表示装置
【課題】 柔軟性を保ちつつ、強い力による曲げ変形に対する機械的耐久性が高められた表示装置を提供する。
【解決手段】 支持基板(1)と透明な表示基板(6)とを有するフレキシブルディスプレイ(20)、および前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材(12)を具備することを特徴とする。
【解決手段】 支持基板(1)と透明な表示基板(6)とを有するフレキシブルディスプレイ(20)、および前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材(12)を具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を用いた液晶表示装置は、その高品質な表示や動画表示能力などにより、パソコン用モニタをはじめ携帯電話などの情報端末向けの表示装置として広く使われている。
【0003】
特に、最近はその高機能化とともに、柔軟性などの付加価値も同時に求められている。プラスチック基板を用いたディスプレイの開発が近年盛んに行なわれており、さまざまな方法で実現されてきているとともに、ディスプレイの曲がりに入力機能を担わせたヒューマンインターフェイスデバイスも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ただし、このような柔軟性を持つ表示装置は機械的な耐久性に乏しく、強い力で曲げられた場合に容易に破損する。剛性の高いプラスチックシート等で表示装置を保護することによって、破損の防止は可能となるものの、この場合には表示装置の柔軟性が犠牲となる。その結果、保護に使用したプラスチックシート以上の柔軟性が得られなくなる。
【特許文献1】特開2004−046792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟性を保ちつつ、強い力による曲げ変形に対する機械的耐久性が高められた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる表示装置は、支持基板と透明な表示基板とを有するフレキシブルディスプレイ、および
前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柔軟性を保ちつつ、強い力による曲げ変形に対する機械的耐久性が高められた表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、歪速度の上昇に伴なって粘度が急激に上昇するダイラタント流体に着目した。ダイラタント流体が収容された部材を、保護部材としてフレキシブルディスプレイの外側に設ける。この保護部材は、外力ゼロの状態では液体のように柔らかい一方、強い外力が加わると粘度の上昇により瞬時に固体のように硬くなる。こうした効果によって、強い力による曲げ変形からフレキシブルディスプレイを保護することが可能となった。しかも、フレキシブルディスプレイ本来の柔軟性は、何等損なわれることはない。
【0009】
ダイラタント流体としては、例えばコーンスターチや酸化チタンといった粉体を水に分散させてなる分散体が挙げられる。
【0010】
含有される粉体の直径や体積濃度を適宜選択して、ダイラタント流体の特性を調整することができる。例えば酸化チタンの場合には、粒径は0.2μm〜10μmの範囲内が好ましく、体積濃度は27.2〜47vol.%の範囲内が好ましい。こうした条件を満たしていれば、ダイラタント流体としての効果を発揮することができる。
【0011】
水としては、特に限定されず、分散液を安定化させるためにピロリン酸ナトリウム、甘藷糖を溶かした水溶液等に、上述したような粉体を分散させてもよい。
【0012】
ダイラタント流体は、例えば周囲が封止された可撓性シートで挟み込むことによって、収容部材を形成することができる。あるいは、チューブ内に収容することもできる。ダイラタント流体収容部材の詳細については後述する。
【0013】
本発明の実施形態においては、液晶を用いたディスプレイ、有機LEDを用いたディスプレイ、及び電子ペーパーをフレキシブルディスプレイとして用いることができる。
【0014】
図1には、液晶を用いたフレキシブルディスプレイの概略を表わす断面図を示す。図示するディスプレイ20においては、画素電極2および薄膜トランジスタ(TFT)3が設けられた支持基板1と、対向電極5が設けられた対向基板6とによって、液晶層4が挟持される。対向基板6は表示基板である。
【0015】
かかるディスプレイの製造にあたっては、まず、アクティブマトリクス基板を作製し、液晶セルを形成する。アクティブマトリクスの製造方法としては、転写法と直接形成法とが挙げられるが、ここでは柔軟性を有する基板に薄膜トランジスタ(TFT)を直接形成する直接形成法について述べる。
【0016】
