説明

表面のレーザマーキング方法

比較的拡散性ではない反射表面領域を有する表面をレーザマークする方法が提供される。この方法は比較的拡散性の反射領域を生成するために比較的拡散性ではない相対表面領域の選択されたマーキング領域をレーザ光で照射する処理を含んでいる。放射プロセスはマーキング領域を生成するために部分的にオーバーラップする領域を照射することを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面のレーザマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面のレーザマーキングはよく知られており、マーキング装置は典型的に1Wより大きい出力のレーザを有し、これは熱または光化学的変化により材料を永久にマークするのに十分なエネルギ密度を有するスポットサイズへレンズにより焦点を結ばれることができる。マークされる表面によって効率的に吸収される適切な波長レーザが使用されることができる。
【0003】
典型的な例は迅速にプラスティックをマークする赤外線波長を有するCOレーザである。図1を参照すると、装置はレーザ100を備え、ビーム拡大器102によってコリメートされたビーム110は検流走査ミラー106、108を含む検流スキャナ104に導かれ、検流走査ミラー106、108はビーム110を集束レンズ112へ迅速に偏向し、集束レンズ112はマークされる基板表面114上にレーザビームの焦点を結ばせる。走査ミラー106、108は高速度、典型的には0.1−10m/sで正確なマークを生成するために2つの直交方向で表面を横切ってレーザビームを迅速に動かすように高速度で振動する。
【0004】
このようなマーキングの機構は2つのカテゴリ、即ち表面除去によるマーキングと表面変形によるマーキングに分割されることができる。
【0005】
第1の例では、レーザによる除去材料は高エネルギ紫外線レーザの場合、溶融、蒸発または光化学的分解により可視マークを生成する。結果的な表面形態は読取可能な高コントラストのマークを生成する。
【0006】
第2の例では、レーザ放射は材料を除去せずに高コントラストマークを生成するため材料の組成に影響を与える。これは可視マークを形成するために材料を局部的に溶融し、これを酸化させ、または化学的に変化させることができる。
【0007】
採用される方法はマークされている材料にしたがって変化する。例えばはがねは長いレーザ波長では高反射率である(10.6μmのCOレーザでは>95%)。短い波長では反射率は十分なエネルギ吸収がマークを生成することを可能にするように減少する。典型的に1.064μm波長のNd:YAGレーザは表面の仕上げにしたがって反射率が85−95%である場合に使用される。もっと短い波長も効率的である。
【0008】
幾つかの材料はそれらの光学的特性のために、または結果的なマークが不十分なコントラストであるためにマークすることが困難である。その例には被覆されていないアルミニウム(反射)、硝子(透明および脆弱)、セラミック(反射及び不適切な品質のマーク)が含まれている。
【0009】
例えばアルミニウムの場合に、特定の問題が生じる。アルミニウムはこれが赤外線および可視波長で高い反射性であるのでレーザでマークするのが極めて困難である。さらにマークが得られても、これは低いコントラストである傾向があり、したがって光学的に読取ることが困難である。
【0010】
図2の(a)と(b)から理解されることができる既知の方法はマーキングを可能にするためにアルミニウムを陽極処理することである。陽極処理は電気化学的プロセスであり、これによってアルミニウムワークピース200の表面はアルミニウム酸化物の深い層202で被覆される。この酸化物層はバルクなアルミニウムよりも堅く、衝突に抵抗がある。この酸化物層は化粧品目的で着色されることもできる。
【0011】
アルミニウム酸化物は赤外線におけるレーザ放射を強力に吸収する。したがって酸化物層が除去される高コントラストマーク206(図2の(b))を生成するためにレーザビーム204を使用して反射性のアルミニウム200から酸化物層202を選択的に除去することができる。これはアルミニウム上でレーザマークを実現するための産業上標準的な方法である。
【0012】
しかしながら、この方法の欠点は、マークされる領域はもはや腐食に対する抵抗と陽極処理された層の堅牢さという利点がないことである。またマークの外観に関しては、マークは単色または着色された陽極処理された層に対して明るい反射外観を有するように限定される。
