説明

表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器

【課題】高画質化を実現することが可能な表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器を提供する
【解決手段】走査線駆動回路23が、映像信号電圧Vsigの書き込み時に、映像信号電圧Vsigの印加期間内に走査線WSLに対する選択パルスの印加を終了させる。また、信号線DTLの延在方向に沿った信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う。表示輝度の画素位置によるばらつきが低減もしくは回避され、画素位置に応じた画質劣化(垂直方向に沿ったいわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が低減もしくは回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素ごとに配置した発光素子により画像を表示する表示装置およびその駆動方法、ならびにそのような表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)が開発され、商品化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL表示装置では光源(バックライト)が必要ないことから、光源を必要とする液晶表示装置と比べ、画像の視認性が高く、消費電力が低く、かつ素子の応答速度が速い。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様に、その駆動方式として、単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とが挙げられる。前者は、構造が単純であるものの、大型かつ高精細の表示装置の実現が難しいなどの問題がある。そのため、現在では、後者のアクティブマトリクス方式の開発が盛んに行なわれている。この方式では、画素ごとに配した有機EL素子に流れる電流を、有機EL素子ごとに設けた駆動回路内の能動素子(一般にはTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ))によって制御するようになっている。
【0005】
ところで、一般に、有機EL素子の電流−電圧(I−V)特性は、時間の経過に従って劣化(経時劣化)することが知られている。有機EL素子を電流駆動する画素回路では、有機EL素子のI−V特性が経時変化すると、駆動トランジスタに流れる電流値が変化することから、有機EL素子自身に流れる電流値も変化し、それに応じて発光輝度も変化する。
【0006】
また、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによって、これら閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なったりする場合がある。駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが画素回路ごとに異なる場合には、駆動トランジスタに流れる電流値が画素回路ごとにばらつくことになる。そのため、駆動トランジスタのゲートに同じ電圧を印加しても、有機EL素子の発光輝度がばらつき、画面の一様性(ユニフォーミティ)が損なわれる。
【0007】
そこで、有機EL素子のI−V特性が経時変化したり、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μが経時変化したり画素回路ごとに異なったりしても、それらの影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に保つようにするための提案がなされている。具体的には、有機EL素子のI−V特性の変動に対する補償機能と、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや移動度μの変動に対する補正機能とを組み込んだ表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−33193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特に大型の表示パネルにおいては、データドライバから画素までの距離が大きくなるに応じて、信号線における配線抵抗や容量に起因して、映像信号電圧の信号パルスの波形がなまってしまうことが多い。具体的には、データドライバからの距離が小さい画素(信号入力端寄りの画素)では、信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが急峻である一方、この距離が大きい画素(パネル端寄りの画素)では、信号パルスの立ち上がり,立ち下がりがなだらかになってしまう。
【0010】
このように、信号パルスの波形が表示パネル内の画素位置によって異なってしまうと、パルス波形の違いに起因して、映像信号の実質的な書き込み期間の長さが、画素位置によってばらついてしまう場合がある。そして、その場合、表示輝度の画素位置によるばらつき(いわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が発生し、表示画質が劣化してしまうことになる。なお、このような問題は、有機EL表示装置だけには限られず、自発光素子を用いた他の表示装置においても同様に発生し得るものである。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高画質化を図ることが可能な表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、それぞれが発光素子を含む複数の画素と、各画素に接続された走査線および信号線と、走査線に対して複数の画素を順次選択するための選択パルスを印加する走査線駆動回路と、信号線に対して映像信号電圧を印加することにより、走査線駆動回路により選択された画素に対して映像信号の書き込みを行う信号線駆動回路とを備えたものである。ここで、上記走査線駆動回路は、映像信号電圧の印加期間内に選択パルスの印加を終了させると共に、信号線の延在方向に沿った信号線駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行っている。
【0013】
本発明の電子機器は、上記本発明の表示装置を備えたものである。
【0014】
本発明の表示装置の駆動方法は、それぞれが発光素子を含み、走査線および信号線に接続された複数の画素を表示駆動する際に、走査線に対して複数の画素を順次選択するための選択パルスを印加しつつ、信号線に対して映像信号電圧を印加することにより選択された画素に対して映像信号の書き込みを行い、この映像信号の書き込み時に、映像信号電圧の印加期間内に選択パルスの印加を終了させると共に、信号線の延在方向に沿ったこの信号線の駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行うようにしたものである。
【0015】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器では、走査線に対して複数の画素を順次選択するための選択パルスが印加されつつ、信号線に対して映像信号電圧が印加されることにより、選択された画素に対して映像信号の書き込みがなされる。この際、映像信号電圧の印加期間内に選択パルスの印加が終了することにより、映像信号の書き込み期間の終了タイミングが、この選択パルスの印加終了タイミングによって規定されることになる。ここで、信号線の延在方向に沿った信号線駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、上記した選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整がなされる。これにより、映像信号の書き込み期間の長さにおける装置内の画素位置によるばらつきが抑えられる(もしくは回避される)。すなわち、上記した映像信号の書き込み期間の終了タイミングが、上記距離が大きくなるのに応じて遅くなるように調整されるため、この距離が大きくなるのに応じて、映像信号電圧のパルス波形(具体的には、立ち上がり波形)がなまることによって映像信号の書き込み開始タイミングが遅くなった場合であっても、実際の映像信号の書き込み期間の長さが、画素位置によらずにほぼ一定となる(実際の映像信号の書き込み期間の長さの画素位置による差異が、低減もしくは回避される)。その結果、表示輝度の画素位置によるばらつき(いわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が、低減もしくは回避される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示装置およびその駆動方法ならびに電子機器によれば、映像信号の書き込み時に、映像信号電圧の印加期間内に選択パルスの印加を終了させると共に、信号線の延在方向に沿った信号線駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように印加期間の調整を行うようにしたので、表示輝度の画素位置によるばらつきを低減もしくは回避することができる。よって、画素位置に応じた画質劣化を低減もしくは回避することができ、高画質化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の一例を表す構成図である。
