説明

表面処理設備

【課題】ワーク表面にシミやムラ等を形成させずに、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とす。
【解決手段】ワーク1の表面を処理する処理液が蓄えられる処理槽10と、表面に処理液が付いているワーク1を洗浄する洗浄液が蓄えられる洗浄槽20と、ワーク1を吊り下げ、処理槽10の上方と洗浄槽20の上方との間で移動すると共に、上下方向に移動するクレーン35を有している移動機構30と、クレーン35に設けられ、クレーン35から吊り下げられているワーク1に対して、洗浄液を噴射するノズル51と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液にワークを浸漬して、このワークの表面を表面処理した後、このワークの表面を洗浄液で洗浄する表面処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
処理液にワークを浸漬し、このワークの表面を表面処理する表面処理設備としては、例えば、以下の特許文献1に開示されている設備がある。
【0003】
この設備は、処理液が溜められる処理槽と、この処理槽の開口の縁に沿って設けられている複数のノズルと、を備えている。この設備では、処理槽の処理液に浸漬されているワークを処理液から引き上げる際に、処理槽に固定されている複数のノズルから洗浄液を噴射することで、ワーク表面を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−219464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワーク表面を洗浄する方法として、上記特許文献1に記載の方法の他、洗浄槽内の洗浄液に表面処理後のワークを浸漬する方法も考えられる。この方法は、ワークを洗浄液に浸漬するため、ワーク表面の全体を確実に洗浄液に接触させることができ、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができるという有利な点があるものの、洗浄液中の処理液の濃度が高くならないよう、多くの洗浄液を洗浄槽内に供給する必要がある等でランニングコストがかさんでしまう、という問題点がある。また、この方法では、供給処理槽から洗浄槽へワークを移動させる過程で、ワークの表面に付いている処理液が乾き、例えば、アルカリ焼け等でワーク表面にシミやムラ等が形成される場合がある、という問題点もある。
【0006】
そこで、上記特許文献1に記載の方法を採用して、処理槽の縁に固定されているノズルから洗浄液を噴射した後、このワークを洗浄槽内の洗浄液に浸漬する方法も考えられる。この方法では、ワークを洗浄槽に入れて洗浄する前に、ノズルからの洗浄液でワークを洗浄するので、洗浄槽内に供給する洗浄液の量を少なくすることができ、結果として、ノズル及び洗浄槽に供給する全洗浄液の量を少なくすることができる。しかしながら、この方法でも、このワークを洗浄槽へ移動させる過程で、ワーク表面に残っている処理液が乾き、ワーク表面にシミやムラ等が形成されることが考えられる。
【0007】
すなわち、従来技術では、ワーク表面にシミやムラ等を形成させずに、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことが難しい、という問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、ワーク表面にシミやムラ等を形成させずに、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができる表面処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る表面処理設備は、
ワークの表面を処理する処理液が蓄えられる処理槽と、表面に処理液が付いているワークを洗浄する洗浄液が蓄えられる洗浄槽と、前記ワークを吊り下げ、少なくとも前記処理槽の上方と前記洗浄槽の上方との間で移動すると共に、上下方向に移動する移動体を有している移動機構と、前記移動体に設けられ、該移動体から吊り下げられている前記ワークに対して、洗浄液を噴射するノズルと、前記ノズルに前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
当該表面処理設備では、ワークを洗浄槽内の洗浄液に浸すことで、ワーク表面の全体を確実に洗浄液に接触させることができ、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができる。
【0011】
また、当該表面処理設備では、ワークが洗浄槽内の洗浄液に浸かる前に、処理槽から出されたワークに対して洗浄液を噴射するため、洗浄槽内の洗浄液に対する処理液成分の持込量を少なくすることができる。この結果、洗浄液の供給量を大幅に減らすことができ、ワークの表面処理にかかるランニングコストを抑えることができる。
【0012】
さらに、当該表面処理設備では、ワークが処理槽から洗浄槽へ移る過程で、ワークがどの位置存在する場合でも、移動体に設けたノズルから噴射した洗浄液でワークを洗浄できるので、ワークが洗浄槽内の洗浄液に浸る前に、ワーク表面が乾いてしまうことを防ぐことができる。このため、当該表面処理設備では、ワーク表面に残っている処理液が乾くことによるアルカリ焼け等で、ワーク表面にシミやムラ等が形成されるのを防ぐことができる。
