説明

被覆ガラス板

【課題】 エナメルの被覆で覆われたラッカー塗りされたガラス板を提供する。
【解決手段】 この被覆は11〜40重量%の有機物質を含む。かかるガラス板は熱処理されることができ、熱処理前に、被覆を損傷することなしに取り扱われかつ輸送されることができ、被覆を剥させることまたは切断線の境界で損傷させることなく切断及び研磨されることができ、かつ流水下で良好な抵抗を与え、縁研磨または貯蔵または輸送時に被覆の剥れまたは破壊を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆ガラス板、特に表面上にラッカー層を形成されたガラス板、及び熱処理可能でかつかかる可能な熱処理前に取り扱うことができる、かかるガラス板に関する。「ラッカー層」により、我々は、本明細書においてペイント、エナメル、ラッカーまたは他のタイプの装飾的着色層を意図している。
【0002】
本発明によるガラス板は種々の用途を持つことができる。ラッカー塗りされたガラス板は、例えば家具で、衣装だんすで、家具のためのドアーとして、仕切りとして、テーブルで、棚で、浴室で、店のディスプレイで、壁被覆で、屋外環境で、及びスパンドレルとして、装飾目的のために使用されることができる。かかるラッカーはまた、自動車ガラスパネルで、またはこれらのガラスパネルの少なくとも一部で、例えばフロントガラスの周辺部で使用されることができる。これらの用途の多くが強化ガラス板を必要とする。なぜなら強化ガラス板は、破損に対してより抵抗性である利点を持つからである。他の熱処理もまた、使用されることが多くなっている(例えば曲げ)。
【0003】
従来から、ラッカー塗りされたガラス板は種々の方法により製造されることができる。
【0004】
一つの既知の方法では、ガラス板は有機系ペイントの層で覆われ、それは次いでオーブン内で、例えば約150℃で約10分間乾燥及び/または硬化される。有機系ペイントは、例えばポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、またはアクリル樹脂を含むことができる。ペイント層を付与する前に、ガラスはシランで処理されることができる。有機系ペイントの層で覆われた従来のラッカー塗りされたガラス板は高温で熱処理されるとき、ラッカーは燃焼し、劣化され、または完全に破壊されることができる。かかる従来のラッカー塗りされたガラス板は、一般的に200℃を越える温度では品位を落とすことなく存続しないであろう。ガラス板が、ラッカー塗りされる前に強化されるとき、これは、ガラス板がその最終寸法に既にあることを必要とする。なぜなら強化ガラス板を切断及び研磨することは不可能であるからである。これは大量生産及び連続生産を可能にしない。
【0005】
別の既知の方法では、ガラス板はIRまたはUV硬化性エナメルの層で覆われ、次いで硬化され、最後に約600℃で熱処理される。硬化工程は、被覆されたガラス板が、熱処理が行なわれるオーブンに到着するまで製造ライン上で取り扱われることを可能にするために制限された機械抵抗(Clemen試験結果は50g未満である)を提供する。それにもかかわらず、硬化工程は、被覆されたガラス板が熱処理工程前に、例えばトラックによる輸送、切断、縁加工または貯蔵に十分耐える機械抵抗及び水抵抗を与えない。かかる従来のエナメル塗りされたガラスは、製造直後にかつ同じ製造ラインで熱処理されることが必要である。
【0006】
最近、エナメルを含む第一層と樹脂を含む第二層を順に含む被覆をガラス板上に設けることによりラッカー塗りされたガラス板が開発された(WO2007104752)。かかるガラス板は、熱処理前に被覆を損傷することなく取り扱われかつ輸送されることができ、それらは、被覆をはがすことなくまたは切断線の縁で損傷されることなく切断及び研磨されることができ、さらにそれらは、熱処理前に流水下の良好な抵抗性を提供することができる。概して、第二層は一時的に存在し、熱処理前のラッカー塗りされたガラス板に抵抗性を与え、それは、熱処理後に除去されまたは破壊されることを意図されている。それにもかかわらず、この二層システムは、熱処理前の引っ掻き傷に対して良好な抵抗性を提供することができるけれども、製造工程時に第二層の付着前の第一層の抵抗性が不十分であること、及びコンベアのローラーまたは吸い込み管のような取り扱いツールがその第二層による保護前の第一層を損傷し、最終製品の欠陥を導くことを我々は気がついた。
