説明

表示装置

【課題】用途に応じて所望の視認性を選択することができる表示装置を提供する。
【解決手段】透明自発光型の画像形成要素20と、前記画像形成要素の画像表示側とは反対側の面に配置された調光要素30と、前記画像形成要素の画像情報に応じて前記調光要素の光学濃度を制御する調光要素制御手段40と、を有することを特徴とする表示装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関し、特に、用途に応じて所望の視認性を選択することができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いた薄型の表示装置が開発されている。図8は、有機EL素子1の構成を概略的に示している。ガラス等の基板2上に、陽極3、有機EL層8(正孔輸送層4、発光層5、及び電子輸送層6)、陰極7等が形成されている。なお、素子1を保護するための封止部材等は省略されている。引出配線(端子)9を介して外部の配線と接続し、両極3,7に電界を印加することにより、電極3,7間に挟まれた領域の発光層5が励起状態となって発光する。なお、発光層5などを無機材料で形成した無機EL素子による表示装置も開発されている。
【0003】
このようなEL素子1を用いた表示装置等は種々提案されており、例えば、有機EL素子とフォトクロミックガラスとを積層させた調光ガラスが提案されている(特許文献1参照)。このような調光ガラスを例えば車両のガラスとして用い、有機EL素子が特定波長の光を発してフォトクロミックガラスを着色させることで、例えば車内を視認不可能として車内に置かれた荷物の盗難の防止を図ることができるとされている。
【0004】
また、画像の視認性を高めるため、EL素子を用いた透明な画像形成板の背面側に、エレクトロクロミック素子を用いた調光板を配置し、外光等に応じて調光板の光透過率を制御する制御手段を備えた表示装置が提案されている(特許文献2参照)。この表示装置は、周囲が明るいときには調光板の光透過率が小さくなるように制御することで画像形成板の表示が見易くなるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−138795号公報
【特許文献2】特開2004−271830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような外光に応じて調光板の光透過率を制御する表示装置では、周囲の状況に応じて視認性が向上するものの、用途に応じて視認性を選択することができないといった問題がある。
そこで、本発明は、用途に応じて所望の視認性を選択することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では以下の表示装置が提供される。
<1> 透明自発光型の画像形成要素と、
前記画像形成要素の画像表示側とは反対側の面に配置された調光要素と、
前記画像形成要素の画像情報に応じて前記調光要素の光学濃度を制御する調光要素制御手段と、を有することを特徴とする表示装置。
【0008】
<2> 前記調光要素制御手段が、さらに外光強度に応じて前記調光要素の光学濃度を制御することを特徴とする<1>に記載の表示装置。
【0009】
<3> 前記画像形成要素の画像情報及び/又は外光強度に応じて該画像形成要素の発光輝度を制御する画像形成要素制御手段を有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の表示装置。
【0010】
<4> 前記画像形成要素が、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたものであることを特徴とする<1>ないし<3>のいずれかに記載の表示装置。
【0011】
<5> 前記調光要素が、エレクトロクロミック型であることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の表示装置。
【0012】
<6> 前記調光要素が、ホストゲスト液晶型であることを特徴とする<1>ないし<4>のいずれかに記載の表示装置。
【0013】
<7> 前記画像形成要素及び調光要素の各支持体が、可撓性の支持体又はプラスチック製の支持体であることを特徴とする<1>ないし<6>のいずれかに記載の表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、用途に応じて所望の視認性を選択することができる表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る表示装置について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置の構成の一例を概略的に示している。この表示装置10は、透明自発光型の画像形成要素20と、画像形成要素20の画像表示側とは反対側の面に配置された調光要素30と、画像形成要素20の画像情報に応じて調光要素30の光学濃度を制御する調光要素制御手段40と、を有している。すなわち、このような表示装置10では、調光要素制御手段40が画像形成要素20の画像情報に応じて調光要素30の光学濃度を制御するため、用途に応じて所望の視認性を選択することができる。
以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0016】
<画像形成要素>
画像形成要素20は画像表示を行う部分であり、有機EL素子を用いた透明自発光型の画像形成板(有機EL画像形成板)が好適である。
図2は、有機EL画像形成板20の構成の一例を概略的に示している。ガラス等の透明な基板(支持体)21上に、陽極22、有機EL層23、陰極24等からなる有機EL素子28が形成されている。また、大気中の酸素や水分による有機EL素子28の劣化を防ぐための封止部材25が設けられている。
【0017】
−基板−
基板21は、光透過性が高い透明なものを用い、材質は高分子等の有機材料であっても、ガラス等の無機材料でもよい。透明基板21は、無色透明であっても有色透明であってもよいが、有機EL素子28から発せられる光の散乱、減衰等を防止することができる点で無色透明であることが好ましい。
