説明

表面実装型圧電振動デバイス

【課題】 スペースの無駄領域をなくしてパッケージの小型化に対応させながら圧電振動デバイスの電気的特性のばらつきや低下を抑制した表面実装型圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電振動板を収納する絶縁性のベース1と気密封止する蓋3とを有する表面実装型圧電振動デバイスであって、前記ベースは平面視矩形状の底板部と、当該底板部の一方に形成された側壁部と、前記底板部の他方に形成された開放部とを有しており、前記圧電振動板の両端部が前記開放部で金属ろう材4を介して封着され、当該金属ろう材が前記開放部を充填することで第1封着部141と第2封着部151を構成しており、前記蓋の底面側が前記第1の封着部と第2の封着部、および前記ベースの側壁部の上面で絶縁性封止材5を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該絶縁性封止材が第3封着部31を構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性のベース上に圧電振動板が実装された表面実装型圧電振動デバイスに関するものであって、特に表面実装型圧電振動デバイスのパッケージ構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動板などの圧電振動子を用いた圧電振動デバイスは、安定して精度の高い発振周波数を得ることができるため、電子機器などの基準周波数源として多種の分野で使用されている。表面実装型圧電振動デバイスでは、絶縁性のベースとして断面凹形状のセラミック多層基板を用い、当該ベースの収納部に水晶振動板を支持固定し、開口部を蓋により気密封止を行ったものが一般的な構成となっている(例えば、下記する特許文献1参照)。
【0003】
現在、電子機器の小型化がすすんでおり、この小型化にともない上記したような表面実装型圧電振動デバイスも小型化が進められている。ところが、上記した特許文献1に示すようなパッケージ構造では、周囲に側壁部を有する断面凹形状の絶縁性ベースを用いているため、収納部を確保する必要性からも小型化に限界があった。
【0004】
そこで、特許出願人は特許文献2に示すように絶縁性ベースの一部の側壁部を取り除いて開口させるとともに、これらの開口部の全てを蓋により気密封止する新たなパッケージ構造を提案した。このパッケージ構造によれば絶縁性ベースより厚みの薄い蓋を用いることができるので、内部に収納される水晶振動板などの電子部品の搭載領域を拡大させることができる。結果としてパッケージのさらなる小型化にも対応できるものであった。
【特許文献1】特開2001−144201号公報
【特許文献2】特開2006−13699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に示すようなパッケージ構造であっても、さらなる小型や圧電振動デバイスの特性の向上に対応するには限界があった。すなわちベースと蓋を気密封止するための気密封止領域と、絶縁性ベースに対して圧電振動板を搭載して接合するための搭載領域とを別途構成する必要があるので、上記各領域を確保するだけでなくお互いの領域間での構造上の妨げや電気的な短絡などを避けるために、お互いの領域間に隙間領域を設ける必要があった。このためパッケージ構造におけるスペースの無駄領域が生じやすくなり小型化の妨げになっていた。
【0006】
またパッケージの小型化にともなって圧電振動板を搭載する領域も縮小してくるため、圧電振動板をより小型化する必要があった。圧電振動板を小型化することで、圧電振動板に形成される励振電極や引出電極も小型化されるので、電極を形成する際のずれの影響など精度上の影響により圧電振動デバイスの電気的特性のばらつきが生じやすくなる。また圧電振動板を小型化することで、励振電極の面積も小さくなるので、直列共振抵抗値が高くなり圧電振動デバイスの電気的特性の低下につながるものであった。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、スペースの無駄領域をなくしてパッケージの小型化に対応させながら圧電振動デバイスの電気的特性のばらつきや低下を抑制した表面実装型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、圧電振動板を収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電振動デバイスであって、前記ベースは平面視矩形状の底板部と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部とを有しており、前記圧電振動板は平面視矩形状で、当該圧電振動板の両端部が前記ベースの両端部の開放部で金属ろう材を介して前記ベースの開放部に対して封着され、当該金属ろう材が前記開放部を充填することで第1封着部と第2封着部を構成しており、前記蓋は平面視矩形状で、当該蓋の底面側が前記第1の封着部と第2の封着部、および前記ベースの側壁部の上面で絶縁性封止材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該絶縁性封止材が第3封着部を構成してなることを特徴とする。
