説明

表示装置

【課題】画素回路に対するスイッチ制御信号の供給能力を向上させること。
【解決手段】表示装置は、所定の方向に並ぶとともにそれぞれ複数の画素回路から構成される画素行と、前記画素行に対応して設けられ、それぞれが、対応する前記画素行に沿って延びる複数のスイッチ制御線と、スイッチ制御信号を供給する信号供給回路と、前記スイッチ制御線に対応して設けられ、前記スイッチ制御信号を増幅して対応する前記スイッチ制御線に供給する複数の増幅回路と、を含む複数の画素行制御回路と、所定の方向に延び、前記増幅回路のそれぞれに第1の電源電位を供給する第1の電源線と、所定の方向に延び、前記スイッチ制御信号供給回路に前記第1の電源電位を供給する少なくとも一つの第2の電源線と、前記第1の電源線内の点と前記第2の電源線内の点とを接続する少なくとも一つの第1のバイパス線と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブマトリクス方式を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置や有機EL表示装置などのアクティブマトリクス方式を用いた表示装置において、垂直走査回路をアレイ基板上に設けたものが開発されている。アレイ基板上には表示領域と垂直走査回路とが設けられ、垂直走査回路は表示領域とアレイ基板の端との間にある額縁領域に形成される。表示領域には画素回路がマトリクス状に配置され、画素回路は並んで設けられるデータ線からのデータ信号と、データ線に交差する複数のスイッチ制御線からのスイッチ制御信号とによって制御される。
【0003】
このような表示装置においては、データ線とスイッチ制御線とのカップリングや垂直走査回路の電源供給能力の不足により横スメアが発生することが知られている。一方で、画面サイズの拡大、高精細化に伴いスイッチ制御線等へ電位を供給する能力の向上も望まれている。
【0004】
特許文献1には、従来の表示装置における垂直走査回路の例が開示されている。特許文献1に開示された垂直走査回路では、上下方向に延びる一組の電源線が2段のバッファアンプに電源を供給しており、表示領域側のバッファアンプの出力は各画素回路の発光素子に電源を供給している。特許文献2には、走査信号線の配線抵抗、寄生容量により横スメアが発生し表示品質が低下することが開示されている。また特許文献2には表示品質の低下を防止するために走査回路に対し補助回路を設ける構成が開示されている。特許文献3には、シフトレジスタ回路、走査電圧生成回路、および共通電圧生成回路を備えた垂直駆動回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14796号公報
【特許文献2】特開2003−344824号公報
【特許文献3】特開2008−309922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、例えば表示装置を構成するアレイ基板の額縁領域を狭くするために、垂直走査回路内で電源電位を供給する線の幅が狭くなってきている。すると、画素回路に対してスイッチ制御信号を供給する能力が低下する。それにより例えば表示品質の劣化などの問題が生じる。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、画素回路に対するスイッチ制御信号の供給能力を向上させた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下の通りである。
【0009】
(1)表示領域内において所定の方向に並んで配置される画素行であって、それぞれ複数の画素回路から構成される画素行と、前記画素行に対応して前記所定の方向に並んで設けられ、それぞれが、対応する前記画素行を構成する前記複数の画素回路を制御する少なくとも一つのスイッチ制御線と、スイッチ制御信号を供給するスイッチ制御信号供給回路と、前記スイッチ制御線に対応して設けられ、前記スイッチ制御信号を増幅して対応する前記スイッチ制御線に供給する少なくとも一つの増幅回路と、を含む複数の画素行制御回路と、前記所定の方向に延び、前記増幅回路のそれぞれに第1の電源電位を供給する第1の電源線と、前記所定の方向に延び、前記スイッチ制御信号供給回路に前記第1の電源電位を供給する少なくとも一つの第2の電源線と、前記第1の電源線内の点と前記第2の電源線内の点とを接続する少なくとも一つの第1のバイパス線と、を含むことを特徴とする表示装置。
【0010】
(2)(1)において、前記少なくとも一つの第1のバイパス線は、前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称に配置される、ことを特徴とする表示装置。
【0011】
(3)(1)または(2)において、前記少なくとも一つの第1のバイパス線は、前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち最も前記第1の電源線に近い一つとを接続する、ことを特徴とする表示装置。
【0012】
(4)(1)から(3)のいずれかにおいて、2以上の所定数の前記画素行制御回路ごとに一つの前記第1のバイパス線が配置される、ことを特徴とする表示装置。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれかにおいて、前記所定の方向に延び、前記増幅回路のそれぞれに第2の電源電位を供給する第3の電源線と、前記所定の方向に延び、前記スイッチ制御信号供給回路に前記第2の電源電位を供給する少なくとも一つの第4の電源線と、前記第3の電源線内の点と前記第4の電源線内の点とを接続する少なくとも一つの第2のバイパス線と、ことを特徴とする表示装置。
【0014】
(6)(5)において、前記少なくとも一つの第2のバイパス線は、前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称に配置される、ことを特徴とする表示装置。
【0015】
(7)(5)または(6)において、前記少なくとも一つの第2のバイパス線は、前記第3の電源線と前記第4の電源線のうち最も前記第3の電源線に近い一つとを接続する、ことを特徴とする表示装置。
【0016】
(8)(5)から(7)のいずれかにおいて、2以上の所定数の前記画素行制御回路ごとに一つの前記第2のバイパス線が配置される、ことを特徴とする表示装置。
【0017】
(9)(5)から(8)のいずれかにおいて、隣り合う前記第1のバイパス線の間隔と、隣り合う前記第2のバイパス線の間隔とが異なる、ことを特徴とする表示装置。
【0018】
