説明

被覆マイクロファイバー・ウェブおよびその製造方法

本発明は、被覆したマイクロファイバー・ウェブと、その製造方法、ならびに放射線防護材の被覆および放射線防護装置の被覆としてのその用途に関するものである。
本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブは、
(i)フルオロポリマーを含浸させたマイクロファイバー・ウェブと、
(ii)マイクロファイバー・ウェブの片面のみに存在するポリウレタン含有レイヤーとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆したマイクロファイバー・ウェブと、その製造方法、ならびに放射線防護材の被覆および放射線防護装置の被覆としてのその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、宇宙環境曝露の危険に対する防護のための可撓性の多重レイヤー構造の被覆物が開示されている。前記の被覆物中に特に含まれるものとして、例えば制動放射線に対する防護層がある。
【0003】
特許文献2に記載の放射線防護物は、鉛含有素材からなる1つ以上の可撓性レイヤーを備えている。前記レイヤーは、編布製、織布製、もしくは不織布製のエンベロープ中にあるか、または編布製、織布製、もしくは不織布製の2枚のレイヤーの間に挟み込まれている。前記の編物、織布、または不織布は、その表面に可撓性ポリウレタン被覆を備えている。しかしながら本発明者らが発見したところによれば、外表面にポリウレタン被覆を備えたそのような放射線防護用途物品は、例えば医療用途に使用した場合に非常に強い摩耗を受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,923,741号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2 118 410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下で述べるように、本発明の目的の1つは耐摩耗性が改善されたマイクロファイバー・ウェブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の1つは被覆したマイクロファイバー・ウェブに関するものである。前記マイクロファイバー・ウェブは、
(i)フルオロポリマーを含浸させたマイクロファイバー・ウェブと、
(ii)マイクロファイバー・ウェブの片面のみに存在するポリウレタンからなるレイヤーとを具備する。
【0007】
また別の実施形態においては、本発明は被覆したマイクロファイバー・ウェブの製造方法に関する。前記製造方法は次のステップを備える。
(a)マイクロファイバー・ウェブを用意するステップ
(b)フルオロポリマーを含有する含浸組成物を前記マイクロファイバー・ウェブに含浸させるステップ
(c)含浸させたマイクロファイバー・ウェブを乾燥するステップ
(d)乾燥した前記含浸マイクロファイバー・ウェブの片面のみに、ポリウレタンを含有するコーティング組成物を適用するステップ
(e)前記ステップ(d)で得たマイクロファイバー・ウェブを熱処理するステップ
【0008】
本発明のまた別の対象は、放射線防護材の被覆材としての本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブの用途である。この用途のためには、被覆マイクロファイバー・ウェブのポリウレタン・コート面が前記放射線防護材の側になるようにして、前記の被覆マイクロファイバー・ウェブを放射線防護材の少なくとも1つの面に設ける。
【0009】
本発明のまた別の実施形態は、放射線防護装置に関する。前記放射線防護装置は、
(α)放射線防護材と、
(β)本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブと、
を含んでなる。被覆マイクロファイバー・ウェブのポリウレタン・コート面が放射線防護材の側になるようにして、前記の被覆マイクロファイバー・ウェブを放射線防護材の少なくとも1つの面に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブの切断面を示す模式図である。
【図2】本発明の放射線防護装置の切断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<被覆マイクロファイバー・ウェブ>
本発明は、被覆したマイクロファイバー・ウェブに関するものである。前記の被覆マイクロファイバー・ウェブは、
(i)フルオロポリマーを含浸させたマイクロファイバー・ウェブと、
(ii)マイクロファイバー・ウェブの片面のみに存在するポリウレタン含有レイヤーとを具備する。
【0012】
マイクロファイバー・ウェブは具体的に限定されない。マイクロファイバー・ウェブはマイクロファイバーを含む織布、メリヤス、編物、メンブレン、または不織布等の任意の平面構造物であってよいが、織布が好ましい。
【0013】