【図2】図1に示した各画素の内部構成の一例を表す回路図である。
【図3】図1に示した走査線駆動回路の主要部の詳細構成例を表す回路図である。
【図4】第1の実施の形態に係る表示装置の動作の一例を表すタイミング波形図である。
【図5】図4に示した表示装置の動作の際の動作状態の一例を表す回路図である。
【図6】図5に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図7】図6に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図8】表示装置におけるI−V特性の経時劣化について説明するための特性図である。
【図9】図7に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図10】駆動トランジスタにおけるソース電位の時間変化の一例を表す特性図である。
【図11】図9に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図12】図11に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図13】駆動トランジスタにおけるソース電位の時間変化と移動度との関係の一例を表す特性図である。
【図14】図12に続く動作状態の一例を表す回路図である。
【図15】表示パネルの信号入力端およびパネル端における信号線の電圧波形の違いについて説明するための図である。
【図16】比較例1に係る表示装置における表示パネルの信号入力端、中部領域およびパネル端での映像信号の書き込み期間について説明するための特性図である。
【図17】比較例2に係る表示装置における表示パネルの信号入力端、中部領域およびパネル端での映像信号の書き込み期間について説明するための特性図である。
【図18】比較例2および第1の実施の形態に係る表示パネルにおける表示画質について説明するための模式図である。
【図19】図3に示した走査線駆動回路の動作の一例を表すタイミング波形図である。
【図20】第1の実施の形態の表示装置における表示パネルの信号入力端、中部領域およびパネル端での映像信号の書き込み期間について説明するための特性図である。
【図21】表示パネル内における複数の分割表示領域の一例を表す模式図である。
【図22】第2の実施の形態に係る表示装置の動作の一例を表すタイミング波形図である。
【図23】比較例3に係る表示装置における表示パネルの信号入力端、中部領域およびパネル端での映像信号の書き込み期間について説明するための特性図である。
【図24】第2の実施の形態の表示装置における表示パネルの信号入力端、中部領域およびパネル端での映像信号の書き込み期間について説明するための特性図である。
【図25】第1および第2の実施の形態に係る1垂直期間の長さの一例を対比して説明するためのタイミング波形図である。
【図26】第1および第2の実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図27】第1および第2の実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図28】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図29】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図30】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図31】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(走査線電圧の立ち上がり,立ち下がりタイミングによって、映像信号の書き込み期間を規定する場合の例)
2.第2の実施の形態(信号線電圧の立ち上がりタイミングと走査線電圧の立ち下がりタイミングとによって、映像信号の書き込み期間を規定する場合の例)
3.モジュールおよび適用例
4.変形例
【0019】
<第1の実施の形態>
[表示装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の概略構成をブロック図で表したものである。この表示装置1は、表示パネル10(表示部)および駆動回路20を備えている。
【0020】
(表示パネル10)
表示パネル10は、複数の画素11がマトリクス状に配置された画素アレイ部13を有しており、外部から入力される映像信号20Aおよび同期信号20Bに基づいて、アクティブマトリクス駆動により画像表示を行うものである。ここでは、各画素11は、赤色用の画素11R、緑色用の画素11Gおよび青色用の画素11Bにより構成されている。なお、以下では、画素11R,11G,11Bの総称として、画素11を適宜用いるものとする。
【0021】
画素アレイ部13はまた、行状に配置された複数の走査線WSLと、列状に配置された複数の信号線DTLと、走査線WSLに沿って行状に配置された複数の電源線DSLとを有している。これらの走査線WSL、信号線DTLおよび電源線DSLの一端側はそれぞれ、後述する駆動回路20に接続されている。また、上記した各画素11R,11G,11Bは、各走査線WSLと各信号線DTLとの交差部に対応して、行列状に配置(マトリクス配置)されている。
【0022】
図2は、画素11R,11G,11Bの内部構成の一例を表したものである。画素11R,11G,11B内には、有機EL素子12R,12G,12B(発光素子)と、画素回路14とが設けられている。なお、以下では、有機EL素子12R,12G,12Bの総称として、有機EL素子12を適宜用いるものとする。
【0023】
画素回路14は、書き込み(サンプリング用)トランジスタTr1(第1のトランジスタ)、駆動トランジスタTr2(第2のトランジスタ)および保持容量素子Csを用いて構成されており、いわゆる「2Tr1C」の回路構成となっている。ここで、書き込みトランジスタTr1および駆動トランジスタTr2はそれぞれ、例えば、nチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFTにより形成されている。なお、TFTの種類は特に限定されるものではなく、例えば、逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)であってもよいし、スタガー構造(いわゆるトップゲート型)であってもよい。
【0024】
この画素回路14では、書き込みトランジスタTr1のゲートが走査線WSLに接続され、ドレインが信号線DTLに接続され、ソースが、駆動トランジスタTr2のゲートおよび保持容量素子Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTr2のドレインは電源線DSLに接続され、ソースは、保持容量素子Csの他端および有機EL素子12のアノードに接続されている。有機EL素子12のカソードは固定電位に設定されており、ここではグランド線GNDに接続されることにより、グランド(接地電位)に設定されている。なお、この有機EL素子12のカソードは、各有機EL素子12の共通電極として機能しており、例えば、表示パネル10の表示領域全体に渡って連続して形成され、平板状の電極となっている。
【0025】
(駆動回路20)
駆動回路20は、画素アレイ部13(表示パネル10)を駆動する(表示駆動を行う)ものである。具体的には、詳細は後述するが、画素アレイ部13における複数の画素11(11R,11G,11B)を順次選択しつつ、選択された画素11に対して映像信号20Aに基づく映像信号電圧を書き込むことにより、複数の画素11に対する表示駆動を行っている。この駆動回路20は、図1に示したように、映像信号処理回路21、タイミング生成回路22、走査線駆動回路23、信号線駆動回路24および電源線駆動回路25を有している。
【0026】
映像信号処理回路21は、外部から入力されるデジタルの映像信号20Aに対して所定の補正を行うと共に、補正した後の映像信号21Aを信号線駆動回路24に出力するものである。この所定の補正としては、例えば、ガンマ補正や、オーバードライブ補正などが挙げられる。
【0027】
タイミング生成回路22は、外部から入力される同期信号20Bに基づいて制御信号22Aを生成し出力することにより、走査線駆動回路23、信号線駆動回路24および電源線駆動回路25がそれぞれ、連動して動作するように制御するものである。
【0028】
走査線駆動回路23は、制御信号22Aに従って(同期して)複数の走査線WSLに対して選択パルスを順次印加することにより、複数の画素11(11R,11G,11B)を順次選択するものである。具体的には、書き込みトランジスタTr1をオン状態に設定するときに印加する電圧Vonと、書き込みトランジスタTr1をオフ状態に設定するときに印加する電圧Voffとを選択的に出力することにより、上記した選択パルスを生成している。なお、電圧Vonは、書き込みトランジスタTr1のオン電圧以上の値(一定値)となっており、電圧Voffは、この書き込みトランジスタTr1のオン電圧よりも低い値(一定値)となっている。
【0029】
ここで、この走査線駆動回路23は、詳細は後述するが、映像信号電圧(後述する映像信号電圧Vsig)の印加開始後に選択パルスの印加を開始すると共に、この映像信号電圧の印加期間内にその選択パルスの印加を終了させるようになっている。また、信号線DTLの延在方向(垂直方向(V方向))に沿った、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、後述する選択パルスの印加期間の調整動作を行うようになっている。