【発明の概要】
【0007】
特記しない限り、本明細書における温度に対する言及は、オーブン温度、すなわち加熱または熱処理が行なわれる雰囲気温度に対する言及である。「熱処理」により、曲げ及び/または熱強化及び/または熱硬化操作及び/または他の同等の加熱工程を意図している。かかる熱処理は、ラッカーを担持するガラス板を約560℃を越える温度に、例えば560℃〜750℃の温度に大気中でガラス板の厚さ及び使用されるオーブンに依存して2分〜20分、好ましくは最大15分間加熱または暴露することを含むことができる。本明細書で使用される用語「熱処理されたガラス板」は、ガラス板が熱処理を受けたことを意味する。硬化により、液体ペイント、ラッカーまたはエナメル被覆を硬化させる工程を意図している。硬化は、一般的に少なくとも乾燥(溶媒蒸発)を含むが、高分子鎖の架橋のような化学反応を含むこともできる。
【0008】
一態様によれば、本発明は、ガラス板の少なくとも一方の表面上に設けられたエナメルの被覆を持つガラス板を提供する。有利には、本発明によるエナメルの被覆は11〜40重量%の有機物質を含む。
【0009】
エナメルの被覆中の有機物質のかかる増大した量は、熱処理前の有利な機械抵抗性を提供することができる。本発明によるガラス板は、一般的な取り扱いツール(例えばローラー、吸い込み管)により取り扱われることができ、熱処理前に被覆を損傷することなく、例えば引っ掻き傷を作ることなく輸送されることができる。それらは、熱処理前に被覆をはがすことなしにまたは切断線の縁で損傷されることなしに切断されかつ研磨されることができる。さらに、それらは、熱処理前に、例えばガラス板を洗浄するときまたは縁加工するときに被覆のはがれまたは破壊を避けて流水下の良好な抵抗性を提供することができる。さらに、これらの性質は、ガラス板上に被覆された単一層で達成されることができ、それは、二層を必要とする従来公知の工程より容易で、安く、かつ少ない時間消費であることができる。
【0010】
さらに、本発明者らは、本発明による被覆組成物がラッカー塗りされたガラス板のための従来公知の被覆より低い温度で及び/または迅速に硬化されることができることを驚くべきことに見出した。
【0011】
本発明は、熱処理可能なラッカー塗りされたガラス板に関して特別な利点を持つ。本明細書で使用される用語「熱処理可能なガラス板」は、本発明によるラッカー塗りされたガラス板が欠陥(例えばラッカー内の美的欠陥)を作ることなしにかつガラス板とラッカーの間の良好な付着をなお持って熱処理を受けるのに適合されていることを意味する。
【0012】
好ましくは、本発明によるエナメルの被覆は、11〜25重量%の有機物質を含む。エナメルの被覆内の有機物質のかかる上限は、光透過によりペイント塗りされたガラス上で観察されることができるいわゆる「星くず」現象を避けることを可能にする。ペイント被覆が完全に均質でなくかつ幾つかの(顕微鏡的)穴を示すときにそれは表われる。これらの穴は、光が被覆を横断させ、従ってガラス側から見るときに目で見ることができ、小さな光点を示す。
【0013】
有機物質のかかる含有量を測定するために、硬化されているが熱処理されていない被覆ガラス板から削られた被覆物質の量(一般的に1〜2グラムのオーダ)は、熱重量分析(TGA)により分析される。TGAは空気中で20〜1000℃まで10℃/分の温度増加により実行される。有機物質の含有量は、TGA時にもはや重量損失が観察されないまでに燃える物質(可能な残留溶媒を除外する)の定量化により決定される。一般的に、有機物質は500℃に達するときに完全に燃える。
【0014】
熱処理されていないかまたは一度熱処理された、本発明によるガラス板はさらに、ガラスに対する被覆の付着、耐薬品性、機械抵抗性及び接着剤抵抗性に関して従来の熱処理不可能なラッカー塗りされたガラス板と同様の性質を有利に提供することができる。特に、本発明による熱処理されていないかまたは熱処理されたガラス板は、以下の性質の一つ以上を与えることができる。
【0015】

【0016】
磨耗試験、Clemen試験、Persoz試験、UV試験、及び凝縮試験は全て、以下に述べられる。
【0017】