【0009】
上記構成により、前記ベースの他方の両端部の開放部まで圧電振動板の搭載領域を拡大することができる。特に圧電振動板の両端部が金属ろう材を介して前記ベースの他方の両端部の開放部に対して封着された第1封着部と第2封着部を構成しているので、ベースの他方の両端部の開放部を、気密封止領域と圧電振動板を搭載して接合するための搭載領域としてそれぞれ同一領域に構成することができる。このため前記気密封止領域と前記搭載領域のそれぞれを確保するためのスペースの無駄領域が一切なくなり、ベースの小型化と圧電振動板の搭載領域である収納スペースの拡大を同時に実現できるだけでなく、より大きな圧電振動板の搭載も可能なベースが得られる。
【0010】
またこのようなベースの上面部からは、前記蓋を封止する前であれば圧電振動板の上面部分に対して質量を増減する加工を施すことができるので周波数調整が容易に行える。ベースの上面部に対しては、前記金属ろう材により構成された第1封着部と第2封着部の上面、および前記ベースの側壁部の上面のそれぞれが前記蓋の底面側で絶縁性封止材を介して一体的に封着された第3封着部を構成しているので、前記金属ろう材で封着されない圧電振動板の中央部分のみが気密封止され、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【0011】
さらに、表面実装型圧電振動デバイスのパッケージのさらなる低背化と小型化を実現しながらも、前記ベースの他方の両端部の開放部まで圧電振動板の面積を拡大することで、従来のパッケージ構造に比べてより大きな圧電振動板を用いることができる。このため、前記圧電振動板の電極の形成もずれなくより精度よく行えるので、圧電振動デバイスの電気的諸特性のばらつきも生じにくく、また圧電振動板の励振電極の面積も大きく形成することができるので、直列共振抵抗値の改善が行える電気的特性の優れた圧電振動デバイスが得られる。
【0012】
また、上述の特許請求項1の構成に加えてより具体的には、前記ベースの開放部である底板部と側壁部の両端部のうち各端部内面にはお互いに独立した一連の金属膜が形成され、前記圧電振動板の両端部に励振電極の一部が引出された接続用端部電極が形成されるとともに、前記ベースの両端部の開放部で共通の金属ろう材を介して前記ベースの開放部に対して封着された第1封着部と第2封着部を構成してなり、絶縁性封止材を介して前記ベースの上面部に対して封着された第3封着部を構成するとよい。
【0013】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、圧電振動板の両端部の接続用端部電極が金属ろう材を介して前記ベースの開放部である底板部と側壁部の両端部内面に形成された一連の金属膜と接合されることで、前記ベースの他方の両端部の開放部に対して封着された気密封止領域である第1封着部と第2封着部を構成しながら、圧電振動板の両端部を接合するための搭載領域をすることができる。
【0014】
またベースの上面部に対しては、前記金属ろう材により構成された第1封着部と第2封着部の上面、および前記ベースの側壁部の上面のそれぞれが前記蓋の底面側で絶縁性封止材を介して一体的に封着された第3封着部を構成しているので、前記ベース両端部の金属ろう材がお互いに短絡することなく、お互いに電気的機械的に独立した状態でベースに対して接合された状態で、圧電振動板の中央部分のみを気密封止することができる。
【0015】
以上により圧電振動板の各励振電極をベース両端部でお互いに独立した状態で導出することができ、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【0016】