マイクロファイバーとは、線度が約0.5dtexから約1.5dtex、好ましくは約0.3dtexから約1.0dtexのファイバーである。マイクロファイバーの種類は所望の用途によって異なる。適当な種類のマイクロファイバーの例としては、ポリエステル系マイクロファイバー、ポリアミド系マイクロファイバー、セルロース(例えばアセテートまたはビスコース)系マイクロファイバー、ポリテトラフルオロエチレン系マイクロファイバー、およびそれらの混合物が挙げられる。特に適当なものは、ポリエステル系マイクロファイバーおよび/またはポリアミド系マイクロファイバーである。
【0014】
静電気帯電を防止するために、マイクロファイバー・ウェブは導電性繊維を含有してもよい。導電性繊維は具体的に限定されないが、例としては炭素繊維もしくは金属繊維、または炭素粒子もしくは金属粒子を含有するポリマー系繊維、例えば高分子ファイバーが挙げられる。好ましい実施形態においては、炭素粒子を含有する高分子ファイバーを用いる。例えば導電性ファイバーの繊度は約1dtexから約3dtexであって、好ましくは約1.2dtexから約2dtexである。導電性ファイバーの直径がマイクロファイバーの直径よりも大きい、好ましくは約1.2倍から約3倍大きく、より好ましくは約1.2倍から約2倍大きい場合、導電性ファイバーは織布表面から突出する。当業者はその専門知識に基づいて導電性ファイバーの適切な量を選択できる。マイクロファイバー・ウェブが含有する導電性ファイバーは、通常約0.1重量%から約10重量%であって、好ましくは約0.5重量%から約3重量%である。重量%は未被覆のマイクロファイバー・ウェブ中の繊維総重量に対する%である。好ましい実施形態においては、出来上りマイクロファイバー・ウェブの静電気表面抵抗は約10オームから約10オームである(ドイツ工業規格100015-1により測定(25%相対湿度、23℃))。
【0015】
マイクロファイバーと任意選択で含有される導電性繊維とを、公知の工程でマイクロファイバー・ウェブに加工する。導電性繊維の組み込みパターンは統計的であっても規則的であってもよい。組み込み方式は帯電除去の必要性およびマイクロファイバー・ウェブの製造工程によって異なる。好ましい実施形態においては、導電性ファイバーを規則的なパターンで組み込む。例えば格子模様は静電気を帯電した場合の帯電除去に特に適しているため、導電性ファイバーを格子模様で組み込んでもよい。格子の間隔は好ましくは約3mmから約100mmの範囲であって、好ましくは約5mmから約75mmであり、格子矩形の辺長は各格子間で異なってもよい。
【0016】
出発材料として用いるマイクロファイバー・ウェブの通気性は、当業者によりその所望の用途に従って選択される。1つの実施形態においては、通気性は0L/min/dmから約100L/min/dmであって、好ましくは5L/min/dmから約50L/min/dmである(通気性の測定はドイツ工業規格EN ISO 9237による)。
【0017】
出発材料として用いるマイクロファイバー・ウェブの表面密度も、所望の用途を考慮して選択される。通常の表面密度は約50g/mから約200g/mの範囲であって、好ましくは約60g/mから約150g/mの範囲である。
【0018】
出発材料として用いるマイクロファイバー・ウェブの太さは具体的に限定されず、通常は所望の用途を考慮して選択される。1つの実施形態においては、マイクロファイバー・ウェブの太さは約0.05mmから約0.20mmの範囲であって、好ましくは約0.10mmから約0.15mmの範囲である。
【0019】
前記のマイクロファイバー・ウェブに、フルオロポリマーを含浸させる。フルオロポリマーは部分的なフッ素化ポリマーであってもよく、または全フッ素化ポリマーであってもよい。ホモポリマーおよびコポリマーのいずれも適しているが、フルオロアルキルアクリル酸ホモポリマーまたはフルオロアルキルアクリル酸コポリマーは特に適している。
【0020】
好ましいフルオロポリマーは、ペルフルオロアルキル含有側鎖基を備える。これらの側鎖基をフルオロポリマーに導入する方法は、例えば次の構造を持つペルフルオロアルキル含有モノマーの重合である。
ペルフルオロアルキルユニット−任意選択のスペーサー−重合性基
【0021】
好ましいペルフルオロアルキルユニットは、約4個から約12個の炭素原子を含んでなる。任意選択のスペーサーは具体的に限定されないが、ただしペルフルオロアルキルユニットではない。好ましい任意選択のスペーサーは分子鎖中に約2個から約10個の原子を含み、より好ましくは約2個から約8個の原子を含む。スペーサー中には炭素原子およびヘテロ原子、例えばN、O、およびSの両方とも存在してよい。重合性基は具体的に限定されず、ポリマー形成に適した任意の重合性基であってよい。重合性基の例としてはエチレン系不飽和基が挙げられる。
【0022】
ペルフルオロアルキル含有モノマーの例としては、次式のペルフルオロアルキル含有アクリラートが挙げられる。
C=CR−C(O)−O−(CH−C2m+1
前式中のRはHまたはCHである。nは0から約8であって、好ましくは0から約6である。mは約4から約12である。
【0023】
フルオロポリマーはさらに側鎖基を含有してもよい。特に好ましいのは、アルキル含有側鎖基および/または官能側鎖基である。1つの実施形態においては、フルオロポリマーはアルキル含有側鎖基を含んでなる。
【0024】
これらの側鎖基をフルオロポリマーに導入する方法は、例えば次の構造を持つアルキル含有モノマーの重合である。
アルキルユニット−任意選択のスペーサー−重合性基
【0025】
