説明

表面温度測定装置用測定窓

【課題】金型鋳造設備の稼動中に、前記金型鋳造設備の操作側の安全ドアの外から、安全かつ簡便に、金型キャビティ表面の表面温度を測定可能とする手段を提供する。
【解決手段】金型を使用する金型鋳造設備において、オペレーターのいる操作側の安全ドアに、金型を開いたときに、パーティングライン上でなく、固定金型側および可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度を、それぞれ測定可能な位置に配設された、少なくとも2箇所の表面温度測定装置用の測定窓であって、前記装置の先端部を前記測定窓に挿入するとき、前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けられるように、前記装置の先端部外寸より大きい寸法の開口部を有する表面温度測定装置用の測定窓を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金型を使用する金型鋳造設備において、金型を開いたときに、固定金型側および可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度を測定するために、オペレーターのいる操作側の安全ドアに配設する測定窓に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンや射出成形機等、金型を使用する金型鋳造設備において、金型温度は良品を成形するための重要な成形条件の一つであり、一般的には金型に埋設した熱電対によって金型内部温度を測定し、測定した温度データを金型の温度調節等に活用している。
しかしながら、熱電対での金型温度測定では、熱電対の金型への取付場所が制限される、あるいは検知部の金型への接触が不安定、また温度変化に対する応答に遅れがある等の理由で金型の温度測定が不正確になる問題があった。
この問題に対して、近年では熱源から一定距離離れてもその熱源の表面温度を測定できるサーモトレイサーカメラや赤外線ビジコンカメラ、あるいは放射温度計等の非接触型の表面温度測定装置で金型キャビティ表面温度や同表面温度分布を測定し、測定した温度データを金型の温度調節の目安にして良品成形の成形条件の一つとして活用する、あるいは金型の温度制御等に活用するケースが増加している。
【0003】
後述の特許文献1では、金型鋳造設備の金型片の合わせ面を赤外線ビジコンカメラにより撮影し、この画像を画像処理器により画像処理して前記金型片の合わせ面の温度分布パターンを検出し、この検出された測定温度パターンとあらかじめ設定された目標温度分布パターンと比較し、その比較結果に基づいて前記金型片を冷却・加熱する制御方法とその装置が開示されている。
【0004】
後述の特許文献2では、金型スプレー装置に放射温度計を配設し、前記放射温度計を用いて金型の成形面における所定部位の表面温度を測定しながら液体離型剤を固定型及び可動型の前記所定部位に噴霧し、測定された表面温度があらかじめ定めた所定温度に達した場合に所定部位に対する液体離型剤の噴霧を停止する、金型の温度制御方法とその装置が開示されている。
【0005】
後述の特許文献3では、金型スプレー・製品取出兼用ロボットもしくは金型スプレーロボット等に、非接触で金型の内面の表面温度を測定する二次元放射温度計を配設し、各回の鋳造成形において、成形材の注入前の金型の内面の表面温度と、金型を開いて製品を取り出した後の金型の内面の表面温度を測定し、これら鋳造成形の前後における金型の内面の表面温度が所定範囲に入っていることを確認しながら鋳造成形を行う成形方法とその装置が開示されている。
【0006】
後述の特許文献4では、金型の温度測定とは直接関係はないが、覗き窓が設けられたダイカストマシンの安全ドアで、前記覗き窓に配設された、カバー部と透明部材部が一体でスライドし、ダイカストマシンの内部の状況を確認するときのみ透明部材側を覗き窓の開口部へスライドさせ、それ以外のときはカバー側を覗き窓の開口部へスライドさせ、金型スプレー装置による離型剤や冷却水の飛散、あるいは金型合わせ面(パーティングライン)からのフラッシュ(金属溶湯の噴出し)による覗き窓の透明部材部への汚れの付着を防止する安全ドアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−126383号公報