本発明によれば、前記ガラス板の少なくとも一方の表面上にエナメルの被覆が与えられる。用語「エナメル」は、本明細書では、いずれの硬化または熱処理前のエナメル組成物に対して、または乾燥されまたは硬化されているがまだ焼結化されていないエナメル組成物に対して等しく使用される。エナメルは一般的に顔料及びガラスフリットを含む。エナメルはまた、一般的にメジウムを含む。メジウムは、固体粒子が適切に懸濁されることを確保しかつ基板へのエナメルの付与及び一時的付着を可能にする。メジウムは好ましくは有機物である。本発明の被覆のために適合されるエナメルの例は、FERRO社からのエナメル144001ブラック801029、JOHNSON MATTHEY社からのエナメルAF2600−65−96、及びFENZI社からのエナメルTEMPVER bianco 3400−06−011または3400−147Aである。
【0018】
本発明によれば、被覆は11〜40重量%の有機物質を含む。この有機物質は商業エナメルの初期メジウムに由来することができるが、そこには被覆中の有機物質の希望の量を達成するために追加の有機化合物が添加される。これに代えて、希望の量の有機物質を持つエナメルの被覆を得るために、本発明からのエナメルの被覆は、特にガラスフリット、顔料及び有機化合物を混合することにより調製されることができる。
【0019】
好ましくは、硬化後の有機物質は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25,30,35または40℃の軟化温度を持つ。かかる値はさらに、熱処理前に有利な機械抵抗性を提供するのを助けることができる。この軟化温度は、有機物質が本質的に高分子からなる場合にはTg(ガラス転移温度)に等しくすることができ、またはもし他の化合物が存在するなら、その融点に等しくすることができる。軟化温度のかかる値は、被覆が硬化前にかつ製造工程時に含まれる通常の温度で軟らか過ぎないことを確保することができ、もしそうでなければそれは被覆中に非常に容易に引っ掻き傷を作るであろう。
【0020】
好ましくは、被覆の有機物質は、いったん硬化したら、ポリオール、アルキド、アクリル、ポリアクリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリルアミド、メラミン、ポリカーボネート、アクリル−スチレン、ビニル−アクリル、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ウレタンアルキド、ポリウレア、アミノ樹脂、ポリアミド、エポキシ、エポキシエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、PVC、PVB、水系樹脂、及び光硬化性化学物質の反応生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種の物質を含むか、またはより好ましくは本質的にそれらからなる。被覆の有機物質はまた、有利には、分散剤、均展剤、流動剤、UV防止剤、触媒、湿潤剤、定着剤、艶消剤、及び/または構造化剤のような典型的なペイント添加物を含むことができる。より好ましくは、被覆の有機物質はポリオール及びメラミンを含む。
【0021】
いったん乾燥されかつ/または硬化されているが熱処理前の被覆の厚さは、少なくとも10μmであり、それは最大150μmである。好ましくは、被覆の厚さは少なくとも15μmであり、それは最大100μmである。もし被覆の厚さが低過ぎると、それは、必要な機械的性質及び水抵抗性を持つラッカー塗りされたガラス板を適切に形成することができず、もしそれが高過ぎると、硬化は良好でなく、分離が起こるかもしれない。かかる厚さは、製造工程時に、一つ以上の被覆の付与により達成されることができる。本明細書における層厚さの言及は、層の平均幾何学的厚さに関する言及である。
【0022】
好ましくは、被覆はガラス基板と直接接触している。ガラス基板は、この実施態様から逸脱することなくガラスへの被覆の付着を改善するために、被覆前に、定着剤で表面処理されることができる。この定着剤はシランを含むことができる。
【0023】
さらに他の実施態様では、連続層が被覆とガラス板の間に存在することができる。かかる好ましい構造は、いかなる熱処理前の、輸送のために、切断及び研磨のために、及び流水下の抵抗のために、特に良好な機械抵抗性を与えることができる。この実施態様では、ガラス基板はまた、ガラスへの第一被覆の付着を改善するために、いかなる被覆前にも定着剤で表面処理されることができる。