柔軟性を有する支持基板1としては、例えばポリエーテルスルホン(PES)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの柔軟性を有する樹脂シート、厚み150μm以下のガラス、メタルホイルを用いることができる。その厚さは、30〜200μm程度であり、例えば150μmとすることができる。支持基板1に対し、コロナ処理やUVオゾン処理などの表面処理を施した後、50〜150nm程度の厚さの絶縁膜をスパッタリング法により形成する。絶縁膜としては、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiNx)、およびシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等が挙げられる。次いで、MoやAlなどの金属あるいはMoTaやMoWなどの合金の薄膜を、例えば300nmスパッタで形成する。この薄膜を、フォトリソグラフィー法を用いて選択的にエッチングすることによって、薄膜トランジスタ3のゲート電極が得られる。
【0017】
さらに、ゲート絶縁膜、チャネル層、およびチャネル保護層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。ゲート絶縁膜としては、SiOxやSiNx、SiOxNyの単層あるいは積層の膜を300nm程度の厚さで形成することができる。チャネル層としては、アモルファスシリコン層を150nm程度の厚さで形成し、チャネル保護層はSiOx、またはSiNxで300nm程度形成する。
【0018】
チャネル保護層をフォトリソグラフィー法で選択エッチングし、リンドープしたアモルファスシリコンをCVD法などで形成して、n型半導体層とする。これらのCVD工程では、支持基板1の耐熱温度を超えないよう注意を払う必要がある。
【0019】
その後、AlやMoなどの金属薄膜を300nm程度の厚さで形成する。フォトリソグラフィー法を用いて、チャネル層、n型半導体層、および電極層のパターニングを行ない、薄膜トランジスタ3のソース電極およびドレイン電極を形成する。信号線に関しても、同層で形成する。
【0020】
CVD法などを用いて、SiOxやSiNxなどにより保護層を形成する。ドレイン電極には、フォトリソグラフィー法を用いてコンタクトホールを形成する。ITOなどの透明電極をスパッタリング法などにより成膜し、フォトリソグラフィー法でパターニングを行なって画素電極2を形成する。
【0021】
このようなTFTアレイの製造方法は一例にすぎず、a−Si、poly−Si、および有機半導体などの半導体材料や薄膜トランジスタの構造は、特に限定されるものではない。
【0022】
得られた薄膜トランジスタアレイに対し、ポリイミドなどの樹脂を用いて配向膜を形成してラビング処理を行なう。一方、対向基板6としては、厚さ30〜200μm程度のPES、COP、PC、PMMA等の透明な樹脂シート、およびガラスなどを用いることができる。例えば、厚さ150μmのガラス基板を対向基板6として用いられる。こうした対向基板6には、ブラックマトリックス、カラーフィルターを形成して対向電極5を得る。そして配向膜を形成してラビング処理を行なう。
【0023】
支持基板1に対向基板6とのギャップを保つスペーサを形成し外周に形成したシール剤で2枚の基板を貼り付ける。2枚の基板の間隙に液晶を注入して液晶層4を形成し、封止することによって液晶セルが完成する。
【0024】
この液晶セルにおいては、支持基板1および対向基板6のいずれも柔軟性を有しており、容易に曲げることができる。
【0025】
本発明の実施形態においては、図示するようなフレキシブルディスプレイの外側に、ダイラタント流体収容部材が配置される。フレキシブルディスプレイの厚さは、通常200〜500μm程度である。こうしたディスプレイの柔軟性が損なわれない範囲で、ダイラタント流体収容部材の厚さが決定される。
【0026】
ダイラタント流体収容部材は、例えばフレキシブルディスプレイの支持基板の全面に設けることができる。こうした表示装置の断面図を、図2に示す。図示する表示装置21においては、フレキシブルディスプレイ20の支持基板1の全面に、ダイラタント流体収容部材12が配置されている。この場合、ダイラタント流体収容部材12は、フレキシブルディスプレイ20の裏面7全面に設けられているということができる。ダイラタント流体収容部材12は、周辺に封止部9を有する可撓性シート11でダイラタント流体10を挟み込んで形成される。可撓性シート11としては、例えば20〜40μm程度の厚さを有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができる。接着剤等により周辺を封止して、封止部9が形成される。
【0027】
図2に示した表示装置の裏面7の平面図を、図3に示す。こうした表示装置21に曲げ変形が加えられた場合には、図4に示されるように力が作用する。図4中、矢印Aは縮み方向を表わし、矢印Bは伸び方向を表わす。フレキシブルディスプレイ20の裏面7に設けられたダイラタント流体収容部材12においては、縮み方向Aにダイラタント流体が歪む。この方向に強い力で曲げ変形が加えられた場合は、ダイラタント流体が硬化してフレキシブルディスプレイ20の破損は防止されることになる。