また、本発明の特許請求項2に示すように、圧電振動板を収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電振動デバイスであって、前記ベースは平面視矩形状の底板部と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部と、当該側壁部の一部の上端部のみを接続した側壁連結部と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部とを有しており、前記圧電振動板は平面視矩形状であり、当該圧電振動板が前記側壁連結部の下の空間に配置された状態で、前記圧電振動板の両端部が前記ベースの両端部の開放部で金属ろう材を介して前記ベースの開放部に対して封着され、当該金属ろう材が前記開放部を充填することで第1封着部と第2封着部を構成しており、前記蓋は平面視矩形状で、蓋の底面側が前記第1の封着部の上面、前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面で金属ろう材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該金属ろう材が第3封着部を構成するとともに、蓋の底面側が前記第2の封着部の上面、前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面で金属ろう材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該金属ろう材が第4封着部を構成してなることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、前記ベースの他方の両端部の開放部まで圧電振動板の搭載領域を拡大することができる。特に圧電振動板の両端部が金属ろう材を介して前記ベースの他方の両端部の開放部に対して封着された第1封着部と第2封着部を構成しているので、ベースの他方の両端部の開放部を、気密封止領域と圧電振動板を搭載して接合するための搭載領域としてそれぞれ同一領域に構成することができる。このため前記気密封止領域と前記搭載領域のそれぞれを確保するためのスペースの無駄領域が一切なくなり、ベースの小型化と圧電振動板の搭載領域である収納スペースの拡大を同時に実現できるだけでなく、より大きな圧電振動板の搭載も可能なベースが得られる。
【0018】
またこのようなベースの上面部からは、前記蓋を封止する前であれば圧電振動板の上面部分に対して質量を増減する加工を施すことができるので周波数調整が容易に行える。ベースの上面部に対しては、前記金属ろう材により構成された第1封着部と、前記ベースの側壁部の一部上面、および前記側壁連結部の一部上面のそれぞれが前記蓋の底面側で金属ろう材を介して一体的に封着された第3封着部を構成し、前記金属ろう材により構成された第2封着部の上面、前記ベースの側壁部の一部上面、および前記側壁連結部の一部上面のそれぞれが前記蓋の底面側で金属ろう材を介して一体的に封着された第4封着部を構成しているので、前記第1封着部と第2封着部で封着されない圧電振動板の中央部分のみが気密封止され、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【0019】
加えて前記側壁連結部が存在することで、ベースの強度向上が実現できるだけでなく、第1封着部と第3封着部からなる一方の封着領域と、第2封着部と第4封着部からなる他方の封着領域とがお互いに独立して構成することができ、お互いの封着領域間で各封止材が混ざりあったり、お互いの封止材同士で影響することが避けられる物理的な隙間領域を確保することができる。
【0020】
さらに、表面実装型圧電振動デバイスのパッケージのさらなる低背化と小型化を実現しながらも、前記ベースの他方の両端部の開放部まで圧電振動板の面積を拡大することで、従来のパッケージ構造に比べてより大きな圧電振動板を用いることができる。このため、前記圧電振動板の電極の形成もずれなくより精度よく行えるので、圧電振動デバイスの電気的諸特性のばらつきも生じにくく、また圧電振動板の励振電極の面積も大きく形成することができるので、直列共振抵抗値の改善が行える電気的特性の優れた圧電振動デバイスが得られる。
【0021】
また、上述の特許請求項2の構成に加えてより具体的には、前記蓋が金属材料の第1蓋と第2蓋を有し、前記ベースの開放部である底板部と側壁部の両端部のうち各端部内面から前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面にかけて周状に延出された第1と第2の金属膜が形成されるとともに、これら両端部の第1と第2の金属膜は各端部ごとに独立した状態で形成され、前記圧電振動板の両端部に励振電極の一部が引出された接続用端部電極が形成され、前記第1の金属膜全体に広がるとともに共通の金属ろう材を用いて、前記第1封着部を構成しながら前記第1蓋を前記ベースの上面部に対して封着された第3封着部を同時に構成し、前記第2の金属膜全体に広がるとともに共通の金属ろう材を用いて、前記第2封着部を構成しながら前記第2蓋を前記ベースの上面部に対して封着された第4封着部を同時に構成するとよい。さらに第1の金属膜と第2の金属膜とで共通の金属ろう材を用いることがより望ましい。