【0013】
代わりの既知の方法はレーザ光で照射されるとき、層が除去されるのではなく色を変化するように化学的添加物で陽極処理された層を作ることである。さらに別の方法は、例えば被覆または薄膜の形態で材料へ中間層を施すことである。レーザ照射された薄膜は基板に局部的に付着し、その後照射されていない材料はマークを残すために除去されることができる。
【0014】
しかしながら、全てのこれらの方法は陽極処理された材料の層又は薄膜の生成および適用を必要とし、これには動作の複雑性が増し、さらに時間がかかるようになる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明を特許請求の範囲に記載されている。必要とされる全てのことは、比較的拡散性ではない反射表面上に比較的拡散性の反射領域を生成することであるという認識のために、簡単で迅速な処理方法が与えられる。さらにこのようにして生成されたマークまたは指標は容易に読取り可能であり、読取ビーム検出器が拡散性の反射光を検出するだけであるように位置されることができ、検出器の広範囲の可能な位置による簡単な読取構造を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して例示により説明する。
概要を説明すると、マーキングシステムは図3を参照して理解されることができる。レーザは、通常鏡面反射性又は透過性の表面のような拡散性ではない反射表面又は表面領域を有するワークピース302に関してスキャナ300により通常AとBで指定されている方向で走査可能なビームを生成する。レーザは選択された1つまたは複数のマーキング領域304を照射し、特にこれらの領域を粗面にするために1又は複数のマーキング領域を横断し、したがってこれらは通常拡散性の反射または散乱特性にされる。結果として、バーコードのような読取可能な表面指標はマーキング領域304を適切にパターン化することにより表面302上で生成されることができる。
【0017】
図3を参照して説明された方法は指標が図4の(a)と(b)で概要で示されているシステムを使用してその後読取られることのできるバーコードを具備しているとき特に有効である。このシステムはバーコード402に沿って方向Cで走査可能な低パワーレーザのような読取ビーム発生器400を含んでいる。図4の(a)を参照すると、レーザ400は読取ビーム404aをワークピース406に向けて誘導する。読取ビーム404aが図4に示されているような鏡面反射領域のような拡散性ではない反射領域408a上に入射されるとき、ビームは404bに示されているように鏡面反射される。図4の(b)を参照すると、読取ビームは404cに示されているように粗面にされた領域408bに導かれ、ビームは404dで示されるように散乱され、または拡散性反射される。
【0018】
図3でバーコードの陰画、即ち通常のバーコードの白色(散乱する)領域に対応する粗くされた表面領域が生成される場合、それ故検出器410が例えば鏡面反射された光404bではなく散乱された光404dを収集するように位置されるならば、バーコード402はこれが粗くされた領域に対応する白色領域から散乱された光を収集するように位置されている検出器によって読取られる通常のバーコードであるかのように丁度同じ方法で再構成されることが分かる。特に、粗くされた領域は非拡散性の未処理領域よりも多くの光を検出器へ戻すように散乱するので、レーザでマークされた領域は白色を示し、マークされていない反射表面は黒色を示す。
【0019】
前述したように以下のより詳細な説明では、本発明の実施形態は通常のバーコード読取装置で読取可能なバーコードを生成するために、高パワーのパルスレーザを使用してターゲット材料の表面の粗さを変更するための技術及び手順を提供する。
【0020】
図1を再度参照すると、表面の粗面化方法は英国のCrawleyのPowerlase Ltdにより供給されている市販のStarlase AO2 Nd:YAGレーザのような赤外線Qスイッチ固体レーザを使用する。このパルスレーザ100はkHzの反復率の10−7乃至10−8sの期間のパルスで10−3乃至10−2J程度のエネルギを提供する。出力ビームはコリメートされ、ビーム拡大器102により拡大され、検流計スキャナ104に導かれる。レーザビームは、2つの調節可能なミラー106と108を具備するスキャナ104により集束レンズ112へ偏向される。この実施形態では被覆されていないアルミニウムで構成されるターゲットまたはワークピース114は、入射平面を横切って本発明の実施形態では200μm以下程度の一定のスポットサイズを提供するようにレンズ112から予め定められた垂直距離に保持されている入射平面に位置される。ミラー106と108は所定の入射平面内の2つの直交方向で焦点を結ばれたレーザスポットの位置を制御するように構成されている。