【0024】
好適な実施態様では、本発明の被覆は、連続的であり、かつガラス板の実質的に全表面に渡って、すなわちガラス板の表面の90%以上に渡って、好ましくはガラス板の表面の95%以上に渡って及ぶことができる。
【0025】
装飾目的のためには、被覆は着色されることができる。もしガラス板が熱処理されると、色は、熱処理時に被覆の組成に依存して変わるかもしれない。もしこれが起こるなら、これは、最終色が熱処理後に希望のものであることを確保するために、熱処理可能製品について考慮されるべきである。これに代えて、もしガラス板が熱処理されるなら、色は熱処理時に変わらないかもしれない。
【0026】
装飾目的のために、被覆は不透明または半透明であることができる。それはまた、構造化されるか、または艶消しされることができる。
【0027】
使用される基板は平板ガラス、特に種々の厚さ(例えば1.8〜10.2mm)のフロートガラスであることができ、それはソーダ石灰ガラスであることができ、それは透明、超透明、着色、腐食またはサンドブラストガラスであることができる。本発明によるガラス板は、1m×1mより大きな寸法を持つことができる。それらは、PLFとして知られた、例えば3.21m×6mまたは3.21m×5.50mまたは3.21m×5.10mまたは3.21×4.50mの寸法、またはDLFとして知られた、例えば3.21m×2.50mまたは3.21m×2.25mの寸法を持つことができる。本発明は主としてガラス基板と関連して述べられたけれども、それは、金属基板またはプラスチック基板にも適用されることができる。
【0028】
ある実施態様によれば、本発明の被覆ガラス板は、ガラス基板から遠い側のエナメルの被覆の上に被覆された追加の被覆を含むことができる。これはラッカー塗りされたガラス板の機械抵抗性をさらに高めることを助けることができる。かかる追加の被覆層はWO2007104752に記載された第二層のタイプのもの、すなわち樹脂と任意選択的にエナメルの充填剤を含む層であることができる。この樹脂は光硬化性化学物質、ポリエステル樹脂、アルキド、アクリル、アクリルアミド、アルリル−スチレン、ビニル−アクリル、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ウレタンアルキド、アミノ樹脂、ポリアミド、エポキシ、エポキシエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、PVC、PVB、及び水系樹脂からなる群の少なくとも一種の物質を含むことができる。かかる追加の被覆層は、いったん硬化したら、5〜50μmの範囲の厚さを持つことができる。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、以下の工程を以下の順序で含む熱処理可能なラッカー塗りされたガラス板を製造するための方法を提供する:
− ガラス板を準備する;
− 重量%で表わすと、11〜40%の有機物質を含むエナメルの被覆を、ガラス板の少なくとも一方の表面上に付与する;及び
− エナメルが硬化されかつガラスに粘着するがまだ融解または焼結されないように被覆を硬化する。
【0030】
被覆の硬化は、温度、UV、IRまたはNIR放射線により、電子ビームにより、及び/または誘導加熱により実施されることができる。
【0031】
IR放射線下の硬化を考えるとき、好ましくは、被覆は、少なくとも150℃または少なくとも175℃及び/または300℃を越えない、好ましくは275℃を越えない温度で硬化され、これは略1〜20分、好ましくは2〜15分(静止オーブン内で)行なうことができ、または工業用オーブン内で、これは略200〜250℃のガラス上で測定された最大温度で略5〜10分行なうことができる。電子ビームによる硬化を考えるとき、これは少なくとも40keVを必要とするかもしれない。UVによる硬化を考えるとき、これは少なくとも250mJ/mを必要とするかもしれない。
【0032】
被覆は、従来公知のいかなる方法によっても付与されることができ、例えばローラー被覆またはカーテン被覆の方法、噴霧法または流動法により付与されることができる。特にもしガラス板の一部のみが被覆されるべきであるなら、スクリーン印刷法も使用されることができる。
【0033】
本発明によるガラス板が熱処理されるとき、被覆は融解かつ焼結し、有機物質は燃焼する。焼結は略600〜700℃またはそれ以上の温度で行なうことができる。
