説明

表面付着強化カチオン性ポリマーが含有されている組成物

本発明は、洗剤補助組成物のうち、(i)液体又は液化可能の活性成分と、(ii)水不溶性の固体支持成分と、(iii)水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材と、(iv)所望による1以上の補助剤成分とを含んでなり、組成物がさらに、、(v)ポリマー又はオリゴマー(脱イオン水で調製後、炭酸ナトリウム又はクエン酸でpH7.0まで調節したもの)の1質量%溶液を25°Cで10日間貯蔵した場合(10日間貯蔵試験)に50%未満が不活性化するようなカチオン基を備えた表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーを含んでおり、表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーが水不溶性の固体支持成分上に吸着し、水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材が、液体又は液化可能の活性成分、水不溶性の固体支持成分、及び表面付着強化カチオン性ポリマーをカプセル化してなるのを特徴とする洗剤補助組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面付着強化カチオン性ポリマーを含む粒子状の洗剤補助組成物、前記洗剤補助組成物を生成する方法、前記洗剤補助組成物を含む洗濯洗剤組成物、及び、布地表面上への香料の付着を強化する目的で前記表面付着強化カチオン性ポリマーを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
表面処理組成物、例えば洗濯洗剤組成物などの布地処理組成物には典型的に、処理表面上に活性物質を付着させるシステムが含まれている。例えば、洗濯洗剤組成物には、所定の作業を実施可能にする前に布地表面上に付着させる必要のある活性成分が含まれている場合がある。この活性成分としては香料が挙げられる。
【0003】
しかし、洗濯洗剤組成物は典型的に、洗濯プロセス中に布地表面から物質、すなわち汚れを除去する設計になっている。このため、洗濯洗剤組成物の中に配合されている化学物質の大半には、この除去作業が実行されるように設計及び調整が施されている。したがって、これらの化学物質が原因で、洗濯プロセス中に布地表面上にいずれかの活性成分を付着させるのは困難である。この問題にはとりわけ、洗濯プロセス中に布地表面上に付着させるのが特に難しい香料のような液体又は液化可能の活性成分が当てはまる。
【0004】
沸点の高い疎水性香料原料、すなわち、洗浄溶液からすぐには蒸発せず、布地表面との疎水相互作用が大きいために布地表面と結合しやすい疎水性香料原料を使用することによって、洗濯プロセス中における香料の布地表面上への付着を向上させる試みが行われてきた。このような香料は、第4象限香料原料として既知であり、米国特許第5,500,138号、及び同6,491,728号にさらに詳細に記載されている。ただし、洗濯洗剤組成物での第4象限香料の使用のデメリットは、使用可能な香料原料を選択する際、香料メーカーが非常に限られており、第4象限香料のもたらす香りが非常にムスクの強い香りであり、洗濯洗剤組成物での使用に適しているとは限らない点である。さらに、洗濯プロセス中における第4象限香料の布地表面上への付着は依然としてあまり効率的でなく、また、依然として改善の必要性がある。
【0005】
洗濯プロセス中における香料の布地表面への付着を向上させるその他の試みとしては、香料原料を例えばデンプン内でカプセル化してデンプンカプセル化香料調合物を生成することが挙げられる。このデンプンカプセル化香料調合物、及びその調合物を洗濯洗剤組成物に適用することについては、PCT国際公開特許WO99/55819号にさらに詳細に記載されている。しかし、デンプンカプセル化香料調合物を洗剤組成物で使用する場合、湿潤状態では優れた香りを達成できても、おそらく香料が洗浄溶液内における水溶性及び/又は水分散性に高いことから、香料は依然として洗濯プロセス中に洗浄溶液内で消失してしまう。
【0006】
別のアプローチは、ゼオライトのような多孔質の担体物質の上に香料を添加することである。この香料添加ゼオライトというアプローチは、欧州特許第701,600号、同851,910号、同888,430号、同888,431号、同931,130号、同970,179号、同996,703号、米国特許第5,691,383号、同5,955,419号、及びPCT国際公開特許WO01/40430号にさらに詳細に記載されている。ただし、貯蔵中に香料がゼオライトから洗剤マトリックス上に、及び/又は、洗濯プロセス中に(すなわち、ゼオライトが布地表面上に付着する前に)洗浄溶液内に漏洩する危険性がある。この問題を打開するために、前記香料添加ゼオライトをデンプンでカプセル化する試みも行われており、この試みは、欧州特許第859,828号、同1,160,311号、及び米国特許第5,955,419号にさらに詳細に記載されている。同時係属中の欧州特許出願番号03252549.5号には、香料の付着効率を高める粒子のうち、液体又は液化可能の活性成分を支持するゼオライトのような固体支持体が含まれている粒子について記載されており、前記粒子には水溶性及び/又は分散性のカプセル化材が含まれており、粒子内のカオチン性ポリマーが水不溶性の固体支持体上に吸着する。今では、同時係属中の前記特許に記載されている粒子の性能はさらに高まる可能性があることを本発明者達は見出している。本発明者達は、負荷状態下では、粒子の性能が貯蔵時に低下することを発見しており、彼らの研究によって、その原因がカチオン基の加水分解にあり、粒子の効率性を低下させ、及び/又は、望ましくない副生成物が生成されることが明らかになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、洗剤に組み込まれた活性成分の伝達効率を向上させる必要性、すなわち、洗濯プロセス中に香料及び/又はその他の液体若しくは液化可能の活性成分の布地表面上への付着効率を向上させる必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)液体又は液化可能の活性成分と、(ii)水不溶性の固体支持成分と、(iii)水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材と、(iv)所望による1以上の補助剤成分とを含んでなる粒子状の洗剤補助組成物であって、組成物が、さらに(v)ポリマーのpH7の脱イオン水溶液の1質量%を25°Cで10日間貯蔵した場合(10日間貯蔵試験)に50%未満が不活性化するカチオン基を備えた表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーを含んでおり、前記表面付着強化カチオン性ポリマーが水不溶性の固体支持成分上に吸着し、前記カプセル化材が、前記活性成分、前記固体支持成分、及び前記カチオン性ポリマーをカプセル化してなるのを特徴とする組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
粒子状の洗剤補助組成物
洗剤補助組成物は、洗濯洗剤組成物のような洗剤組成物に組み込むのに、すなわち、完全調合洗剤組成物を作るのに適している。あるいは、洗剤補助組成物は、洗濯洗剤組成物のような洗剤組成物と組み合わせて、すなわち、完全調合済み洗剤組成物に加える添加剤として使用するのに適している。洗剤補助組成物は粒子状で、液体又は液化可能の活性成分、水不溶性の固体支持成分、水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材、ポリマーのpH7の脱イオン水溶液の1質量%を25°Cで10日間貯蔵した場合に50%未満が不活性化するカチオン基を備えた表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマー、及び所望による1以上の補助剤成分とを含んでなる。これらの成分についてはすべて、以下でさらに詳細に説明する。
【0010】
洗剤補助組成物は、処理する布地又はその他の基材の表面上に活性成分を付着させることを目的とするものであるため、前記組成物には、処理表面と近接することが可能でなければならない。この目的を達成するための1つの手段は、粒子のゼータ電位を変化させて、洗剤補助組成物の粒子と処理表面の間に反発力、すなわち電気化学的な反発力がほとんど又はまったく存在しないことを確かにすることである。したがって、洗剤補助組成物の粒子と処理表面の間に発生する可能性のあるいずれの電気化学的な反発力も最小限に抑えられるよう、洗剤補助組成物の運動電位、別名ゼータ電位を低く保つのが望ましい。本発明のある態様では、洗剤補助組成物は正のゼータ電位を有していてもよい。ゼータ電位については、「表面物理化学(Physical Chemistry of Surfaces)」第4版(1982年、アダムソン(Adamson)著、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)刊)、とりわけ前記書籍の198〜205ページにさらに詳細に記載されている。
