説明

被冷却体及び画像形成装置

【課題】低コストで冷却効果を向上させることができ、取り扱い性に優れる被冷却体を提供する。
【解決手段】本発明は、画像形成装置本体に設けられ、冷却装置の受熱部31と接触し、当該受熱部31と放熱部との間で循環する冷却媒体により冷却される被冷却体4である。当該被冷却体4の受熱部31と接触する接触部を可撓性部材50で構成した。また、可撓性部材50を現像剤Gと接触する部分に配設した構成では、可撓性部材50の少なくとも現像剤側の最表面層を、現像剤Gと接触しても現像剤を溶解させない現像剤非相容性層とすることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置本体に設けられ、冷却装置によって冷却される被冷却体、及びその被冷却体を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、紙やOHPシート等の記録媒体に文字、記号等の画像を記録する方式として種々の方式が採用されている。中でも、電子写真方式は、高精細な画像を高速で形成することができることから広く使用されている。一般的に、電子写真方式の画像形成装置における画像形成工程は、光学装置で画像情報を読み込む工程と、読み込んだ画像情報に基づいて感光体上に静電潜像を書き込む工程と、感光体上に現像装置からトナーを供給してトナー像を形成する工程と、感光体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写する工程と、転写したトナー像を記録媒体に定着する工程などから成る。
【0003】
上記画像形成工程を行う際、画像形成装置内の種々の装置の駆動によって生じた熱により装置内の温度が上昇して、様々な弊害が生じることが知られている。例えば、光学装置では、原稿をスキャンするスキャナランプや、スキャナランプを駆動させるスキャナモータが発熱し、書き込み装置においては、ポリゴンミラーを高速回転させるモータが発熱する。現像装置においては、トナーを攪拌して帯電させる際に摩擦熱が生じ、定着装置では、トナー像を熱定着するためのヒータが発熱する。また、両面印刷の場合は、定着装置によって加熱された記録媒体が両面印刷用の搬送路に送られるため、その搬送路の周辺温度が上昇する。そして、これらの熱によって装置内の温度が上昇すると、トナーが軟化して不良画像が発生したり、溶融したトナーが固まると現像装置内の可動部をロックして故障が発生したりする。また、温度上昇により、軸受け等のオイルの劣化、モータの機械的寿命の短縮、電気基板上のICの誤作動、故障、耐熱温度の低い樹脂部品の変形などの問題も生じる。従来は、このような画像形成装置内の温度上昇による弊害を防止するために、冷却ファンとダクトなどを用いた空冷式の冷却装置によって冷却を行っていた。
【0004】
しかし、近年、印刷等の処理の高速化に伴い、画像形成装置内部に備えた発熱体の数が増加している。また、画像形成装置は小型化を達成するためその構成部品は高密度化しており、それに伴い、画像形成装置内部の気流設計の最適化が困難になって、画像形成装置の内部は熱がこもりやすくなっている。また、省エネルギー化の要請から、画像定着時の消費エネルギーを少なくすべく、溶融温度の低いトナーが開発されており、特に、溶融温度の低いトナーを使用した場合は、画像形成装置内の温度上昇をこれまでよりも一層抑制する必要が生じる。このような理由から、従来の空冷方式では十分な冷却効果を得ることが困難になりつつある。そのため、より冷却能力の高い冷却方式として液冷式の冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一般に、液冷式の冷却装置は、画像形成装置の温度上昇箇所に配設される受熱部と、冷却液の熱を放出させる放熱部と、受熱部と放熱部との間で冷却液を循環させるための循環路と、循環路内で冷却液を送液するポンプなどで構成される。冷却液をポンプによって受熱部と放熱部との間で循環させることにより、受熱部で吸収した熱を放熱部で放熱する。液冷式の冷却装置は、空冷式のものと異なり、空気に比べて熱容量の大きい液体冷媒(冷却液)によって熱を輸送するため、受熱特性が高く、温度上昇箇所を効果的に冷却することが可能である。
【0006】
ところで、上記受熱部を有する冷却装置においては、受熱部と被冷却体(温度上昇箇所)との密着度合いによって冷却効果が変化する。すなわち、受熱部と被冷却体とが密着し、両者の接触面積が大きい場合は、被冷却体と受熱部との間の熱交換率が高くなり、冷却効果も上昇する。一方、受熱部と被冷却体との互いの接触面形状が一致せず、互いの接触面間に空気層ができると、反対に両者の接触面積が小さくなり、冷却効果の低下を招いてしまう。
【0007】
これを避けるためには、被冷却体と受熱部との接触面の平面度を上げる必要がある。また、従来では、被冷却体と受熱部との間に熱伝導シートやグリースを介在させることで、被冷却体と受熱部との間の空気層を埋め、冷却効果の低下を抑えることなどがなされていた(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、被冷却体と受熱部との各接触面の平面度を上げることは、高コスト化に繋がるといった問題があった。また、熱伝導シートは、通常、主として樹脂材料で構成されているため、その熱伝導率は低い。さらに、熱伝導シートは、被冷却体と受熱部との間で圧縮されることによってそれらの平面度の悪さを補填するものであるため、ある程度の厚みを有する必要がある。このため、熱伝導シートを用いた場合は、全体として熱交換率が著しく低下してしまうといった問題がある。また、グリースを用いた場合は、グリースが経時的に劣化した場合などに塗り直し作業が必要になる。さらに、グリースの使用は、トナー等の現像剤が近くに存在する箇所では難しいといった問題もある。
【0009】
以上のように、従来の受熱部を被冷却体に接触させる冷却方式においては、コストや熱交換率、取り扱い性に関して種々の問題があった。また、このような問題は、液冷方式のものに限らず、被冷却体に受熱部を接触させる冷却方式全般に共通する問題であった。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、低コストで冷却効果を向上させることができ、取り扱い性に優れる被冷却体、及びその被冷却体を備える画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、画像形成装置本体に設けられ、冷却装置の受熱部と接触し、当該受熱部と放熱部との間で循環する冷却媒体により冷却される被冷却体であって、前記受熱部と接触する接触部を可撓性部材で構成したものである。
【0012】