【0034】
好ましくは、本発明によるガラス板は、いったん熱的に調質されるかまたは強化されたら、規格EN12150−1:2000に従って、建造物の安全ガラスとして使用されることができる。好ましくは、本発明によるガラス板は、いったん熱的に調質されるかまたは強化されたら、規格prEN14−179−1:2001またはEN1863−1:2000の破砕試験に従って破壊される。
【実施例】
【0035】
本発明の実施態様は、本発明に従わない幾つかの比較例とともに例示としてのみさらに述べられるであろう。表Iは全ての実施例及び比較例をまとめる。
【0036】
実施例1〜17
商業的に入手可能なエナメル及び商業的に入手可能なペイントを含む種々の混合物が製造される。ペイントは、本発明による有機物質の増加した含有量をエナメルに与えるために添加される。
【0037】
全ての実施例1〜17で使用されたエナメルは表Iに識別されている。FENZI社からの白色エナメルTEMPVER bianco 3400−147Aは、例えば略75重量%のフリット及び略25重量%の有機物質(ポリアクリル樹脂及び可塑剤)を含む。
【0038】
実施例1〜3,7〜11、及び16〜17では、FENZI社からのGLASSOREXペイントが使用され、RALシステムにより規定された種々の色を持つ。これらのペイントは、一般的に顔料、溶剤、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂を含む。実施例4〜5及び12〜15では、UV防止添加物を含むFENZI社からのクリアコートが使用された。実施例6では、クリアコートはUV防止添加物を含まなかった。クリアコートはまた、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂を含む。
【0039】
エナメル及びペイントは、表Iの欄2及び4に与えられた種々の割合により混合された。幾つかの実施例では、TGAにより測定された有機物質の量は重量%で与えられる(表Iの欄6)。
【0040】
4mmの厚さを持つフロートガラスの板は、ある径路に沿ってローラーコンベアにより運ばれる。それらはまず通常の態様で洗浄される。それらは次いでカーテンコータの下を通過し、そこでそれらは商業エナメル及びペイントを含む混合物で覆われる。様々な混合物が、表Iの欄2〜6に記載されかつ上に説明されたように、各実施例のために使用された。被覆は、次いで表Iの欄9に記載されたパラメーターに従って、穏和な温度で硬化された。
【0041】
いったん硬化されかつ熱処理前の被覆の厚さは、表Iの欄7に与えられている。硬化後であるが熱処理前の製品(表Iの欄10〜12)は、流水下の良好な水抵抗性を示す。ガラスへの被覆の付着は良好であり、これは、縁上の欠陥なしの良好な研磨を可能にすることができる。Persoz及びClemen結果は良好である。1000回転の摩耗試験後に除去される被覆はあまり多過ぎず、かかる被覆が取り扱い及び輸送に対し耐性を持つことができることを示す。
【0042】
製品は、熱処理に対して抵抗性を有し、熱処理後(680℃で180秒)に良好なPersoz結果を示した(表Iの欄13)。
【0043】
比較例1〜3
比較例1〜3では、被覆はエナメルのみからなり、有機物質の含有量は11%以下である。かかる被覆の熱処理前の抵抗性はかなり低く、摩耗試験に対する抵抗性はなく、Persoz及びClemen結果は低い。それらの流水下の抵抗は許容できず、縁加工は不可能であり、許容できない引っ掻き傷が取り扱い及び/または輸送時に現われる。
【0044】
比較例4及び5
比較例4及び5では、被覆はエナメルを含まず、被覆は顔料ペイントだけからなる。被覆中の有機物質の含有量は40重量%以上である。かかる被覆は水の下では縁加工に対するまたは引っ掻き傷に対する良好な抵抗性を持つが、熱処理可能ではない。被覆はほとんど損傷されない。
【0045】
実施例18〜28
第一組の実施例による種々の被覆されかつ硬化されたガラスは、カーテンコータの下を通過することにより追加の被覆層で被覆され、そこではエナメルの充填剤の略50重量%を含むFENZI社からのポリウレタンペイントが、エナメルとペイントを含む第一被覆の上に付与される。この第二被覆は、付与直後に略20分間200℃で乾燥される。
【0046】