(10)(5)から(7)のいずれかにおいて、前記第1のバイパス線は前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称かつ互いに等間隔に配置され、前記第2のバイパス線は前記中心線上に配置される、ことを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画素回路に対するスイッチ制御信号の供給能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の部品配置を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL表示装置の回路構成を示す回路図である。
【図3】各画素回路の構成を示す回路図である。
【図4】第1の実施形態に係る垂直走査回路の構成を示す回路図である。
【図5】バッファアンプの回路構成を示す回路図である。
【図6】ある画素行において一水平期間に画素回路やRGB切替制御線に向けて供給される理想的な信号の電位と、従来の垂直走査回路におけるスイッチ制御線やデータ線の電位とを示す波形図である。
【図7】従来の有機EL表示装置で起きる画質劣化の一例を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【図9】第3の実施形態に係る垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【図10】第3の実施形態に係る垂直走査回路の全体構成の例を示す回路図である。
【図11】第4の実施形態に係る垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【図12】第5の実施形態に係る垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【図13】第6の実施形態に係る垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【図14】第7の実施形態に係る垂直走査回路の全体構成の例を示す回路図である。
【図15】第1のバイパス線や第2のバイパス線がない垂直走査回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。なお以下では、本発明を有機EL表示装置に適用した場合について説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の部品配置を示す図である。有機EL表示装置は、物理的には、アレイ基板SUBと、フレキシブルプリント基板FPCと、パッケージに封入されたドライバ集積回路DICとを含む。アレイ基板SUB上には、画像を表示する表示領域DAが配置される。ここでアレイ基板SUB上の領域で、表示領域DA以外の領域を額縁領域という。垂直走査回路YDVは額縁領域のうち表示領域DAの右側に配置される。垂直走査回路YDVにはドライバ集積回路DICからの制御信号線が接続されている。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の回路構成を示す回路図である。有機EL表示装置は、回路構成として、表示領域内にマトリクス状に配置された画素回路PCと、画素回路PCの列に対応して設けられたデータ線DATと、画素回路PCの行(以下画素行Prowと記す)に対応して設けられたリセットスイッチ制御線RES、点灯スイッチ制御線ILM、および検査スイッチ制御線MSTと、画素回路駆動電源線PWRと、データ線DATに対応して設けられたRGB切替スイッチDSR,DSG,DSBと、統合データ線DATIと、データ線駆動回路XDVと、垂直走査回路YDVとを含む。
【0024】
1つの画素回路PCは、赤、緑、青のうちいずれかの色を表示する。赤を表示する画素回路PC、緑を表示する画素回路PC、および青を表示する画素回路PCが1つずつ組合せられて1つの画素となる。表示領域にはM列×N行の画素が配置されている。なお、l行目m列目の画素を表示する赤の画素回路PCをPCR(m,l)、緑の画素回路PCをPCG(m,l)、青の画素回路PCをPCB(m,l)と記す。また表示領域内には(3×M)列×N行の画素回路PCが並んでおり、ある列に並んでいる画素回路PCは同じ色を表示する。
【0025】
画素回路PCの列に対応して、複数のデータ線DATが表示領域内をその列が延びる方向(垂直方向)に延びている。データ線DATは対応する画素回路PCに接続されている。同じデータ線DATに接続される画素回路PCは同じ色を表示する。以下では、m列の画素の列を構成する赤の画素回路PCの列に対応するデータ線DATをDATR(m)と、緑の画素回路PCの列に対応するデータ線DATをDATG(m)と、青の画素回路PCの列に対応するデータ線DATをDATB(m)と記す。また、表示領域内において垂直方向に並ぶN行の画素行Prowのそれぞれに対応して、N本のリセットスイッチ制御線RESと、N本の点灯スイッチ制御線ILMと、N本の検査スイッチ制御線MSTとが画素行内を画素回路PCが並ぶ方向に延びている。それぞれの画素行Prowは画素の行に対応する画素回路PCから構成される。ここで、l列目の画素行ProwをProw(l)と記し、Prow(l)に対応するリセットスイッチ制御線をRES(l)、点灯スイッチ制御線をILM(l)、検査スイッチ制御線MSTをMST(l)と記す。また、リセットスイッチ制御線RESと、点灯スイッチ制御線ILMと、検査スイッチ制御線MSTとは画素回路PC内のスイッチを制御する点で同じ機能を有しているため、以下では総称してスイッチ制御線と記す。スイッチ制御線は垂直走査回路YDVに接続され、対応する画素行Prowに含まれる画素回路PCにスイッチを制御する信号(スイッチ制御信号)を供給する。また、各画素回路PCに電源を供給する画素回路駆動電源線PWRが設けられている。
【0026】
RGB切替スイッチDSR,DSG,DSBは薄膜トランジスタであって、画素の列に対応してそれぞれm個設けられている。RGB切替スイッチDSRのゲート電極にはRGB切替制御線CLAが接続され、RGB切替スイッチDSRのゲート電極にはRGB切替制御線CLBが接続され、RGB切替スイッチDSRのゲート電極にはRGB切替制御線CLCが接続される。
【0027】