【特許文献2】特開2007−222890号公報
【特許文献3】特開2007−061854号公報
【特許文献4】特開2005−205480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜特許文献3に記載の装置においては、金型内に埋設され金型のある特定部分の内部温度しか測定できない従来の熱電対と比較して、正確な金型キャビティ表面の表面温度もしくは同表面温度分布の測定が可能である。しかしながら、いずれの装置の場合も各回の鋳造成形の度に金型に対して離型剤や冷却水が噴霧され、これら流体もしくはその霧が飛散する悪環境、あるいは成形直後に高温雰囲気となる金型近傍の悪環境にさらされる安全ドア内や、安全ドア内に進入する装置・ロボットに、精密機器である赤外線ビジコンカメラや放射温度計等の表面温度測定装置を配設するため、これら表面温度測定装置を保護する防水・耐熱構造が必要である。
【0009】
また特許文献1〜特許文献3に記載の装置においては、金型を使用する金型鋳造設備1台につき、赤外線ビジコンカメラや放射温度計等の表面温度測定装置を1台もしくは2台、金型キャビティ表面の表面温度を測定できる位置や装置・ロボットに配設する必要がある。そのためには、これらの表面温度測定装置用の配管・配線等、あるいは前述した表面温度測定装置の防水・耐熱構造が必要となり、これら装置の金型鋳造設備への配設構造が複雑になる。よって当然のことながら、金型鋳造設備稼働中にこれらの表面温度測定装置を任意に脱着することは困難である。さらに金型鋳造設備の運転を停止し、これらの表面温度測定装置をその金型鋳造設備から取外し、再び別の金型鋳造設備に取付け、その金型鋳造設備の金型キャビティ表面の表面温度を測定するという作業を、複数の金型鋳造設備に対して繰り返し実施することは、多くの時間と手間が必要となり現実的でない。
【0010】
上記の理由により、特許文献1〜特許文献3に記載されている、あるいは類似した、いずれの表面温度測定装置も、複数の金型鋳造設備を保有する現場においては、それに準ずる複数の表面温度測定装置をそれぞれの金型鋳造設備へ配設する必要がある。そのためには前述したこれら表面温度測定装置の配管・配線や防水・耐熱構造が必要になり、これら装置の金型鋳造設備への配設構造が複雑になるため、これら設備に配設された複数の表面温度測定装置の保守および管理に多くの時間と手間が必要となるという問題がある。
【0011】
上記を鑑み、非接触型の表面温度測定装置で簡易的に金型キャビティ表面の表面温度を測定しようとすれば、特許文献4に記載の、覗き窓が設けられた安全ドアにおいて、前記安全ドアに設けられた覗き窓の透明部材部を開口部へスライドさせた状態で、その透明部材部からサーモトレイサーカメラ、赤外線ビジコンカメラ、あるいは放射温度計等の表面温度測定装置で、金型キャビティ表面の表面温度を測定する方法が考えられる。しかしながら、測定対象熱源である金型キャビティ表面と前記表面温度測定装置間に前記透明部材部が介在するため、正確な温度測定が困難だという問題がある。
さらに本覗き窓は、構造上ある程度の大きさが必要なため、中小型の金型鋳造設備では操作側の安全ドアに、前記覗き窓を、金型を開いた時に、パーティングライン上でなく、固定型、可動型の金型キャビティ表面の表面温度が、それぞれ測定可能な位置に、少なくとも2箇所配設することが困難だという問題がある。
【0012】
また、安全ドアの上方から非接触型の表面温度測定装置で、固定側、可動側それぞれの金型キャビティ表面の表面温度を測定する場合、一般的にはオペレーターのいる操作側に踏み台や脚立を設置し、前記安全ドアの上方から測定するか、反操作側から測定する手段が用いられている。しかしながら、操作側からの測定は、踏み台や脚立による足場が不安定であったり、パーティングラインからのフラッシュを受ける危険性があったり、また反操作側での測定は製品取出装置の可動域(進入禁止範囲)があり金型表面の温度測定に適した場所に接近できない、あるいは操作側からの測定と同様にパーティングラインからのフラッシュを受ける危険性がある等、安全上の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の発明は、金型を使用する金型鋳造設備において、オペレーターのいる操作側の安全ドアに、金型を開いたときに、パーティングライン(金型合わせ面)上でなく、固定金型側および可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度を、それぞれ測定可能な位置に配設された、少なくとも2箇所の表面温度測定装置用の測定窓であって、