【0028】
ダイラタント流体収容部材12は、必ずしもフレキシブルディスプレイ20の裏面7の全面に設けられる必要はなく、図5の平面図に示されるように裏面7の一部に設けることもできる。
【0029】
ダイラタント流体は、チューブ等の長手を有する中空体に充填して、ダイラタント流体収容部材を構成することもできる。こうしたダイラタント流体収容部材13は、例えば図5の断面図に示されるように、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の一部に設けることができる。
【0030】
ディスプレイ20の裏面7であれば、ダイラタント流体収容部材13の配置される場所は特に規定されない。例えば図6に示されるように、裏面7の中心に沿って長手方向にダイラタント流体収容部材13を配置することができる。図示していないが、複数のダイラタント流体収容部材13を、任意の配列で裏面7に配置してよい。さらには、ダイラタント流体収容部材を屈曲させて任意の形状とし、ディスプレイ20の裏面7の所定の領域に配置することもできる。
【0031】
ダイラタント流体収容部材13は、ディスプレイ20の裏面7および表示面8の両面に設けてもよい。具体的には、図7の断面図に示されるように、ダイラタント流体収容部材13は、ディスプレイ20を挟み込むように裏面7および表示面8の向かい合う辺に配置する。フレキシブルディスプレイ20の裏面7における平面図を図8に示すが、表示面8においても、ダイラタント流体収容部材13は同様に配置される。
【0032】
ダイラタント流体収容部材13は、フレキシブルディスプレイ20のY軸方向の2辺を挟み込む形状で設けられているので、このY軸方向の曲がりに対して効果が発揮される。すなわち、Y軸方向の曲がりについては、上に凸の方向および下に凸の方向のいずれに対しても、フレキシブルディスプレイ20は保護される。
【0033】
あるいは、ダイラタント流体収容部材13は、図9に示されるように、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の外周に沿って配置してもよい。外周に沿って配置される場合には、ディスプレイ20の裏面7に限定されず、表示面8に配置することもできる。この場合には、X軸方向およびY軸方向の2つの方向に沿ってダイラタント流体収容部材13が設けられていることになる。したがって、X軸方向およびY軸方向の曲がりについてフレキシブルディスプレイ20を保護することができる。
【0034】
ダイラタント流体が収容されるチューブは、蛇腹状とすることができる。具体的には、図10の側面図に示すように、フレキシブルディスプレイ20の曲げによってチューブ13が伸縮する。衝撃が加えられた際には、ダイラタント流体の作用によりチューブが硬くなる。特にチューブが蛇腹形状の場合、腹部14で曲げを加えたときに十分な伸縮が生じることから、ダイラタント現象が発現しやすい
ダイラタント流体収容部材は、パッド状の形状に形成することもできる。具体的には、パッド状とは、柱状形状、または半球ドーム状の形状をさす。図11には、パッド状のダイラタント流体収容部材15がディスプレイ20の裏面7に設けられた表示装置の側面図を示す。フレキシブルディスプレイ20に強い力が加えられて閾値以上の曲率半径で曲げられると、図12に示されるように、内径にあるパッド同士が接触し、各々のパッド15に押し込み方向の歪が発生してパッドが硬化する。曲率半径の閾値はパッド間の距離および、パッドの高さで調整可能である。パッド状のダイラタント流体収容部材15のサイズは、分散液の量および濃度、ディスプレイサイズ、さらには許容できるディスプレイの重量等に応じて適宜決定すればよく、パッド状のダイラタント流体収容部材15は、曲げ変形が加わる位置に応じて、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の任意の位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に用いられるフレキシブルディスプレイの断面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図3】図2に示す表示装置の平面図。
【図4】図2に示す表示装置に曲げ変形が加えられた状態の断面図。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図6】図5に示す表示装置の平面図。
【図7】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図8】図7に示す表示装置の平面図。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす平面図。
【図10】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図11】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図12】図11に示す表示装置に曲げ変形が加えられた状態の断面図。