【0011】
洗剤補助組成物のゼータ電位は典型的に、以下の方法によって測定する。
1.組成物10gを25°Cの水200mLに加え、5分間撹拌する。
2.工程1で得られた生成物を838ラド/秒(8,000rpm)で10分間、遠心分離機シグマ(Sigma)4〜10で分離する。
3.工程2の間に集めた沈降物を分離し、その沈降物0.02gを1mMのKCLの水溶液500mLに懸濁する。
4.工程3の上記懸濁液をブルックスヘブン社製ゼータ電位分析器ゼータプラス(Brookhaven ZetaPlus Zeta Potential Analyzer)の試験槽に充填する。
5.試験槽全体を分析器の中に挿入し、メーカーの説明書に従ってゼータ電位を分析する。
6.10回分の測定値を平均して、組成物のゼータ電位を算出する。
【0012】
好ましくは、洗剤補助組成物のゼータ電位は−30mVよりも中性に近く、好ましくは−20mVよりも中性に近い。洗剤補助組成物内に表面付着強化カチオン性ポリマーが存在しているため、ゼータ電位は、より低く(すなわち中性に近く)なると考えられる。洗剤補助組成物には、表面付着強化カチオン性ポリマーが1.2〜10質量%含まれているのが好ましい。
【0013】
洗剤補助組成物の平均粒径は典型的に5〜200マイクロメートル、好ましくは10〜50マイクロメートルであり、及び/又は、典型的に洗剤補助組成物の10質量%以下の粒径は5マイクロメートル未満であり、及び/又は、典型的に洗剤補助組成物の10質量%以下の粒径は80マイクロメートル超である。これらの粒径要件及び分布は、洗剤補助組成物を洗濯洗剤組成物に組み込む場合に特に好ましく、これらの粒径要件及び分布を備えた粒子は、輸送及び貯蔵中に洗濯洗剤組成物内で分離しない傾向があるとともに、貯蔵中、洗濯洗剤組成物内で安定しているためである。
【0014】
洗剤補助組成物は、アグロメレーション、スプレー乾燥、凍結乾燥、又は押し出し法によって入手可能であり得、及び/又は、入手される。ただし、洗剤補助組成物の生成プロセス中に、組成物を構成する成分を相互に接触させる順序には、非常に好ましい順序がある。この好ましいプロセスについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0015】
活性成分
活性成分は液体又は液化可能の形態をしている。好ましくは、活性成分は液体の形態をしている。活性成分は典型的に、処理プロセス中、活性成分の所定の機能が実行可能になる前に処理表面に近接させるか、さらには、処理表面上に付着させる必要がある(例えば、洗浄又はすすぎ工程で、洗濯する布地の表面と接触させる必要がある)。活性成分は、例えばその性能を高める目的で、処理表面上に付着させる必要性及び/又は要求のあるいずれかの成分である。活性成分は、処理表面に近接又は付着するまでは不活性状態である活性成分に限定されない。とりわけ、乾燥後の布地が良い香りを発するというメリットを洗濯プロセス中に布地にもたらしたい場合に非常に好ましい活性成分は香料である。
【0016】
香料は、望ましいいずれかの香りがもたらされるように配合することができる。例えば香料は、ほのかなフローラルの香りのする芳香剤、又は、ウッディ若しくはアーシーな香りのする芳香剤にすることができる。香料には典型的に1個以上の香料原料(PRM)が含まれ、より典型的には、香料には数多くの、すなわち少なくとも2個、又は少なくとも5個、さらには少なくとも10個のPRMが含まれ、さらに典型的には、望ましい香りを有する香料を得るために典型的にはブレンドしたPRMが含まれる。香料は単一設計のものにして、比較的少ない数のPRMのみから構成してもよい、又は、代わりに、香料をさらに複雑な設計のものにして、比較的多くのPRMから構成してもよい。好適なPRMは典型的に、アルデヒド、ケトン、エステル、アルコール、プロピオネート、サリチラート、エーテル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択する。好ましい香料及びPRMは、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ8ページ18行目〜11ぺージ25行目にさらに詳細に記載されている。
【0017】
香料の臭覚検出閾値(別名、臭気検出閾値(ODT)としても知られている)は典型的には3ppm以下、より好ましくは10ppb以下である。典型的には香料には、ODTが3ppm以下、より好ましくは10ppb以下のPRMが含まれている。好ましいのは、ODTが3ppm以下、より好ましくは10ppb以下のPRMが香料に少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも85質量%含まれているケースである。ODTの算出方法は、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ12ページ10行目〜13ぺージ4行目に記載されている。典型的には香料の沸点は300°C未満である。典型的には香料には、沸点が300°C未満のPRMが少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%含まれている。さらに、香料のオクタノール/水分配係数(ClogP)の値は典型的に1.0超である。ClogPの算出方法は、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ11ページ27行目〜12ぺージ8行目に記載されている。
【0018】
活性成分又は少なくともその一部は典型的に、固体支持成分上に吸着及び/又は吸収される。これは特に、固体支持成分が多孔質で、活性成分(又は、活性成分が香料である場合には、香料を構成するPRM)又はその一部が多孔質の固体支持成分の孔を貫通可能であるとともに、固体支持成分の多孔質マトリックス内に定着可能である場合に好ましい。多孔質の固体支持成分上に吸着及び/又は吸収される活性成分、とりわけ香料は、固体支持成分からの活性成分の放出を遅らせるような方法で調製することができる。
【0019】
多孔質材からの放出を遅らせるように香料を調製する手段の1つは、多孔質材に対する親和性の高いPRMが香料に1個以上含まれるようにする手段である。例えば、特定の寸法、形(すなわち、分子断面積及び分子容)、及び多孔質材の孔に対する表面積を有するPRMは、多孔質材に対して高い親和性を示すとともに、洗濯プロセスの洗浄及び/又はすすぎ工程中に、多孔質材に対する親和性のより低いその他のPRMが多孔質材から分離するのを防ぐ機能を備えている。これについては、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ7ページ26行目〜8ぺージ17行目にさらに詳細に記載されている。
【0020】
多孔質材からの放出を遅らせるように香料を調製する別の手段は、多孔質材の孔を貫通可能なほど十分に小さく、香料以外の小さい分子(別名、寸法拡大剤としても知られている)と反応して、多孔質材の孔を貫通不可能なほど大きい、より大きな分子(別名、放出阻害物質としても知られている)を形成可能なPRMが香料に1個以上含まれるようにする手段である。放出阻害物質は多孔質材の孔を貫通不可能なほど大きく、分解(すなわち加水分解)されるまでは多孔質材の孔マトリックスに捕捉され、より小さなPRM及び寸法拡大剤まで戻り、その後、多孔質材の孔を貫通し、多孔質材から流出可能になる。典型的にこれは、多孔質材内に放出阻害物質を形成させるために、小さなPRMと寸法拡大剤の間に加水分解性結合を形成させることによって実現する。加水分解の際、小さなPRMは、より大きな分子から放出され、その後、多孔質材から流出可能になる。このことについては、PCT国際公開特許WO97/34981号、とりわけ7ページ4行目〜5ぺージ14行目にさらに詳細に記載されている。
【0021】
その上、PRMを寸法拡大剤と反応させることによって放出阻害物質を形成させる上記のアプローチは、親水部分及び疎水部分(例えば、C18モノグリセリドの乳酸エステルのような糖質系非イオン性界面活性剤)を有する寸法拡大剤を使用することによってさらに適合させることができる。このことについては、PCT国際公開特許WO97/34982号、とりわけ6ページ27行目〜7ぺージ17行目にさらに詳細に記載されている。
【0022】
固体支持成分
固体支持成分は水に不溶である。固体支持成分は活性成分と相互作用して、洗濯プロセスなどの処理プロセス中に活性成分を支えるとともに、活性成分を保護する。また、固体支持成分は、典型的にはそれ自体が処理表面、例えば布地表面の上に付着して、処理表面の上に活性成分を一緒に運ぶことによって、活性成分の処理面上への付着を強化する。