【0013】
ここで、前記表面処理設備において、前記ノズルを複数備え、複数の前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられている前記ワーク上端よりも上方の位置で、それぞれの噴射領域が相互に重なり合うよう配置されていることが好ましい。
【0014】
当該表面処理設備は、ワーク表面の上端から下端までのほぼ全体に洗浄液を接触させることができる。このため、ワーク表面に付いていた処理液の多くを洗い落とすことができる。
【0015】
また、前記表面処理設備において、前記ワークは、前記移動体から吊下げられている状態で、上部、下部、及び該上部と該下部とをつなぐ側周部を有しており、複数の前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられている前記ワーク上端よりも上方の位置で、該ワークの側周部の面に沿うよう配置されていてもよい。
【0016】
当該表面処理設備では、ワークの側周部の全周面に洗浄液を接触させることができるため、ワーク表面に付いていた処理液をより多く洗い落とすことができる。
【0017】
また、前記側周部を有する前記ワークの前記表面処理設備において、前記ワークは、互いに相反する方向を向く一対の主面を有しており、該一対の主面が前記側周部の面を成して鉛直方向に沿う向きになるよう、前記移動体から吊り下げられ、複数の前記ノズルのうちの一部の複数のノズルが、前記移動体から吊下げられている前記ワークを基準にして、該ワークの前記主面に垂直な方向における一方側に、該主面に沿う方向に並んでいるノズル列を成し、他の一部の複数のノズルが、該主面に垂直な方向における他方側に、該主面に沿う方向に並んでいるノズル列を成してもよい。
【0018】
当該表面処理設備では、ワークの一対の主面に付いていた処理液を、複数のノズルからの洗浄液で、効率よく洗い落とすことができる。
【0019】
さらに、一対の主面を有する前記ワークの表面処理設備において、前記移動体は、互いの前記主面が対向する状態で複数の前記ワークを吊り下げることが可能であり、複数の前記ワークのうちで互いに隣り合う2つのワークの間になる位置に、1つの前記ノズル列が配置されていてもよい。
【0020】
当該表面処理設備では、処理槽内での処理液による表面処理、ノズルからの洗浄液による洗浄処理、洗浄槽内での洗浄液による洗浄処理のそれぞれを、複数のワークに対して一度に行うことができる。
【0021】
また、前記表面処理設備において、前記ノズルは、該ノズルの噴射軸に対して垂直な仮想面内の第一方向での噴射幅が、該該仮想面内で第一方向に垂直な第二方向での噴射幅よりも広く、前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられる前記ワークの表面のうちで最も広い表面である面に対して、前記第一方向が平行になるよう前記移動体に設けられていてもよい。
【0022】
当該表面処理設備では、ノズルの噴射幅の広い方向を、ワークの表面のうちで最も広い面と平行になるように、ノズルを設けているので、ノズルから噴射した洗浄液でワーク表面を効率よく洗浄することができる。
【0023】
また、前記表面処理設備において、前記ノズルは、前記仮想面上で、前記噴射軸を含む該噴射軸周りを非噴射領域とし、該非噴射領域の周りを噴射領域とするものであってもよい。
【0024】
当該ノズルを複数のワークの間に設ける場合、ノズルを基準にして両側のワークを少ない洗浄液で効率よく洗浄することができる。
【0025】
また、前記表面処理設備において、前記移動機構を駆動制御する移動制御手段と、前記洗浄液供給手段から前記ノズルへの前記洗浄液の供給制御を行う供給制御手段と、を備え、前記移動制御手段により、前記移動機構が駆動し、前記処理槽内の前記処理液に前記ワークの全体が浸漬されている状態から、該ワークが該処理液から引き上げられると、前記供給制御手段は、該ワークの上端が該処理液から出た露出時刻から該上端に付いている処理液が乾燥してしまう時間として予め定めた時間が、該露出時刻から経過する前に、前記供給制御手段は、前記洗浄液供給手段により、前記ノズルへの前記洗浄液の供給を開始させてもよい。
【0026】
当該表面処理設備では、ワークが処理槽から洗浄槽へ移る過程で、ワーク表面が乾いてしまうことを防ぐことができる。
【0027】
また、前記表面処理設備において、前記処理槽内の前記処理液中の成分濃度を検知するセンサを備え、前記供給制御手段は、前記センサで検知された前記濃度に応じて、前記ノズルへの前記洗浄液の供給量を制御してもよい。
【0028】
当該表面処理設備では、処理槽内の処理液中の成分濃度を長時間にわたって、ほぼ一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、ワークを洗浄槽内の洗浄液に浸すことで、ワーク表面の全体を確実に洗浄液に接触させることができ、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができる。さらに、本発明では、ワークが処理槽から洗浄槽へ移る過程で、ワークがどの位置存在する場合でも、移動体に設けたノズルから噴射した洗浄液でワークを洗浄できるので、ワークが洗浄槽内の洗浄液に浸る前に、ワーク表面が乾いて、このワーク表面にシミやムラ等が形成されてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
