がいずれも試料X2で形成された表示板である(図3参照)。
試料C3は、印刷層2における各硬化物21、22、23、25は、いずれも試料X3で形成された表示板である(図3参照)。
【0084】
次に、各表示板(試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3)1に対して、温度150℃〜180℃で、圧空成形等による熱絞り加工を行った。この熱絞り加工によって、表示板1の略中央部分に形成された速度計目盛りの部分を意匠面151側に突出させた。また、表示板1には、計器用指針等を配置するための貫通孔41、42、43を形成した。さらに、表示板を所定形状の外形に打ち抜いた。このようにして、図1及び図2に示す表示板1を製造した。
また、熱絞り加工及び打ち抜き加工時には、各表示板(試料E1、試料E2、試料C1〜試料C3)の印刷層に割れや剥がれの発生の有無を目視にて観察した。印刷層に割れや剥がれが観察されなかった場合を「○」として評価し、観察された場合を「×」として評価した。その結果を後述の表2に示す。
【0085】
次に、試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3の表示板について、下記の押圧耐性試験を行った。
「押圧耐性」
各表示板(試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料3)1を、指針51、光源(LED照明)52、回路基板53、光拡散板54等と共に、ケース55内に収納し、車両用計器5作製した(図4参照)。このとき、各表示板1を、その押圧部29において、0.1MPa、0.5MPa、又は1.0MPaの圧力でケースに狭持させる。次いで、ケース55に狭持させた表示板1を温度−30℃で1時間冷却し、次いで温度90℃で1時間加熱するという冷熱サイクルを200回繰り返し行った。その後、表示板1の押圧部29に印刷層2の剥がれ、凹みなどの異常の有無を確認した。確認は、車両用計器の光源52に通電し、表示板1の意匠面151からの光の漏れの有無により判定した。光の漏れがなかった場合を「○」とし、光の漏れが有った場合を「×」として判定を行った。その結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの硬化物からなる印刷層2を有する表示板1(試料E1及び試料E2)においては、例えば他部材(車両用計器のケース)と接触して押圧がかかる押圧部29に鉛筆硬度の高い硬化物25を形成させたり、例えば成形・加工等を行う部分に鉛筆硬度の低い硬化物21、22、23を形成させることができる(図3及び図4参照)。それ故、表2より知られるごとく、試料E1及び試料E2においては、印刷層2にほとんど割れを生じさせることなく、所定の形状の型により成形したり、打ち抜き加工や切断加工等を施したりすることができた。また、押圧部29にかかる応力によって上記印刷層2に割れ等が発生することを防止することができた。
これに対し、1種類のUV硬化性インクを用いて作製した表示板(試料C1〜試料C3)においては、押圧部における押圧耐性が不十分であったり、成形・加工時に印刷層に割れや剥がれが発生していた(表2参照)。
【0088】
本例の試料E1及び試料E2においては、鉛筆硬度の異なる硬化物は、それぞれ、UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクと、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインクとによって形成されている。また、高濃度多官能モノマーインクからなる硬化物は、他部材と接触して押圧される押圧部に形成されており、低濃度多官能モノマーインクからなる硬化物は、成形部・加工部を含む押圧部以外の領域に形成されている。
そのため、試料E1及び試料E2は、成形部・加工部において割れや剥がれ等を生じることなく成形及び加工ができると共に、押圧部において1.0MPaという非常に大きな応力に対しても優れた耐久性を示した(表2参照)。
【0089】
また、本例の試料E1及び試料E2において、試料X3のUV硬化性インクを用いて形成した硬化物25は、その周囲に形成した硬化物21と同じ色(黒)で形成した(図3参照)。
そのため、試料E1及び試料E3の印刷層2においては、鉛筆硬度の異なる2つ以上の硬化物21、25の境界が外観上ほとんど区別できず、印刷層2は、意匠上の違和感のない優れた意匠性を示すことができる。
【0090】
以上のように、本例によれば、様々なデザイン・成形加工に対応可能な表示板(試料E1及び試料E2)及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1にかかる、表示板の正面図。
【図2】実施例1にかかる、表示板の断面図(図1におけるA−A線矢視断面図)。
【図3】実施例1にかかる、印刷層を形成した樹脂基板の断面構造を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、表示板を車両用計器のケース内に配置した状態の断面構造を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、印刷装置の構成の概略を示す説明図。
【図6】樹脂基板上において、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの硬化物を略同一平面内に並列状態で配置して印刷層を形成した表示板の断面構造の一部を示す説明図。
【図7】樹脂基板上において、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの硬化物を、低ピッチで交互に、かつ略同一平面内に並列状態で配置して印刷層を形成した表示板の断面構造の一部を示す説明図。
【図8】樹脂基板上において、鉛筆強度の小さな硬化物上に鉛筆強度の大きな硬化物を積層状態で配置して印刷層を形成した表示板の断面構造を示す説明図。
【図9】樹脂基板上において、鉛筆強度の大きな硬化物上に鉛筆強度の小さな硬化物を積層状態で配置して印刷層を形成した表示板の断面構造を示す説明図。
【符号の説明】
【0092】
1 表示板
15 樹脂基板
2 印刷層
21 硬化物(不透過部)
22 硬化物(透過部)
23 硬化物(透過部)
25 硬化物(不透過部)
29 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、該樹脂基板上の少なくとも一部にインクジェット印刷により形成された印刷層とを有する表示板において、
上記印刷層は、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物からなり、
上記印刷層は、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有していることを特徴とする表示板。
【請求項2】