【0022】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、圧電振動板の一端部の接続用端部電極が金属ろう材を介して前記ベースの開放部である底板部と側壁部の両端部のうち一端部内面から前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面にかけて周状に延出された第1の金属膜の一部と接合されることで、前記ベースの一端部の開放部に対して封着された気密封止領域である第1封着部を構成しながら、同じ金属ろう材により前記第1蓋とも前記ベースの上面部の前記第1の金属膜の他の部分と封着された第3封着部を同時に構成し、圧電振動板の一端部を接合するための搭載領域を確保することができる。圧電振動板の他端部の接続用端部電極が金属ろう材を介して前記ベースの開放部である底板部と側壁部の両端部のうち他端部内面から前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面にかけて周状に延出された第2の金属膜の一部と接合されることで、前記ベースの他端部の開放部に対して封着された気密封止領域である第2封着部を構成しながら、同じ金属ろう材により前記第2蓋とも前記ベースの上面部の前記第2の金属膜の他の部分と封着された第4封着部を同時に構成し、圧電振動板の他端部を接合するための搭載領域を確保することができる。
【0023】
またベース両端部に形成された第1の金属膜と第2の金属膜は各端部で独立した状態で形成されているので、前記ベース両端部の金属ろう材がお互いに短絡することなく、お互いに電気的機械的に独立した状態でベースに対して接合された状態で、圧電振動板の中央部分のみを気密封止することができる。前記蓋を金属材料とすることで、金属ろう材に対する接合性が高く、より厚みの薄い蓋材が得られる。加えて前記蓋を第1蓋と第2蓋の2つに分けることで、前記第1の金属膜と第2の金属膜にそれぞれ対応させて気密封止することができるので、お互いの蓋の間で金属ろう材を介して短絡することなく、お互いに電気的に独立した状態でベースに対して接合することができる。
【0024】
以上により共通する1つの金属ろう材のみで構成し、圧電振動板の各励振電極をベース両端部でお互いに独立した状態で導出することができ、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明は、スペースの無駄領域をなくしてパッケージの小型化に対応させながら圧電振動デバイスの電気的特性のばらつきや低下を抑制した表面実装型圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明による第1の実施形態について表面実装型水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図1は第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図であり、図2は図1を組み立てた状態の斜視図であり、図3は図2のA−A線に沿った断面図であり、図4は図2のB−B線に沿った断面図である。表面実装型水晶振動子は、平面矩形状の絶縁性ベース1と、当該絶縁性ベースに搭載される平面視矩形状の水晶振動板(圧電振動板)2と、前記絶縁性ベースに封着される蓋3とからなる。
【0027】
絶縁性ベース1は、例えばアルミナセラミック材料からなり、矩形状の底板部11と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部12,13と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部14,15とを有している。前記ベースの開放部14,15である底板部11と側壁部12,13の両端部のうち各端部内面にはお互いに独立した一連の金属膜16,17が形成されている。
【0028】
つまり、絶縁性ベース1は断面略コ字形状であり、前記底板部11の上面で前記側壁部12と側壁部13の間の内部空間に収納部18を有する形態となっている。当該収納部18に面した前記絶縁性ベース1の底板部11の両端部の上面には、前記金属膜16,17の一部をなすとともに後述する水晶振動板2が搭載される搭載電極パッド161,171が形成されている。なお、搭載電極パッド161,171は導電ビアVにより、絶縁性ベース1の底面に形成された端子電極パッド160,170へとそれぞれ電気的に延出されている。
【0029】
また前記絶縁性ベース1の両端部で、前記搭載電極パッド161,171に接続されて前記金属膜16,17の一部をなすとともに、前記収納部18に面し、側壁部12,13の内部上端部にまでおよんだ状態で封止電極パッド162,163,172,173が形成されている。
