説明

表面加工装置

【課題】被処理面のエッチング液が供給されている領域内でのエッチングレートを均一化し、被処理物に対して所望のエッチングを行うことができる表面加工装置を提供すること。
【解決手段】表面加工装置1は、ワーク10を支持するチャッキングプレート21と、チャッキングプレート21に対して移動可能に設けられ、チャキングプレート21に支持されたワーク10の被処理面101に対してエッチング液を送出する送出口4aおよび送出口4aから送出されたエッチング液を吸引する吸引口4bを有するノズル4とを有する。また、ノズル4は、送出口4aから送出され被処理面101に供給されたエッチング液を、吸引口4bから偏りなく均一に吸引することにより、エッチング液が供給された被処理面101内の領域のエッチングレートを均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理物(ガラス、水晶、シリコンウエハ等)の表面を加工する方法の1つとして、被処理物の被処理面にノズルから送出するエッチング液を局所的に供給し、ノズルと被処理物とを相対的に移動させることにより、被処理物の被処理面の全域に対してエッチング処理を行う、いわゆるローカルウエットエッチングが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の表面加工装置は、図22に示すように、エッチング液を送出する送出口910と、送出口910の周囲を囲むように設けられ、送出口910から送出されたエッチング液を吸引する吸引口920とが形成されたノズル900を有している。送出口910は、一方向に延在する長手形状(略長方形)をなしている。また、特許文献1に記載の表面加工装置は、ノズル900を、被処理物の被処理面に沿って、吸引口920の延在方向に直交する方向に移動可能としている。このような表面加工装置では、送出口910からエッチング液を送出しつつ吸引口920で吸引しながら、ノズル900を被処理面に沿って移動させることにより、被処理物に対して所望のエッチング処理を行う。
【0004】
しかしながら、特許文献1の表面加工装置では、図22に示すように、送出口910の長手方向の中央部911から送出されたエッチング液を主に吸引する吸引口920の領域921の面積よりも、送出口910の両端部912、913から送出されたエッチング液を主に吸引する吸引口920の領域922、923の面積の方が大きい。そのため、送出口910の中央部911と両端部912、913とで送出されるエッチング液の流速が異なったり、送出口910の中央部911と両端部912、913とで、被処理面との間に介在するエッチング液の量が異なったりする。その結果、被処理面のエッチング液が供給されている領域内のエッチングレート(単位時間内のエッチング量)がばらついてしまい、被処理物に対して、所望のエッチングを行うことができない(言い換えればエッチング精度が低下する)という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−200954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被処理面のエッチング液が供給されている領域内でのエッチングレートを均一化し、被処理物に対して所望のエッチングを行うことができる表面加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明の表面加工装置では、被処理物の被処理面にエッチング液を供給することにより前記被処理面を加工する表面加工装置であって、
前記被処理物を支持する支持台と、
前記支持台に対して移動可能に設けられ、前記支持台に支持された前記被処理物の前記被処理面に対して前記エッチング液を送出する送出口および前記送出口から送出された前記エッチング液を吸引する吸引口を有するノズルと、を有し、
前記ノズルは、前記送出口から送出され前記被処理面に供給された前記エッチング液を、前記吸引口から偏りなく均一に吸引することにより、前記エッチング液が供給された前記被処理面内の領域のエッチングレートを均一化することを特徴とする。
これにより、被処理面のエッチング液が供給されている領域内でのエッチングレートを均一化し、被処理物に対して所望のエッチングを行うことができる表面加工装置を提供することができる。
【0008】
[適用例2]
本発明の表面加工装置では、前記ノズルは、前記エッチング液が供給された前記被処理面内の領域に前記エッチング液が均一に分布するように前記吸引口から前記エッチング液を吸引することが好ましい。
エッチング液の被処理面に対するエッチングレートは、被処理面に供給されるエッチング液の量(単位時間当たりの供給量)によって変化する。そのため、このような方法によれば、簡単かつ確実に、所定時刻において被処理面のエッチング液が供給されている領域内のエッチングレートを均一化することができる。
【0009】
[適用例3]
本発明の表面加工装置では、前記吸引口は、前記送出口の前記ノズルの移動方向後方側に形成されていることが好ましい。
これにより、被処理面の任意の領域を送出口に遅れて吸引口が通過するため、送出口から送出され被処理面に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0010】
[適用例4]
本発明の表面加工装置では、前記吸引口および前記送出口は、それぞれ、前記ノズルの移動方向に直交する方向に延在する長手形状をなし、長手方向の長さが互いに等しく、前記ノズルの移動方向に並んで形成されていることが好ましい。
これにより、エッチング液が供給された被処理面内の領域に、エッチング液が均一に分布することとなり、領域内のエッチングレートが均一となる。
【0011】
[適用例5]
本発明の表面加工装置では、前記吸引口および前記送出口は、互いに同じ形状をなしていることが好ましい。
これにより、送出口からのエッチング液の送出量と、吸引口からのエッチング液の吸引量とのバランスが良好となり、エッチング液を被処理面上に均一に分散させることができる。
【0012】
[適用例6]
本発明の表面加工装置では、前記吸引口および前記送出口は、それぞれ、長方形状をなしていることが好ましい。
これにより、エッチング液は、送出口の各部位から偏りなく等しい流量で送出され、被処理面に供給された後、吸引口の各部位から偏りなく等しい流量で吸引される。その結果、所定時刻にエッチング液が供給された被処理面内の領域に、エッチング液が均一に分布することとなり、領域内のエッチングレートが均一となる。
【0013】
[適用例7]
本発明の表面加工装置では、前記ノズルは、前記エッチング液を前記送出口から前記吸引口へ案内する案内溝を有していることが好ましい。
これにより、被処理面に供給されたエッチング液をスムーズに吸引口に導くことができる。
【0014】
[適用例8]
本発明の表面加工装置では、前記案内溝は、前記ノズルの移動方向に延在していることが好ましい。
これにより、被処理面に供給されたエッチング液をよりスムーズに吸引口に導くことができる。
【0015】
[適用例9]
本発明の表面加工装置では、前記ノズルは、第1の開口および第2の開口を有し、
前記ノズルの移動方向に応じて、前記第1の開口を前記送出口とし前記第2の開口を前記吸引口とする状態と、前記第1の開口を前記吸引口とし前記第2の開口を前記送出口とする状態とを切り替えることができることが好ましい。