【0021】
スキャナはターゲット114の選択された表面領域で放射を与えるために0.1乃至10m/sの程度の速度でターゲット入射平面周辺でレーザスポットを動かすように動作する。走査ミラーは例えばバーコードパターンのような放射に対する所望のパターンで予めプログラムされたコンピュータベースのソフトウェアとインターフェースされるミラーを物理的に動かすためのハードウェアを具備する任意の適当なタイプの制御装置(図示せず)により制御される。例えばScanlab GmbH(独国、ミュンヘン)から入手可能なタイプのスキャナが使用されることができる。
【0022】
レーザの出力は適切なエネルギ吸収を行うためにターゲット114に整合される。レンズから入射平面までの選択された垂直距離と、(パルスエネルギ、パルス幅、放射および反復率のような)選択されたレーザパラメータは最終的に以下詳細に説明するようにターゲット114に入射するパワー密度を制御する。さらにパルスのシーケンスは以下詳細に説明するようにオーバーラップされる。
【0023】
表面の粗面化、即ち材料の除去ではなく比較的拡散性の反射領域を実現するため、最も重要な光学的パラメータはパワー密度、パルス期間、パルスエネルギ、反復率、一連のパルス列のオーバーラップ技術であり、これらの各パラメータの効果を理解することは適切な動作様式の識別を可能にする。最適の動作では、パワー密度は局部化された位相変化を実現するために十分でなければならず、パルス期間、焦点スポットサイズ、パルスエネルギの関数である。ワークピースにおける適切に高いエネルギ密度はこの反射材料に対する効率的な結合を可能にし、各パルスは基板中に小さいピットを生成するために材料の数立方ミクロンを除去する。毎秒数千パルスが利用可能であれば、制御された粗さを有する表面を生成するために迅速に材料をマシンで取り除くことが可能である。
【0024】
パルス期間は重要であり、短いパルスは迅速な材料除去を可能にし、制御されたまたは規則的な粗面化を可能にし、バルクな基板損傷を防止する。
【0025】
十分なパルスエネルギとパワー密度はパルス当り有効な量の材料除去を行うために必要とされる。特に十分な吸収がターゲットの相変化を開始するために必要とされる。表面が溶融または蒸発し始めると、吸収係数は指数関数的に上昇し、これは通常高い反射であると考えられている金属でさえもレーザ処理エネルギを効率的にすることができる。
【0026】
十分な反復率は実行可能な産業プロセスのために十分に高速度の粗面化を可能にするようにこれらのパラメータで必要とされる。パルスオーバーラップの制御は粗面化の制御を可能にする。このプロセスは十分な粗面化効果を実現するために使用されるパラメータに応じて、規則的又は不規則な表面形態を生成することができる。
【0027】
全てのパラメータは粗面化(即ち比較的拡散性ではない反射表面における比較的拡散性の反射又は散乱領域)を行うために選択される。領域は例えば平均表面粗面度(Ra)が5μmよりも大きい十分なコントラストを提供し、それによって検出器がそれらを識別できなければならない。
【0028】
単一のレーザパルスは、材料が除去されるとき、ターゲットの表面に小さいクレータまたはピットの形成を行う。各ピットは非常に僅かに表面を粗くするが、オーバーラップするピットの組合せを使用して、表面全体は比較的拡散性ではない反射領域から弁別できる程度まで粗くされる。
【0029】
材料の除去速度はレーザパルスの反復率と共に増加する。しかしながらこれはターゲットに伝送される増加された平均レーザパワーにより部分的ではあるが説明される。各レーザパルスはターゲットと蒸発材料の温度を上昇すると考えることができる。その結果として高い除去速度はターゲットを気化点まで加熱するために使用されるレーザエネルギが少なければ実現される。基板の初期温度が高い程、単に加熱するのではなく実際に材料を除去するために必要とされるレーザパルスエネルギは多くなる。
【0030】