【0030】
なお、これらの搭載電極パッド161,171と、封止電極パッド162,163,172,173を構成する金属膜16,17は、例えばタングステン、モリブデンなどのメタライズ層を絶縁性ベースと一体的に焼成して形成し、当該メタライズ層の上部にニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成して構成されている。また、前記絶縁性ベース1として、アルミナセラミックに限らず、ガラスセラミック、ガラス、水晶、シリコン基板などのものを選択してもよい。
【0031】
前記搭載電極パッド161,171の上部には圧電振動板である例えばATカットの水晶振動板2が搭載されている。水晶振動板2の中央部には一対の励振電極20,21(21は図示せず)が対向して形成され、水晶振動板の両端部に前記励振電極の一部が引出された接続用端部電極22,23が形成されている。接続用端部電極22,23は水晶振動板の両端面24,25(25は図示せず)だけでなく、上面26、底面27、両側面28,29の全周にも形成することが、後述する金属ろう材4の回り込みを促進して当該金属ろう材4による封着部を構成するうえでより好ましい形態となる。これらの各電極は、例えば水晶振動板2に接してクロム、金の順で電極が形成されている。
【0032】
このように構成された絶縁性ベース1の収納部18の搭載電極パッド161,171に対して、水晶振動板2の接続用電極23,24に金属ろう材4が介在した状態で搭載される。金属ろう材4としては、金シリカ、金ゲルマニウム、金錫、銀錫、銅錫などの低融点金属ろう材ペレットを用いており、水晶振動板の接続用電極22,23の上下面に対して金属ろう材4が介在するようにペレットを配置している。この時接続用電極23,24に対して金属ろう材4のペレットを溶接などにより予め固定しておくと搭載した際のすれ影響がなくなるのでより好ましい。なお金属ろう材4としてはペレット状のものに限らず、ペースト状のものを用いてもよく、他の金属ろう材を選択することも可能である。ただし金属ろう材4は後述する絶縁性封止材5を硬化させる際に再び高温環境におかれることになるので、後述する絶縁性封止材5の硬化温度よりも溶融温度の高い金属ろう材4を用いる必要がある。
【0033】
上述のように絶縁性ベース1の収納部18に水晶振動板2が搭載された状態で、前記金属ろう材4を加熱溶融することで、前記搭載電極パッド161,171と、封止電極パッド162,163,172,173に対して金属ろう材4が拡散していくことで、開放部14,15を塞ぐ第1封着部141と第2封着部151を構成しながら、絶縁性ベース1に対して水晶振動板2の両端部が保持固定される。
【0034】
絶縁性ベース1を気密封止する蓋3は平面視矩形状であり、例えばアルミナセラミック材料やガラス板、水晶板、シリコン基板などの絶縁性材料により構成されている。そしてこの蓋3の底面側が前記第1の封着部141と第2の封着部151、および前記ベースの前記側壁部12と側壁部13の上面に対して、絶縁性封止材5が介在した状態で搭載され、加熱溶融することで、前記絶縁性ベース1の上面部に対して封着された第3封着部31を構成することができ、前記絶縁性ベース1と蓋3、および前記第1、第2、第3の封着部とともに水晶振動板の中央部分を気密封止することができる。以上により本発明の第1の実施形態による表面実装型水晶振動子の完成となる。なお、絶縁性封止材5としては例えば上記低融点金属ろう材の溶融温度よりも硬化温度の低いガラス材を用いており、前記蓋の底面側に印刷形成されている。なお絶縁性封止材5としては樹脂などのガラス以外の材料を選択することも可能である。
【0035】
上記実施形態により、前記絶縁性ベースの開放部14,15まで水晶振動板2の搭載領域を拡大することができるので、より大きな水晶振動板2の搭載も可能な絶縁性ベース1が得られる。このため圧電振動デバイスの電気的諸特性のばらつきも生じにくく、直列共振抵抗値の改善が行える電気的特性の優れた圧電振動デバイスが得られる。
【0036】
また、絶縁性ベースの開放部14,15を、気密封止領域と水晶振動板2を搭載して接合するための搭載領域としてそれぞれ同一領域に構成することができるため、スペースの無駄領域が一切なくなり、絶縁性ベース1の小型化と収納部18の拡大を同時に実現できる。またこのような絶縁性ベース1の上面部に対しては、前記金属ろう材4により構成された第1封着部141と第2封着部151の上面、および前記絶縁性ベースの側壁部12,13の上面のそれぞれが前記蓋3の底面側で絶縁性封止材5を介して一体的に封着された第3封着部31を構成しているので、前記絶縁性ベース1の両端部の金属ろう材4がお互いに短絡することなく、お互いに電気的機械的に独立した状態で絶縁性ベース1に対して接合された状態で、水晶振動板2の中央部分のみを気密封止することができる。以上により水晶振動板の各励振電極を絶縁性ベース1の両端部でお互いに独立した状態で導出することができ、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【0037】