画素のm列目に対応するデータ線DATのうち赤の画素回路PCに対応するデータ線DATR(m)の下端には、RGB切替スイッチDSRの一端が接続されている。RGB切替スイッチDSRの他端は、画素列に対応してM本設けられた統合データ線DATIのうちm列目の画素に対応する1つの一端と接続されている。同様に、データ線DATG(m)の下端はRGB切替スイッチDSGを介して対応する統合データ線DATIの一端と接続されており、データ線DATB(m)の下端はRGB切替スイッチDSBを介して対応する統合データ線DATIの一端と接続されている。統合データ線DATIの他端は、データ線駆動回路XDVに接続されている。
【0028】
なお、RGB切替スイッチDSR,DSG,DSBのドレイン電極は統合データ線DATIに接続され、ソース電極は対応するデータ線DATに接続されている。なお、薄膜トランジスタのソース電極とドレイン電極は、その薄膜トランジスタを流れる電流の向きやトランジスタがnMOSかpMOSかによって定まる。よって電流の向きやトランジスタの性質によってソース電極とドレイン電極の接続先が反対になっていてもよい。
【0029】
図3は各画素回路PCの構成を示す回路図である。各画素回路PCは、電流に応じて輝度が変化する自発光素子である有機EL素子ILと、有機EL素子ILに流れる電流を制御する駆動トランジスタDTRと、有機EL素子ILの発光タイミングを制御する点灯制御スイッチITRと、駆動トランジスタDTRが流す電流量を制御する記憶容量MCPと、記憶容量MCPに貯まった電荷をリセットするリセットスイッチRTRと、検査スイッチMTRとを含む。駆動トランジスタDTRはPチャンネル型の薄膜トランジスタであり、点灯制御スイッチITR、リセットスイッチRTR、および検査スイッチMTRはNチャンネル型の薄膜トランジスタである。有機EL素子ILは一般的にダイオードの性質を示すため、OLED(Organic light-emitting diode)とも呼ばれる。
【0030】
有機EL素子ILのアノードは点灯制御スイッチITRを介して駆動トランジスタDTRのドレイン電極に接続され、カソードは基準電位を供給する配線に接続される。駆動トランジスタDTRのドレイン電極とゲート電極の間に、リセットスイッチRTRが設けられる。記憶容量MCPの一端が駆動トランジスタDTRのゲート電極と接続され、他端がこの画素回路PCに対応するデータ線DATと接続される。また、検査スイッチMTRの一端は有機EL素子ILのアノードに接続されている。
【0031】
リセットスイッチRTRのゲート電極はその画素回路PCを含む画素行Prowに対応するリセットスイッチ制御線RESに接続され、点灯制御スイッチITRのゲート電極はその画素行Prowに対応する点灯スイッチ制御線ILMに接続され、検査スイッチMTRのゲート電極はその画素行Prowに対応する検査スイッチ制御線MSTに接続される。
【0032】
図4は、垂直走査回路YDVの構成の例を示す回路図である。垂直走査回路YDVは、スイッチ制御線に対応して設けられる第1のバッファアンプBF1と、画素行Prowに対応して設けられるスイッチ制御信号供給回路SCRと、第1の低電源電位供給線VSS1と、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の低電源電位供給線VSS2と、第2の高電源電位供給線VDD2と、第3の低電源電位供給線VSS3と、第3の高電源電位供給線VDD3と、第4の低電源電位供給線VSS4と、複数の低電位バイパス線BLSと、複数の高電位バイパス線BLDと、タイミング制御線GA,GB,GCと、発光期間制御線GSと、クロック線CKB1,CK1,CKB2,CK2と、垂直スタート信号線VSと、を含む。
【0033】
第1の低電源電位供給線VSS1と、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の低電源電位供給線VSS2と、第2の高電源電位供給線VDD2と、タイミング制御線GA,GB,GCと、発光期間制御線GSと、第3の低電源電位供給線VSS3と、第3の高電源電位供給線VDD3と、クロック線CKB1,CK1,CKB2,CK2と、垂直スタート信号線VSと、第4の低電源電位供給線VSS4とは、垂直方向に順に並んで延びている。第1から第4の低電源電位供給線VSS1〜VSS4は低い方の電源電位(第1の電源電位)を供給する。第1から第3の高電源電位供給線VDD1〜VDD3は高い方の電源電位(第2の電源電位)を供給する。
【0034】
1つの画素行Prowに3本のスイッチ制御線があることに対応し、第1のバッファアンプBF1の数は(N×3)である。スイッチ制御信号供給回路SCRの数はNである。以下では画素行Prow(l)に対応するスイッチ制御信号供給回路SCRをSCR(l)と記す。ここで、ある画素行Prowに対応するスイッチ制御線と、第1のバッファアンプBF1と、スイッチ制御信号供給回路SCRとは、その画素行Prowに属する画素回路PCを制御する機能を有することから、これらをまとめて画素行制御回路と呼ぶ。垂直走査回路YDVには、N個の画素行制御回路が垂直方向に並んで配置されている。
【0035】
スイッチ制御信号供給回路SCRは、画素行制御回路内のスイッチ制御線のそれぞれに対応するスイッチ制御信号を供給する。各スイッチ制御信号供給回路SCRは第2のバッファアンプBF2、第1のNOT回路NT1、第1のNAND回路NA1、第2のNOT回路NT2、NOR回路NR1、第3のNOT回路NT3、第2のNAND回路NA2、およびフリップフロップ回路FFを有する。第2のバッファアンプBF2、第1のNOT回路NT1、第1のNAND回路NA1の数はスイッチ制御線に対応してスイッチ制御信号供給回路SCRごとに複数であり、第2のNOT回路NT2、NOR回路NR1、第3のNOT回路NT3、第2のNAND回路NA2、およびフリップフロップ回路FFの数はスイッチ制御信号供給回路SCRごとに1つである。
【0036】
フリップフロップ回路FFのL端子はクロック線CK1またはクロック線CK2と接続され、フリップフロップ回路FFのH端子はクロック線CKB1またはCKB2と接続される。フリップフロップ回路FFのQ端子は次段のスイッチ制御信号供給回路SCRに含まれるフリップフロップ回路FFのD端子に接続される。また、フリップフロップ回路FFのD端子とQ端子とはそれぞれ第2のNAND回路NA2の入力に接続され、その出力は第3のNOT回路NT3に入力される。つまり、フリップフロップ回路FFのD端子とQ端子との論理積が第3のNOT回路NT3から出力される。これにより、第3のNOT回路NT3、第2のNAND回路NA2、およびフリップフロップ回路FFはいわゆるシフトレジスタ回路として動作する。
【0037】