高い材料除去速度は基板の温度の増加により実現されることができる。1実施形態では、これは表面上の各点が幾つかの連続的なレーザパルスを受けるようにレーザパルスをオーバーラップすることによって実現される。レーザビームの特別なプロフィールと基板の熱拡散により、各レーザビームは熱を基板に投入することと材料を除去することの両者を行う。それぞれ熱を基板に投入する幾つかの連続的なレーザパルスに対して表面をさらす効果は平均表面温度をかなり上昇させる。しかしながら過度に高く上昇されるならば、溶融プールが生成され、材料除去は非常に激しくなり高速度になるが、マークの品質は低下しターゲットに対する熱損傷が生じる可能性がある。最適の表面温度は材料の特性、パルスのオーバーラップ、パルス反復周波数、放射に依存している。
【0031】
前述した部分的な加熱様式は表面材料を除去するための効率的で価格も有効な方法を提供する。しかしながら、例えば溶融プールが生成される点に温度が近づいたならば、基板の冷却を可能にするためにこのプロセスの速度を下げることが可能であることが認識されよう。さらに表面材料を除去するために無視できる程度の熱伝送を有する超高速度レーザまたはエクシマーのようなレーザを使用することが可能である。
【0032】
材料除去速度はターゲットがマークされることのできる速さを決定するが、マークの表面の粗度は拡散性の反射装置としてのその効率を決定する。本発明の実施形態は材料除去速度と表面の拡散性との妥協を考慮している。
【0033】
焦点スポットの移動とレーザ反復率との相関はパルスのシーケンスの制御されたオーバーラップを可能にする。適切なパワー密度およびターゲット材料と組合された適切なオーバーラップは十分に増加された表面の粗さの良好に規定された領域を生成する。1実施形態では、表面の粗面化は以下の段落で与えられているレーザパラメータを使用し、以下の説明のようにターゲットを横切って焦点を移動してアルミニウムターゲットで実現される(明瞭にするために図5を参照する)。第1の段階では、オーバーラップするピットの(A方向の)直線はパルス間で焦点のスポット直径の50%を動かすことにより生成され、所望の長さが実現されたとき、50%のスポット直径に等しい1ステップは直交方向(B方向)で行われ、50%のスポット直径のステップはその後パルスを座標の原点Aに戻すために第1の段階と反対方向(負のA方向)で使用され、同じ直交方向(正のB方向)の50%のスポット直径のステップはスポットを動かすために使用され、そのシーケンスは所望の大きさを有する粗面化された領域が形成されるまで反復された。これは少数の通過で反復されることができる。代わりにピットはオーバーラップされないが、適切な粗面化を起こすのに十分に近接されることができる。
【0034】
示されていない変形では、パルスの線(固定されたパルスとパルスのオーバーラップを有する各パルス)はある量だけ隣接するパルス線と重なる。使用されるレーザ設定に基づいて、走査線のオーバーラップは0と99%の間の任意のものであることができる。1実施形態では走査線のオーバーラップは20乃至50%である。
【0035】
当業者はパルスをオーバーラップするための他の技術がレーザマーキング中にターゲットの平均温度を上昇させるために使用されることができることを認識するであろう。
【0036】
特に1実施形態によれば、表面の粗面化は波長1064nmのレーザにより周囲温度でアルミニウムターゲット上で実現可能であり、アルミニウムは80%以上の反射性であるが短いパルス継続期間と、小さい焦点を結ばれた選択されたスポットサイズはアルミニウムへの十分なエネルギ転送を可能にする。アルミニウムの最適な状態は10mJのパルスエネルギと90nsのパルス継続期間で認められる。しかしながら適切な表面の粗面化はパルスエネルギの範囲(4乃至25mJ)および継続期間(30乃至160ns)で認められる。最適な焦点スポットサイズは160μmであり、1.5m/sの走査速度で10W/cmを超える(最も好ましくは5.5×10W/cm)放射により得られる。
【0037】
高いパルスパワーで小さいレーザスポットを使用することは必要なパワー密度(>10W/cm)を実現することができるが、所定の領域を粗くするために長い時間がかかる。適切な動作パラメータがルーチンの実験により他の材料に対して決定されることができることが認められる。
【0038】
好ましいパルス反復率は20kHzであるが、表面の粗面化は3乃至50kHzの範囲で観察される。パルスのオーバーラップは最も効率的な粗面の表面を生成するために重要である。
