説明

被処理物投入装置

【課題】被処理物収容部から被処理物を投入可能な状態のままで被処理物通路の出口端を移動させることが容易で作業性の良い被処理物投入装置を提供する。
【解決手段】被処理物を収容する被処理物収容部と、被処理物が気密状態で通過して出口端12aから処理装置に投入可能な被処理物通路12と、前記被処理物収容部から前記被処理物通路12へと被処理物を気密状態で取り出し可能な被処理物取出機構と、前記被処理物通路12の処理装置側と被処理物収容部側とを遮断可能な閉鎖部14と、前記被処理物通路12のうちで前記閉鎖部14よりも被処理物収容部側の位置にて、前記被処理物通路を分離及び接合可能なジョイント部15とが設けられており、前記被処理物通路12は、前記ジョイント部15の接合位置を維持したままで、前記出口端が前記接合位置に対して接近・離反するようにして伸縮可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を気密状態で処理する処理装置に対し、被処理物を外部から気密状態で投入するための被処理物投入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物を気密状態で処理する処理装置として、例えば、被処理物であるシリコン材料を処理装置に投入して溶融し、それを固体化させる処理を行うことによって、半導体基板の材料である単結晶シリコンを製造する装置が知られている。前記の製造工程中、処理装置の内部は外気とは異なる特殊な雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気や真空雰囲気)中に置かれている。
【0003】
そして、前記処理装置に対し、外部から被処理物を気密状態で投入するための被処理物投入装置もまた知られている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1に記載された被処理物投入装置(シリコン顆粒供給装置)は、ホッパーと、フィーダと、筐体と、石英ポートと、ベローズとを備えたものである。不活性ガス雰囲気とした筐体の内部にシリコン顆粒を収容するホッパーが設けられ、このホッパーの下方に被処理物(シリコン顆粒)を搬送するためのフィーダが設けられている。そして、ベローズを介して筐体と接続された石英ポートの一部が処理装置(加熱炉)の内部に挿入され、加熱炉の内部と連通している。シリコン顆粒供給装置と加熱炉各々の内部は気密状態とされ、具体的には不活性ガス雰囲気におかれる。つまり、シリコン顆粒供給装置と加熱炉とは同じ不活性ガス雰囲気となる。これにより、ホッパーから石英ポートを介してシリコン顆粒を加熱炉の内部に気密状態(不活性ガス雰囲気)で投入することができる。
【0005】
特許文献2に記載された被処理物投入装置(装入材供給装置)も、基本的な構成は特許文献1に記載されたものと同様であって、ホッパと、トラフと、振動部と、装入材投入室と、シュータとを備えたものである。真空雰囲気とした装入材投入室の内部に被処理物(装入材)を収容するホッパが設けられ、このホッパの下方に装入材を搬送するためのトラフ及び振動部が設けられている。そして、シュータの一部が処理装置(真空槽)の内部に挿入され、真空槽の内部と連通している。装入材投入室と真空槽とは共に外気から密閉できるものとされており、各々の内部は気密状態とされ、具体的には真空雰囲気におかれる。つまり、装入材供給装置と真空槽とは同じ真空雰囲気となる。これにより、ホッパからシュータを介して装入材を真空槽の内部に気密状態(真空雰囲気)で投入することができる。
【0006】
ところで、特許文献1に記載された被処理物投入装置(シリコン顆粒供給装置)は、ホッパーに収容されたシリコン顆粒が無くなる等してホッパーにシリコン顆粒を補充しなければならなくなった場合、筐体に設けられた蓋を開放し、そこからホッパーにシリコン顆粒を補充するようになっている。また、特許文献2に記載された被処理物投入装置(装入材供給装置)は、ホッパに収容された装入材が無くなる等してホッパに装入材を補充しなければならなくなった場合、装入材投入室に設けられた真空扉を開放し、そこからホッパに装入材を補充するようになっている。
【0007】
しかしながら、かかる被処理物投入装置(シリコン顆粒供給装置、装入材供給装置)は、いずれも処理装置の内部と連通しているため、処理装置の処理中において、被処理物を補充しようとすれば、被処理物投入装置の開放(蓋や真空扉の開放)に伴い、処理装置の内部までが外気に開放されてしまい、それまで保たれていた気密状態(特殊な雰囲気)が崩されてしまう。よって、被処理物の補充は処理中にはできず、処理後に行う必要があり、その分、アイドルタイム(稼動停止時間)が増えるという問題があった。
【0008】
前記問題に鑑み、本願の発明者らは、図3に示すような被処理物投入装置500を発明した(特願2010−178954)。この被処理物投入装置500は、被処理物(具体的には多結晶シリコン(シリコンナゲット))を加熱して溶融する炉体(るつぼ)F510を内部に設けた処理装置F500に対し、処理装置F500の外部から被処理物を炉体F510内に投入することのできるものである。
【0009】
具体的に、この被処理物投入装置500は、被処理物を一時的に収容可能な被処理物収容部(ホッパー)511、及び、当該被処理物収容部511から供給される被処理物を搬送するためのフィーダ512を備え、前記の被処理物収容部511及びフィーダ512を含む部分が移動機構550によって上下・前後・左右の各方向に別個に移動可能に支持された投入装置本体510と、当該投入装置本体510から処理装置F500へ向かう被処理物が通過可能な被処理物通路520とから構成されている。前記被処理物通路520は、石英ガラス製であり、長手方向に一体とされたパイプ状部522を有し、このパイプ状部522は、図示のように斜め下方向に向かうように設けられており、出口端521から被処理物を炉体F510内に投入できる。この被処理物通路520は、駆動機構を備えており、炉体F510に対して長手方向に移動(前進・後退)できるようになっている。前記被処理物通路520の後退は、固体化された単結晶シリコンを引き上げる際に、単結晶シリコンに干渉しないようになされる。
【0010】
また、前記投入装置本体510と被処理物通路520との間には、投入装置本体510と被処理物通路520とを分離できるようにジョイント部530が設けられ、更に、当該ジョイント部530の(被処理物の通過方向における)下流側に、被処理物通路520を遮断可能な閉鎖部540が設けられている。このため、閉鎖部540を閉じた状態として投入装置本体510に設けられている蓋部513を開けることで、被処理物収容部511に被処理物を補充できる。そして、この被処理物の補充作業は、ジョイント部530を境に投入装置本体510を被処理物通路520から分離し、移動機構550によって被処理物収容部511を作業しやすい位置に移動させることで、より効率良く行える。
【0011】
前記のように、本願の発明者らが発明した被処理物投入装置500により、処理装置F500の内部の特殊な雰囲気を崩すことなく、被処理物の補充を行うことができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−115736号公報