【0023】
固体支持成分は、活性成分を(例えば吸収又は吸着によって)支持可能である一方で、当然のことながら、さらに処理プロセス中、及び/又はプロセス後のいずれかの段階で活性成分を放出可能であるいずれの水不溶性物質にすることもできる。好ましい固体支持成分は、活性成分が多孔質の固体支持成分の孔を貫通可能であるとともに、固体支持成分の孔マトリックス内に定着可能なような多孔質材である。
【0024】
好ましい固体支持成分は、アルミノケイ酸塩、非晶質ケイ酸塩、炭酸カルシウム、及びこれらの複塩、粘土、キチンマイクロビーズ、結晶性非層状ケイ酸塩、シクロデキストリン、並びにこれらの混合物から成る群から選択する。より好ましくは固体支持成分はアルミノケイ酸塩であり、最も好ましくはゼオライト、とりわけフォージャサイト(faujustite)型ゼオライト、例えばゼオライトX、ゼオライトY、及びこれらの組み合わせである。特に好ましい固体支持成分はゼオライト13xである。好ましいアルミノケイ酸塩は、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ13ページ26行目〜15ぺージ2行目にさらに詳細に記載されている。
【0025】
固体支持成は結晶構造を備え、その平均一次結晶粒径が2〜80マイクロメートル、好ましくは2〜10マイクロメートル、並びに/又は、典型的には一次結晶の10質量%以下の粒径が0.8マイクロメートル未満、及び/若しくは、典型的には一次結晶の10質量%以下の粒径が20マイクロメートル超であるのが好ましいと思われる。これらの一次結晶粒径要件を備えた固体支持成分は、処理表面上に対する高い付着性、高い活性成分放出ダイナミクス、優れた活性成分負荷容量を示し、洗浄及び/又は処理に悪影響を及ぼすことがない。
【0026】
固体支持成分は典型的には中性子であるが、固体支持成分の外面には、特にpHが中性(すなわちpH7)の水溶液において、負帯電表面を備える(固体支持体のゼータ電位又は電気泳動移動度がマイナスである)のが好ましい。典型的に、固体支持成分は酸化物の外面を構成してなる。すなわち、固体支持成分の外面に酸化物部分を備えてなる。負帯電外面を備えた固体支持成分は、カチオン性ポリマーと固体支持成分の負帯電外面の間の電気化学的な引力が高いため、表面付着強化カチオン性ポリマーと、より容易に相互作用する。このことは、表面付着強化カチオン性ポリマーが、特定の電荷密度及び/又は特定のカチオン置換度を備えている場合に特に好ましい。この時、カチオン性ポリマーと固体支持成分との間に最適な親和性があり、活性成分の処理表面上、とりわけ洗濯プロセス中の布地表面上への優れた付着性がもたらされるためである。
【0027】
カプセル化材
カプセル化材は水溶性である。カプセル化材は典型的には、活性成分、固体支持成分、及びカチオン性ポリマーの少なくとも一部、好ましくは全部をカプセル化する。この方法でカプセル化材は、貯蔵中、さらには処理プロセスの初期段階中、及び場合によっては処理プロセスの後期段階中でさえも、カプセル化した成分を外部環境から保護する。カプセル化材は典型的に処理プロセスの洗浄段階中のある時点で溶解し、活性成分及び表面付着強化カチオン性ポリマーとともに固体支持成分を洗浄溶液の中に放出する。そして、固体支持成分は処理表面上に固着可能になり、活性成分を処理表面に近接させる。
【0028】
カプセル化材は、処理プロセスにおける活性成分の放出遅延手段として使用することができる。例えば、処理プロセスの初期又は後期段階で活性成分を洗浄溶液の中に放出可能にするために、カプセル化材の水溶性を増大又は低減させることができる。例えば、活性成分が香料で、乾燥後の布地が良い香りを発するというメリットを洗濯プロセス中に布地へもたらすのが望ましい場合、洗濯プロセスの後期段階まで洗浄溶液中への香料の放出を遅らせ、別段に発生する香りの喪失を回避又は大きく低減するようにするのが好ましいと思われる。
【0029】
カプセル化材のガラス転移温度(Tg)は0°C以上であってもよい。ガラス転移温度は、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ6ページ25行目〜7ページ2行目にさらに詳細に記載されている。カプセル化材のガラス転移温度を制御することによって組成物のもろさを制御して、処理、輸送、及び貯蔵中に、粒子の形態を取る組成物の破損を回避することができ、またこうすることによって、処理及び輸送中に発生する可能性のある粉塵の発生が軽減される。カプセル化材のガラス転移温度を制御する1つの方法は、可塑剤、典型的には水以外の可塑剤をカプセル化材に組み込むことである。水以外のいずれかの可塑剤を使用することができる。カプセル化材がデンプンの場合には、好ましい可塑剤は、単及び2糖類、グリセリン、ポリオール、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択する。
【0030】
カプセル化材は好ましくは、炭水化物、天然及び/又は合成ゴム類、セルロース及び/又はセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択する。好ましくはカプセル化材は炭水化物であり、典型的には単糖類、オリゴ糖、多糖類、及びこれらの組み合わせから成る群から選択する。最も好ましくはカプセル化材はデンプンである。好ましいデンプンは欧州特許第922,499号、米国特許第4,977,252号、米国特許第5,354,559号、及び米国特許第5,935,826号に記載されている。
【0031】
表面付着強化カチオン性ポリマー
本明細書で使用する時、ポリマーという表現にはコポリマーが含まれる。表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーは、固体支持成分の内側に、又は固体支持成分によって通常保持される活性成分の処理表面上への付着を強化する。理論によって制限されないが、カチオン性ポリマーは、固体支持成分上にひとたび吸着すると、固体支持成分の外面と処理表面の間に発生する可能性のあるいずれかの反発力、すなわち静電反発力を減少、好ましくは消滅させると考えられる。これはとりわけ、固体支持成分の外面が負に帯電しており、処理表面が布地表面である場合に当てはまると考えられる。表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーは典型的に、組成物のゼータ電位を低下させる。
【0032】
したがって、カチオン性ポリマー又はオリゴマーには、ポリマー又はオリゴマーの1質量%溶液(脱イオン水で調製後、炭酸ナトリウム又はクエン酸でpH7.0まで調節したもの)を25°Cで10日間貯蔵した場合(10日間貯蔵試験)に50%未満が不活性化するカチオン基が備わっている必要がある。不活性化とは、カチオン性の消失を意味する。不活性化は通常、加水分解によって起こるが、上記の条件下において1個以上のカチオン基の消失をもたらすその他のいずれの仕組みもこの定義に含まれるものとする。好ましくは、上記の条件下において、上記の10日間貯蔵試験でカチオン基の30%未満、好ましくは20%未満、さらには10%又は5%未満が不活性化する。
【0033】
したがって好ましくは、上記の条件下においてカチオン基が加水分解の影響をそれほど受けないようなカチオン基を選択する。不活性度は、カチオン基の化学的性質に応じていずれかの適切な方法で検出してよい。当業者は、カチオン基の不活性化を割り出すための適切な方法、例えば、加水分解反応に起因する副生成物を検出することによる方法、又は、ポリマーそのものの分析による方法に精通しているであろう。物理的又は化学的方法、例えば、NMR、質量分光法、粘度分析、又は滴定法を使用してもよい。好ましいカチオン性ポリマー又はオリゴマーは、少なくとも4個のカチオン基を備えており、好ましくは少なくとも7個、さらには少なくとも8個、又は10個、又は12個のカチオン基を備えてなる。理論によって制限されないが、これは、ポリマー系のスローダイナミクスを考慮すると、ポリマーが水不溶性の支持体の表面から吸着するように、個々のカチオン基が可逆的に水不溶性の支持成分の表面の負電荷に引き付けられるものの、すべてのカチオン基がほぼ同時に分離する必要があるためと考えられる。特定された、カチオン基の好ましい最小数で、所望の性能が達成されることを我々は見出した。上で説明したとおりpH7.0における10日間貯蔵試験を使用した場合に、カチオン基の不活性化の後でさえもカチオン性ポリマーに上記の数のカチオン基が備わっているのが最も好ましい。
【0034】
特に好ましいカチオン性ポリマー又はオリゴマーには、環状アミン基、より好ましくは不飽和環状アミン基によってもたらされるカチオン基が備わっている。好ましいオリゴマー類及びポリマー類は、以下の一般式を有するポリマーに関するPCT国際公開特許WO99/14300号に記載されているものである。
【化1】