好ましいアルキルユニットは、約1個から約12個の炭素原子を含んでなる。任意選択のスペーサーは具体的に限定されないが、ただしアルキルユニットではない。好ましくは分子鎖中に約0個から約20個の原子を含み、より好ましくは約0個から約10個の原子を含む。スペーサー中には炭素原子およびヘテロ原子、例えばN、O、およびSの両方とも存在してもよい。重合性基は具体的に限定されず、ポリマー形成に適した任意の重合性基であってよい。重合性基の例としてはエチレン系不飽和基が挙げられる。
【0026】
アルキル含有モノマーの例としては、次式のアルキル含有アクリラートが挙げられる。
C=CR−C(O)−O−C2p+1
前式中のRはHまたはCHであり、pは約1から約12である。
【0027】
1つの実施形態においては、フルオロポリマーはさらに官能性側鎖基を含有してもよい。
【0028】
それらの側鎖基をフルオロポリマーに導入する方法は、例えば次の構造を持つ官能性モノマーの重合である。
官能性ユニット−任意選択のスペーサー−重合性基
【0029】
官能性ユニットは具体的に限定されず、任意の官能基を含んでよい。官能基の例としては、OH、SH、NH、およびN−メチロールスルホンアミドなどが挙げられる。好ましい官能性ユニットは約0個から約20個の炭素原子を含んでなり、好ましくは約0個から約12個の炭素原子を含んでなる。任意選択のスペーサーは具体的に限定されないが、ただしアルキルユニットではない。好ましいスペーサーは分子鎖中に約0個から約20個の原子を含み、より好ましくは約0個から約10個の原子を含む。スペーサー中には炭素原子およびヘテロ原子、例えばN、O、およびSの両方とも存在してもよい。重合性基は具体的に限定されず、ポリマー形成に適した任意の重合性基であってよい。重合性基の例としてはエチレン系不飽和基が挙げられる。
【0030】
官能性モノマーの例としては、次式のアクリレートが挙げられる。
C=CR−C(O)−O−C2p
前式中のRはHまたはCHであり、pは約1から約12である。XはOH、SH、NH、およびN−メチロールスルホンアミドから選択される官能基である。
【0031】
市販のフルオロポリマーの例としてはエフォラール(Evoral(登録商標))、オレオフォボール(Oleophobol)、スコッチガード(Scotchguard)、チュビガード(Tubiguard)、リペラン(Repellan)、ルコガード(Ruco−Guard)、ユニダイン(Unidyne)、ケコフォーブ(Quecophob)、およびヌーバ(Nuva)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
含浸したマイクロファイバー・ウェブが含有するフルオロポリマーは、出発材料のマイクロファイバー・ウェブ100gにつき好ましくは約0.2gから約5g、より好ましくは約0.2gから約1.2gである。適切な量のフルオロポリマーを用いた場合、被覆マイクロファイバー・ウェブは良好で長期持続的な撥水性および撥油性ならびに基材密着性および優れた取り回し易さを示す。
【0033】
さらに必要に応じて、含浸組成物はシリコ−ン、ワックス、および塩(例えばジルコニウム塩)のような添加物を含有してもよい。
【0034】
前記のマイクロファイバー・ウェブの片面には、ポリウレタン含有レイヤーを適用する。ポリウレタン含有レイヤーの効果により、被覆マイクロファイバー・ウェブは容易にクリーニングすることができる。このレイヤーはさらに、不透水性および例えば細菌に対する微生物不透過性をもたらす。マイクロファイバー・ウェブの片面に適用するポリウレタン含有レイヤーは、好ましくは連続層の形状である。レイヤー厚さは一様にすべきであり、好ましくは約3g/mから約50g/mの範囲であって、より好ましくは約8g/mから約20g/mの範囲である。
【0035】
使用するポリウレタンは、全ポリウレタン・ホモポリマーおよびポリウレタン・コポリマーであり得る。なかんずく、ポリエステルポリウレタンおよびポリエーテルポリオールポリウレタンのようなポリウレタン・ブロックコポリマーを用いることができる。ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの分子量は、通常約4,000から約6,000である。市販品の一例としてはインプラニル(登録商標)が挙げられる。
【0036】
ポリウレタン含有レイヤーは、ポリウレタンに加えてそれ以外の成分を含有してもよい。可能な成分の1つはフルオロレジンである。フルオロレジンはフルオロポリマーと同一のものであってもよく、またフルオロポリマーとは異なるものであってもよい。好ましいフルオロレジンはフルオロポリマーと同一であって、上記のフルオロポリマーに関する記載を適用する。
【0037】
レイヤー中に含まれるフルオロレジンの含量は、ポリウレタンの重量を100重量部として好ましくは0重量部から約10重量部であって、より好ましくは約0.5重量部から約3重量部である。
【0038】
ポリウレタン含有レイヤーは補助剤も含有してよい。任意選択の補助剤の1つは二酸化ケイ素である。二酸化ケイ素を添加することによって、エチレンオキシドのようなガスによる消毒効果が改善される。レイヤー中に用いる二酸化ケイ素の形態は、好ましくは珪酸である。二酸化ケイ素粒子のサイズは通常は約0.2μmから約10μmの範囲であって、好ましくは約0.2μmから約5μmの範囲である。レイヤー中に含まれる二酸化ケイ素含量は、ポリウレタンの重量を100重量部として好ましくは0重量部から約10重量部であって、より好ましくは約1重量部から約5重量部である。