【特許文献2】特開2003−21470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、炉体F510に投入した被処理物の落下の勢いにより、炉体F510内にある未溶融の被処理物、または、溶融状態の被処理物(溶湯)が跳ね上がって炉体F510外に出てしまうことを防止するために、処理前の投入、処理途中の追加投入(追装)のいずれの場合にあっても、被処理物通路520の出口端521をできるだけ炉体F510内にある溶湯の表面あるいは未溶融の被処理物に近い位置に配置して被処理物を投入することが望ましい。
【0014】
このように被処理物通路520の出口端521をできるだけ溶湯の表面に近い位置に配置した上で被処理物を投入した場合、被処理物が炉体F510内に山のように積み重なり、被処理物通路520の出口端521を塞ぐことで、被処理物通路520内に被処理物がつかえ、投入が継続できなくなる場合がある。また、被処理物の溶融が進むに伴い、炉体F510内の溶湯の表面が上昇し、被処理物通路520の出口端521が溶湯に浸かってしまう場合もある。これらのような場合には、仮に、処理装置F500に対して被処理物通路520を後退させること(図示右上方に移動させること)ができれば、前記山のように積み重なった未溶融の被処理物と被処理物通路520の出口端521との間隔が空き、前記つかえていた被処理物を炉体F510内に投入できるようになる。また、上昇した溶湯の表面から被処理物通路520の出口端521を離すことができる。
【0015】
ところが、前記のように、被処理物通路520は長手方向に一体とされたパイプ状部522を有しているため、前記のように被処理物通路520を後退させようとすると、被処理物通路520の全体が後退してしまう。つまり、被処理物通路520の出口端521はもちろんのこと、同時に被処理物通路520の図示上端のジョイント部530も斜め上方に移動してしまうことになる。
【0016】
そのため、投入装置本体510から炉体F510内に被処理物を投入することを止めないために、図示のように投入装置本体510を被処理物通路520から分離しないままで被処理物通路520を後退させるためには、投入装置本体510も同方向に移動させる必要がある。
【0017】
ところが、前記のように、単結晶シリコンを引き上げる際に当該単結晶シリコンとの干渉を避けるために行われる被処理物通路520の後退は、ジョイント部530を境に投入装置本体510を被処理物通路520から分離して行うことが前提となっており、投入装置本体510を被処理物通路520から分離しないままで被処理物通路520を後退することは想定されていなかった。そのため、投入装置本体510は被処理物通路520の後退に合わせた移動がなされるように構成されていない。
【0018】
つまり、移動機構550は前記のように上下・前後・左右の各方向に別個にしか移動させることができないため、投入装置本体510を被処理物通路520から分離しないままで被処理物通路520を後退させるためには、ジョイント部530の前記斜め上方への移動に合わせて、投入装置本体510を、例えば、まず上方に移動させ、その後、後方に移動させるということをしなければならない。そして、投入装置本体510を各方向別個に動かさなければならないため、一度の移動距離を大きくすることができず、被処理物通路520の後退と投入装置本体510の移動を交互に小刻みに行わざるを得なかった。しかも、被処理物が収容された投入装置本体510は重く、200kg程度になることもある。そのため、投入装置本体510を被処理物通路520から分離させないまま、被処理物通路520の出口端521を移動させることは大変困難であった。このように、前記被処理物投入装置500は、作業性に関して改良の余地があった。
【0019】
そこで本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、被処理物収容部から被処理物を投入可能な状態のままで被処理物通路の出口端を移動させることが容易であり、作業性の良い被処理物投入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の被処理物投入装置は、被処理物を、内部に設けられた処理部にて気密状態で処理する処理装置に対し、被処理物を外部から気密状態で投入するための被処理物投入装置において、被処理物を一時的に収容可能で、被処理物を収容する際に用いる開閉可能な収容口を有する被処理物収容部と、前記処理装置の内部に投入される被処理物が気密状態で通過して出口端から前記投入が可能な被処理物通路と、前記被処理物収容部から前記被処理物通路へと被処理物を気密状態で取り出し可能な被処理物取出機構と、前記被処理物通路の処理装置側と被処理物収容部側とを遮断可能な閉鎖部と、前記被処理物通路のうちで前記閉鎖部よりも被処理物収容部側の位置にて、前記被処理物通路を分離及び接合可能なジョイント部とが設けられており、前記被処理物通路は、前記ジョイント部の接合位置を維持したままで、前記出口端が前記接合位置に対して接近・離反するようにして伸縮可能であることを特徴としている。
【0021】
前記構成によると、前記被処理物通路は、前記ジョイント部の接合位置を維持したままで、前記出口端が前記接合位置に対して接近・離反するようにして伸縮可能であることから、被処理物を収容する被処理物収容部を移動させることなく、処理部に対し、被処理物通路の出口端を接近・離反させることができる。
【0022】
そして、本発明の被処理物投入装置は、前記被処理物通路が、同一軸線上に配置された第1パイプと第2パイプとを組み合わせてなる伸縮パイプユニットを有し、前記伸縮パイプユニットが、前記第1パイプが被処理物の通過方向における上流側に配置され、前記第2パイプが同下流側に配置され、前記第1パイプの上流端に対して、前記被処理物通路の出口端となる前記第2パイプの下流端が接近・離反するように、前記第2パイプが長手方向に移動することで前記伸縮パイプユニットが伸縮するものであることが好ましい。
【0023】
前記好ましい構成によると、第1パイプと第2パイプとを組み合わせてなる伸縮パイプユニットが伸縮するものであることから、比較的簡単な構成にて被処理物通路の出口端を、処理部に対して接近・離反させることができる。
【0024】
そして、本発明の被処理物投入装置は、前記伸縮パイプユニットが、前記接近の際に前記第1パイプの下流端が前記第2パイプに挿入され得るように構成されており、前記閉鎖部が、前記第1パイプと前記第2パイプとの間を遮断可能に設けられ、前記閉鎖部が開かれた際に、前記第1パイプの下流端が前記第2パイプに挿入された状態で被処理物の投入がなされるものであることが好ましい。
【0025】
前記好ましい構成によると、前記閉鎖部が開かれた際に、前記第1パイプの下流端が前記第2パイプに挿入された状態で被処理物の投入がなされるものであることから、閉鎖部における、遮断を実現する構成部材に対して被処理物が触れないようにでき、被処理物の破片が挟まること等による遮断不良の発生を抑制できる。
【0026】
そして、本発明の被処理物投入装置は、前記処理装置と前記ジョイント部との間にて、前記伸縮パイプユニットのうち外気に接し得る部分が、気密性を有し、かつ、長手方向に伸縮可能な外被材で覆われたものであることが好ましい。
【0027】
前記好ましい構成によると、伸縮パイプユニットが外被材で覆われたことにより直接露出せず、伸縮パイプユニットの損傷の発生を抑制できる。なお、「外気」とは、被処理物投入装置及び処理装置の外部雰囲気を指すものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の被処理物投入装置は、被処理物を収容する被処理物収容部を移動させることなく、処理部に対し、出口端を接近・離反させることができるため、被処理物収容部から被処理物を投入可能な状態のままで被処理物通路を移動させることが容易で作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】処理装置と被処理物投入装置とを示す概要図である。