よって、本発明では、ワーク表面にシミやムラ等を形成させずに、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る第一実施形態における表面処理設備の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態における洗浄液供給装置の構成を示す説明図である。
【図3】本発明に係る第一実施形態におけるノズルの液噴射形態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態におけるノズルの噴射量と噴射軸からの距離との関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る第一実施形態で、Y方向から見た際の複数のノズルからの洗浄液の噴射状況を示す説明図である。
【図6】本発明に係る第一実施形態で、X方向から見た際の複数のノズルからの洗浄液の噴射状況を示す説明図である。
【図7】ワークの上端及び下端での処理液の膜厚の変化を示すグラフである。
【図8】本発明に係る第二実施形態における表面処理設備の要部構成を示す説明図である。
【図9】本発明に係る第二実施形態における洗浄液供給装置の構成を示す説明図である。
【図10】本発明に係る第二実施形態で、Y方向から見た際の複数のノズルからの洗浄液の噴射状況を示す説明図である。
【図11】本発明に係る実施形態における変形例のノズルの噴射形態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る実施形態における変形例における移動機構の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る表面処理設備の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
まず、本発明に係る表面処理設備の第一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0034】
本実施形態の表面処理設備は、図1に示すように、処理液であるアルカリ液が溜められる処理槽10と、洗浄液である純水が溜められる洗浄槽20と、ワーク1を処理槽10内から洗浄槽20内に移す移動機構30と、移動機構30によるワーク1の移動過程でワーク1に洗浄液を噴射するノズル51と、このノズル51に洗浄液を供給する洗浄液供給装置(洗浄液供給手段)50と、移動機構30を駆動制御する移動制御器(移動制御手段)60と、洗浄液供給装置50を制御する供給制御器70と、を備えている。なお、以下では、説明の都合上、水平方向であって、処理槽10から洗浄槽20に向かう方向をX方向、水平方向であって、X方向に垂直な方向をY方向、鉛直方向をZ方向とする。
【0035】
本実施形態で扱うワーク1は、矩形板状を成し、ワーク表面のうちで最も大きく且つ互いに相反する方向を向いている一対の主面2(図5)を有している。
【0036】
移動機構30は、処理槽10及び洗浄槽20の上方に配置され、X方向に延びている水平レール39と、水平レール39を走行する水平走行輪32を有する2個の水平走行ユニット31,31aと、2個の水平走行ユニット31,31aの間に設けられている昇降ユニットとしてのクレーン35と、このクレーン35から吊り下げられているワーク吊下ビーム41と、このワーク吊下ビーム41に取り付けられているワーク吊下具43と、を有している。なお、本実施形態では、クレーン35及びワーク吊下ビーム41で移動体を構成している。
【0037】
2個の水平走行ユニット31,31aは、いずれも、前述の水平走行輪32と、この水平走行輪32が一方の端部に回転可能に取り付けられ、Z方向に延びる上下レール33と、を有している。さらに、2個の水平走行ユニット31,31aのうち、一方の水平走行ユニット31aは、当該水平走行ユニット31aの水平走行輪32を駆動する走行モータ34を有している。
【0038】
クレーン35は、2個の水平走行ユニット31,31aの上下レール33,33間でX方向に延びているクレーンボディ36と、このクレーンボディ36の両端のそれぞれに回転可能に取り付けられている上下走行輪37と、上下走行輪37を駆動する昇降モータ38と、を有している。
【0039】
ワーク吊下ビーム41は、クレーンボディ36の下に、クレーンボディ36と平行になるよう、クレーンボディ36から吊下げられている。ワーク吊下具43は、その一方の端部がワーク吊下ビーム41に取り付けられている。このワーク吊下具43の他方の端部には、ワーク1が取り付けられる。この際、ワーク1は、その主面2がX方向に対して実質的に垂直になるよう、ワーク吊下具43に取り付けられる。
【0040】
水平走行ユニット31aの走行モータ34及びクレーン35の昇降モータ38は、いずれも、移動制御器60からの指令に応じて駆動する。
【0041】
洗浄液供給装置50は、図2に示すように、洗浄液を複数のノズル51及び洗浄槽20に供給する洗浄液供給源52と、洗浄液供給源52と複数のノズル51とを接続するノズルライン53と、洗浄液供給源52と洗浄槽20とを接続する洗浄槽ライン58と、を有している。
【0042】