これにより、ノズルが一方の開口側に移動する場合、他方の開口側に移動する場合のいずれの場合であっても、被処理面の任意の領域をエッチング液の送出口に遅れて吸引口が通過するため、送出口から送出され被処理面に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0016】
[適用例10]
本発明の表面加工装置では、前記ノズルは、前記送出口を介して対向配置された1対の前記吸引口を有し、
前記1対の吸引口のうちの前記ノズルの移動方向後方側にある前記吸引口から前記エッチング液を吸引することが好ましい。
これにより、ノズルが一方の吸引口側に移動する場合、他方の吸引口側に移動する場合のいずれの場合であっても、被処理面の任意の領域をエッチング液の送出口に遅れて吸引口が通過するため、送出口から送出され被処理面に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0017】
[適用例11]
本発明の表面加工装置では、前記1対の吸引口は、前記送出口に対して対称的に設けられており、かつ、互いに同じ形状および大きさをなしていることが好ましい。
これにより、一方の吸引口からエッチング液を吸引する場合と、他方の吸引口からエッチング液を吸引する場合とで、エッチング液の単位時間当たりの吸引量を等しくすることができる。そのため、上記いずれの場合であっても、同じ条件(エッチングレート)で被処理面に対するエッチング処理を行うことができる。
【0018】
[適用例12]
本発明の表面加工装置では、前記ノズルは、前記吸引口を介して対向配置された1対の前記送出口を有し、
前記1対の送出口のうちの前記ノズルの移動方向先方側にある前記送出口から前記エッチング液を送出することが好ましい。
これにより、ノズルが一方の送出口側に移動する場合、他方の送出口側に移動する場合のいずれの場合であっても、被処理面の任意の領域をエッチング液の送出口に遅れて吸引口が通過するため、送出口から送出され被処理面に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0019】
[適用例13]
本発明の表面加工装置では、前記1対の送出口は、前記吸引口に対して対称的に設けられており、かつ、互いに同じ形状および大きさをなしていることが好ましい。
これにより、一方の送出口からエッチング液を送出する場合と、他方の送出口からエッチング液を送出する場合とで、エッチング液の単位時間当たりの送出量を等しくすることができる。そのため、上記いずれの場合であっても、同じ条件(エッチングレート)で被処理面に対するエッチング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の表面加工装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す表面加工装置が有するノズルの形状および移動方向を示す平面図である。
【図3】図2に示すノズルの縦断面図である。
【図4】図2に示すノズルの平面図である。
【図5】図1に示す表面加工装置が有する温度制御部の構成図である。
【図6】図1に示す表面加工装置が有する制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態にかかる表面加工装置が備えるノズルを示す斜視図である。
【図8】図7に示すノズルの平面図である。
【図9】第3実施形態にかかる表面加工装置の構成図である。
【図10】図9に示す表面加工装置が有するノズルの平面図である。
【図11】図9に示すノズルの移動ルートを示す平面図である。
【図12】図9に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。
【図13】第4実施形態にかかる表面加工装置の構成図である。
【図14】図13に示す表面加工装置が有するノズルの平面図である。
【図15】図13に示すノズルの移動ルートを示す平面図である。
【図16】図13に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。
【図17】第5実施形態にかかる表面加工装置の構成図である。
【図18】図17に示す表面加工装置が有するノズルの斜視図である。
【図19】図17に示すノズルの移動ルートを示す平面図である。
【図20】図17に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。
【図21】図1に示す表面加工装置が有するノズルの変形例を示す平面図である。
【図22】従来のノズルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の表面加工装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の表面加工装置の第1実施形態を示す図、図2は、図1に示す表面加工装置が有するノズルの形状および移動方向を示す平面図、図3は、図2に示すノズルの縦断面図、図4は、図2に示すノズルの平面図、図5は、図1に示す表面加工装置が有する温度制御部の構成図、図6は、図1に示す表面加工装置が有する制御部の構成を示すブロック図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0022】
表面加工装置1は、ローカルウエットエッチングにより、ワーク(被処理物)10に対して所望のエッチング処理を行う装置である。
エッチング処理が施されるワーク10の構成材料は、特に限定されず、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等の各種ガラス、水晶等の結晶性材料、アルミナ、シリカ、チタニア等の各種セラミックス、シリコン、ガリウム−ヒ素等の各種半導体材料、ダイヤモンド、黒鉛等の炭素系材料、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フェノール樹脂、アクリル樹脂等各種プラスチック(樹脂材料)のような誘電体材料で構成されたもの、その他、例えば、アルミニウム、銅、鉄系金属のような各種金属材料が挙げられる。
【0023】
また、ワーク10の形状は、特に限定されず、例えば、板状、ブロック状等であってもよい。また、ワーク10の平面視形状も特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円形等であってもよい。なお、以下では、説明の便宜上、ワーク10として、平面視形状が矩形の板状のものについて代表して説明する。
図1に示すように、表面加工装置1は、ワーク10を支持する支持装置2と、支持装置2に支持されたワーク10の被処理面101にエッチング液を供給するエッチング液供給装置3とを有している。このような表面加工装置1は、支持装置2に支持されたワーク10の被処理面101に、エッチング液供給装置3によってエッチング液を供給することにより、ワーク10(被処理面101)に対して所望のエッチング処理を行うように構成されている。
【0024】
以下、支持装置2およびエッチング液供給装置3について、順次詳細に説明する。
[支持装置]
図1に示すように、支持装置2は、チャッキングプレート(支持台)21と、固定手段22とを有している。
(チャッキングプレート)