【図2】第2被処理物通路及びジョイント部を示すものであって、(A)(B)は伸縮パイプユニットが最も伸長した状態を示し、(B)は側面視の概要図、(A)は(B)のX矢視における概要図である。(C)(D)は伸縮パイプユニットの中間的な長さの状態を示し、(D)は側面視の概要図、(C)は(D)のY矢視における概要図である。(E)(F)は伸縮パイプユニットが縮んだ状態を示し、(E)は側面視の概要図、(E)は(F)のZ矢視における概要図である。
【図3】本願の発明者らが以前に発明した処理装置と被処理物投入装置とを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。下記における方向の説明につき、「上下」とは、図1に示された上下方向を基準としたものである。また、「前後」とは、図1に示された状態にて、処理装置F1に近い側を前方、遠い側を後方としたものである。また、「上流・下流」とは、被処理物Sの通過方向(流れ方向)を基準としたものである。ただし、本発明はこの方向で説明した態様に限定して理解されるものではない。
【0031】
−処理装置−
まず、本発明に係る被処理物投入装置1を取り付ける対象である処理装置F1について述べておく。この処理装置F1は、図1に示すように、内部を気密状態とでき、この内部に設けられた、処理部としての炉体(るつぼ)F11にて被処理物Sを溶融できるものである。本実施形態では、半導体基板の材料である単結晶シリコンS2を製造するために、被処理物Sとして塊状である多結晶シリコン(シリコンナゲット)を炉体F11に入れて加熱し、溶融する。ちなみに、本実施形態で用いられるシリコンナゲットの径寸法は約10mmである。
【0032】
本実施形態の処理装置F1では、CZ法により単結晶シリコンS2が製造される。本実施形態の単結晶シリコンS2の製造方法について簡単に説明しておく。まず、不活性ガス雰囲気中にて炉体F11に投入されたシリコンナゲットが約1800℃に加熱されて溶融される。この溶融状態とされたシリコン(以下、「溶湯」と記す)S1に種となる単結晶シリコンを漬け、その後回転しつつゆっくりと持ち上げることで結晶を成長させていき、最終的には略円柱状の固体である単結晶シリコン(インゴット)S2が形成される。つまり、処理装置F1は、溶湯S1から単結晶シリコンS2を引き上げるために用いられる。
【0033】
本実施形態における不活性ガス雰囲気とは、具体的には、処理装置F1の内部空間を一度真空引きした上で、アルゴンや窒素などの不活性ガスで満たされた雰囲気を指す。そのため、脱気ポンプ(真空ポンプ)及び不活性ガス供給管が処理装置F1に設けられている(図示していない)。なお、下記の被処理物投入装置1の内部についても、下記の閉鎖部14が閉じられていない場合においては処理装置F1内と同じ不活性ガス雰囲気に置かれる。
【0034】
なお、被処理物Sの種類によっては処理装置F1の内部を真空雰囲気としても良い。特に、溶湯S1から不純物を除去したい場合には真空雰囲気とされる場合がある。ただ、真空雰囲気とした場合は、被処理物Sが処理装置F1の内部で蒸発してしまう。本実施形態ではそれが不都合であるため、不活性ガスの圧力によってシリコンの蒸発を抑えるために不活性ガスを処理装置F1の内部に導入している。また、導入する不活性ガスの圧力については被処理物Sの種類に対して最適なものとする。
【0035】
また、本実施形態では被処理物Sを構成する物質をシリコンとしているが、本発明の対象となる被処理物Sはこれに限定されるものではなく、シリコン以外の金属や樹脂などの種々の物質を被処理物Sとすることができる。
【0036】
また、本実施形態における「処理」とは、シリコンナゲットの加熱による溶融、及び、溶湯S1からの引き上げによる単結晶シリコン(インゴット)の形成までの一連の操作を含んでいるが、本発明における「処理」とは、もっと広い概念であって、気密状態で被処理物Sに種々の物理変化あるいは化学変化を加えるための操作全般を指している。
【0037】
−被処理物投入装置−
被処理物投入装置1は、図1に示すように、前記の処理装置F1に対し、処理装置F1の外部から被処理物Sを炉体F11内に投入することのできるものである。なお、以下においては、下記ジョイント部15において分離される、ジョイント部15よりも被処理物収容部11の側に設けられた部分の総称を投入装置本体1aとして説明する。
【0038】
この被処理物投入装置1は、被処理物収容部11と搬送部1bとを備えている。搬送部1bは被処理物収容部11に収容されていた被処理物Sを処理装置F1へと搬送するための部位であって、被処理物通路12と被処理物取出機構13を備えている。そして搬送部1bは、閉鎖部14とジョイント部15とを備えている。詳しくは後述する。
【0039】
被処理物Sは、被処理物収容部11から搬送部1bにおける被処理物通路12を通り、処理装置F1まで搬送される。この搬送経路のうちで被処理物Sが触れる部分については、磨耗に強い材料である石英ガラス製とされているか、あるいは石英ガラスの内張りがなされており、磨耗による金属粉などの不純物が被処理物Sに混入する可能性を極力抑えているため、純度の高い単結晶シリコンS2を製造することができる。
【0040】
本実施形態では、被処理物収容部11、被処理物通路12の一部、被処理物取出機構13の各々がステンレス合金製の供給タンク111の内部に設けられている。そして被処理物投入装置1を処理装置F1に取り付けた場合において、この供給タンク111自体が外気に対する気密状態を保持できる。なお、本実施形態の説明における「外気」とは、被処理物投入装置1及び処理装置F1の外部雰囲気を指すものとする。
【0041】
この供給タンク111は、略円筒形状の供給タンク本体111aと、この供給タンク本体111aから水平方向に突出している突出部111bとから構成されており、本実施形態では、図示のようにフランジ接続により両者が一体とされている。なお、このように供給タンク111を設けず、被処理物収容部11と被処理物通路12とを、外気に対する気密状態を保持できるように、直接接続した構造を採用しても良い。また、供給タンク本体111aと突出部111bとが溶接等により一体とされていても良い。
【0042】
−被処理物収容部(ホッパー)−
被処理物収容部11は、搬送されるまでの間、被処理物Sを一時的に収容しておくことのできる部位であって、被処理物Sを収容する際に用いる開閉可能な収容口111cを備えている。本実施形態では、蓋部111dによって収容口111cが開閉できるようになっている。そして、本実施形態では、この被処理物収容部11としてホッパーが用いられている。このホッパー11は、前記の供給タンク111内に平板状の石英ガラスが張り合わせられて設けられている。そして形状については、上下両端部が開放された八角柱の下端に八角錐が接続されたものとされている。前記八角錐部分の下端は開放されていて、その部分から被処理物Sが自然落下し、被処理物Sが搬送部1bに取り出されるようになっている。
【0043】
