説明

表面処理炭酸カルシウム及びそれを含むペースト状樹脂組成物

【課題】ペースト状樹脂に配合した際、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、貯蔵安定性に優れた表面処理炭酸カルシウム及びそれを含むペースト状樹脂組成物を得る。
【解決手段】脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩を含む表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであって、表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の割合が80重量%以上であり、かつ表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が30〜60重量%の範囲内であり、表面処理剤中の不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が5重量%以下であり、BET比表面積が10m/g以上であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理炭酸カルシウム及びそれを含むペースト状樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ、塗料、シーリング材、PVCゾル、アクリルゾル等においては、ペーストゾルを作製し、このゾルを用いて塗工、塗装、施工及び混合などが行われている。硬化物の物性品質などから、充填材をペーストゾルに多く配合できないときは、少量で高い粘度をゾルに付与することができるヒュームドシリカなどの充填剤が使用されている。
【0003】
しかしながら、ヒュームドシリカは高い揺変性(チキソトロピック性)を示すが、同時に粘度も高くなる。また、添加量の微量の差で粘度が極端に変化するという問題もある。
【0004】
一方、炭酸カルシウムは、各種高分子材料、例えば、プラスチック、ゴム、インキ、塗料、シーリング材、PVCゾル、アクリルゾル等の充填剤として使用されている。従って、炭酸カルシウムを添加することにより、高い揺変性を付与することができれば、比較的安価な揺変性付与剤として用いることができる。
【0005】
特許文献1においては、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸を所定の混合割合で表面処理した表面処理炭酸カルシウムが開示されている。この表面処理炭酸カルシウムを用いることにより、インキ、塗料、シーリング材、PVCゾル、アクリルゾル等に添加して高い揺変性を付与することができる。
【0006】
しかしながら、近年、環境衛生面等の観点から、希釈剤や可塑剤などの使用量を少なくすることが検討されており、上記従来技術の表面処理炭酸カルシウムを用いると、高い揺変性は得られるものの、粘度が高くなるため、希釈剤や可塑剤を少なくすることが困難であった。従って、低い粘度で、高い揺変性を付与することができる表面処理炭酸カルシウムが求められている。
【0007】
特許文献2においても、高い揺変性を付与するための表面処理炭酸カルシウムが提案されているが、この従来技術に開示された表面処理炭酸カルシウムを用いても、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することは困難であった。
【0008】
特許文献3においては、ラウリン酸及びミリスチン酸が85%以上含まれる表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムが提案されている。しかしながら、このような表面処理炭酸カルシウムを用いても、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−171121号公報
【特許文献2】特開2007−197585号公報
【特許文献3】国際公開2004/031303号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ペースト状樹脂に配合した際、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、良好な貯蔵安定性が得られる表面処理炭酸カルシウム及びそれを含むペースト状樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、ラウリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩またはカリウム塩及び/またはステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩とを含む表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであって、表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩またはカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩の合計の含有割合が80重量%以上であり、かつラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が30〜60重量%の範囲内であり、表面処理剤中の不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が5重量%以下であり、BET比表面積が10m/g以上であることを特徴している。
【0012】
本発明によれば、ペースト状樹脂に配合した際、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、良好な貯蔵安定性が得られる表面処理炭酸カルシウムとすることができる。
【0013】
本発明において、その他の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩は、炭素数14〜22の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩であることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積が、10〜100m/gの範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明においては、炭酸カルシウム100重量部に対して、2〜15重量部の表面処理剤が処理されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、表面処理炭酸カルシウムをジエチルエーテルで抽出することにより求められる抽出脂肪酸量が、0.4重量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリウレタンペースト状樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0018】
本発明の変性シリコーンペースト状樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0019】
本発明のポリサルファイドペースト状樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0020】
本発明のポリ塩化ビニルゾル樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0021】
本発明のアクリルゾル樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0022】
本発明の印刷インキ組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【0023】
本発明の塗料組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、ペースト状樹脂に配合した際、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、良好な貯蔵安定性が得られる表面処理炭酸カルシウムとすることができる。
【0025】