【0030】
図3は、走査線駆動回路23の主要部の詳細構成例を回路図で表したものである。この走査線駆動回路23は、シフトレジスタ231と、走査線WSLの数に対応するn個(n:2以上の整数)の論理積(3AND)回路232−1〜232−nと、n個のバッファ回路233−1〜233−nとを含んでいる。また、走査線駆動回路23には、図に示したように、制御信号22Aとしてのクロック信号ck、クロック反転信号xck、スタートパルス信号spおよびイネーブル信号enがそれぞれ入力されるようになっている。
【0031】
シフトレジスタ231は、2種類のフリップフロップ(FF)回路231A,231Bが交互に配置されて構成されている。なお、図中には、FF回路231Aを「FFa」,FF回路231Bを「FFb」としてそれぞれ示している。FF回路231A,231Bはにそれぞれ、クロック信号ck、クロック反転信号xckおよびスタートパルス信号spもしくは前段のFF回路の出力信号が入力されるようになっている。
【0032】
論理積回路232−1には、図中に示したように、シフトレジスタ231における1段目のFF回路231Aからの出力パルス信号SRout1と、2段目のFF回路231Bからの出力パルス信号SRout2と、イネーブル信号enとが入力されている。同様に、論理積回路232−2には、シフトレジスタ231における2段目のFF回路231Bからの出力パルス信号SRout2と、3段目のFF回路231Aからの出力パルス信号と、イネーブル信号enとが入力されている。論理積回路232−(n−1)には、シフトレジスタ231における(n−1)段目のFF回路231Bからの出力パルス信号と、n段目のFF回路231Aからの出力パルス信号SRoutnと、イネーブル信号enとが入力されている。論理積回路232−nには、シフトレジスタ231におけるn段目のFF回路231Aからの出力パルス信号SRoutnと、(n+1)段目(最終段)のFF回路231Bからの出力パルス信号SRout(n+1)と、イネーブル信号enとが入力されている。
【0033】
バッファ回路233−1〜232−nにはそれぞれ、論理積回路232−1〜232−nからの出力信号が入力されている。これらのバッファ回路233−1〜233−nからの出力配線がそれぞれ、複数の走査線WSLとしての走査線WSL1〜WSLnとなっている。
【0034】
信号線駆動回路24は、制御信号22Aに従って(同期して)、映像信号処理回路21から入力される映像信号21Aに対応するアナログの映像信号を生成し、各信号線DTLに印加するものである。具体的には、この映像信号21Aに基づくアナログの映像信号電圧を各信号線DTLに対して印加することにより、走査線駆動回路23により選択された(選択対象の)画素11(11R,11G,11B)に対して映像信号の書き込みを行うようになっている。なお、映像信号の書き込みとは、駆動トランジスタTr2のゲート−ソース間に所定の電圧を印加することを意味している。
【0035】
信号線駆動回路24は、映像信号20Aに基づく映像信号電圧Vsigと、基準電圧Vofsとの2種類の電圧を出力することが可能となっており、これらの2種類の電圧を、1水平(1H)期間ごとに交互に各信号線DTLに対して印加するようになっている。ここで、基準電圧Vofsは、有機EL素子12の消光時に、駆動トランジスタTr2のゲートに印加するための電圧である。具体的には、この基準電圧Vofsは、駆動トランジスタTr2の閾値電圧をVthとすると、(Vofs−Vth)が有機EL素子12における閾値電圧Vthelおよびカソード電圧Vcatを足し合わせた電圧値(Vthel+Vcat)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。
【0036】
電源線駆動回路25は、制御信号22Aに従って(同期して)、複数の電源線DSLに対して制御パルスを順次印加することにより、各有機EL素子12の発光動作および消光動作の制御を行うものである。具体的には、駆動トランジスタTr2に電流Idを流すときに印加する電圧Vccと、駆動トランジスタTr2に電流Idsを流さないときに印加する電圧Viniとを選択的に出力することにより、上記した制御パルスを生成するようになっている。ここで、電圧Viniは、有機EL素子12における閾値電圧Vthelおよびカソード電圧Vcatを足し合わせた電圧値(Vthel+Vcat)よりも低い電圧値(一定値)となるように設定されている。一方、電圧Vccは、この電圧値(Vthel+Vcat)以上の電圧値(一定値)となるように設定されている。
【0037】
[表示装置の作用・効果]
続いて、本実施の形態の表示装置1の作用および効果について説明する。
【0038】
(1.表示動作の概要)
この表示装置1では、図1および図2に示したように、駆動回路20が、表示パネル10(画素アレイ部13)内の各画素11(11R,11G,11B)に対し、映像信号20Aおよび同期信号20Bに基づく表示駆動を行う。これにより、各画素11内の有機EL素子12へ駆動電流が注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この発光による光は、有機EL素子12における陽極(図示せず)と陰極(図示せず)との間で多重反射され、陰極等を透過して外部に取り出される。その結果、表示パネル10において、映像信号20Aに基づく画像表示がなされる。
【0039】
(2.表示動作の詳細)
図4は、表示装置1における表示動作の際(駆動回路20による表示駆動の際)の各種波形の一例を、タイミング図で表したものである。ここで、図4(A)〜(C)はそれぞれ、走査線WSL、電源線DSLおよび信号線DTLの電圧波形を示している。具体的には、走査線WSLの電圧が、電圧Voff,Vonの間で周期的に変化している様子(図4(A))と、電源線DSLの電圧が、電圧Vcc,Viniの間で周期的に変化している様子(図4(B))と、信号線DTLの電圧が、基準電圧Vofsおよび映像信号電圧Vsigの間で周期的に変化している様子(図4(C))と、をそれぞれ示している。また、図4(D),(E)はそれぞれ、駆動トランジスタTr2におけるゲート電位Vgおよびソース電位Vsの波形を示している。
【0040】
(発光期間T0:t1以前)
まず、有機EL素子12の発光期間T0では、走査線WSLの電圧、電源線DSLの電圧および信号線DTLの電圧がそれぞれ、電圧Voff,電圧Vcc,映像信号電圧Vsigとなっている(図4(A)〜(C))。したがって、図5に示したように、書き込みトランジスタTr1はオフ状態に設定されている。このとき、駆動トランジスタTr2は飽和領域で動作するように設定されているため、この駆動トランジスタTr2および有機EL素子12に流れる電流Idsは、以下の(1)式で表すことができる。なお、この(1)式において、μ,W,L,Cox,Vgs,Vthはそれぞれ、駆動トランジスタTr2における移動度,チャネル幅,チャネル長,単位面積あたりのゲート酸化膜容量,ゲート−ソース間電圧(図5参照),閾値電圧を示している。
Ids=(1/2)×μ×(W/L)×Cox×(Vgs−Vth) ……(1)
【0041】
(Vth補正準備期間T1:t1〜t4)
次に、駆動回路20は、タイミングt1において発光期間T0を終了させると共に、各画素11内の駆動トランジスタTr2における閾値電圧Vthの補正(Vth補正)の準備を行う。具体的には、まず、タイミングt1において、電源線駆動回路25が、電源線DSLの電圧を電圧Vccから電圧Viniに下げる(図4(B))。すると、駆動トランジスタTr2のソース電位Vsが下降していき、最終的に、電源線DSLの電圧に対応する電圧Viniとなる(図4(E))。また、駆動トランジスタTr2のゲート電位Vgも、このようなソース電位Vsの下降に伴い、保持容量素子Csを介した容量カップリングによって下降する(図4(D),図6中の電流Ia参照)。このため、有機EL素子12のアノード電圧(電圧Vini)が、この有機EL素子12における閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcatとを足し合わせた電圧値(Vthel+Vcat)よりも小さくなり、アノード−カソード間に電流Idが流れなくなる。その結果、このタイミングt1以降、有機EL素子12が消光する(下記の消光期間T10へと移行する)。なお、タイミングt1から、後述する発光動作を開始するタイミングt8までの期間は、有機EL素子12が消光状態である消光期間T10となっている。
【0042】
次に、タイミングt2において、信号線駆動回路24が、信号線DTLの電圧を映像信号電圧Vsigから基準電圧Vofsに下げる(図4(C))。そして、走査線駆動回路23が、信号線DTLの電圧が基準電圧Vofsとなっており、かつ電源線DSLの電圧が電圧Viniとなっている期間中のタイミングt3〜t4において、走査線WSLの電圧を、電圧Voffから電圧Vonへと上げた状態に設定する(図4(A))。これにより、図7に示したように、書き込みトランジスタTr1がオン状態となり、電流Ibが流れることによって、駆動トランジスタTr2のゲート電位Vgは、最終的に、このときの信号線DTLの電圧に対応する基準電圧Vofsとなる(図4(D))。そして、図4中に示したように、このときの駆動トランジスタTr2におけるゲート−ソース間電圧Vgs(=Vofs−Vini)が、この駆動トランジスタTr2の閾値電圧Vthよりも大きくなることにより(Vgs>Vth)、以下説明するVth補正の準備が完了する。