次に、本発明による第2の実施形態について表面実装型水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図5は第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図であり、図6は図5を組み立てた状態の斜視図であり、図7は図6のC−C線に沿った断面図であり、図8は図6のD−D線に沿った断面図である。なお、前記第1の実施形態と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛している。表面実装型水晶振動子は、平面矩形状の絶縁性ベース1と、当該絶縁性ベースに搭載される平面視矩形状の水晶振動板(圧電振動板)2と、前記絶縁性ベースに封着される蓋3とからなる。
【0038】
絶縁性ベース6は、例えばガラス材料からなり、矩形状の底板部61と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部62,63と、当該側壁部の一部の上端部のみを接続した側壁連結部623と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部64,65とを有しており、エッチングなどの手法により構成されている。前記絶縁性ベースの開放部64,65である底板部61と側壁部62,63の両端部のうち各端部内面から前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面にかけて周状に延出された第1の金属膜66と第2の金属膜67が形成されている。これら両端部の第1の金属膜66と第2の金属膜67は各端部で独立した状態で形成されている。
【0039】
つまり、絶縁性ベース6は断面略コ字形状であり、前記底板部61の上面で前記側壁部62と側壁部63の間で、前記側壁連結部623の下の内部空間に収納部68を有する形態となっている。当該収納部68に面した前記絶縁性ベース6の底板部61の両端部の上面には、前記第1の金属膜66の一部をなすとともに後述する水晶振動板2が搭載される搭載電極パッド661が形成され、前記第2の金属膜67の一部をなすとともに後述する水晶振動板2が搭載される搭載電極パッド671が形成されている。なお、搭載電極パッド661,671は導電ビアVにより、絶縁性ベース6の底面に形成された端子電極パッド660,670へとそれぞれ電気的に延出されている。
【0040】
また前記絶縁性ベース6の両端部で、前記搭載電極パッド661,671に接続されて前記金属膜66,67の一部をなすとともに、前記収納部68に面し、側壁部62,63の内部上端部にまでおよんだ状態で側面封止電極パッド662,663,672,673が形成され、さらにこれらの側面封止電極パッドに接続されて前記金属膜66,67の一部をなすとともに、前記絶縁性ベースの側壁部62,63の一部上面と前記側壁連結部623の一部上面にかけて周状に延出された状態で上面封止電極パッド664,665,666,674,675,676とが形成されている。このうち上面封止電極パッド666と676については、絶縁性ベースの素地部分が露出した隙間領域を間に介在させながら同じ側壁連結部623の上面に形成されており、第1の金属膜66と第2の金属膜67はお互いに各端部で独立した状態で形成することができる。このため、後述する金属ろう材4がお互いに短絡することがない。
【0041】
なお、これらの搭載電極パッド661,671と、側面封止電極パッド662,663,672,673と、上面封止電極パッド664,665,666,674,675,676を構成する金属膜66,67は、例えば無電解メッキや蒸着などの手法によりクロムやニッケルの下地メッキの上部に金メッキを形成して構成されている。また、前記絶縁性ベース6として、ガラスに限らず、水晶、シリコン基板、アルミナセラミック、ガラスセラミックなどのものを選択してもよい。
【0042】
前記搭載電極パッド661,671の上部には上述の第1の実施形態と同様に圧電振動板である例えばATカットの水晶振動板2が搭載されている。絶縁性ベース6を気密封止する蓋は第1蓋7と第2蓋8の2つに分けるとともに、それぞれ平面視矩形状であり、例えばコバールや42アロイなどを母材とする金属材料の蓋で構成されている。