式中、
TはそれぞれH、C〜C12アルキル、置換アルキル、C〜C12アルキルアリールから成る群から独立して選択する。
【化2】

及び−R
式中のWには、以下から成る群から選択した環状構成物質が少なくとも1個含まれている。
【化3】

さらにWには、少なくとも1個の環状構成物質に加えて、以下の一般構造の脂肪族又は置換脂肪族部分が含まれていてもよい。
【化4】

Bはそれぞれ独立して、C〜C12アルキレン、C〜C12置換アルキレン、C〜C12アルケニレン、C〜C12ジアルキルアリーレン、C〜C12ジアルキルアリーレンジイル、及び−(RO)−であり、
Dはそれぞれ独立してC〜Cアルキレンであり、
Qはそれぞれ独立して、ヒドロキシ、C〜C18アルコキシ、C〜C18ヒドロキシアルコキシ、アミノ、C〜C18アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ基、複素環モノアミノ基、及びジアミノ基から成る群から選択し、
はそれぞれ独立して、H、C〜Cアルキル、及びC〜Cヒドロキシアルキルから成る群から選択し、
はそれぞれ独立して、C〜C12アルキレン、C〜C12アルケニレン、−CH〜CH(OR)−CH、C−C12アルカリレン、C〜C12ジヒドロキシアルキレン、ポリ(C〜Cアルキレンオキシ)アルキレン、HCH(OH)CHOROCHCH(OH)CH−、及びC〜C12ヒドロカルビル部分から成る群から選択するが、
がC〜C12ヒドロカルビル部分の時、ヒドロカルビル部分に以下の一般構造の分岐部分を約2〜約4個含むことが可能であることを条件とし、
【化5】