例えば、プラスチック製の基板を用いる場合は、有機EL素子等を支持することができる強度、光透過性等を有していれば特に限定されず、公知の材料を使用することができ、具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド、ポリイミド(PIM)、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂(ARTON)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の有機材料が挙げられる。このような有機材料からなるプラスチック基板を用いれば、可撓性を有し、変形に強い画像形成板20を構成することができる。
【0018】
なお、プラスチック基板の場合、その片面又は両面に透湿防止層又はガスバリア層を設けることで水分や酸素の透過を抑制することができる。透湿防止層又はガスバリア層の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機材料を好適に用いることができ、例えば、高周波スパッタリング法などにより透湿防止層又はガスバリア層を形成することができる。
また、熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0019】
透明基板21の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、表示装置10の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板21の形状としては、取り扱い性、有機EL素子28の形成容易性等の観点から、板状であることが好ましい。基板21の構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、基板21は、単一部材で構成されていてもよいし、2つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0020】
−有機EL素子−
基板21上には、有機EL素子28が形成されている。有機EL素子28は、例えば以下のような層構成を採用することができるが、これらに限定されず、目的等に応じて適宜決めればよい。
【0021】
・陽極/発光層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0022】
−陽極−
陽極22は、有機EL層23に正孔を供給する電極としての機能を有し、光透過性の高い透明電極を採用する。陽極22を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。具体例として、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0023】
陽極22を形成する方法としては、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。陽極22を構成する材料との適性等を考慮して適宜選択した方法に従って基板21上に陽極22を形成することができる。例えば、陽極材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って陽極22を形成することができる。
また、陽極22を形成する際のパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0024】
陽極22の厚みは、陽極22を構成する材料等に応じて適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
また、陽極22の抵抗値は、有機EL層23に確実に正孔を供給するために、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
【0025】
陽極22となる透明電極は、無色透明であっても有色透明であってもよいが、その光透過率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透明陽極22については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載されている事項を本発明でも適用することができる。例えば、耐熱性の低いプラスチック基板を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0026】
−有機EL層−
陽極22上には、少なくとも発光層を含む有機EL層23が形成されている。有機EL層23を構成する発光層以外の層としては、前述したように、正孔輸送層、正孔注入層、電荷ブロック層、電子輸送層、電子注入層等の各層が挙げられる。また、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0027】
有機EL層23を形成する方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、転写法、印刷法、インクジェット法等が挙げられ、各層の機能や材料に応じて適宜選択すればよい。なお、カラー表示を行う表示装置とする場合は、発光層に関しては、赤(R)、緑(G)、青(B)といった発光色が異なる発光層をマトリクス状に形成する。
【0028】
例えば、発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0029】
発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。
蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0030】
燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0031】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysicsof Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0032】
燐光発光材料は、発光層中に0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0033】
また、発光層に含有されるホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。
ホスト材料の具体例としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0034】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0035】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極22又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層及び正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、フェニルアゾールやフェニルアジンを配位子に有するIr錯体に代表される各種金属錯体等を含有する層であることが好ましい。