このように構成したことで、受熱部を被冷却体に接触させると、可撓性部材が受熱部の接触面形状に沿って変形するため、受熱部と可撓性部材とが空気層を介在させることなく接触することができる。その結果、受熱部と可撓性部材との間の接触面積を大きく確保することができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られるので、冷却効果を向上させることができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の被冷却体において、前記可撓性部材を現像剤と接触する部分に配設した構成で、前記可撓性部材の少なくとも現像剤側の最表面層を、現像剤と接触しても現像剤を溶解させない現像剤非相容性層としたものである。
【0014】
これにより、可撓性部材に現像剤が接触しても、現像剤の溶解、及びこれに伴う劣化を防止することができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の被冷却体において、前記可撓性部材が、熱伝導率の良い良熱伝導層を少なくとも有するものである。
【0016】
これにより、可撓性部材の熱伝導率が上がるので、受熱部と可撓性部材との間での受熱特性(熱交換率)が高まり、冷却効果を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の被冷却体において、前記可撓性部材の少なくとも前記受熱部側の最表面層を、耐衝撃性と耐摩耗性の少なくとも一方を有する樹脂材料層としたものである。
【0018】
これにより、受熱部が可撓性部材に接触することによる可撓性部材の摩耗等を抑制することができ、可撓性部材の寿命を延ばすことができる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の被冷却体において、前記受熱部と接触する接触部以外の部分の少なくとも一部を、熱伝導率の良い材料で構成したものである。
【0020】
これにより、被冷却体の接触部以外の部分の熱伝導率が上がるので、冷却効果を向上させることができる。
【0021】
請求項6の発明は、画像形成装置本体に設けられた被冷却体に接触する受熱部と、放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間で冷却媒体を循環させるための循環手段とを有する冷却装置を備えた画像形成装置において、前記被冷却体を、請求項1から5のいずれか1項に記載の被冷却体としたものである。
【0022】
被冷却体を、請求項1から5のいずれか1項に記載の被冷却体とすることにより、被冷却体を効果的に冷却することができるようになるので、温度上昇に伴う異常の回避が可能となる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項6に記載の画像形成装置において、前記冷却装置を、冷却液を液体の状態で循環させる液冷式の冷却装置としたものである。
【0024】
冷却装置として、冷却液を液体の状態で循環させる液冷式の冷却装置を適用することが可能である。
【0025】
請求項8の発明は、請求項6に記載の画像形成装置において、前記冷却装置を、ヒートパイプを有する冷却装置としたものである。
【0026】
冷却装置として、ヒートパイプを有する冷却装置を適用することが可能である。また、この場合、ポンプやタンクが不要となる利点がある。
【0027】
請求項9の発明は、請求項6に記載の画像形成装置において、前記冷却装置を、蒸気圧縮式冷凍装置としたものである。
【0028】
冷却装置として、蒸気圧縮式冷凍装置を適用することが可能である。また、この場合、冷却媒体が液体と気体との間で相変化することで冷却を行う潜熱冷却であるため、液体と気体と間での相変化を伴わない顕熱冷却に比べて、高い冷却効果が得られる。
【0029】
請求項10の発明は、請求項6から9のいずれか1項に記載の被冷却体において、前記受熱部を前記被冷却体に押圧する押圧手段を備え、当該押圧手段の押圧力の反作用を被冷却体の所定の箇所に及ばせるように構成したものである。
【0030】
押圧手段の押圧力の反作用を被冷却体の所定の箇所に及ばせることにより、受熱部の接触によって被冷却体が受ける外力を低減することができるので、被冷却体の位置変動や変形を抑制することができる。これにより、被冷却体の位置変動や変形に起因する機能低下を抑制することができ、安定的に機能を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、被冷却体の受熱部との接触部を可撓性部材で構成することにより、受熱部が被冷却体に接触した際に、可撓性部材が受熱部の接触面の形状に沿って変形するので、可撓性部材と受熱部とを空気層を介在させることなく接触させることができる。このように、本発明によれば、被冷却体と受熱部との間に熱伝導シートを介在させなくても両者間の接触面積を増大させることができるので、受熱特性(熱交換率)が飛躍的に向上する。これにより、被冷却体を効果的に冷却することができるようになり、温度上昇に伴う異常の回避が可能となる。
【0032】
また、本発明によれば、グリースを使用しなくても被冷却体と受熱部との間の接触面積を増大させることができる。このため、グリースが劣化した場合などの塗り直し作業を行う必要がなく、被冷却体と受熱部との間の接触状態を長期に亘って良好に維持することができる。さらに、グリースを使用しないことで、グリースを使用しにくい箇所においても受熱部を設置することができるようになり、画像形成装置における装置や部材の配置のレイアウトの自由度が広がる。
【0033】
また、本発明によれば、被冷却体と受熱部との接触面積の平面度を高精度に確保しなくても、両者間の接触面積を増大させることができるので、低コストで冷却効果の向上を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】現像装置とその周辺構造の概略断面図である。
【図3】受熱部を現像装置に接触させた状態を示す図である。
【図4】受熱部を現像装置から離間させた状態を示す図である。
【図5】可撓性フィルムの拡大断面図である。
【図6】他の可撓性フィルムの拡大断面図である。
【図7】さらに別の可撓性フィルムの拡大断面図である。
【図8】現像装置の他の実施形態の概略断面図である。
【図9】ヒートパイプを有する冷却装置の概略構成図である。
【図10】蒸気圧縮式冷凍装置の概略構成図である。