【0039】
ポリウレタン含有レイヤーは二酸化チタンも含有してよい。二酸化チタンはつや消し剤として働く。二酸化チタン粒子のサイズは通常は約0.2μmから約10μmの範囲であって、好ましくは約0.2μmから約5μmの範囲である。レイヤー中に含まれる二酸化チタン含量は、ポリウレタンの重量を100重量部として好ましくは0重量部から約5重量部であって、より好ましくは約0.2重量部から約2重量部である。
【0040】
その上に、ポリウレタン含有レイヤーはさらなる添加剤、例えば脱気剤、防カビ剤、耐擦り傷性向上添加剤、防水剤、粘ちょう剤、レオロジー添加剤、および流動性向上剤などを含有してもよい。これらの添加剤はレイヤーを製造するための添加剤であるか、または出来上りレイヤーの特性を改良するものである。当業者は、その専門知識に基づいて適切な添加剤を選択することができる。レイヤー中の添加剤含量は、ポリウレタンの重量を100重量部として好ましくは0重量部から約20重量部であって、より好ましくは約0.5重量部から約10重量部である。
【0041】
<被覆マイクロファイバー・ウェブを製造する工程>
本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブの製造は、種々の工程を用いて行い得る。好ましい工程の1つを次に記載する。
【0042】
ステップ(a) マイクロファイバー・ウェブの用意
先ずマイクロファイバー・ウェブを用意する。出発材料として用いるマイクロファイバー・ウェブは、上記で詳細に記載したものである。
【0043】
前記のマイクロファイバー・ウェブは、そのまま本発明の工程に使用することができるが、必要に応じて、例えば親水性向上のために前処理してもよい。例えば親水性向上のための前処理を実施するには、当分野で公知の工程を用いてよい。親水性向上のためには、非イオン性界面活性物質、脂肪酸凝縮物、シリコーン、およびそれらの混合物を用いることができる。
【0044】
マイクロファイバー・ウェブに対して、親水性向上の前記手段を適用する。適用工程は具体的に限定されない。1つの実施形態においては、マイクロファイバー・ウェブと親水性向上手段の溶液または分散体とを接触させる(例えばスプレー噴霧および浸漬などによる)。
【0045】
親水性向上手段の適用後に得られるマイクロファイバー・ウェブを、好ましくは乾燥する。具体的な乾燥条件は、親水性向上のために用いる手段によって異なる。通常は約40℃から約80℃の乾燥温度を選択し、好ましくは約50℃から約60℃の乾燥温度を選択する。通常の乾燥時間は約30秒から約240秒であって、好ましくは約60秒から約120秒である。
【0046】
含浸ステップ前のマイクロファイバー・ウェブがフルオロポリマーに対して示す液体ピックアップ率は、任意選択で前処理をしたマイクロファイバー・ウェブの乾燥重量の約65重量%から約85重量%であって、より好ましくは約65重量%から約70重量%であることが望ましい。
【0047】
ステップ(b) マイクロファイバー・ウェブに対して行う、フルオロポリマーを含有する含浸組成物の含浸
フルオロポリマーを含有する含浸組成物を、マイクロファイバー・ウェブに含浸させる。適当なフルオロポリマーは上記記載のものである。
【0048】
マイクロファイバー・ウェブの含浸には、公知の工程を用いてよい。それらの工程の例としては、スプレー噴霧、浸漬、吸尽工程、スロップ−パディング(slop−padding)工程、および泡含浸が挙げられる。浸漬による含浸はマイクロファイバー・ウェブを完全に含浸できるので好ましい。
【0049】
マイクロファイバー・ウェブの含浸に用いるフルオロポリマーの形態は、通常は溶液または分散液である。溶液または分散液の濃度は具体的に限定されないが、好ましくは約5g/lから約70g/lの範囲であって、より好ましくは約5g/lから約50g/lの範囲である。
【0050】
ステップ(c) 含浸したマイクロファイバー・ウェブの乾燥
含浸後、含浸したマイクロファイバー・ウェブを乾燥する。
【0051】
本発明者らが見いだしたところによれば、フルオロポリマーを用いた含浸物の特性はある種の乾燥−熱処理シーケンスの影響を受ける。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、溶媒を除去すると、フルオロポリマー分子は先ず基材(例えば本発明のマイクロファイバー・ウェブ)上に統計的に付着するものと本発明者らは思料する。この統計的な(すなわちランダムな)配列ゆえに、疎水性のフッ素原子も当初は同じく統計的に配列する。フルオロポリマーをより高温に曝露すると、フルオロポリマー分子が再配向を起こし、疎水性のフッ素原子がレイヤー表面で好ましく再配列する。
【0052】
ある温度をあるフルオロポリマーの乾燥温度(ステップ(c))として考慮し得るかどうか、またはある温度を熱処理の温度(ステップ(e))として考慮し得るかどうかは、吸収性を利用して判定することができる。
【0053】