【0043】
(Vth補正期間T2:t4〜t5)
次に、駆動回路20は、駆動トランジスタTr2におけるVth補正を行う。これは、例えば図8に示したように、駆動トランジスタTr2の閾値電圧Vthが、I−V特性の経時劣化等によって画素11ごとにばらついた場合であっても、有機EL素子12の発光輝度がばらついてしまうのを低減もしくは回避するためである。
【0044】
具体的には、まず、信号線DTLの電圧が基準電圧Vofsとなっており、かつ走査線WSLの電圧が電圧Vonとなっている期間中のタイミングt4において、電源線駆動回路25が電源線DSLの電圧を、電圧Viniから電圧Vccに上げる(図4(B))。すると、図9に示したように、駆動トランジスタTr2のドレイン−ソース間に電流Icが流れ、ソース電位Vsが上昇する(図4(E),図10参照)。なお、図9に示したように、有機EL素子12は、ダイオード成分Diと容量成分Celとの並列回路によって等価回路を表すことができる。
【0045】
このとき、図10に示したように、駆動トランジスタTr2のソース電位Vsが、電圧値(Vofs(=Vg)−Vth)よりも低い場合(Vs<(Vg−Vth))、換言すると、ゲート−ソース間電圧Vgsが依然として閾値電圧Vthよりも大きい場合(Vgs>Vth;Vth補正がまだ完了していない場合)には、図9中に示した電流Icにより、保持容量素子Csの両端間の電圧が閾値電圧Vthとなるように充電される。すなわち、駆動トランジスタTr2がカットオフするまで(Vgs=Vthになるまで)、この駆動トランジスタTr2のドレイン−ソース間に電流Icが流れ、ソース電位Vsが上昇する(図4(E))。ここでは、図4中に示したように、Vth補正期間T2の終了時のタイミングt5においてVgs=Vthとなり、Vth補正が完了するものとする。
【0046】
その後、信号線DTLおよび電源線DSLの電圧がそれぞれ、基準電圧Vofs,電圧Vccのまま保持されている期間中のタイミングt5において、走査線駆動回路23が走査線WSLの電圧を、電圧Vonから電圧Voffに下げる(図4(A))。これにより、図11に示したように、書き込みトランジスタTr1がオフ状態となるため、駆動トランジスタTr2のゲートがフローティングとなり、Vth補正が停止する(以下のVth補正休止期間T3へと移行する)。また、その結果、その後の信号線DTLの電圧の大きさによらず、ゲート−ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vthのまま保持される。
【0047】
(Vth補正休止期間T3:t5〜t7)
このVth補正休止期間T3では、走査線WSLの電圧が電圧Voffとなっており、かつ電源線DSLの電圧が電圧Vccとなっている期間中のタイミングt6において、信号線駆動回路24が信号線DTLの電圧を、基準電圧Vofsから映像信号電圧Vsigへと上げる(図4(C))。そして、タイミングt6において、以下説明する移動度補正・信号書き込み期間T4へと移行することになる。
【0048】
このようにして、Vth補正期間T2およびVth補正休止期間T3において、ゲート−ソース間電圧Vgsを閾値電圧Vthに設定することにより(Vth補正を行うことにより)、以下のような効果が得られる。すなわち、駆動トランジスタTr2の閾値電圧Vthが、I−V特性の経時劣化等により画素11(11R,11G,11B)ごとにばらついた場合であっても(図8参照)、有機EL素子12の発光輝度がばらつくのを回避することができる。
【0049】
(移動度補正・信号書き込み期間T4:t7〜t8)
次に、駆動回路20は、以下説明するようにして、映像信号電圧Vsigの書き込み(映像信号の書き込み)を行いつつ、駆動トランジスタTr2における移動度μの補正(移動度補正)を行う。具体的には、まず、信号線DTLの電圧が映像信号電圧Vsigとなっており、かつ電源線DSLの電圧が電圧Vccとなっている期間中のタイミングt7において、走査線駆動回路23が、走査線WSLの電圧を電圧Voffから電圧Vonに上げる(図4(A))。これにより、図12に示したように、書き込みトランジスタTr1がオン状態となるため、電流Idによって、駆動トランジスタTr2のゲート電位Vgが、基準電圧Vofsから、このときの信号線DTLの電圧に対応する映像信号電圧Vsigへと上昇する(図4(D))。
【0050】
このとき、有機EL素子12のアノード電圧は、この段階ではまだ、有機EL素子12における閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcatとを足し合わせた電圧値(Vthel+Vcat)よりも小さいため、有機EL素子12はカットオフ状態となっている。すなわち、この段階ではまだ、有機EL素子12のアノード−カソード間には電流が流れない(有機EL素子12が発光しない)。したがって、駆動トランジスタTr2から供給される電流Ieは、有機EL素子12のアノード−カソード間に並列に存在する容量成分Celへと流れ、この容量成分Celが充電される。その結果、駆動トランジスタTr2のソース電位Vsが電位差ΔVだけ上昇し(図4(E))、ゲート−ソース間電圧Vgsが(Vsig+Vth−ΔV)となる。
【0051】
このとき、例えば図13に示したように、駆動トランジスタTr2の移動度μが大きいものは、ソース電位Vsの上昇分(電位差ΔV)も大きくなる。そのため、上記のように、ゲート−ソース間電圧Vgsが、後述する発光前にこの電位差ΔVの分だけ小さくなることにより(フィードバックがかかることにより)、画素11ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0052】
(発光期間T8(T0):t8以降)
次に、信号線DTLおよび電源線DSLの電圧がそれぞれ、映像信号電圧Vsig,電圧Vccのまま保持されている期間中のタイミングt8において、走査線駆動回路23が、走査線WSLの電圧を電圧Vonから電圧Voffに下げる(図4(A))。これにより、図14に示したように、書き込みトランジスタTr1がオフ状態となるため、駆動トランジスタTr2のゲートがフローティングとなる。すると、この駆動トランジスタTr2のゲート−ソース間電圧Vgsが一定に保持された状態で、駆動トランジスタTr2のドレイン−ソース間に電流Idsが流れる。その結果、この駆動トランジスタTr2のソース電位Vsが上昇する(図4(E))と共に、駆動トランジスタTr2のゲート電位Vgもまた、保持容量素子Csを介した容量カップリングにより、連動して上昇する(図4(D))。
【0053】
そして、これにより、有機EL素子12のアノード電圧が、この有機EL素子12における閾値電圧Vthelとカソード電圧Vcatとを足し合わせた電圧値(Vthel+Vcat)よりも大きくなる。言い換えると、駆動トランジスタTr2のソース電位Vsが電圧Vxまで上昇する(図4(E))。よって、有機EL素子12のアノード−カソード間に電流Idsが流れ、有機EL素子12が所望の輝度で発光する(発光期間T8(T0))。その後は、タイミングt9において、信号線駆動回路24は、信号線DTLの電圧を、映像信号電圧Vsigから基準電圧Vofsへと下げるようになっている。
【0054】
(繰り返し)
なお、その後は、駆動回路20は、これまで説明した各期間T1〜T5(T0)がフレーム期間ごとに周期的に繰り返されるように、表示駆動を行う。また、それと共に、駆動回路20は、例えば1水平期間(1H期間)ごとに、電源線DSLに印加する選択パルスおよび走査線WSLに印加する制御パルスをそれぞれ、行方向に走査させる。以上のようにして、表示装置1における表示動作(駆動回路20による表示駆動)がなされる。
【0055】
(3.選択パルスの印加期間の調整動作)
続いて、本実施の形態の表示装置1における表示動作の際の特徴的部分の1つである、走査線駆動回路23による選択パルスの印加期間の調整動作について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ詳細に説明する。
【0056】
最初に、例えば図15に示したように、特に大型の表示パネル10の場合、信号線駆動回路24から画素11までの距離(垂直方向(V方向)の距離)が大きくなるに応じて、映像信号電圧Vsigの信号パルスの波形がなまってしまうことが多い。具体的には、図中に示したように、信号線駆動回路24からの距離が小さい画素(信号入力端寄りの画素11)では、信号パルスPLSnの立ち上がり,立ち下がりが急峻である。一方、この信号線駆動回路24からの距離が大きい画素(パネル端寄りの画素11)では、信号パルスPLSfの立ち上がり,立ち下がりがなだらかになってしまう。
【0057】
これは、以下の理由によるものである。すなわち、まず、電源線DSLに印加される信号(制御パルス)では、1水平期間(1H期間)内で高電位(電圧Vcc)と低電位(電圧Vini)とを切り替えているため、電圧降下等を考慮して、電源線DSLは低抵抗材料を用いて横(水平)方向に配線する必要がある。そのため、縦(垂直)方向に配線される信号線DTLは、そのような電源線DSLと比較して高抵抗となってしまう。その結果、信号線DTLにおける配線抵抗や容量に起因して、映像信号電圧Vsigの信号パルスの波形のなまりは大きくなってしまうのである。
【0058】