【図11】トナーボトルを被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図12】別の構成のトナーボトルを被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図13】サブホッパを被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図14】トナー搬送路を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図15】ベルトクリーニング装置を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図16】感光体クリーニング装置を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
【図17】廃トナー回収容器を被冷却体とした場合の本発明の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0036】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
まず、図1を参照して、この画像形成装置の全体構成について説明する。
図1に示す画像形成装置100には、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色の画像を形成する4つの画像形成部1Y,1C,1M,1Bkが配設されている。各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkは、異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0037】
具体的には、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkは、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電装置3と、感光体2の表面に静電潜像を形成する書込装置6と、感光体2の表面にトナー像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃する感光体クリーニング装置5を備える。なお、図1では、イエローの画像形成部1Yが備える感光体2、帯電装置3、書込装置6、現像装置4、感光体クリーニング装置5のみに符号を付しており、その他の画像形成部1C,1M,1Bkにおいては符号を省略している。
【0038】
また、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkの図の下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト10を有する。中間転写ベルト10は複数のローラに張架されており、それらローラのうちの1つが駆動ローラとして回転することによって、中間転写ベルト10は周回走行(回転)するように構成されている。
【0039】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト10の内周面を押圧しており、中間転写ベルト10の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0040】
また、中間転写ベルト10を張架する1つのローラに対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト10の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト10とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0041】
また、画像形成装置100には、紙やOHPシート等の記録媒体Pを上記二次転写ニップへ供給する給紙部13と、給紙された記録媒体Pの搬送タイミングを調整するためのレジストローラ対14と、記録媒体Pに画像を定着させる定着装置8とが配設されている。
【0042】
図1を参照して上記画像形成装置の作像動作について説明する。
作像動作が開始されると、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が回転駆動され、帯電装置3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、書込装置6から各感光体2の帯電する表面にレーザ光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、書込装置6によって各感光体2の表面に書き込まれる画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0043】
中間転写ベルト10を張架するローラの1つが回転駆動し、中間転写ベルト10を周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト10上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト10はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト10に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、感光体クリーニング装置5によって除去される。
【0044】
また、作像動作が開始されると、給紙部13から記録媒体Pが供給される。供給された記録媒体Pは、レジストローラ対14によって一旦停止され、その後タイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト10との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト10上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト10上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。その後、記録媒体Pは定着装置8に送り込まれ、トナー画像が記録媒体P上に定着される。そして、記録媒体Pは機外の図示しない排紙トレイに排出されストックされる。
【0045】
以上の説明は、記録媒体にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの画像形成部1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの画像形成部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0046】
次に、本発明に係る冷却装置の構成について説明する。