はそれぞれ独立して、H、R、C〜C20ヒドロキシアルキル、C〜C20アルキル、置換アルキル、C〜C11アリール、置換アリール、C〜C11アルキルアリール、及びC〜C20アミノアルキルから成る群から選択し、
はそれぞれ独立して、H、C〜C22アルキル、C〜C22ヒドロキシアルキル、アリール、及びC〜C22アルキルアリールから成る群から選択し、
はそれぞれ独立して、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキル置換アルキレンから成る群から選択し、
Aは融和性1価、又はジ、又は多価アニオンであり、
Mは融和性カチオンであり、
bは、電荷のバランスを保つのに必要な数であり、
xはそれぞれ独立して、3〜約1,000であり、
cはそれぞれ独立して0又は1であり、
hはそれぞれ独立して約1〜約8であり、
qはそれぞれ独立して、0〜約6であり、
nはそれぞれ独立して1〜約20であり、
rはそれぞれ独立して0〜約20であり、
tはそれぞれ独立して0〜1であり、
ポリマー又はオリゴマーには、第4級N基が少なくとも4個、好ましくは少なくとも7個、又は少なくとも10個、さらには少なくとも12個存在していなければならない。
【0035】
特に好ましいポリマーでは、化学的安定化を使用して、上で説明したpH7.0における10日間貯蔵試験での不活性化に対して第4級N基を安定化してもよい。したがって、本発明での使用に好ましいポリマー又はオリゴマーでは、少なくとも1個、W基に
【化6】

が含まれている。
【0036】
好ましくは、W及びxは、前記基が少なくとも4個、又は少なくとも7個、さらには少なくとも10個又は12個存在するように選択する。とりわけ非常に好ましいカチオン基は
【化7】

によってもたらされる。
【0037】
また、上記の式の好ましいオリゴマー又はポリマーでは、RはそれぞれHである。
【0038】
連鎖基Rとして使用するのに好ましい化合物としては、ポリエポキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、尿素、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステル、α,β−不飽和カルボン酸アミド、α,β−不飽和カルボン酸無水物、ジ−又はポリカルボン酸、ジ−又はポリカルボン酸エステル、ジ−又はポリカルボン酸アミド、ジ−又はポリカルボン酸無水物、グリシジルハロゲン、クロロギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、クロロギ酸エステル誘導体、クロロ酢酸エステル誘導体、エピハロヒドリン、グリセロールジクロロヒドリン、ビス−(ハロヒドリン)、ポリエーテルジハロ化合物、ホスゲン、ポリハロゲン、官能性グリシジルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Rには、α,β−不飽和カルボン酸と一体のポリエーテルジアミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルコール、アルキレングリーコール、及びポリアルキレングリコール、α,β−不飽和カルボン酸エステル、α,β−不飽和カルボン酸アミド、並びにα,β−不飽和カルボン酸無水物の1個以上を反応させることによって形成される反応生成物も含めることができる。ただし、反応生成物には、少なくとも2個の2重結合、2個のカルボン酸基、2個のアミド基、又は2個のエステル基が含まれていることを条件とする。
【0039】
さらには、本発明での使用に好ましい環状アミン系ポリマー又はオリゴマー材としては、ピペラジン、ピペラジン(piperadine)、エピクロルヒドリン、エピクロルヒドリンベンジル第4級アンモニウム化合物、エピクロルヒドリンメチル第4級アンモニウム化合物、モルホリン、及びこれらの混合物から成る群から選択した2個以上の組成物の付加化合物が挙げられる。
【0040】
これらの環状アミン系ポリマーは、直鎖又は分岐にすることができる。多官能架橋剤を使用して、ある特定の種類の分岐を組み込むことができる。このようなポリマーの例を以下に例示する。
【化8】

