説明

表面欠陥検査装置の検査結果表示方法及び表面欠陥検査装置

【課題】目視検査員が表面欠陥検査装置の検査情報を参照する場合に視点の移動を少なくする。
【解決手段】連続的に搬送される帯状の被検査体の移動量を検出する移動信号発生器105と、前記被検査体の表面に存在する欠陥を検査すると共に、移動信号発生器105からの信号に基づいて検出された欠陥の位置を検出する表面検査部画像処理部201と、前記被検査体の近傍或いは表面に欠陥がある旨の表示を行うモニタ121,画面投射器122と、前記画像処理部201により検出された欠陥の位置情報、及び前記移動量センサからの移動量情報に基づいて、前記表示部に対して前記欠陥がある旨の表示出力を指令する結果出力部207とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば鋼板やアルミニウム等の連続的に搬送される帯状の被検査体表面の検査を行う表面欠陥検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば鋼板やアルミニウム等の帯状体を製造するラインにおいて被検査体表面の欠陥を検出するために、表面欠陥装置が設置されている。
【0003】帯状の被検査体の表面検査装置としては、レーザー光などの点状光源を回転多面鏡などにより被検査体の搬送方向と垂直な方向(以下、幅方向と記す)に移動させながら被検査体の表面を走査し、その反射光をレンズなどで集光した後に光電子増倍管などの光電素子で受光して、得られた信号を各種の信号処理により疵の種別やその程度を判定する装置が知られている。
【0004】このような表面欠陥検査装置においては被検査体の移動量を計測するため移動信号発生器が取り付けられており、この信号を表面欠陥検査装置が取り込むことによって該表面欠陥検査装置の検査結果を被検査体の移動に伴いトラッキングするとともに目視検査場に設置されたCRTなどのモニタ装置などに検査結果などを表示するか、あるいは検査結果をグループ分けして表示盤(図示せず)にランプなどを使用して表示することが一般的であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のような方法で検査結果を表示した場合、検査員が被検査体を目視検査する場合と、検査装置のモニタ装置を監視する場合で検査員の視線が異なってしまう。したがって被検査体を目視検査しようとするとモニタ装置を見ることができず、逆にモニタ装置により表面欠陥検査装置の検査結果を確認しようとすると被検査体の目視検査が十分できなくなってしまう。
【0006】このような問題を解決する手段のひとつとして特開平5−142164号公報にはスリット光像により井桁状に囲むようにした欠陥の位置表示装置が提案されている。しかしこの技術では、疵の位置は表示されても具体的な検出情報がないため例えば所定の欠陥に対して自動マーキングなどのアクションがなされる場合、その疵が自動マーキングの対象として検出しているのかどうかなどの情報を参照する必要があり、結局上記と同様検査結果を表示したモニタを参照する必要が生じる。
【0007】本発明の目的は、目視検査員が表面欠陥検査装置の検査情報を参照する場合に視点の移動を少なくし得る表面欠陥検査装置の表示方法及び表面欠陥検査装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】[構成]本発明は、上記目的を達成するために以下のように構成されている。
【0009】(1)本発明(請求項1)の表面欠陥検査装置の検査結果表示方法は、連続的に搬送される帯状の被検査体表面の検査結果を表示する表面欠陥検査装置の検査結果表示方法において、前記被検査体表面の欠陥を検知するステップと、前記被検査体の近傍或いは近傍に欠陥がある旨の表示を行う表示部の近傍を、前記検知された欠陥が通過した際に、該表示部に欠陥がある旨を表示するステップとを含む。
【0010】本発明は、表面欠陥検査装置が欠陥等の特異点を検出する場合、該検査結果を被検査体上に表示する場合において、前記特異点が存在する幅位置には検査結果を表示しないことが好ましい。
【0011】(2)本発明(請求項2)の表面欠陥検査装置は、連続的に搬送される帯状の被検査体の移動量を検出する移動量センサと、前記被検査体の表面に存在する欠陥を検査すると共に、前記移動量センサからの移動量情報に基づいて検出された欠陥の位置を検出する表面検査部と、前記被検査体の近傍或いは表面に欠陥がある旨の表示を行う表示部と、前記表面検査部により検出された欠陥の位置情報、及び前記移動量センサからの移動量情報に基づいて、前記表示部に対して前記欠陥がある旨の表示出力を指令する結果出力部とを具備してなる。
【0012】[作用]本発明は、上記構成によって以下の作用・効果を有する。
【0013】被検査体の近傍或いは表面に欠陥がある旨の表示を行う表示部の近傍に、検出された欠陥が通過する際に、前記表示部に対して前記欠陥がある旨の表示をさせることによって、視点の移動を少なくすることができ、目視検査を行う場合に疵の見逃し等を防ぐことが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。