ここで、本実施の形態では、図4(A),(C)中の矢印および斜線で示したように、映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さは、以下のように規定されている。すなわち、この映像信号電圧Vsigの印加期間(タイミングt6〜t9)内における、走査線WSLへの印加電圧(選択パルス)の立ち上がりタイミング(タイミングt7)および立ち下がりタイミング(タイミングt8)によって規定されている。言い換えると、走査線WSLへの印加電圧が電圧Voffから電圧Vonへ切り替わるタイミングと、その後に電圧Vonから電圧Voffへと切り替わるタイミングとによって規定されている。また別の言い方では、映像信号電圧Vsigの書き込み期間の開始タイミングおよび終了タイミングがそれぞれ、走査線WSLに印加される選択パルスの印加開始タイミングおよび印加終了タイミングによって規定されている。これは、本実施の形態では、走査線駆動回路23が、映像信号電圧Vsigの印加開始後に選択パルスの印加を開始すると共に、この映像信号電圧Vsigの印加期間内にその選択パルスの印加を終了させるようにしているためである。
【0059】
(比較例1)
これらのことから、例えば図16に示した比較例1に係る表示装置101では、表示パネル10内の画素位置によらず、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さがほぼ一定となっている。すなわち、この比較例1では、信号線DTLでの映像信号電圧Vsigの信号パルスの波形が、表示パネル10内の画素位置によって異なってしまう場合でも、そのようなパルス波形の違いに起因した、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さの差異がほとんど生じない。
【0060】
具体的には、まず、信号線駆動回路24からの距離が小さい画素P101n(信号入力端寄りの画素11)では、映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが急峻となっている。また、この距離が中程度の画素P101m(中間位置の画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、ややなまってなだらかになっている。そして、この距離が大きい画素P101f(パネル端寄りの画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、大きくなまってなだらかになっている。ただし、この比較例1では、走査線駆動回路103から走査線WSLへ印加される選択パルスの開始タイミングt107が、信号線DTLにおける映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり後となっている。そのため、以下説明する比較例2とは異なり、信号線駆動回路24から各画素11までの距離の大小によらず、画素P101n,P101m,P101fのそれぞれにおいて、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さΔT104が互いにほぼ等しくなっている。なお、図16中のタイミングt102,t106,t107,t108,t109はそれぞれ、図4に示したタイミングt2,t6〜t9にそれぞれ対応している。
【0061】
(比較例2)
ところが、例えば図17に示した比較例2に係る表示装置201のように、走査線駆動回路203から走査線WSLへ印加される選択パルスの開始タイミングt207が、信号線DTLにおける映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり前となる場合があると、以下の問題が生じる。
【0062】
具体的には、この比較例2では、まず上記比較例1と同様に、信号線駆動回路24からの距離が小さい画素P201n(信号入力端寄りの画素11)では、映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが急峻となっている。また、この距離が中程度の画素P201m(中間位置の画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、ややなまってなだらかになっている。そして、この距離が大きい画素P201f(パネル端寄りの画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、大きくなまってなだらかになっている。
【0063】
ここで、比較例2では、画素P201m,P201fにおいて、走査線WSLへ印加される選択パルスの開始タイミングt207が、信号線DTLにおける映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がりよりも前となってしまっている。したがって、この比較例2では、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが短くなってしまう。具体的には、図17中の画素P201n,P201m,P201fの順に、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さΔT204n,ΔT204m,ΔT204fが徐々に短くなっている。なお、図17中のタイミングt202,t206,t207,t208,t209もそれぞれ、図4に示したタイミングt2,t6〜t9にそれぞれ対応している。
【0064】
これにより、比較例2では、表示パネル10内の画素位置によって映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが異なってしまい、表示輝度も画素位置によって異なってしまう。具体的には、信号入力端寄りの画素11よりもパネル端よりの画素11のほうが、映像信号電圧Vsigの書き込み期間が短くなるため(ΔT204n>ΔT204m>ΔT204f)、相対的に暗くなる(表示輝度が低くなる)。その結果、例えば図18(A)に示したように、いわゆるシェーディング現象や表示むら(図中の符号P202参照)が発生し、表示画質が劣化してしまうことになる。
【0065】
(本実施の形態)
これに対して、本実施の形態の表示装置1では、上記比較例1,2とは異なり、例えば図19および図20に示したようにして、走査線駆動回路23によって選択パルスの印加期間の調整動作を行い、上記比較例2における問題を低減もしくは回避している。ここで、図19は、図3に示した走査線駆動回路23の動作の一例をタイミング波形図で表したものである。具体的には、(A)はクロック信号ck、(B)はスタートパルス信号sp、(C)〜(F)はシフトレジスタ231からの出力パルス信号SRout1,SRout2,SRoutn,SRout(n+1)、(G)はイネーブル信号en、(H),(I)は走査線WSL1,WSLnの電圧波形をそれぞれ示している。
【0066】
この走査線駆動回路23では、まず、シフトレジスタ231において、クロック信号ck(図19(A))、クロック反転信号xckおよびスタートパルスsp(図19(B))を入力し、出力パルス信号SRout1,SRout2,…,SRoutn,SRout(n+1)を出力する(図19(C)〜(F))。次に、論理積回路232−1〜232−nではそれぞれ、これらの出力パルス信号SRout1,SRout2,…,SRoutn,SRout(n+1)のうちの2つの信号と、イネーブル信号en(図19(G))との論理演算(3AND演算)を行う。
【0067】
このとき、このイネーブル信号enは、図19(G)に示したように、信号線駆動回路24から各走査線WSLまでの距離が大きくなるのに応じて、印加終了タイミングが遅くなることによりパルス幅が長くなるように構成された複数の印加パルスから構成されている。具体的には、この距離が小さい(信号入力端寄りの)走査線WSLnに対応する印加パルスのパルス幅Tennと比べ、上記距離が大きい(パネル端寄りの)走査線WSL1に対応する印加パルスのパルス幅Ten1のほうが長くなっている。これにより、図19(H),(I)に示したように、論理積回路232−1〜232−nおよびバッファ回路233−1〜233−nを介して生成される走査線WSL1〜WSLnにおける選択パルスにおいても、以下のようになる。すなわち、信号線駆動回路24から各走査線WSLまでの距離が大きくなるのに応じて、印加終了タイミングが遅くなることによりパルス幅が長くなる。
【0068】
これらのことから、本実施の形態では、走査線駆動回路23において、例えば図20に示したようにして、走査線WSLにおける選択パルスの印加期間の調整動作を行っている。すなわち、信号線DTLの延在方向(垂直方向(V方向))に沿った、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによってその選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う。具体的には、ここでは、走査線駆動回路23は、上記した距離が大きくなるのに応じて選択パルスの印加期間が連続的に(アナログ的に)長くなるように、印加期間の調整を行っている。
【0069】
より詳細には、まず、ここでは上記比較例1,2と同様に、信号線駆動回路24からの距離が小さい画素P1n(信号入力端寄りの画素11)では、映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが急峻となっている。また、この距離が中程度の画素P1m(中間位置の画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、ややなまってなだらかになっている。そして、この距離が大きい画素P1f(パネル端寄りの画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、大きくなまってなだらかになっている。