【0043】
このように構成された絶縁性ベース6の収納部68の搭載電極パッド661,671に対して、水晶振動板2の接続用電極22,23に金属ろう材4が介在した状態で搭載される。また、第1蓋7の底面側が前記水晶振動板の接続電極23に対して金属ろう材4が介在した状態で、前記絶縁性ベースの側壁部62,63の一部上面と前記側壁連結部623の一部上面に形成された上面封止電極パッド664,665,666の上面に搭載される。第2蓋8の底面側が前記水晶振動板の接続電極24に対して金属ろう材4が介在した状態で、前記絶縁性ベースの側壁部62,63の一部上面と前記側壁連結部623の一部上面に形成された上面封止電極パッド674,675,676の上面に搭載される。
【0044】
以上のような状態で前記金属ろう材4を加熱溶融することで、前記搭載電極パッド661,671と、側面封止電極パッド662,663,672,673と、上面封止電極パッド664,665,666,674,675,676に対して金属ろう材4が拡散していく。そして開放部64,65を塞ぐ第1封着部641と第2封着部651を構成しながら、絶縁性ベース6に対して水晶振動板2の両端部が保持固定され、前記絶縁性ベース6の上面部に対して第1蓋7の封着された第3封着部31と、前記絶縁性ベース6の上面部に対して第2蓋8の封着された第4封着部41とを構成することができ、前記絶縁性ベース6と第1蓋7と第2蓋8、および前記第1、第2、第3、第4の封着部とともに水晶振動板の中央部分を気密封止することができる。以上により本発明の第2の実施形態による表面実装型水晶振動子の完成となる。なお、前記蓋をアルミナセラミック材料やガラス板、水晶板、シリコン基板などの絶縁性材料により構成することも可能である。このような絶縁材料で蓋を構成した場合、蓋の底面側に第1の金属膜66と第2の金属膜67に対応してお互いに各端部でに独立した金属膜を構成することで、蓋を2つに分けることなく1つの蓋で構成することも可能となる。
【0045】
上記実施形態により、前記絶縁性ベースの開放部64,65まで水晶振動板2の搭載領域を拡大することができるので、より大きな水晶振動板2の搭載も可能な絶縁性ベース1が得られる。このため圧電振動デバイスの電気的諸特性のばらつきも生じにくく、直列共振抵抗値の改善が行える電気的特性の優れた圧電振動デバイスが得られる。
【0046】
また、絶縁性ベースの開放部64,65を、気密封止領域と水晶振動板2を搭載して接合するための搭載領域としてそれぞれ同一領域に構成することができるため、スペースの無駄領域が一切なくなり、絶縁性ベース1の小型化と収納部18の拡大を同時に実現できる。水晶振動板2の一端部の接続用端部電極22が金属ろう材4を介して前記絶縁性ベースの開放部64である底板部61と側壁部62,63の両端部のうち一端部内面から前記絶縁性ベースの側壁部62,63と前記側壁連結部623の一部上面にかけて周状に延出された第1の金属膜66の一部と接合されることで、前記絶縁性ベースの一端部の開放部64に対して封着された気密封止領域である第1封着部641を構成しながら、同じ金属ろう材4により前記第1蓋7とも前記絶縁性ベースの上面部の前記第1の金属膜66の他の部分と封着された第3封着部31を同時に構成し、水晶振動板2の一端部を接合するための搭載領域を確保することができる。水晶振動板2の他端部の接続用端部電極23が金属ろう材4を介して前記絶縁性ベースの開放部65である底板部61と側壁部62,63の両端部のうち他端部内面から前記絶縁性ベースの側壁部62,63と前記側壁連結部623の一部上面にかけて周状に延出された第2の金属膜67の一部と接合されることで、前記絶縁性ベースの他端部の開放部65に対して封着された気密封止領域である第2封着部651を構成しながら、同じ金属ろう材4により前記第2蓋8とも前記絶縁性ベースの上面部の前記第2の金属膜67の他の部分と封着された第4封着部41を同時に構成し、水晶振動板2の他端部を接合するための搭載領域を確保することができる。前記絶縁性ベース1の両端部の金属ろう材4がお互いに短絡することなく、お互いに電気的機械的に独立した状態で絶縁性ベース6に対して接合された状態で、水晶振動板2の中央部分のみを気密封止することができる。
【0047】
前記側壁連結部623が存在することで、絶縁性ベース1の強度向上が実現できるだけでなく、第1封着部641と第3封着部31からなる一方の封着領域(第1の金属膜66)と、第2封着部651と第4封着部41からなる他方の封着領域(第2の金属膜67)とがお互いに独立して構成することができ、お互いの封着領域間で各金属ろう材4が混ざりあったり、お互いの金属ろう材4同士で影響することが避けられる物理的な隙間領域を確保することができる。
【0048】