【0041】
特に好ましいカチオン性ポリマーは以下である。
【化9】

*はTを表している。
【0042】
定義した表面付着強化カチオン性ポリマーは、好ましいカチオン平均置換度、及び/又は、少なくとも4個、より好ましくは少なくとも7個、若しくは少なくとも10個、若しくは少なくとも12個の第4級アンモニウム基を備えているが、このカチオン性ポリマーは、より容易に固体支持成分と相互作用し、さらに処理プロセス中の活性成分の処理面への付着を強化する。これは特に、洗濯プロセス、さらには活性成分が香料である時に当てはまる。カチオン性ポリマーのカチオン平均置換度は好ましくは1〜70%、好ましくは20%を超えて70%まで、より好ましくは40〜60%である。低分子量では、カチオン性ポリマーも典型的に少なくとも4個のカチオン基、好ましくは第4級アンモニウム基を備えていなければならないため、カチオン置換の割合は前記範囲の上限にする必要があることを当業者は理解するであろう。
【0043】
カチオン平均置換度は、典型的にはカチオン性に置換されたカチオン性ポリマー中でのモノマーのモル百分率を意味する。カチオン平均置換度は、コロイド滴定法のような既知の方法によって測定することができる。コロイド滴定法のような方法の1つは、D.ホーン(Horn, D.)著「コロイド及びポリマー科学の発展(Prog. Colloid &Polymer Sci)」(1978年、第8版)の243〜265ページにより詳細に記載されている。
【0044】
当業者にとっては明らかだろうが、オリゴマーはごくわずかなモノマー単位から成る分子であるのに対し、ポリマーは、オリゴマーよりも多くのモノマー単位から構成されている。本発明では、オリゴマーは重量平均分子量が約0.0016ag(1,000ダルトン)以下の分子として定義し、ポリマーは重量平均分子量が約0.0016ag(1,000ダルトン)超の分子である。コポリマーは、2個以上の異種ポリマーが同時又は連続的に重合されているポリマー又はオリゴマーである。本発明のコポリマーとしては例えば、1級環状アミン系モノマー、例えばピペラジン、及び2級環状アミンモノマー、例えばモルホリンの混合物から重合させたポリマー又はオリゴマーを挙げることができる。
【0045】
本発明で使用するカチオン性オリゴマー又はポリマーの重量平均分子量は通常、0.00083〜1.66ag(500〜1,000,000ダルトン)、好ましくは0.00124〜0.083ag(750〜50,000ダルトン)、さらには0.0016〜0.033〜0.016ag(1,000〜20,000又は10,000ダルトン)である。
【0046】
ポリマーの重量平均分子量を測定するためのいずれかの既知のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定法を使用して、カチオン性ポリマーの重量平均分子量を測定することができる。GPC測定については、B.H.スチュアート(Stuart, B. H.)著「ポリマー分析(Polymer Analysis)」(ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley&Sons Ltd)、英国版、(著作権)2002年刊)の108〜112ページにより詳細に記載されている。
【0047】
ポリマーの重量平均分子量を測定するための典型的なGPC法について以下に記載する。
1.ポリマー1.5gを脱イオン水1リットル中に溶解する。
2.ザルトリウス製のフィルター、ミニザルトRC25を使用して、工程1で得られた混合物をろ過する。
3.メーカーの説明書に従って、工程2で得られた混合物100リットルをGPC機に注入する。このGPC機には、35°Cで稼動するスプレマ・マックス(Suprema MAX)(8mm×30cm)カラム及びERC7510検出器を取り付け、酢酸と塩化カリウム溶液との0.2M水溶液を流量0.8mL/分で溶出溶媒として使用する。
4.重量平均分子量は、GPCのデータをメーカーの説明書に従って分析することにより得られる。
【0048】
前記の好ましい重量平均分子量、及び好ましいカチオン平均置換度を有するカチオン性ポリマーを使用して、香料の布地表面上への付着を強化することができる。
【0049】
カチオン性ポリマーは典型的に、水溶性及び/又は水分散性、好ましくは水溶性である。水溶性及び/又は水分散性カチオン性ポリマー、とりわけ水溶性カチオン性ポリマーは、処理表面上に活性成分を付着させる力が驚くほど優れている。
【0050】
洗剤補助組成物を含んでなる洗濯洗剤組成物
洗剤補助組成物は、好ましくは洗濯洗剤組成物に組み込む。洗濯洗剤組成物は布地を洗濯するために使用し、洗濯洗剤組成物内に洗剤補助成分が存在するおかげで、乾燥後の布地が良い香りを発するというメリットを洗濯プロセス中に布地にもたらす。洗濯洗剤組成物には典型的に、1以上の補助剤成分を含んでなる。この補助剤成分については、以下でより詳細に説明する。洗濯洗剤組成物は、スプレー乾燥及び/又はアグロメレーションプロセスの製品にしてよい。
【0051】
任意の補助剤成分
洗剤補助組成物及び/又は洗濯洗剤組成物には所望に1以上の補助剤成分を含んでもよい。これらの補助剤成分は、典型的には、洗浄性界面活性剤類、ビルダー類、高分子コビルダー(co-builder)類、漂白剤、キレート剤類、酵素類、再付着防止ポリマー類、汚れ放出ポリマー類、高分子汚れ分散剤及び/又は汚れ懸濁剤類、移染防止剤類、布地保全剤(fabric integrity agents)類、光沢剤類、泡抑制剤類、柔軟仕上げ剤類、凝集剤類並びにこれらの組み合わせから成る群から選択する。好適な補助剤成分については、PCT国際公開特許WO97/11151号、とりわけ15ページ31行目〜50ページ4行目により詳細に記載されている。
【0052】
洗剤補助組成物の生成法
洗剤補助組成物は典型的に、(i)水不溶性の固体支持成分を液体又は液化可能の活性成分と接触させて第1の混合物を形成させ、(ii)ポリマーの1質量%溶液(脱イオン水で調製後、炭酸ナトリウム又はクエン酸でpH7.0まで調節したもの)を25°Cで10日間貯蔵した場合(10日間貯蔵試験)に50%未満が不活性化するカチオン基を備えた表面付着強化カチオン性ポリマーと、工程(i)で得られた第1の混合物を接触させ、(iii)工程(ii)で得られた第2の混合物を水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材と接触させて組成物を形成させ、(iv)任意で前記組成物を乾燥させる工程から成り、工程(iii)が工程(i)及び(ii)の後で、かつ、工程(iii)及び工程(iv)の前に行われる方法によって得られる。
【0053】
第1の接触工程である工程(i)は、2個の成分を混合するためのいずれかの方法によって実行してよいが、効率化のためには、固体支持成分を活性成分と接触させて第1の混合物を形成させる第1の工程は典型的には、シュギ(Schuggi)製混合器のような高剪断混合器、又はその他の高剪断混合器、例えばCB混合器で実行するが、KM混合器のようなその他のより低剪断の混合器も使用してよい。典型的には、固体支持成分は混合器に貫通させ、活性成分は固体支持成分上にスプレーする。活性成分が固体支持成分上に吸着又は吸収される場合(例えば、活性成分が香料で、固体支持成分がゼオライトの場合)、この反応は典型的には発熱反応となり、プロセスのうちのこの段階中に熱が発生する。当然ながらこれは、使われる活性成分及び使われる固体支持成分に左右される。さらに、この工程中における熱の蓄積は、プロセスが(バッチプロセスとは対照的に)連続プロセスである場合に発生する可能性が高い。熱の発生は、いずれかの好適な熱管理手段、例えば、工程(i)で使用する混合器又はその他の容器上にウォータージャケット又はコイルを配置する、又は、直接冷却、例えば液体窒素を使用して、発生した熱を除去することによって、並びに/又は、工程(i)で使用する混合器及び/若しくはその他の容器内の活性成分及び/若しくは固体支持成分の流速を制御することによって、制御することができる。
【0054】