【符号の説明】
【0036】
1…支持基板; 2…画素電極; 3…薄膜トランジスタ; 4…液晶層
5…対向電極; 6…対向基板; 7…裏面; 8…表示面; 9…封止部
10…ダイラタント流体; 11…可撓性シート; 12…ダイラタント流体収容部材
13…ダイラタント流体収容部材; 14…チューブの腹部
15……ダイラタント流体収容部材; 20…フレキシブルディスプレイ
21…表示装置; A…縮み方向; B…伸び方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を用いた液晶表示装置は、その高品質な表示や動画表示能力などにより、パソコン用モニタをはじめ携帯電話などの情報端末向けの表示装置として広く使われている。
【0003】
特に、最近はその高機能化とともに、柔軟性などの付加価値も同時に求められている。プラスチック基板を用いたディスプレイの開発が近年盛んに行なわれており、さまざまな方法で実現されてきているとともに、ディスプレイの曲がりに入力機能を担わせたヒューマンインターフェイスデバイスも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ただし、このような柔軟性を持つ表示装置は機械的な耐久性に乏しく、強い力で曲げられた場合に容易に破損する。剛性の高いプラスチックシート等で表示装置を保護することによって、破損の防止は可能となるものの、この場合には表示装置の柔軟性が犠牲となる。その結果、保護に使用したプラスチックシート以上の柔軟性が得られなくなる。
【特許文献1】特開2004−046792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟性を保ちつつ、強い力による曲げ変形に対する機械的耐久性が高められた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる表示装置は、支持基板と透明な表示基板とを有するフレキシブルディスプレイ、および
前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柔軟性を保ちつつ、強い力による曲げ変形に対する機械的耐久性が高められた表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、歪速度の上昇に伴なって粘度が急激に上昇するダイラタント流体に着目した。ダイラタント流体が収容された部材を、保護部材としてフレキシブルディスプレイの外側に設ける。この保護部材は、外力ゼロの状態では液体のように柔らかい一方、強い外力が加わると粘度の上昇により瞬時に固体のように硬くなる。こうした効果によって、強い力による曲げ変形からフレキシブルディスプレイを保護することが可能となった。しかも、フレキシブルディスプレイ本来の柔軟性は、何等損なわれることはない。
【0009】
ダイラタント流体としては、例えばコーンスターチや酸化チタンといった粉体を水に分散させてなる分散体が挙げられる。
【0010】
含有される粉体の直径や体積濃度を適宜選択して、ダイラタント流体の特性を調整することができる。例えば酸化チタンの場合には、粒径は0.2μm〜10μmの範囲内が好ましく、体積濃度は27.2〜47vol.%の範囲内が好ましい。こうした条件を満たしていれば、ダイラタント流体としての効果を発揮することができる。
【0011】
水としては、特に限定されず、分散液を安定化させるためにピロリン酸ナトリウム、甘藷糖を溶かした水溶液等に、上述したような粉体を分散させてもよい。
【0012】
ダイラタント流体は、例えば周囲が封止された可撓性シートで挟み込むことによって、収容部材を形成することができる。あるいは、チューブ内に収容することもできる。ダイラタント流体収容部材の詳細については後述する。
【0013】
本発明の実施形態においては、液晶を用いたディスプレイ、有機LEDを用いたディスプレイ、及び電子ペーパーをフレキシブルディスプレイとして用いることができる。
【0014】
図1には、液晶を用いたフレキシブルディスプレイの概略を表わす断面図を示す。図示するディスプレイ20においては、画素電極2および薄膜トランジスタ(TFT)3が設けられた支持基板1と、対向電極5が設けられた対向基板6とによって、液晶層4が挟持される。対向基板6は表示基板である。
【0015】
かかるディスプレイの製造にあたっては、まず、アクティブマトリクス基板を作製し、液晶セルを形成する。アクティブマトリクスの製造方法としては、転写法と直接形成法とが挙げられるが、ここでは柔軟性を有する基板に薄膜トランジスタ(TFT)を直接形成する直接形成法について述べる。
【0016】