前記蓋7,8を金属材料とすることで、金属ろう材に対する接合性が高く、より厚みの薄い蓋材が得られる。加えて前記蓋を第1蓋7と第2蓋8の2つに分けることで、前記第1の金属膜66と第2の金属膜67にそれぞれ対応させて気密封止することができるので、お互いの蓋の間で金属ろう材を介して短絡することなく、お互いに電気的に独立した状態でベースに対して接合することができる。
【0049】
以上により共通する1つの金属ろう材4のみで構成し、水晶振動板2の各励振電極を絶縁性ベース6の両端部でお互いに独立した状態で導出することができ、低背化と小型化に対応した信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスが得られる。
【0050】
なお、上記第1、第2の実施形態では、圧電振動板としてATカット水晶振動板を例にしているが、他の形態の水晶振動板でもよい。圧電振動デバイスとして水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など、他の圧電振動デバイスの容器にも適用できる。
【0051】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均など範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図。
【図2】図1の斜視図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図。
【図6】図5の斜視図。
【図7】図6のC−C線に沿った断面図。
【図8】図6のD−D線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0053】
1,6 絶縁性ベース
2 水晶振動板(圧電振動板)
3,7,8 蓋
4 金属ろう材
5 絶縁性封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板を収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電振動デバイスであって、
前記ベースは平面視矩形状の底板部と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部とを有しており、
前記圧電振動板は平面視矩形状で、当該圧電振動板の両端部が前記ベースの両端部の開放部で金属ろう材を介して前記ベースの開放部に対して封着され、当該金属ろう材が前記開放部を充填することで第1封着部と第2封着部を構成しており、
前記蓋は平面視矩形状で、当該蓋の底面側が前記第1の封着部と第2の封着部、および前記ベースの側壁部の上面で絶縁性封止材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該絶縁性封止材が第3封着部を構成してなることを特徴とする表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項2】
圧電振動板を収納する絶縁性のベースと気密封止する蓋とを有する表面実装型圧電振動デバイスであって、
前記ベースは平面視矩形状の底板部と、当該底板部の一方の平行辺上面側に形成された側壁部と、当該側壁部の一部の上端部のみを接続した側壁連結部と、前記底板部の他方の平行辺上面側に形成された開放部とを有しており、
前記圧電振動板は平面視矩形状であり、当該圧電振動板が前記側壁連結部の下の空間に配置された状態で、前記圧電振動板の両端部が前記ベースの両端部の開放部で金属ろう材を介して前記ベースの開放部に対して封着され、当該金属ろう材が前記開放部を充填することで第1封着部と第2封着部を構成しており、
前記蓋は平面視矩形状で、蓋の底面側が前記第1の封着部の上面、前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面で金属ろう材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該金属ろう材が第3封着部を構成するとともに、蓋の底面側が前記第2の封着部の上面、前記ベースの側壁部と前記側壁連結部の一部上面で金属ろう材を介して前記ベースの上面部に対して封着され、当該金属ろう材が第4封着部を構成してなることを特徴とする表面実装型圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−239130(P2009−239130A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85149(P2008−85149)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】