請求項1において、上記印刷層は、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物として、同色で形成された上記硬化物を有していることを特徴とする表示板。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記UV硬化性インクは、上記UVモノマーとして、単官能モノマーと多官能モノマーとを含有し、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記多官能モノマーの含有量が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクで形成されていることを特徴とする表示板。
【請求項4】
請求項3において、上記鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクと、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインクとによって形成されていることを特徴とする表示板。
【請求項5】
請求項4において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に他部材を押圧させる押圧部を有し、上記印刷層は、少なくとも上記押圧部に上記高濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を有していることを特徴とする表示板。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に成形及び/又は加工が施される成形部及び/又は加工部を有し、上記印刷層は、少なくとも上記成形部及び/又は上記加工部に上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を有していることを特徴とする表示板。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項において、上記UV硬化性インクは、上記単官能モノマーとして、少なくともフェノキシエチルアクリレートを含有し、該フェノキシエチルアクリレートを主成分とすることを特徴とする表示板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記鉛筆強度の異なる少なくとも2つの上記硬化物は、上記樹脂基板上において、積層状態であるいは略同一平面内に並列状態で形成されていることを特徴とする表示板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記表示板は、自動車メータ計器盤に用いられることを特徴とする表示板。
【請求項10】
樹脂基板と、該樹脂基板上の少なくとも一部に、UV照射により重合して硬化するUVモノマーを含有するUV硬化性インクの硬化物からなると共に、鉛筆硬度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を有する印刷層とを有する表示板の製造方法において、
インクジェット印刷により、上記樹脂基板上の少なくとも一部に、硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクを噴射し、UVを照射して該UV硬化性インクを硬化させて上記硬化物を形成することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、上記インクジェット印刷においては、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとして、同色のインクを用いることを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11において、上記UV硬化性インクは、上記UVモノマーとして、単官能モノマーと多官能モノマーとを含有し、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとしては、上記多官能モノマーの含有量が異なる少なくとも2つのインクを用いることを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、上記硬化後の鉛筆硬度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクとしては、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを5重量部以下含有する低濃度多官能モノマーインクと、上記UVモノマー100重量部中に上記多官能モノマーを10重量部以上含有する高濃度多官能モノマーインクとを用いることを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に他部材を押圧させる押圧部を有し、上記インクジェット印刷においては、上記樹脂基板上における少なくとも上記押圧部に、上記高濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を形成することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14において、上記表示板は、該表示板の少なくとも一部に成形及び/又は加工が施される成形部及び/又は加工部を有し、上記インクジェット印刷においては、上記樹脂基板上における少なくとも上記成形部及び/又は上記加工部に、上記低濃度多官能モノマーインクからなる上記硬化物を形成することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項において、上記UV硬化性インクは、上記単官能モノマーとして、少なくともフェノキシエチルアクリレートを含有し、該フェノキシエチルアクリレートを主成分とすることを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか一項において、上記インクジェット印刷により、上記鉛筆強度の異なる少なくとも2つの上記硬化物を、上記樹脂基板上において、積層状態であるいは略同一平面内に並列状態で形成することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか一項において、上記インクジェット印刷は、硬化後の鉛筆強度が異なる少なくとも2つの上記UV硬化性インクをそれぞれ収容する少なくとも2つのインクタンクを備えたインクジェット印刷装置を用いて行うことを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか一項において、上記表示板は、自動車メータ計器盤に用いられることを特徴とする表示板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−96043(P2009−96043A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268987(P2007−268987)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】