チャッキングプレート21は、ワーク10を支持する機能を有する。このような機能を有するチャッキングプレート21は、本実施形態では、板状をなしている。ただし、チャッキングプレート21の形状は、ワーク10を支持することができれば、特に限定されず、板状でなくてもよい。
【0025】
チャッキングプレート21の下面は、ワーク10を支持するチャッキング面211を構成する。チャッキング面211は、例えば平坦面で構成されている。これにより、ワーク10をチャッキング面211に支持したとき、ワーク10がチャッキング面211の形状に倣って変形するのを防止することができる。また、ワーク10をチャッキング面211に支持したときに、チャッキング面211とワーク10との間に隙間が形成され難いため、エアチャッキングを用いる固定手段22によって、確実かつ簡単に、ワーク10をチャッキング面211に固定することができる。
【0026】
(固定手段)
固定手段22は、チャッキング面211にワーク10を固定する機能を有する。ワーク10をチャッキング面211に固定することにより、チャッキングプレート21に対するワーク10の姿勢および位置をエッチング処理中一定に保つことができるため、ワーク10に対して所望のエッチング処理を行うことができる。特に、本実施形態のような表面加工装置1では、ワーク10をチャッキングプレート21に吊り下げるように支持するため、固定手段22により、ワーク10のチャッキングプレート21からの落下を防止することができる。
【0027】
図1に示すように、固定手段22は、チャッキングプレート21に形成され、チャッキング面211に開放する複数の吸気孔221と、各吸気孔221に接続された吸引ポンプ222とを有している。各吸気孔221の開口は、ワーク10をチャッキング面211に支持した状態にて、ワーク10によって塞がれる。このような固定手段22は、チャッキング面211にワーク10を支持した状態にて、吸引ポンプ222を作動し、各吸気孔221内を減圧することにより、ワーク10をチャッキング面211に吸着固定する。このような構成の固定手段22によれば、簡単に、ワーク10をチャッキング面211に固定することができる。また、吸気孔221内を常圧に復帰させるだけで、ワーク10をチャッキング面211から簡単に取り外すことができる。
【0028】
[エッチング液供給装置]
エッチング液供給装置3は、チャッキングプレート21に固定されたワーク10の被処理面101にエッチング液を供給する機能を有する。図1に示すように、エッチング液供給装置3は、ワーク10の被処理面101に沿って移動可能に設けられたノズル4と、ノズル4の駆動を制御する制御部6と、エッチング液をノズル4から送出し、回収するエッチング液循環装置7とを有している。
【0029】
(ノズル)
図1に示すように、ノズル4は、チャッキングプレート21に固定されたワーク10の下方に位置するように設けられている。また、ノズル4は、その上面(被処理面101と対向する面)に開放する2つの貫通孔41、42を有している。このようなノズル4では、エッチング液が貫通孔41を通ってノズル4の上面から送出され、貫通孔42を通って吸引される。すなわち、ノズル4では、貫通孔41の上部開口がエッチング液の送出口4aを構成し、貫通孔42の上部開口がエッチング液の吸引口4bを構成する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態のノズル4は、図2中横方向に延在する長手形状をなしている。表面加工装置1では、ノズル4からエッチング液を送出、吸引しつつ、ノズル4を図2中縦方向(すなわち、ノズル4の延在方向に直交する方向)に一次元的に移動させることにより、被処理面101の全域にエッチング液を供給し、ワーク10に対して所望のエッチング処理を行うように構成されている。
【0031】
このようなノズル4は、送出口4aから送出され、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bから偏りなく均一に吸引することにより、被処理面101の表面のエッチング液の流速(単位時間当たりのエッチング液の供給量)を均一とし、図3に示すように、所定時刻にエッチング液が供給された被処理面101内の領域S1(S1a〜S1e)のエッチングレートを均一化するように構成されている。これにより、被処理面101に対して所望のエッチング処理を高精度に行うことができる。
【0032】
ここで、領域S1のエッチングレートを均一化する方法として、種々の方法が挙げられるが、ノズル4を、領域S1にエッチング液が均一に分布するように、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bから吸引することのできる構成とするのが好ましい。一般に、エッチング液の被処理面101に対するエッチングレートは、被処理面101に供給されるエッチング液の量(単位時間当たりの供給量)によって変化する。そのため、上記のような方法によれば、簡単かつ確実に、領域S1内のエッチングレートを均一化することができる。
【0033】
以下、このような方法を実現することのできるノズル4の構成について詳細に説明する。
図4に示すように、送出口4aおよび吸引口4bは、ノズル4の移動方向に並んで形成されている。また、送出口4aが、吸引口4bに対してノズル4の移動方向前方側に位置している。このような配置とすることにより、被処理面101の任意の領域を送出口4aに遅れて吸引口4bが通過するため、送出口4aから送出され被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bからスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bから偏りなく均一に吸引することができる。
【0034】
また、図4に示すように、送出口4aおよび吸引口4bは、互いに、ノズル4の移動方向に直交する方向を長手とする長方形状をなしている。特に、本実施形態では、送出口4aおよび吸引口4bは、その長手方向(長辺)の長さが互いに等しく、同じ側に位置する端部同士がノズル4の移動方向と平行な同一線分上に位置している。送出口4aおよび吸引口4bをそれぞれこのような形状とすることにより、次のような効果を発揮することができる。
【0035】
例えば、説明の便宜上、図4に示すように、送出口4aおよび吸引口4bを長手方向で3等分し、両端部および中央部の3つの領域Sa、Sb、Scに分ける。この場合、送出口4aの領域Saから送出されたエッチング液は、被処理面101に供給された後ノズル4の移動方向後方に位置する吸引口4bの領域Saから吸引され、これと同様に、送出口4aの領域Sbから送出されたエッチング液は、被処理面101に供給された後吸引口4bの領域Sbから吸引され、送出口4aの領域Scから送出されたエッチング液は、被処理面101に供給された後吸引口4bの領域Scから吸引される。
【0036】
送出口4aおよび吸引口4bは、互いに長方形状をなし、その幅(ノズル4の移動方向の長さ)が長手方向の全域で一定であるため、送出口4aから送出されるエッチング液の量は、送出口4aの長手方向の各部位(3つの領域Sa〜Sc)で互いに等しく、同様に吸引口4bから吸引されるエッチング液の量は、吸引口4bの長手方向の各部位(3つの領域Sa〜Sc)で等しい。そのため、エッチング液は、送出口4aの各部位(3つの領域Sa〜Sc)から偏りなく等しい流量で送出され、被処理面101に供給された後、吸引口4bの各部位(領域Sa〜Sc)から偏りなく等しい流量で吸引される。その結果、所定時刻にエッチング液が供給された被処理面101内の領域S1に、エッチング液が均一に分布することとなり、領域S1内のエッチングレートが均一となる。