【0070】
ここで、本実施の形態においても上記比較例2と同様に、画素P1m,P1fにおいて、走査線WSLへ印加される選択パルスの開始タイミングt7が、信号線DTLにおける映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がりよりも前となってしまっている。ただし、本実施の形態では比較例2とは異なり、上記したように、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによってその選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行っている。これにより、以下説明するように、映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さにおける表示パネル10内の画素位置によるばらつきが抑えられる(もしくは回避される)。
【0071】
すなわち、ここでは、上記した映像信号電圧Vsigの書き込み期間の終了タイミングが、上記距離が大きくなるのに応じて遅くなるように調整される(図20中の2重線の矢印参照)。したがって、この距離が大きくなるのに応じて、映像信号電圧Vsigのパルス波形(具体的には、立ち上がり波形)がなまることによって、映像信号電圧Vsigの書き込み開始タイミングが遅くなった場合であっても、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが、画素位置によらずにほぼ一定となる。言い換えると、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さの画素位置による差異が、低減もしくは回避される。
【0072】
具体的には、図20では、画素P1n,P1m,P1fの順に、映像信号電圧Vsigの書き込み開始タイミングが遅くなっている一方、この順に、映像信号電圧Vsigの書き込み終了タイミングも遅くなるように調整されている。したがって、画素P1n,P1m,P1fのいずれにおいても、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さΔT41がほぼ一定となっている。その結果、本実施の形態の表示装置1では、例えば図18(B)に示したように、上記比較例2と比べ、表示輝度の画素位置によるばらつき(いわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が、低減もしくは回避される。なお、一般に、輝度差が10〜20%以内であれば、パネル全体でシェーディングが視認されないため、上記した選択パルスにおける印加終了タイミングの調整幅は、信号線DTLに対して映像信号電圧Vsigを印加する期間の幅と比べて短くてよい。
【0073】
また、図19および図20では、上記した距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加期間が連続的に(アナログ的に)長くなるように印加期間の調整を行っているが、上記した距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加期間が段階的に(デジタル的に)長くなるように調整してもよい。
【0074】
具体的には、例えば図21では、走査線駆動回路23は、上記した距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加期間が多段階で長くなるように、印加期間の調整を行っている。すなわち、ここでは、表示パネル10内において、パネル下部領域10n(信号入力端側)、パネル中部領域10mおよびパネル上部領域10f(パネル端側)の順に、選択パルスの印加期間が多段階で長くなるように、印加期間の調整を行っている。このように構成した場合にも、例えば図18(C)に示したように、上記比較例2と比べ、表示輝度の画素位置によるばらつき(いわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が、低減もしくは回避される。
【0075】
以上のように本実施の形態では、走査線駆動回路23が、映像信号電圧Vsigの書き込み時に、映像信号電圧Vsigの印加期間内に走査線WSLに対する選択パルスの印加を終了させると共に、信号線DTLの延在方向に沿った信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、この選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって選択パルスの印加期間が長くなるように印加期間の調整を行うようにしたので、表示輝度の画素位置によるばらつきを低減もしくは回避することができる。よって、画素位置に応じた画質劣化(垂直方向に沿ったいわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)を低減もしくは回避することができ、高画質化を図ることが可能となる。
【0076】
また、図3および図19に示したように、走査線駆動回路23へ入力されるイネーブル信号enにおける複数の印加パルスのパルス幅の調整のみによって、上記のような選択パルスの印加期間の調整を行うことができるため、簡単な構成で(低コストで)上記の効果を得ることが可能となる。
【0077】
更に、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加期間が連続的に(アナログ的に)長くなるように印加期間の調整を行うようにした場合には、上記した画素位置に応じた画質劣化をより高精度に抑えることができる。
【0078】
一方、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加期間が段階的に(デジタル的に)長くなるように印加期間の調整を行うようにした場合には、連続的に(アナログ的に)長くなるように調整した場合と比べ、走査線駆動回路23へ入力されるイネーブル信号enにおける複数の印加パルスのパルス幅の調整が簡単になるため、より簡単な構成で(低コストで)上記の効果を得ることが可能となる。
【0079】
<第2の実施の形態>
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上記第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
図22は、本実施の形態に係る表示装置(表示装置1A)における表示動作の際の各種波形の一例を、タイミング図で表したものである。ここで、図22(A)〜(E)に示した電圧波形の種類はそれぞれ、第1の実施の形態における図4(A)〜(E)に示したものと同様となっている。なお、表示装置1Aのブロック構成および画素11における画素回路の構成はそれぞれ、基本的には上記第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。また、表示動作の基本部分(タイミングt11〜t15の期間)についても、図4等に示した第1の実施の形態における表示動作(タイミングt1〜t5の部分)と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
本実施の形態では、上記第1の実施の形態とは異なり、Vth補正期間T2と移動度補正・信号書き込み期間T4との間に、Vth補正休止期間T3が設けられていない。したがって、タイミングt15〜t16での移動度補正・信号書き込み期間T4が、第1の実施の形態におけるタイミングt7〜t8での移動度補正・信号書き込み期間T4に対応している。また、タイミングt16以降での発光期間T5(T0)が、第1の実施の形態におけるタイミングt8以降での発光期間T5(T0)に対応している。
【0082】
また、これに伴い、本実施の形態では上記第1の実施の形態とは異なり、走査線駆動回路23Aが、映像信号電圧Vsigの印加開始前に選択パルスの印加を開始すると共に、この映像信号電圧Vsigの印加期間内にその選択パルスの印加を終了させるようにしている。したがって、図22(A),(C)中の矢印および斜線で示したように、本実施の形態では、映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さは、以下のように規定されている。すなわち、この映像信号電圧Vsigの印加開始タイミング(タイミングt15)と、走査線WSLへの印加電圧(選択パルス)の立ち下がりタイミング(タイミングt16)とによって規定されている。言い換えると、信号線DTLへの印加電圧が基準電圧Vofsから映像信号電圧Vsigへ切り替わるタイミングと、その後に走査線WSLへの印加電圧が電圧Vonから電圧Voffへと切り替わるタイミングとによって規定されている。また別の言い方では、映像信号電圧Vsigの書き込み期間の開始タイミングおよび終了タイミングがそれぞれ、信号線DTLに対する映像信号電圧Vsigの印加開始タイミングと、走査線WSLに印加される選択パルスの印加終了タイミングとによって規定されている。
【0083】
(比較例3)