【0015】図1は、本発明の一実施形態に係わる鋼板などの薄板を製造する連続製造ラインの概略構成を示す図である。図1に示すように、上工程から送られてきた各コイル(被検査体)100が図示されない払出機により連続的に払い出される。コイル100は、連続的にラインを通過させるため溶接機などの図示されない接合機により接合される。その後洗浄、焼鈍、各種表面処理あるいは圧延処理などにより所定の性状を有する製品とするための各種プロセス処理部103を通過した後、表面欠陥検査装置110により表面の検査が行われる。検査後、切断機108により所定の長さあるいは重量毎に切断され、巻取機109によってコイル状に巻取られる。
【0016】なお表面欠陥検査装置110は、通常、ライン内で発生する異常を検査するためラインの最終工程近傍に設置される。表面欠陥検査装置においてはコイル100の移動量を計測するため移動信号発生器105が取り付けられている。演算器111は、移動信号発生器105からの信号に同期して表画像入力部112a及び裏画像入力部112bによりコイル100の表面を撮像し、得られた撮像データを演算器111で処理して検査を行う。そして、演算器111は、検査結果を移動信号に応じてモニタ出力信号を出力する。モニタ出力信号は、目視検査場120に設置されたモニタ121或いは画面投射器122に入力される。なお、モニタ121は、CRT等からなる。また、画面投射器122は、モニタ表示信号を取り込み、目視検査場120に設置されたスクリーン等に投射する。なお、画面投射器122は、被検査体上または被検査体に隣接する場所に表示できる構成とする。
【0017】次に、表面欠陥検査装置の構成及び動作について図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係わる表面欠陥検査装置の概略構成を示す構成図である。
【0018】画像入力部112(112a,112b)で得られた被検査体の表面像(アナログ信号)は、表面像から疵候補を選ぶ画像処理部201に対して出力される。画像入力部112は、CCDカメラやフォトマル(光電子増倍管)などの画像撮像手段と、これらの画像撮像手段に被検査体表面からの光を導くためのレンズ、ミラーや光学的な補正を行うためのフィルタなどから構成される。また、画像処理部201は、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器などの入力部、入力された信号に対して地合の影響を除くためのシェーディング補正など各種補正処理や空間フィルタなどの前処理部分、得られた画像から2値以上にクラス分けするn値化や所定の閾値により疵候補を抽出する。被検査体のエッジ部を含めて検査を行う場合、通常エッジ部は不均一面であるため、エッジ部をマスクしたり、処理を替えたりする必要がある。このため、被検査体のエッジ位置を検出する必要があるが、このエッジ位置検出もこの画像処理部201で行われる。画像処理部201は、抽出された疵候補の位置及び情報を記憶部202に格納する。
【0019】特徴量演算部203は、記憶部202に格納された疵候補のデータを読み出し、読み出した疵候補データから画像処理部で得られた疵候補の長さや幅、面積などを演算する。演算された各疵候補の長さや幅、面積などは、各疵候補のデータに追加して記憶部202に格納する。
【0020】疵種判定部204は、記憶部202に格納された疵候補データを読み出し、読み出された疵候補の長さや幅、面積情報から所定のアルゴリズムによって疵種別を判定する。疵程度判定部205は、記憶部202に格納された疵候補データを読み出し、読み出された特徴量演算部203で得られた特徴量や疵種判定部で得られた疵種別から疵の程度を判定する。疵種判定部204及び疵程度判定部205は、判定された疵種及び疵程度を疵の位置情報と共に出力部207に出力する。出力部207は、移動信号発生器105からの信号により、検査結果の位置情報を移動信号発生器105からの移動量情報に基づきトラッキングし、移動情報に基づいて検査結果が所定の位置に達したとき該検査結果あるいは疵検出画像などを含むモニタ出力信号をモニタ121及び画面投射器122に対して出力する。なお、モニタ121画面投射器122以外にも、検査場120付近に設けられたプリンタ、ランプ,ブザーなどのアナンシェータに出力しても良い。このような検査結果表示方法とすることによって、検査員に疵の接近がわかるため、検出された疵の目視判断を行う場合において見逃しの危険性を小さくすることができる。
【0021】図3は、図1に示した目視検査場の概略を説明する模式図である。図3において120は目視検査場、302は被検査体、303は操業情報表示盤、304は画面投射器により被検査体に表示された画面表示エリアの例、305は被検査体に隣接して設けられたスクリーンである。
【0022】図3に示すように、目視検査場120は、周期性の欠陥などを検査するため、ある程度の広さを有しているのが一般的である。また、目視検査場120には、操業中の被検査体の諸元を表示したりするために操業情報表示盤303が設置されることが多い。このような目視検査場120において、例えば被検査体302上に表示する場合は、目視検査場120に隣接する部分に画面投射器208からエリア304に表示する。あるいはスペース的に余裕のある目視検査場120においては被検査体に隣接する場所にスクリーン305を設け、スクリーン305に画面を表示することによって検査員の視線の移動をほとんど解消することができる。