前記装置の先端部を前記測定窓に挿入するとき、前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けられるように、前記装置の先端部外寸より大きい寸法の開口部を有する表面温度測定装置用の測定窓である。
【0014】
本測定窓の構造は、単純でかつ取付けに必要なスペースも少なくて済むため、中小型の金型鋳造設備に関しても、オペレーターのいる操作側の安全ドアに、パーティングライン上でない、固定金型側および可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度を、金型が開いたときにそれぞれ測定可能な位置に、少なくとも2箇所配設することが可能である。
また前記開口部の寸法は前記装置の先端部外寸より大きいため、前記装置の先端部を前記測定窓に挿入するとき、前記装置の先端部を容易に前記金型キャビティ表面に向けられる。
【0015】
第1の発明を主体とする第2の発明は、前記開口部全体を塞ぎ前記開口部の略中央から放射状に複数の切れ込みを周設した、柔軟性を有する素材のカバーが配設され、
前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けて前記測定窓に挿入したとき、前記装置の先端部と前記開口部間に生じる隙間を前記カバーで塞ぐことを特徴とした、表面温度測定装置用の測定窓である。
【0016】
前記柔軟性を有する素材のカバーは、前記開口部全体を塞いでいるが、前記開口部の略中央から放射状に周設された複数の切れ込みにより前記装置の先端部の前記測定窓への挿入を阻害せず、また前記装置の先端部を容易に前記金型キャビティ表面に向けることができ、さらに前記装置の先端部を前記測定窓に挿入したとき、前記装置の先端部と前記測定窓の前記開口部間に生じる隙間を塞ぎ、金型スプレー装置による離型剤や冷却水の前記安全ドア外への飛散を防止すると共に、前記装置の先端部の傷付きおよび破損を防止する効果を有する。
【0017】
第1乃至2の発明を主体とする第3の発明は、前記装置の先端部を前記測定窓に挿入していないとき、スライドして前記測定窓の前記開口部を塞ぐシャッターを有し、
前記シャッターを開き側にスライドさせて、前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けて前記測定窓に挿入するとき、前記シャッターと前記装置の先端部が当接する部分の前記シャッター側に緩衝材を配設した、表面温度測定装置用の測定窓である。
【0018】
前記シャッターにより、前記測定窓の前記開口部は前記装置の先端部を前記測定窓に挿入していない状態では前期測定窓の前記開口部をスライドして塞ぎ、前記安全ドア内側からの金型スプレー装置による離型剤や冷却水、およびパーティングラインからのフラッシュが前記安全ドア外へ飛散することを防止すると共に、前記安全ドア内側への異物の進入を防止する。
また前記シャッターに配設された緩衝材により、前記シャッターをスライドさせて前記装置の先端部を前記測定窓に挿脱するとき、前記装置の先端部の傷付きおよび破損を防止する効果を有する。
【0019】
第1乃至3の発明を主体とする第4の発明は、前記シャッターを開き側にスライドさせて前記装置の先端部を前記測定窓に挿入して、金型キャビティ表面の表面温度を測定中の状態では、前記シャッターの開き側へのスライドに連動するように配設されたロッド部が、前記シャッターの開き側へのスライドに連動して、前記安全ドアの支持部に穿設された穴に挿入され前記安全ドアが開かない機械的安全装置と、
前記シャッターが前記開口部を塞いでいる状態を電気的センサーにより検出し、前記シャッターが前記開口部を塞いでいる状態でしか前記安全ドアの開閉動作を許容しない電気的安全装置を有する、表面温度測定装置用の測定窓である。
【0020】