図1に示すように、画像形成装置100には、画像形成装置の温度上昇箇所を冷却するための冷却装置9が配設されている。この冷却装置9は液冷式の冷却装置である。具体的に、冷却装置9は、4個の受熱部31と、放熱部30としてのファン34を有する3つのラジエータ33と、ポンプ32と、タンク35と、これらを直列的に接続し冷却液を循環させるための循環路を構成する複数の金属パイプ37及び複数の樹脂チューブ38等で構成されている。図1に示す例では、冷却液は矢印の向きに送られ循環するようになっている。なお、4つの受熱部31を並列的に接続してもよい。また、4つの受熱部31は、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkが有する現像装置4に接触して配設されている。冷却液としては、防錆剤を含有した不凍液などが用いられる。
【0047】
上記冷却装置9は、以下のように動作する。
放熱部30によって冷却された冷却液が、ポンプ32によって各受熱部31へと送られる。そして、各受熱部31において、対応する現像装置4の熱が冷却液に伝達され現像装置4が冷却される。また、現像装置4からの熱により受熱部31内で温度上昇した冷却液は、タンク35、ポンプ32を経て、再び放熱部30へと送られ、そこで冷却される。このように、冷却液を受熱部31と放熱部30との間で循環させることにより、受熱部31での吸熱と放熱部30での放熱のサイクルを繰り返し行う。その結果、現像装置4の温度上昇が抑制され、異常画像の発生が回避される。また、タンク35は、ラジエータ33からの冷却液を一時的に貯留する貯留槽として機能する。これにより、循環路内での大きな圧力変動が生じるのを防止している。
【0048】
図2は、現像装置とその周辺構造の概略断面図である。
なお、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkが有する現像装置とその周辺構造はそれぞれ同様であるので、便宜的に図2において1つの現像装置4及びその周辺構造について説明する。
図2に示すように、現像装置4は、ケーシング40、ケーシング40の感光体2に対向する箇所に配設された現像ローラ41、現像ローラ41に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクターブレード42、ケーシング40内に配設された現像剤搬送路としての供給搬送路43、回収搬送路44、撹拌搬送路45、これらの現像剤搬送路43,44,45内に配設された供給スクリュ46、回収スクリュ47及び攪拌スクリュ48、現像剤中のトナー濃度を検知する図示しない濃度検知センサ等で構成される。現像ローラ41は、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等で構成される。供給搬送路43、回収搬送路44、撹拌搬送路45内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤Gが収容されている。なお、現像装置4は、2成分現像剤の代わりに、トナーのみから成る1成分現像剤を用いるものであってもよい。
【0049】
現像装置4は、次のように動作する。
図示しないトナー補給装置によって攪拌搬送路45内にトナーが補給されると、補給されたトナーは、攪拌スクリュ48によって、現像剤と共に混合・攪拌されながら、攪拌搬送路45内を撹拌スクリュ48の軸方向に向かって搬送される。攪拌スクリュ48の搬送方向下流端まで搬送された現像剤は、図示しない開口部を介して供給搬送路43に供給される。
【0050】
攪拌搬送路45から現像剤の供給を受けた供給搬送路43では、現像ローラ41に現像剤を供給しながら、供給スクリュ46の搬送方向下流側に現像剤を搬送する。そして、現像ローラ41に供給されずに供給搬送路43の搬送方向下流端まで搬送された余剰現像剤は、図示しない開口部を介して攪拌搬送路45に供給される。
【0051】
一方、現像ローラ41に供給された現像剤は、図2中の矢印方向の現像ローラ41の回転に伴って搬送されて、ドクターブレード42の位置に達する。そして、現像ローラ41上の現像剤は、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体2との対向位置(現像領域)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体2上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ41上に残った現像剤は、現像ローラ41から分離・離脱して、回収搬送路44に受け渡される。現像ローラ41から回収搬送路44に受け渡された回収現像剤は、回収スクリュ47によって回収搬送路44の搬送方向下流端まで搬送され、図示しない開口部を介して攪拌搬送路45に供給される。
【0052】
攪拌搬送路45に供給された余剰現像剤と回収現像剤とは、前述のように適宜補給されたトナーと共に攪拌スクリュ48によって混合・攪拌されながら、攪拌搬送路45内を搬送され、再び供給搬送路43に供給される。また、攪拌搬送路45の下方には、不図示の透磁率センサからなるトナー濃度検知センサが設けられ、当該センサ出力によりトナー補給装置を作動し、トナー補給が行われる。
【0053】
次に、図2を参照して、現像装置4に接触して配設される受熱部31の支持構造について説明する。
受熱部31は保持部材51に保持されている。詳しくは、保持部材51に設けられた穴部51aに、段ネジ54が遊嵌されており、段ネジ54のネジ部が受熱部31のネジ穴にねじ込まれている。また、段ネジ54の段部には、押圧手段であり弾性部材であるコイルスプリング55が巻き付けられている。そして、コイルスプリング55の一端は保持部材51に当接しており、他端は受熱部31に設けられた底部に当接している。これにより、受熱部31は、コイルスプリング55により現像装置4側に付勢されて保持部材51に保持されている。本実施形態では押圧力を与える弾性部材をコイルスプリング55としたが、弾性部材を板バネや弾性力が復元するスポンジなどとしてもよい。
【0054】
また、保持部材51は、支持部材52によって、現像装置4側及びそれと反対側とに移動可能に支持されている。具体的には、支持部材52は、その上部及び下部に一対のガイド穴52a,52bを有しており、これらのガイド穴52a,52bに、保持部材51の上部及び下部に設けられたピン56a,56bが挿入されている。すなわち、各ピン56a,56bがガイド穴52a,52bに沿って案内されることで、保持部材51が現像装置4側又はそれと反対側に移動するようになっている。このように、本実施形態では、保持部材51が現像装置4側とそれと反対側に移動可能に構成されていることで、受熱部31は現像装置4のケーシング40に対して接触・離間可能となっている。また、現像装置4のケーシング40において、受熱部31が接触する部分は可撓性フィルム(可撓性部材)50で構成されている。