ここで、このような場合も、例えば図23に示した比較例3に係る表示装置301のように、前述した比較例2と同様に、表示パネル10内の画素位置によって映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが異なってしまい、表示輝度も画素位置によって異なってしまう場合がある。
【0084】
具体的には、この比較例3では、まず上記比較例1,2と同様に、信号線駆動回路24からの距離が小さい画素P301n(信号入力端寄りの画素11)では、映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが急峻となっている。また、この距離が中程度の画素P301m(中間位置の画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、ややなまってなだらかになっている。そして、この距離が大きい画素P301f(パネル端寄りの画素11)では、この映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がり,立ち下がりが、大きくなまってなだらかになっている。
【0085】
ここで、比較例3では、本実施の形態と同様に、上記したように映像信号電圧Vsigの書き込み期間の開始タイミングが、信号線DTLに対する映像信号電圧Vsigの印加開始タイミングによって規定されている。したがって、信号線駆動回路24からの距離が大きくなるのに応じて、映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がりがなまってなだらかになると、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが短くなってしまう。具体的には、図23中の画素P301n,P301m,P301fの順に、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さΔT304n,ΔT304m,ΔT304fが徐々に短くなっている。なお、図23中のタイミングt302,t303,t305,t306,t307はそれぞれ、図22に示したタイミングt2,t3,t5〜t7にそれぞれ対応している。
【0086】
これにより、この比較例3においても、表示パネル10内の画素位置によって映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが異なってしまい、表示輝度も画素位置によって異なってしまう。具体的には、信号入力端寄りの画素11よりもパネル端よりの画素11のほうが、映像信号電圧Vsigの書き込み期間が短くなるため(ΔT304n>ΔT304m>ΔT304f)、相対的に暗くなる(表示輝度が低くなる)。その結果、上記比較例2と同様に、いわゆるシェーディング現象や表示むらが発生し、表示画質が劣化してしまうことになる。また、特に本実施の形態では、上記比較例1,2とは異なり、信号線駆動回路24からの距離が大きくなるのに応じて映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がりがなまってなだらかになると、常にそのような問題が生じてしまうことになる。
【0087】
これに対して、本実施の形態では、上記第1の実施の形態と同様に、例えば図24に示したようにして、走査線駆動回路23Aによって選択パルスの印加期間の調整動作を行い、上記比較例3における問題を低減もしくは回避している。すなわち、信号線DTLの延在方向(垂直方向(V方向))に沿った、信号線駆動回路24から各画素11までの距離が大きくなるのに応じて、選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによってその選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う。
【0088】
すなわち、上記した映像信号電圧Vsigの書き込み期間の終了タイミングが、上記距離が大きくなるのに応じて遅くなるように調整される(図24中の2重線の矢印参照)。したがって、この距離が大きくなるのに応じて、映像信号電圧Vsigのパルス波形(具体的には、立ち上がり波形)がなまることによって、映像信号電圧Vsigの書き込み開始タイミングが遅くなった場合であっても、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さが、画素位置によらずにほぼ一定となる。言い換えると、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さの画素位置による差異が、低減もしくは回避される。
【0089】
具体的には、図24では、画素P2n,P2m,P2fの順に、映像信号電圧Vsigの書き込み開始タイミングが遅くなっている一方、この順に、映像信号電圧Vsigの書き込み終了タイミングも遅くなるように調整されている。したがって、画素P2n,P2m,P2fのいずれにおいても、実際の映像信号電圧Vsigの書き込み期間の長さΔT42がほぼ一定となっている。その結果、本実施の形態の表示装置1Aにおいても、上記比較例3と比べ、表示輝度の画素位置によるばらつき(いわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)が、低減もしくは回避される。
【0090】
以上のように本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることができる。すなわち、画素位置に応じた画質劣化(垂直方向に沿ったいわゆるシェーディング現象の発生や、表示むらの発生)を低減もしくは回避することができ、高画質化を図ることが可能となる。
【0091】
また、上記したように、本実施の形態では、上記比較例1,2や第1の実施の形態とは異なり、信号線駆動回路24からの距離が大きくなるのに応じて映像信号電圧Vsigの信号パルスの立ち上がりがなまってなだらかになると、常にそのような問題が生じる可能性があるため、画素位置に応じた画質劣化を抑えることによる利点が特に大きいと言える。
【0092】
更に、本実施の形態では、Vth補正休止期間T3が設けられていないと共に、映像信号電圧Vsigの印加開始前に選択パルスの印加を開始し、この映像信号電圧Vsigの印加期間内にその選択パルスの印加を終了させるようにしているため、上記第1の実施の形態と比べ、1水平(1H)期間の長さを短くすることができる。具体的には、例えば図25(A),(B)に示した第1の実施の形態における1H期間の長さΔTH1と比べ、例えば図25(C),(D)に示した第2の実施の形態における1H期間の長さΔTH2のほうが短くなる(ΔTH2<ΔTH1)。これにより、1H期間内の映像信号の書込みを短時間で行うことができるため、表示パネル10の大型化や高精細化、表示駆動の高速化などを図ることが可能となる。
【0093】
<モジュールおよび適用例>
続いて、図26〜図31を参照して、上記第1,第2の実施の形態で説明した表示装置1,1Aの適用例について説明する。上記各実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、これらの表示装置は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0094】
(モジュール)
上記各実施の形態の表示装置は、例えば、図26に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板31の一辺に、封止用基板32から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、駆動回路20の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。この外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0095】
(適用例1)
図27は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300が上記各実施の形態の表示装置により構成されている。
【0096】
(適用例2)
図28は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、この表示部420が上記各実施の形態の表示装置により構成されている。
【0097】
(適用例3)
図29は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、この表示部530が上記各実施の形態の表示装置により構成されている。
【0098】
(適用例4)
図30は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。そして、この表示部640が上記各実施の形態の表示装置により構成されている。
【0099】
(適用例5)
図31は、上記各実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そして、これらのうちのディスプレイ740またはサブディスプレイ750が、上記各実施の形態の表示装置により構成されている。
【0100】
<変形例>