本発明のペースト状樹脂組成物は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウムを含有するものであるので、低粘度で、かつ高い揺変性を有しており、貯蔵安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従う表面処理炭酸カルシウムにおける表面の状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0028】
(炭酸カルシウム粒子)
本発明において、表面処理の対象として用いる炭酸カルシウム粒子は、特に限定されるものではなく、シリコーンを除く各種高分子材料の充填剤として使用することができるものであればよい。炭酸カルシウムには、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び合成炭酸カルシウム(軽質(膠質)炭酸カルシウム)がある。天然炭酸カルシウムは、石灰石原石から直接製造されるもので、例えば、石灰石原石を機械的に粉砕・分級することにより製造することができる。
【0029】
合成炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムから製造されるもので、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムと水を反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークス等で混焼することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0030】
BET比表面積は、一般に、表面処理することにより若干小さな値となる。後述するように、本発明の表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は10m/g以上である。従って、表面処理する前の炭酸カルシウムのBET比表面積は、10m/gより若干大きな値を有する炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0031】
(ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩)
本発明においては、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩のうちの少なくとも1種を30〜60重量%含む表面処理剤で炭酸カルシウムを表面処理する。ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩のさらに好ましい含有割合は、30〜55重量%の範囲であり、さらに好ましくは35〜55重量%の範囲であり、さらに好ましくは40〜55重量%の範囲である。ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が少なすぎると、ペースト状樹脂に配合した際の粘度が高くなり、低粘度で、高い揺変性を付与することができない。また、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が多すぎると、高い揺変性を得ることが困難になる。
【0032】
ラウリン酸のナトリウム塩及びラウリン酸のカリウム塩は、いずれかを単独で用いてもよいし、併用して用いてもよい。本発明においては、ナトリウム塩が特に好ましく用いられる。
【0033】
(パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩並びにステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩)
本発明における表面処理剤は、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩以外に、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩並びにステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の内の少なくとも1種を含む。表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の含有割合は80重量%以上である。上述のように、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合は最大で60重量%であるので、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩並びにステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の含有割合は20重量%以上である。
【0034】
表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の含有割合が80重量%より少ないと、低粘度で高い揺変性を付与することができない。本発明においては、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩を、上記所定の割合で含むとともに、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩並びにステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の少なくとも1種によって処理されていることにより、低粘度で、高い揺変性を付与することができる。この理由の詳細については明らかでないが、以下のように推測される。
【0035】
図1は、本発明に従い表面処理された炭酸カルシウムの表面を模式的に示す図である。
【0036】
図1に示すように、炭酸カルシウム1の表面には、比較的短い鎖長であるラウリン酸2と、比較的長い鎖長であるパルミチン酸またはステアリン酸3が表面処理されることにより吸着している。本発明によれば、ラウリン酸2と、パルミチン酸及び/またはステアリン酸3が、所定の割合で混合されており、鎖長の長いパルミチン酸及び/またはステアリン酸3の間に、鎖長の短いラウリン酸2が存在している。このため、鎖長の短いラウリン酸2の領域に、マトリックス樹脂の有機物鎖4が入り込むことができる。このため、有機物鎖4と、炭酸カルシウム1の表面の表面処理剤であるパルミチン酸及び/またはステアリン酸3並びにラウリン酸2とが相互作用しやすい状態となっており、構造的な粘性が高められ、高い揺変性が得られるものと考えられる。
【0037】
パルミチン酸及びステアリン酸は、ナトリウム塩の形態であっても良いし、カリウム塩の形態であっても良いが、好ましくはナトリウム塩の形態で用いられる。
【0038】
(その他の脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩)
本発明における表面処理剤は、上記のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、並びにステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩以外に、その他の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩を含んでいてもよい。
【0039】
その他の脂肪酸としては、例えば、炭素数14及び20〜31の脂肪酸が挙げられる。さらに好ましくは、炭素数14及び20〜26の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数14及び20〜22の脂肪酸である。脂肪酸の具体例としては、ミリスチン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。その他の脂肪酸は、脂肪酸ナトリウム塩及び/または脂肪酸カリウム塩の形態で用いられる。本発明においては、ナトリウム塩の形態が特に好ましく用いられる。
【0040】
(不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩)