工程(i)で得られた第1の混合物を表面付着強化カチオン性ポリマーと接触させて第2の混合物を形成させる工程(ii)は、攪拌槽などのいずれかの好適な容器内で行うことができる。あるいは、工程(ii)は、オンライン混合器内で行うことができる。攪拌槽は、バッチ槽又は連続槽にすることができる。典型的には、この工程は水環境で実施する。典型的には、カチオン性ポリマーは水に希釈させ、水溶性混合物を形成させる。この水溶性混合物内におけるカチオン性ポリマーの濃度は、0.3〜50g/L、好ましくは10〜30g/Lである。このような好ましい濃度で存在しているカチオン性ポリマーは、固体支持成分上への最適の吸着性を示す。
【0055】
これに加え、前記水溶性混合物内における固体支持成分の濃度を制御するのがさらに望ましい。好ましくは、前記水溶性混合物内における固体支持成分の濃度は7〜2,000g/L、好ましくは500〜1,000g/Lである。このような好ましい濃度で存在している固体成分によって、効率的な粒子生成プロセス、及びカチオン性ポリマーの効率的な取り込みが可能になる。
【0056】
工程(ii)の間のカチオン性ポリマー及び固体支持成分の電気化学性能を制御して、工程(ii)の間にカチオン性ポリマー及び固体支持成分に、相互に最適な親和性が備わるようにするのがさらに望ましいと思われる。前記の電気化学性能を制御する1つの手段は、工程(ii)のpHを制御することである。この手段には、メリット、すなわち加水分解によって不活性化を低減するという面もある。好ましくは、工程(ii)は、pHが3〜9、最も好ましくは4〜7である水環境で実施する。望ましいpHを実現させるために、工程(ii)で、カチオン性ポリマーと工程(i)で形成させた混合物を接触させる前又はそれと同時期のある段階に、酸又は塩基を加えてもよい。酸または塩基は、工程(i)の混合物の形成中に加えてもよく、又は、工程(ii)の混合物を形成させている間に、カチオン性ポリマーと同時に若しくはカチオン性ポリマーの次に加えてもよい。一般的に、随時pHを調節するために必要になる可能性が最も高いのは酸である。好ましくは、工程(iii)はさらに、pH3〜9、最も好ましくは4〜7で実施する。
【0057】
従来型の鉱酸(塩酸、硝酸、硫酸)のようないずれの酸も、pHを低下させて望ましいpHの混合物を生成させるのに適しているが、好ましくは、ポリカルボン酸のような有機酸が使用される。これらは重合体にしてもよいが、好ましくは単量体、例えばクエン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イタコン酸、酒石酸、アスパラギン酸である。スルファミン(sulpahmic)酸は、さらなる有用な代替物質である。クエン酸が特に好ましい。
【0058】
工程(ii)の時間は典型的に、カチオン性ポリマーの固体支持成分上への吸着を可能にするほど十分な時間でなければならない。好ましくは、工程(ii)の時間は5〜25分、最も好ましくは10〜15分である。
【0059】
工程(ii)で得られた第2の混合物を水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材に接触させて組成物を形成させる工程は、攪拌槽のようないずれかの好適な容器内で行うことができる。あるいは、工程(iii)は、オンライン混合器内で行うことができる。攪拌槽は、バッチ槽又は連続槽にすることができる。とりわけ高濃度の活性成分が含まれる組成物を得るために、工程(iii)の温度を制御するのが好ましいと思われる。
【0060】
好ましくは、工程(ii)及び/又は(iii)は、50°C未満、さらには20°C未満の温度で実施する。工程(ii)及び/又は(iii)では、ウォータージャケット、さらには液体窒素のような冷却手段を使用するのが好ましいと思われ、これは特に、周囲温度未満の温度で工程(ii)及び/又は(iii)を実施するのが望ましい場合に典型的である。また、高濃度の活性成分を含んだ組成物を得るために、工程(ii)及び/又は(iii)のエネルギー条件を制限するのも好ましいと思われる。
【0061】
工程(ii)及び/又は(iii)は好ましくは、低剪断混合器、例えば攪拌槽内で行う。これは特に、活性成分が香料である場合に好ましい。
【0062】
工程(iii)の組成物を乾燥させる任意の工程(iv)は、スプレー乾燥機及び/又は流動床乾燥機などのいずれかの好適な乾燥装置内で実施することができる。典型的には、工程(iii)の組成物は強制乾燥(例えばスプレー乾燥又は流床乾燥)し、周囲条件下での蒸発による自然乾燥は行わない。典型的には、この乾燥工程中に熱を加える。典型的には、工程(iii)の生成物はスプレー乾燥する。活性成分が揮発性物質、例えば香料である場合には、好ましくは、乾燥工程の温度を慎重に制御して、活性成分が工程(iii)で得られた組成物から蒸発及び消失するのを回避する。好ましくは、工程(iii)の組成物はスプレー乾燥塔内でスプレー乾燥し、好ましくは、スプレー乾燥塔内の吸気温度と排気温度の差異は150°C未満、さらには120°C未満又は100°C未満である。この温度差は、通常使われているもの、例えば、洗濯洗剤組成物のスプレー乾燥よりも小さいが、工程(iii)で得られた組成物から揮発性の活性成分が無用に蒸発するのを回避するためには、この温度差が好ましい。典型的には、スプレー乾燥塔の吸気温度は170°C〜220°Cであり、スプレー乾燥塔の排気温度は90°C〜110°Cである。非常に好ましいのは、スプレー乾燥塔の吸気温度が170°C〜180°Cであり、スプレー乾燥塔の排気温度が100°C〜105°Cのケースである。さらには、スプレー乾燥プロセス中に、工程(iii)で得られた組成物の原子化度を高く実現することも重要である。これによって、得られる洗剤補助組成物に最適な粒径分布、高い流動性、溶解度、性能をもたらすようにするためである。原子化度は、スプレー乾燥塔のロータリーアトマイザーの先端速度を慎重に制御することによって制御することができる。好ましくは、ロータリーアトマイザーの先端速度は100〜500ms−1である。
【0063】
この処理中に形成された組成物及びいずれかの中間組成物/生成物は、この処理中及びその後の貯蔵中、相対湿度の低い環境に置いておくのが好ましいと思われる。好ましくは、組成物(又はその中間組成物/生成物)と接触する空気は、組成物(又はその中間組成物/生成物)の平衡相対湿度と同等又は前記相対湿度よりも低く、好ましくは前記相対湿度よりも低い。これは、例えば、貯蔵及び/若しくは輸送中に組成物を気密容器内に入れることによって、又は、前記プロセス中、組成物(又はその中間組成物/生成物)の輸送中及び/若しくは貯蔵中に、乾燥及び/若しくは調整した空気を混合槽、貯蔵容器及び/又は輸送容器内に注入することによって実現させることができる。
【実施例】
【0064】
実施例1−イミダゾール及びエピクロロヒドリン(イミダゾールとエピクロロヒドリンの比率は1:1)の付加化合物(コポリマー)の合成
イミダゾールとエピクロロヒドリンを反応させることによって、ポリカチオン性凝縮物を調製する。磁気攪拌器(magnatic stirrer)、凝縮装置、温度計を取り付けた丸底フラスコに、イミダゾール(0.68モル)と水95mLを加える。得られた溶液を50°Cまで加熱し、続いて、エピクロロヒドリン(0.68モル)を滴下して加える。すべてのエピクロロヒドリンを加えた後、すべてのアルキル化剤が消費されるまで、温度を80°Cまで上昇させる。得られた凝縮物の分子量は約12,500であった。
【0065】
実施例2−イミダゾール及びエピクロロヒドリン(イミダゾールとエピクロロヒドリンの比率は1.4:1)の付加化合物の合成
磁気攪拌器、凝縮装置、温度計を備えた丸底フラスコに、イミダゾール(0.68モル)と水95mLを加える。得られた溶液を50°Cまで加熱し、続いて、エピクロロヒドリン(0.50モル)を滴下して加える。すべてのエピクロロヒドリンを加えた後、すべてのアルキル化剤が消費されるまで、温度を80°Cまで上昇させる。得られた凝縮物の分子量は約2,000であった。
【0066】
実施例3
以下に示す香料調合物A、B、及びCは、本発明での使用に適している。以下に示した数字は、香料調合物に対する質量比である。
【0067】
実施例3−香料調合物A
【表1】