本実施形態のように八角柱と八角錐を組む合わせた形状とすると、平面視が長方形や台形である平板状の石英ガラスを組み合わせて形成できることから、ホッパー11を容易に製造でき、製造コストを抑えることができる。なお、本発明の被処理物収容部11は、本実施形態のホッパーのように八角柱と八角錐を組む合わせた形状に限られるものではなく、その他の多角柱と多角錐を組み合わせた形状であって良い。また、場合によっては円筒形状を採用しても良い。
【0044】
本実施形態における蓋部111dは、供給タンク本体111aの上端部に、外気に対する気密状態を保持できるように設けられたものであって、この蓋部111dを供給タンク本体111aから外すことにより収容口111cを開放し、ホッパー11に被処理物Sを補充することができるようになっている。
【0045】
−被処理物通路−
被処理物通路12は、処理装置F1に投入される被処理物Sが通過可能な部位である。上流端が前記のホッパー11から被処理物Sを受けることができる位置に設けられている。そして、下流端(出口端)12aが処理装置F1に対して被処理物Sを投入できる位置に設けられている。より具体的には、この被処理物通路12における下流端12aは、処理装置F1の内部であり、かつ、炉体F11の上方に位置している。
【0046】
本実施形態の被処理物通路12は、ホッパー11の側に位置する第1被処理物通路121と、処理装置F1側に位置する第2被処理物通路122とから構成されており、下記のジョイント部15を境として第1被処理物通路121と第2被処理物通路122とが分離及び接合可能とされている。ここで、前記の下流端12aは第2被処理物通路122(より詳しくは第2パイプ122b)に属している。本実施形態では、第1パイプ122a及び第2パイプ122b(後述)を取り替える際を除いて、第2被処理物通路122を処理装置F1から分離させる必要がない。そのため、移動機構2(後述)は第1被処理物通路121を移動させることができれば良く、第2被処理物通路122の移動を負担する必要がない。すなわち、前記のように被処理物通路12を第1被処理物通路121と第2被処理物通路122とから構成することによって、移動機構2の設計を簡素化できる。
【0047】
そして、この被処理物通路12とホッパー11とは、被処理物Sを外気に触れさせることなく搬送することが可能な位置関係に設けられている。本実施形態では、ホッパー11が供給タンク111の内部に形成され、第1被処理物通路121が供給タンク111の下部に形成されていることにより、被処理物Sを外気に触れさせることなく搬送させることが可能である。
【0048】
本実施形態においては、第1被処理物通路121はホッパー11の直下から前方へ水平に向かう部分とされており、供給タンク本体111aの下部と、この供給タンク本体111aの下部から前方に突出した突出部111bにまたがって存在している。前記突出部111bの下流側には、第1パイプ122aの拡大部分122a1(後述)が位置しており、被処理物Sがこの拡大部分122a1から入って第2被処理物通路122へと搬送されていく。
【0049】
第2被処理物通路122は第1被処理物通路121の下流端に対し、下記ジョイント部15を介して、被処理物Sが通過可能なようにつながっており、下斜め前方へ傾斜するように配置されている。なお、本実施形態では、図1に示すように、第2被処理物通路122の一部(第1パイプ122aの拡大部分122a1)が第1被処理物通路121に入り込んでいるが、このように第1被処理物通路121の下流端と第2被処理物通路122の上流端がラップして設けられていても良い。
【0050】
本実施形態の第2被処理物通路122は、いずれも石英ガラス製であり、同一軸線上に配置された第1パイプ122aと第2パイプ122bとが組み合わされてなる伸縮パイプユニット122xを有している。第1パイプ122aの外径(拡大部分122a1を除く)は、第2パイプ122bの内径(拡大部分122b1を除く)よりも小さく形成されている。これにより、第1パイプ122a(挿入側パイプ)を第2パイプ122b(被挿入側パイプ)に挿入することが可能であり、前記挿入の度合、あるいは、未挿入の状態にある各パイプ122a,122b間の距離に応じて、伸縮パイプユニット122xを長手方向に伸縮させることができる(伸縮パイプユニット122xの全長を変化させることができる)。この伸縮の際には、第1パイプ122aの上流端に対して第2パイプ122bの下流端122b2が接近・離反することになる。
【0051】
第1パイプ122aの上流側端部には、先端に向かうにつれ径寸法が拡大された拡大部分122a1が形成されている。図1に示すように、この拡大部分122a1は被処理物取出機構(電磁振動フィーダ)13のトラフ132の下流端下方に位置し、トラフ132上を搬送される被処理物Sを受け止め、第1パイプ122a内へ導く部分である。一方、下流端122a2は、第1パイプ122aの長手方向に直交する断面で切断されている。この下流端122a2は、伸縮パイプユニット122xが縮む際に、第2パイプ122bに挿入される部分である。
【0052】
そして、第2パイプ122bの上流側端部にも、先端に向かうにつれ径寸法が拡大された拡大部分122b1が形成されている。この拡大部分122b1は、通路移動機構17の駆動プレート175(後述)に連結された第2パイプ支持部16に対し、第2パイプ122bを取り付けるための部分である。また、第1パイプ122aを第2パイプ122bに挿入する際に、第1パイプ122aの下流端122a2を導くガイドともなり得る。また、拡大部分122b1の上方には閉鎖部14(後述)が設けられている。この閉鎖部14は、第2パイプ122bと一体となるように設けられている。一方、下流端122b2(被処理物通路12の下流端12aと一致)は、図示のように水平方向に切断されたものであっても良いし、垂直方向(炉体F11の中央を通る垂直線Cに平行な方向)に切断されたものであっても良い。
【0053】
このように第2被処理物通路122が構成されたことにより、図2(B)(D)(F)に示したように、ジョイント部15(図示上端部分)における、第1被処理物通路121との接合位置を維持したままで(固定した状態で)、第2パイプ122bを第1パイプ122aに対して移動させ、第2被処理物通路122を長手方向に伸縮させることができる。このように、伸縮パイプユニット122xを挿入、あるいは、接近・離反により伸縮させるものであることから、比較的簡単な構成にて被処理物通路122の下流端12aを、炉体F11に対して接近・離反させることができる。
【0054】
図2(B)は伸縮パイプユニット122xが最も伸長した状態を示し、図2(D)は伸縮パイプユニット122xが少し縮んだ状態を示し、図2(F)は伸縮パイプユニット122xが更に縮んだ状態を示している。図2(B)に示した状態では、第1パイプ122aがまだ第2パイプ122bに挿入されていない。なお、この状態においては閉鎖部14内に第1パイプ122aが存在していないため、閉鎖部14を閉じることができる。図2(D)(F)に示した状態では、第1パイプ122aが第2パイプ122bに挿入されており、閉鎖部14内に第1パイプ122aが存在するため、閉鎖部14は開かれている。
【0055】