柔軟性を有する支持基板1としては、例えばポリエーテルスルホン(PES)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの柔軟性を有する樹脂シート、厚み150μm以下のガラス、メタルホイルを用いることができる。その厚さは、30〜200μm程度であり、例えば150μmとすることができる。支持基板1に対し、コロナ処理やUVオゾン処理などの表面処理を施した後、50〜150nm程度の厚さの絶縁膜をスパッタリング法により形成する。絶縁膜としては、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiNx)、およびシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等が挙げられる。次いで、MoやAlなどの金属あるいはMoTaやMoWなどの合金の薄膜を、例えば300nmスパッタで形成する。この薄膜を、フォトリソグラフィー法を用いて選択的にエッチングすることによって、薄膜トランジスタ3のゲート電極が得られる。
【0017】
さらに、ゲート絶縁膜、チャネル層、およびチャネル保護層を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。ゲート絶縁膜としては、SiOxやSiNx、SiOxNyの単層あるいは積層の膜を300nm程度の厚さで形成することができる。チャネル層としては、アモルファスシリコン層を150nm程度の厚さで形成し、チャネル保護層はSiOx、またはSiNxで300nm程度形成する。
【0018】
チャネル保護層をフォトリソグラフィー法で選択エッチングし、リンドープしたアモルファスシリコンをCVD法などで形成して、n型半導体層とする。これらのCVD工程では、支持基板1の耐熱温度を超えないよう注意を払う必要がある。
【0019】
その後、AlやMoなどの金属薄膜を300nm程度の厚さで形成する。フォトリソグラフィー法を用いて、チャネル層、n型半導体層、および電極層のパターニングを行ない、薄膜トランジスタ3のソース電極およびドレイン電極を形成する。信号線に関しても、同層で形成する。
【0020】
CVD法などを用いて、SiOxやSiNxなどにより保護層を形成する。ドレイン電極には、フォトリソグラフィー法を用いてコンタクトホールを形成する。ITOなどの透明電極をスパッタリング法などにより成膜し、フォトリソグラフィー法でパターニングを行なって画素電極2を形成する。
【0021】
このようなTFTアレイの製造方法は一例にすぎず、a−Si、poly−Si、および有機半導体などの半導体材料や薄膜トランジスタの構造は、特に限定されるものではない。
【0022】
得られた薄膜トランジスタアレイに対し、ポリイミドなどの樹脂を用いて配向膜を形成してラビング処理を行なう。一方、対向基板6としては、厚さ30〜200μm程度のPES、COP、PC、PMMA等の透明な樹脂シート、およびガラスなどを用いることができる。例えば、厚さ150μmのガラス基板を対向基板6として用いられる。こうした対向基板6には、ブラックマトリックス、カラーフィルターを形成して対向電極5を得る。そして配向膜を形成してラビング処理を行なう。
【0023】
支持基板1に対向基板6とのギャップを保つスペーサを形成し外周に形成したシール剤で2枚の基板を貼り付ける。2枚の基板の間隙に液晶を注入して液晶層4を形成し、封止することによって液晶セルが完成する。
【0024】
この液晶セルにおいては、支持基板1および対向基板6のいずれも柔軟性を有しており、容易に曲げることができる。
【0025】
本発明の実施形態においては、図示するようなフレキシブルディスプレイの外側に、ダイラタント流体収容部材が配置される。フレキシブルディスプレイの厚さは、通常200〜500μm程度である。こうしたディスプレイの柔軟性が損なわれない範囲で、ダイラタント流体収容部材の厚さが決定される。
【0026】
ダイラタント流体収容部材は、例えばフレキシブルディスプレイの支持基板の全面に設けることができる。こうした表示装置の断面図を、図2に示す。図示する表示装置21においては、フレキシブルディスプレイ20の支持基板1の全面に、ダイラタント流体収容部材12が配置されている。この場合、ダイラタント流体収容部材12は、フレキシブルディスプレイ20の裏面7全面に設けられているということができる。ダイラタント流体収容部材12は、周辺に封止部9を有する可撓性シート11でダイラタント流体10を挟み込んで形成される。可撓性シート11としては、例えば20〜40μm程度の厚さを有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができる。接着剤等により周辺を封止して、封止部9が形成される。
【0027】
図2に示した表示装置の裏面7の平面図を、図3に示す。こうした表示装置21に曲げ変形が加えられた場合には、図4に示されるように力が作用する。図4中、矢印Aは縮み方向を表わし、矢印Bは伸び方向を表わす。フレキシブルディスプレイ20の裏面7に設けられたダイラタント流体収容部材12においては、縮み方向Aにダイラタント流体が歪む。この方向に強い力で曲げ変形が加えられた場合は、ダイラタント流体が硬化してフレキシブルディスプレイ20の破損は防止されることになる。
【0028】
ダイラタント流体収容部材12は、必ずしもフレキシブルディスプレイ20の裏面7の全面に設けられる必要はなく、図5の平面図に示されるように裏面7の一部に設けることもできる。