【0055】
また、支持部材52は、画像形成装置本体に固定されているフレーム53に対して、現像装置4側及びそれと反対側とに変位可能に取り付けられている。具体的には、支持部材52に形成された長穴52cにネジ57を遊嵌し、フレーム53に形成されている不図示のネジ穴にネジ57をネジ止めしている。すなわち、固定されているネジ57に対し長穴52cの位置が変位することにより、支持部材52が現像装置4側又はそれと反対側に変位可能となっている。
【0056】
また、支持部材52は、現像装置4のケーシング40に当接する2つの当接部52d,52eを有する。詳しくは、現像装置4のケーシング40の上部及び下部には、それぞれ下方へ突出した被当接部40d、40eが設けられており、これらの被当接部40d,40eに対して支持部材52の当接部52d,52eが当接可能に配設されている。また、各当接部52d,52eは、支持部材52の上記変位に伴って、被当接部40d,40eに当接・離間する。すなわち、支持部材52が現像装置4側に変位した場合は、当接部52d,52eは被当接部40d,40eに対して離間した状態となり、反対に支持部材52が現像装置4と離れる方向に変位した場合は、当接部52d,52eは被当接部40d,40eに対して当接する。
【0057】
以下、図3及び図4に基づき、受熱部31の接離動作について説明する。
図3は、受熱部を現像装置に接触(圧接)させた状態を示す図であり、図4は、受熱部を現像装置から離間させた状態を示す図である。
受熱部31を現像装置4から離間させる場合は、不図示のレバーを操作することにより、保持部材51を現像装置4から離れる方向へ移動させる。これにより、図4に示すように、保持部材51に保持されている受熱部31が現像装置4から離間する。また、この状態で、支持部材52の各当接部52d,52eと現像装置4の被当接部40d,40eとの当接が解除される。その結果、現像装置4を図4の紙面に直交する方向に移動させて画像形成装置本体から取り出すことが可能となる。また、このとき、受熱部31が現像装置4の可撓性フィルム50と離間していることにより、現像装置4の取り出し時に、可撓性フィルム50に受熱部31が摺擦することがないので、可撓性フィルム50が傷つくのを防止することができる。なお、ここでは、現像装置4を単独で取り出す構成として説明しているが、現像装置4を感光体等と一緒にプロセスユニットとして取り出すように構成してもよい。
【0058】
一方、受熱部31を現像装置4に接触(圧接)させる場合は、不図示のレバーを操作して、保持部材51を現像装置4側に移動させる。これにより、図3に示すように、受熱部31が現像装置4に接触する。このとき、受熱部31は現像装置4に設けてある可撓性フィルム50に接触する。この状態からさらに保持部材51を現像装置4側へ移動させていくと、受熱部31はコイルスプリング55の押圧力Fによって可撓性フィルム50に圧接する。
【0059】
また、この状態で、保持部材51の各ピン56a,56bは、支持部材52のガイド穴52a,52bに対して位置保持される。このため、保持部材51がコイルスプリング55から受ける、受熱部31への押圧力Fと反対向きの反力Rは、2つのピン56a,56bを介して支持部材52へと伝わる。その結果、支持部材52は、その反力Rの方向、すなわち現像装置4と離れる方向に変位し、当接部52d,52eがそれぞれ被当接部40d,40eに当接する。そして、保持部材51が受けた反力Rは、ピン56a,56bを介して支持部材52へと伝わることにより、被当接部40d,40eに対する当接部52d,52eの当接力T1,T2となって作用する。この場合、これらの当接力T1,T2は押圧力Fとは逆向きに作用していることから、当接力T1,T2と押圧力Fは互いに相殺される。
【0060】
このように、本実施形態では、コイルスプリング55の押圧力の反作用を現像装置4の所定の箇所に及ばせることにより、受熱部31の接触(圧接)によって現像装置4が受ける外力を低減することができる。これにより、現像装置4の位置変動や変形を抑制することができ、その結果、現像ローラと感光体との間の距離(現像ギャップ)の変動が抑制されるので、高画質な画像を経時に亘り維持することが可能である。
【0061】
また、現像装置4の受熱部31が接触する箇所は可撓性フィルム50で構成されているので、受熱部31が現像装置4に接触(圧接)した状態では、可撓性フィルム50が受熱部31と現像装置4内の現像剤Gとの間に挟まれることにより、可撓性フィルム50は受熱部31の接触面形状に沿って変形する。その結果、受熱部31の接触面と可撓性フィルム50、及び可撓性フィルム50と収容されている現像剤Gとが、互いに空気層を介在させることなく密着することとなる。すなわち、受熱部31と可撓性フィルム50との間、可撓性フィルム50と現像剤Gとの間での接触面積を大きく確保することができるので、高い受熱特性(熱交換率)が得られ、冷却効果を向上させることができる。
【0062】
図5は、上記可撓性フィルムの拡大断面図である。
図5に示す可撓性フィルム50は、現像剤G側の最表面層50aが、現像剤と接触しても現像剤を溶解させない材料から成る現像剤非相容性層で構成されている。これにより、現像剤が可撓性フィルム50と接触しても、現像剤の溶解や、これに伴う劣化が生じることがなく、高画質な画像を経時に亘り維持することが可能となる。また、現像剤非相容性層に用いる材料としては、ポリエチレンテレフラレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
【0063】
図6は、他の可撓性フィルムの拡大断面図である。
図6に示す可撓性フィルム50は、中間層50bを金属層で構成し、熱伝導率の良い良熱伝導層としている。これにより、可撓性フィルム50の熱伝導率が上がるので、受熱部31と可撓性フィルム50との間、可撓性フィルム50と現像剤Gとの間での受熱特性が高まり、冷却効果を向上させることができる。また、金属以外の熱伝導率の良い材料で良熱伝導層を構成してもよい。また、この場合も、上記と同様に、現像剤G側の最表面層50aは、現像剤非相容性層とすることが望ましい。
【0064】
図7は、さらに別の可撓性フィルムの拡大断面図である。