本発明においては、上述のように、ラウリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩と、パルミチン酸及び/またはステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩とを含む表面処理剤により炭酸カルシウムが表面処理される。その他の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩として、不飽和脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩を含んでいてもよいが、その含有割合は、5重量%以下であることが好ましい。不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が、5重量%を越えると、貯蔵安定性が低下する。特に、長時間の保存により粘度が低下する傾向にある。不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩のさらに好ましい含有割合は、4重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0041】
不飽和脂肪酸の具体例としては、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸などが挙げられる。
【0042】
(表面処理剤)
本発明における表面処理剤は、上述のように、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の割合が80重量%以上であり、かつラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の割合が30〜60重量%の範囲内であり、不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が5重量%以下である。このような条件を満たすならば、表面処理剤として、ラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩、並びにその他の脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩以外の表面処理剤を含んでいてもよい。例えば、本発明の効果が失われない範囲において、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びその他の脂肪酸を酸の形態で含んでいてもよい。また、アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸塩や、樹脂酸のナトリウム塩またはカリウム塩なども、本発明の効果が失われない範囲において含まれていてもよい。
【0043】
(表面処理炭酸カルシウム)
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、上記表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムである。
【0044】
本発明の表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は、10m/g以上である。BET比表面積が10m/g未満であると、高い揺変性を有することができない。BET比表面積は、さらに好ましくは10〜100m/gの範囲である。BET比表面積が100m/gより大きな炭酸カルシウムを製造することは、一般に困難である場合が多い。BET比表面積のさらに好ましい値は、10〜60m/gの範囲であり、さらに好ましくは15〜40m/gの範囲である。
【0045】
表面処理剤による処理量は、炭酸カルシウム100重量部に対して、2〜15重量部であることが好ましく、さらに好ましくは2〜10重量部であり、さらに好ましくは2.5〜5重量部である。本発明において、表面処理剤による処理量は、表面処理する炭酸カルシウムのBET比表面積などを考慮して適宜調整することができる。
【0046】
表面処理量が少なすぎると、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができるという本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、表面処理量が多すぎると、表面処理量に比例した効果が得られなくなると共に、コストが高くなり、経済的に不利なものとなる。
【0047】
本発明においては、表面処理炭酸カルシウムをジエチルエーテルで抽出することにより求められる抽出脂肪酸量が、0.4重量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明においては、ラウリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩と、パルミチン酸および/またはステアリン酸のナトリウム塩またはカリウム塩とを含む表面処理剤で炭酸カルシウムを表面処理する。表面処理する方法としては、後述するように、炭酸カルシウム粒子のスラリー液中に、表面処理剤を添加して攪拌し、処理する方法が挙げられる。炭酸カルシウム粒子のスラリー液に添加されたラウリン酸等の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩は、炭酸カルシウム表面に存在するカルシウムと反応し、ラウリン酸等の脂肪酸のカルシウム塩になると考えられる。ラウリン酸等の脂肪酸のカルシウム塩は、ジエチルエーテル中に溶解しにくいので、上記のように表面処理炭酸カルシウムをジエチルエーテルで抽出することにより、表面処理炭酸カルシウムの表面に付着している酸の形態のラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びその他の脂肪酸並びにナトリウム塩またはカリウム塩の形態のままで存在している脂肪酸塩を溶解して抽出することができる。このような酸の形態で付着している脂肪酸及びナトリウム塩またはカリウム塩の形態で付着している脂肪酸塩の含有割合を示す指標として、本発明においては抽出脂肪酸量を定義している。抽出脂肪酸量は、以下の式から求めることができる。
【0049】
抽出脂肪酸量(重量%)=〔(抽出前の表面処理炭酸カルシウムの重量−抽出後の表面処理炭酸カルシウムの重量)/(抽出前の表面処理炭酸カルシウムの重量)〕×100
抽出脂肪酸量から、酸の形態及びナトリウム塩もしくはカルシウム塩の形態のままで表面処理炭酸カルシウムの表面に付着しているラウリン酸等の脂肪酸及びその塩の含有割合を求めることができる。
【0050】
本発明において、抽出脂肪酸量は、0.4重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.3重量%以下であり、さらに好ましくは0.25重量%以下である。抽出脂肪酸量が多すぎると、高い揺変性が得られないと共に、長期間の保存において粘度が上昇し、貯蔵安定性が悪くなる。抽出脂肪酸量の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、0.05重量%以上である。
【0051】
本発明において、表面処理炭酸カルシウム中の表面処理剤の組成は、表面処理炭酸カルシウムを酸で分解した後に得られる表面処理剤の成分を、例えば、ガスクロマトグラフィーによって測定することによって求めることができる。また、表面処理剤の含有量は、例えば示差熱分析によって測定することができる。
【0052】
(表面処理炭酸カルシウムの製造)
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム粒子のスラリー液に、上記表面処理剤を添加して攪拌することにより製造することができる。上述のように、ラウリン酸等の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩は、炭酸カルシウム表面のカルシウムと反応し、不溶性のカルシウム塩となることにより表面処理することができる。表面処理した炭酸カルシウムのスラリー液は、その後脱水、乾燥することにより、表面処理炭酸カルシウムの粉末を得ることができる。
【0053】
炭酸カルシウムのスラリー液中の炭酸カルシウムの固形分の含有量は、炭酸カルシウム粒子の分散性や、脱水の容易さ等を考慮して適宜調節することができる。また、炭酸カルシウム粒子の粒子径等によって適宜調整することができる。一般的には、スラリーの固形分含有量を2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度となるように調整することにより、適度な粘度のスラリー液とすることができる。水の使用量を多くしすぎると、脱水が困難となり、排水処理等の点でも好ましくない。