EMPA−210綿布(平織、漂白、蛍光増白剤無し)(EMPAテストマテリアルズ社(ザンクト・ガレン、スイス)より入手)で作製した試験用生地に、綿布100gにつき0.5gのフルオロポリマーをパディング含浸させ、次に室温で乾燥する。この生地を裁断して、均等サイズの複数の裁断片を作製する。これらの裁断片を種々の温度(例えば40℃、50℃、(中略)、140℃、150℃)で120秒間加熱する。各ステップ間の温度差は10℃である。厳密な最低温度および最高温度はフルオロポリマーによって異なり、測定曲線に基づいて決定できる。温度Tで加熱した個々の生地裁断片の重量を測定し、mdry(T)とした。
【0054】
冷却後、水性処理液で生地裁断片をパディングした(圧力2bar、ローラースピード1.5m/分)。温度Tで加熱した個々の生地裁断片の重さを測定し、mwet(T)とした。
【0055】
次式を用いて、温度Tiにおける個々の生地裁断片の処理液ピックアップ率を算出する。
処理液ピックアップ率(T)[%]=100×(mwet(T)-mdry(T))/mdry(T
【0056】
が低い間は、処理液ピックアップ率は比較的一定である。しかしTがある温度になると、処理液ピックアップ率は急に減少して顕著に低い値になる。ひとたび増大した後の処理液ピックアップ率の測定値は、温度Tが上昇しても再び比較的一定となる。ステップ(c)で選択する乾燥温度は、比較的一定で高い処理液ピックアップ率が観測されるような範囲であるべきである。ステップ(e)で選択する熱処理温度は、比較的一定で低い処理液ピックアップ率が観測されるような範囲であるべきである。前記の2つの温度帯間の移行帯の適用性は低い。乾燥帯における処理液ピックアップ率は原則的に20%以上である。熱処理帯における処理液ピックアップ率は原則的に10%以下である。しかしこれらの数値はガイドラインであって、フルオロポリマーによって異なり得る。
【0057】
本発明はこの知見を利用する。含浸したマイクロファイバー・ウェブをステップ(c)において乾燥する。乾燥中に、フルオロポリマー分子がマイクロファイバー・ウェブ上に統計的に付着する。フルオロポリマー分子の再配向が起こらない乾燥条件を選択する。
【0058】
厳密な乾燥条件は用いるフルオロポリマーによって異なる。選択する乾燥温度は、通常約40℃から約110℃であって、好ましくは約50℃から約80℃である。乾燥時間は通常約10秒から約240秒であって、好ましくは約30秒から約120秒である。
【0059】
フルオロポリマーを含浸させることによって、マイクロファイバー・ウェブの吸収性を調整する。フルオロポリマーを簡単に乾燥することで、マイクロファイバー・ウェブに対するポリウレタンコーティング組成物の部分的な浸透がより容易に保証される。ポリウレタンコーティング組成物の適用前にフルオロポリマーを予め熱処理してある場合には、フルオロポリマー分子の配向が起こるため、撥水面をコーティング組成物でコートすることはより難しくなる。
【0060】
乾燥ステップ後のマイクロファイバー・ウェブがコーティング組成物に対して示す処理液ピックアップ率は、含浸したマイクロファイバー・ウェブの乾燥重量に対して約30重量%から約60重量%であって、より好ましくは約30重量%から約50重量%であることが望ましい。
【0061】
ステップ(d) 乾燥した含浸マイクロファイバー・ウェブの片面のみに対する、ポリウレタンを含有するコーティング組成物の適用
乾燥ステップ後、乾燥した含浸マイクロファイバー・ウェブの片面のみに、ポリウレタンを含有するコーティング組成物を適用する。ポリウレタン含有レイヤーの成分は上記で詳細に記載した。
【0062】
使用するコーティング組成物の形態は、所望の成分の溶液または分散液であることが好ましい。溶液中または分散液中のポリウレタン濃度は、好ましくは約50重量%から約80重量%の範囲であって、より好ましくは約60重量%から約80重量%である。粘性のコーティング組成物を選択することによって、出来上りマイクロファイバー・ウェブの片面のみにポリウレタン含有レイヤーが存在することがより容易に保証される。
【0063】
乾燥した含浸マイクロファイバー・ウェブにコーティング組成物を適用するには、公知の工程を用いる。それらの工程の例としては、ロール塗布、ナイフ塗布、展延塗布、泡塗布、転写式塗布、およびフィルムコーティングが挙げられる。好ましくはナイフ塗布を用いる。
【0064】
コーティング組成物の適用は、出来上りマイクロファイバー・ウェブの片面のみにポリウレタン含有レイヤーが存在するようにして行う。図1に示すのは、本発明に従って被覆した出来上りマイクロファイバー・ウェブの切断面の模式図である。簡単のために、マイクロファイバー・レイヤーはモノレイヤーとして表す。
【0065】
図示した実施形態のマイクロファイバー・ウェブ(1)はマイクロファイバー(2)と導電性ファイバー(3)とを含んでなり、この実施形態の導電性ファイバー(3)の直径はマイクロファイバー(2)の直径よりも大きい。フルオロポリマー含浸物は図中に示していない。ポリウレタン含有レイヤー(4)は出来上りマイクロファイバー・ウェブの片面のみに存在する。
【0066】
乾燥した含浸マイクロファイバー・ウェブに適用する間に、コーティング組成物は必然的にマイクロファイバー・ウェブ中にある程度浸透する。しかしながら本発明の範囲においては、適用面とは反対側のマイクロファイバー・ウェブ表面をポリウレタン含有レイヤーが被覆してはならない。浸透度は好ましくは約60%以下であって、より好ましくは約40%以下である。最小浸透度は好ましくは約20%であって、より好ましくは約30%である。本発明においては、浸透度を次のように定義する。