【0068】
香料調合物Aは、フルーティーな香料調合物の一例である。
【0069】
実施例3−香料調合物B
【表2】

【0070】
香料調合物Bは、フローラルグリーンの香料調合物の一例である。
【0071】
実施例3−香料調合物C
【表3】

【0072】
香料調合物Cは、フローラルなアルデヒド香料調合物の一例である。
【0073】
実施例4−カプセル化香料粒子を調製するプロセス
本発明での使用に適した香料粒子を得るために、実施例3の香料調合物に以下のプロセスを施す。
【0074】
ゼオライト13Xをジャケット付き混合器KM−130に貫通させる。この時、香料調合物(実施例3の香料混合物のいずれか1つ)をゼオライト13x上にスプレーして、84%のゼオライト及び16%の香料調合物から成る香料添加ゼオライト13xを得る。混合器KM−130は16ラド/秒(156rpm)で稼動させる。周囲水を冷却ジャケットに貫通させ、この香料添加工程中に発生する熱の蓄積を制御する。香料添加工程は40°C未満の温度で実行する。
【0075】
(実施例1又は実施例2のポリマーのいずれか1つ)の45質量%溶液を水で希釈し、1.6質量%溶液を得る。上記の香料添加ゼオライトをこの溶液に加えると、懸濁液(35質量%の香料添加ゼオライト、1質量%のポリマー、64質量%の水)が得られる。この懸濁液を15分間攪拌する。外部冷却(ウォータージャケット)を施し、懸濁液の温度を20°C未満に保つ。
【0076】
クエン酸及びデンプン懸濁液(33質量%水)を上記の懸濁液に加え、12質量%のデンプン、27質量%の香料添加ゼオライト13x、0.6質量%のカチオン性ポリマー、0.4質量%のクエン酸、及び60%の水から成るカプセル化混合物を形成させる。これはバッチ容器内で実施する。この工程の時間は2分で、ウォータージャケットを使用して温度を20°C未満に保つ。
【0077】
カプセル化混合物を連続的に緩衝槽に入れる。カプセル化混合物はこの緩衝層からスプレー乾燥させる。蠕動ポンプを使用して、カプセル化混合物をプロダクションマイナー(Production Minor)へ注入し、続いてスプレー乾燥して香料粒子を得る。ロータリーアトマイザーの先端速度は151.8m/s(直径10cmのアトマイザーの3037ラド/秒(29,000rpm))であった。スプレー乾燥塔の吸気温度は170°Cで、スプレー乾燥塔の排気温度は105°Cである。
【0078】
実施例5−カプセル化粒子を調製するプロセス
このプロセスは、クエン酸をポリマー溶液に加える、すなわち、クエン酸を1.6質量%のポリマー(実施例1又は実施例2のポリマーのいずれか1つ)溶液に直接加えるのを除いて、大部分は実施例4に従って実施する。香料添加ゼオライトをこのポリマー溶液に加え、得られた懸濁液が35質量%の香料添加ゼオライト、1質量%のポリマー、64質量%の水、0.5質量%のクエン酸から構成されるようにする。この懸濁液を15分間攪拌する。外部冷却(ウォータージャケット)を施し、懸濁液の温度を20°C未満に保つ。
【0079】
続いてデンプン懸濁液(33質量%水)を上記の懸濁液に加え、12質量%のデンプン、27質量%の香料添加ゼオライト13x、0.6質量%のポリマー、0.4質量%のクエン酸、及び60%の水から成るカプセル化混合物を形成させる。得られた混合物を2分間攪拌し、続いて緩衝槽へ注入する。実施例4で示したように、この混合物はこの緩衝層からスプレー乾燥させる。
【0080】
実施例6−洗濯洗剤組成物
実施例4又は5の香料粒子を、本発明の使用に適した以下の固体洗濯洗剤組成物に組み入れる。以下に示す量は組成物に対する質量比である。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤組成物での使用に適した粒子であって、
(i)液体又は液化可能の活性成分と、
(ii)水不溶性の固体支持成分と、
(iii)水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材と、
(iv)所望による1以上の補助剤成分と
を含んでなり、
組成物が、さらに
(v)ポリマー又はオリゴマーの1質量%溶液(脱イオン水で調製後、炭酸ナトリウム又はクエン酸でpH7.0まで調節したもの)を25°Cで10日間貯蔵した場合(10日間貯蔵試験)に50%未満が不活性化するようなカチオン基を備えた表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーを含んでおり、表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーの少なくとも一部、好ましくは全部、が水不溶性の固体支持成分上に吸着し、水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材が、液体又は液化可能の活性成分、水不溶性の固体支持成分、及び表面付着強化カチオン性ポリマーの少なくとも一部、好ましくは全部、をカプセル化してなるのを特徴とする、粒子。
【請求項2】
水不溶性の固体支持成分が、多孔質であり、好ましくはアルミノケイ酸塩、好ましくはゼオライト、を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水不溶性の固体支持成分が、負の表面電荷を有し、好ましくは前記固体支持成分が酸化物の外面を構成してなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
液体又は液化可能の活性成分が香料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材が、多糖類、好ましくはデンプン、及び所望により可塑剤、を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーが、少なくとも4個、好ましくは少なくとも7個のカチオン基、好ましくは第4級窒素基であるカチオン基、を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーの重量平均分子量が、0.00083ag(500Da)〜0.16ag(100,000Da)未満、好ましくは0.00083ag(500Da)〜0.033ag(20,000Da)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーのカチオン平均置換度が、2%を超えて70%まで、好ましくは40〜60%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーに、環状アミン基、好ましくは不飽和環状アミン基によってもたらされるカチオン基が含まれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ゼータ電位が−30mVよりも中性に近く、好ましくは−20mVよりも中性に近い、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を生成する方法であって、
(i)水不溶性の固体支持成分を液体又は液化可能の活性成分と接触させて第1の混合物を形成させ、
(ii)工程(i)で得られた第1の混合物を表面付着強化カチオン性ポリマー又はオリゴマーと接触させて第2の混合物を形成させ、
(iii)工程(ii)で得られた第2の混合物を水溶性及び/又は水分散性のカプセル化材と接触させて組成物を形成させ、
(iv)任意に応じて、工程(iii)の組成物を乾燥させる
工程から成り、工程(ii)が、工程(i)の後で、かつ工程(iii)及び(iv)の前に行われる、方法。
【請求項12】
工程(ii)をpH3〜9、好ましくはpH4〜7で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の洗剤補助組成物と、所望による1以上の補助剤成分とを含んでなる、洗濯洗剤組成物。

【公表番号】特表2008−512516(P2008−512516A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530441(P2007−530441)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031507
【国際公開番号】WO2006/029066
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】