ノズルライン53は、複数のノズル51が固定されている2本のヘッダ配管54と、2本のヘッダ配管54に洗浄液を供給する主配管55と、主配管55と洗浄液供給源52とを接続する可撓性を有するホース56と、を有している。2本のヘッダ配管54は、その長手方向がY方向を向くよう、クレーンボディ36の下に固定されている。ワーク1が取り付けられるワーク吊下具43は、2本のヘッダ配管54間のX方向における中間位置に設けられている。すなわち、2本のヘッダ配管54は、ワーク吊下具43に取り付けられているワーク1の一対の主面2のそれぞれ側に、これら主面2に対して実質的に平行になるよう設けられている。このため、各ヘッダ配管54に設けられている複数のノズル51は、ワーク吊下具43に取り付けられているワーク1の主面2に沿う方向に並んでいることになる。
【0043】
各ヘッダ配管54には、その主配管55側に、各ヘッダ配管54に取り付けられている複数のノズル51への洗浄液の供給を絶つための遮断弁72が設けられている。また、主配管55には、各ヘッダ配管54への洗浄液の供給量を調整する噴射量調節弁71が設けられている。
【0044】
ノズルライン53のホース56は、クレーンボディ36の移動に伴うヘッダ配管54及びノズル51の洗浄液供給源52との間の相対位置変化に対応するため、図1に示すように、弛ませた状態で、水平レール39の複数個所に設けられたフック等により、この水平レール39に沿って配置されている。
【0045】
洗浄槽ライン58には、図2に示すように、洗浄槽20への洗浄液の供給量を調整する供給量調節弁73が設けられている。
【0046】
処理槽10及び洗浄槽20は、いずれも、上方が大きく開口している槽で、移動機構30のワーク吊下具43で吊下げられている状態のワーク1全体が内部に納まるサイズである。
【0047】
処理槽10には、処理槽10内の処理液であるアルカリ液のペーハー値を検知するペーハーセンサ11が設けられている。
【0048】
洗浄槽20には、洗浄槽20内の洗浄液を加熱するための蒸気配管25と、洗浄槽20内の洗浄液中の処理液成分の濃度を検知するためのペーハーセンサ21と、洗浄槽20内の洗浄液の温度を検知する温度センサ22と、が設けられている。蒸気配管25は、外部の蒸気源と接続され、洗浄槽20内を経て、洗浄槽20外に出ている。この洗浄槽20外に出ている部分は、開放されており、ここから蒸気ドレインが排出される。この蒸気配管25には、蒸気源からの蒸気量を調節する蒸気量調節弁24が設けられている。
【0049】
供給制御器70は、移動制御器60からの制御信号、及び処理槽10に設けられているペーハーセンサ11からの信号を受けて、ノズルライン53に設けられている遮断弁72及び噴射量調節弁71の動作を制御する。さらに、この供給制御器70は、洗浄槽20に設けられているペーハーセンサ21からの信号を受けて、洗浄槽ライン58に設けられている供給量調節弁73の動作も制御する。なお、ノズル51への洗浄液の供給制御を行う供給制御手段は、ノズルライン53に設けられている遮断弁72及び噴射量調節弁71と、供給制御器70とを有して構成されている。
【0050】
洗浄槽20に設けられている温度センサ22は、温度制御器23と電気的に接続されている。この温度制御器23は、温度センサ22からの信号を受けて、蒸気配管25に設けられている蒸気量調節弁24の動作を制御する。
【0051】
洗浄液を噴射するノズル51は、図3に示すように、ノズル51の噴射軸Aに対して垂直な仮想面内の第一方向D1での噴射幅W1が、仮想面内において第一方向D1に垂直な第二方向D2での噴射幅W2よりも広い。なお、噴射軸Aとは、ノズル51の噴射角を等分する仮想軸のことである。
【0052】
また、このノズル51は、図4に示すように、仮想面上で噴射軸A上の位置での噴射量が最大である。また、このノズル51は、噴射軸Aと交わり且つ仮想平面上で第一方向D1と平行な線上の噴射量、及び、噴射軸Aと交わり且つ仮想平面上で第二方向D2と平行な線上の噴射量は、いずれも、噴射軸Aから遠ざかるに連れて次第に少なくなる。
【0053】
各ノズル51は、図5に示すように、その噴射軸Aが、鉛直下方に向かうに連れて、ワーク吊下具43に取り付けられるワーク1の主面2に次第に近づく向きに傾けられている。より、詳細には、2本のヘッダ配管54のうち、一方のヘッダ配管54に固定されているノズル51の噴射領域と、他方のヘッダ配管54に固定されているノズル51の噴射領域とが、2本のヘッダ配管54の中央に配置されるワーク1の上端よりも上方で重なり合えるよう、各ノズル51は、その噴射軸Aが傾けられている。さらに、各ノズル51は、以上のように、その噴射軸Aが傾けられ、且つその第一方向D1がワーク1の主面2に沿う方向、つまりY方向を向くよう、ヘッダ配管54に固定されている。
【0054】
また、ワーク吊下具43に取り付けられるワーク1の主面2に沿う方向に並んで列を成している複数のノズル51は、図6に示すように、ワーク1表面上での噴射領域が相互に重なり合える間隔で、1本のヘッダ配管54に固定されている。
【0055】
次に、以上で説明した表面処理設備の動作について説明する。
【0056】
まず、ワーク1を移動機構30のワーク吊下具43に、ワーク1の主面2がノズルライン53のヘッダ配管54と平行になるよう、つまりX方向に垂直になるよう取り付ける。
【0057】