前記機械的安全装置は、前記安全ドアが自動・手動開閉式にかかわらず有効であり、前記電気的安全装置は、前記安全ドアが自動開閉式の場合に有効である。
【0021】
第1乃至4の発明を主体とする第5の発明は、前記シャッターを開き側にスライドさせて、前記金型キャビティ表面の表面温度を測定するときの前記装置の先端部の位置を越えて、前記安全ドアの奥側に前記装置の先端部以外の異物等を挿入した場合、その異物等を電気的センサーにより検出して前記安全ドアを開く動作および前記金型鋳造設備の金型開閉動作を禁止する電気的安全装置を有する、表面温度測定装置用の測定窓である。
【0022】
前記電気的安全装置は、安全ドアに関しては前記安全ドアが自動開閉式の場合に有効である。また前記金型鋳造設備の金型開閉動作を禁止する安全装置に関しては、前記安全ドアが自動・手動開閉式にかかわらず有効とするべきである。
これら安全装置は、前記測定窓からの前記表面温度測定装置による金型キャビティ表面の表面温度測定作業の際に、前記安全ドアを開く動作を禁止し、安全な金型キャビティ表面の表面温度測定作業を確保すると共に、前記測定窓に第3者が無意識あるいは故意に前記装置の先端部以外の異物等を挿入した場合に、前記安全ドアを閉じる動作および前記金型鋳造設備の金型開閉動作を禁止し、その異物もしくは前記金型鋳造設備が破損することを防止する効果を有する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の表面温度測定装置用測定窓により、金型鋳造設備稼働中でも、金型が開いて製品が取り出された後、金型スプレー装置が作動する前あるいは作動後のいずれのタイミングでも、表面温度測定装置を使用してオペレーターのいる操作側の安全ドアの外から、安全かつ簡便に固定金型側・可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度の測定が可能となる。
また前記安全ドアの外からの測定作業なので、金型に対して離型剤や冷却水が噴霧され、これら流体やその霧が充満する悪環境、あるいは成型直後の高温雰囲気となる金型近傍の悪環境が存在する前記安全ドア内や、前記安全ドア内に進入する装置・ロボットに、精密機器である表面温度測定装置を配設する必要がない。よってこれら悪環境から表面温度測定装置を保護する防水・耐熱構造は不要である。
さらに、表面温度測定装置を金型鋳造設備に配設しないため、前記設備を簡略化できると共に、1台の表面温度測定装置で複数の金型鋳造設備の金型キャビティ表面の表面温度の測定が可能となる。
【0024】
これらの効果により、複数の金型鋳造設備を有する現場において、これら金型鋳造設備のそれぞれに、防水・耐熱の保護構造を付加した特殊な表面温度測定装置等を配設することなく、通常市販されている表面温度測定装置が1台あれば、各金型鋳造設備の金型キャビティ表面の表面温度を定期的に測定して、測定された温度データをそれぞれの金型鋳造設備の良品成形条件の管理に活用したり、あるいは、新しい型への型交換後の良品成形の条件出し等に集中的に金型キャビティ表面の表面温度を測定して、良品成形の条件出しに活用したりして、複数の金型鋳造設備の金型の温度管理が可能となり、ひいては、現場での成形品の良品率の向上・維持を図ることが可能となる。さらに表面温度測定装置の保守および管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1を示す、概略正面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す、概略拡大正面図である。
【図3】表面温度測定装置での金型キャビティ表面の表面温度測定時を示す図2のA−A矢視からの概略平面断面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す、概略拡大正面図である。
【図5】表面温度測定装置での金型キャビティ表面の表面温度測定時を示す図4のB−B矢視からの概略平面断面図である。
【図6】一般的な金型鋳造設備の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本願発明に係わる、金型を使用する金型鋳造設備の操作側の安全ドアに配設された、表面温度測定装置用測定窓の具体的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