【0054】
(ペースト状樹脂組成物)
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、インキ、塗料、シーリング材、PVCゾル、DOPゾル、アクリルゾル等のペースト状樹脂に配合した際、低い粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、さらには良好な貯蔵安定性が得られる。ペースト状樹脂に対する表面処理炭酸カルシウムの配合量は、配合目的、ペースト状樹脂に求められる特性等に応じて適宜調整することができる。
【0055】
(ポリウレタンペースト状樹脂組成物)
ポリウレタンシーラントなどとして用いることができるポリウレタンペースト状樹脂組成物は、主にイソシアネート、ポリオール、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を含む。
【0056】
イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びその変性品、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添化MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
【0057】
ポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸、セバチン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸、並びに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのグリコールが挙げられる。また、その他のポリオールとしては、カプロラクトンを開環重合したタイプのエステルなどが挙げられる。
【0058】
可塑剤としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジn−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリス・(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどがあり、その他にはトリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤など、さらにジメチルポリシロキサンなどがある。
【0059】
充填剤(増粘材を含む)としては、無機系のものと、有機系のものが挙げられる。無機系の充填剤としては、炭酸カルシウム(天然品、合成品)、カルシウム・マグネシウム炭酸塩(天然品、合成品)、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(乾式品、湿式品、ゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイオフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(ファーネス、サーマル、アセチレン)、グラファイト、針状・繊維状では、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維、シラスバルン、フライアッシュバルン、ガラスバルン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。有機系の充填剤としては、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等の粉末状またはビーズ状のもの、セルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末、アマイドワックス、カストル油ワックス等の繊維状のものが挙げられる。
【0060】
本発明のポリウレタンペースト状樹脂組成物における表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、樹脂成分(可塑剤を含む)及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、10〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。
【0061】
(変性シリコーンペースト状樹脂組成物)
変性シリコーンシーラントなどの変性シリコーンペースト状樹脂組成物は、主に変性シリコーン樹脂、可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤からなる。高分子の末端に反応性のシリコーン官能基を導入して変性させた樹脂であり、シリコーン樹脂とは分子構造が全く異なる樹脂である。
【0062】
変性シリコーン樹脂としては、例えば以下のようにして製造されたものが用いられる。ポリオキシプロピレングリコールの末端ヒドロキシ基をアルコキシド基に転換させた後、多価ハロゲン化合物を反応させることによって分子量を増大させ、分子量延長反応により高分子量化した後、CH=CHRXで示される有機ハロゲン化合物を反応させて末端にオレフィン基を導入し、脱塩素精製工程を経てヒドロシリル化反応によって末端に反応性のシリコーン官能基を導入して変性シリコーン樹脂を製造する。
【0063】
可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤は、ポリウレタンペースト状樹脂組成物において説明したのと同様のものを用いることができる。
【0064】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、変性シリコーン樹脂、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対し、10〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。
【0065】
(ポリサルファイドペースト状樹脂組成物)
ポリサルファイドシーラントなどのポリサルファイドペースト状樹脂組成物は、主にポリサルファイド樹脂、可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤を含む。
【0066】
ポリサルファイド樹脂としては、例えば以下のようにして製造されたものが用いられる。エチレンオキサイドと塩酸の反応によって得られるエチレンクロルヒドリンに、パラホルムアルデヒドを反応させて得られたジクロロエチルホルマールを出発原料とし、多硫化ナトリウムと少量の活性剤及び水酸化マグネシウムのコロイド状懸濁液中に、ジクロロホルマールを撹拌、加熱しながら添加し、ポリサルファイド樹脂を製造することができる。
【0067】
近年は、分子量末端にSH基(メルカプト基)を有し、主鎖中にウレタン結合を有する変性ポリサルファイド樹脂を用いる場合が多い。
【0068】
可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤としては、ポリウレタンペースト状樹脂組成物において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0069】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、ポリサルファイド樹脂(変性ポリサルファイド樹脂)、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、10〜400重量部とすることが好ましく、10〜300重量部とすることがさらに好ましい。
【0070】
(ポリ塩化ビニルゾル樹脂組成物)
ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、主に塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、その他の添加剤を含む。可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤としては、ポリウレタンペースト状樹脂組成物において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0071】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対し、10〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。
【0072】
(アクリルゾル樹脂組成物)
アクリルゾル樹脂組成物は、主にアクリル樹脂、架橋剤、可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤を含む。
【0073】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、メタクリルモノマーで大別すると、非官能性モノマー、一官能性モノマー及び多官能性モノマーに分類できる。非官能性モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tertブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル−トルリデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸セチル−ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどが挙げられ、一官能性モノマーとしては、メタクリル酸、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸tertブチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられ、多官能性モノマーとしては、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコールなどが挙げられる。アクリル樹脂は、上記の非官能性モノマーと、一官能性モノマー及び/または多官能性モノマーを共重合して製造することができる。
【0074】
架橋剤としては、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂などが挙げられる。可塑剤及び充填剤としては、ポリウレタンシーラントにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0075】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、アクリル樹脂、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、10〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。
【0076】
(印刷インキ組成物)
印刷インキ組成物は、主に、色料、ビヒクル、添加剤などを含む。
【0077】
色料には、無機顔料及び有機顔料の顔料と、染料がある。無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、ブロンズ粉、ジスアゾイエロー、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、フタロシアニンブルー、メチルバイオレットレーキ、昼光蛍光顔料などがある。有機系顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、フタロシアニン顔料、染付けレーキ顔料などがある。染料としては、エオシン、ビクトリアブルー、ニグロシン、C.I.ディスパースレッド60などがある。さらに体質顔料が知られており、通常炭酸カルシウムなどは体質顔料として多く使用されている。体質顔料は、印刷インキの流動性、着色力、隠ぺい力、光沢などの調整用として用いられる。
【0078】
ビヒクルは主に油、樹脂、溶剤、及び添加剤からなる。
【0079】
油は植物油、加工油、鉱油などの種類があり、植物油は主にアマニ油とシナキリ油、加工油は植物油を熱変成したものやマレイン化油、ウレタン油、ビニル化油、鉱油はマシン油、スピンドル油等が使用されている。
【0080】
樹脂としては、天然樹脂のガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、それらの誘導体、合成樹脂のロジン変成フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラニン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、スチレン・マレイン酸樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ニトロセルロース(硝化綿)、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、環化ゴム、塩化ゴム等が挙げられる。
【0081】
溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ゴム揮発油(工業ガソリン2号)、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテン、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブチルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール(トリデカノール)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン(アノン)、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)、イソホロン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)等が挙げられる。
【0082】
添加剤としては、ワックス、ドライヤ、分散剤及び潤滑剤があり、ワックスは植物ろうのカルナウバろう、木ろう、動物ろうのみつろう、無水ラノリン(羊毛ろう)、鉱ろうのパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンろう、オゾケライト(地ろう)、ペトロラタム及びワセリン、合成ろうのポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化パラフィン、脂肪酸アミド等が使用されている。ドライヤは金属石鹸を油脂に溶かした液状ドライヤ、ホウ酸マンガン、ホウ酸鉛、酢酸鉛などを乾性油ワニスに分散したペーストドライヤ等がある。分散剤及び潤滑剤は油性分散剤と水性分散剤があり、油性分散剤はレシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアクリル酸の部分脂肪酸エステル、アルキルアミン脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、ナフテン酸金属石鹸、また商品名ではICI社のソルスパース、ビックマリンクロット社のアンチテラ、楠本化学のディスパロン、水性分散剤はナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどの非イオン界面活性剤、スチレンマレイン酸樹脂、ポリアクリル酸誘導体などのアルカリ可溶の樹脂などが使用されている。
【0083】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、印刷インキの場合、色料、ビヒクル及び添加剤の合計100重量部に対して、0.01〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20重量部である。
【0084】
(塗料組成物)
塗料組成物は、主に、顔料、ビヒクル、及び添加剤などを含む。
【0085】