このように、第2被処理物通路122を伸縮パイプユニット122xの伸縮可能な範囲内で任意の長さとすることができる。本実施形態では、第1パイプ122aが固定部12bによって処理装置F1に固定されている。そのため、処理装置F1に対して第1パイプ122aは移動せず、第2パイプ122bが移動することとなる。よって、処理装置F1(より具体的には炉体F11)に対する処理物通路122の下流端12aの位置を容易に変化させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、石英ガラス製の各パイプ122a,122bを損傷から保護するため、処理装置F1とジョイント部15との間にて、各パイプ122a,122bのうち外気に接し得る部分が、気密性を有し、かつ、長手方向に伸縮可能な外被材としての保護ベローズ12c,12dで覆われている。この保護ベローズ12c,12dは、例えば、ステンレス合金の薄板が溶接あるいは一体成形によって蛇腹状に形成されたものであり、伸縮パイプユニット122xの伸縮に応じて伸縮するようになっている。
【0057】
本実施形態では、第1保護ベローズ12cが、ジョイント部15の下側ジョイント部材152と閉鎖部14との間に、下側ジョイント部材152及び閉鎖部14に対して気密に接続されている。また、第2保護ベローズ12dが、閉鎖部14と固定部12bとの間に、閉鎖部14及び固定部12bに対して気密に接続されている。
【0058】
なお、第2被処理物通路122の構成は本実施形態のものに限られず、種々の変形が可能である。例えば、蛇腹状の部材を用いることにより第2被処理物通路122を伸縮させるものであっても良い。また、本実施形態の各パイプ122a,122bは、拡大部分122a1,122b1を除き、径寸法が変化しない直管状とされているが、テーパ管のように径寸法が変化するものであっても良い。また、場合によっては、所定の曲率を有して湾曲させた曲管状とされていても良い。また、伸縮パイプユニット122xが3本以上のパイプが組み合わされてなるものであっても良い。
【0059】
−被処理物取出機構−
被処理物取出機構13は、前記の被処理物収容部11から被処理物通路12へと被処理物Sを気密状態で搬送させるための部位である。本実施形態では、この被処理物取出機構13として電磁振動フィーダが用いられており、この電磁振動フィーダが第1被処理物通路121の内部に設けられている。被処理物取出機構13は搬送部1bに備えられたものであるから、本実施形態のように被処理物取出機構13が被処理物通路12の内部に設けられたものに限られるものではなく、被処理物通路12とは離れた位置に設けられたものであっても良い。
【0060】
前記の電磁振動フィーダは駆動部131とトラフ132とを備えたものであって、駆動部131によりトラフ132を振動させて、トラフ132に載せられた被処理物Sを下流側へと搬送させることができる。トラフ132は、上部及び下流端が開放している樋状の部位であり、本実施形態では内面に石英ガラスの内張りがなされている。このトラフ132は第1被処理物通路121の延びる方向に沿って、ホッパー11の直下から第1被処理物通路121の下流端付近まで設けられている。これにより、ホッパー11の下端から自然落下した被処理物Sはトラフ132に載って下流側に搬送されていく。そして、トラフ132の下流端まで来た被処理物Sは、前記の第1パイプ122aの拡大部分122a1へと落下する。
【0061】
本実施形態においては、被処理物取出機構13として電磁振動フィーダを用いたことにより、処理装置F1に被処理物Sを連続して定量的に投入することが可能とされている。よって、炉体F11に被処理物Sを少量ずつ連続的に投入することができ、処理の効率化、高精度化を図ることができる。もちろん、微量の被処理物Sの投入も可能である。また、従来は被処理物を一気に炉体に投入していた場合があり、その場合、溶湯の跳ねや投入時の衝撃による炉体の破損などが発生する懸念があったが、前記のように電磁振動フィーダを用いたことにより、このような懸念を払拭できる。また、被処理物Sの微量投入が可能であることから、処理装置F1の稼動中に被処理物Sを炉体F11へ投入する場合であっても、溶湯S1の急激な温度低下を抑えることができ、品質管理上有利である。
【0062】
本実施形態においては、第1被処理物通路121が水平方向に延びるものであり、第2被処理物通路122は下斜め前方に傾斜している。よって被処理物Sは、第1被処理物通路121においては電磁振動フィーダによって水平方向に搬送させられ、第2被処理物通路122においては重力による自然落下で斜め下方に搬送される。ただし、本発明はこの形態に限られるものではなく、例えば、第1被処理物通路121と第2被処理物通路122が、いずれも斜め下方あるいは下方に向かうものとされており、いずれも重力による自然落下によって被処理物Sを搬送させるものであっても良い。その場合においては、例えば、ホッパー11の下部に設けたゲートあるいは弁などの流量調整機構が被処理物取出機構13となる。
【0063】
また、被処理物Sを水平方向に搬送するために被処理物取出機構13を用いる場合であっても、本実施形態のような電磁振動フィーダに限らず、例えば、ベルトコンベアやローラコンベアのように、一方側から他方側へと被処理物Sを搬送させることのできる機能を有するものであれば、種々の搬送機構を用いることができる。もちろん、被処理物取出機構13による被処理物Sの搬送方向を水平方向以外としても良い。
【0064】
−閉鎖部−
閉鎖部14は、搬送部1bの処理装置F1側と被処理物収容部11側とを遮断することが可能な部位である。この閉鎖部14は、前記遮断のために当該閉鎖部14内の空間を閉鎖可能な開閉部材(弁体)を備えている(図示していない)。本実施形態の閉鎖部14は、図2に示すように、第2被処理物通路122における第2パイプ122bの上端に一箇所設けられたゲートバルブである。閉鎖部14と第2パイプ122bとは、気密に接続される。閉鎖部14を閉じることで、この閉鎖部14よりも処理装置F1側の部分を気密状態で閉鎖できる。そして、当然ではあるが、被処理物Sが漏れ出ないようにも閉鎖できる。閉鎖部14に用いるバルブの種類は、ゲートバルブ以外に、条件が許せば、例えばグローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブなどの種々のバルブが使用できる。
【0065】
ここで、第2被処理物通路122における第1パイプ122aの下流端122a2は、図2(D)(F)に示すように、閉鎖部14が開かれた際に、前記開閉部材よりも下流側に位置するようにされている。つまり、この際には、第1パイプ122aの下流端122a2が第2パイプ122bに挿入された状態で被処理物Sの投入がなされることになる。これにより、開閉部材及び当該開閉部材と密着することにより前記遮断を実現する構成部材(Oリング、パッキン等)に対し、第2被処理物通路122を通過する被処理物Sが触れないようにでき、被処理物Sの破片が挟まること等による遮断不良の発生を抑制できる。
【0066】
本実施形態では、閉鎖部14が第2パイプ122bの上端に設けられているが、これに限られるものではなく、搬送部1b中の他の位置に設けられていても良い。ただし、ジョイント部15により被処理物通路12を分離させる場合、分離後に処理装置F1の気密状態を保つためには、閉鎖部14をジョイント部15よりも処理装置F1の側に設けておく必要がある。なお、分離後において処理装置F1と投入装置本体1aの両方ともに気密状態を保つためには、閉鎖部14を、ジョイント部15を挟んで処理装置F1の側と投入装置本体1aの側の両方に設けておいても良い。
【0067】