以下、図1〜図6に基づいて本願発明の実施例1、実施例2を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1〜図3および図6を用いて実施例1を説明する。図1〜図3は金型鋳造設備の操作側の安全ドアに配設された、表面温度測定装置用測定窓などを示す。また図6は一般的な金型鋳造設備の概略平面図である。
図6において、21は射出部、22は固定プラテン、3は固定金型、4は可動金型、5はパーティングライン(金型合わせ面)、23は可動プラテン、24は可動プラテン可動機構部、25は可動プラテン可動機構部カバー、2は安全ドア、26は操作盤、27はオペレーターである。
【0029】
可動金型4は可動プラテン可動機構部24により固定金型3に対して前進・後退させられるようになっており、これに応じて可動金型4は、固定金型3に対して所定の型締力で合わされた型締め状態(図1)と固定金型3から離間した型開き状態(図6)とに位置決めされる。固定金型3と可動金型4とが型締めした状態で、両金型3、4との間で図示しない金型キャビティ部が形成される。そして可動する可動金型4の可動域と操作盤26間に、安全ドア2が開閉可能に配設されている。
【0030】
図1は安全ドア2に配設された、表面温度測定装置14用の測定窓1の構成を示す概略正面図である。金型が開いた時に、パーティングライン5上になく、固定金型3側および可動金型4側の金型キャビティ表面の表面温度が、それぞれ測定可能な位置に配設された、少なくとも2箇所の金型キャビティ表面の表面温度測定装置14用の測定窓が、測定窓1である。
測定窓1から金型キャビティ表面の表面温度を測定する表面温度測定装置は種々あるが、熱源から一定距離離れても、その熱源の表面温度を画像処理などの2次処理なしで、リルタイムで測定・記録可能な、サーモトレイサーカメラ等の表面温度測定装置を使用することが望ましい。
【0031】
測定窓1の開口部6には、安全ドア2の裏面に上下に手動でスライド可能なシャッター7が配設されており、通常時はシャッター7が自重で下方にスライドした状態で開口部6を塞いでいる。
表面温度測定装置14で金型キャビティ表面の表面温度を測定する時は、シャッター7に連接され安全ドア2の表側に設けられたつまみ8を手動で上方にスライドさせ開口部6を開口し、表面温度測定装置14の先端部15を開口部6に挿入するようになっている。
【0032】
また開口部6には、開口部6全体を塞ぐ、柔軟性を有する素材のカバー9が配設されている。
本カバー9は、開口部6の略中央から放射状に周設された複数の切れ込みを有し、本切れ込みにより表面温度測定装置14の先端部15の測定窓6への挿入を阻害せず、また先端部15を容易に金型合わせ面5に向けることができ、さらに先端部15を測定窓1に挿入したとき、先端部15と開口部6間に生じる隙間を塞ぎ、金型スプレー装置による離型剤や冷却水の安全ドア2外への飛散を防止すると共に、挿入時の先端部15の傷付きおよび破損を防止する。
【0033】
シャッター7に連接されたつまみ8はさらに安全ドア2の裏面に配設されたロッド10と連接され、つまみ8を上方に押し上げてシャッター7を上方にスライドさせたとき、シャッター7と共に上昇し安全ドア2の支持部に穿設された穴11に挿入され、安全ドア2が開かない機械的安全装置を構成している。本機械的安全装置は、安全ドア2が自動・手動開閉にかかわらず有効である。
【0034】
金型キャビティ表面の表面温度測定後、先端部15を開口部6から引き抜くと、シャッター7は自重で下方へスライドし開口部6を塞ぐ。シャッター7下端には緩衝材7aが配設され、先端部15を開口部6から挿脱するときの先端部15の傷付きおよび破損を防止する。
またシャッター7が自重で下方へスライドし開口部6を塞ぐことにより、前記安全ドア内側からの金型スプレー装置による離型剤や冷却水、およびパーティングラインからのフラッシュが安全ドア2外へ飛散することを防止すると共に、安全ドア2内側への異物の進入を防止する。
【0035】