いったん硬化されかつ熱処理前の製品のこの追加層の厚さは表Iの欄8に与えられている。いったん硬化されかつ熱処理前の製品は、エナメルとペイントを含む単一被覆を持つ製品と比較すると強化された抵抗性を示す(表Iの欄10〜12)。
【0047】
比較例6
この比較例は、WO2007104752による製品に相当する。熱処理前の二層製品の抵抗性は良好であるけれども、第一被覆の抵抗性は、それが第二保護被覆により覆われる前は十分でなく、引っ掻き傷が製造ライン上の取り扱い時に現われるかもしれない。
【0048】
試験
縁機械加工され、輸送され、洗浄され及び/または熱処理されるときの本発明によるラッカー塗りされたガラス板の挙動を予測するために摩耗試験が使用されることができる。10×10cmの正方形の試料が、65〜75rpmの速度で回転する鋼板上に維持される。二つの平行な重り付き腕のそれぞれが、水平軸周りに自由に回転する一つの特定の摩耗小車輪(CS10F)を運ぶ。各車輪は、500gの質量である各腕に付与された荷重下に試験される試料上に置かれる。摩耗車輪と回転支持板の組み合わせが、被覆硬度によれば幾分重要な摩耗クラウンを試料上に作る。
【0049】
本明細書に規定された摩耗試験で被覆ガラス板を1000回転に供した後に除去される被覆の量は次のように計算される:
− 被覆されたガラス板の重量が測定される:Wtpainted glass。
− 被覆されていない同一のガラス板の重量もまた測定される:Wtglass。
− 被覆自身の重量が次いで計算される:Wtpaint=Wtpainted glass−Wtglass。
− 「ペイント比」P.R.もまた計算される。本発明の好適な実施態様ではペイント比は略1〜2重量%であることができる。
− かかる被覆ガラス板の10cm×10cmの正方形の試料が次いで準備され、重量測定される:Wtpainted試料。
− 同じ試料が次いで、500gで各々負荷された二つの車輪CS10による1000回転の摩耗試験に供された後に重量測定される:Wttested試料。被覆は摩耗クラウン(すなわち2−Dドーナツ形状)により除去される。
− 除去される被覆の量は次いで計算されることができる。
【0050】
除去されることができる最大被覆量は略25%である。これは、10cm×10cmの正方形の試料上の磨耗したクラウン表面の寸法及び一般的に付与されるペイント比のためである。
【0051】
試験された試料のガラス厚さは、P.R.の計算で使用されたガラス厚さと同じでなければならない。
【0052】
Clemen試験が、被覆の引っ掻き傷抵抗性を評価するために使用される。タングステンカーバイド先端針が、針上に負荷を付与することにより被覆上に押圧される。針は、約60mmの距離に渡って被覆に引っ掻き傷を付けるために使用される。幾つかの重量が(250g〜2500gまで250gの間隔)、同じ試料上に引っ掻き傷のそれぞれの間にある距離を持って付与されることができる。ここでは一連の平行な引っ掻き傷が試料中に作られることができる。この試料の完全な詳細は、国際規格ISO1518−1992に記載されている。
【0053】
UV試験は、太陽光に起因する劣化をシミュレートするために使用される。この試験の完全な詳細は、ASTM規格G53−88に記載されている。試料は紫外光に露出される。ここで使用される露出条件は次の通りである:340nmのUVAランプ;UVランプの出力:300W;UV露出の時間:1000時間;UV露出の温度:60℃;凝縮露出は実施されなかった。色変化は試験後に現われるべきでなく、好ましくは色の変化ΔEは2未満であるべきである。ΔEは次のように計算される:
ΔE*=√(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)、式中LはCIElabスケールで測定される。
【0054】
湿り周囲大気中の試料の挙動を評価しかつ試料の腐食に対する保護のいかなる欠陥も正確に指摘するために凝縮試験が使用される。この試験の完全な詳細は、規格DIN50017に記載されている。ここで使用される条件は次の通りである:98%相対湿度;40℃の温度;20日間。ふくれ、すなわちラッカーの局所的な剥離は試験後に目に見えるべきでない。
【0055】