浸透度=100×d/d
【0067】
上式のdは、ポリウレタン含有レイヤーと接触しているマイクロファイバー・レイヤーの部分の厚さである。dは、マイクロファイバー・レイヤー全体の厚さである。
【0068】
厚さの測定は、例えば顕微鏡検査のような光学プロセスによって行ってよい。使用できる測定法の一例は、走査電子顕微鏡法による切断面の検査である。
【0069】
図1では、右側の中括弧と「x%」とによって浸透度を視覚的に示す。図1のマイクロファイバー(白球)はポリウレタン含有レイヤー中に約50%埋入されているので、浸透度は約50%である。
【0070】
適用後に、ステップ(d)でコーティング組成物を乾燥できる。あるいは乾燥を行わずにおき、ステップ(e)の熱処理中にコーティング組成物を乾燥してもよい。
【0071】
独立した乾燥ステップを実施する場合には、コーティング組成物によって条件を選択する。ただしその選択は、フルオロポリマー分子の再配向が起こらないようになされなければならない。
【0072】
選択する乾燥温度は、通常約40℃から約110℃であって、好ましくは約80℃から約100℃である。乾燥時間は通常約10秒から約240秒であって、好ましくは約10秒から約120秒である。
【0073】
ステップ(e) ステップ(d)で得られた含浸マイクロファイバー・ウェブの熱処理
ステップ(e)では、ステップ(d)で得られた(任意選択で乾燥した)被覆マイクロファイバー・ウェブを熱処理する。このステップの条件選択は、フルオロポリマー分子の再配向が起こるように行う。
【0074】
熱処理中の温度は、通常約120℃から約190℃であって、好ましくは約140℃から約180℃である。複数の温度で複数のステップで熱処理を実施することも当然可能である。熱処理の時間は通常約10秒から約240秒であって、好ましくは約30秒から約120秒である。
【0075】
<放射線防護装置>
本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブは、放射線防護装置中の放射線防護材の被覆として用いることができる。この場合には、放射線防護材の少なくとも1つの面に被覆マイクロファイバー・ウェブを設ける。この際には、ポリウレタン・コート面が放射線防護材の側にあるようにする。
【0076】
図2は、本発明の放射線防護装置(6)の切断面の模式図である。図2に示す実施形態のマイクロファイバー・ウェブ(1)は、マイクロファイバー(2)と導電性ファイバー(3)とを備えている。この実施形態においては、導電性ファイバー(3)の直径はマイクロファイバー(2)の直径よりも大きい。フルオロポリマー含浸物は図中に示さない。ポリウレタン含有レイヤー(4)は出来上りマイクロファイバー・ウェブ(1)の片面のみに存在する。
【0077】
図示した実施形態では、本発明のマイクロファイバー・ウェブ(1)を放射線防護材(5)の両面に設ける。この際には、両面においてポリウレタン含有レイヤー(4)が放射線防護材の側にあるようにする。
【0078】
放射線防護装置に包含されるのは、有害な放射、特にX線放射、UV放射、赤外線放射、および放射線放射であって、好ましくはX線放射から人間または物体を防護する全ての装置である。例としてはエプロン、手袋、シールド、カーテン、コート、ドレープ、ドレープ材、目保護具、およびガウンが挙げられるが、これらに限定されない。その可撓性および快適な触感特性ゆえに、本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブは可撓性の放射線防護装置および/または人間が着用する放射線防護装置に特に適している。
【0079】
本発明の範囲においては、あらゆる種類の放射線防護材を用いることができる。放射線防護材の種類は特に限定されないが、遮蔽する対象の放射線によって異なる。例えば鉛または酸化鉛を使用した放射線防護材が挙げられる。また無鉛の放射線防護材を用いることもできる。無鉛の放射線防護材は、例えば独国特許出願公開第10 2004 001 328号明細書、国際公開第2005/024846号パンフレット、国際公開第2005/023116号パンフレット、独国特許出願公開第10 2006 028 958号明細書、国際公開第2004/017332号パンフレット、および独国特許出願公開第10 2005 034 384号明細書に開示されている。また放射線防護材の組み合わせも可能である。放射線防護材は1つまたは複数のレイヤーからなってよい。
【0080】
放射線防護装置を作製するには、放射線防護材の少なくとも1つの面に本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブを設ける。通常は、本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブによって放射線防護材を包み込む。マイクロファイバー・ウェブと放射線防護材とは公知の工程で結合してもよい。工程の例としては縫製、のり付け、テーピング、バッキング、またはラミネート加工が挙げられる。例えば、バッキングまたはラミネート加工によりマイクロファイバー・ウェブと放射線防護材とを複合材に加工する場合には、裁断、パンチング、ウォータージェット切断、成形加工、またはレーザー切断のような加工プロセスを用いてそれらをさらに加工することによって、出来上り品を作製する。