NOR回路NR1の入力の一方は、第3のNOT回路NT3の出力と接続され、入力のもう一方は発光期間制御線GSと接続されている。NOR回路NR1の出力は、第2のNOT回路NT2の入力と接続される。つまり、第2のNOT回路NT2およびNOR回路NR1は、シフトレジスタ回路からの出力と発光期間制御線GSとの論理和を出力する。これにより発光期間制御線GSからハイレベルの電位が供給される場合には、シフトレジスタ回路の出力にかかわらず各画素行Prowがスイッチ制御信号の供給対象となり、各画素回路PCが一斉に駆動される。なお、本実施形態では、1フレーム期間はデータ書込みを行うデータ書込み期間と画素を発光させる発光期間と有機EL素子の検査を行う検査期間とに分かれている。各画素回路PCは発光期間に一斉に点灯されるように設けられている。
【0038】
第1のNOT回路NT1および第1のNAND回路NA1は、あわせてAND回路として機能する。そのAND回路は、第2のNOT回路NT2およびNOR回路NR1により選択された画素行Prowにおいて、スイッチ制御信号の供給タイミングの調整を行う。ある画素行が選択される期間内で、スイッチ制御線の種類によって信号を供給するタイミングが異なるからである。具体的には第1のNAND回路NA1のうちリセットスイッチ制御線RESに対応するもの、点灯スイッチ制御線ILMに対応するもの、検査スイッチ制御線MSTに対応するもの、の入力の一方にはそれぞれタイミング制御線GA、タイミング制御線GB、タイミング制御線GCが接続される。また、それらの入力の他方には第2のNOT回路NT2の出力が接続される。タイミング制御線GA、タイミング制御線GB、タイミング制御線GCのそれぞれにタイミングを制御する信号が送られるため、対応する画素行Prowだけでなくスイッチ制御線の種類ごとにスイッチ制御信号を送るタイミングを制御することができる。
【0039】
第2のバッファアンプBF2は、第1のNOT回路NT1の出力に接続され、第1のNOT回路NT1および第1のNAND回路NA1からの信号を受取り、その信号を増幅して、スイッチ制御信号として第1のバッファアンプBF1に出力する。
【0040】
第1のバッファアンプBF1は、第2のバッファアンプBF2から送信されるスイッチ制御信号を増幅し、対応するスイッチ制御線にその信号を出力する増幅回路である。図5は第1のバッファアンプBF1の回路構成を示す回路図である。第1のバッファアンプBF1は、CMOSのインバータ(NOT)回路である。第1のバッファアンプBF1は、nMOSのトランジスタTRNと、pMOSのトランジスタTRPとを含む。トランジスタTRNのドレイン電極は対応するスイッチ制御線に接続され、そのソース電極は第1の低電源電位供給線VSS1に接続される。トランジスタTRPのドレイン電極は対応するスイッチ制御線に接続され、そのソース電極は第1の高電源電位供給線VDD1に接続される。トランジスタTRN,TRPのゲート電極は第1のバッファアンプBF1の入力として第2のバッファアンプBF2の出力と接続される。スイッチ制御線には、第1のバッファアンプBF1に入力される信号に応じて第1の低電源電位供給線VSS1もしくは第1の高電源電位供給線VDD1からの電流が流れる。
【0041】
第2のバッファアンプBF2も、電源を供給する配線や入出力の接続先が異なるが、他の回路構成は同様である。正確には電源供給能力やインピーダンスを考慮し、トランジスタのチャネル幅は第1のNOT回路NT1より大きく、第1のバッファアンプBF1より小さくなっている。
【0042】
第2のバッファアンプBF2には、第2の低電源電位供給線VSS2と第1の高電源電位供給線VDD1とが接続され、それらから電源が供給される。第1のNOT回路NT1、第1のNAND回路NA1、第2のNOT回路NT2、およびNOR回路NR1には第2の高電源電位供給線VDD2および第3の低電源電位供給線VSS3が接続され、それらから電源が供給される。シフトレジスタ回路には第3の高電源電位供給線VDD3と第4の低電源電位供給線VSS4とが接続され、それらから電源が供給される。
【0043】
ここで、スイッチ制御信号供給回路SCRには、第1のバッファアンプBF1に接続された電源線以外の電源線と接続されている。この点に着目し、低電源電位を供給する配線について第1のバッファアンプBF1に接続された第1の低電源電位供給線VSS1を第1の電源線と、接続されない第2の低電源電位供給線VSS2、第3の低電源電位供給線VSS3、および第4の低電源電位供給線VSS4を第2の電源線とよぶ。また高電源電位を供給する配線について第1のバッファアンプBF1に接続された第1の高電源電位供給線VDD1を第3の電源線と、接続されない第2の高電源電位供給線VDD2および第3の高電源電位供給線VDD3を第4の電源線と呼ぶ。
【0044】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2と、第3の低電源電位供給線VSS3と、および第4の低電源電位供給線VSS4とを接続する。低電位バイパス線BLSは1つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は1つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、隣り合う画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線の点に接続される。高電位バイパス線BLD(第2のバイパス線)は、第3の電源線内の点と第4の電源線内の点とを接続する。高電位バイパス線BLDは、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の高電源電位供給線VDD2と、第3の高電源電位供給線VDD3とを接続する。高電位バイパス線BLDは1つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は1つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第2のバイパス線は、隣り合う画素行制御回路の間にある第3の電源線の点および第4の電源線の点に接続される。
【0045】
本実施形態にかかる有機EL表示装置の動作について従来のものと比較しながら説明する。本実施形態に示す有機EL表示装置では、1フレーム期間がデータ書込み期間と発光期間とに分かれており、データ書込み期間には画素行Prowごとにその画素行Prowを構成する画素回路PCに含まれる記憶容量MCPにデータが書込まれる。発光期間には有機EL表示装置は全ての画素行Prowに対応する画素回路PCを一斉に発光させる。1つの画素行Prowを構成する画素回路PCに含まれる記憶容量MCPにデータ書込みの操作を行う期間を一水平期間(1H)と呼ぶ。また、RGB切替スイッチDSR,DSG,DSBにより、赤のデータ線DATRと緑のデータ線DATGと青のデータ線DATBとで、異なるタイミングでその画素回路PCが表示する階調を示すデータ信号が供給される。