【0029】
ダイラタント流体は、チューブ等の長手を有する中空体に充填して、ダイラタント流体収容部材を構成することもできる。こうしたダイラタント流体収容部材13は、例えば図5の断面図に示されるように、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の一部に設けることができる。
【0030】
ディスプレイ20の裏面7であれば、ダイラタント流体収容部材13の配置される場所は特に規定されない。例えば図6に示されるように、裏面7の中心に沿って長手方向にダイラタント流体収容部材13を配置することができる。図示していないが、複数のダイラタント流体収容部材13を、任意の配列で裏面7に配置してよい。さらには、ダイラタント流体収容部材を屈曲させて任意の形状とし、ディスプレイ20の裏面7の所定の領域に配置することもできる。
【0031】
ダイラタント流体収容部材13は、ディスプレイ20の裏面7および表示面8の両面に設けてもよい。具体的には、図7の断面図に示されるように、ダイラタント流体収容部材13は、ディスプレイ20を挟み込むように裏面7および表示面8の向かい合う辺に配置する。フレキシブルディスプレイ20の裏面7における平面図を図8に示すが、表示面8においても、ダイラタント流体収容部材13は同様に配置される。
【0032】
ダイラタント流体収容部材13は、フレキシブルディスプレイ20のY軸方向の2辺を挟み込む形状で設けられているので、このY軸方向の曲がりに対して効果が発揮される。すなわち、Y軸方向の曲がりについては、上に凸の方向および下に凸の方向のいずれに対しても、フレキシブルディスプレイ20は保護される。
【0033】
あるいは、ダイラタント流体収容部材13は、図9に示されるように、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の外周に沿って配置してもよい。外周に沿って配置される場合には、ディスプレイ20の裏面7に限定されず、表示面8に配置することもできる。この場合には、X軸方向およびY軸方向の2つの方向に沿ってダイラタント流体収容部材13が設けられていることになる。したがって、X軸方向およびY軸方向の曲がりについてフレキシブルディスプレイ20を保護することができる。
【0034】
ダイラタント流体が収容されるチューブは、蛇腹状とすることができる。具体的には、図10の側面図に示すように、フレキシブルディスプレイ20の曲げによってチューブ13が伸縮する。衝撃が加えられた際には、ダイラタント流体の作用によりチューブが硬くなる。特にチューブが蛇腹形状の場合、腹部14で曲げを加えたときに十分な伸縮が生じることから、ダイラタント現象が発現しやすい
ダイラタント流体収容部材は、パッド状の形状に形成することもできる。具体的には、パッド状とは、柱状形状、または半球ドーム状の形状をさす。図11には、パッド状のダイラタント流体収容部材15がディスプレイ20の裏面7に設けられた表示装置の側面図を示す。フレキシブルディスプレイ20に強い力が加えられて閾値以上の曲率半径で曲げられると、図12に示されるように、内径にあるパッド同士が接触し、各々のパッド15に押し込み方向の歪が発生してパッドが硬化する。曲率半径の閾値はパッド間の距離および、パッドの高さで調整可能である。パッド状のダイラタント流体収容部材15のサイズは、分散液の量および濃度、ディスプレイサイズ、さらには許容できるディスプレイの重量等に応じて適宜決定すればよく、パッド状のダイラタント流体収容部材15は、曲げ変形が加わる位置に応じて、フレキシブルディスプレイ20の裏面7の任意の位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に用いられるフレキシブルディスプレイの断面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図3】図2に示す表示装置の平面図。
【図4】図2に示す表示装置に曲げ変形が加えられた状態の断面図。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図6】図5に示す表示装置の平面図。
【図7】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図8】図7に示す表示装置の平面図。
【図9】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす平面図。
【図10】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図11】本発明の他の実施形態にかかる表示装置を表わす断面図。
【図12】図11に示す表示装置に曲げ変形が加えられた状態の断面図。
【符号の説明】
【0036】
1…支持基板; 2…画素電極; 3…薄膜トランジスタ; 4…液晶層
5…対向電極; 6…対向基板; 7…裏面; 8…表示面; 9…封止部
10…ダイラタント流体; 11…可撓性シート; 12…ダイラタント流体収容部材