移動制御器60は、移動機構30の走行モータ34に対して駆動指令を出力し、ワーク吊下具43から吊下げられているワーク1を処理槽10の真上の位置までX方向に移動させる。続いて、移動制御器60は、移動機構30の昇降モータ38に対して駆動指令を出力し、ワーク吊下具43から吊下げられているワーク1全体が処理槽10内の処理液に浸かるまで、このワーク1を下方に移動させる。次に、移動制御器60は、ワーク1全体が処理槽10内の処理液に浸かってから、処理液による処理が終了したと想定される予め定められた時間が経過すると、昇降モータ38に対して駆動指令を出力し、処理液からワーク1を引き上げさせる。
【0058】
移動制御器60は、昇降モータ38の駆動により、ワーク1の引き上げを開始させると、供給制御器70に対して引き上げ開始を示す制御信号を出力する。供給制御器70は、この制御信号を受信してから予め定められた噴射待ち時間Taが経過したときに、ノズルライン53に設けられている遮断弁72に開指令を出力し、この遮断弁72を開状態にして、洗浄液供給源52からの洗浄液をノズル51から噴射させる。
【0059】
ここで、洗浄液のノズル51からの噴射タイミングについて説明する。
【0060】
図7に示すように、ワーク表面に付いている処理液の膜厚は、ワーク1の引き上げ開始から時間を経るに伴って、薄くなり、最終的には0になる。つまり、ワーク表面は乾いてしまう。なお、図7中の時間は、ワーク1の上端が処理液から出た露出時刻からの時間である。また、図7中で、破線はワーク1の上端の処理液の膜厚を示し、一点鎖線はワーク1の下端の処理液の膜厚を示している。
【0061】
ワーク1の上端が処理液から出た際には、ワーク1の下端は処理液中である。ワーク1の下端が処理液から出ると、その時点からワーク1の下端の処理液の膜厚が時間経過に伴って薄くなる。但し、ワーク1の下端には、ワーク1の上端に付いていた処理液が流れ落ちてくるため、膜厚減少速度がワーク上端よりも遅い。このため、ワーク1の上端は、処理液から最初に出される上に、膜厚減少速度が早いことから、ワーク表面中で最も早い時点で乾燥する。すなわち、図7に示すように、ワーク1の上端が処理液から出た露出時刻から、ワーク1の下端が乾燥するまでの時間を時間T2とすると、ワーク1の上端が乾燥するまでの時間T1は、時間T2より短い。
【0062】
ワーク1は、処理液がほぼ完全に洗浄されてしまう前に乾いてしまうと、アルカリ液である処理液によるアルカリ焼けを起こし、ワーク表面にシミやムラが発生してしまう。このため、ワーク表面の処理液がほぼ完全に洗浄されてしまう前に、ワーク表面が乾燥してしまうことを避ける必要がある。
【0063】
そこで、本実施形態では、ワーク1の上端が乾く前にワーク1に対して洗浄液を噴射するために、ワーク1の上端が処理液から出た時刻から、ワーク1上端が乾くまでの時間T1が経過する前に、ワーク1に対して洗浄液を噴射する。
【0064】
具体的に、供給制御器70は、移動制御器60から引き上げ開始を示す制御信号を受けると、この時刻にワーク1の上端が処理液から出たとみなし、この時刻から前述の時間T1よりも短い時間を噴射待ち時間Taとして、この噴射待ち時間Taが経過したときに、前述したように、遮断弁72に開指令を出力し、遮断弁72を開状態にする。なお、時間T1は、処理液の種類やワーク1の形状によって変化するため、処理液の種類やワーク1の形状毎に、噴射待ち時間Taは定められている。
【0065】
各ノズル51から洗浄液が噴射されると、ワーク1表面に付いていた処理液は洗浄液と共に流れ落ち、ワーク表面が洗浄される。各ノズル51からは、前述したように、ワーク表面上での噴射領域が相互に重なり合えるよう洗浄液が噴射されるため、ワーク表面のほぼ全体に洗浄液を接触させることができる。このため、各ノズル51からの洗浄液の噴射量にもよるが、ワーク表面に付いていた処理液の多くを洗い落とすことができる。
【0066】
移動制御器60は、ワーク1の引き上げ開始から所定時間が経過し、ワーク1の下端が処理槽10の上端よりも高い位置に至ると、昇降モータ38を停止させる。その後、移動制御器60は、昇降モータ38の停止から所定の停止時間が経過すると、走行モータ34に対して駆動指令を出力し、ワーク吊下具43から吊下げられているワーク1を洗浄槽20の真上の位置までX方向に移動させる。続いて、移動制御器60は、移動機構30の昇降モータ38に対して駆動指令を出力し、ワーク吊下具43から吊下げられているワーク1全体が洗浄槽20内の洗浄液に浸かるまで、このワーク1を下方に移動させる。
【0067】
なお、本実施形態で、ワーク1が処理槽10の上方に位置している際に停止時間を確保しているのは、ワーク1に付いている処理液をできる限り多く処理槽10に戻すと共に、洗浄槽20内への処理液の持込量を減らすためである。
【0068】
ノズル51からワーク1に対して洗浄液が噴射されても、ワーク1表面上の処理液がほぼ完全に洗浄されるとは限らない。このため、洗浄液の噴射停止後であって、ワーク1が洗浄槽20内の洗浄液に完全に浸かるまえに、ワーク1の表面が乾燥してしまうことは避ける必要がある。
【0069】
ここで、ワーク1の表面中で、洗浄液の噴射停止時刻から最も先に乾燥する部分は、ワーク1を処理液から引き上げた際と同様、ワーク1の上端である。また、このワーク1の上端が洗浄液の噴射停止時刻から乾燥するまでの時間も、ワーク1を処理液から引き上げた際と同様、時間T1である。
【0070】