【0039】
本発明の実施形態では、レーザの粗面化は任意の空間プロフィールのレーザスポットで実現されることができるが、ガウス、「スーパーガウス」または均質化されたプロフィールであることが好ましい(即ち「トップハット」プロフィール)。本発明の実施形態では、「スーパーガウス」Starlase AO2(M=22)はクレータの寸法と均一性についてより良好な制御を与えることに使用された。しかしながら、局部化されたホットスポットと、スポット直径を横切る強度において大きな変動を含んでいる非均一なプロフィールはこれがさらに局部化された粗面化を生成する可能性があるので、事実、同様に望ましいものである可能性があることが当業者には明白である。さらに、回折光学素子(DOE)またはビームマスキング技術は任意の空間的プロフィールを有するレーザにより制御された放射パターンを発生するために使用されることができる。
【0040】
長い焦点距離を有する集束レンズは入射平面に関するターゲットの正確な位置付けに許容度を与える点で優れている。
【0041】
前述の実施形態で特定されたパラメータはマーキングのためのターゲット材料としてアルミニウムを使用して最適化される。粗面化された層は50μmの程度の深さであり、粒の大きさに対する依存は見られない。マーキング前の表面仕上げは好ましくは最適の性能で選択される。レーザの粗面化前、材料は実質的に通常バーコードを読取るために使用される635nmの赤色レーザダイオード光を含んだ光に対して拡散性ではないことが必要である。また、任意の結果的な酸化物層は弁別可能であるように故意にレーザ粗面化された領域からの拡散性の反射を可能にするために同じ拡散性でない特性を示すことを必要とする。その材料は不所望の反射拡散等を防止するためにマーキング前に合理的に平滑な仕上げ面をもたなければならず、その仕上げは当業者により知られているようにレーザ研磨により与えられることができる。
【0042】
説明されたレーザマーキングのタイプの実施形態は、金属のように通常高度に反射性でありレーザマークが困難であると考えられている材料に特に適している。さらに実施形態は1段階の迅速な製造プロセスを与え、マーク当り数秒の速度を実現する。さらにターゲット表面を被覆する必要は最初に除去され、このような被覆に関連する種々の問題および欠点は克服される。さらに、マークされたコンポーネントのバルクな特性は影響を受けない。被覆されていないアルミニウムの表面を粗面化することは比較的低コントラストであるが眼により読取可能なマークを生成する。
【0043】
粗面化に使用されるレーザスポットの小さいサイズは高い分解能のバーコードを可能にし、これは単位面積当たりの情報が多くなることを意味している。これらのバーコードは直接ターゲットに与えられ、ソフトウェアにより駆動されることができ、偽造または損傷を与えることが困難である。本発明の実施形態はターゲットとしてアルミニウムを使用するとき特に効率的であることが発見されている。
【0044】
ここで説明した技術はここで説明した仕様を実現することのできる任意のレーザ及び、レーザからターゲットへの正確な適切なエネルギ結合が与えられる任意のターゲット材料(例えば銅又は銀)に拡張されることができることが認識されよう。別の波長のレーザは同じ粗面化効果を実現するために使用されることができる。その候補には10.6μm波長のQスイッチCOレーザ、532nm、355nmおよび266nm波長の周波数変換された固体レーザ、紫外線のエキシマーレーザが含まれる。
【0045】
ガラスのような透明な材料を含む任意の波長の実質的な光学特性を有する任意のターゲット材料はこのプロセスに適しており、その場合には鏡面反射領域を有する代わりに、バーコードの「黒色」部分は粗面化されていない透過可能な領域により与えられ、その領域を読取ビームが通過し、その光は検出器によって粗面化された領域からのみ収集される。
【0046】
粗面化された領域と平滑な領域の慎重に制御されたチャンネルが本発明の実施形態により生成されることができ、これは例えば以下説明するようにバーコードのようなマシンの読取可能な指標を表すために使用されることができることが示されている。
【0047】