図7に示す可撓性フィルム50は、受熱部31側の最表面層50cが、耐衝撃性と耐摩耗性の少なくとも一方を有する樹脂材料層で構成されている。これにより、受熱部31が可撓性フィルム50に接触することによる可撓性フィルム50の摩耗等を抑制することができ、可撓性フィルム50の寿命を延ばすことができる。また、この樹脂材料層に用いる材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。また、この場合も、現像剤G側の最表面層50aは現像剤非相容性層とすることが望ましく、中間層50bを金属層等の良熱伝導層で構成してもよい。
【0065】
図8は、現像装置の他の実施形態の概略断面図である。
図8に示す現像装置4は、ケーシング40の受熱部31が接触する接触部(可撓性フィルム50)以外の部分で、その一部40fを熱伝導率の良い金属材料で構成している。これにより、金属材料で構成している部分40fと現像剤Gとの間での受熱特性が高まり、冷却効果を向上させることができる。また、金属以外の熱伝導率の良い材料でケーシング40の一部を構成してもよい。なお、その他の構成は、上記実施形態の現像装置4と同様である。
【0066】
また、上記冷却装置9として、ヒートパイプを有する冷却装置を用いることも可能である。
図9に示すように、ヒートパイプ59の一端に受熱部31、他端にファン34とラジエータ33を有する放熱部30を設ける。ヒートパイプ59内に収容されている冷却媒体(作動液)は、受熱部31で吸熱することにより蒸発して蒸気となり、その蒸気は放熱部30へ移動した際に放熱して凝縮し液化する。そして、液化した冷却媒体は再び受熱部31へと移動し、ヒートパイプ59内を循環する。冷却媒体をヒートパイプ59内で循環させる手段(冷却媒体循環手段)としては、重力、毛細管現象、あるいは、受熱部31と放熱部30の圧力差により自励的に発生する圧力振動などの公知の手段を用いることができる。また、ヒートパイプを用いた冷却方式は、上記実施形態に示す冷却液を液体の状態で循環させる液冷式に比べて、ポンプやタンクが不要となる利点がある。ただし、冷却効果は、ヒートパイプを用いた冷却方式よりも上記液冷式の方が大きい。
【0067】
また、冷却装置9として、蒸気圧縮式冷凍装置を用いても構わない。
図10に示すように、蒸気圧縮式冷凍装置(冷却装置9)は、受熱部31と、圧縮機61と、膨張弁62と、ファン34とラジエータ33を有する放熱部30を備え、これらを循環路を構成する配管で接続している。この場合、冷却媒体は、受熱部31で吸熱を行い、液体から蒸気に変化した後、圧縮機61で高温高圧蒸気となって放熱部30へ送られる。放熱部30に送られた高温高圧蒸気は、冷却されて凝縮して液化し、膨張弁62で減圧・減温され、再び受熱部31へと送られる。このように、蒸気圧縮式冷凍装置を用いた場合は、冷却媒体が液体と気体との間で相変化することで冷却を行う潜熱冷却であるため、上記実施形態のような液体と気体と間での相変化を伴わない顕熱冷却に比べて、高い冷却効果が得られる。
【0068】
上述の実施形態では、冷却装置で冷却する被冷却体を現像装置としているが、その他の装置又は部材を被冷却体とすることも可能である。
【0069】
図11は、トナーボトル(現像剤収容器)を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
図11に示すトナーボトル65は、トナーを収容する円筒状のケーシング66を有している。この場合、トナーボトル65のケーシング66の一部を可撓性フィルム67で構成し、その可撓性フィルム67で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。本実施形態では、ケーシング66が図11の矢印に示す如く回転することにより、内部のトナーが搬送されて、図示しないトナー排出口よりトナーが排出されるようになっているので、可撓性フィルム67は全周に渡って設けられている。このように構成することで、トナーボトル65が回転しても、常に受熱部31は可撓性フィルム67と接触した状態となる。これにより、受熱部31の接触面と可撓性フィルム67、及び可撓性フィルム67と収容されているトナーとが、互いに空気層を介在させることなく密着することになる。その結果、それらの間の接触面積を大きく確保することができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られ、冷却効果を向上させることが可能となる。なお、本実施形態のように、可撓性フィルム67を全周に渡って設けた場合、そのままではトナーボトル65の強度が低下するので、図11に示すように、ケーシング66内に補強部材68を設けて補強するのがよい。
【0070】
また、図12は、別の構成のトナーボトルを被冷却体とした場合の構成を示す図である。
図12に示すトナーボトルは、ケーシング71の全体が可撓性フィルム69で構成されている。この場合、トナーボトル70のケーシング71の側面に冷却装置の受熱部31を接触させることにより、上記と同様に、受熱部31、ケーシング71(可撓性フィルム69)及びケーシング71内のトナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られる。ただし、このようにケーシング71の全体が可撓性フィルムで構成されているトナーボトル70は、ケーシング全体が容易に変形するので、受熱部31を十分な押圧力でトナーボトル70に接触させることができない可能性がある。その場合、剛性を有する骨組みなどの補強部材をケーシング71に設けることにより、トナーボトル70の全体形状をある程度保持し、受熱部31をトナーボトル70に対し十分な押圧力で接触させるようにすればよい。
【0071】
図13は、トナーボトルから現像装置にトナーを補給するトナー補給装置のサブホッパを被冷却体とした場合の構成を示す図である。
図13に示すトナー補給装置は、トナーを一時的に貯留する一時貯留部としてのサブホッパ76と、粉体ポンプであるモーノポンプ77とを有する。モーノポンプ77はトナー搬送路を構成するチューブ78を介してトナーボトル64と接続されている。さらに、モーノポンプ77はサブホッパ76を介して現像装置と連通している。また、サブホッパ76内には、貯留されているトナーを撹拌するための撹拌ユニット81や撹拌スクリュ82等が配設されている。この場合、モーノポンプ77を駆動することでトナーボトル64内のトナーがチューブ78を経由してサブホッパ76内に貯蔵される。そして、サブホッパ76内に貯蔵されたトナーは、現像装置の内部のトナー濃度を一定の範囲に保つために画像出力に応じて現像装置に補給されるようになっている。
【0072】