【0036】
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜200nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜200nmであるのがより好ましく、1nm〜200nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0037】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層及び電子輸送層は、陰極24又は陰極側から電子を受け取り、陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層及び電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0038】
電子注入層及び電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0039】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。発光層と陰極側で隣接する正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0040】
−陰極−
有機EL層23上には、透明な陰極24が形成されている。陰極24の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられるが、特にITOやIZO等の透明な導電性材料を用い、1〜数十nmの厚さに成膜して陰極24を形成することで、高い光透過性を確保することができ、好ましい。
【0041】
陰極24の形成方法については特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD法、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陰極24を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
【0042】
陰極24を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等によって行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0043】
また、陰極24と有機EL層23との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで形成してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と解することもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0044】
<保護層>
有機EL素子28は、透明性を損なわないことを条件に、保護層によって保護されていてもよい。保護層を構成する材料としては、水分や酸素等、素子劣化を促進する要素が素子内部に侵入することを抑制する機能を有しているものを使用することができる。具体例として、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiN、SiNOy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0045】
保護層の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0046】
−封止−
有機EL素子は、大気中の水分や酸素による劣化を防ぐため、封止部材25により封止されている。封止部材25は、透過型の画像形成要素(画像形成板)20とするため、ガラス、プラスチック等の透明材料からなるものを用いることができる。
【0047】
例えば、図2に示されるように、封止部材25は、有機EL素子を囲むように接着剤26を介して基板21上に接着されている。封止部材25の内側の空間にはアルゴン等の不活性ガスを封入し、必要に応じて乾燥剤27を設けることで、素子28の劣化をより効果的に防ぐことができる。
【0048】
−駆動−
上記のような構成の画像形成要素(有機EL画像形成板)20は、陽極22と陰極24との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、有機EL素子28を発光させて所望の画像を形成することができる。
【0049】
例えば、パッシブマトリクス型の有機EL画像形成板20では、上下の電極22,24が直交するようにそれぞれストライプ状に形成され、両極22,24が駆動回路に通じる配線(走査線及びデータ線)に接続される。そして、各電極22,24に時系列に電圧(電気信号)をかけていくと、ある時刻では選択された陽極(走査線)22と陰極(データ線)24の交差する部分(画素)のみ有機EL層23に電圧がかかって、このアドレス(電極交差部分)の発光層が発光することになる。このように有機EL画像形成板20における各画素の発光を制御することで所望の画像形成を行うことができる。なお、有機EL素子28の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0050】
<調光要素>
調光要素30は、光の明るさ、色、方向などを調整する機能を有するものであり、画像形成要素20の画像表示側とは反対側(背面側)に配置されている。本発明に係る調光要素30は、調光要素制御手段40によって光学濃度を調整できるものであれば特に限定されないが、例えば、エレクトロクロミック型の調光板が発光濃度を制御し易く、好適である。エレクトロクロミック型調光要素の好ましい態様としては、例えば特開2005−326642号公報に開示されている。
【0051】
図3は、調光要素として用いられるエレクトロクロミック型の調光板の構成の一例を概略的に示している。この調光板30は、ガラス、プラスチック等により形成された2つの透明基板(支持体)31a,31b、エレクトロクロミック材料を吸着した半導体材料(粒子)33a,33b、電解質34等から構成されている。