【0037】
ここで、送出口4aと吸引口4bの幅(ノズル4の移動方向における長さ)は、特に限定されないが、送出口4aの幅をWaとし、吸引口4bの幅をWbとしたとき、Wbが0.5Wa以上、1.5Wa以下であるのが好ましく、WbがWaと等しいことがさらに好ましい。これにより、送出口4aからのエッチング液の送出量と、吸引口4bからのエッチング液の吸引量とのバランスが良好となり、エッチング液を領域S1内で均一に分散させて供給することができる。これに対して、送出口4aからのエッチング液の送出量と吸引口4bからのエッチング液の吸引量の差によっても異なるが、Wbが0.5Waより小さい場合には、被処理面101に供給されたエッチング液の吸引が追い付かず、被処理面101に過剰のエッチング液が供給され、領域S1内でエッチング液の供給量にばらつきが生じる可能性がある。逆に、Wbが1.5Waより大きい場合には、被処理面101に供給されるエッチング液の量が過度に少なくなり、これに起因して気泡が発生し、領域S1内でエッチング液の供給量にばらつきが生じる可能性がある。
【0038】
(エッチング液循環装置)
図1に示すように、エッチング液循環装置7は、エッチング液をノズル4の送出口4aから送出する送出管71と、エッチング液をノズル4の吸引口4bから回収する回収管72と、エッチング液を貯留する貯留タンク73と、貯留タンク73から送出管71へエッチング液を送出する送液ポンプ74と、送出管71へ送出するエッチング液の流量を調節する流量調節バルブ75および流量計76と、ワーク10の被処理面101に付着したエッチング液(エッチング処理の用に供されたエッチング液)を吸引して回収するための吸引ポンプ77と、ノズル4から送出するエッチング液の温度を調節する温度制御部78とを有している。
【0039】
これら各装置は、貯留タンク73、送液ポンプ74、流量調節バルブ75、流量計76、送出管71、回収管72の順に接続され、回収管72と貯留タンク73が接続されることにより、循環経路79が形成されている。吸引ポンプ77は、貯留タンク73内を減圧することにより、吸引口4bからエッチング液を吸引する。なお、送出管71および回収管72には、ノズル4の移動に追従可能なように可撓性があるものを用いるのが好ましい。また、エッチング液が接触する部分は全て、エッチング液により腐食することのない材料で構成されている。
【0040】
循環経路79を循環するエッチング液は、ワーク10の構成材料に応じて選択すればよい。例えば、ワーク10がガラス材、石英、水晶等、SiOを材料として含むものである場合には、エッチング液にはフッ化水素酸又はフッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合溶液を用いることが望ましい。また、ワーク10がSi半導体ウエハ等、Siを材料として含むものである場合には、エッチング液にはフッ化水素酸と硝酸の混合溶液又はフッ化水素酸と硝酸と酢酸の混合溶液、又は水酸化カリウムを用いることが望ましい。
【0041】
また、このようなエッチング液に、エッチングレートを高めると共に空間波長の短い粗さ成分を除去する目的で研磨剤を含有させてもよい。研磨剤には、例えばアルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、炭化珪素(SiC)、ホウ化炭素(BC)、ダイヤモンド、三酸化二クロム(Cr)、二酸化セリウム(CeO)、二酸化チタン(TiO)、二酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化硼素(BN)から成る微粒子や、これら微粒子のうちの2種以上の混合物を用いることができる。また、白金(Pt)の微粒子は、エッチング液に浸食されないという点で、研磨剤として好適に用いることができる。
【0042】
温度制御部78は、貯留タンク73内のエッチング液を所定温度に維持する機能を有している。これにより、送出口4aから送出されるエッチング液を所定温度に維持することができる。ここで、ワーク10に対するエッチングレート(単位時間当たりのエッチング深さ)は、エッチング液の温度によって変化し、一般にエッチング液の温度の上昇に伴って、エッチングレートが高くなる。そのため、温度制御部78を設けて、送出口4aから送出されるエッチング液の温度を所望の温度に維持することにより、ワーク10の被処理面101の全域を所望のエッチングレートでエッチング処理することができ、ワーク10に対してより高精度なエッチング処理を施すことができる。
【0043】
このような温度制御部78の構成は、特に限定されないが、例えば図5に示すような構成を用いることができる。図5に示す構成では、温度制御部78は、貯留タンク73内に設けられ、貯留タンク73内のエッチング液の温度を検知する温度検知素子781と、貯留タンク73内に設けられ、貯留タンク73内のエッチング液を加熱するヒーター782と、温度検知素子781の検知結果に基づいてヒーター782の駆動(ON/OFF、出力値)を制御する駆動制御部783とを有している。このような構成によれば、温度制御部78の構成を簡単なものとすることができるとともに、より確実に貯留タンク73内のエッチング液を所定温度とすることができる。なお、温度制御部78は、さらに貯留タンク73内のエッチング液を冷却する冷却手段を有していてもよい。ヒーター782と冷却手段とを組み合わせることにより、貯留タンク73内のエッチング液をより正確に所定温度に維持することができる。
【0044】
温度検知素子781としては、貯留タンク73内のエッチング液の温度を検知することができれば特に限定されず、例えば、白金測温抵抗体やサーミスタのような接触式の温度センサーや、放射温度計(サーモパイル)のような非接触式の温度センサーを用いることができる。
また、ヒーター782としては、貯留タンク73内のエッチング液を加熱することができれば特に限定されず、例えば、ニクロム線等の線状発熱体を用いてもよいし、シリコンラバーヒーター等の面状発熱体を用いてもよい。また、ヒーター782の配置は、貯留タンク73内のエッチング液を加熱することができれば特に限定されず、貯留タンク73の外周付近に設置されていてもよい。
【0045】
なお、本実施形態の温度制御部78は、貯留タンク73内のエッチング液を所定温度とする構成であるが、送出口4aから送出されるエッチング液の温度を所定温度に維持することができれば、これに限定されない。例えば、温度制御部78は、送出管71の途中に設けられ、送出管71内を流れるエッチング液の温度を制御してもよいし、回収管72の途中に設けられ、回収管72内を流れるエッチング液の温度を制御してもよい。
【0046】
(制御部)
図6に示すように、制御部6は、ノズル4を平面内(被処理面101上)で移動させるノズル移動装置61と、加工前および目標とする加工後のワーク10の表面のプロファイルを記憶する記憶部62と、これら2つのプロファイルおよびエッチング液の単位時間当たりのエッチング量(エッチング深さ)から、ノズル4の移動速度を算出する演算部63と、その演算結果に基づきノズル4の移動速度を制御するとともにノズル4とワーク10の離間距離を一定に保つようにノズル移動装置61を制御する移動制御部64とを有している。
以上、表面加工装置1について説明した。