このように閉鎖部14を設けることにより、閉鎖部14を閉じれば処理装置F1の内部の不活性ガス雰囲気を保ったままで、ホッパー11を外気に開放することが可能となる。そのため、処理装置F1の炉体F11における被処理物Sの溶融を続けたまま、蓋部111dを開けてホッパー11に被処理物Sを補充することが可能となる。そして、ホッパー11への被処理物Sの補充後、閉鎖部14を開くことによって、ホッパー11に新たに補充された被処理物Sを炉体F11内に投入することができるようになる。なお、ホッパー11に新たに補充された被処理物Sを炉体F11内に投入する場合には、閉鎖部14よりもホッパー11の側を不活性ガス雰囲気とする。
【0068】
従来、ホッパーに収容された被処理物が無くなってしまった場合、炉体を一度冷却した上で不活性ガス雰囲気を解除し、ホッパーに被処理物を補充して、再び不活性ガス雰囲気としてから炉体を再加熱する必要があったため、時間のロス、より具体的にはアイドルタイム(稼動停止時間)が多く、品質管理上も望ましくなかった。これに対して本実施形態では、閉鎖部14を設けることにより、処理装置F1の内部の特殊な雰囲気を崩すことなく、被処理物Sの被処理物投入装置F1への補充を行うことができ、これによってアイドルタイムを少なくして生産性を向上することができる。そのため、前記従来の問題点を解決することができる。
【0069】
−ジョイント部−
前記の閉鎖部14に加え、被処理物通路12のうちで閉鎖部14よりも被処理物収容部11側の位置にて、搬送部1bを分離及び接合可能なジョイント部15を備えたものとする。これにより、搬送部1bが分離可能とされている。ジョイント部15も、閉鎖部14よりも被処理物収容部11側の位置である限り、搬送部1bのどの位置に設けられていても良い。そしてこのジョイント部15により、被処理物投入装置1のうちジョイント部15よりもホッパー11側の部分(本実施形態では投入装置本体1a)を処理装置F1から分離させることができる。このことから、本実施形態では複数の処理装置F1への被処理物Sの供給を1台の投入装置本体1aで担当することが可能となる。つまり、従来とは異なり、処理装置F1と同数の投入装置本体1aが必ずしも必要でなくなる。もちろん、従来通りに、処理装置F1と投入装置本体1aの数量が一対一で対応するものであっても良い。
【0070】
本実施形態では、図1に示すように、ジョイント部15が第1被処理物通路121と第2被処理物通路122との間に設けられている。より具体的に説明すると、第1被処理物通路121の下流端には上側ジョイント部材151が設けられ、第2被処理物通路122の上流端(ただし、第2パイプ122bの拡大部分122b1を除く)には下側ジョイント部材152が設けられている。本実施形態では、各ジョイント部材151,152は略フランジ状とされており、対向する関係にある当接面同士を密着させることにより、気密に接合可能なものである。
【0071】
前記のように閉鎖部14とジョイント部15とが設けられたことによって、被処理物通路12の第1被処理物通路121と第2被処理物通路122とがジョイント部15で分割された場合に、閉鎖部14によって、被処理物通路12における被処理物Sの移動方向を基準とした下流側部分の気密状態を保つことができる。具体的には次のようなことが可能となる。もし仮に、処理装置F1に被処理物Sを補充する必要が無くなった時点において、ホッパー11の内部にまだ被処理物Sが残っている場合、閉鎖部14を閉じた上でジョイント部15を境に被処理物通路12を分離し、投入装置本体1aを分離前とは別の処理装置F1に付け替えることができ、これにより、ホッパー11に残った被処理物Sを別の処理装置F1に投入できる。
【0072】
ホッパー11に収容された被処理物Sが無くなってしまった場合には、例えば図2(A)(B)に示すように、伸縮パイプユニット122xを伸長させて閉鎖部14内に第1パイプ122aが存在しない状態とし、閉鎖部14を閉じた上でジョイント部15を境に被処理物通路12を分離する。そして、リフト21を操作して投入装置本体1aを下降させるなどして都合の良い位置に移動させ、その上でホッパー11に被処理物Sを補充する。その後、投入装置本体1aを分離前とは別の処理装置F1に付け替えることができる。ただし、投入装置本体1aを分離前と同じ処理装置F1に再度取り付けても良い。特に、下記のリフト21により投入装置本体1aが支持されている場合には、前記の補充作業をより効率良くできる。
【0073】
また、ホッパー11への被処理物Sの補充を頻繁に行う必要があるというデメリットはあるものの、ホッパー11の容量を小さくすることで投入装置本体1aをコンパクト化し、より扱いやすくすることもできる。これはいかなる製造現場においても適用できる訳ではないが、本実施形態によると、このような選択も可能となり、製造現場の状況に応じた装置の最適化をはかることができる。
【0074】
ここで、被処理物通路12に閉鎖部14が1箇所しか設けられていない場合では、ジョイント部15の分離によって投入装置本体1aの内部における不活性ガス雰囲気が失われてしまうため、投入装置本体1aの内部を再度不活性ガス雰囲気に整える必要がある。そこで、被処理物通路12に、ジョイント部15を挟んで更に別の閉鎖部を設けることが考えられる。このようにした場合にあっては、不活性ガス雰囲気を整えるべき区間が、閉鎖部14と前記別の閉鎖部との間の比較的短い区間とできるため、作業効率を大変良くでき、有利である。
【0075】
また、本実施形態では、ジョイント部15の分離時においても、第2被処理物通路122が処理装置F1に残される。そのため、第2被処理物通路122の処理装置F1に対する分離動作が不要であって、下記移動機構2による投入装置本体1aの移動が楽である。また、石英ガラス製である第2被処理物通路122における各パイプ122a,122bが投入装置本体1aの移動に伴って破損してしまう可能性も小さくできる。
【0076】
そして、このジョイント部15の存在により、第2被処理物通路122を第1被処理物通路121と分離して移動させることができるので、中央領域(炉体F11の中央を通る垂直線Cを含む、広がりを持った領域)の位置と、前記中央領域から外れた位置との間での、被処理物通路12における下流端12aの移動を第2被処理物通路122のみの移動で行うことが可能である。そのため移動のために必要なスペースを小さくでき、被処理物投入装置1を小型化できる。また、前記通路移動機構17による被処理物通路12における下流端12aの移動が、下記移動機構2による移動とは別個に行うことが可能となるため(言い換えると、下記移動機構2が被処理物通路12における下流端12aの移動を担う必要がないため)、下記移動機構2の構成を単純化でき、この点からも、被処理物投入装置1の大型化を抑制できる。
【0077】
ここで、本実施形態に係る被処理物投入装置1を用いて被処理物Sを補充する手順について簡単にまとめておく。処理装置F1にて被処理物Sを処理中に、炉体F11の被処理物Sが少なくなってきた場合、被処理物取出機構13である電磁振動フィーダを操作することによって、ホッパー11に収容されていた被処理物Sが搬送部1bの被処理物通路12を通って搬送され、炉体F11に投入される。この状態では、閉鎖部14が開かれていて、かつ、ジョイント部15が接合されている。
【0078】
ホッパー11の被処理物Sが無くなった場合、まず、閉鎖部14を閉鎖し、次いでジョイント部15を分離する。これにより、処理装置F1内部の不活性ガス雰囲気を維持したままジョイント部15を分離できる。そして移動機構2を用いて投入装置本体1aを都合の良い位置に移動させ、収容口111cを開放してホッパー11に被処理物Sを補充する。この収容口111cの開放に先立ち、投入装置本体1a内に外気を導入して不活性ガス雰囲気を解除しておく。