各透明基板31a,31bの対向する面には透明な導電層32a,32bがそれぞれ設けられており、各導電層32a,32bは外部の電極にそれぞれ接続されている。各基板31a,31bの間にスペーサ35が設けられており、各基板31a,31bの導電層32a,32bの間でエレクトロクロミック材料を吸着した半導体材料33a,33bと電解質34が封止されている。
このような構成の調光板30は、各基板31a,31bの導電層32a,32bを介して電圧を印加することにより、電気エネルギーに応じて光学濃度が変化する。
【0052】
−基板−
基板31a,31bは、透明なものが使用され、ガラス基板のほか、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド、ポリイミド(PIM)、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂(ARTON)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の有機材料からなる基板も使用することができる。このような有機材料からなるプラスチック基板を用いれば、可撓性を有し、変形に強い調光要素30を構成することができる。
なお、画像形成要素20の基板(支持体)と調光要素30の基板(支持体)として、ともに可撓性の基板又はプラスチック基板を用いれば、デザインの自由度が高い表示装置とすることもできる。
【0053】
導電層32a,32bとしては、導電性を有し、透明な電極であれば限定されないが、特にITO蒸着膜は透明性が高く、好ましい。
導電層32a,32bの厚さは、その構成材料にもよるが、高い光透過性を有するとともに、導電性を確保するため、1nm以上、1000nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
【0054】
−エレクトロクロミック材料等−
半導体材料33a,33bにエレクトロクロミック材料を吸着させることでエレクトロクロミック材料への円滑な電子流出入が実現し、短時間で光学濃度が変化する。
エレクトロクロミック材料としては、ビオローゲン系色素、フェノチアジン系色素、スチリル系色素、フェロセン系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、フタロシアニン系色素、等の有機色素、ポリスチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリベンジン、ポリイソチアナフテン、等の導電性高分子化合物類、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物、などが挙げられる。
【0055】
エレクトロクロミック材料を吸着させる半導体材料33a,33bとしては、例えば以下に示すような金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化鉛、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化カドミウム、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化第一鉄等およびその複合化合物、さらにはそれらにフッ素、塩素、アンチモン、燐、砒素、ホウ素、アルミニウム、インジウム、ガリウム、珪素、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、錫等をドープした物、が挙げられる。あるいは酸化チタンの表面にITO、アンチモンドープ酸化錫、FTO等をコートしたものでもよい。
【0056】
金属硫化物としては、硫化亜鉛、硫化カドミウムおよびその複合化合物、さらにはそれらにアルミニウム、ガリウム、インジウム等をドープした物等が挙げられる。あるいは他の素材の表面に金属硫化物をコートしたものでもよい。
【0057】
金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウムおよびその複合化合物、さらにはそれらに少量の異種原子(錫、ゲルマニウム等)をドープした物が挙げられる。あるいは他の素材の表面に金属窒化物をコートしたものでもよい。
【0058】
半導体材料33a,33bに対するエレクトロクロミック材料の吸着量が多ければ多いほど、より強い発色が可能となる。半導体材料33a,33bはより多くのエレクトロクロミック材料の吸着を可能とするためにナノ多孔質化して表面積を増し、20以上の粗さ係数を持つことが好ましく、150以上の粗さ係数を有することが特に好ましい。用いる粒子のサイズは好ましくは100nm以下、より好ましくは1nm以上60nm以下、さらに好ましくは2nm以上40nm以下である。
【0059】
本発明では、上記のようなエレクトロクロミック材料が吸着した半導体材料33a,33bを二層以上用いてもよい。各層は同じ組成の物でもよいし、異なる組成の物でもよい。エレクトロクロミック材料が吸着した半導体材料33a,33bをエレクトロクロミック材料の吸着していない半導体材料33a,33bと組み合わせて用いてもよい。
【0060】
電解質34は、透明なものを用い、電解液(例えば、リチウムパークロレートを支持電解質として含むγ−ブチロラクトン液)のほか、固体電解質を用いることもできる。
【0061】
このように構成される調光板30の透明導電層(電極)32a,32b間に電圧を印加して電流を流すとエレクトロクロミック材料に酸化還元反応が生じ、透明電極32a,32bにおける電子の移動と電解質34からのイオンの移動とが起こることでエレクトロクロミック材料が発色する。例えば、WOは酸化状態では無色であるが、還元されると青色に発色する。その発色度合いは印加電圧に応じて変化する。すなわち、印加する電圧に応じて調光板30の光学濃度を制御することでき、調光板30の光学濃度により画像形成板20に表示される画像の視認性を調整することができる。
【0062】
調光要素30は、例えば、ホストゲスト液晶型のものを採用することもできる。例えば、少なくとも一種の下記一般式(1)で表される置換基を有する二色性色素と、少なくとも一種のホスト液晶と、を含有する調光材料を用いた調光要素を採用することができる。
【0063】
一般式(1): −(Het)−{(B−(Q−(B−C
【0064】
式中、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表し、jは0又は1を表し、p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、(p+r)×nは3〜10の整数であり、p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0065】