【0047】
次いで、表面加工装置1の動作について説明する。
[テスト工程]
まず、表面加工装置1を使用する前に、予備実験として、ワーク10と同じ材料から成る試料(テストピース)を用いて、ノズル4(送出口4a)から所定の一定流量のエッチング液を試料表面に送出した場合における単位時間当たりのエッチング深さ(エッチングされる深さ)を求めておく。また、このエッチング深さの測定をノズル4を一定の速度で移動させながら行う。そして、この測定を複数の速度で行うことにより、ノズル4の移動速度とエッチング深さの関係を求めることができる。ワーク10の被処理面101上の各点におけるエッチングすべき加工深さが決まれば、ここで求めたノズル4の移動速度と加工深さの関係から、ノズル4の移動速度を定めることができる。
【0048】
[エッチング前のワーク10の形状測定工程]
次に、ワーク10の被処理面101の加工前のプロファイルを測定する。この測定は、既存の表面形状測定装置や表面粗さ測定装置等を用いて行うことができる。得られた測定結果を制御部6の記憶部62に記憶させる。次に、演算部63は、記憶部62に記憶されたワーク10の被処理面101の加工前および目標とする加工後のワーク10の被処理面101のプロファイルとの差から、ワーク10の被処理面101上の各位置において加工すべきエッチング深さを算出する。演算部63は更に、前述のノズル4の移動速度とエッチング深さの関係から、被処理面101上の各位置におけるノズル4の移動速度を算出する。
【0049】
[エッチング工程]
温度制御部78を駆動しエッチング液を所定温度に加熱するとともに、送液ポンプ74を作動させて流量調節バルブ75を調節することにより、貯留タンク73からノズル4を通して、所定の一定流量でエッチング液を送出する。次いで、移動制御部64により制御されたノズル移動装置61によって、ノズル4を上述のように定めた速度で、ワーク10の被処理面101の全域を通過するように移動させる。それとともに、吸引ポンプ77を作動させてワーク10の被処理面101からエッチング液を貯留タンク73に吸引する。これにより、ワーク10の被処理面101の各点において、前述の算出された加工すべき深さにエッチングがなされ、所望のプロファイルが得られる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の表面加工装置の第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態にかかる表面加工装置が備えるノズルを示す斜視図、図8は、図7に示すノズルの平面図である。
以下、第2実施形態の表面加工装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0051】
本発明の第2実施形態にかかる表面加工装置では、ノズルの構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、図7および図8にて、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図7に示すように、本実施形態のノズル4Aは、その上面(被処理面101に対向する面)に開放する複数の案内溝45Aを有している。複数の案内溝45Aは、それぞれ、送出口4aと吸引口4bとを連通するように形成されている。また、複数の案内溝45Aは、それぞれ、ノズル4Aの移動方向に延在して形成されている。
このような案内溝45Aは、送出口4aから送出し被処理面101に供給されたエッチング液を、吸引口4bに案内(誘導)する案内溝である。このような案内溝45Aを形成することによって、被処理面101に供給されたエッチング液をスムーズに吸引口4bに導くことができる。
【0052】
具体的には、例えば、図8に示すように、送出口4aの領域Sbから送出され被処理面101に供給されたエッチング液を、案内溝45Aの作用によって、より確実に、吸引口4bの領域Sbに導き、吸引口4bの領域Sbから吸引することができる。送出口4aの領域Sa、Scから送出され被処理面101に供給されたエッチング液についても同様に、より確実に、吸引口4bの領域Sa、Scから吸引することができる。すなわち、案内溝45Aを形成することによって、送出口4aの領域Sbから送出されたエッチング液が、吸引口4bの領域Saや領域Scから吸引されたり、送出口4aの領域saから送出されたエッチング液が吸引口4bの領域Sbや領域Scで吸引されたりするのを効果的に抑制することができ、より確実に、被処理面101に供給されたエッチング液を、吸引口4bの各部位(領域Sa〜Sc)から偏りなく等しい流量で吸引することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、各案内溝45Aがノズル4Aの移動方向に延在して形成されているため、上記効果がより顕著なものとなる。
なお、各案内溝45Aの横断面形状は、特に限定されず、例えば、半円形、四角形、三角形であってもよい。また、各案内溝45Aの深さ(最大深さ)も、特に限定されず、例えば、0.01mm以上、1mm以下程度とすることができる。また、各案内溝45Aのピッチも、特に限定されず、例えば、0.01mm以上、1mm以下とすることができる。
以上のような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
<第3実施形態>
次に、本発明の表面加工装置の第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態にかかる表面加工装置の構成図、図10は、図9に示す表面加工装置が有するノズルの平面図、図11は、図9に示すノズルの移動ルートを示す平面図、図12は、図9に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0055】
以下、第3実施形態の表面加工装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態にかかる表面加工装置では、ノズルの構成が異なることと、循環経路を切り替える切り替え手段を有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、図9、図10、図11および図12にて、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0056】
図9に示すように、本実施形態の表面加工装置1Bが有するノズル4Bには、その上面(被処理面101に対向する面)に開放する2つの貫通孔461、462が形成されている。ノズル4Bでは、これら貫通孔461、462のいずれか一方からエッチング液を送出し、他方からエッチング液を吸引するように構成されている。貫通孔461、462のどちらからエッチング液を送出し、どちらからエッチング液を吸引するかは、ノズル4の移動方向に応じて選択される。
【0057】