被覆硬度はPersoz振子により測定されることができる。試料は、硬度測定前に少なくとも24時間の間20℃の温度で状態調節される。振子硬度試験は、振子振動の振幅がより軟かい表面上に支持されたときにより迅速に減少するであろうという原理に基づいている。Persoz試験は、12°〜4°に減少する振幅に対する時間を測定する。この試験の完全な詳細は、国際規格ISO1522−1998に記載されている。
【0056】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の少なくとも一方の表面上に設けられたエナメルの被覆を持つガラス板において、被覆が、重量%で表わすと11〜40%の有機物質を含むこと、及び被覆がガラス板と直接接触していることを特徴とするガラス板。
【請求項2】
被覆が、重量%で表わすと11〜25%の有機物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス板。
【請求項3】
被覆が顔料及びガラスフリットを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス板。
【請求項4】
被覆の有機物質が、ポリオール、アルキド、アクリル、ポリアクリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリルアミド、メラミン、ポリカーボネート、アクリル−スチレン、ビニル−アクリル、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ウレタンアルキド、ポリウレア、アミノ樹脂、ポリアミド、エポキシ、エポキシエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、PVC、PVB、水系樹脂、及び光硬化性化学物質の反応生成物からなる群から選ばれた少なくとも一つの物質を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス板。
【請求項5】
被覆の有機物質がポリオール及びメラミンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板。
【請求項6】
被覆の厚さが10〜150μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス板。
【請求項7】
被覆の厚さが15〜100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス板。
【請求項8】
被覆がガラス板の実質的に全表面に渡って及ぶことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガラス板。
【請求項9】
定着剤がガラス板の表面に存在することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガラス板。
【請求項10】
ガラス板が、ガラス板から遠い側のエナメルの被覆の上に被覆された追加の被覆を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガラス板。
【請求項11】
ガラス板が熱処理可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガラス板。
【請求項12】
被覆の有機物質が少なくとも20℃の軟化温度を持つことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガラス板。
【請求項13】
熱処理可能なラッカー塗りされたガラス板を製造するための方法であって、以下の工程を以下の順序で含むことを特徴とする方法:
− ガラス板を準備する;
− 重量%で表わすと11〜40%の有機物質を含むエナメルの被覆を、ガラス板の少なくとも一方の表面上に付与する;及び
− エナメルが硬化されかつガラスに粘着するがまだ融解または焼結されないように被覆を硬化する。

【公表番号】特表2013−509347(P2013−509347A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535853(P2012−535853)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066490
【国際公開番号】WO2011/051459
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】