【0081】
本発明のマイクロファイバー・ウェブは、放射線防護材を保護する。具体的には、放射線防護材は次の対象から保護される。
機械的影響、
微生物侵入(例えば細菌、ウィルス、および真菌)、
例えば洗浄剤または消毒剤による化学的影響、
光の影響、および/または、
例えば血液、尿、または汗等の体液の透過。
【0082】
そのテキスタイル特性ゆえに、本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブは放射線防護装置の表面手触りを好ましいものにする。これによって、特に衣料品に快適なフィット性が付与される。
【0083】
従来の放射線防護装置では、ポリウレタン・コート面は放射線防護材とは反対側を向いている。本発明のマイクロファイバー・ウェブはこれとは対照的に、ポリウレタン・コート面が放射線防護材の側にあるようにして設ける。したがって従来のデザインではポリウレタン・コート面は外側を向き、そのためにポリウレタン・コート面にかかる物理的負荷は大きくなり、結果的により多くの摩耗および剥脱が起こる。本発明のデザインではポリウレタン・コート面が内側を向くため、物理的負荷は著しく軽減される。驚くべきことに、本発明のデザインによる被覆マイクロファイバー・ウェブは高い切創抵抗と引裂強さとを示す。それゆえに、本発明の被覆マイクロファイバー・ウェブの性能特性が従来の素材よりも優れていることは明白である。
【0084】
次の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施形態によって限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
繊度1dtexのポリエステルマイクロファイバーと炭素含有ファイバー(ベルトロンB31(カネボウ合繊、日本))とから、マイクロファイバー・ウェブを調製した。前記ファイバーを加工して、縦糸密度が約70本/cmおよび横糸密度が約37本/cm、表面密度が100g/mの平織を作製した。寸法5×5mmの格子模様を作るように、炭素含有ファイバーを混合した。
【0086】
前記マイクロファイバー・ウェブの通気性は約15L/min/dmであり、静電気表面抵抗が約1×10オームであった(ドイツ工業規格100015-1により測定(25%相対湿度、23℃))。引裂強さは約850N(縦糸方向)および650N(横糸方向)であった。
【0087】
本実施例においては、テンターでマイクロファイバー・ウェブを延伸した。
【0088】
先ず、20g/lのシラストールWK(シル・ウント・ザイラッハ社、ドイツ)をパディングによってマイクロファイバー・ウェブに適用して親水度を調整した。パディング後のマイクロファイバー・ウェブを80℃で乾燥した。
【0089】
次に、前記マイクロファイバー・ウェブに10g/lのエフォラール(Evoral)O35(フルオロポリマー)(シル・ウント・ザイラッハ社、ドイツ)をパディングによって含浸させた。このマイクロファイバー・ウェブを60℃で90秒間乾燥した。フルオロポリマー分子の配向は起こらなかった。使用したエフォラール(Evoral)の量は、100gのマイクロファイバー・ウェブ当たり約0.7gであった。
【0090】
乾燥後、ナイフ塗布によって前記マイクロファイバー・ウェブにポリウレタン含有コーティング組成物を適用した。コーティング組成物の組成は次の通りである。
50重量部 インプラニル(Impranil)DLP−R(ポリマー分散液)(バイエル社)
0.2重量部 アジタン(Agitan)218(脱気剤)(ムンジング化学社)
0.4重量部 アフロチン(Afrotin)FG(防カビ剤)(シル・ウント・ザイラッハ社)
0.4重量部 Byk 333(耐擦り傷性向上添加剤)(BYK化学社)
0.8重量部 テゴフォーベ(Tegophobe)1650(防水剤)(デグッサ社)
1.2重量部 コロイド珪酸
41.7重量部 水
0.3重量部 レオレート(Rheolate)255(粘ちょう剤)(エレメンティス社)
4.2重量部 エフォラール(Evoral)(フルオロポリマー)(シル・ウント・ザイラッハ社)
0.8重量部 ホンビテック(Hombitec)RM400(つや消し剤)(ザハトレーベン・ヒェミー社)
【0091】
前記の原料を上記リストの順番で添加し、溶解器中で混合した。撹拌時間は35分間であった。得られたペーストの連続被膜を、エア・ナイフを用いてマイクロファイバー・ウェブに塗り広げた。
【0092】
前記の被覆マイクロファイバー・ウェブを、長さ3メートルの乾燥部を5つ備えたテンターで2分間かけて段階的に乾燥した。
乾燥部1:80℃
乾燥部2:120℃
乾燥部3から乾燥部5:160℃
【0093】
得られたマイクロファイバー・ウェブをドイツ工業規格EN13795-2に従って検査して、外科向けのX線防護材の被覆としての適性を明らかにした(cfu=コロニー形成単位)。
【0094】
(バリア特性)
細菌透過性(乾燥試験):log10cfu:0
液体透過性:>200cm
(清浄度)
付着微生物:log10(cfu/dm)<0.3.