【0023】また移動信号発生器105からの信号により、前記表面欠陥検査装置で検出した検査結果の位置情報を前記移動量センサからの移動量情報に基づきトラッキングし、この情報に基づき前記表面欠陥検査装置の検査結果が所定の位置に達したとき該検査結果あるいは疵検出画像などを被検査体表面あるいは被検査体に隣接する場所に表示するような検査結果表示方法とすることによって、検査員に疵の接近がわかるため、検出された疵の目視判断を行う場合において見逃しの危険性を小さくすることができる。
【0024】また前記表面欠陥検査装置の検査結果画面を被検査体上に表示する場合であって、検査対象が欠陥などの特異点である場合、特異点の存在する幅位置には検査結果を表示しないようにすることによって被検査体Lの特異点を確認することが容易となる。
【0025】なお本実施例においては被検査体に隣接する場所に画面を表示する場合において、画面の視認性を良くするためスクリーンを使用した場合で説明しているが、視認性に問題がなければスクリーン等を設けずそのまま表示しても良い。あるいは、検査員の安全のためガラス窓等がある場合には、ガラス面に画面を表示しても良い。検査結果をグループ分けして表示盤(図示せず)にランプなどを使用して表示しても良い。
【0026】なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本技術はここで紹介した構成の検査装置あるいはラインに限定されるものではなく、磁気や渦電流を用いた探傷装置など、検査情報を表示すべき全ての表面欠陥検査装置およびそれが設置された帯状体の製造ラインに適用できるものである。
【0027】その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、被検査体の近傍或いは表面に欠陥がある旨の表示を行う表示部の近傍に、検出された欠陥が通過する際に、前記表示部に対して前記欠陥がある旨の表示をさせることによって、視点の移動を少なくすることができ、目視検査を行う場合に疵の見逃し等を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わる鋼板などの薄板を製造する連続製造ラインの概略構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係わる表面欠陥検査装置の概略構成を示す構成図。
【図3】図1に示した目視検査場の概略を説明する模式図。
【符号の説明】
100…コイル
103…各種プロセス処理部
105…移動信号発生器
108…切断機
109…巻取機
110…表面欠陥検査装置
111…演算器
112…画像入力部
112a…表画像入力部
112b…裏画像入力部
120…目視検査場
121…モニタ
122…画面投射器
201…画像処理部
202…記憶部
203…特徴量演算部
204…疵種判定部
205…疵程度判定部
207…出力部
208…画面投射器
302…被検査体
303…操業情報表示盤
304…エリア
305…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】連続的に搬送される帯状の被検査体表面の検査結果を表示する表面欠陥検査装置の検査結果表示方法において、前記被検査体表面の欠陥を検知するステップと、前記被検査体の近傍或いは近傍に欠陥がある旨の表示を行う表示部の近傍を、前記検知された欠陥が通過した際に、該表示部に欠陥がある旨を表示するステップとを含むことを特徴とする表面欠陥検査装置の検査結果表示方法。
【請求項2】前記表面欠陥検査装置が欠陥等の特異点を検出する場合、該検査結果を被検査体上に表示する場合において、前記特異点が存在する被検査体の幅位置には検査結果を表示しないことを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検査装置の検査結果表示方法。
【請求項3】連続的に搬送される帯状の被検査体の移動量を検出する移動量センサと、前記被検査体の表面に存在する欠陥を検査すると共に、前記移動量センサからの移動量情報に基づいて検出された欠陥の位置を検出する表面検査部と、前記被検査体の近傍或いは表面に欠陥がある旨の表示を行う表示部と、前記表面検査部により検出された欠陥の位置情報、及び前記移動量センサからの移動量情報に基づいて、前記表示部に対して前記欠陥がある旨の表示出力を指令する結果出力部とを具備してなることを特徴とする表面欠陥検査装置。

【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開2002−90307(P2002−90307A)
【公開日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−284240(P2000−284240)
【出願日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】