【0046】
図6は、ある画素行Prowにおいて一水平期間に画素回路PC、RGB切替制御線CLA,CLB,CLCおよびデータ線DATに向けて供給される理想的な信号の電位と、従来の有機EL表示装置におけるスイッチ制御線やデータ線DATの実際の電位とを示す波形図である。図6は上から順にRGB切替制御線CLAの電位、RGB切替制御線CLBの電位、RGB切替制御線CLCの電位、垂直走査回路YDVが点灯スイッチ制御線ILMに供給する理想的な電位ViI、垂直走査回路YDVがリセットスイッチ制御線RESに供給する理想的な電位ViR、垂直走査回路YDVが検査スイッチ制御線MSTに供給する理想的な電位ViM、データ線駆動回路XDVからk列目の青のデータ線DATB(k)に供給する理想的な電位ViDB(k)、そして、従来の有機EL表示装置における点灯スイッチ制御線ILMの電位、従来の有機EL表示装置におけるリセットスイッチ制御線RESの電位、従来の有機EL表示装置における検査スイッチ制御線MSTの電位、従来の有機EL表示装置におけるk列目の青のデータ線DATB(k)の電位、従来の有機EL表示装置におけるk列目と異なるx列目の青のデータ線DATB(x)の電位を示す。
【0047】
一水平期間では、はじめにRGB切替制御線CLAにハイレベルの電位が供給され、データ線駆動回路XDVから統合データ線DATIを介して赤のデータ線DATRにデータ信号が供給され、その電位はデータ線DATRの寄生容量に充電される。そして、RGB切替制御線CLAがオフになっても選択された行の各列の画素の赤の画素回路PCに含まれる記憶容量MCPの一端にデータ信号の電位が印加される。次にRGB切替制御線CLBにハイレベルの電位が供給されて緑のデータ線DATGにデータ信号が供給され、選択された行の各列の画素の緑の画素回路PCに含まれる記憶容量MCPの一端にデータ信号の電位が印加される。次にRGB切替制御線CLCにハイレベルの電位が供給されて青のデータ線DATBにデータ信号が供給され、選択された行の各列の画素の青の画素回路PCに含まれる記憶容量MCPの一端にデータ信号の電位が印加される。
【0048】
その後点灯スイッチ制御線ILMとリセットスイッチ制御線RESの電位がハイレベルになり点灯制御スイッチITRとリセットスイッチRTRがオンとなり駆動トランジスタDTRのゲート−ソース間がプリチャージされる。その後すぐに点灯スイッチ制御線ILMがローレベルになり点灯制御スイッチITRがオフになり、ゲート−ソース間の電位差が閾値電圧に相当するまで駆動トランジスタDTRに電流が流れる。この操作により駆動トランジスタの閾値電圧のばらつきがリセットされる。この操作はオートゼロと呼ばれる。
【0049】
その後リセットスイッチ制御線RESの電位がハイレベルからローレベルに変わると、記憶容量MCPの駆動トランジスタDTRのゲート側の電荷が移動できなくなり、各記憶容量の両端に生じた電位差が次の発光期間まで記憶される。なお、書込み期間では検査スイッチ制御線MSTの電位はローレベルである。
【0050】
ここで、表示領域DA内では各データ線DATは複数のスイッチ制御線と交差しており、その交差している箇所では寄生容量が生じている。それにより、従来の有機EL表示装置ではある列のデータ線DATの電位の変化によりスイッチ制御線の電位が変動し、そのスイッチ制御線の電位の変動により、他のデータ線DATの電位も変動する。図6ではDATB(k)には白を表示するために高い電位が供給される。すると寄生容量によりリセットスイッチ制御線RES、点灯スイッチ制御線ILMおよび検査スイッチ制御線MSTの電位も一時的に高くなり、その後、垂直走査回路YDVの低電源電位供給線VSS1〜VSS4から電荷の供給を受けて一定の時間をかけて本来の電位に戻っていく。この電位の戻りが遅いと、データ線DATB(k)にデータ信号の供給が停止する時点で各スイッチ制御線に本来の電位との差Vdlが生じる。この時点ではデータ線DATBには外部から電位が供給されないため、データ線DATBの電位はスイッチ制御線の電位が本来の電位に戻る際に寄生容量による影響を受けて電位差Vdkだけ低下してしまう。その後リセットスイッチ制御線RESの電位をローレベルにし、リセットスイッチRTRをオフにする際に理想的な電位に対して電位差Vdkの分だけ記憶容量MCPに記憶される電位がずれ、表示される輝度がその分変化する。電位差Vdkの大きさは他の要素の影響がなければ電位差Vdlと同じである。また、他のデータ線DATB(x)についても同様の理由で理想的な電位に対して電位差Vdnの分だけ記憶容量MCPに記憶される電位がずれ、表示される輝度がその分変化する。電位差Vdnの大きさは電位差Vdkと概ね等しくなる。
【0051】
図7は、従来の有機EL表示装置で起きる画質劣化の例を示す図である。表示領域DAには、矩形の黒領域BAとその周辺のグレー領域WAとを表示するようにデータ線信号が供給されている。データ線DAT(B,k)は表示領域DAにおいて黒領域BAを貫くように上下方向に延びており、データ線DAT(B,x)は、表示領域DAにおいて黒領域BAを貫かないように上下に延びている。従来の有機EL表示装置では、黒領域BAの上端部分から左右方向に周辺より輝度の低い横スメア線SL1が、黒領域BAの下端部分から左右方向に周辺より輝度の高い横スメア線SL2が表示される。
【0052】
従来の有機EL表示装置で横スメアが表示される原因の1つは、スイッチ制御線に電流を流すための電源供給能力が不足しているからである。本実施形態ではスイッチ制御信号供給回路SCRに接続された第2の電源線や第4の電源線からも電流が供給されるため、スイッチ制御線への電源供給能力が向上する。電源供給能力が向上するとスイッチ制御線の電位の変動が抑制され、また変動しても短時間で元の電位に戻る。それによりデータ線DAT(B,x)の電位変動による書込み不良が抑えられ、横スメアは抑制される。