以上、いくつかの実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0101】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置1がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路14の構成は、上記実施の形態等で説明したものに限られない。すなわち、必要に応じて容量素子やトランジスタ等を画素回路14に追加するようにしてもよい。その場合、画素回路14の変更に応じて、上述した走査線駆動回路23、信号線駆動回路24および電源線駆動回路25の他に、必要な駆動回路を追加するようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態等では、走査線駆動回路23、信号線駆動回路24および電源線駆動回路25における駆動動作を、タイミング生成回路22が制御する場合について説明したが、他の回路がこれらの駆動動作を制御するようにしてもよい。また、このような走査線駆動回路23、信号線駆動回路24および電源線駆動回路25に対する制御は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。
【0103】
更に、上記実施の形態等では、画素回路14がいわゆる「2Tr1C」の回路構成となっている場合について説明したが、画素回路14の回路構成はこれには限られない。すなわち、トランジスタが有機EL素子12に直列に接続された回路構成を含んでいるものであれば、画素回路14が「2Tr1C」以外の回路構成となっていてもよい。
【0104】
加えて、上記実施の形態等では、書き込みトランジスタTr1および駆動トランジスタTr2がそれぞれ、nチャネルトランジスタ(例えば、nチャネルMOS型のTFT)により形成されている場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、書き込みトランジスタTr1および駆動トランジスタTr2がそれぞれ、pチャネルトランジスタ(例えば、pチャネルMOS型のTFT)により形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1,1A…表示装置、10…表示パネル、10n…パネル下部領域(分割表示領域)、10m…パネル中部領域(分割表示領域)、10f…パネル上部領域(分割表示領域)、11,11R,11G,11B…画素、12,12R,12G,12B…有機EL素子、13…画素アレイ部、14…画素回路、20…駆動回路、20A,21A…映像信号、20B…同期信号、21…映像信号処理回路、22…タイミング生成回路、22A…制御信号、23,23A…走査線駆動回路、231A,231B…フリップフロップ(FF)回路、232−1〜232−n…論理積(3AND)回路、233−1〜233−n…バッファ回路、24,24A…信号線駆動回路、25…電源線駆動回路、WSL,WSL1〜WSLn…走査線、DTL…信号線、DSL…電源線、Tr1…書き込みトランジスタ、Tr2…駆動トランジスタ、Cs…保持容量素子、Di…ダイオード成分、Cel…容量成分、Ids,Ia〜Ie…電流、Vg…ゲート電位、Vs…ソース電位、Vgs…ゲート−ソース間電圧、Vth…閾値電圧、Vsig…映像信号電圧、Vofs,Von,Voff,Vcc,Vini,Cx…電圧、ΔV…電位差、ck…クロック信号、xck…クロック反転信号、sp…スタートパルス信号、en…イネーブル信号、SRout1,SRout2,SRoutn,SRout(n+1)…出力パルス信号、PLSn,PLSf…信号パルス、t1〜t9,t11〜t17…タイミング、T0,T5…発光期間、T1…Vth補正準備期間、T2…Vth補正期間、T3…Vth補正休止期間、T4…移動度補正・信号書き込み期間、T10…消光期間、ΔTen1,ΔTenn…パルス幅、ΔT41、ΔT42…信号書き込み期間、ΔTH1,ΔTH2…1H(1垂直)期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが発光素子を含む複数の画素と、
各画素に接続された走査線および信号線と、
前記走査線に対して、前記複数の画素を順次選択するための選択パルスを印加する走査線駆動回路と、
前記信号線に対して映像信号電圧を印加することにより、前記走査線駆動回路により選択された画素に対して映像信号の書き込みを行う信号線駆動回路と
を備え、
前記走査線駆動回路は、
前記映像信号電圧の印加期間内に前記選択パルスの印加を終了させると共に、
前記信号線の延在方向に沿った前記信号線駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、前記選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって前記選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う
表示装置。
【請求項2】
前記走査線駆動回路は、前記映像信号電圧の印加開始前に前記選択パルスの印加を開始すると共に、この映像信号電圧の印加期間内にその選択パルスの印加を終了させる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記走査線駆動回路は、前記映像信号電圧の印加開始後に前記選択パルスの印加を開始すると共に、この映像信号電圧の印加期間内にその選択パルスの印加を終了させる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記走査線駆動回路は、前記距離が大きくなるのに応じて前記選択パルスの印加期間が連続的に長くなるように、印加期間の調整を行う
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記走査線駆動回路は、前記距離が大きくなるのに応じて前記選択パルスの印加期間が段階的に長くなるように、印加期間の調整を行う
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記走査線駆動回路は、
シフトレジスタと、
前記シフトレジスタから出力される複数のパルス信号と、前記距離が大きくなるのに応じて印加終了タイミングが遅くなることによりパルス幅が長くなるように構成された複数の印加パルスからなるイネーブル信号との論理積演算をそれぞれ行うことにより、各走査線に対応する選択パルスを生成する複数の論理積回路とを有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
各画素に接続された電源線と、
前記電源線に対して、前記発光素子の発光動作および消光動作を制御するための制御パルスを印加する電源線駆動回路と
を更に備えた
請求項1ないし請求項3いずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
各画素は、前記発光素子としての有機電界発光素子と、第1および第2のトランジスタと、保持容量素子とを含み、
前記第1のトランジスタのゲートが前記走査線に接続され、
前記第1のトランジスタにおけるドレインおよびソースのうち、一方が前記信号線に接続されると共に、他方が前記第2のトランジスタのゲートおよび前記保持容量素子の一端に接続され、
前記第2のトランジスタにおけるドレインおよびソースのうち、一方が前記電源線に接続されると共に、他方が前記保持容量素子の他端および前記有機電界発光素子のアノードに接続され、
前記有機電界発光素子のカソードが固定電位に設定されている
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
それぞれが発光素子を含み、走査線および信号線に接続された複数の画素を表示駆動する際に、
前記走査線に対して前記複数の画素を順次選択するための選択パルスを印加しつつ、前記信号線に対して映像信号電圧を印加することにより、選択された画素に対して映像信号の書き込みを行い、
この映像信号の書き込み時に、前記映像信号電圧の印加期間内に前記選択パルスの印加を終了させると共に、
前記信号線の延在方向に沿ったこの信号線の駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、前記選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって前記選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う
表示装置の駆動方法。
【請求項10】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
それぞれが発光素子を含む複数の画素と、
各画素に接続された走査線および信号線と、
前記走査線に対して、前記複数の画素を順次選択するための選択パルスを印加する走査線駆動回路と、
前記信号線に対して映像信号電圧を印加することにより、前記走査線駆動回路により選択された画素に対して映像信号の書き込みを行う信号線駆動回路と
を有し、
前記走査線駆動回路は、
前記映像信号電圧の印加期間内に前記選択パルスの印加を終了させると共に、
前記信号線の延在方向に沿った前記信号線駆動回路から各画素までの距離が大きくなるのに応じて、前記選択パルスの印加終了タイミングが遅くなることによって前記選択パルスの印加期間が長くなるように、印加期間の調整を行う
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−141433(P2011−141433A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2104(P2010−2104)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】