13…ダイラタント流体収容部材; 14…チューブの腹部
15……ダイラタント流体収容部材; 20…フレキシブルディスプレイ
21…表示装置; A…縮み方向; B…伸び方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と透明な表示基板とを有するフレキシブルディスプレイ、および
前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材
を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ダイラタント流体収容部材は、ダイラタント流体を収容した可撓性シートからなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの支持基板の全面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ダイラタント流体収容部材は、ダイラタント流体を収容したチューブからなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの支持基板の一部を覆うことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記チューブは、蛇腹形状であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの前記支持基板および表示基板の少なくとも一方の外周に設けられることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記フレキシブルディスプレイの前記支持基板は、厚さ150μm以下のガラス基板、柔軟性を有する樹脂シート、またはメタルホイルであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の表示装置
【請求項9】
前記フレキシブルディスプレイの前記表示基板は、厚さが150μm以下のガラス基板、または柔軟性を有する透明な樹脂シートであることを特徴とする請求項8に記載の表示装置
【請求項10】
前記フレキシブルディスプレイは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または電子ペーパーであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項1】
支持基板と透明な表示基板とを有するフレキシブルディスプレイ、および
前記フレキシブルディスプレイの外側に設けられたダイラタント流体収容部材
を具備することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ダイラタント流体収容部材は、ダイラタント流体を収容した可撓性シートからなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの支持基板の全面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ダイラタント流体収容部材は、ダイラタント流体を収容したチューブからなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの支持基板の一部を覆うことを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記チューブは、蛇腹形状であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ダイラタント流体収容部材は、前記フレキシブルディスプレイの前記支持基板および表示基板の少なくとも一方の外周に設けられることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記フレキシブルディスプレイの前記支持基板は、厚さ150μm以下のガラス基板、柔軟性を有する樹脂シート、またはメタルホイルであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の表示装置
【請求項9】
前記フレキシブルディスプレイの前記表示基板は、厚さが150μm以下のガラス基板、または柔軟性を有する透明な樹脂シートであることを特徴とする請求項8に記載の表示装置
【請求項10】
前記フレキシブルディスプレイは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または電子ペーパーであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−230072(P2009−230072A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78741(P2008−78741)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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