そこで、本実施形態では、洗浄液の噴射停止時刻からワーク1が洗浄槽20内の洗浄液に完全につかる時刻までの時間が、前述の時間T1よりも短くなるように、洗浄液の噴射停止時刻を定めている。具体的に、供給制御器70は、移動制御器60から駆動指令による昇降モータ38の駆動で、ワーク1が洗浄槽20の上方から下降し、このワーク1の全体が洗浄槽20内の洗浄液に浸って、この昇降モータ38が停止する時刻から、前述の時間T1よりも短い時間前の時刻を噴射停止時刻としている。供給制御器70は、この噴射停止時刻になると、遮断弁72に閉指令を出力し、遮断弁72を閉状態にする。
【0071】
全ノズル51から噴射される洗浄液の量は、供給制御器70からの弁開度指令を受けるノズルライン53中の噴射量調節弁71により調節される。
【0072】
処理槽10内の処理液(アルカリ液)中の水は、常時蒸発している。そこで、処理液の成分濃度が目的濃度を基準にして一定範囲に収まるように、全ノズル51から噴射される洗浄液の量が調節される。但し、ワーク1が処理槽10上に位置していなければ、ワーク1に噴射された洗浄液が処理槽10内に入ることはないため、ワーク1が処理槽10上に位置している時間帯で、洗浄液の量の上記調節が行われる。
【0073】
具体的に、供給制御器70は、まず、処理槽10に設けられているペーハーセンサ11で検知されたペーハー値、つまり、処理液中の成分濃度を間接的に示す値を用いて、全ノズル51からの洗浄液の前記時間帯中の目標噴射量を定める。この際、洗浄液の噴射による処理液のペーハー値が目標値を基準にして一定範囲内に収まる、洗浄液の噴射量を目標噴射量とする。そして、供給制御器70は、ワーク1が処理槽10上に位置している間に、全ノズル51からの洗浄液の前記時間帯中の噴射量が目標噴射量になる噴射量調節弁71の弁開度を定め、この弁開度を示す弁開度指令をノズルライン53中の噴射量調節弁71に出力する。
【0074】
このため、本実施形態では、処理槽10中の処理液の成分濃度を長時間にわたり、一定範囲に収めることができる。
【0075】
仮に、ワーク1が処理槽10上に位置しなくなってから噴射停止時刻になる場合、つまり、ワーク1が処理槽10上に位置しなくなってから洗浄液の噴射を停止する場合、ワーク1が処理槽10上に位置しなくなってから噴射停止時刻までの間の噴射量は、基本的に自由である。但し、噴射量が極めて少なく、ワーク1が洗浄槽20内に入る前にその表面が乾いてしまっては意味がないため、この間の単位時間あたりの噴射量として、最低限、噴射停止時刻からワーク全体が洗浄槽20内の洗浄液に浸るまでにワーク表面が乾かない噴射量を確保する必要がある。
【0076】
洗浄槽20内には、前述したように、蒸気配管25が設けられており、この蒸気配管25に供給される蒸気流量が蒸気量調節弁24で制御されて、洗浄槽20内の洗浄液の温度は所定の温度(例えば、60℃)に維持されている。このため、ワーク1が洗浄槽20内に洗浄液に浸かると、所定の温度の洗浄液により、ワーク表面の処理液はほぼ完全に除去される。すなわち、本実施形態では、ワーク1を洗浄槽20内の洗浄液に浸すことで、ワーク表面の全体を確実に洗浄液に接触させると共に、洗浄効果の高い温度の洗浄液にワーク表面を接触させることで、ワーク表面全体の洗浄性を高めている。
【0077】
洗浄槽20内の洗浄液は、この洗浄液内にワーク1を繰り返し入れる過程で、次第に、この洗浄液中の処理液成分の濃度が高まり、洗浄液による洗浄効果が低下する。このため、本実施形態では、供給制御器70は、洗浄槽ライン58中に設けられている供給量調節弁73に対して弁開度指令を出力し、洗浄槽20に設けられているペーハーセンサ21で検知されたペーハー値、つまり、洗浄液中の処理液成分の濃度を間接的に示す値が、予め定められた値未満になるよう、洗浄液供給源52の洗浄液を洗浄槽20内に供給する。
【0078】
以上、本実施形態では、繰り返すことになるが、ワーク1を洗浄槽20内の洗浄液に浸すことで、ワーク表面の全体を確実に洗浄液に接触させると共に、洗浄効果の高い温度の洗浄液にワーク表面を接触させることで、ワーク表面全体の洗浄性を高めている。よって、本実施形態では、ワーク表面の処理液をきれいに洗い落とすことができる。
【0079】
また、本実施形態では、ワーク1が洗浄槽20内の洗浄液に浸かる前に、処理槽10から出されたワーク1に対して洗浄液を噴射しているため、さらに、この洗浄液の噴射により、処理槽10上でのワーク1の停止時間を長くすることができるため、洗浄槽20内の洗浄液に対する処理液成分の持込量を少なくすることができる。この結果、本実施形態では、洗浄槽20への洗浄液の供給量を大幅に減らすことができる上に、洗浄液の供給量の減少に伴い、洗浄槽20内の蒸気配管25への蒸気供給量も減らすことができるので、ワーク1の表面処理にかかるランニングコストを抑えることができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、ワーク1が処理槽10から洗浄槽20へ移る過程で、ワーク1がどの位置存在する場合でも、移動機構30中の移動体の一部であるクレーンボディ36に設けたノズル51から噴射した洗浄液でワーク1を洗浄できるので、ワーク1が洗浄槽20内の洗浄液に浸る前に、ワーク表面が乾いてしまうことを防ぐことができる。このため、本実施形態では、ワーク表面に残っている処理液が乾くことによるアルカリ焼け等で、ワーク表面にシミやムラ等を形成されるのを防ぐことができる。
【0081】