【0053】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態と比べると、垂直走査回路YDV内の低電位バイパス線BLSおよび高電位バイパス線BLDの接続の方法が異なる。以下ではその相違点を中心として説明する。図8は、第2の実施形態にかかる垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【0054】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2とを接続する。低電位バイパス線BLSは1つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は1つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線のうち最も第1の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。高電位バイパス線BLD(第2のバイパス線)は、第3の電源線内の点と第4の電源線内の点とを接続する。高電位バイパス線BLDは、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の高電源電位供給線VDD2とを接続する。高電位バイパス線BLDは1つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は1つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第2のバイパス線は、画素行制御回路の間にある第3の電源線の点および第4の電源線のうち最も第3の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。
【0055】
こうすると、第1の実施形態に比べ短い配線で電源供給能力を向上させることができる。また第1の実施形態においても配線抵抗のために、遠い第2の電源線から供給される電流より近い第2の電源線から供給される電流の方が大きい。そのため近くにある第2の電源線のみと接続することで配線の量に比してより効率的に電源供給能力を向上させることができる。また、第1の実施形態と同様に横スメアが抑制される。
【0056】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第2の実施形態と比べ、垂直走査回路YDV内の低電位バイパス線BLSおよび高電位バイパス線BLDの間隔が異なる。以下ではその相違点を中心として説明する。図9は、第3の実施形態にかかる垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【0057】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2とを接続する。低電位バイパス線BLSは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、(2a−1)行目と2a行目(aは1以上N/2以下の整数)の画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線のうち最も第1の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。高電位バイパス線BLD(第2のバイパス線)は、第3の電源線内の点と第4の電源線内の点とを接続する。高電位バイパス線BLDは、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の高電源電位供給線VDD2とを接続する。高電位バイパス線BLDは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第2のバイパス線は、2b行目と(2b+1)行目(bは1以上(N/2−1)以下の整数)の画素行制御回路の間にある第3の電源線の点および第4の電源線のうち最も第3の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。また、1つの画素行制御回路の垂直方向の長さごとに、低電位バイパス線BLSと高電位バイパス線BLDとが交互に配置されている。
【0058】
こうすると、第2の実施形態に比べさらに少ない配線の数で電源供給能力を向上させることができる。また、第1の実施形態と同様に横スメアが抑制される。
【0059】
図10は、第3の実施形態に係る垂直走査回路の全体構成の例を示す回路図である。本実施形態では第1のバイパス線および第2のバイパス線は、表示領域DAの垂直方向に対する中心線を軸として対称に配置される。表示領域DAの垂直方向に対する中心線は、N/2番目の画素行制御回路と、(N/2+1)番目の画素行制御回路との間にある。1番目の画素行制御回路の上側では、第1の電源線の上端と第2の電源線の上端をつなぐ低電位上端接続線VSSTと、第3の電源線の上端と第4の電源線の上端とをつなぐ高電位上端接続線VDDTとが配置される。N番目の画素行制御回路の下側では、第1の電源線の下端と第2の電源線の下端をつなぐ低電位下端接続線VSSBと、第3の電源線の下端と第4の電源線の下端とをつなぐ高電位下端接続線VDDBとが配置される。
【0060】
本実施形態ではN/2番目の画素行制御回路と、(N/2+1)番目の画素行制御回路との間を中心として垂直方向に対称となるため、配線のレイアウトが第2の実施形態と比べて容易になる。例えば第1のバイパス線や第2のバイパス線を置く垂直方向のスペースが不足していても、中央の画素行制御回路を中央に配置し、上下の画素行制御回路やバイパス線を中心から少しずつ垂直方向にずらしてレイアウトすることも可能となる。
【0061】
[第4の実施形態]
本実施形態は、第3の実施形態と比べ、垂直走査回路YDV内での低電位バイパス線BLSおよび高電位バイパス線BLDの接続先が異なる。以下ではその相違点を中心として説明する。図11は、第4の実施形態にかかる垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【0062】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2と、第3の低電源電位供給線VSS3と、第4の低電源電位供給線VSS4とを接続する。低電位バイパス線BLSは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、(2a−1)行目と2a行目(aは1以上N/2以下の整数)の画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線の点に接続される。高電位バイパス線BLD(第2のバイパス線)は、第3の電源線内の点と全ての第4の電源線内の点とを接続する。高電位バイパス線BLDは、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の高電源電位供給線VDD2と、第3の高電源電位供給線VDD3とを接続する。高電位バイパス線BLDは2つの画素行制御回路ごとに2本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第2のバイパス線は、2b行目と(2b+1)行目(bは1以上(N/2−1)以下の整数)の画素行制御回路の間にある第3の電源線の点および全ての第4の電源線の点に接続される。また、1つの画素行制御回路の垂直方向の長さごとに、低電位バイパス線BLSと高電位バイパス線BLDとが交互に配置されている。