図2は図1の表面温度測定装置14用の測定窓1の概略拡大正面図である。安全ドア2の裏面には、シャッター7が自重で下方へスライドし開口部6が塞がれている状態を検出する電気的センサー12が配設されている。シャッター7が自重で下方へスライドし開口部6を塞いでいる状態になると、シャッター7に連接されたドグ13が電気的センサー12に電気的に検出されるようになっている。このように電気的センサー12がドグ13を検出して、開口部6がシャッター7で塞がれている状態でないと安全ドア2の開閉を許容しない電気的な安全装置を構成している。本電気的安全装置は、安全ドア2が自動開閉式の場合に有効である。
【0036】
電気的センサー12によって、シャッター7が自重で下方へスライドし開口部6が塞がれている状態(ON)を検出する理由は、電気的センサー12が故障等でONしない場合(OFF)でも、シャッター7が開いている状態(OFF)と同等の検出状態とみなして安全ドア2の開閉を禁止するようにする安全上の理由によるものである。
【0037】
図3は、表面温度測定装置14用の測定窓1に先端部15を挿入した状態を図2のA−A矢視から見た概略平面断面図である。開口部6に配設されたカバー9が、先端部15を開口部6に挿入した時、図3に示すように、カバー9が開口部6と先端部15間に生じる隙間を塞ぐようになっている。
カバー9は、柔軟性を有する素材であれば特に素材を特定するものではないが、先端部15を容易に金型キャビティ表面に向けることができ、かつ先端部15の傷付きや破損を防止することができ、また耐水性を有する、ゴム等の素材を使用したカバーであることが望ましい。
【0038】
また先端部15を金型キャビティ表面の表面温度が測定可能なように開口部6に挿入した状態の先端部15先端から一定距離離れた位置に、その位置を越えて安全ドア2の奥側に入った異物を検出可能な電気的センサー16が配設されている。
この電気的センサー16により、第3者が無意識あるいは故意にシャッター7を開き、開口部6に先端部15以外の異物等を挿入した場合に、その異物を電気的に検出し安全ドア2の開き動作および前記金型鋳造設備の型開閉動作を禁止して、その異物もしくは前記金型鋳造設備の破損等を防止する電気的安全装置を構成している。本安全装置は安全ドア2が自動・手動開閉式にかかわらず有効とするべきである。
電気的センサー16は光電スイッチでもよいが、ライトカーテンやエリアセンサー等、開口部6の全域で異物を検出できる電気的センサーを採用することが望ましい。
【0039】
図1〜図3は、開口部6を塞ぐシャッター7が上下方向にスライドし、シャッター7が自重で下方へスライドして開口部6を塞ぐ形態の実施例1である。本実施例の利点は開口部6から先端部15を抜いたとき、特別な外力等がなくてもシャッター7が自重で下方へスライドして開口部6を塞ぐため、測定窓1の安全性が高いという点である。
よって開口部6から先端部15を抜いたとき、シャッター7が何らかの外力で自動的に開口部6を塞ぐような形態であれば、シャッター7が左右方向にスライドする形態でもかまわない。
【実施例2】
【0040】
図4および図5を用いて実施例2を説明する。実施例2については、すでに全体構成を図1〜図3および図6を用いて実施例1で説明しているため、異なる部分のみ説明する。
【0041】
図4は、図2に対して、シャッター7が左右方向にスライドする形態の実施例2の表面温度測定装置14用の測定窓1の概略拡大正面図である。本実施例2は、開口部6から先端部15を抜いたとき、シャッター7がスプリング17の引張力により自動的に開口部6を塞ぐようになっている。それ以外の測定窓1の基本的な構造は図1〜図3と同じであり、図中に使用されている符号も17〜20以外、図1〜図3と同じである。
シャッター7が左右方向にスライドする形態のため、緩衝材7a、電気的センサー12、ドグ13、電気的センサー16の配置が実施例1と異なる。また安全ドア2の開き動作を禁止する機械的安全装置の構造に関して、シャッター7の左右スライドに伴い、ロッドの動作を上下動作に変換して穴11に挿脱させるため、実施例1のロッド10に相当するロッド10の動作が左右スライド動作になり、さらにこのロッド10の左右スライド動作を上下動作に変換するカム18がロッド10端部に追加され、そのカム18上にローラー19と新しいロッド20が追加された構造となっている。
【0042】