上記のような調光材料は、ホスト液晶の配向状態を変化させることで、透明着色状態と透明状態とに変化させて調光したり、又は散乱着色状態と透明状態とに変化させて調光させたりすることができる。特に、前記一般式(1)で表される置換基を有する二色性色素を用いることで、着色状態と透明状態における光の吸収量の差が良好となり、ホスト液晶の配向状態が支持体の面に対して水平状態の時には高い発色を示し、配向状態が支持体の面に対して垂直状態の時には、光の透過率が高くなるという、高い調光性能を示す。
【0066】
なお、上記調光材料に使用可能なホスト液晶とは、電界の作用により、その配向状態を変化させ、ゲストとして溶解されている前記一般式(1)で表される二色性色素の配向状態を制御する機能を有する化合物と定義される。
本発明に使用可能なホスト液晶としては、二色性色素と共存しうるものであれば特に限定されず、例えば、ネマチック相を示す液晶化合物が利用できる。
ネマチック液晶化合物の具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。例えば、Merck社の液晶(ZLI−4692、MLC−6267、6284、6287、6288、6406、6422、6423、6425、6435、6437、7700、7800、9000、9100、9200、9300、10000など)、チッソ社の液晶(LIXON5036xx、5037xx、5039xx、5040xx、5041xxなど)が挙げられる。
【0067】
<調光要素制御手段>
図1に示されるように、調光要素制御手段40は、画像形成要素(有機EL画像形成板)20と調光要素(エレクトロクロミック調光板)30にそれぞれ接続しており、画像形成要素20の画像情報に応じて調光要素30の光学濃度を制御する。
【0068】
調光要素制御手段40によって調光要素30の光学濃度を制御する際の画像情報の基準は特に限定されず、用途に応じて視認性を調整できるようにすればよい。例えば、静止画と動画の場合で調光要素30の光学濃度を変化させてもよいし、あるいは、画像情報の情報量や重要度などを基準とし、例えば情報量が所定の値を超える場合や、重要度に応じて調光要素30の光学濃度が変化するように制御してもよい。いずれにせよ、調光要素制御手段40が、画像情報の基準となる信号等に応じて調光板30の電極32a,32b間に印加する電圧を調整することで調光板30の光学濃度を制御することができ、調光板30の光学濃度により画像形成板20の画像の視認性を調整することができる。
【0069】
すなわち、本発明に係る表示装置10では、画像形成板20で形成する画像情報に応じて調光板30の光学濃度を制御することにより画像の視認性を調整することができ、用途に応じて所望の視認性を選択することができる。例えば、画像形成板20では、有機EL素子の自発光特性によって鮮明な画像を形成するとともに、画像情報に応じて調光板30の光学濃度を調整することで、コントラストの高い画像を表示することができる。
【0070】
なお、調光要素30の光学濃度は、必ずしも画像形成板20に形成される画像の視認性が常に向上するように変化させる必要はなく、用途に応じた視認性が得られるように制御すればよい。例えば、画像情報の重要性を基準として光学濃度を制御する場合は、重要度が低い画像を表示するときは調光要素30の光学濃度を薄くし、重要度が高い画像を表示するときには調光要素30の光学濃度を濃くして視認性を高めるようにしてもよい。このように画像情報の重要度に応じて調光要素30の光学濃度の濃度を制御して視認性を変化させるようにすれば、重要度の高い画像情報の印象を高めることができる。
【0071】
本発明に係る表示装置10は、調光要素制御手段40が、さらに外光強度に応じて調光要素30の光学濃度を制御する機能を有してもよい。
本発明に係る表示装置10が、例えば自動車や電車などの屋外で使用される機器や建物等に備え付けられる場合は、画像形成板20に表示される画像の視認性は、太陽光などの外光により大きく影響される。そこで、調光要素制御手段40が、画像形成板20の画像情報に応じて調光要素30の光学濃度を制御するほか、さらに外光強度に応じて調光要素30の光学濃度を制御するようにすれば、特に屋外で使用される場合でも外光による影響を抑制し、どのような場所や時間帯であっても、画像情報を基礎とした視認性の調整を図ることができる。例えば、晴天の日中など、外光強度が高い場合には、通常、画像形成板20に表示される画像の視認性は低下する。そこで、画像形成板20の背面側に設けられた調光要素30の光学濃度を高めて外光の入射を妨げることにより、外光による視認性の影響を排除し、画像情報に基づく視認性を安定して保つことができる。
【0072】
例えば、調光要素制御手段40を照度センサに接続し、照度センサにより画像形成板20の周囲における照度を計測し、その計測値に基づいて調光要素制御手段40が調光板30の光学濃度を制御するように構成すればよい。照度センサは電磁波の強度に応じて抵抗が変化する材料である限り特に限定はされないが、フォトトランジスタ、CdSセンサ、フォトダイオード、CCD、CMOS、NMOS等が挙げられる。より好ましい照度センサはフォトトランジスタ、フォトダイオードである。この場合、例えば、図4に示すような照度センサを構成するフォトトランジスタ15と、調光フィルター16を組み込んだ回路17を用いることができる。
【0073】
例えば、図5に示されるように、本発明に係る表示装置を車窓型ディスプレイとして用いれば、画像表示を行わない場合は透明なパネルであるため、外の景色を眺めることができ、必要に応じて画像形成板20によって停車駅等を表示することができる。このとき、調光要素制御手段が、画像形成板20の画像情報に応じて調光板30の光学濃度を調整するとともに、照度センサ60で測定した外光強度に応じて調光板30の光学濃度を調整することで、外光を遮って視認性を高めることができる。
【0074】
<画像形成要素制御手段>
本発明に係る表示装置は、画像形成要素の画像情報及び/又は外光強度に応じて画像形成板20の発光輝度を制御する画像形成要素制御手段を備えてもよい。図6は、画像形成板20の画像情報に応じて調光板30の光学濃度を制御する調光要素制御手段40に加え、画像形成板20の画像情報に応じて画像形成板20の発光輝度を制御する画像形成要素制御手段50を備えた表示装置11の構成を概略的に示している。
【0075】