図4の(a)および(b)で示されているタイプの通常のバーコード読取装置はさらに特別に、通常はスペクトルの赤色部の読取ビームを放射するレーザダイオードであるが任意の適切なレーザ及び波長が実行されることができる低パワーレーザと、バーに沿って1次元でレーザビームを走査するように迅速に振動するミラー(図示せず)のような走査装置と、ターゲット領域を指向した対物レンズとして動作する収集光学系のセットと、収集光学系により収集された光に応答する通常のフォトダイオードのような光検出システムと、走査装置を制御し、フォトダイオード信号を解釈し、バーコードを表す出力を提供するためハードウェアおよびソフトウェアを使用する制御装置とを含んでいる。通常のバーコードは白色の背景上に印刷されている太さが変化する一連の黒色の線からなる。低パワーレーザがバーコード402を横切って走査する場合、黒色と白色の線は入射光を異なる割分でフォトダイオードの方向へ戻すように反射をし、検出とそれに続くバーコードの再構成を可能にする。
【0048】
本発明の実施形態はレーザで粗面化された領域304が本発明のターゲット材料30の比較的平滑な処理されない領域408aよりも多くの光408を散乱し、その個々のバーコード読取装置がこの技術により発生された粗さとのコントラストを検出できるという認識を利用する。
【0049】
特に、ターゲット材料に対して垂直の角度では、ここで説明したように生成されたレーザで粗面化された領域408bは自然の、平滑で反射性の未処理領域408aよりも非常に多くの入射光404aを散乱することが発見されている。図4の(a)はターゲット材料の比較的平滑な領域408aに入射するバーコードレーザ400を示している。アルミニウム表面は高度に反射性があり、ほとんどの光はバーコード読取装置から離れるように404bの方向に反射される。この場合、フォトダイオード410は実質的に後方散乱された光を受信しない。しかしながら、図4の(b)の状態ではレーザ400からの入射光404cが実質的にターゲットの粗面化された領域408bにより404dで実質的に示されるように散乱されることを示している。フォトダイオード410はこの光404cの幾らかを収集し、それを通常のバーコードの「白色」と等価なものとして読取る。比較的平滑で未処理の領域408aはシステムに対して実効的に不可視であり、通常のバーコードの「黒色」と等価である。したがって、通常のバーコードは色又は反射率においてコントラストを示すが、本発明の実施形態により生成されたバーコードは表面の粗さでコントラストを示す。
【0050】
動作において、入射レーザビーム404aはバーコードを横切って一方方向で走査される。レーザが比較的粗い表面408b領域と平滑な表面408a領域との上を通過し、フォトダイオード410がターゲットの粗さにおけるコントラストを検出するとき、制御装置は適切な較正によりこれらのマークの周波数、継続期間、間隔を監視し、そこに記憶されたデジタル情報の読取を可能にする。
【0051】
1実施形態によれば、レーザビームが誘導されるワークピースは、塗装又はラッカーのような反射被覆を有する金属表面である。レーザビームは被覆を除去し、その下の金属基板を露出するために使用される。これは前述の被覆されていないアルミニウムについて説明したような効果を達成し、被覆された又は塗装された領域は鏡面反射装置として作用し、レーザ加工された金属領域は拡散性の反射装置として作用する。この実施形態はコンポーネントとビークルの塗装後にそれらにおけるセキュリティの適用および/または追跡可能性バーコードに応用を発見することができる。
【0052】
市販のバーコード読取装置のような任意の適切な読取装置はこれらのバーコードの読取に適している。通常のバーコード読取装置は入射角度に対して顕著な許容度があるが、本発明の実施形態により生成されたバーコードは表面の垂線に対して5乃至85度の範囲中のいずれかの角度で読み取られることができることが発見されている。本発明はマーキングコンポーネント(例えばモータービークルの本体、シャシまたはエンジン等)の生産ラインで応用を発見することができる。
【0053】
1次元のバーコードについて説明したが、本発明が任意のバーコード符合または、2次元の符合を含む他のマシン読取可能な指標、領域間のコントラストを検出するため適切な読取装置位置と共に静止または動作しているかを読み取られることができるバーコードを使用できることが同様に明白である。バーコードはこれらの原理に基づいて、ソレノイドまたは(例えばTelesisから入手可能なような)レーザピーニングのような拡散性の反射部分を形成するために表面の適切な領域を粗面化するための別の物理的機構により生成されることができる。
【0054】