図10に示すように、貫通孔461、462は、ノズル4の移動方向に並んで形成されている。貫通孔461、462の開口461a、462aは、それぞれ、ノズル4の移動方向に直交する方向に延在する長方形状をなしている。また、本実施形態では、開口461a、462aが同じ形状、大きさとなっている。このように、開口461a、462aを同じ形状、大きさとすることにより、エッチング液を開口461aから送出し開口462aから吸引する場合と、エッチング液を開口462aから送出し開口461aから吸引する場合とで、エッチング液の送出と吸引のバランスを等しくすることができる。そのため、上記いずれの場合であっても、同じ条件(エッチングレート)で被処理面101に対するエッチング処理を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態のノズル4Bでは、開口461a、462aの長手方向の長さは、同じ方向における被処理面101の幅よりも短い。そのため、例えば、図11に示すように、ノズル4Bを図11中横方向に往復移動させながら図11中縦方向に移動させることにより、被処理面101の全域にエッチング液を供給する。なお、前記「ノズル4Bの移動方向」とは、被処理面101上でのノズル4Bの移動方向を言い、図11中横方向を言う。
【0059】
このようなノズル4Bでは、ノズル4Bが図11に示す移動ルートRの左から右へ向けて移動する(図11中R1で示す状態の)ときは、ノズル4Bの移動方向前方側に位置する開口461aからエッチング液を送出し(すなわち開口461aを送出口とし)、移動方向後方側に位置する開口462aからエッチング液を吸引する(すなわち開口462aを吸引口とする)。反対に、右から左へ向けて移動する(図11中R2で示す状態の)ときは、ノズル4Bの移動方向前方側に位置する開口462aからエッチング液を送出し、移動方向後方側に位置する開口461aからエッチング液を吸引する。
【0060】
これにより、図11中の右から左、左から右のいずれの移動方向であっても、被処理面101の任意の領域をエッチング液の送出口に遅れて吸引口が通過するため、送出口から送出され被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bから偏りなく均一に吸引することができる。
【0061】
開口461aからエッチング液を送出し、開口462aからエッチング液を吸引する状態と、開口462aからエッチング液を送出し、移動方向後方側に位置する461aからエッチング液を吸引する状態とを切り替える切り替え手段8は、特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
図12に示すように、切り替え手段8は、貫通孔461に接続された送出管71と貫通孔462に接続された回収管72とを連結する第1の連結管81と、送出管71の第1の連結管81との接続部R1よりも貫通孔461側と回収管72の第1の連結管81との接続部R3よりも貯留タンク73側とを連結する第2の連結管82と、第1の連結管81の途中に設けられたバルブ831と、第2の連結管82の途中に設けられたバルブ832と、送出管71の第1の連結管81との接続部R1と第2の連結管82との接続部R2の間に設けられたバルブ833と、回収管72の第1の連結管81との接続部R3と第2の連結管82との接続部R4の間に設けられたバルブ834と、これら4つのバルブ831〜834の開閉を制御するバルブ制御部(図示せず)を有している。
【0062】
このような切り替え手段8では、前記バルブ制御部によって、バルブ831、832を閉状態(エッチング液が通過できない状態)とし、バルブ833、834を開状態(エッチング液が通過できる状態)とすることにより、開口461aからエッチング液を送出し、開口462aからエッチング液を吸引する状態とすることができる。逆に、バルブ831、832を開状態とし、バルブ833、834を閉状態とすることにより、開口462aからエッチング液を送出し、開口461aからエッチング液を吸引する状態とすることができる。
以上のような第3実施形態によっても、第2実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
<第4実施形態>
次に、本発明の表面加工装置の第4実施形態について説明する。
図13は、第4実施形態にかかる表面加工装置の構成図、図14は、図13に示す表面加工装置が有するノズルの平面図、図15は、図13に示すノズルの移動ルートを示す平面図、図16は、図13に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。なお、以下の説明では、図13中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0064】
以下、第4実施形態の表面加工装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態にかかる表面加工装置では、ノズルの構成が異なることと、循環経路を切り替える切り替え手段を有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、図13、図14、図15および図16にて、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0065】
図13に示すように、本実施形態の表面加工装置1Cが有するノズル4Cには、3つの貫通孔471、472、473が形成されている。このようなノズル4Cでは、エッチング液が貫通孔472を通ってノズル4Cの上面から送出され、貫通孔471または貫通孔473を通って吸引される。すなわち、ノズル4Cでは、貫通孔472の上部開口がエッチング液の送出口4aを構成し、貫通孔471、773の上部開口がエッチング液の吸引口4b’、4b”を構成する。
【0066】
図14に示すように、送出口4aおよび吸引口4b’、4b”は、それぞれ、ノズル4Cの移動方向に直交する方向に延在する長方形状をなしており、互いにその長手方向の長さが等しい。また、送出口4aおよび吸引口4b’、4b”は、ノズル4Cの移動方向に並んで、かつ2つの吸引口4b’、4b”の間に送出口4aが位置するように形成されている。
【0067】
特に本実施形態では、2つの吸引口4b’、4b”が送出口4aに対して対称的に形成されている。また、本実施形態では、2つの吸引口4b’、4b”が互いに同じ形状、大きさをなしている。
ノズル4Cでは、送出口4aおよび吸引口4b’、4b”の長手方向の長さは、同じ方向における被処理面101の幅よりも短い。そのため、例えば、図15に示すように、ノズル4Cを図15中横方向に往復移動させながら図15中縦方向に移動させることにより、被処理面101の全域にエッチング液を供給する。なお、前記「ノズル4Cの移動方向」とは、被処理面101上でのノズル4Cの移動方向を言い、図15中横方向を言う。
【0068】
このようなノズル4Cでは、ノズル4Cが図15に示す移動ルートRの左から右へ向けて移動する(図15中R1で示す状態の)ときは、送出口4aからエッチング液を送出し、2つの吸引口4b’、4b”のうちのノズル4Cの移動方向後方側に位置する吸引口4b’からエッチング液を吸引する。反対に、右から左へ向けて移動する(図15中R2で示す状態の)ときは、送出口4aからエッチング液を送出し、2つの吸引口4b’、4b”のうちのノズル4Cの移動方向後方側に位置する吸引口4b”からエッチング液を吸引する。
【0069】
これにより、図15中の右から左、左から右のいずれの移動方向であっても、被処理面101の任意の領域をエッチング液の送出口4aに遅れて吸引口(吸引口4b’、4b”のうちの実際に吸引する側の吸引口)が通過するため、送出口4aから送出され被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口からスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0070】