【0079】
前記のように被処理物Sを補充した後、移動機構2を用いてジョイント部15を接合する。その後、閉鎖部14を開くことで、被処理物Sが炉体F11に投入可能な状態とされる。なお、被処理物Sを炉体F11に投入する場合には、真空引きした上で不活性ガスを導入することにより、投入装置本体1a内を不活性ガス雰囲気とする。
【0080】
−移動機構−
また本実施形態では、図1に示すように、投入装置本体1aを処理装置F1に対して、接近・離反する方向に移動できる移動機構2を備えている。本実施形態の移動機構2は、リフト21と複数の車輪22(前輪221、後輪222)から構成されている。リフト21は、投入装置本体1aを上下方向に移動させることができるものである。本実施形態ではハンドル操作により投入装置本体1aを上下動させる手動式のリフトが採用されているが、モータなどによって駆動される形式のリフトであっても良い。車輪22は処理装置F1の設置された設置面Gに沿って回動するようにされており、投入装置本体1aとリフト21とを主に前後方向に移動させることができ、左右方向にも移動させることができるものである。
【0081】
この移動機構2により、投入装置本体1aを移動させて前記ジョイント部15を分離及び接合することをより容易にできる。そして、投入装置本体1aを異なる処理装置F1に対して移動させることができる。また、処理装置F1を設置面G近くまで下降させることで被処理物Sの補充を簡単にすることができる。また、図1に示すように、処理装置F1を高い位置に置くことで、被処理物通路12のうち、重力による自然落下がなされる部分(本実施形態では第2被処理物通路122)における被処理物Sの搬送をよりスムーズにできる。このように、移動機構2を備えたものとすることで、被処理物投入装置1を非常に使い勝手の良いものとできる。また、生産現場のレイアウトに与える制限も小さいものとできる。
【0082】
−被処理物通路の移動−
本実施形態では、被処理物通路12における下流端12aの、処理装置F1に対する位置が移動できるものとされている。この移動は、炉体F11の中央を通る垂直線Cを含む、広がりを持った領域である中央領域の位置と、前記中央領域から外れた位置との間で移動可能になされる。前記「中央領域」とは、炉体F11の周縁部を除いた、単結晶シリコンS2の引き上げが可能な領域のことである。本実施形態についてより具体的には、この移動は、炉体F11の中央を通る垂直線Cを基準として接近・離反する方向になされ、第2被処理物通路122のうち第2パイプ122bが処理装置F1(より具体的には炉体F11)に対して移動するものとされている。なお、この移動は第1被処理物通路121とは別個になされる。
【0083】
前記移動に関する接近・離反とは、被処理物通路12における下流端12aのうち最も前方寄りの部分が、垂直線Cに対する接近時(下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域の位置にある場合)にあっては、この下流端12aのうち最も前方寄りの部分が、単結晶シリコンS2の上方への移動軌跡S2aよりも内側に位置するようになされ、同離反時(下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域から外れた位置にある場合)にあっては、下流端12aのうち最も前方寄りの部分が、前記移動軌跡S2aよりも外側に位置するようになされるものである。
【0084】
よって前記垂直線Cに対する接近時(下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域の位置にある場合)においては、炉体F11の略中央に被処理物Sを投入することが可能となる。つまり、従来の、移動軌跡S2aよりも外側で被処理物Sを投入するものに比べれば、炉体F11の中央に近い位置で被処理物Sを投入することが可能となる。このように、炉体F11の中央により近い位置に被処理物Sを投入することができるため、炉体内で被処理物Sが偏りにくく、投入されたシリコン顆粒が均一に加熱されて、効率良く溶融できる。よって、単結晶シリコンの引き上げ作業もスムーズに行え、製造効率が良い。そして、溶融前の被処理物Sが炉体F11からあふれてしまうこともないため、被処理物Sの定量投入が可能で作業効率が良い。
【0085】
そして前記垂直線Cに対する離反時(下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域から外れた位置にある場合)においては、被処理物通路12と干渉することなく、単結晶シリコンS2を炉体F11から引き上げることができる。
【0086】
なお、第2パイプ122bにおける下流端122b2が、炉体F11の中央を通る垂直線Cに対して平行な平面に沿ってカットされて開口している場合にあっては、垂直線Cへの接近時(下流端12aが前記中央領域の位置にある場合)において、下流端12aを垂直線Cに重なるようにしていた場合、最低限、単結晶シリコンS2の移動軌跡S2aの半径分の距離だけ第2パイプ122bを移動させれば、炉体F11から引き上げられる単結晶シリコンS2と第2パイプ122bとの干渉を避けることができる。つまり、第2パイプ122bの移動距離を最小にできる。
【0087】
被処理物通路12のうち少なくとも一部の区間を移動させるために通路移動機構17が設けられる。本実施形態では第2パイプ122bが、この通路移動機構17によって長手方向に移動し、この移動に伴って処理装置F1に対して出入りする。前記のように、第1パイプ122aを第2パイプ122bに挿入することが可能であり、挿入度合、あるいは、未挿入の状態にある各パイプ122a,122b間の距離に応じて、伸縮パイプユニット122xを伸縮させることができるため、ジョイント部15での接合位置を維持したままで、第2パイプ122bを処理装置F1に対して出入りさせ、第2被処理物通路122を長手方向に伸縮させることができる。
【0088】
これにより、被処理物通路12の下流端12aをできるだけ炉体F11内にある溶湯S1の表面あるいは未溶融の被処理物Sに近い位置に配置した場合、既に投入されている未溶融の被処理物Sが炉体F11内に山のように積み重なり、第2被処理物通路122の下流端12aを塞ぐことで、第2被処理物通路122内に被処理物Sがつかえてしまう場合があっても、処理装置F1に対して第2被処理物通路122を後退させることで、被処理物収容部11から被処理物Sを投入可能な状態のままで、前記山のように積み重なった被処理物Sと第2被処理物通路122の下流端12aとの間隔を空け、これにより、被処理物Sを炉体F11内に投入することができる。また、被処理物Sの溶融が進むに伴い、炉体F11内の溶湯の表面が上昇し、第2被処理物通路122の下流端12aが溶湯に浸かってしまう場合があっても、処理装置F1に対して第2被処理物通路122を後退させることで、上昇した溶湯の表面から第2被処理物通路122の下流端12aを離すことができる。
【0089】
−通路移動機構−
以下、本実施形態における通路移動機構17についてより詳しく説明する。この通路移動機構17は、図2(A)(C)(E)に示すように、フレーム171、支持シャフト172、駆動シャフト173、被駆動部174、駆動プレート175を備えている。
【0090】
フレーム171は処理装置F1に対して直接的、あるいは間接的に固定された部分であって、処理装置F1に対して不動とされている。本実施形態では、このフレーム171の下流側の位置に設けられた固定プレート171aが処理装置F1に固定されている。