この技術はアルミニウムのような反射材料上に読取可能なバーコードを生成するために全ての産業分野で使用されることができる。例えば応用には、コンポーネントの追跡能力、生産ラインにおけるサブアセンブリおよびアセンブリ、販売後の部品の製造元の追跡能力、置換および/またはスペア部品の本物であるかの検査(プロセスは非常に困難であり高価であるので偽造できない)が含まれている。直接的な産業応用例には、追跡能力と自動化された生産のための生産ラインにおける本体が白色の自動車の車体にマークを形成し、自動車製造における追跡能力と自動化された生産のためコンポーネントとサブアセンブリのマーキングと、セキュリティのためのエンジン部品のような高価な自動車部品のマーキングと、安全性、追跡能力およびセキュリティのための機体およびタービンエンジン部品のマーキング等が含まれている。同様に、完成された製品、部品またはサブコンポーネントがそれらに永久的にマークされているバーコードから恩恵を得る任意の産業は売場に到達する前に、この技術を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】既知のレーザマーキングシステムを示す概略図。
【図2】陽極処理されたアルミニウム基板のマーキングを示す概略側面図と、マークされた陽極処理されたアルミニウム基板を示す概略側面図。
【図3】本発明の1実施形態によるマーキング方式を示す概略図。
【図4】本発明の1実施形態による読取方式を示す概略図。
【図5】粗くされた領域を生成する表面上にピットまたはクレータをそれぞれ残しているレーザパルスのパターンを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的拡散性ではない反射表面領域の選択されたマーキング領域をレーザ光で照射し、前記マーキング領域を生成するために部分的にオーバーラップする領域を照射する処理を含んでいる比較的拡散性ではない反射表面領域を有する表面にレーザでマークを形成する方法。
【請求項2】
レーザ波長は1064nmである請求項1記載の方法。
【請求項3】
パルスエネルギは4乃至25mJであり、好ましくは10mJである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
パルス継続期間は30乃至160nsであり、好ましくは90nsである請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
レーザスポットの空間的プロフィールはスーパーガウスである請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
レーザは10W/cmよりも大きく、好ましくは5.5×10W/cmであるパワー密度で動作される請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
レーザは1乃至500μmのスポットサイズの焦点を結ぶように構成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
部分的にオーバーラップする領域は比較的拡散性の反射の領域が第1の照射レーザパルスと、それに続く第2のオーバーラップする照射パルスによって生成されるように構成されている請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の各パルスはマーキング領域の平均温度を上昇させる請求項8記載の方法。
【請求項10】
1対のパルスは焦点を結んだスポットの直径の0乃至99%、好ましくは40乃至60%、より好ましくは50乃至55%だけオーバーラップしている請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
表面は反射表面または透過表面であり、特にアルミニウム、ガラス、シリコン、銅のうちの1つを含んでいる請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
表面は反射被覆、特に塗装またはラッカーを有する金属で構成されている請求項1乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
基板表面をマシンが読取可能な指標でマークする方法を含んでいる請求項1乃至12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