ここでは、上記のように構成されたトナー補給装置において、サブホッパ76のケーシング79の一部を可撓性フィルム80で構成し、その可撓性フィルム80で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。これにより、受熱部31、可撓性フィルム80及びサブホッパ76内のトナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)を得ることが可能となる。
【0073】
図14は、画像形成装置に配設されるトナー搬送路(現像剤搬送路)を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
この場合、図14に示すように、トナー搬送路83は、内部にスクリュ又はコイル等のトナー搬送手段86を収容した円筒状のケーシング83を有しており、このケーシング83の一部を可撓性フィルム85で構成している。そして、この可撓性フィルム85で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。これにより、受熱部31、可撓性フィルム85及びケーシング83内で搬送されるトナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られるようになる。
【0074】
図15は、中間転写ベルト上の残留トナーを除去するベルトクリーニング装置を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
図15に示すベルトクリーニング装置87は、ケーシング90と、クリーニング手段としてのクリーニングブラシ88及びクリーニングブレード89、トナー回収コイル91を有している。この場合、中間転写ベルト10が図15の矢印の方向に移動(回転)すると、中間転写ベルト10に当接するクリーニングブラシ88及びクリーニングブレード89によって中間転写ベルト10上に残留するトナーが除去され、除去されたトナーはケーシング90内に収容される。そして、トナー回収コイル91が回転することにより、ケーシング90内のトナーが図示しない廃トナー回収容器へ搬送されるようになっている。
【0075】
ここでは、上記のように構成されたベルトクリーニング装置87において、ケーシング90の一部を可撓性フィルム92で構成し、その可撓性フィルム92で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。これにより、受熱部31、可撓性フィルム92及びケーシング90内のトナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られるようになる。
【0076】
また、図16は、感光体上の残留トナーを除去する感光体クリーニング装置を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
図16に示す感光体クリーニング装置93は、ケーシング94と、クリーニング手段としてのクリーニングブラシ95及びクリーニングブレード96、トナー回収コイル97を有する。この場合、感光体2が図16の矢印の方向に回転すると、感光体2に当接するクリーニングブラシ95及びクリーニングブレード96によって感光体2上に残留するトナーが除去され、除去されたトナーはケーシング94内に収容される。そして、トナー回収コイル97が回転することにより、ケーシング94内のトナーが図示しない廃トナー回収容器へ搬送される。
【0077】
ここでは、上記のように構成された感光体クリーニング装置93において、ケーシング94の一部を可撓性フィルム98で構成し、その可撓性フィルム98で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。これにより、上記ベルトクリーニング装置87と同様に、受熱部31、可撓性フィルム98及びケーシング94内のトナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)が得られる。
【0078】
図17は、廃トナーを回収する廃トナー回収容器(現像剤回収容器)を被冷却体とした場合の構成を示す図である。
上述のように、ベルトクリーニング装置87や感光体クリーニング装置93で除去された廃トナーは、図17に示すように、トナー搬送路120によって運ばれ、廃トナー回収容器110のケーシング111内に回収される。ここでは、廃トナー回収容器110のケーシング111の一部を可撓性フィルム112で構成し、その可撓性フィルム112で構成された部分に冷却装置の受熱部31を接触させている。これにより、受熱部31、可撓性フィルム112及びケーシング111内の廃トナーを、空気層を介在させずに密着させることができ、高い受熱特性(熱交換率)を得ることが可能となる。また、この場合、可撓性フィルム112で構成する部分、すなわち冷却する部分を、トナー搬送路120から廃トナーが搬入される入口部に近い位置とすることにより、トナー搬送路120から頻繁に搬入される廃トナーを早い段階で効果的に冷却することが可能となる。
【0079】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0080】
実施例1は、図1に示す実施形態の構成を採用している。
この実施例1では、受熱部31を、内部にφ6のU字型の流路を有する30mm×330mm×14mmのアルミブロックで構成した。放熱部30には、一辺が120mmの正方形のアルミニウム製コルゲート型(厚み20mm)のラジエータ33を直列に3個配設し、ファン34には、ラジエータ33と同サイズで一辺が120mmの正方形の軸流ファン(流速2.3m/s)を用いた。また、ポンプ32には、締め切り揚程が25kPaであって、冷却液に接触する接液部が樹脂製のピストン式マイクロポンプを用い、タンク35には、容積1200mLのポリプロピレン製タンクを用いた。また、金属パイプ37を、アルミニウム製のパイプで構成し、ここでは、樹脂チューブ38の代わりに、ブチルゴムとEPDM混合成分のゴム製チューブを用いた。また、冷却液として、プロピレングリコールを主成分とし、防錆剤を含有した−30℃不凍仕様の不凍液を用いた。また、ポンプ32による冷却液の送液流量は、0.5L/minに設定した。
【0081】
以上の構成により、軟化開始温度が45℃のトナーを使用して、室温32℃の環境において、1分間に75枚のカラー両面印刷を3時間連続して行ったところ、各色の現像装置内のトナーの最高温度は、イエローが42℃、シアンが42℃、マゼンタが43℃、ブラックが43℃となり、いずれの色のトナー温度も軟化開始温度以下となった。その結果、トナー温度が軟化開始温度以上になった際に見られるトナー固着による白スジ画像や、電気ノイズによる異常画像は生じなかった。
【実施例2】
【0082】