図5は、表面温度測定装置14用の測定窓1に先端部15を挿入した状態を図4のB−B矢視から見た概略平面断面図である。この状態でスプリング7は伸び、シャッター7は図面5の左方向に閉じようとする力を受けている。この力によりシャッター7は表面温度測定装置14の先端部15に当接しているが、シャッター7の左端に配設された緩衝材7aにより、先端部15の傷付きや破損を防止できる。
【0043】
実施例1を示す図1〜図3と図6、および実施例2を示す図4および図5は、本願発明の実施例を示すものであり、本願発明はこの実施例1および実施例2の形態のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1 表面温度測定装置用の測定窓
2 安全ドア
3 固定金型
4 可動金型
5 パーティングライン(金型合わせ面)
6 開口部
7 シャッター
7a 緩衝材
8 つまみ
9 カバー
10 ロッド
11 穴
12 電気的センサー
13 ドグ
14 表面温度測定装置
15 表面温度測定装置の先端部
16 電気的センサー
17 スプリング
18 カム
19 ローラー
20 ロッド2
21 射出部
22 固定プラテン
23 可動プラテン
24 可動プラテン可動機構部
25 可動プラテン可動機構部カバー
26 操作盤
27 オペレーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を使用する金型鋳造設備において、オペレーターのいる操作側の安全ドアに、金型を開いたときに、パーティングライン上でなく、固定金型側および可動金型側の金型キャビティ表面の表面温度を、それぞれ測定可能な位置に配設された、少なくとも2箇所の表面温度測定装置用の測定窓であって、
前記装置の先端部を前記測定窓に挿入するとき、前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けられるように、前記装置の先端部外寸より大きい寸法の開口部を有する表面温度測定装置用の測定窓。
【請求項2】
前記開口部全体を塞ぎ、前記開口部の略中央から放射状に複数の切れ込みを周設した、柔軟性を有する素材のカバーが配設され、
前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けて前記測定窓に挿入したとき、前記装置の先端部と前記開口部間に生じる隙間を前記カバーで塞ぐことを特徴とした、請求項1に記載の表面温度測定装置用の測定窓。
【請求項3】
前記装置の先端部を前記測定窓に挿入していないとき、スライドして前記測定窓の前記開口部を塞ぐシャッターを有し、
前記シャッターを開き側にスライドさせて、前記装置の先端部を前記金型キャビティ表面に向けて前記測定窓に挿入するとき、前記シャッターと前記装置の先端部が当接する部分の前記シャッター側に緩衝材を配設した、請求項1乃至2に記載の表面温度測定装置用の測定窓。
【請求項4】
前記シャッターを開き側にスライドさせて、前記装置の先端部を前記測定窓に挿入して、金型キャビティ表面の表面温度を測定中の状態では、前記シャッターの開き側へのスライドに連動するように配設されたロッド部が、前記シャッターの開き側へのスライドに連動して、前記安全ドアの支持部に穿設された穴に挿入され、前記安全ドアが開かない機械的安全装置と、
前記シャッターが前記開口部を塞いでいる状態を電気的センサーにより検出し、前記シャッターが前記開口部を塞いでいる状態でしか、前記安全ドアの開閉動作を許容しない電気的安全装置を有する、請求項1乃至3に記載の表面温度測定装置用の測定窓。
【請求項5】
前記シャッターを開き側にスライドさせて、前記金型キャビティ表面の表面温度を測定するときの前記装置の先端部の位置を越えて、前記安全ドアの奥側に前記装置の先端部以外の異物等を挿入した場合、その異物等を電気的センサーにより検出して、前記安全ドアを開く動作および前記金型鋳造設備の金型開閉動作を禁止する電気的安全装置を有する、請求項1乃至4に記載の表面温度測定装置用の測定窓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−179315(P2010−179315A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22330(P2009−22330)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】