次に、本発明に係る表面処理設備の第二実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。
【0082】
本実施形態の表面処理設備は、第一実施形態の表面処理設備と基本的に同じであるが、ノズルライン53の一部を構成するヘッダ配管54の数量、ワーク吊下具43の数量等が第一実施形態と異なっている。
【0083】
本実施形態のノズルライン53は、図8及び図9に示すように、4本のヘッダ配管54を有している。各ヘッダ配管54は、第一実施形態と同様、その長手方向がY方向を向くよう、クレーンボディ36の下に固定されている。隣り合う2本のヘッダ配管54間のX方向における中間位置には、ワーク1が取り付けられるワーク吊下具43が設けられている。すなわち、本実施形態では、X方向に3つのワーク吊下具43が並んでいる。
【0084】
各ヘッダ配管54には、第一実施形態と同様、複数のノズル51が固定されている。各ヘッダ配管54に設けられている複数のノズル51は、第一実施形態と同様、ヘッダ配管54が延びている方向、つまりY方向に並び、列を成している。
【0085】
図10に示すように、4本のヘッダ配管54のうち、X方向の両側のヘッダ配管54aのノズル51aは、第一実施形態と同様、その噴射軸Aが、鉛直下方に向かうに連れて、ワーク吊下具43に取り付けられるワーク1の主面2に次第に近づく向きに傾けられている。一方、4本のヘッダ配管54のうち、X方向の両側のヘッダ配管54aを除くヘッダ配管54bのノズル51bは、その噴射軸Aが鉛直下方を向くよう設けられている。これは、X方向において、ノズル51bの両側に配置される各ワーク1に対して、洗浄液を均等に噴射するためである。
【0086】
なお、本実施形態においても、Y方向に並んで列を成している、言い換えると、ワーク吊下具43に取り付けられるワーク1の主面2と沿う方向に並んで列を成している複数のノズル51は、ワーク表面上での噴射領域が相互に重なり合える間隔で、1本のヘッダ配管54に固定されている。また、X方向、つまり、複数のワーク1が並んでいる方向で隣り合っている2つのノズル51も、第一実施形態と同様、ワーク表面上での噴射領域が相互に重なり合えるようになっている。
【0087】
以上、本実施形態は、ヘッダ配管54の数量やワーク吊下具43の数量等が第一実施形態と異なることを除いて、基本的に第一実施形態と同一構成であるため、本実施形態も、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、複数のワーク1を一台の移動機構30のワーク吊下ビーム41から吊下げることができるので、複数のワーク1に対する処理槽10内での表面処理及び洗浄槽20内での洗浄処理を一度に行うことができる。しかも、本実施形態では、複数のワーク1の間になる位置にも、複数のノズル51を配置しているので、複数のワーク1をノズル51から噴射した洗浄液で洗浄することができる。
【0089】
なお、本実施形態のノズル51、特に、複数のワーク1の間になる位置に配置されるノズル51bは、図11に示すように、ホロコーン(空円錐)状に洗浄液を噴射するものであることが好ましい。すなわち、ノズル51(51b)は、噴射軸Aに垂直な仮想面上で、噴射軸Aを含む噴射軸Aの周りを非噴射領域R1とし、この非噴射領域R1の周りを噴射領域R2とするものであることが好ましい。
【0090】
複数のワーク1の間になる位置に配置されるノズル51bは、前述したように、その噴射軸Aが鉛直下方を向くように設けられているため、噴射軸A上にはワーク1が存在しない。このため、仮に、噴射軸Aを含む噴射軸A周りに液を噴射するノズル51を用いた場合、噴射軸A周りに噴射した洗浄液は、ワーク1に接触せず、洗浄液の無駄になる。そこで、ホロコーン状に洗浄液を噴射するノズルを用いることで、洗浄液の無駄を省き、洗浄液の消費量を減らすことが好ましい。
【0091】
なお、以上の実施形態の移動機構30は、水平方向に延びる水平レール39は、処理槽10と洗浄槽20が並んでいるX方向に延びるもののみであるが、図12に示すように、この水平レール39の他に、この水平レール39に対して垂直な方向なY方向に延びる水平レール39bを追加し、移動体であるクレーン35が水平方向のうちで互いに異なる方向X,Yに移動できるようにしてもよい。このように、水平レール39bを追加することにより、移動体であるクレーン35等の移動可能領域が広がるため、処理槽10内での表面処理の前工程の実行位置、及び、洗浄槽20内での洗浄工程の後工程の実行位置の自由度を高めることができる。
【0092】
また、以上の実施形態でのワークは、ワーク表面のうちで最も大きく、互いに相反する方向を向いている一対の主面2を有する矩形板状のワーク1であるが、本発明にこれに限定されるものではなく、直方体形状のもの、円柱形状のもの、凹凸や貫通孔等が形成されているもの等であってもよい。これらの場合、複数のノズル51は、ワークの上端よりも上方の位置に、ワークがクレーン35から吊下げられている状態で、ワークの上部と下部とをつなぐ側周部の面に沿うよう配置することが好ましい。
【0093】