特定物質:特定物質指数<3.3
発塵性:log10微粒子(2-25μm)<3.7
(強度)
破裂強さ(乾燥試験):>750kPa
破裂強さ(湿潤試験):>750kPa
引裂強さ(乾燥試験):>750N/5cm
引裂強さ(湿潤試験):>680N/5cm
【0095】
これらの測定値から、本発明の素材が外科向けのテキスタイル用途において優れた適合性を持つことが分かる。
【0096】
国際公開第2005/024846号パンフレットの実施例1で作製した無鉛放射線防護材を裁断して、放射線防護エプロンの形状にした。上記で作製したマイクロファイバー・ウェブを同様に裁断し、放射線防護材の両面に設置した。その際、ポリウレタンコートしたレイヤーが放射線防護材の側を向くようにした。マイクロファイバー・ウェブと放射線防護材とを縫い合わせて放射線防護エプロンを作製した。上記記載のマイクロファイバー・ウェブを使用することにより、前記の放射線防護エプロンは快適なフィット性を提供した。皮膚刺激も生じなかった。上記記載のマイクロファイバー・ウェブはさらに、デリケートな放射線防護インレーの防護バリアとして利用できる。前記の放射線防護エプロンは、血液、尿、および微生物に対する優れた不透過性を示した。また前記の放射線防護エプロンは、エチレンオキシドで消毒処理をしても損傷しなかった。よって前記の放射線防護エプロンは医療分野における用途に非常に適している。
【符号の説明】
【0097】
1 マイクロファイバー・ウェブ
2 マイクロファイバー
3 導電性ファイバー
4 ポリウレタン含有レイヤー
5 放射線防護材
6 放射線防護装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆したマイクロファイバー・ウェブであって、
(i)フルオロポリマーを含浸させたマイクロファイバー・ウェブと、
(ii)前記マイクロファイバー・ウェブの片面のみに存在するポリウレタン含有レイヤーと、
を備える被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項2】
請求項1に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、未被覆のマイクロファイバー・ウェブ100gにつきフルオロポリマーが約0.2gから約5gであることを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、ポリウレタン含有レイヤーの厚さが約3g/mから約50g/mであることを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、ポリウレタン含有レイヤーが、ポリウレタン100重量部につき約3重量部から約30重量部のフッ素樹脂をさらに含有することを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、ポリウレタン含有レイヤーが、ポリウレタン100重量部につき約1重量部から約10重量部の二酸化ケイ素をさらに含有することを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、下記化学式のペルフルオロアルキル含有アクリラートをポリマー化することによってフルオロポリマーを作成できることを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
C=CR−C(O)−O−(CH−C2m+1
(式中のRはHまたはCHであり、nは0から約8であり、mは約4から約12である)
【請求項7】
請求項6に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブであって、フルオロポリマーが、ペルフルオロアルキル含有アクリラートと、
(i)少なくとも1つの下記化学式のアルキル含有アクリラート
C=CR−C(O)−O−C2p+1
(式中のRはHまたはCHであり、pは約1から約12である)
および/または、
(ii)少なくとも1つの下記化学式の官能性モノマー
C=CR−C(O)−O−C2p
(式中のRはHまたはCHであり、pは約1から約12であり、XはOH、SH、NH、およびN−メチロールスルホンアミドから選択される官能基である)
とをコポリマー化することによって得られるコポリマーであることを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブ。
【請求項8】
被覆マイクロファイバー・ウェブの製造方法であって、
(a)マイクロファイバー・ウェブを用意するステップと、
(b)フルオロポリマーを含有する含浸組成物を前記マイクロファイバー・ウェブに含浸させるステップと、
(c)前記含浸マイクロファイバー・ウェブを乾燥するステップと、
(d)乾燥した前記含浸マイクロファイバー・ウェブの片面のみに、ポリウレタンを含有するコーティング組成物を適用するステップと、
(e)前記(d)のステップで得たマイクロファイバー・ウェブを熱処理するステップと、
を含むことを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法であって、約40℃から約110℃の温度で約10秒から約240秒の時間に渡って前記ステップ(c)の乾燥を実施することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の製造方法であって、約120℃から約190℃の温度で約10秒から約240秒の時間に渡って、前記ステップ(e)の熱処理を実施することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の製造方法であって、マイクロファイバー・ウェブ上にフルオロポリマー分子が統計的に付着するように且つフルオロポリマー分子の再配向が起こらないように、前記ステップ(c)における含浸マイクロファイバー・ウェブの乾燥を実施することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項8または請求項11に記載の製造方法であって、フルオロポリマー分子の再配向が起こって疎水性フッ素原子がレイヤー表面に好ましく配置されるように、前記ステップ(e)の熱処理を実施することを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブまたは請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる被覆マイクロファイバー・ウェブの放射線防護材の被覆としての用途であって、
放射線防護材の少なくとも1つの面に被覆マイクロファイバー・ウェブを備え、ポリウレタン・コート面が放射線防護材の側にあることを特徴とする被覆マイクロファイバー・ウェブの用途。
【請求項14】
放射線防護装置であって、
(α)放射線防護材と、
(β)請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の被覆マイクロファイバー・ウェブまたは請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の製造方法により得られる被覆マイクロファイバー・ウェブと、
を含んでなり、
放射線防護材の少なくとも1つの面に被覆マイクロファイバー・ウェブを備え、ポリウレタン・コート面が放射線防護材の側にあることを特徴とする放射線防護装置。
【請求項15】
請求項14に記載の放射線防護装置であって、放射線防護材がX線放射を遮蔽するのに適することを特徴とする放射線防護装置。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の放射線防護装置であって、放射線防護材が鉛を含有しないことを特徴とする放射線防護装置。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の放射線防護装置であって、放射線防護材の両面に被覆マイクロファイバー・ウェブを備え、両面においてポリウレタン・コート面が放射線防護材の側にあることを特徴とする放射線防護装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−501859(P2013−501859A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524219(P2012−524219)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061631
【国際公開番号】WO2011/018459
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(502425927)マヴィック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】MAVIG GmbH
【Fターム(参考)】