特に、本実施形態では、前述したように、2つの吸引口4b’、4b”が送出口4aに対して対称的に形成されており、かつ、互いに同じ形状、大きさをなしているため、エッチング液を吸引口4b’から吸引する場合と、吸引口4b”から吸引する場合とで、エッチング液の単位時間当たりの吸引量を等しくすることができる。そのため、上記いずれの場合であっても、同じ条件(エッチングレート)で被処理面101に対するエッチング処理を行うことができる。
【0071】
送出口4aからエッチング液を送出し、吸引口4b’からエッチング液を吸引する状態と、送出口4aからエッチング液を送出し、吸引口4b”からエッチング液を吸引する状態とを切り替える切り替え手段8Cは、特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
図16に示すように、回収管72は、途中で2股に分岐し、その一方が吸引口4b’に接続され、他方が吸引口4b”に接続されている。そして、切り替え手段8Cは、回収管72の分岐部よりも吸引口4b’側に設けられたバルブ841Cと、回収管72の分岐部よりも吸引口4b”側に設けられたバルブ842Cと、これらバルブ841C、842Cの開閉を制御するバルブ制御部(図示せず)とを有している。
【0072】
このような切り替え手段8Cでは、前記バルブ制御部によって、バルブ842Cを閉状態(エッチング液が通過できない状態)とし、バルブ841Cを開状態(エッチング液が通過できる状態)とすることにより、吸引口4b’からエッチング液を吸引する状態とすることができる。逆に、バルブ842Cを開状態とし、バルブ841Cを閉状態とすることにより、吸引口4b”からエッチング液を吸引する状態とすることができる。
以上のような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0073】
<第5実施形態>
次に、本発明の表面加工装置の第5実施形態について説明する。
図17は、第5実施形態にかかる表面加工装置の構成図、図18は、図17に示す表面加工装置が有するノズルの斜視図、図19は、図17に示すノズルの移動ルートを示す平面図、図20は、図17に示す表面加工装置が有する切り替え手段を説明する図である。なお、以下の説明では、図17中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0074】
以下、第5実施形態の表面加工装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態にかかる表面加工装置では、ノズルの構成が異なることと、循環経路を切り替える切り替え手段を有すること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、図17、図18、図19および図20にて、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0075】
図17に示すように、本実施形態の表面加工装置1Dが有するノズル4Dには、3つの貫通孔481、482、483が形成されている。このようなノズル4Dでは、エッチング液が貫通孔481または貫通孔483を通ってノズル4Dの上面から送出され、貫通孔482を通って吸引される。すなわち、ノズル4Dでは、貫通孔481、483の上部開口がエッチング液の送出口4a’、4a”を構成し、貫通孔472の上部開口がエッチング液の吸引口4bを構成する。
【0076】
図18に示すように、送出口4a’、4a”および吸引口4bは、それぞれ、ノズル4Dの移動方向に直交する方向に延在する長方形状をなしており、互いにその長手方向の長さが等しい。また、送出口4a’、4a”および吸引口4bは、ノズル4Dの移動方向に並んで、かつ2つの送出口4a’、4a”の間に吸引口4bが位置するように形成されている。
【0077】
特に本実施形態では、2つの送出口4a’、4a”が吸引口4bに対して対称的に形成されている。また、本実施形態では、2つの送出口4a’、4a”が互いに同じ形状、大きさをなしている。
ノズル4Dでは、送出口4a’、4a”および吸引口4bの長手方向の長さは、同じ方向における被処理面101の幅よりも短い。そのため、例えば、図19に示すように、ノズル4Dを図19中横方向に往復移動させながら図19中縦方向に移動させることにより、被処理面101の全域にエッチング液を供給する。なお、前記「ノズル4Dの移動方向」とは、被処理面101上でのノズル4Dの移動方向を言い、図19中横方向を言う。
【0078】
このようなノズル4Dでは、ノズル4Dが図19に示す移動ルートRの左から右へ向けて移動する(図19中R1で示す状態の)ときは、2つの送出口4a’、4a”のうちのノズル4Dの移動方向前方側に位置する送出口4a”からエッチング液を送出し、吸引口4bからエッチング液を吸引する。反対に、右から左へ向けて移動する(図19中R2で示す状態の)ときは、2つの送出口4a’、4a”のうちのノズル4Dの移動方向前方側に位置する送出口4a’からエッチング液を送出し、吸引口4bからエッチング液を吸引する。
【0079】
これにより、図19中の右から左、左から右のいずれの移動方向であっても、被処理面101の任意の領域をエッチング液の送出口(送出口4a’、4a”のうちの実際に送出する側の送出口)に遅れて吸引口4bが通過するため、送出口から送出され被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口4bからスムーズに吸引することができる。そのため、より確実に、被処理面101に供給されたエッチング液を吸引口から偏りなく均一に吸引することができる。
【0080】
特に、本実施形態では、前述したように、2つの送出口4a’、4a”が吸引口4bに対して対称的に形成されており、かつ、互いに同じ形状、大きさをなしているため、エッチング液を送出口4a’から送出する場合と、送出口4a”から送出する場合とで、エッチング液の単位時間当たりの送出量を等しくすることができる。そのため、上記いずれの場合であっても、同じ条件(エッチングレート)で被処理面101に対するエッチング処理を行うことができる。
【0081】
送出口4a’からエッチング液を送出し、吸引口4bからエッチング液を吸引する状態と、送出口4a”からエッチング液を送出し、吸引口4bからエッチング液を吸引する状態とを切り替える切り替え手段8Dは、特に限定されないが、例えば、次のような構成とすることができる。
図20に示すように、送出管71は、途中で2股に分岐し、その一方が送出口4a’に接続され、他方が送出口4a”に接続されている。そして、切り替え手段8Dは、送出管71の分岐部よりも送出口4a’側に設けられたバルブ851Dと、送出管71の分岐部よりも送出口4a”側に設けられたバルブ852Dと、これらバルブ851D、852Dの開閉を制御するバルブ制御部(図示せず)とを有している。
【0082】
このような切り替え手段8Dでは、前記バルブ制御部によって、バルブ852Dを閉状態(エッチング液が通過できない状態)とし、バルブ851Dを開状態(エッチング液が通過できる状態)とすることにより、送出口4a’からエッチング液を送出する状態とすることができる。逆に、バルブ852Dを開状態とし、バルブ851Dを閉状態とすることにより、送出口4a”からエッチング液を送出する状態とすることができる。