また、以下の実施形態では、処理液がアルカリ液であり、洗浄液が純水であるが、本発明において、処理液、洗浄液は、上記のものである必要性はない。例えば、処理液が酸液であてもよいし、洗浄液が弱アルカリ液であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…ワーク、2…主面、10…処理槽、20…洗浄槽、30…移動機構、35…クレーン(移動体)、50…洗浄液供給装置(洗浄液供給手段)、51…ノズル、52…洗浄液供給源、53…ノズルライン、54…ヘッダ配管、56…ホース、60…移動制御器、70…供給制御器、71…噴射量調節弁、72…遮断弁、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面を処理する処理液が蓄えられる処理槽と、
表面に処理液が付いているワークを洗浄する洗浄液が蓄えられる洗浄槽と、
前記ワークを吊り下げ、少なくとも前記処理槽の上方と前記洗浄槽の上方との間で移動すると共に、上下方向に移動する移動体を有している移動機構と、
前記移動体に設けられ、該移動体から吊り下げられている前記ワークに対して、洗浄液を噴射するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
を備えていることを特徴とする表面処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理設備において、
前記ノズルを複数備え、
複数の前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられている前記ワーク上端よりも上方の位置で、それぞれの噴射領域が相互に重なり合うよう配置されている、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項3】
請求項2に記載の表面処理設備において、
前記ワークは、前記移動体から吊下げられている状態で、上部、下部、及び該上部と該下部とをつなぐ側周部を有しており、
複数の前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられている前記ワーク上端よりも上方の位置で、該ワークの側周部の面に沿うよう配置されている、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項4】
請求項3に記載の表面処理設備において、
前記ワークは、互いに相反する方向を向く一対の主面を有しており、該一対の主面が前記側周部の面を成して鉛直方向に沿う向きになるよう、前記移動体から吊り下げられ、
複数の前記ノズルのうちの一部の複数のノズルが、前記移動体から吊下げられている前記ワークを基準にして、該ワークの前記主面に垂直な方向における一方側に、該主面に沿う方向に並んでいるノズル列を成し、他の一部の複数のノズルが、該主面に垂直な方向における他方側に、該主面に沿う方向に並んでいるノズル列を成す、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項5】
請求項4に記載の表面処理設備において、
前記移動体は、互いの前記主面が対向する状態で複数の前記ワークを吊り下げることが可能であり、
複数の前記ワークのうちで互いに隣り合う2つのワークの間になる位置に、1つの前記ノズル列が配置されている、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の表面処理設備において、
前記ノズルは、該ノズルの噴射軸に対して垂直な仮想面内の第一方向での噴射幅が、該該仮想面内で第一方向に垂直な第二方向での噴射幅よりも広く、
前記ノズルは、前記移動体から吊り下げられる前記ワークの表面のうちで最も広い表面である面に対して、前記第一方向が平行になるよう前記移動体に設けられている、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項7】
請求項6に記載の表面処理設備において、
前記ノズルは、前記仮想面上で、前記噴射軸を含む該噴射軸周りを非噴射領域とし、該非噴射領域の周りを噴射領域とする、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の表面処理設備において、
前記移動機構を駆動制御する移動制御手段と、
前記洗浄液供給手段から前記ノズルへの前記洗浄液の供給制御を行う供給制御手段と、
を備え、
前記移動制御手段により、前記移動機構が駆動し、前記処理槽内の前記処理液に前記ワークの全体が浸漬されている状態から、該ワークが該処理液から引き上げられると、前記供給制御手段は、該ワークの上端が該処理液から出た露出時刻から該上端に付いている処理液が乾燥してしまう時間として予め定めた時間が、該露出時刻から経過する前に、前記供給制御手段は、前記洗浄液供給手段により、前記ノズルへの前記洗浄液の供給を開始させる、
ことを特徴とする表面処理設備。
【請求項9】
請求項8に記載の表面処理設備において、
前記処理槽内の前記処理液中の成分濃度を検知するセンサを備え、
前記供給制御手段は、前記センサで検知された前記濃度に応じて、前記ノズルへの前記洗浄液の供給量を制御する、
ことを特徴とする表面処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−170850(P2012−170850A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33502(P2011−33502)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】