この表示装置11では、画像形成板20の画像情報に応じて調光要素制御手段40が調光要素30の光学濃度を制御するとともに、画像形成要素制御手段50が画像形成板20の発光輝度を制御するように構成されている。画像形成板20の発光輝度は、画像形成板20の両極22,24間に印加する電圧により制御することができる。このように調光板30の光学濃度だけでなく、画像形成板20の発光輝度も制御する表示装置11であれば、視認性をさらに高精度に調整することができる。
【0076】
図9は、図6に示す構成の表示装置における制御フローの一例を示している。図9に示す様に、例えば、車窓を眺める状態で画像情報がある場合、画像形成要素制御手段50は作動し、透明自発光型画像形成要素20が画像情報を表示する。更にニュース等の画像情報がある場合、その画像情報に応じて調光要素制御手段40にフィードバックが掛かり、調光板30の光学濃度を調整し画像情報の視認性を高くするように働く。
【0077】
また、画像形成要素制御手段50は、外光強度に応じて画像形成板20の発光輝度を制御するものでもよい。例えば、図7に示すように、調光要素制御手段40と画像形成要素制御手段50に接続する照度センサ60を設け、照度センサ60により周囲の照度を計測し、その計測値に基づき、調光要素制御手段40が調光板30の光学濃度を調整するとともに、画像形成要素制御手段50が画像形成板20の発光輝度を調整するように構成する。このように、調光要素制御手段40のほか、画像形成要素制御手段50が外光強度に応じて画像形成板20の発光輝度を制御する表示装置12とすれば、外光による影響が一層抑制され、画像情報を基礎とした視認性をより高精度に調整することができる。
なお、画像形成要素制御手段50は、画像形成板20の画像情報及び外光強度に応じて該画像形成板20の発光輝度を制御するものとしてもよい。
【0078】
図10は、図7に示す構成の表示装置における制御フローの一例を示している。図10に示す様に、例えば、車窓を眺める状態で昼間、外光が眩しい状態では、照度センサ60が作動し、画像情報の有無に依らず調光要素制御手段40が作動して調光板30の光学濃度を調整する。一方、昼間、外光が眩しくない状態あるいは夜間の場合、照度センサ60は作動しないが、ニュース等の画像情報がある場合には画像形成要素制御手段50は作動し、透明自発光型画像形成要素20が画像情報を表示する。更にニュース速報等重要情報がある場合には、その画像情報に応じて調光要素制御手段40にフィードバックが掛かり、調光板30の光学濃度を調整し、画像情報の視認性を高くするように働く。
【0079】
以上本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、画像形成要素20は、透明で自発光型のものであれば特に限定されず、TFTを用いたアクティブマトリクス型の有機EL画像形成板でもよいし、無機EL素子により画像形成を行うものでもよい。
【0080】
また、本発明に係る表示装置の用途は特に限定されるものではなく、例えば、電車、自動車等の車両のほか、ビルなどの建物に設置された窓ガラスのディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、テレビなどの表示部として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る表示装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】画像形成要素(有機EL画像形成板)の一例を示す概略構成図である。
【図3】調光要素(エレクトロクロミック調光板)の一例を示す概略構成図である。
【図4】外光強度に応じて調光要素の光学濃度を制御する回路の例を示す図である。
【図5】本発明に係る表示装置を車窓型ディスプレイとして用いる場合の例を示す概略図である。
【図6】本発明に係る表示装置の他の例を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る表示装置のさらに他の例を示す概略構成図である。
【図8】有機EL素子の構成の一例を示す概略図である。
【図9】図6に示す構成の表示装置における制御フローの一例を示す図である。
【図10】図7に示す構成の表示装置における制御フローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
10,11,12…表示装置
20…透明自発光型画像形成要素(有機EL画像形成板)
30…調光要素(調光板)
33a,33b…エレクトロクロミック材料を吸着した半導体材料
40…調光要素制御手段
50…画像形成要素制御手段
60…照度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明自発光型の画像形成要素と、
前記画像形成要素の画像表示側とは反対側の面に配置された調光要素と、
前記画像形成要素の画像情報に応じて前記調光要素の光学濃度を制御する調光要素制御手段と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記調光要素制御手段が、さらに外光強度に応じて前記調光要素の光学濃度を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記画像形成要素の画像情報及び/又は外光強度に応じて該画像形成要素の発光輝度を制御する画像形成要素制御手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画像形成要素が、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記調光要素が、エレクトロクロミック型であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記調光要素が、ホストゲスト液晶型であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画像形成要素及び調光要素の各支持体が、可撓性の支持体又はプラスチック製の支持体であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−210570(P2008−210570A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44245(P2007−44245)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】