顔料には無機顔料と有機顔料があり、無機顔料は亜鉛華、二酸化チタン、ベンがら、鉄黒、酸化クロム、コバルトブルー、チタンイエロー、シリカ、鉛丹、黄色酸化鉄、アルミナホワイト、黄鉛、ジンククロメート、モリブデンレッド、紺青、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、群青、マンガンバイオレット、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、有機系顔料はナフトールレッド、ベンズイミダゾロンボルドー、ファーストイエローG、ジスアゾイエローHR、縮合アゾイエロー、縮合アゾレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ニッケルアゾイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、ペリノンオレンジ、チオインジゴボルドー、フラバンスロンイエロー、ジアンスラキノリルレッド、インダスレンブルー、ジオキサジンバイオレット、キノフタロンイエロー、ピロールレッド、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー、イソインドリンイエローなどが使用されている。さらに体質顔料が使用されており、通常炭酸カルシウムなどは無機顔料の中の体質顔料として多く使用されている。体質顔料は塗料の流動性、着色力、隠ぺい力、光沢などの調整用として用いられる。
【0086】
ビヒクルは主に樹脂、硬化剤、及び溶剤からなる。樹脂はアクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、セルロース系樹脂、天然樹脂、硬化剤はメラニン樹脂、ポリイソシアネート、ポリアミン樹脂、溶剤は炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、水などが使用されている。
【0087】
添加剤は主にレベリング剤、レオロジー調整剤、可塑剤、乳化剤、顔料分散剤、光安定剤などが使用されている。
【0088】
表面処理炭酸カルシウムの配合割合は、塗料の場合、顔料、ビヒクル及び添加剤の合計100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜50重量部である。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。なお、以下に示す「%」は特に断らない限り、「重量%」である。
【0090】
<表面処理炭酸カルシウムの製造方法>
(実施例1)
BET比表面積が24m/gである合成炭酸カルシウム2kgに、固形分10重量%となるように、60℃に調整した水を加え、攪拌型分散機を用いて炭酸カルシウムスラリー液を調製した。該スラリー液を分散機で攪拌しながら、ラウリン酸ナトリウム35g、ステアリン酸ナトリウム17.5g、及びパルミチン酸ナトリウム17.5gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩75g(ラウリン酸ナトリウム50%、ステアリン酸ナトリウム25%、パルミチン酸ナトリウム25%)を、この炭酸カルシウムスラリー液に添加し、5分間攪拌した後、プレス脱水した。
【0091】
得られた脱水ケーキを乾燥した後、粉末化することにより、表面処理炭酸カルシウム約2kgを得た。
【0092】
(実施例2)
BET比表面積が20m/gの合計炭酸カルシウムを用いる以外は、上記の実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0093】
(実施例3)
ラウリン酸ナトリウム35g、パルミチン酸ナトリウム16.4g、ステアリン酸ナトリウム16.5g、及びオレイン酸ナトリウム2.1gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩75g(ラウリン酸ナトリウム50%、パルミチン酸ナトリウム23.4%、ステアリン酸ナトリウム23.6%、オレイン酸ナトリウム3%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0094】
(実施例4)
ラウリン酸ナトリウム24.5g、パルミチン酸ナトリウム22.8g、及びステアリン酸ナトリウム22.8gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム35%、パルミチン酸ナトリウム32.5%、ステアリン酸ナトリウム32.5%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0095】
(実施例5)
ラウリン酸ナトリウム42g、パルミチン酸ナトリウム14g、及びステアリン酸ナトリウム14gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム60%、パルミチン酸ナトリウム20%、ステアリン酸ナトリウム20%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0096】
(実施例6)
BET比表面積が35m/gの合成炭酸カルシウムを用い、ラウリン酸ナトリウム100g、パルミチン酸ナトリウム50g、及びステアリン酸ナトリウム50gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩200g(ラウリン酸ナトリウム50%、パルミチン酸ナトリウム25%、ステアリン酸ナトリウム25%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0097】
(実施例7)
ラウリン酸ナトリウム35g、ミリスチン酸ナトリウム11.2g、パルミチン酸ナトリウム11.9g、ステアリン酸ナトリウム11.9g、及びオレイン酸ナトリウム1.4gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム50%、ミリスチン酸ナトリウム16%、パルミチン酸ナトリウム17%、ステアリン酸ナトリウム17%、オレイン酸ナトリウム2%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0098】
(比較例1)
ラウリン酸ナトリウム49g、パルミチン酸ナトリウム10.5g、及びステアリン酸ナトリウム10.5gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム70%、パルミチン酸ナトリウム15%、ステアリン酸ナトリウム15%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0099】
(比較例2)
ラウリン酸ナトリウム14g、パルミチン酸ナトリウム28g、及びステアリン酸ナトリウム28gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム20%、パルミチン酸ナトリウム40%、ステアリン酸ナトリウム40%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0100】
(比較例3)
ラウリン酸ナトリウム35g、パルミチン酸ナトリウム15g、ステアリン酸ナトリウム15g、及びオレイン酸ナトリウム5gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム50%、パルミチン酸ナトリウム21.5%、ステアリン酸ナトリウム21.5%、オレイン酸ナトリウム7%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0101】
(比較例4)
BET比表面積が9m/gの合成炭酸カルシウムを用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0102】
(比較例5)
本比較例では、脂肪酸ナトリウム塩を用いずに、脂肪酸を用いて表面処理した。
【0103】
ラウリン酸35g、ステアリン酸17.5g、及びパルミチン酸17.5gを混合した混合脂肪酸70g(ラウリン酸50%、ステアリン酸25%、パルミチン酸25%)を用いて、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0104】
(比較例6)
本比較例においては、脂肪酸ナトリウム塩を用いずに、脂肪酸と乳化剤とを用いて表面処理した。
【0105】