【0063】
こうすると、第1の実施形態に比べ少ない配線の数で電源供給能力を向上させることができる。また、第1の実施形態と同様に横スメアが抑制される。第3の実施形態と同様に表示領域DAの中心線を軸として垂直方向に対称であり、回路のレイアウトも容易である。
【0064】
[第5の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態と比べると、垂直走査回路YDV内に高電位バイパス線BLDが存在しない点が異なる。以下ではその相違点を中心として説明する。図12は、第5の実施形態にかかる垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【0065】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2と、第3の低電源電位供給線VSS3と、第4の低電源電位供給線VSS4とを接続する。低電位バイパス線BLSは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、隣り合う画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線の点に接続される。
【0066】
こうすると、データ書込み期間に高い電位を供給するスイッチ制御線の数が低い電位を供給するスイッチ制御線の数より少ない場合など、必要な電源電位の供給能力に応じて電源供給能力を強化することができる。なお、電源供給能力が不足するのが高い電源電位である場合には、高電位バイパス線BLDを設け、低電位バイパス線BLSを設けないようにしてもよい。
【0067】
[第6の実施形態]
本実施形態は、第5の実施形態と比べると、第1のバイパス線の接続先が異なる。以下ではその相違点を中心として説明する。図13は、第6の実施形態にかかる垂直走査回路の構成例を示す回路図である。
【0068】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2とを接続する。低電位バイパス線BLSは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、(2a−1)行目と2a行目(aは1以上N/2以下の整数)の画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線の点に接続される。
【0069】
こうすると、第5の実施形態に比べ、第1のバイパス線の長さが短くなり、その分回路のレイアウトが容易になる。なお、電源供給能力が不足するのが高い電源電位である場合には、高電位バイパス線BLDを設け、低電位バイパス線BLSを設けないようにしてもよい。
【0070】
[第7の実施形態]
第7の実施形態は、第3の実施形態と比べると、高電位バイパス線BLDの本数が異なる。以下ではその相違点を中心に説明する。図14は、第7の実施形態に係る垂直走査回路の全体構成の例を示す回路図である。
【0071】
低電位バイパス線BLS(第1のバイパス線)は、第1の電源線内の点と第2の電源線内の点とを接続する。低電位バイパス線BLSは、第1の低電源電位供給線VSS1と、第2の低電源電位供給線VSS2とを接続する。低電位バイパス線BLSは2つの画素行制御回路ごとに1本が対応し、互いの間隔は2つの画素行制御回路の垂直方向の長さである。それぞれの第1のバイパス線は、(2a−1)行目と2a行目(aは1以上N/2以下の整数)の画素行制御回路の間にある第1の電源線の点および第2の電源線のうち最も第1の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。高電位バイパス線BLD(第2のバイパス線)は、第3の電源線内の点と第4の電源線内の点とを接続する。高電位バイパス線BLDは、第1の高電源電位供給線VDD1と、第2の高電源電位供給線VDD2とを接続する。高電位バイパス線BLDは表示領域DAの中心線上、言い換えればN/2番目の画素行制御回路と、(N/2+1)番目の画素行制御回路との間に一本配置されている。第2のバイパス線は、画素行制御回路の間にある第3の電源線の点および第4の電源線のうち最も第3の電源線に近い第2の低電源電位供給線VSS2の点に接続される。
【0072】
こうすると、本実施形態のようにデータ書込み期間に高い電位を供給するスイッチ制御線の数が低い電位を供給するスイッチ制御線の数より少ない場合など、必要な電源電位の供給能力に応じて電源供給能力を強化することができる。なお、電源供給能力が不足するのが高い電源電位である場合には、高電位バイパス線BLDと低電位バイパス線BLSとの垂直方向の位置を替えて配置してもよい。
【0073】
また、これまでに説明した実施形態にかかる垂直走査回路から第1のバイパス線や第2のバイパス線が除かれた構成についても説明する。図15は、第1のバイパス線や第2のバイパス線がない垂直走査回路の構成を示す図である。垂直走査回路は、図中縦方向に並びそれぞれ一つの行の画素回路を制御する画素行制御回路と、図中縦方向に延びる第1から第4の低電源電位供給線VSS1〜VSS4と、第1から第3の高電源電位供給線VDD1〜VDD3とを有する。第1から第4の低電源電位供給線VSS1〜VSS4は一つの電源電位を供給し、第1から第3の高電源電位供給線VDD1〜VDD3はもう一つの電源電位を供給する。
【0074】
各画素行制御回路は、スイッチ制御線に対応して設けられ電流を増幅する増幅回路である複数の第1のバッファアンプBF1と、スイッチ制御信号供給回路SCRとに分けられる。第1のバッファアンプBF1には、第1の低電源電位供給線VSS1と第1の高電源電位供給線VDD1とから電源電位が供給される。第1のバッファアンプBF1はスイッチ制御信号供給回路SCRから供給されるスイッチ制御信号を増幅し、対応するスイッチ制御線に供給する。スイッチ制御信号供給回路SCRは各スイッチ制御線に対応するスイッチ制御信号を第1のバッファアンプBF1に供給する。スイッチ制御信号供給回路SCRは、第2のバッファアンプBF2、第1のNOT回路NT1、第1のNAND回路NA1、第2のNOT回路NT2、NOR回路NR1、第3のNOT回路NT3、第2のNAND回路NA2、およびフリップフロップ回路FFを有する。第1のバッファアンプBF1は具体的にはNOT回路であり、第1のバッファアンプBF1に含まれるトランジスタのチャネル幅は第2のバッファアンプBF2より広くなっている。