【0091】
そして、このフレーム171に支持シャフト172が固定されている。支持シャフト172は、第2パイプ122bの長手方向と平行に設けられた丸棒である。また、フレーム171には、前記支持シャフト172と平行であって、かつ、第2パイプ122bを挟んだ反対側の位置に駆動シャフト173が設けられている。また、フレーム171の駆動シャフト173に近い側には被駆動部174が回動可能に設けられている。この被駆動部174の回動軸は駆動シャフト173に対して直交している。駆動シャフト173は外周面にねじが形成された丸棒であって、フレーム171に対して、周方向に回動可能とされている。この駆動シャフト173の下流側端部にはかさ歯車173aが取り付けられており、このかさ歯車173aは、被駆動部174の端部に同じく設けられたかさ歯車174aと噛み合っている。よって、被駆動部174を回転させることによって、駆動シャフト173を回転させることができる。なお、被駆動部174については、モータなどの駆動手段を接続して自動操作されるものであっても、ハンドルを取り付けて手動操作されるものであっても良い。
【0092】
駆動プレート175は、第2パイプ支持部16に連結されており、第2パイプ122bを不動に支持するものであって、支持シャフト172及び駆動シャフト173が貫通するように取り付けられている。この貫通は、支持シャフト172に対しては摺動可能になされており、駆動シャフト173に対しては螺合可能になされている。これにより、被駆動部174の操作による駆動シャフト173の回転に応じ、駆動プレート175を固定プレート171aに対して接近・離反させることができる。そして、この駆動プレート175が固定プレート171aに対して接近する動作をする場合は、第2パイプ122bが炉体F11の中央を通る垂直線Cに対して近づき、下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域の位置に移動する。駆動プレート175が固定プレート171aに対して離反する動作をする場合は、第2パイプ122bが垂直線Cに対して離れ、下流端12aのうち最も前方寄りの部分が前記中央領域外の位置に移動する。なお、前記のように、第1パイプ122aと第2パイプ122bとは組み合わされて伸縮するため、ジョイント部15の位置は変化せずに維持される。
【0093】
処理装置F1に対する第2パイプ122bの位置は、前記駆動プレート175の移動範囲内であれば自由に設定が可能である。そのため、炉体F11に対する被処理物Sの投入位置を自由に設定できる。しかも、前記のように、ジョイント部15の位置は変化せずに維持されるため、投入装置本体1aを接続したままで、第2パイプ122bを移動させることができる。
【0094】
−他の変形例−
以上、本発明の具体的構成については、前記の実施形態及び変形例に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0095】
例えば、ジョイント部15における各ジョイント部材151,152のうち、少なくとも一方が誘導部を備え、他方が被誘導部を備えたものとすることができる。この誘導部と被誘導部は、各ジョイント部材151,152を接合しようとする際に、被誘導部が誘導部に誘導されることによって接合状態となるように構成されており、ジョイント部15の接合状態への位置合わせが行われる部位である。このようにすることで、被誘導部が誘導部に誘導され、ジョイント部15が所定の位置に位置合わせされるため、ジョイント作業を容易に行うことができる。
【0096】
また、被処理物投入装置1が、移動機構2の上下以外の他方向への移動を規制する位置決め部としてのストッパーを備えたものとされていても良い。具体的には、前記複数の車輪22のうち、少なくとも前輪221の前進方向への回転を止め、かつ、前輪221の処理装置F1に対する左右方向の位置を定めるためのストッパーを設置面Gに対して不動となるように設けることが考えられる。このようにストッパーを設けることにより、ジョイント部15の接合を容易にできる。
【符号の説明】
【0097】
1 被処理物投入装置
1b 搬送部
11 被処理物収容部、ホッパー
111c 収容口
12 被処理物通路
12a 被処理物通路の出口端、下流端
122a 第1パイプ
122b 第2パイプ
122x 伸縮パイプユニット
12c、12d 外被材、保護ベローズ
13 被処理物取出機構、電磁振動フィーダ
14 閉鎖部、ゲートバルブ
15 ジョイント部
F1 処理装置
F11 処理部、炉体(るつぼ)
S 被処理物、シリコンナゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を、内部に設けられた処理部にて気密状態で処理する処理装置に対し、被処理物を外部から気密状態で投入するための被処理物投入装置において、
被処理物を一時的に収容可能で、被処理物を収容する際に用いる開閉可能な収容口を有する被処理物収容部と、
前記処理装置の内部に投入される被処理物が気密状態で通過して出口端から前記投入が可能な被処理物通路と、
前記被処理物収容部から前記被処理物通路へと被処理物を気密状態で取り出し可能な被処理物取出機構と、
前記被処理物通路の処理装置側と被処理物収容部側とを遮断可能な閉鎖部と、
前記被処理物通路のうちで前記閉鎖部よりも被処理物収容部側の位置にて、前記被処理物通路を分離及び接合可能なジョイント部とが設けられており、
前記被処理物通路は、前記ジョイント部の接合位置を維持したままで、前記出口端が前記接合位置に対して接近・離反するようにして伸縮可能であることを特徴とする被処理物投入装置。
【請求項2】
前記被処理物通路は、同一軸線上に配置された第1パイプと第2パイプとを組み合わせてなる伸縮パイプユニットを有し、
前記伸縮パイプユニットは、前記第1パイプが被処理物の通過方向における上流側に配置され、前記第2パイプが同下流側に配置され、
前記第1パイプの上流端に対して、前記被処理物通路の出口端となる前記第2パイプの下流端が接近・離反するように、前記第2パイプが長手方向に移動することで前記伸縮パイプユニットが伸縮することを特徴とする請求項1に記載の被処理物投入装置。
【請求項3】
前記伸縮パイプユニットは、前記接近の際に前記第1パイプの下流端が前記第2パイプに挿入され得るように構成されており、
前記閉鎖部は、前記第1パイプと前記第2パイプとの間を遮断可能に設けられ、
前記閉鎖部が開かれた際に、前記第1パイプの下流端が前記第2パイプに挿入された状態で被処理物の投入がなされることを特徴とする請求項2に記載の被処理物投入装置。
【請求項4】
前記処理装置と前記ジョイント部との間にて、前記伸縮パイプユニットのうち外気に接し得る部分が、気密性を有し、かつ、長手方向に伸縮可能な外被材で覆われたことを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の被処理物投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189243(P2012−189243A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51806(P2011−51806)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】