ラウリン酸35g、ステアリン酸17.5g、及びパルミチン酸17.5gを混合した混合脂肪酸70g(ラウリン酸50%、ステアリン酸25%、パルミチン酸25%)と、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸0.8gを用いる以外は、上記実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0106】
(比較例7)
ラウリン酸ナトリウム33.6g、ミリスチン酸ナトリウム28g、パルミチン酸ナトリウム4.2g、ステアリン酸ナトリウム4.2gを混合した混合脂肪酸ナトリウム塩70g(ラウリン酸ナトリウム48%、ミリスチン酸ナトリウム40%、パルミチン酸ナトリウム6%、ステアリン酸ナトリウム6%)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0107】
〔BET比表面積の測定〕
表面処理前及び表面処理後の炭酸カルシウムについて、BET比表面積を測定した。BET比表面積は、比表面積測定装置 フローソープII2300(マイクロメリチック社製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0108】
〔抽出脂肪酸量の測定〕
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、抽出脂肪酸量を測定した。表面処理炭酸カルシウム15gを、ソックスレー抽出器に入れ、ジエチルエーテル100mlで、表面処理炭酸カルシウム中の遊離脂肪酸及び遊離脂肪酸塩を抽出した。抽出前及び抽出後の表面処理炭酸カルシウムの重量変化と、表面処理炭酸カルシウムの試料重量から、抽出脂肪酸量を求めた。測定結果を表1に示す。
【0109】
なお、表1に示す「ラウリン酸」、「ミリスチン酸」、「パルミチン酸」、「ステアリン酸」、及び「オレイン酸」は、実施例1〜7及び比較例1〜4及び7については、各脂肪酸のナトリウム塩としての含有割合を示しており、比較例5〜6については、各脂肪酸としての含有割合を示している。
【0110】
<DOPゾルの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、DOPゾルを作製し、その粘度を測定した。DOPゾルは、表面処理炭酸カルシウム100gとDOP(ジオクチルフタレート、ジェイ・プラス社製)100gとをハイブリッドミキサー(HM−500 キーエンス製)で40秒間攪拌、得られたDOPゾルの初期粘度を20℃で測定した。また、20℃×7日後の粘度を20℃で測定した。粘度は、BH型粘度計(TOKIMEC製)によって、2rpmと20rpmで測定した。測定結果を表1に示す。なお、粘度上昇率は、混練直後の粘度に対する7日後の粘度の上昇率を示している。
【0111】
【表1】

【0112】
表1から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いたDOPゾルは、低い粘度で、かつ良好なチキソトロピック性(揺変性)を示すことがわかる。また、貯蔵安定性においても優れていることがわかる。
【0113】
これに対し、ラウリン酸ナトリウムが、本発明の範囲より多く含まれている比較例1においては、実施例1〜7に比べ、チキソトロピック性が低くなっている。
【0114】
また、ラウリン酸ナトリウムの含有割合が、本発明の範囲よりも少ない比較例2においては、良好なチキソトロピック性が得られているものの、粘度が高くなっていることがわかる。
【0115】
また、オレイン酸ナトリウムが、本発明の範囲よりも多く含まれている比較例3においては、7日後の粘度が低下しており、貯蔵安定性において実施例1〜7よりも劣っていることがわかる。
【0116】
また、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積が、本発明の範囲よりも低い比較例4では、良好なチキソトロピック性が得られていない。
【0117】
また、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態ではなく、酸の形態でラウリン酸及びその他の脂肪酸を処理した比較例5においては、良好なチキソトロピック性が得られておらず、また7日後の粘度が高くなっており、貯蔵安定性において劣っていることがわかる。
【0118】
乳化剤を用いて酸の形態で脂肪酸を処理した比較例6においても、良好なチキソトロピック性は得られておらず、また7日後の粘度が上昇しており、貯蔵安定性において劣っていることがわかる。
【0119】
また、比較例5及び6は、抽出脂肪酸量が、0.4重量%よりも高くなっている。これは、脂肪酸を酸の形態で処理したため、炭酸カルシウムとの反応が十分になされず、遊離脂肪酸として付着している量が多いためであると考えられる。また、このような遊離脂肪酸の量が多いため、貯蔵安定性が劣っているものと思われる。
【0120】
また、酸の形態で処理しているため、炭酸カルシウムの表面に脂肪酸を均一に処理することができないため、チキソトロピック性において実施例1〜7よりも劣っているものと思われる。
【0121】
比較例7は、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、及びステアリン酸ナトリウムの合計が80重量%未満である。炭素数12のラウリン酸ナトリウム塩と炭素数14のミリスチン酸のナトリウム塩の合計が88%となっている。炭素数16のパルミチン酸ナトリウム及び炭素数18のステアリン酸ナトリウムの含有割合が、本発明の範囲よりも少ないため、良好なチキソトロピック性が得られていない。
【0122】
<PPGゾルの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、PPG(ポリプロピレングリコール)ゾルの粘度を測定した。PPGゾルの配合は、表面処理炭酸カルシウム200gとPPG(ポリプロピレングリコール、商品名「スミフェン3086」、住化バイエルウレタン社製)200gとを十分に混練し、得られたPPGゾルの初期粘度及び7日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
表2から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いたPPGゾルは、低い粘度で、良好なチキソトロピック性を示すことがわかる。また、貯蔵安定性においても優れていることがわかる。
【0125】
一般的に2液型ポリウレタンシーラントは硬化剤としてPPGを用い、2液型ポリウレタンシーラントの粘度はPPGゾルの粘度と良好な相関性を示す。よって、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いた2液型ポリウレタンシーラントの粘度も高い粘度及び良好なチキソトロピック性を示すと言える。
【0126】
<1液型変性シリコーンシーラントの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、1液型変性シリコーンシーラントを調製し、その粘度を測定した。1液型変性シリコーンシーラントは、白艶華CCR(白石工業株式会社製)85g、変性シリコーンポリマー(商品名「MSポリマーS203」鐘淵化学株式会社製)100g、DOP50g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトン305」白石工業株式会社製)35g、表面処理炭酸カルシウム15g、トリメトキシビニルシラン(商品名「KBM#1003」信越化学株式会社製)3.4g、及び触媒(商品名「#918」三共有機合成社製)2.5gを十分に混練して調製した。得られた1液型変性シリコーンシーラントについて、初期粘度及び7日後の粘度を上記と同様にして測定した。測定結果を表3に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
表3から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いた1液型変性シリコーンシーラントは、低い粘度で、良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。
【0129】