実施例2では、図15に示すのと同様の構成で、ベルトクリーニング装置の冷却を行った。
この場合、受熱部31を、内部にφ6の銅製パイプを有するL字状のアルミブロック(奥行き330mm)で構成した。放熱部30には、一辺が120mmの正方形のアルミニウム製コルゲート型(厚み20mm)のラジエータ33を1個配設し、ファン34には、ラジエータ33と同サイズで一辺が120mmの正方形の軸流ファン(流速2.3m/s)を用いた。また、ポンプ32には、締め切り揚程が25kPaであって、冷却液に接触する接液部が樹脂製のピストン式マイクロポンプを用い、タンク35には、容積500mLのポリプロピレン製タンクを用いた。また、循環路として、金属パイプ37は使用せず、ブチルゴムとEPDM混合成分のゴム製チューブを用いた。また、冷却液として、プロピレングリコールを主成分とし、防錆剤を含有した−30℃不凍仕様の不凍液を用いた。また、ポンプ32による冷却液の送液流量は、1.0L/minに設定した。
【0083】
以上の構成により、軟化開始温度が45℃のトナーを使用して、室温32℃の環境において、1分間に75枚のカラー両面印刷を2.5時間連続して行ったところ、ベルトクリーニング装置内の廃トナー温度は43℃を上限に温度上昇が抑制された。また、トナーの固着や、これによるトナー回収コイルのロック等の現象も見られなかった。
【0084】
以上のように、本発明では、被冷却体の受熱部との接触部を可撓性フィルム(可撓性部材)で構成することにより、受熱部が被冷却体に接触した際に、可撓性フィルムが受熱部の接触面の形状に沿って変形するので、可撓性フィルムと受熱部とを空気層を介在させることなく接触させることができる。このように、本発明によれば、被冷却体と受熱部との間に熱伝導シートを介在させなくても両者間の接触面積を増大させることができるので、受熱特性(熱交換率)が飛躍的に向上する。これにより、被冷却体を効果的に冷却することができるようになり、温度上昇に伴う異常の回避が可能となる。
【0085】
また、本発明によれば、グリースを使用しなくても被冷却体と受熱部との間の接触面積を増大させることができる。このため、グリースの劣化などに伴う塗り直し作業を行う必要がなく、被冷却体と受熱部との間の接触状態を長期に亘って良好に維持することができる。さらに、グリースを使用しないことで、グリースを使用しにくい箇所においても受熱部を設置することができるようになり、画像形成装置における装置や部材の配置のレイアウトの自由度が広がる。
【0086】
また、本発明によれば、被冷却体と受熱部との接触面積の平面度を高精度に確保しなくても、両者間の接触面積を増大させることができるので、低コストで冷却効果の向上を実現することができるようになる。
【0087】
なお、上述の実施形態では、被冷却体として現像剤を収容している装置又は部材を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明の構成はこれに限定されることはなく、現像剤を収容しない被冷却体に対しても本発明の構成を適用可能である。また、本発明を適用する画像形成装置は、図1に示すような4つの画像形成部を横方向に並べた4色タンデム型の電子写真方式の画像形成装置に限らない。1色のみ使用するモノクロ画像形成装置や、5色以上の色を使用するカラー画像形成装置、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等にも、本発明を適用可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
4 現像装置
9 冷却装置
31 受熱部
50 可撓性フィルム
50a 現像剤側の最表面層
50b 中間層(良熱伝導層)
50c 受熱部側の最表面層
55 コイルスプリング(押圧手段)
59 ヒートパイプ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2007−24985号公報
【特許文献2】特開2011−18008号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に設けられ、冷却装置の受熱部と接触し、当該受熱部と放熱部との間で循環する冷却媒体により冷却される被冷却体であって、
前記受熱部と接触する接触部を可撓性部材で構成したことを特徴とする被冷却体。
【請求項2】
前記可撓性部材を現像剤と接触する部分に配設した構成で、
前記可撓性部材の少なくとも現像剤側の最表面層を、現像剤と接触しても現像剤を溶解させない現像剤非相容性層とした請求項1に記載の被冷却体。
【請求項3】
前記可撓性部材が、熱伝導率の良い良熱伝導層を少なくとも有する請求項1又は2に記載の被冷却体。
【請求項4】
前記可撓性部材の少なくとも前記受熱部側の最表面層を、耐衝撃性と耐摩耗性の少なくとも一方を有する樹脂材料層とした請求項1から3のいずれか1項に記載の被冷却体。
【請求項5】
前記受熱部と接触する接触部以外の部分の少なくとも一部を、熱伝導率の良い材料で構成した請求項1から4のいずれか1項に記載の被冷却体。
【請求項6】
画像形成装置本体に設けられた被冷却体に接触する受熱部と、放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間で冷却媒体を循環させるための循環手段とを有する冷却装置を備えた画像形成装置において、
前記被冷却体を、請求項1から5のいずれか1項に記載の被冷却体としたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記冷却装置を、冷却液を液体の状態で循環させる液冷式の冷却装置とした請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記冷却装置を、ヒートパイプを有する冷却装置とした請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記冷却装置を、蒸気圧縮式冷凍装置とした請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記受熱部を前記被冷却体に押圧する押圧手段を備え、当該押圧手段の押圧力の反作用を被冷却体の所定の箇所に及ばせるように構成した請求項6から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−237879(P2012−237879A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106933(P2011−106933)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】