以上のような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明の表面加工装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0083】
また、前述した実施形態では、送出口4a(4a’、4a”)および吸引口4b(4b’、4b”)が共に長方形状をなし、その長手方向の長さが互いに等しい構成について説明したが、送出口4aおよび吸引口4bの形状としては、送出口4aから送出され被処理面101に供給されたエッチング液を、吸引口4bから偏りなく均一に吸引することができれば特に限定されない。
【0084】
例えば、図21(a)に示すように、送出口4aおよび吸引口4bが共に長方形状をなしているが、その長さおよび幅がそれぞれ異なっていてもよい。この場合には、吸引口4bの長手方向の長さは、送出口4aの長手方向の長さの0.8倍以上、1.2倍以下程度であるのが好ましい。
また、図21(b)に示すように、送出口4aおよび吸引口4bが共に長方形状をなしているが、その延在方向が平行でない構成であってもよい。
【0085】
また、図21(C)に示すように、送出口4aおよび吸引口4bが共に、幅が長手方向の中央部から縁部に向けて漸増するような形状であってもよい。
また、図21(d)に示すように、送出口4aおよび吸引口4bが共に、幅が長手方向の中央部から縁部に向けて漸減するような形状であってもよい。
また、図22(e)に示すように、送出口4aが、幅が長手方向の中央部から縁部に向けて漸減するような形状であり、吸引口4bが、幅が長手方向の中央部から縁部に向けて漸増するような形状であってもよい。また、この逆であってもよい。
【0086】
また、図22(f)に示すように、吸引口4bが、送出口4aと長さが同じで、幅が異なる形状をなしていてもよい。ここで、幅が異なるとは、同図に示すように、長手方向に任意の異なる2点P1、P2を設定したとき、送出口4aの点P1に対応する位置での幅W1と点P2に対応する位置での幅W2の比(W1/W2)と、吸引口4bの点P1に対応する位置での幅W3と点P2に対応する位置での幅W4の比(W3/W4)が、等しいことを言う。
【符号の説明】
【0087】
1、1A、1B、1C、1D……表面加工装置 2……支持装置 21……チャッキングプレート 211……チャッキング面 22……固定手段 221……吸気孔 222……吸引ポンプ 3……エッチング液供給装置 4、4A、4B、4C、4D……ノズル 4a、4a’、4a”……送出口 4b、4b’、4b”……吸引口 41、42、461、462、471、472、473、481、482、483……貫通孔 45A……案内溝 461a、462a……開口 6……制御部 61……ノズル移動装置 62……記憶部 63……演算部 64……移動制御部 7……エッチング液循環装置 71……送出管 72……回収管 73……貯留タンク 74……送液ポンプ 75……流量調節バルブ 76……流量計 77……吸引ポンプ 78……温度制御部 781……温度検知素子 782……ヒーター 783……駆動制御部 79……循環経路 8、8C、8D……切り替え手段 81……第1の連結管 82……第2の連結管 831、832、833、834、841C、842C、851D、852D……バルブ 900……ノズル 910……送出口 911……中央部 912、913……端部 920……吸引口 921、922、923……領域 10……ワーク 101……被処理面 R1、R2、R3、R4……接続部 S1、Sa、Sb、Sc……領域 W1、W2、W3、W4、Wa、Wb……幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の被処理面にエッチング液を供給することにより前記被処理面を加工する表面加工装置であって、
前記被処理物を支持する支持台と、
前記支持台に対して移動可能に設けられ、前記支持台に支持された前記被処理物の前記被処理面に対して前記エッチング液を送出する送出口および前記送出口から送出された前記エッチング液を吸引する吸引口を有するノズルと、を有し、
前記ノズルは、前記送出口から送出され前記被処理面に供給された前記エッチング液を、前記吸引口から偏りなく均一に吸引することにより、前記エッチング液が供給された前記被処理面内の領域のエッチングレートを均一化することを特徴とする表面加工装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記エッチング液が供給された前記被処理面内の領域に前記エッチング液が均一に分布するように前記吸引口から前記エッチング液を吸引する請求項1に記載の表面加工装置。
【請求項3】
前記吸引口は、前記送出口の前記ノズルの移動方向後方側に形成されている請求項1または2に記載の表面加工装置。
【請求項4】
前記吸引口および前記送出口は、それぞれ、前記ノズルの移動方向に直交する方向に延在する長手形状をなし、長手方向の長さが互いに等しく、前記ノズルの移動方向に並んで形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の表面加工装置。
【請求項5】
前記吸引口および前記送出口は、互いに同じ形状をなしている請求項4に記載の表面加工装置。
【請求項6】
前記吸引口および前記送出口は、それぞれ、長方形状をなしている請求項4または5に記載の表面加工装置。
【請求項7】
前記ノズルは、前記エッチング液を前記送出口から前記吸引口へ案内する案内溝を有している請求項1ないし6のいずれかに記載の表面加工装置。
【請求項8】
前記案内溝は、前記ノズルの移動方向に延在している請求項7に記載の表面加工装置。
【請求項9】
前記ノズルは、第1の開口および第2の開口を有し、
前記ノズルの移動方向に応じて、前記第1の開口を前記送出口とし前記第2の開口を前記吸引口とする状態と、前記第1の開口を前記吸引口とし前記第2の開口を前記送出口とする状態とを切り替えることができる請求項1ないし8のいずれかに記載の表面加工装置。
【請求項10】
前記ノズルは、前記送出口を介して対向配置された1対の前記吸引口を有し、
前記1対の吸引口のうちの前記ノズルの移動方向後方側にある前記吸引口から前記エッチング液を吸引する請求項1ないし8のいずれかに記載の表面加工装置。
【請求項11】
前記1対の吸引口は、前記送出口に対して対称的に設けられており、かつ、互いに同じ形状および大きさをなしている請求項10に記載の表面加工装置。
【請求項12】
前記ノズルは、前記吸引口を介して対向配置された1対の前記送出口を有し、
前記1対の送出口のうちの前記ノズルの移動方向先方側にある前記送出口から前記エッチング液を送出する請求項1ないし8のいずれかに記載の表面加工装置。
【請求項13】
前記1対の送出口は、前記吸引口に対して対称的に設けられており、かつ、互いに同じ形状および大きさをなしている請求項12に記載の表面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−23094(P2012−23094A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157876(P2010−157876)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】