<2液型変性シリコーンシーラントの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、2液型変性シリコーンシーラントを調製し、その粘度を測定した。2液型変性シリコーンシーラントの配合は、基剤として、白艶華CCR(白石工業株式会社製)を120g、変性シリコーンポリマー(商品名「MSポリマーS203」鐘淵化学株式会社製)を35g、DOPを50g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30白石工業株式会社製」)を20g、表面処理炭酸カルシウムを15g、及びエピコート828(油化シェルエポキシ製)5gを混合したものを用い、硬化剤として、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30白石工業株式会社製」20g、DOP6.3g、オクチル酸錫(製)3g、及びラウリルアミン(製)0.7gを混合したものを用いた。基剤及び硬化剤のそれぞれを十分に混練し、得られた2液型変性シリコーンシーラントの基剤について混練直後の粘度及び7日後の粘度を上記と同様にして測定した。ただし、本評価に限ってBH型粘度計で1rpm及び10rpmの値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0130】
【表4】

【0131】
表4から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いた2液型変性シリコーンシーラントの基剤は、低い粘度で、良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。また、このような基剤の粘度特性は、硬化剤との混合直後においても同様に得られた。
【0132】
<ポリ塩化ビニルゾルの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、ポリ塩化ビニルゾルを調製し、その粘度を測定した。ポリ塩化ビニルゾルは、表面処理炭酸カルシウム200g、ポリ塩化ビニル樹脂(商品名「ZEST P21」新第一塩ビ社製)300g、DINP300g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30」白石工業株式会社製)150g、接着付与剤(商品名「バーサミド140」ヘンケルジャパン製)10g、及び希釈剤(商品名「ミネラルターペン」山桂産業株式会社製)40gを十分に混練して調製した。得られたポリ塩化ビニルゾルについて初期粘度及び7日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表5に示す。
【0133】
【表5】

【0134】
表5から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いたポリ塩化ビニルゾルは、低い粘度で、良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。
【0135】
<アクリルゾルの粘度試験>
実施例1〜7及び比較例1〜7の表面処理炭酸カルシウムについて、アクリルゾルを調製し、その粘度を測定した。アクリルゾルの配合は、表面処理炭酸カルシウム150g、アクリル樹脂300g、DINP300g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30白石工業株式会社製」)100g、希釈剤(商品名「ミネラルターペン」山桂産業株式会社製)50g、接着付与剤(商品名「バーサミド140」ヘンケルジャパン製)100g、及びイソシアネート樹脂2.5gを十分に混練して調製した。得られたアクリルゾルについて初期粘度及び7日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表6に示す。
【0136】
【表6】

【0137】
表6から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7の表面処理炭酸カルシウムを用いたアクリルゾルは、低い粘度で、良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。
【0138】
以上のように、本発明に従う表面処理炭酸カルシウムを配合することにより、ペースト状樹脂に、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができる。また、良好な貯蔵安定性を得ることができる。
【0139】
上記の実施例においては、種々のペースト状樹脂組成物に配合した例を示しているが、本発明の表面処理炭酸カルシウムは、印刷インキ及び塗料に配合した場合にも、上記と同様に、低粘度で、かつ高い揺変性を付与することができ、貯蔵安定性に優れていることを確認している。
【符号の説明】
【0140】
1…炭酸カルシウム
2…ラウリン酸
3…パルミチン酸及び/またはステアリン酸
4…マトリックス樹脂の有機物鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩を含む表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウムであって、表面処理剤中のラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、パルミチン酸のナトリウム塩及びカリウム塩と、ステアリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の合計の含有割合が80重量%以上であり、かつラウリン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が30〜60重量%の範囲内であり、表面処理剤中の不飽和脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩の含有割合が5重量%以下であり、BET比表面積が10m/g以上であることを特徴とする表面処理炭酸カルシウム。
【請求項2】
その他の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩が、炭素数14〜22の脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項3】
BET比表面積が、10〜100m/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項4】
炭酸カルシウム100重量部に対して、2〜15重量部の表面処理剤が処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項5】
表面処理炭酸カルシウムをジエチルエーテルで抽出することにより求められる抽出脂肪酸量が0.4重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とするポリウレタンペースト状樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とする変性シリコーンペースト状樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とするポリサルファイドペースト状樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とするポリ塩化ビニルゾル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とするアクリルゾル樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とする印刷インキ組成物。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理炭酸カルシウムが含有されたことを特徴とする塗料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−228976(P2010−228976A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78831(P2009−78831)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(598039965)白石工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】