【0075】
スイッチ制御信号供給回路SCRには、第2から第4の低電源電位供給線VSS2〜VSS4と、第2および第3の高電源電位供給線VDD2,VDD3とから電源電位が供給されている。電源供給部からの配線長を短くするために、各画素行制御回路に含まれる複数の回路ブロック毎に高電源電位供給線及び低電源電位供給線が配置されている。
【0076】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は以上に説明した形態に限定されるものではない。例えば、液晶表示装置やRGB切替スイッチDSR,DSG,DSBが設けられていない有機EL表示装置であっても、本発明が適用できる。スイッチ制御線とデータ線が交差し寄生容量が生じることには変わりなく、スイッチ制御線の電位変動は同様に起きるからである。
【符号の説明】
【0077】
DA 表示領域、DIC ドライバ集積回路、FPC フレキシブルプリント基板、SUB アレイ基板、XDV データ線駆動回路、YDV 垂直走査回路、CLA,CLB,CLC RGB切替制御線、DAT,DATR,DATG,DATB データ線、DATI 統合データ線、DSR,DSG,DSB RGB切替スイッチ、ILM 点灯スイッチ制御線、MST 検査スイッチ制御線、PC,PCR,PCG,PCB 画素回路、Prow 画素行、PWR 画素回路駆動電源線、RES リセットスイッチ制御線、DTR 駆動トランジスタ、IL 有機EL素子、ITR 点灯制御スイッチ、MCP 記憶容量、MTR 検査スイッチ、RTR リセットスイッチ、TRN,TRP トランジスタ、BF1,BF2 バッファアンプ、BLD 高電位バイパス線、BLS 低電位バイパス線、CKB1,CK1,CKB2,CK2 クロック線、FF フリップフロップ回路、GA,GB,GC タイミング制御線、GS 発光期間制御線、NA1 第1のNAND回路、NA2 第2のNAND回路、NR1 NOR回路、NT1 第1のNOT回路、NT2 第2のNOT回路、NT3 第3のNOT回路、SCR スイッチ制御信号供給回路、VDD1 第1の高電源電位供給線、VDD2 第2の高電源電位供給線、VDD3 第3の高電源電位供給線、VDDB 高電位下端接続線、VDDT 高電位上端接続線、VS 垂直スタート信号線、VSS1 第1の低電源電位供給線、VSS2 第2の低電源電位供給線、VSS3 第3の低電源電位供給線、VSS4 第4の低電源電位供給線、VSSB 低電位下端接続線、VSST 低電位上端接続線、BA 黒領域、WA グレー領域、SL1,SL2 横スメア線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域内において所定の方向に並んで配置される画素行であって、それぞれ複数の画素回路から構成される画素行と、
前記画素行に対応して前記所定の方向に並んで設けられ、それぞれが、
対応する前記画素行を構成する前記複数の画素回路を制御する少なくとも一つのスイッチ制御線と、
スイッチ制御信号を供給するスイッチ制御信号供給回路と、
前記スイッチ制御線に対応して設けられ、前記スイッチ制御信号を増幅して対応する前記スイッチ制御線に供給する少なくとも一つの増幅回路と、
を含む複数の画素行制御回路と、
前記所定の方向に延び、前記増幅回路のそれぞれに第1の電源電位を供給する第1の電源線と、
前記所定の方向に延び、前記スイッチ制御信号供給回路に前記第1の電源電位を供給する少なくとも一つの第2の電源線と、
前記第1の電源線内の点と前記第2の電源線内の点とを接続する少なくとも一つの第1のバイパス線と、
を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの第1のバイパス線は、前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの第1のバイパス線は、前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち最も前記第1の電源線に近い一つとを接続する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
2以上の所定数の前記画素行制御回路ごとに一つの前記第1のバイパス線が配置される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記所定の方向に延び、前記増幅回路のそれぞれに第2の電源電位を供給する第3の電源線と、
前記所定の方向に延び、前記スイッチ制御信号供給回路に前記第2の電源電位を供給する少なくとも一つの第4の電源線と、
前記第3の電源線内の点と前記第4の電源線内の点とを接続する少なくとも一つの第2のバイパス線と、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの第2のバイパス線は、前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの第2のバイパス線は、前記第3の電源線と前記第4の電源線のうち最も前記第3の電源線に近い一つとを接続する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の表示装置。
【請求項8】
2以上の所定数の前記画素行制御回路ごとに一つの前記第2のバイパス線が配置される、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
隣り合う前記第1のバイパス線の間隔と、隣り合う前記第2のバイパス線の間隔とが異なる、
ことを特徴とする請求項5から8のうちいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1のバイパス線は前記表示領域の前記所定の方向に対する中心線を軸として対称かつ互いに等間隔に配置され、
前記第2のバイパス線は前記中心線上に配置される、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−150090(P2011−150090A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10474(P2010−10474)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】