指標は前記通常は拡散性ではない反射領域の非照射部分により分離されている前記拡散性の反射領域から形成されているバーコードを具備している請求項13記載の方法。
【請求項15】
拡散性の反射領域は通常のバーコードの白色の、反射または散乱領域に対応している請求項14記載の方法。
【請求項16】
比較的拡散性ではない反射表面領域を有する表面上にマシン読取可能な指標を生成するためにレーザを制御する方法において、
比較的拡散性の反射領域を生成するために比較的拡散性ではない反射表面領域の選択された領域に沿ってレーザ光を走査し、前記比較的拡散性の反射領域を生成するため部分的にオーバーラップする領域を照射する処理を含んでいる方法。
【請求項17】
マシン読取可能な指標を生成するために比較的拡散性ではない反射表面領域を有する表面にマークを形成するレーザ装置において、装置は比較的拡散性の反射領域を生成するために比較的拡散性ではない反射表面領域の選択されたマーキング領域を照射するように構成されているレーザと、前記指標を生成するためにレーザ入射を制御する制御装置とを具備し、レーザは前記比較的拡散性の反射領域を生成するために部分的にオーバーラップしている領域を照射するように構成されているレーザ装置。
【請求項18】
レーザ波長は1064nmである請求項17記載の装置。
【請求項19】
パルスエネルギは4乃至25mJであり、好ましくは10mJである請求項17又は18記載の装置。
【請求項20】
パルス継続期間は30乃至160nsであり、好ましくは90nsである請求項17乃至19のいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
レーザスポットの空間的プロフィールはスーパーガウスである請求項17乃至20のいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
レーザは10W/cmよりも大きく、好ましくは5.5×10W/cmであるパワー密度で動作される請求項17乃至21のいずれか1項記載の装置。
【請求項23】
レーザは1乃至500μmのスポットサイズで焦点を結ばれる請求項17乃至22のいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
比較的拡散性の反射領域を生成するために部分的にオーバーラップする領域を第1の照射レーザパルスで照射し、その後の第2のオーバーラップするレーザパルスにより照射するように構成されている請求項17乃至23のいずれか1項記載の装置。
【請求項25】
使用時に、各前記第1及び第2のパルスはマーキング領域の平均温度を上昇させる請求項24記載の装置。
【請求項26】
装置は焦点を結んだスポットの直径の0乃至99%、好ましくは40乃至60%、より好ましくは50乃至55%だけ1対のパルスをオーバーラップするように構成されている請求項25記載の装置。
【請求項27】
マシン読取可能な指標はバーコードを含んでいる請求項17乃至26のいずれか1項記載の装置。
【請求項28】
比較的拡散性ではない反射表面領域を有する表面上にマシン読取可能な指標を生成する方法において、
比較的拡散性の反射領域をその上に生成する処理を含んでいる方法。
【請求項29】
マシン読取可能な指標を有する表面を有し、基板は少なくとも1つの比較的拡散性ではない反射領域と少なくとも1つの比較的拡散性の反射領域とを具備している基板。
【請求項30】
さらに、比較的拡散性の反射領域を生成する前にレーザが表面領域を研磨する処理を含んでいる請求項1乃至16のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
図面を参照にして実質的にここで説明されている方法又は装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−513362(P2009−513362A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537200(P2008−537200)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004038
【国際公開番号】WO2007/049064
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(503081302)パワーレイズ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】